LA音源はあくまでミュージカルシンセサイザーです。音を合成する装置です。音を作るには、当然音がどんなものなのか熟知しておく必要があります。少々難しい話になりますが、高校の物理や数学を思い出しながら読んでください。
音には3つの要素があるとされています。それは、
音の大きさ ・・・・音量
音の高さ ・・・・音程
音のねいろ ・・・・音色(おんしょくと読んでください)
です。これは我々が一般に使う感覚的な用語ですよね。でも音は実際には空気の振動、正確には疎密波であるわけですから、当然物理的な現象として説明することも出来ます。そうすれば、
音の大きさ ・・・・振幅
音の高さ ・・・・周期(周波数)
音のねいろ ・・・・波形
すこし難しくなってしまいましたね。音は空気の周期的な振動ですから、その疎密を縦軸に、時間を横軸にとってグラフを描くことが出来ます。そのグラフの中で、縦にとった波の幅を振幅、波が横軸と交差する点と点との間隔を周期、波の形を波形といっています。
音色の違いは波形の違い、音程の違いは周期(その逆数が周波数)の違い、というわけです。
^ fig.1 グラフ 振幅 i /l /l /l /l / i / l / l / l / l / i / l / l / l / l / i / l / l / l / l / i/ l/ l/ l/ l/ ------|------------------------------------> 0i !← →! i 周期 i i
音がこの3つの要素から構成されているのだとすれば、逆にこの3つの要素を人工的に作ってやれば音が作れるのではないか?という発想に行き着きますよね。これが、シンセサイザーの理屈です。シンセサイザー(直訳で合成器)は、こういう発想から生まれてきたのです。
振幅や周波数を変えることは、従来の楽器でも可能なことでしたから、電気的に実現することはそんなに難しくないでしょう。でも、波形を変えることは、従来の楽器でも容易なことではなかったことで、これを人工的に処理するにはどうすればいいのか、悩んでしまいますよね。
そこで、こんな考え方を導入します。音にかぎらず、周期的に変化する波形はすべて、あらゆる周期とあらゆる振幅を持つ正弦波の無限級数である。
これは、フーリエという偉い数学者が証明して見せたもので、フーリエ級数と呼ばれています。音に限っていえば、いろんな振幅・周波数の正弦波を無限に足していけば、しまいにはどんな波形でも作ることが出来てしまう、というものです。これは、正弦波(sin(x)ってやつね)の周波数と振幅をコントロールすれば波形、すなわち音色をコントロールできるということなのです。以下に各波形の式の例を示します。
EX.1 矩形波(PSGの音) _-_-_-_-_-_-_ (これが波形) 1 1 1 1 f(x) = sin(x)+ ---sin(3x) + ---sin(5x) + ---sin(7x) ... + ---- sin((2n+1)x) 3 5 7 2n+1 EX.2 のこぎり波 /|/|/|/|/|/|/|/|/| 1 1 1 1 f(x) = sin(x) + ---sin(2x) + ---sin(3x) + ---sin(4x) ... + ---- sin((2n)x) 2 3 4 2n
xはその波形の周期をあらわします。
ここで、1項目のsin(x)を”基本波(ファンダメンタル)”といい、2項目以降を”倍音(ハーモニクス)”といいます。耳に聞こえる音程は基本波の周波数であり、その波形は倍音が作る、といった具合になります。
もし、2項目以降がなかったらどうでしょうか。基本波だけになる、ということは、その音は正弦波そのものになるというわけです。正弦波は、いわゆるサインカーブのことで、時報の「プップップポーン」というのがそれです。これは、裏を返せば、正弦波には全く倍音が含まれていないということになります。
一見すごく難しいように見えますが、よく見るとそんなにたいした物でもないことがわかると思います。上の2つはシンセサイザーの基本波形と呼ばれ、極めて大切なものですから、よく覚えておいてください。また、基本波と倍音は音を合成するときには必ず必要になる知識ですからこれも手堅く押さえておいてください。
矩形波は1,3,5,7・・・倍音が、のこぎり波は1,2,3,4・・・倍音が含まれていると覚えておくといいと思います。
余談ですが、倍音というのは周波数が倍の音のことですよね。周波数が2倍というのは、実は1オクターブ上の音のことなんです。ではオクターブ上の音を重ねていけばよいのかといえば、単にそれだけではのこぎり波になりません。理由は難しくなるのであまり詳しく触れませんが、横軸を横切る点がすべての正弦波で同じところにならないといけないのです。(つまり、位相を考慮しないといけない)もし出来る方は、パソコンで正弦波の合成をシミュレートしてみてください。
第一回目にして、かなり高度な内容になってしまいました。一応これで音についての基礎的な知識はマスターしました。しかし、LA音源の説明までには、もう少し基礎知識が必要になります。次回も基礎編です。ご期待ください。