LA音源講座  「LA音源は突然に」  その6

 今回はWGの解説をします。そのまえに、前回の復習をします。

 LA音源は、WG、TVF、TVAからなるパーシャルが32基集まった音源です。1つのトーンに最大4つまでのパーシャルを使うことが出来ます。各パーシャルをPCMにするかSYNTHにするかなどを決定するのがストラクチャーです。

 1つのトーンに使用するパーシャルの数によって同時発音数が制限されます。パーシャルは全部で32基しかないのですから、パーシャル数の合計が32を超える音は発音されません。

 各パーシャルはPCMかSYNTHかをストラクチャーによって選択できますが、PCMではTVFを使用することが出来ません。PCM片はTVFによる倍音の加工が不可能であるという事です。

 さて、いよいよ始めましょうか。

 なお、各パラメータの名称などは、カモンミュージックのRCM-PC98Ver2.3に準じています。皆さんがお使いのエディターとは多少違っているかもしれません。御了承ください。

 WGは、パーシャルの基礎となる音源波形を出力します。以下に各パラメータの説明を書いておきます。

  1.WG Cors(ピッチ コース)

 そのパーシャルの音程を決定します。ノート情報の内C4の音を基準ピッチといいますが、このC4のノート情報を受けたときにでる音程をここで決定します。1つ目のパーシャルでC4を、2つ目のパーシャルでC5を指定すると、オクターブ重ねることが出来ますね。C4とG4だと5度違う音を重ねることが出来ます。

 また、PCMの中には、元々キーのずれた音が出ることもあり、(つまり、C4をだそうとしても実際にはF#4が出てしまう)これらの補正にも使われます。

  2.WG Fine(ピッチ ファイン)

 FM音源ではディチューンに相当します。各基準ピッチの微調整を行うものです。FM音源のように可変範囲の小さいものではなく、-50セントから+50セントまで設定できます。

 セント、耳慣れない言葉ですね。我々が普段使っているのが平均律という調律法です。これは1オクターブを12等分するものでしたが、さらにこの12等分された間を100等分したものが1セントです。セントは、パーセントのセントの事ですね。英語では、100分の1の事をセントといいます。1ドルの100分の1は1セントでしたね。

  3.WG Keyf(キーフォロー)

 MIDIのノート情報でC4からC5の1オクターブ変化する際に、実際に発音されるピッチがどう変化するかを指定するものです。1で普段我々が使っている楽器と同じ様に、ノート情報の1オクターブの変化で実際のピッチの変化が1オクターブになります。

 ここには以下の値を設定できます。

 s2,s1,2,3/2,5/4,1,7/8,3/4,5/8,1/2,3/8,1/4,1/8,0,-1/4,-1/2,-1

 例えば、-1指定すると、段々音程を上昇させていっても、実際に出る音程は段々下がっていきます。0を指定すると、ノート情報が変化しても、実際に出る音程は全く変化しません。

 s1、s2というのがあります。これがなかなかスグレモノで、1のように音程はオクターブで変化するようになっているのですが、各オクターブ間のピッチを微妙にずらしてくれるのです。s1で1セント、s2で5セント、オクターブより高くなります。

 例えば、A4が440Hzでなっているとしましょう。このパラメータに1を設定するとA5で880Hzが出てきます。しかし、s1だと881Hz、s2だと885Hzが出てくるのです。和音を出したときに、それぞれの音で微妙にピッチが違ってくることで、音に厚みと広がりが出てきます。こんなディチューンがかけれるのも、LA音源ならではですね。

  4.WG Bend(ベンダースイッチ)

 ベンダースイッチです。ピッチベンド情報でピッチを変化させるかどうかを決定します。アナログシンセでもピッチベンドはVCOのお仕事でした。

  5.WG W.For(ウェイブフォーム)

 そのパーシャルがSYNTHの時だけ使用できます。WGが発生させる波形を決定します。SAWでのこぎり波、SQUで矩形波になります。

  6.WG P.Wid(パルス ウィズ)

 これも、SYNTHの時だけです。例えば矩形波で、波形の上の部分と下の部分の長さの比率をデューティー比といいますが、これを変化させるパラメータです。アナログシンセでは%で指定しましたが、LA音源では0から100です。0で50%、上昇させるにしたがって100%に近くなります。(100%にはならない)

      _-_-_-_-_-_-  ... 50%        ___-___-___-___-___-___  ... 25%

 上下の幅が違ってくると、倍音が増えていきます。大変クセのある音になるのですが、右のようなパルス波は、弦楽器の音を作るときにも有効です。

 さて、LA音源の凄いところを紹介しましょう。アナログシンセでは矩形波だけに存在し、のこぎり波では不可能であったこのパルス幅の指定を、LA音源では矩形波、のこぎり波の両方で可能にしています。これはLA音源が、波形の生成を完全に演算によって行っているからです。のこぎり波の場合、50をすぎた辺りから、もうオクターブ低い音が混ざるようになります。オクターブ低い音を重ねて太い音をならすときにはよくつかわれますね。

  7.WG PVSen(パルスウィズ・ベロシティセンシビティー)

 LA音源ではノート情報と同時に送られてくるベロシティーの情報に応じてパルスウィズのパラメータを変化させることが出来ます。これはその感度の設定です。0で全く変化しなくなります。-7から+7で指定します。

  8.LFO Depth(LFOデプス)

 D-50、D-70を除くLA音源ではLFOはWG、つまりピッチにしかかけることが出来ません。したがってLFOの関するパラメータはWGにしかありません。

 このパラメータは、ビブラートの深さを決定します。設定値は0から100です。

  9.LFO Rate(LFO レイト)

 ビブラートの速さを設定します。設定値は0から100です。例えばストリングスのアンサンブルを作るとき、各パーシャルでLFOのデプスとレイトを少しずつ違う値にしておきます。すると、人数感のある、包容力のある音が出るようになります。

  10.LFO M.Se(LFO モジュレーション センシビティー)

 モジュレーション情報によるLFOの深さを設定します。0だとモジュレーション情報を受信してもビブラートはかかりません。

  11.PITCH-ENV Depth(ピッチエンベロープ デプス)

 時間的な変化を付けるものにエンベロープジェネレータがあるのですが、LA音源ではWG、TVF、TVAにそれぞれ1つずつ持っています。

 このパラメータはピッチエンベロープのかかり具合を設定します。設定値は0から10です。

  12.PITCH-ENV V.Se(エンベロープ ベロシティセンシビティ)

 ピッチエンベロープの深さもベロシティーで変化させることが出来ます。設定値は、MT/CMでは0から100、D-10などでは0から3です。

  13.PITCH-ENV T.Ke(エンベロープ タイムキーフォロー)

 ピッチエンベロープの変化の速さをキーナンバーによって変化させることが出来ます。どんな楽器でも、高い音を出すときほどエンベロープの変化は速くなるものです。これはそれをシミュレートするための1つです。設定値は0から4です。

  14.PITCH-ENV Time(エンベロープ タイム)

 エンベロープの設定です。TIME1,TIME2,TIME3,TIME4の各ポイントに達するまでの時間を設定します。LA音源のリニアの凄さは、この当たりでも発揮されますね。

  15.PITCH-ENV Level(エンベロープ レベル)

 Level0,Level1,Level2,Sustain-Level,End-Levelを設定します。グラフが出てくるエディターが多いようなので、具体的な図は省略させていただきます。

 MT/CMはEnd-Levelも設定できるのですが、D-10などのLA音源は、End-Levelは0に固定となっています。同じLA音源でも少し違ってきているのですね。

  16.PCM(PCMウェーブ)

 パーシャルがPCMで設定されているときにだけ有効になるパラメータです。PCMの番号を指定します。

 CM/MTと、D-10,D-20などのLA音源との違いはここにあります。DのPCMは、D-50を受け継ぐ形で、SPECTRUMなど多数の汎用の音が用意されています。しかし、MTではトーン1つに使うパーシャル数を少なくする傾向にあるためか、PCMも汎用性はないが、それだけである程度完成している音が多いように思います。他にもリズム関係の音がDの方には多く入っていたり、アタックの部分だけのサンプリングがDの方が多かったりと、結構違いがあります。

 このあたりは実際に音を聞いて覚えるのが一番です。よく聞いて覚えてください。

 今回は長くなってしまいました。WGはそれだけ重要なセクションです。いじくっておもしろいのは次回説明するTVFですが、LA音源の音を決定するのはWGです。とにかく触って、実際に音を出してください。パラメータを変えてみてください。

 きっと、LA音源の人間への忠実度が、分かっていただけるハズです。

 御意見、ご質問をお待ちしています。次回はTVFについてです。

                      G-SHOES

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