Ricoh GR1

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1997年10月 新品を新宿で購入


世の中がNikonF5の高性能ぶりに驚嘆していたとき,カメラ雑誌の広告に,ちょっと見慣れないカメラが出ていました。リコーのGR1です。

リコー?カメラを出していたことは知っていましたが,およそ高級機とは縁遠く,全く興味のないメーカーでした。

ただ,見かけはただのコンパクトカメラに過ぎないこのGR1というカメラは,どうもちょっと違うようです。まず高い。コンパクトカメラで10万円近い(しかも繰り返しますがリコーのカメラです)なんていうのは,一体誰に売るつもりだろうと疑問でした。

しかし,28mm/F2.8の単焦点レンズ,と知って,おやっと思うわけです。当時すでにコンパクトカメラでもズームは当たり前。それをわざわざ単焦点,しかも28mmというのですから,余程何かを主張したいのでしょう。

さらに,コンパクトカメラにありがちなプログラムモードだけではなく,絞り優先AEを持っているというんです。むむ,レンズに自信ありということか・・・

コンタックスT2やTVS,ニコン35TiやミノルタTC-1など,高級コンパクトカメラがブームになった時期でもありましたが,そこに安売りメーカーのリコーが挑んでどうするよ,と半ばあきれた私でしたが,非常に気になる存在として記憶に残り続けたのでした。

そんな折,友人がドイツに出張に行くことになりました。記念に良い写真をたくさん撮ってきてもらいたいと思った私は,彼女がカメラを持っていないことにがっかりし,同時にそれを自分が新しいコンパクトカメラを買う理由にすればよいと,閃くのでした。

かくして,GR1は私の記憶の底からぱっと目の前に飛び出し,一気に購入に踏み切ることとなります。今はなき,新宿のカメラのドイで買ったことを覚えています。

当時の私は,GR1がこれほど息の長いモデルになるとは思っておらず,今なお熱烈なファンに支えられ,そして中古価格も下がらない「一流カメラ」になるなど,全く予想していませんでした。

GR1はとてもいいカメラです。GR1を出張に連れて行ってくれた友人もお気に入りで,以後旅行の度に彼女に同行する事になります。いわく,いい写真が撮れるのだそうです。一眼レフは大きく重い。これでは自分には使えない。一眼レフでなくても,こんなに小さく軽いのに,こんなにいい写真が撮れると,そんな感じです。

確かにGR1の良さは私も認めますが,正直なところ私自身はあまり使いこなせておらず,まだまだカメラに振り回されている感じがぬぐえません。

私がGR1を使うと,なかなかAFが合焦してくれないのです。特にGR1はかなり寄れるレンズを持っていますが,ぐぐっと近寄ってもなかなかAFが合わず,シャッターボタンの版押しを何度か繰り返してようやく合焦させたとか,結局構図を変えたとか,そういう事になりがちで,どうしても撮影意欲を削いでしまうのです。

使い方がまずいのは分かっているのですが,同じカットを何枚も撮るとき,いちいちAFが動作するのもサクサク感がありませんし,自分の予測するものとは異なる動作に邪魔をされ,数枚取ると「もういいや」となってしまうのです。

現場に説明書を持っていくほどのゆとりも私にはなく,説明書を見ないと多くの機能を使いこなせないことも不満で,特にMODEキーを駆使する各種設定はどうしても覚えることが出来ません。

ということは,あまりおかしなことをせず,ごく普通に撮影すればいいわけで,思い出してみるとこれを旅行や出張に連れ出したとき,このカメラに不満を持つことはありませんでした。

マニアの遊び道具ではなく,普通に気軽に撮影できて,それでいて仕上がりは一味も二味も違う,それがGR1の持ち味と言えるのかも知れません。


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