短期集中講座 「LA音源は突然に」 第4講

  4.LA音源概論  〜世界よ、この音が、この表現力がローランドだ〜

 今回から、いよいよLA音源をテーマにします。今回は、LA音源の特長を解説していきます。

 LA音源の特長として、線形演算で音を合成すること、PCMとの合成が可能であること、アナログシンセサイザーを意識した音源であることがあげられます。では、ひとつひとつ解説していきましょう。

 まず、線形演算についてですが、これはFM音源しかなかった時代の、デジタルシンセサイザー欠点を打破することが目的でした。ご存じの方もおられるでしょうが、FM音源は非線形の音源です。非線形であることが時に有利になることもありますが、音色を作成する際には、線形の世界に住む人間の感覚と大きく隔たれているため、感覚的に理解しにくいという欠点がでてきます。皆さんの中にもFM音源は難しいと思っている方がおられると思いますが、これもFM音源が非線形演算であることが理由の一つにあげられるのではないかと思います。

 線形だの非線形だのと難しい言葉が並んでしまいましたが、平たく言えばある数値が10変化した際にそれにともなって変化する数値がやっぱり10であることを線形と言います。FM音源の時を思いだしてください。アウトプットレベルのパラメータの変化の割合と実際の音量の変化は、0から1へ変化させるときと、126から127へ変化させるときでかなり違っていたはずです。(126から127へ変化させるときには大変大きく変化します。)これは、人間の感覚と明らかに違っています。FM音源ではこれに限らず音源全体が非線形で出来ています。これが人間にとって大変理解しにくいものになるということなのです。

 また、音の発生そのものが非線形であるため、そこに出来る音も非線形の演算によって作られる音しか発生できません。アメリカのある大学教授が考案したFM理論によれば、すべての音が合成できるという事になってはいるのですが、実際にはそうはいきません。これで作られる音は、FM音源の特長でもあり、個性ということになるのですが、時に欠点にもなりうるものです。

 LA音源では線形演算を採用し、人間の感覚にそった音作りを可能にしています。LA音源が予測・解析に優れているというのはこういった理由もあるのです。

 次にPCMとの合成についてです。LA音源はアナログ音源のデジタルシミュレーション版であると考えることも出来るのですが、それだと、アナログ音源に課せられた限界を越えることが出来ません。アナログ音源の限界については前回お話ししました。倍音を削除していって音を合成するので、新しい倍音を作ることが出来ないというものでした。LA音源では分かりやすく、予測・解析に優れているアナログ音源をシミュレートしながら、新しい倍音を持たせるために、様々な倍音構成を持つ音をPCMデータとして持ち、これをシンセサイザーで作った音と合成して音色を作成できるのです。

 シンセサイザーで再現できない音をPCMで持つことが出来ると言うことで、複雑で書く楽器に特有の多くの倍音を持つアタック部をPCMで、残りの比較的再現が簡単な持続音をシンセサイザーで作るという方法で、大変リアルな音を合成できることも可能になりました。1つのパーシャルはシンセサイザーになるのかPCM片を発生するのかを切り替えることができます。このパーシャルを一つの音色で最大で4つまで(機種によっては2つまで)使用できます。

 MT/CMはPCMの持つものにあまりいいものがないように思う(とはいえ、基本は押さえてある。要は工夫次第!)のですが、Dシリーズについてはかなり汎用性の高い、応用のきくPCM片が多数用意されています。LA音源が作った世界の一つに、キラキラ、シャリシャリとした音がありますが、これもPCM片とシンセサイザーが合理的に作った音色です。

 アナログシンセサイザーを意識した音源であるという事については特に説明が必要ではないでしょうが、それだけ従来のアナログシンセサイザーが、わかりやすく、予測・解析に優れていたという事でしょうか。LA音源のアナログに対するこだわりは、フィルターの”レゾナンス”というパラメータにあらわれています。レゾナンスは、後で説明しますが、シンセサイザー独特のクセのある音を作るのに有効です。(例えばファンキーなシンセベースなどの、ミョンミョンといった音です。)デジタル音源でこのパラメータを持ったのはLA音源が最初です。LA音源を目標にしたと思われるKORGのM1にも、このパラメータはなく、これに相当するものがようやく01/Wで用意されました。アナログ音源がはやっていますが、LA音源はある程度アナログ音源の代用になるのです。

 さて、次回はやっとLA音源の音色パラメータについて説明を始めます。内容そのものはそんなに難しくはならないと思いますが、なにせ音の出るものの事です。実際に音を出しながら読んでいただかないと、なんのことやらさっぱり分からないと思います。次回までに、なんらかの音色エディターを御用意ください。

   御意見、御感想を、お待ちしています。

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