内部を見よう

 さて,問題だらけのFresh Musicですが,保証がきかなくなるのも何のその,早速ばらしてみました。

 中をあけると,比較的小さな基板が出てきました。ガラスエポキシの両面基板です。

 これが表の写真(改造前)です。説明は,私が調べた結果ですので,間違ってるかもしれません。

omote.jpg

 基板のランドは一応金メッキされています。

 どのICも,表面が削り取られているので型名は分かりません。ですが,波形などを簡単に見た限り,たぶんこの構成で間違ってないと思います。

 マイコンはQFPに入っていますが,コンパクトフラッシュからデータを取り込み,DOSファイルシステムでMP3のデータストリームを取り出す部分です。キー操作もここでやってますね。音量調整はこのマイコンで受けたスイッチの情報から,直接D-Aコンバータにシリアルで通信し,調整しているみたいです。

 MP3デコーダは,AKIBA PC Hotline!によると,どうもMPMANと同じ物らしいですね。ということは,若松通商さんで販売されているMP3デコーダチップと同じという事になります。

 ここから,データとビットクロック,チャネルクロックの3つが出力され,D-Aコンバータに入ります。ここのインターフェースがちょっと謎で,一般的な16bitステレオのD-Aコンバータのデータフォーマットとは異なっていました。方チャネルで32個のビットクックが出ています。おかしいですね。ついでにいうと,MP3デコーダチップからは,サンプリング周波数の256倍の周波数も供給されていまして,途中にはちゃんとダンピング抵抗が挿入されていました。

 D-Aコンバータから出たオーディオ信号は,ヘッドフォンアンプに入ります。ヘッドフォンアンプといっても,どうやらただのDual OP-AMPですね。これでゲイン3倍の反転増幅器を組んでいました。ただ,帰還抵抗には並列にコンデンサが入っていたので,反転増幅器と言うよりは1次のLPFを構成していたという方が正しいと思います。ポストフィルタのつもりですね。

 こうして出来上がった信号は,出力のバイパスコンデンサを通してヘッドフォンジャックにいってます。出力にはGNDとの間に100オームの抵抗が入っていて,電源のOFFで発生する「ボン」という音の原因,バイパスコンデンサの電荷を放電させるようにしてあります。これもセオリーどおりですね。

 電源回路は,ミニパワーパッケージに入っている2つのチップがメインです。電池の電圧から安定化された3.3Vをそれぞれに供給しています。どちらかがICで,どちらかがドライブ用のトランジスタでしょうけど,どちらかはわかりません。私のものは,コイルのコアが破損していました。

 では,裏面にいってみましょう。

ura.jpg

 こちらはなにもないですね。コンパクトフラッシュのコネクタがあるだけです。

 全体に見ると,すっきりまとまっています。無駄がありません。

 出力のアンプは,汎用のOP-AMPを用いてポストフィルタと兼用したり,電源もアップコンバータだけに特化してあったり,合理的な一面も見られます。

 また,アナログとデジタルの電源の分離,フェライトビーズをきちんと入れるべきところに入れているところや,電源系の大容量コンデンサと小容量コンデンサを組み合わせて電源の変動とノイズを押さえるなど,教科書通りのことはきちんとやってるな,と言う印象を持ちました。

 ただ,水晶発振については,普通水晶発振子はマイコンに出来るだけ近くなるように配置し,発信に必要なコンデンサも最短距離で接続する物ですが,これが出来てません。とりあえず発信不良のトラブルはないですけども,低温や高温ではどうなるかわかりませんね。

 この回路で,ここまで音質が悪くなるとは思えないのですが,原因は,どうもMP3デコーダにあったみたいです。AKIBA PC Hotline!によると,やはり音質は悪く,同じチップを使っているMPMANも同じ用であるということです。

 ICの中の話であれば,もうお手上げ。

 ということで,根本的な解決はあきらめました。こんなものだと思えば,割り切れちゃいます。

 この後行った改良ですが,各信号経路にフェライトビーズを入れてノイズを防いだり,各部にパスコンを増やしました,あと,ポストフィルタが心許ないので,ここをカットオフ周波数20kHzの2次ローパスフィルタにしました。通過帯域のゲインは1倍にしたので,いきなりでかい音でびっくりすることはなくなりました。

 あと,ヘッドフォンジャックがいい加減だったので,日本のホシデン製のしっかりしたものに交換しました。見た目もきれいです。

 劇的な変化はありませんが,ノイズも減りましたし,音も幾分ましになりました。あと,やるだけやったという満足感こそ,大きな収穫だったのかも知れません。

 参考までに,改造後の出力波形をのせておきます。1kHz,100Hz,10kHzの正弦波をMacで発生させ,これをMP3でエンコード(128kbps)してFreshMusicで再生させた物です。エンコーダには,MPeckerEnc1.0b25を用いました。オシロスコープはテクトロニクスの2465Aというアナログタイプです。

1khz.jpgこれは1kHz。

100hz.jpgこれは100Hz。

10khz.jpgこれが10kHz。

 デジカメが古く,画質が悪いのでよく分からないかも知れないですが,波形がぼやーっとして太くなっています。これはノイズがのっていることを示しています。このノイズに規則性があればデコーダのせい,不規則ならばアナログ回路のせいとなるわけですが,調べるのが面倒なのでもうやめました。

 また,太くなっている原因がノイズということと,あと時間軸上の変動(ジッターといいます)があるのも確かでしょう。10kHzではそれがよくわかります。

 わかりやすいのが10kHzの波形で,他の周波数の物と比べても形が崩れてしまい,すでに正弦波とは呼べないような状態になっていることが分かります。私はMP3の専門家ではないので,この波形の崩れがエンコーダのせいなのかデコーダのせいなのか,それともMP3というのはこんなものなのか,良くは分かりません。

 ただ,結果として,サンプリング周波数が44.1kHzだから20kHzまでの正弦波ならきちんと出てくるべきところを,10kHzですでに波形が変わっている(つまり歪んでいる)という事実は明かであり,おそらくこれ以上の周波数ではこのような歪みが多かれ少なかれあるんではないかと思います。

 あと,すべて同じ振幅の正弦波を生成し,エンコードしたのですが,100Hzや1kHzに比べて,10kHzだけ振幅が小さくなっていますね。つまり,高域のレベルが落ちているということです。これも実際の現象と一致します。


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