私の相棒

 音楽に興味を持ち,自分で作る喜びを知ったことがきっかけで,今までに様々なシンセサイザのオーナーになってきました。この相棒達が,私の創作意欲を満たすのに多大な貢献をしてくれました。

 現在私が現役で使用している機材や,かつて使っていた機材を紹介します。

 なにぶん古い機材ばかりですが,新しい機材に対して,購入意欲がわかないのだから,致し方ありませんね。


 D-70(Roalnd)

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 1989年に登場した,Advanced LA音源シンセサイザです。D-50にしびれた私としては,お金が自由になったら必ず手に入れなければならなかったのが,Dシリーズのフラッグシップモデルでした。

 D-50のそれとは違い,きめが細かく鋭角的になった代わりにありきたりの音になってしまった残念な気持ちも忘れませんが,それ以上にJupiterのストリングスの存在感に,楽器屋の店員さんと「すごいでしょ」「うんうん」というやりとりがあったことも思い出されます。

 MIDIマスターキーボードとしての能力も(操作方法がややこしいのですが)高く,76鍵という広さも便利で,現在も私のマスターとして活躍中です。鍵盤やベンダーなどの補修部品も多数在庫し,おそらく一生使えるんじゃないかと思っています。

 音は,空間に溶けていくようなJupiterのストリングスと,プラモデルのようなシンセブラス,打ち込みの時にはベルやチャイム,ベースやギターなども担当です。


 D-20(Roland)

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 1987年に登場した廉価版のLA音源シンセサイザです。D-50の音とは比べ物にならないくらいにチープな音でしたが,同じクラスのDX21なんかに比べると遙かにいい音がしていましたので,バンドでは重宝がられていました。

 高校2年生の時にアルバイトをして手に入れたものですが,フロッピー付き8トラックのシーケンサーとドラムマシンを内蔵,8チャンネルのマルチティンバー,そしてなによりLA音源ということで,当時これ以外のシンセサイザを全く考えてなかったほどに,自分の思いにぴったりだったという記憶があります。

 音はMT-32とも,D-50とも違う個性的なLA音源で,このシンセサイザを私はかなり深いところまで使い切ったという気がしています。このホームページにも掲載しているLA音源の講座は,このシンセサイザと共に生まれました。

 リアルタイムレコーディングを前提にした内蔵シーケンサーは非常に使いにくく,精度も悪いこと,編集に手間と時間がかかることで,結局データの作成と編集は外部で行う必要がありました。しかし,容量は当時としても大きめで,しかも外部音源をならすことも出来ましたので,ライブの時には信頼性の高いコンパクトなセットを持ち歩くことが出来たのには,重宝しました。

 私にとっては,やはり偉大なシンセサイザで,実家に残してきていますがいずれこちらに持ってこようと考えています。

 音の担当は,D-50ライクなシャリシャリしたベルやヴァイブ,フルートや口笛などの木管楽器系,トリッキーなSEに使っています。


 K1000(Kurzweil)

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 大学生の時に中古を約10万円で購入しました。目的はいい音のするピアノ音源を手に入れたいということでした。K1000はストリングスの生々しさで特に有名でしたが,ピアノの音もなかなか表情が豊かでした。

 ピアノは,ダンパーペダルを使用すると,とにかくたくさんの同時発音数を要求してきます。D-70にピアノを任せると,長いサスティンのストリングスが途切れてしまうので,別のエフェクトをかけることが出来るというメリットも考えて,ピアノだけは音源を独立させておきたかったのです。

 ウェイテッド鍵盤も悪くはなかったのですが,ライブには持っていけない大きさと重さ,その割にはアフタータッチがなく,MIDIマスターキーボードとしての能力も低いということで,鍵盤自身の魅力はあまりありませんでした。

 実家を離れるときに,音源部だけを19インチラックに詰め込み,こちらに持ってきてピアノ音源として活躍していましたが,のちに購入するSG-Rackにその座を譲ることになります。

 そして2000年春,中身も外側もすべて,廃棄処分にしました。


 JX-8P(Roland)

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 D-20の次に手に入れたシンセサイザは,この後に出てくるMatrix-1000ですが,それ以前からずっと欲しいなと思っていたのが,ローランドのJXシリーズでした。

 JXの初代モデル,JX-3Pはローランドで最初のMIDI搭載モデルでしたが,私が欲しかったのはJX-8PかJX-10。結局大学の時にこのJX-8Pを4万円で中古で見つけて,購入しました。その後,内蔵電池の交換と,RAMの容量を倍にする改造を行っています。

 良くも悪くも,DCOのアナログシンセです。同じ時期のPOLY-61なんかにくらべると,ずっと使える音が出ます。傾向としてはMatrix-6やMatrix-1000と同じような使い方の出来るシンセで,特にクロスモジュレーションが強力なところなど,Matrixシリーズのような,有名な個性のあるシンセサイザたちと十分に張り合えるものです。

 これも実家に置いてきていますが,やはり手元に置いておきたいシンセですね。アナログシンセというのは,もちろんVCOモデルが最高なのはわかりますけれども,メンテナンスの関係や持ち運び,あるいは消費電力なんかを考えると,このあたりがアマチュアにはベストなのかも知れません。

 音の担当は,クロスモジュレーションを使ったシンセリードと金属音,アナログならではのシンセブラス,パッド系というところですが,なにぶん6ボイスなので,あまり無茶はききません。


 RD-700(Roland)

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 ローランドのステージピアノです。このリストの中では珍しい,現行機種です。(2002年現在)

 2001年の夏に,機は熟したとばかりに購入しました。ストリングスのカードも一緒に買いました。

 鍵盤は重いとも軽いともつかない,ちょっと独特のタッチがある88鍵です。ステージピアノですから,アフタータッチはないのですが,前の機種のRD-600に比べると音源がXVと同じエンジンに代わって,音色数も多種多様な物が非常にたくさん追加されました。同時発音数も倍増しましたし,イコライザもディジタルになったことなど,それなりに進化しています。

 鍵盤が弾けるようになると,ピアノに憧れるというのは本当のようで,私のようにピアノを習ったことがなく,その裏返しでピアノに敵意さえ覚えていた人間でも,いつかはピアノとして対面できる機材が欲しいと思うようになりました。ただ,場所が限られていることと,ヘッドフォンを使ってプレイできることがとても重要だったので,どうしてもこういった電子ピアノを選ぶことになります。

 RDというのは,その昔RD-1000という名器があり,タッチの強弱で劇的に音色が変わるSA音源が素晴らしく,多くのプロがスタンダードとしてステージで使っていたわけですが,しばらく途絶えたあと,RD-600でようやく復活したブランドです。RD-600は独自音源のようで,ここ最近のローランドの音源にはない丸さがあったので好印象だったのですが,RD-700はXVのエンジンになったこともあってか,やや薄めの音がします。

 もう1つ,中に入っている今どきの音色や機能のおもしろさは,そこら辺のシンセサイザを越えていますね。オルガンやドラムなど,ローランド臭さが鼻につくのも確かですが,例えばアルペジエータを使ってハウスやテクノを一人でプレイすると,自分にもこういう音楽がプレイできるもんなんだなと,ちょっと勘違いをしてしまいます。

 ところで,この楽器は私が初めて手に入れた,システムプログラムをアップデート出来る機材でした。喜んでアップデートを何度かしましたが,アップデートを行って良くなったことはほとんどなく,むしろ悪くなっていったことの方が深刻な記憶として残っています。現状のv1.07では特に問題はないようなので,しばらくこれで安定してくれればと思っています。


 SH-09(Roland)

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 ローランド中期の1VCOモノシンセです。当時出ていたSH-2等と同じようなデザインと回路を踏襲しながら,スペックを低くして廉価なモデルになっています。

 個人的には,ローランド初のモデルSH-1000からマイクロプロセッサを用いたJupiter-4までを前期(黎明期),そこからJX-10やSuper Jupiterまでを中期(ディジタル制御の時代),D-50から現在までを後期(ディジタル音源の時代)と位置づけています。設計思想,音の傾向,デザイン,操作系,回路など,どうもこういう区切りで考える方が楽なのです。

 SH-09は,この区分けでいくと中期のモデルになります。もちろんディジタル制御などされていませんが,モノフォニックアナログシンセとしてのSHシリーズは,この時期にも昔の回路をそのまま踏襲して存続します。SH-1やSH-2を基本に1VCOとして価格を低く抑え,音を作る楽器であるシンセサイザのすそ野を広げました。1VCOでは音が薄くなるので,このVCOから矩形波を作るサブオシレータと重ね合わせて,音を少し厚くできました。このサブオシレータ,オクターブ低い音を作ることも出来たので,それなりの太さがあります。

 この楽器は友人に1万円で10年ほど前に譲ってもらいました。当時の私にとって,VCOという発振器とモノフォニックシンセ特有のレガート奏法は未知の領域でしたから,とても勉強になりました。

 当然MIDIはありませんし,ライブで一度ソロ用に使ったことがあるくらいで出番は非常に少ないのですが,VCO独特の不安定さと,リアルタイムで変化するスライダーの感覚は,まさにアナログシンセの真骨頂です。


 Matrix1000(Oberheim)

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 D-20の後に購入した,アナログ音源です。私にとっては2つ目のシンセサイザになります。

 D-20を使っていて最も不満だったことは,特にストリングスやブラスで,他の楽器に埋もれてしまうことでした。

 埋もれまいとして音を大きくすると,耳障りでうるさいだけ。これがデジタルの限界か,アナログが便利がられているのは,実はこういうところでなんだなと思ったものです。

 そうとわかれば,アナログ音源を手に入れたくなるもの。最初はローランドのJX-8PやJX-10を考えていましたが,ある知り合いが所有するものを安く譲ってもらう話が出てきたので,購入しました。

 当時からオーバーハイムは大好きで,XpanderやMatrix12には強烈な印象がありましたから,Matrixの名前を冠したモデルを,40000円ほどで譲ってもらえたというのは,非常にラッキーだったと思います。

 1000音色入っていますが,やはり使い物になる音はわずかしかなく,かといってエディターがないので困っていましたが,結局使う音が2つに絞り込まれ,またそれが定番になってくると,その音が欲しいと言うだけで必要不可欠な存在になるものです。今はエディターを持っていますが,あまり使うことはありません。

 実は,ちょっと前にシステムROMが壊れまして,電源投入後数分でハングアップしてしまうというトラブルに見舞われ,一時はその生命も危ぶまれましたが,ROMを生きているうちにさっとコピーして,現在は元気に大役を務めてくれています。

 異論はあるでしょうが,このシンセには,ヤマハのR100というリバーブが一番似合っていると思います。音の担当は,とにかく空間系のエフェクトをたっぷりかけた,シンセパッドです。


 Vintage Keys(E-mu)

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 アナログの名機は,高価ですし維持も大変。アマチュアが趣味で手に入れるような物ではないと当時の私も思っていましたが,そんな気持ちを見透かすように現れたのが,このVintage Keysです。

 当時の私は,もちろんアナログの音も欲しかったのですが,それ以上にハモンドオルガンの音が必要でした。ちょうど,ハードロックのバンドを始めたところで,そこで不可欠なB-3とレスリーの音を,なんとしても手に入れなければならなかったのです。

 確か初期型を,20万円程度で購入しました。その後,6万円ほどでVintage Keys Plusへのアップグレードキットを購入し,現在はPlus仕様で使っています。

 このVintage Keysも,今きけば大したことのない音ではありますが,さすがに存在感のある音が出てくれたお陰で,マーシャルのアンプから飛び出すハードなギターと十分に戦うことが出来ました。

 もちろんシンセリード,電気ピアノと,随分活躍してくれてますし,音を聞いて曲を発想できるシンセサイザは,私の持っている中ではこれくらいです。

 これも良くも悪くもE-muで,大変に癖のある音がします。どんなシチュエーションにも使えるという国産機なら当たり前の器用さは全然ないのですが,ここ一番に見せる太さと存在感は,圧倒的ですらあります。使い方を選びますが,これほど心強い味方はいません。

 担当は,まずはオルガン。他にローズやCP-70などの電気ピアノと,Moogなどのシンセリード,メロトロンを使います。パッドには使えません。それもVintage Keysの個性です。 


 SG-Rack(KORG)

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 最も最近購入したモジュールです。今年の始めに中古で4万円でしたので,割に安い買い物でした。

 数年前,ローランドがRD-600というステージピアノで名門RDを復活させたのですが,コルグも負けじと,同じくビッグネームであるSGを復活させました。

 そのころの私は,ピアノ音源としてのK1000にそろそろ限界を感じていて,ちょうど楽器屋さんで試しにRD-600を弾いた時に,指先から鍵盤に,意識が抵抗なく流れていく感覚にすっかりうれしくなって,RD-600を購入するつもりでいました。

 問題は置き場所。手に入れれば楽しいことはわかっていても,現在の住みかでは大きな物は簡単には買えません。一方でピアノ音源に対する欲求が日増しに強くなる中,たまたま見つけた出物が,このSG-Rackでした。

 コルグらしい,どんなシーンにも使える癖のないクリアな音。ピアノに特化した音源らしく,メモリもふんだんに使っています。ペダルを踏んでも音が切れない64ボイス,ピアノの胴鳴りまでシミュレートするその音には,しばらく病みつきになりました。

 しかし,すぐに飽きてしまいました。もちろん,ピアノ音源として,これ以上を望むのは酷な話ではあると思います。ただ,音にメリハリがなく,素直すぎてしまうのですね。このあたり,数年前に購入して未だに飽きがこないVintage Keysと,対照的だなと思ったりします。

 担当は,当然ピアノです。意外にローズやFM音源のエレピにも重宝します。このくらいの音のピアノモジュールがこの価格というのは,やはりメモリの高容量化と低価格化が大きいのでしょう。ダイナミクスも思った以上に自在に操れ,このクラスでは一番のおすすめピアノモジュールです。

 ところで,RD-700を購入したこともあって,このモジュールは現在の私のシステムからは外れています。ただ,スタジオの練習の時には持っていくつもりがありますし,シンセブラスなどのコルグらしい音には不可欠なものなので,しばらくは持っていようと思います。


 D4(ALESIS)

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 D-20,D-70の弱さは,太く存在感のあるパッドとストリングス,オルガンとピアノ,そしてドラムでした。ドラムのテコ入れに,9800円で見つけたAKAIのXE8をしばらく使っていたのですが,このXE8,音はいいのですがエフェクトを外でかけないと使えないので,ドラムの音を出すためにミキサー1台とリバーブ2台を専用にアサインしていました。

 しかし,セッティングに時間はかかるわ,ライブに持ち歩けないわ,高価なリバーブをけちっても2台も使われてしまうわで,なんとかしたかったのです。

 実家を離れるときにXE8は処分しましたが,代わりのドラムとして評判のよかったD4を購入しました。これも確か中古で4万円ほどだったと思います。

 まず,本当に楽になりました。それでいて評判通りの音がします。日本製のようにすぐに飽きてしまうような優等生の音でもなく,でもいろいろ使える器用さも持っているという音源なので,重宝していました。

 しかし,やはり音のバリエーションが少ないことと,プロでの使用実績も多いせいで,普段から耳にしていることが多いためでしょう,なんか,個性的な感じがしません。

 XE8は手間もかかりましたが,そのころの録音を聴いてみるたび,XE8の良さを再認識することになっています。

 ただ,ドラム音源は,はっきりと各社で個性が分かれますので,ヤマハのRXシリーズやローランドのRシリーズのような音がいまいち好きになれない私にとって,これが最善であることは言うまでもありません。

 担当は,当然ドラムです。


 A-880(Roland)

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 増える音源に対して,オーディオ信号はミキサーを追加することでどうにか対処できましたが,MIDI信号の取り回しにはいつも頭を痛めてしまっていました。問題は増える音源を管理できなくなること,MIDI信号を吐き出すデバイスが急増し,MIDIケーブルのパッチをその都度行わねばならなかったこと,そしてTHRU端子を用いた場合のMIDI信号の遅れが無視できなくなってきたことでした。

 そこで,定番のA-880を導入しました。これ以外のMIDIパッチャーは目にすることがないのではないかと思うほどにメジャーな機器ではありますが,安価で十分な性能を持っています。

 パッチを記憶しておき,プログラムチェンジでそのパッチをすぐに呼び出すことも可能で,こういう機能はライブでは特に役に立ちます。MIDIの入出力のうち2つはフロントパネルに出ているというのも,なかなか便利でよくできています。


 XE8(KAWAI)

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 まだ実家にいた頃ですが,D-70とMatrix1000という構成では,ドラムの音に関していろいろ問題が出てきます。1つは音そのものの問題。D-70の内蔵ドラム音源は,音質的には悪くないですが癖が強く,なかなか思い通りの音が出ません。もう1つは同時発音数の問題。当時D-70はピアノ音源も兼ねていましたから,MIDIチャンネルを10にしてあったドラムセクションまで発音数が行き渡らず,音が途切れたり発音タイミングが大きくずれたりと,大変でした。

 そこで必然的に外部音源を探すことになるのですが,当時欲しかったALESISのD4はまだ高価で,ちょっと買うお金がありません。そこで中古楽器店をまわって9800円で手に入れたのがこのXE8でした。

 XE8は原始的なプレイバックサンプラーで,収録されている音もとても素直なのですが,当然エフェクトもなく,8パラアウトになっています。ここに私は8chのミキサーとエフェクタ2台を投入して,ドラムセクションを作ったのでした。

 ただ,仕様なのかバグなのか,あるいは故障だったのかわかりませんが,スネアの音で,最初の一発だけ,アタックが出てきません。2発目からは「バァーン」と出てくるのですが・・・

 当時は妥協して使っていたのですが,実家を離れる際に処分,こちらにきてからやっとD4を手に入れました。

 D4に切り替えてからXE8が非常にいいものであったことを感じます。

 過去の作品をきいてみると,XE8がなかなかいい存在感を出しています。せめて音だけでも録音しておけばよかったなと,ちょっと残念だったりします。

 今にして思えば,音の個性もそうですけど,スネアやタム,ハイハットなど個別にエフェクト,レベル,パンをさくっとミキサーで調整できたわけで,こうやって空間を組み立てる楽しさを知ったのはXE8のお陰かなと,思ったりします。


 QX5(YAMAHA)

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 D-20の内蔵シーケンサーに限界を感じ,その年の冬に購入したシーケンサーです。16文字×2行のバンドエイドのような液晶画面と,わずかな数の小さなキーで,すべての操作がストレスなく出来ました。

 さすがに専用シーケンサーだけあって,編集もきっちり出来るし,ステップ入力もちゃんと出来る。クォンタイズもビシッと決まるし,なにより発音のずれがない。D-20の内蔵シーケンサーに比べれば,夢のようでした。これも,確か30000円か何かで,近所の楽器屋の処分品を買った記憶があります。

 この後出たQX5FDと違って,シーケンスデータを保存する方法がカセットテープだったので,これには困ったのですが,QX5はデータの作成用でしたから,最終的にはD-20の内蔵シーケンサーにデータを移し,そこでフロッピーに保存していました。

 その後,QX5はPC-9801+レコンポーザ,Macintosh+Performerという具合に,データ作成用のシーケンサーとしての役割をパソコンに譲っていくのですが,結局ライブに持ち歩けて,セットアップが素早く簡単で,しかも信頼性が高い専用シーケンサーの代わりになる物はなく,打ち込みのライブになると今でも出番が回ってきます。

 現場でさくっとデータの修正が出来るというのも魅力的で,そういう意味では今でも現役,頼りになる機材の1つです。


 PowerMacintosh 7600(Apple Computer)

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 現在の主力シーケンサーが,このMacintoshです。

 QX5のあと,PC-98RL+レコンポーザの時代がしばらくありましたが,リアルタイム入力をする私にとってはちょっとなじめない物がありました。そこで,評判のいいMac+Performerを使ってみる気になったのでした。

 最初のMacはSEでした。音楽にしか使わなかったのでこれでも十分でしたが,徐々に他のこともMacでするようになって,SE/30,Centris650と,マシンを乗り換えていきました。

 このPowerMacintosh7600は4代目にあたるマシンで,PowerMacG3が出た直後に購入しました。G3は20万円を超えましたし,安い物はビデオ入力もない,SCSI信奉者の私にとって内蔵HDDがIDEというのはとても許せないものだったので,あえて7600を探して購入しました。

 しかし,速度の差は歴然。でもこの7600にいろいろ手をかけてやるのも,また楽しい物です。

 まず,プロセッサですが,MAXPowrG3の366/183を400MHzにオーバークロック。メモリは現在228MB,VRAMは4MBで,PCIに刺さったUltraSCSIカードから,9.3GB・7200rpmのHDDと40倍速CD-ROMに接続。PCIには先のUltraSCSIカードに加えてAudioMediaIIIとUSBカードが刺さり,USBにはPCカードリーダとジョイパッドがつながります。

 そう考えると,もうこのマシンに投資することはほとんどないと思います。強いて上げればメモリですが,それもこのマシン用のメモリは高価ですから,このあたりで終わりでしょう。

 バスクロック50MHzの古い設計のマシンですが,速度的にはまだまだ大丈夫。しばらくはメインマシンとして働いてくれると思います。

 (その後)MacOS Xが2001年3月末にリリースされたことから,環境を大幅に見直しました。買い換えも考えましたが,意外にそれなりの速度で動くことと,MacOS Xを安定して動かせるようになるまで随分苦労したので愛着もわいてきて,かなり追加投資しました。プロセッサはG3/500MHzに,メインメモリは384M,HDDはATA-66のカードを介してIDEの40GBと80GBを内蔵し,iPodとCD-RのためにIEEE1394カードをPCIにさし込んでいます。これでなんとか,MacOS Xをデフォルト起動のOSとして毎日過ごせるようになりました。

 USB,ATA,IEEE1394でPCIは埋まってしまいましたので,UltraSCSIのカードはMacOS Xのサポートがないことをきっかけに外し,AudioMediaIIIもUSBからSPDIFで音を取り込めるローランドのUA-1Dの導入で不要になりました。

 MacOS Xでは,古いATIのグラフィックアクセラレータがきかないので,初期のPowerMacG3でMacOS Xを動かしたくらいの速度は十分出ています。これで今は困っていませんが,もちろんG4-1GHzの速度には感動していて,次に買い換えることがあるとすれば,デスクトップのデザインが変わった時だと思っています。


 PC-98RL(NEC)

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 私がMacintoshを導入するまで,音楽用はもちろん,あらゆる処理をこなしてくれていたのがこのマシンです。98シリーズとしては9801XL^2,9801RA2に次ぐ,3番目の386マシンであり,初の20MHz駆動マシンでした。

 ハイレゾモードを搭載し,1120×512ドットと24ドットテキストフォントを持つ,いわゆるハイレゾ機でしたが,ノーマルモードに切り替えれば9801シリーズのソフトとハードが完全に使えました。

 さすがに元値が100万円のマシンだけあって,無理のない余裕のある設計で故障知らず,非常に安定していた頼りがいのあるマシンでした。

 当時はこのマシンにMPU-PC98とレコンポーザでMIDIシステムの中核を担ってくれていましたが,徐々にMacintoshに仕事が移行していったことはMacintoshのところで書いたとおりです。

 CPUは386の20MHzでしたが,IBMの486(ブルーライトニングというやつですね)に換装し,80MHzで動作していました。16KBの1次キャッシュのお陰で,本家インテルの486DX2-66くらいの速度は出ていたので,Windows3.1時代は問題ありませんでしたが,昔の9801シリーズには13.6MBのメモリ制限があり,結局これが原因で全く使えないマシンになってしまいました。

 私が大学生の頃はPC-UNIXも入っていました。一応486でしたし,メモリも9.6MB,ウィンドウアクセラレータ(カノープスのPW801+です)でX-Windowもそこそこの速さでした。

 ところが,もう使うことが全くなくなりましたので,2000年の春に処分しました。今思うと惜しい気もしますが,なにせ大きなものだったので,やむを得ません。


 R100(YAMAHA)

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 私が初めて買ったデジタルリバーブです。この種の物では当時破格の4万円ほどではなかったかと思います。当然モノラルですし,12ビットなんて今となってはカスも同然なんですが,私はとてもお気に入りです。

 高校の頃は,これを使って様々なSEを作ったり,亡霊や宇宙人ののようなケロケロ声を作るエフェクターとして活躍してもらいましたが,メインとしてはやはり,Matrix-1000専属のエフェクターです。

 ヤマハのリバーブ全体にいえることではありますが,太さはないかわりに,繊細で,まるで小さな川にきれいな水がさらさらと流れる感覚がします。安物ながらこのR100にもその傾向があって,パラメータ次第ではとてもきれいな音が出てくれます。

 Matrix-1000は主にパッド系を担当するのですが,この音とR100のアーリーリフレクションは私にとってベストな組み合わせで,10年近くもこのセットで現役です。以前,SE-50との組み合わせを試しましたが,どうもイメージ通りにならないのでR100を外せないという結論になりました。

 デジタルリバーブというのは,メーカーによっても,機種によっても,そのアルゴリズムが大きく異なりますから,高価なリバーブを1台買うよりも,安価なリバーブを複数買う方が,最後にミックスダウンするときに,より幅の広い,大きな空間を作り出すことが出来ます。時間のずれと周波数のずれによって,音に厚みが増したり広がる感覚を強調できますが,あれと同じ事を反射音でやっても非常に大きな効果があるということですね。リバーブは数,これは私のノウハウです。


 SE-50(BOSS)

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 BOSSブランドのマルチエフェクタです。ステレオ仕様で多彩なエフェクトが高品位にかかる割には安価でした。XE8のために1台,K1000やVintage Keysのために1台と,合計2台所有していますが,今は1つ余っています。

 後に出たSE-70に比べてもそうですが,SE-50は非常にノイズが多く,レコーディングには不向きです。うまくパラメータを選択しないと,ノイズに埋もれてしまいます。

 このころのエフェクタは,ようやく新しい世代に変わったところという感じだったのですが,その出始めということもあって,今のエフェクタにはかなわないところがありますね。

 ただ,ステレオですし,便利に使えますので,非常に重要なアイテムの1つです。


 SPIN(VOCE)

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 オルガンにこだわる私の最終兵器がこれ,SPINです。知ってる人は知ってると思いますが,ロータリースピーカのシミュレータです。それもデジタルではなく,完全アナログ。

 VintageKeysは,当時は非常に忠実度の高いオルガンの音を出してくれていましたが,今ひとつ演奏に幅が出ないのは,やはりロータリースピーカと歪み系のエフェクト,そしてドローバーの操作によるパフォーマンスがないことだと思います。

 ドローバーは仕方がないとして(実はドローバーをMIDIのコントロールチェンジにして送るコントローラを自分で作ろうとか思ったんですが計画倒れに終わりました),ロータリースピーカーはなんとしても欲しいと思っていたところ,中古楽器屋で見つけたのが,これでした。

 中をあけてみると,なんということはない,ただただオペアンプを使って位相をぐるぐる回すだけの簡単な回路ですが,それでもそれなりの音が出てきます。アナログですから,太さも失われませんし。

 とはいえ,出番は皆無。VintageKeysは他の音も出しますから,オルガンオンリーの時しか接続できないのです。パラアウトを用いればよいのですが,そうするとそこに別のエフェクトを用意する必要があったりして,あーもう面倒くさい!ってなわけで,今はほとんど使われません。一度くらいはライブで使うことをしないといけないのですが。


 PX2T(KORG)

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 1998年の暮れ,私は突如ギターを始めました。高校生の頃から,アコースティックギターはやってましたが,唐突にエレクトリックギターがやりたくなったのです。手に入れたのはずっと欲しかったG&Lのテレキャスタイプ。

 ギターに必携のエフェクターも手に入れなければならなかったのですが,コンパクトエフェクターをそろえるのは骨が折れるし,かといってマルチエフェクタも高価だったり大きかったりしては買えない。

 そんなことを考えて楽器屋をふらふらしてると,これを見つけました。価格は15000円程だったので,安いマルチエフェクタよりも高価でしたが,ライン入力から入る音とミキシングできたり,音を電波でとばしたりといろいろ面白そうだったことと,TONE WORKSというブランドに負けた形で,買うことにしました。

 いやー,これが面白いんですよ。空間系のクリーンな音から,バシバシに歪んだ音まで,一応きちんと出てきますし,安くて小さい割には音も割に太く,スタジオでならしても違和感はないです。

 コンボタイプ,スタックタイプの胴鳴りのシミュレートも割にいいですし,歪み系の音にはちょっとデジタルを見直しました。ただ,ディレイと空間系が悪いですね,安いからメモリが少ないせいもあると思います。

 おもちゃとしてはこれで十分。個人のレコーディングにもつかえると思います。これで浅めのチューブオーバードライブのシミュレートをかけて,ちょっとブルースを弾いたりしたら,もうたまりません。


 AX1000G(KORG)

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 コルグ・TONE WORKSのマルチエフェクタです。2年ほど前に買ったのを覚えているのですが,ここに書くのを忘れていました。

 PX2Tはとても面白いエフェクタなのですが,スタジオに入ってプレイする時には,ちょっとエフェクトの切り替えが面倒くさかったり,調整がすぐに出来ないという不便さがありました。そこでマルチエフェクタを物色していると,PX2Tほどの価格で手に入るんですよね,それで衝動買いです。

 TONE WORKSは,PX2Tで音の傾向が気に入っていましたから,その上位機種なら間違いなかろうと決めました。使ってみた感じ,音はほぼイメージ通りです。派手でわかりやすい音というより,やや控えめな実用的なエフェクトが多いようです。

 空間系,ディレイの音質も問題なし。このあたりはさすがにメモリをたくさん積んでいるようです。ただ,派手でわかりやすい音,例えばソロ用の深いディレイがかかった音などはプリセットされていないので,自分で作る必要があったりします。

 コンボやスタックのシミュレートも「ああなるほど」と思うものですし,今はこれを練習の時にも使っています。

 おもしろいのは,プリセットのうち60's,70's,80's,90'sという4つでして,これ,その時々の「クセ」を再現したひずみ系のエフェクトなんです。この4つを比べてみると,ギターの音が40年の間に随分と変わってきたんだなと,つくづく考えさせられます。私のお気に入りは70'sです。


 MX-10(BOSS)

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 増えていく音源をうまく処理すること,ライブで持ち歩くラックにすぱっと入ることを考えて調達したミキサです。ステレオだと5台の音源が処理できます。ハーフラックなのでSE-50と組み合わせれば,2つで1Uサイズになりますので非常に便利に持ち歩いていました。

 小さくともなかなか本格的で,電源はACを外部から入れて,整流と安定化は内部で処理するタイプです。

 取り立ててすごいという所はありませんが,ないと困るアイテムです。


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