Asahi Pentax MEsuper

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2006年12月 故障品を購入

2006年12月 シャッターおよびミラーボックスのレストア

2007年1月 高速側シャッターで露光ムラ

2007年1月 幕速およびメモリスイッチとマグネットスイッチのタイミング調整でシャッターの問題は解決

2007年1月 コマ間隔のバラツキ対策として巻き上げ機構の清掃,注油で修理完了


MZ-10でKマウントのカメラを初めて手に入れた私ですが,やはりマニュアルフォーカスでいつまでも修理可能なカメラを1つ手に入れたいと思うようになりました。必ず壊れてしまう事がはっきりしている部品の破損で製品寿命が決定するようなカメラは,何台あっても心配だということです。

出来ればSuperAがいいなあと思っていましたが,MEsuperがオークションに出ていたので手を出すことにしました。おりからペンタックスの中古が高騰している時期でもあり,すでにミラーが上がったままという状態であることと,全体的な程度を考えると決してお得だったとは思えない価格でした。

届いてみると,外観の傷み具合以上に,内部の痛みがひどいことがわかりました。

私は特にトラブルを抱えていない部分はあえて手を付けないという方針で修理を進める人ですが,このMEsuperはほぼ全域にわたって清掃と注油が必要になるような状態で,組み立てては問題が出てばらし,また組み立てて問題が出てばらす,ということを幾度となく繰り返すことになってしまいました。

ミラーが上がったままというのはME系の持病の1つで,分解して清掃,そしてブッシュ類を交換することで完治します。人気機種だけに詳しくその手順を解説したサイトもあちこちにあったりします。

固着した真っ黒なグリスをベンジンで拭き取り,ミラーボックスの各部を綺麗にしていきます。なめらかな動作が戻ったら,次はシャッターユニットです。

かなり使い込まれたようだったので,シャッターの羽根を一枚一枚分解して清掃します。ブッシュ類も交換して,ミラーボックスとシャッターユニットはその動作を取り戻しました。

露出計の調整も行って一通り組み立てたのですが,試写してみると高速側でのシャッター速度のズレが大きく,同時に高速側の露光ムラも目立ちます。

ミノルタXEのようなケースもあるので,よくよくミラーボックスも観察してみましたが,怪しい部分は見あたりません。そこでサービスマニュアルを熟読すると,どうやらミラーボックスに取り付けられたタイミングスイッチをうまく調整しないといけないようです。

私は過渡現象を捉えることの出来るストレージオシロスコープは持っていませんので,デジタルカメラを使ってタイミングを測定して,調整を行いました。結果としては,この調整を行うことでシャッター速度が正確になり,露光ムラも解消しました。

普通ならここでおしまいになるのですが,確認していない部分のグリスの固着が次々露呈することになります。フィルムの送り量が不安定で,コマ間隔がばらついて最悪の場合コマが重なってしまうこともそれが原因でしたし,モードダイアルの動きが渋いことも清掃して改善しました。開放測光用の連動レバーの動きが渋いことも固着が原因で,さすがにこれを分解して清掃するには全バラシになるため,ベンジンを注入して古い油を吸い出し,希釈したオイルをさして対策しました。

ストロボが光らないという問題も,ストロボが装着されているかどうかを検出するピンが固着していたことが原因でしたし,とにかくありとあらゆる部分が固着によって問題を起こしていたカメラでした。

当初,素人さんの分解痕もたくさんあったので,安易な注油が原因だったんだろうと思っていたのですが,分解されていない部分の固着も多発していることを考えると,これはもうたっぷり使い込まれたことが原因であったと考えざるを得ません。

張り皮の交換,塗装の修繕,失われたビスの取り付けなど外装関係も手間がかかりましたが,とりあえず思いつくところは全部手を入れて,今は落ち着いています。

思った以上にMEsuperは金属部品の率が高く,破損による修理不能に陥る率は低いと思います。丁寧に使い,壊れてもきちんと修理できるカメラとして,ME系に一定の人気がある理由もなるほどな,という感じがしました。

さて,その使い勝手ですが,これは実はがっかりなのです。小さすぎること,不安定なホールド感な上に,ミラーショックやシャッターの衝撃が結構大きく,手ぶれ連発なのです。XEとは正反対です。スローシャッターの手ぶれ限界点も高いです。

無理して小さく作られたという経緯もあってのことでしょうが,残念なことにこのカメラでは,自分の実力以上の奇跡を起こすことが出来るカメラとは言えないようです。

このカメラは本当に手こずりました。ES2はものを知らなかったから手こずったのですが,MEsuperの場合,サービスマニュアルもあり,経験もそれなりに積んでこれだけ手間がかかったのですから,本当はもっと愛着があっても良さそうです。

しかし,感性とは正直なものです。残念ながら,このカメラは撮影意欲をかき立てません。全体的な程度の悪さから感触が悪化している可能性が高く,この個体特有の問題かも知れませんが,このカメラでカメラの修理に一段落をつけた私にとって,どれも同じに見えるカメラが,これほど感覚的に異なるものであるということを知らしめた,そんなカメラの1つといえると思います。


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