復活のCLE

修理編


大まかな電子回路の仕組みがわかったところで,実際の修理です。

・状況

私が手にしたCLEは,シャッターが動作しないという故障が発生し,メーカーでの修理を依頼したところ部品がなくて修理が出来ないとそのまま返却されたものです。

電源はとりあえず入り,露出計も動作していたそうですが,メーカーから戻ってきたら電源も入らなくなっていたそうです。

分解してみると,電源が入らないのは電池ボックスからの配線が切れてしまっていたからでした。ここをハンダ付けするだけで,一応電源が入り露出計も動作するようになりました。ここまでは朝飯前です。

ところがここからがどうにもなりません。やはりシャッターが走りません。何をやっても先幕の係止が外れないので,おそらく先幕駆動のソレノイド駆動回路にある,例のコンデンサが壊れたんだろうと安易に考えました。

・深みにはまる

同じ容量のタンタルコンデンサを手に入れて交換しましたが,変化はありません。念のため外したコンデンサを確かめてみましたが,別に壊れて入る様子はありません。これはあてが外れました。

先幕解除のトランジスタへの信号を見てみると,シャッターボタンの押下で信号が出るのがわかるので,駆動回路の破損であることは間違いありません。そこでトランジスタを交換してみると,見事に先幕が走るようになりました。

おかしいのは,このトランジスタも別におかしいわけではないということです。劣化によってソレノイド駆動という重い仕事が出来なくなった可能性はありますが,ショートや破損などの明らかな不良ではありませんでした。

先幕が走るようになったら勝ったも同然と思っていたのですが,後幕も同時に走っています。つまり後幕を係止するソレノイドが全く制御されていないのです。

後幕の駆動回路は非常にシンプルであり,ソレノイドの断線でもなければ動かないはずはありません。実際トランジスタは壊れていないようです。

トランジスタへの信号を見てみましたが,残念ながら信号が全く出てきていません。これは困ったことになりました。

・結末

後幕を制御する信号がトランジスタに与えられていない事はわかったのですが,それではどこまで回路が動作しているのかを追いかける必要があります。

片っ端から部品の足にオシロのプローブを当てて信号を拾ってみたのですが,やはり後幕の動作タイミング(例えばシャッター速度ダイアルを1/2秒に設定すれば0.5秒のタイミングがどこかで生成されているはず)はどこにも見つかりません。

特にタイミングコンデンサと思われる部品にかかる電圧が動作タイミングと無関係であることを見ると,もはやこれはタイミング生成回路の不良であると考えざるを得ません。

対数圧縮回路かも知れませんし,回路の故障箇所はいろいろ考えられるのでしょうが,いずれにしても外に信号の変化がないということは,ICそのものの破損である可能性が高いと思われ,残念ですがここで修理を諦めました。仮に交換用にICを手に入れても,基板に直接ボンディングされてしまっているので,簡単には交換できません。

そうこうしているうちに,タッチスイッチも壊してしまったり,先幕も走らなくなってしまいました。検討を続ければ続けるほど,状況は悪くなるばかりです。気分的にもこのあたりが限界と悟り,修理を諦めました。

CLEを下さった方には「ICそのものの不良の可能性が高く,そうなるともう手出しは不可能」と報告をしました。

しかし,露出計はきちんと動作しているようですし,シャッター駆動用のソレノイドは2つとも正常で,それになんと言っても私のチャレンジ精神を見込んでCLEを提供いただいた方にも申し訳ないような気がして,ここで諦めるべきではないのでは,と思うようになってきました。

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