祝!電子ブロックEX-150復刻

 1976年に発売され、当時の小中学生の心を鷲づかみにした電子ブロック「EX-150」が先日復刻されました。
 大人の科学シリーズの1つとして発売されたのですが、当時の小中学生は今やもう30代の立派な大人。大人の科学として出てきたのは確かに正解でしょうが、電子ブロックは子供が遊んでもまた面白いはずで、これは25年以上経過した今でもきっと同じだと思います。
 この復刻が今の子供たちにも楽しんでもらえるものならいいんですが、当時のオリジナルと復刻版の違いはやっぱりどこかにあるはずで、当時EX-100で遊んだ私としては、やはり比較をしないわけにはいきません。
 比較は当時購入したEX-100、および最近手に入れたデッドストックのEX-15、そして今回復刻されたEX-150で行いました。


パッケージ

   

 左は、当時発売のEX-15のもの、右は復刻版のEX-150です。
 

 復刻版の裏側です。オリジナルは発泡スチロールなので、なにも記載がありません。
 

 箱の大きさや基本的なデザインは同様です。復刻版という文字の有無以外に、追加パーツで実験回路が増えるという記述の有無がわかりますね。
 で、箱を開けてみます。

   
 左は当時のEX-15です。箱は発泡スチロールです。一方右は復刻版EX-150です。今時の製品らしく、ボール紙で作られています。

 当時のパッケージは発泡スチロールで作られているわけですが、イヤホンやマイクなどが収まるスペースが用意されているのが、いかにも高級なおもちゃという感じがしますね。一方復刻版の方は、付属品が一緒にビニル袋にまとめられ、ボール紙の端の隙間に押し込まれています。また、本体の置き方も縦横が変わっています。


本体


  
 左はオリジナルのEX-100です。オプションのカバーパーツがついています。メーターカバーは私が子供の頃にはずしてしまい、今はなくしてしまっています。
 右は復刻版のEX-150。ぱっと見ると違いが解りませんが・・・

 大きさやデザインにはまったく変わりがないため、ぱっとみると両者に違いは見つかりません。しかし、写真をお見せできないのですが、メーターのデザインも変わっていたり、本体の文字が白から銀色に変わっていたり、また表面のざらざら感が復刻版の方が荒かったりと、微妙な違いはあります。また、ICアンプは復刻版では取り外せません。


操作つまみ


 
左はEX-100のつまみ類、右はEX-150のつまみ類のアップ。

 これをみればよくわかるのですが、復刻版は文字が銀色になってますし、ボリュームつまみの中心のねじが無くなっています。電源スイッチのねじもありませんし、バリコンのねじの色は復刻版が黒くなっています。


ブロックのデザイン


  

 左はEX-15のトランジスタとダイオードのブロック、右はEX-150のトランジスタとダイオードのブロックです。

 両者を比べてみると、トランジスタとダイオードのデザインにちょっとした違いがあります。私の印象では、復刻版の方が下品です。コンデンサの文字は復刻版の方が小さくスマートですが、逆に文字は大きい方が視認性が高いので、復刻版は見にくくなったと感じます。
 ところで、EX-15付属のパーツ価格表には、トランジスタは2SC372と2SC945と記載があります。しかし、EX-15およびEX-100ではそれぞれ2SC536と2SC828が使われていました。
 復刻版では2SC1815と2SC945のようなのですが、2SC372の後継が2SC1815という位置づけでいずれも東芝製、2SC945は日本電気、2SC828は松下、2SC536は三洋と、これら全てが互換品として扱われた定番でした。基本性能はどれも殆ど同じ、違いは2SC1815にhFEの大きな物が存在していたということや、価格の違いが主な物で、そのまま差し替え可能だというのが常識です。
 今回、そのままの差し替えでは動作しない回路があったということが関係者の話で出てきていますが、つまるところそういうわずかな違いで動かなくなってしまうようなシビアな回路が作られていたんですね。


内部


 

 左はEX-100の内部、右はEX-150の内部です。

 さあ、ここには非常に大きな違いがありますね。まず、電池の位置。オリジナルが右下にあるのに対し、復刻版は左上です。オリジナルでは丁度ICアンプが存在した位置です。
 オリジナルでは電池があった場所には、アンテナコイルが存在します。このようなバーアンテナの場合、向きで感度が変わりますが、オリジナルと復刻版では90度向きが違っていますので、随分指向性に差があるはずです。
 復刻版では、cds、ICアンプ、ボリューム、そして電源スイッチを1枚の基板にマウントして取り付けてあります。ここにもコストダウンの跡を見ることができます。
 また、復刻版のバリコンは、さすがにスーパーラジオ用のトリマコンデンサ内蔵2連バリコンを使っています。単連のポリバリコンなど、もう入手が困難だったんではないかと思います。


ICアンプ


 EX-100のICアンプの裏側。ICアンプは取り外しが可能です。
 EX-100のICアンプ基板。

 復刻版EX-150のICアンプ基板です。

 ICアンプは、スピーカーを駆動する回路をあらかじめ完成させておき、より高度な回路を少ない部品で実験できるようにと用意されたものです。
 オリジナルでは、ICアンプは非常に高価であったこともあり、EX-60以上でしか標準搭載されませんでしたが、後でアップグレード出来るようにと、この部分をモジュール化して取り外しできるようになっていました。
 復刻版ではアップグレードの必要はなく、前述のようにICアンプ、cds、電源スイッチ、ボリュームを1枚の基板で構成してあります。機能的には全く問題はないのですが、これが理由でボリュームつまみのねじや電源スイッチのねじが復刻版では無くなっていたんですね。
 ちなみに、ICアンプでは、今も昔もLM386が使われています。ただ、以前はナショナルセミコンダクタのオリジナルが使われていましたが、復刻版では台湾メーカーのセカンドソースが使われています。また、cdsですが、当時使われていたものよりもサイズが小さくなっているので、やはり感度に差があるのではないかと思います。
 ところで、オリジナルでは、ICアンプの回路がマニュアルに記載されていましたが、復刻版ではなぜか削除されています。
参考までにあげておきます。
 ICアンプの回路図。EX-100のマニュアルより。
 


クリスタルイヤホン


  

 左はEX-15付属のクリスタルイヤホン。そして右が復刻版の付属のクリスタルイヤホンです。

 クリスタルイヤホンも外形は似せてありますが、耳に入れる部分が透明でかつ外せるようになっているオリジナルに対し、復刻版は一体成形です。差し込みの電極の大きさは復刻版が大きくなっており、使いやすさが向上していますが、同時にAC100Vのコンセントに差し込まれる事故を防ぎたかったのではないでしょうか。
 ところで、昔のクリスタルイヤホンにはロッシェル塩が使われていました。感度はいいんですが吸湿のために寿命が短く、最近のものはクリスタルイヤホンとはいいながらも、実はセラミックイヤホンだったりします。寿命は長いのですが、感度はいまいちです。ゲルマラジオを作ると、両者で差が大きく出てしまいます。


回路図集


 
 左はEX-15およびEX-30の回路図集、右は復刻版EX-150の回路図集です。

 回路図集は、表紙はなにも変わっていません。良くできていると思います。
 中身は「はじめに」が表紙の裏にかかれているオリジナルに対し、復刻では別のページになっていますし、電池の入れ方、動作の確認などの部分は書き換えられています。


実験回路の相違


 

 実験回路の内容は、復刻版でもまったく変更はありませんが、部品、特にトランジスタですが、当時のものと全く同じの特性の物が手に入らなかった関係で、一部で回路そのものは変更を受けています。
 その例の1つがNo.67のワイヤレス水位報知器です。左はオリジナルEX-100、右は復刻版EX-150のものです。
 60cmコードを引き出す部分が異なっているばかりか、復刻版の方が明らかに部品点数が増えています。配線図の右側にかかれたコメントにもちょっとした違いがあったりします。

 

 例をもう1つ。No.82のワイヤレス断線警報機です。先ほどと同じく左はEX-100、右は復刻版EX-150のものです。
 どうもワイヤレス関係の多くが同じような回路変更を受けているようです。他にも、cdsを使ったものも回路の変更があるようです。
 


 おわりに


 別にあら探しをしようと言うことではないのですが、復刻とはいっても、昔の物をただ作り直すだけではなく、どちらかというと同じような製品をもう一度作り直すような気合いの入り方を感じました。
 回路原案は昔と同じですが、それを25年経過した今、中国で生産し、当時よりも安い値段で出すことが出来るようになったのも、やはりそういう開発担当者の熱意によるところが大きいのではないでしょうか。
 とにかく、細かい違いはあるにせよ、この電子ブロックで楽しめることに、違いは全くありません。150回路の実験を通じて、より多くの人が電子工学の楽しさを知ってくれればうれしいんですけどね。



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