LA音源講座  「LA音源は突然に」 その10

  LA音源らしい音色の実際

 

 LA音源講座も回を重ねて10回目という事で、今回からは具体的な音色を用意して、それを見ながらLA音源を解説していきます。

 LA音源が最新の音源方式であったころは、このLA音源でどんな音色もカバーしないといけませんでした。LA音源はピアノもあまり得意ではないのですが、MT-32しかないころは文句をいっていることも出来ませんでした。また、他にいい音源がなかったせいで、LA音源で作ったピアノも、当時ではなかなか良く聞こえたことも事実です。しかし、今は違います。CM-64、SC-55など、サンプリング音源を心臓部に持つ、リアルな音を再現するモジュールが標準になってきているのです。こうなればLA音源に明日はない、そう思うほうが自然ですね。

 しかし、LA音源には、LA音源しか出ない音があります。アナログシンセがそうであったように、LA音源もその個性で生き続けることでしょう。LA音源らしい音、今回からはそういった音色を見ていくことにしましょう。

 今回のテーマは、「アナログシンセのストリングス」です。

 まず、下の表を見てください。

+---COMMON-------------------------+
I STRUCTURE 1&2  01    ENV MODE  :NORMAL I
I STRUCTURE 3&4  01    NAME  :JU-STRINGS I
+----------------------------------------+
+------WG----------------------------------------+--LFO-----------+
I     Cors  Fine  KeyF  Bend  W.For  P.Wid  PVSen  I Rate  Dept  M.Sen I
I P1   C4    3     s1    ON    SAW     0      0    I  66    15     0   I
I P2   C4   -3     s1    ON    SAW     0      0    I  64    21     0   I
I P3   C4   -9     s1    ON    SAW     0      0    I  65    25     0   I
I P4   C4    9     s1    ON    SAW     0      0    I  63    25     0   I
+--------------------------------------------------+-------------------+
+------PITCH−ENV-------------------------------------------+
I     Dept  V.Se  T.Ke   T1   T2   T3   T4   L0   L1   L2   SL   EL I
I P1    0     0     0     0    0    0    0    0    0    0    0    0 I
I P2    0     0     0     0    0    0    0    0    0    0    0    0 I
I P3    0     0     0     0    0    0    0    0    0    0    0    0 I
I P4    0     0     0     0    0    0    0    0    0    0    0    0 I
+-------------------------------------------------------------------+
+------TVF-------------------------------------------------------+
I     Freq  Reso  KeyF  B.Po  B.Le  Dept  V.Se  D.Ke  T.Ke          I
I P1   85     0    3/4   <A1    0    95     0     0     0           I
I P2   85     0    3/4   <A1    0    95     0     0     0           I
I P3   85    10    3/4   <A1    0    95     0     0     0           I
I P4   85    10    3/4   <A1    0    95     0     0     0           I
+-------------------------------------------------------------------+
+------TVF−ENV-----------------------------------------------+
I       T1    T2    T3    T4    T5    L1    L2    L3    LS          I
I P1     3   100   100    90    75    70    60    60    57          I
I P2     3   100   100    90    75    70    60    60    57          I
I P3     3   100   100    90    75    70    60    60    57          I
I P4     3   100   100    90    75    70    60    60    57          I
+-------------------------------------------------------------------+
+------TVA-------------------------------------------------------+
I     Leve  V.Se  B.P1  B.L1  ETke  TVFo  B.P2  B.L2                I
I P1   100   26    <A1    0     1     0    <A1    0                 I
I P2   100   26    <A1    0     1     0    <A1    0                 I
I P3    80   26    <A1    0     1     0    <A1    0                 I
I P4    80   26    <A1    0     1     0    <A1    0                 I
+-------------------------------------------------------------------+
+------TVA−ENV-----------------------------------------------+
I       T1    T2    T3    T4    T5    L1    L2    L3    LS          I
I P1     6    34    75    75    73    70   100    97    92          I
I P2     6    34    75    74    73    70   100    97    92          I
I P3     6    34    75    74    73    70   100    97    92          I
I P4     6    34    75    74    73    70   100    97    92          I
+-------------------------------------------------------------------+

 名前を見て気付かれた方もいるでしょうが、この音はJUNOを意識したシンセサイザーストリングスです。かなり派手目で、ノイジーな音にしてあります。白玉として使える音色ではないのですが、ちょっとしたストリングスの旋律を奏でるのにはいいのではないでしょうか。

 さて、LA音源はアナログ音源に近いことをいままでかなり書いてきました。MTやD-10ののこぎり波は、低域のパワーこそないものの、くせのない、素直なのこぎり波です。これでシンセストリングスを作るのですから、厚みは出ませんが、ぬけのよい、透明感のある音が出ます。

 こういったアナログのシミュレートの時に注意することは、出来るだけ多くのパーシャルり萪沢に使うことです。ただでさえ貧相な音が、ますます貧相になります。ストリングスの場合にはリリースも長いので同時発音数という点では最悪ですが、やむをえません。また、ピッチファインを各パーシャル間でやや大き目にずらし、さらに各パーシャル間でLFOのレイトとデプスを変えて、VCOを真似することも重要です。アナログシンセは、複雑なバイアスポイントやキーフォローを持っていないことが多いので、LA音源でもその辺のパラメータに気を使う必要はありません。

 アナログシンセのシミュレートではなく、例えばブラスやストリングスのアンサンブルを作るときには、各パーシャル間でTVF、TVAのエンベロープをずらして設定することも効果的です。各パーシャル間で、音色や音量の変化が異なってくるので、人数感が出てきます。しかし、今回はアナログシンセサイザーが対象です。複数のVCOの出力に対して、1つのVCF、1つのVCAですから、各パーシャルでTVFやTVAのエンベロープをずらして設定するのは意味のないことと言えます。

 ストリングスのエンベロープの設定については以前からいろんな雑誌で紹介されてきましたが、私がお薦めするのは、アタックタイムは短めに、アタックレベルはやや小さ目に、です。ストリングスの特徴はなによりスローアタックであることなのですが、これだとゆったりした感じは出せても、速いフレーズを弾くことは出来ません。もちろん、かけ上りを弾くには違う音色を用意しないといけなくなるのですが、普通のフレーズくらいは音色を変えることなく弾きたいものです。

 LA音源は、アナログシンセよりも多くのパラメータを持つエンベロープジェネレータを持っています。これを生かして、アタックをゆっくり変化させるではなく、やや小さ目に設定したアタックポイントから最大に設定した次のポイントまでをゆっくり変化させるようにします。こうすることで速いフレーズでも音がしっかり出て、かつストリングスの優雅さを兼ね備えることが出来るのです。ベロシティーが速いときにはエンベロープの変化を早めるように設定することで、さらに大きな表現力を味方に出来ます。

 TVFのカットオフとレゾナンスについてですが、これは好みにあわせて適当に設定してください。TVFエンベロープのデプスとも関係がありますから、そこも注意して変更してください。カットオフをやや下げてレゾナンスを上げれば、生のストリングスに近い音が出来ますし、エンベロープのリリースを長くしてカットオフを低くし、レゾナンスを0にすれば、白玉でも十分に演奏できる大変ソフトな音が出てきます。レゾナンスを高く設定すると音がやせてしまうことは以前にも書きました。包容力のある音の場合には、あまり高く設定しないことが大切です。クセのある音が必要になるときでも、4つのパーシャルの内、2つはレゾナンスを0にしておいた方がいいと思います。

 TVFのエンベロープについても、立ち上がりは丸く、徐々に明るい音になっていくように設定すれば、かなり躍動感のあるストリングスが出来ます。工夫次第ですね。

 本当はJupiterの音を作りたいのですが、さすがに安いシンセでは無理、そこで低価格シンセの雄、Junoの音を出してみました。でも、本物のJunoの方がもっといい音がしますね(当然!)。LA音源ではこのあたりが限界でしょうか。デジタル音源は音を重ねて分厚くすることは出来ても、元々波形に豊かな低域の倍音を持っていませんから、その厚みにはやっぱり無理があるんですね。

 この音はライブで使うにはちょっと苦しいものがあります。アナログ音源を持っている人は、この音とのユニゾンで鳴らしてみるのがいいと思います。アナログのつかみどころのない暖かい音に、ソリッドで、しっかりしたLA音源の音を重ねれば、芯があり、しかも他の楽器にうずもれてしまわない理想的なストリングスが出来ます。お試しあれ!

 

 さて、次回はLA音源の本領発揮、ハイブリッドであることを生かした、ベル/チャイム系の音に挑戦します。お楽しみに!

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