Nikon F3HP

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1996年8月 中古を新宿で購入

1996年8月 SB-17を中古で購入

1996年11月 MD-4を中古で購入

1997年2月 MF-18を中古で購入

2005年10月 オーバーホール,シャッター機構部の調整


社会人になり,それまで使っていた父親のアサヒペンタックスSPに代わり,自分のお金できちんとしたカメラを買おうと思い立って購入したのが,このF3HPです。

当時,F3は新品が買える現行機種ではありましたが,当然高価であり,自分がプロ用のカメラを持っていても仕方がなかろうと,全く眼中にありませんでした。

なにせそれまで使っていたカメラがSPですから,このカメラに近く,またこのカメラの不満を解消できるものを探すことにしていました。自動露出やオートフォーカスの必要性は全然感じておらず,むしろマニュアル操作が思い通りに出来るカメラであることは絶対条件でした。

一方,M42のレンズは新品がもはや手に入らず,古いカメラ故にオプション類も軒並み絶版では,一眼レフの面白さがありません。当時の私はマイナーメーカーの古いカメラを使ってきた苦しみから逃れたくて,メジャーで,かつユーザーを大事にする体力のあるメーカーの製品を選びたいと思っていました。

すると,自動的にニコンということになります。当時だとNewFM2がまさに自分の要求にぴったりです。価格もなんとか手の届く範囲で,これに50mm/F1.4を組み合わせておけば,とりあえずどうにかなるなと考えていました。

いよいよ買おう,と考えてカメラ屋でカタログをもらってくるとき,F3のカタログも目についたのでもらってきました。プロ用というストイックな響きと,およそそれまでのカメラとは思えないようなデザインにしびれた過去をふと思い出し,高いなあ,買えないなあとため息をついていました。そして,SPと同じ横走りシャッターに対する憧れのようなものが,沸々と沸いてきたのでした。

ふと,中古カメラを買ってみるのはどうだろう,NewFM2の予算があれば,中古でF3を買うことができるかも知れない,そんな風に閃いた私は,とりあえず中古カメラののメッカである新宿に出かけることにしたのでした。

中古カメラなど,買ったことも手に取ったこともありません。全くの初心者が10万円近い買い物を中古でしようとしているのですから,まったくもって無謀です。今の私が当時の私の横にいたら,「そういう危ないことはやめとけ」と親切にアドバイスしたことでしょう。

いくつか列んでいたF3HPの中から,自分の気に入ったものを買ってきたのですが,正直に言って善し悪しなど分かるはずもありません。せいぜい外側が綺麗かどうかというくらいの話で,あとはお店の値付けを信用し,ちょっとでも高いものを買うようにした,という程度の買い物でした。

プロ用の堅牢さ,ということが信用になっていたこともあり,それ程悩まず将来の自分の相棒を決めた私は,震える手で9万円を差し出して,大事に家まで持って帰りました。

一緒に買う予定だったSi-Nikkor50mm/F1.4は是非新品で,と思っていたので,その足で量販店に向かい,フィルターまで純正の新品を選んで買ってきたことを覚えています。

幸いにしてトラブルは全くなく,使い心地の良さは想像以上のものがありました。NewFM2でも不満なく使い続けていたとは思いますが,明るく見やすく,視野率100%のファインダーのありがたさや,なめらかで確実なレバーなど,いわゆるプロ用の機材として妥協なく生まれてきた血筋の良さを味わうことを,このカメラで許されたことは非常に幸運だったと思います。

角をぶつけて塗装が剥げたり,巻き上げレバーに傷が付いたり,底板に三脚の跡がついたりと,外観は汚くなってしまい,自分で塗装をしたりしたのですが,F3が製造中止になり,いつまでもオーバーホールが出来るとは限らないなと思うようになった2005年,初めてニコンにオーバーホールをお願いしました。全く問題はなく,外装の部品を希望して交換してもらった程度です。

そしてさすがにニコンのFマウントは多くのレンズが新品・中古を問わず選び放題。限られた予算の中でレンズ交換の楽しみを味わうにはFマウントが一番手堅く,その点での満足感は当初の期待を超えたものだったと思います。

そして10年がたち,カメラの修理を行う私にとって,F3はすべてのカメラの規準であると共に,確実ではない修理されたカメラを割り切って使うための「本当に大事な撮影に使う」カメラとして,かけがえのない存在となっています。

最初のうちは,平均測光のSPに対し,スポット測光に近いF3に振り回された記憶しかないのですが,今は撮影するという本来の目的以外にも絶対なる信用を置いている,そんなカメラです。


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