小型のマシン

 パソコンが知的支援ツールになることを体験した人々の夢は,これを持ち歩けるサイズにして,どこにいてもその恩恵を享受出来る,まさにこれでした。

 その夢は,冷蔵庫のような物体が空調のきいた部屋に鎮座するコンピュータが机の上にのるようになったことと,同じ進化を意味しているように思います。

 ラップトップタイプ,ノートタイプ,サブノート,そしてPDAと,我々が目にする物は等しくこのような進化を遂げてきました。

 しかし,その脇で,別の流れがあったことを見逃せません。

 ハンドヘルド・コンピュータ,あるいはポケット・コンピュータというジャンルです。当時のパソコンと同じ能力を小さくまとめ,ポケコンに至っては電池もほとんど食わないという,今でも需要のあるジャンルの確立した時代があったのです。

 そう,ポケットに入ってBASICの走る8ビットパソコンが,ザウルスなんかよりも遙か昔にあったんです。

 今はもっと高性能なパソコンがサイズに収まっていますが,このころの小型パソコンを見てると,今のノートパソコンやPDAには忘れたなにかがあるように思えませんか?


HC-20(EPSON:1982年,138,600円)

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 1982年のある日,業界震撼の画期的なマシンが登場しました。プリンタメーカーで当時も名をはせたエプソンが,A4サイズのオールインワンマシンを作ったのです。

 本格的なフルキーボード,左肩にプリンタ,4行表示可能な(当時としては)大きな液晶画面,MC6800系のちゃんとした8ビットCPU,マイクロカセットレコーダーも右肩に内蔵し,RAMは32KB,ニッカド電池内蔵で,音響カプラを持ち歩けばどこでもホストと接続することができました。

 とにかく,当時の20万円ほどするパソコンと比べても遜色のないスペックと,それが持ち歩けるという新しいパソコンの使い道を提案する,本当に「事件」でした。以後,このサイズのパソコンをハンドヘルドマシンというようになります。

 言語はBASICを標準で装備。このBASICもサブセットのようなものではなく,業務もこなせる本格的な物でした。

 当時PC-6001を使っていた私にとっても,これは憧れのマシンであり,その完成度の高さには驚嘆した覚えがあります。

 手に入れたのは大学時代,弟のつてで中古品を購入しました。当然ニッカド電池は死んでいますが,これも交換したいなと思っています。


PC-8201(NEC:1983年,138,000円)

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 エプソン遅れて,日本電気がPCシリーズとして発表したハンドヘルドマシンが,このPC-8201です。サイズはA4サイズ,CPUはHC-20の6800系に対して8085(厳密には沖電気のCMOSバージョン)を搭載,N-BASICと互換性のあるマイクロソフト製N82-BASICを搭載し,見ての通りの大画面液晶と拡張カートリッジスロットを持っていました。

 このマシン,RS-232Cはもとより,ペンタイプのバーコードリーダーインターフェースまで用意されていて,出先でホストに接続することもできれば,POS端末としても使えるという多機能ぶりでした。

 電池はHC-20よりも便利な単3電池4本。これで1ヶ月は使えます。周辺機器も豊富で,フロッピーディスクドライブ,カラーCRTへの接続ユニットなど,ユニークでした。

 更に面白いのは,BASICと共に英文タイプライタとターミナルソフトが最初からROMに内蔵され,起動時に選択できました。さらに,BASICで作ったソフトを起動時のメニューに登録できるので,オリジナルソフトを一発で起動できたりもしました。もちろん,当時のハンドヘルドマシンに必須なレジューム機能ももちろんついていて,一瞬にそれまでの状態に復帰できました。

 実はこのマシン,アメリカではタンディが販売していました。開発と製造は,京セラが行ったことで知られています。

 ぴーんときた人もいるでしょうが,コンセプトの発案は,かの西和彦氏。飛行機の中で京セラの稲森さんと隣り合わせになった彼が,自分の理想をこんこんと説いたところ,このようなマシンが具現化したのです。アメリカでは移動可能な英文タイプライタとして,記者の人たちに好評だったそうです。

 なるほど,いわれてみれば,ちょっとNECくささがないマシンではありますよね。

 さて,入手ですが,これも大学時代の仕事先で手に入れました。当時はまだマニュアルも注文すれば手に入ったので,マニュアルもきちんと手に入れました。いわゆるクラシカルなBASICの動くマシンですので,結構便利に使っていました。RAMはS-RAMでしたが,改造してフル実装してあります。


PC-1245(シャープ:1983年,17,800円)

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 1980年,当時の常識を覆すパソコンが登場しました。

 電卓戦争に生き残ったシャープから,BASIC言語を搭載した電卓が登場したのです。PC-1210といいました。4ビットCPUでRAMも512バイトに過ぎませんでしたが,一応一通りの機能を実装していました。なにより関数電卓と変わらないサイズであったことが,「パソコンをポケットにいれて持ち歩く」という,常識はずれの世界を見せてくれました。

 このPC-1210を大幅に強化したマシンが1982年に登場,PC-1250と命名されます。PC-1250は24KBのROMでデスクトップマシンと変わらない強力なBASICを備え,8ビットCPUによる高速化,2KBのRAMと,大幅に機能アップしました。価格はそれでも3万円ほど。20万円を工面できないナイコン族(パソコンを買えない貧乏な人を指す当時の言葉)たちの称賛も受けて,ベストセラーになりました。

 このシリーズはRAMを4KBにしたPC-1251,RAMを10.2KBにしたPC-1255と展開しますが,PC-1250の液晶サイズを小さくし,若干の機能縮小を行った廉価モデルが,このPC-1245です。

 液晶は小さくなったのですが,BASICは完全互換。そのままソフトが走りました。縮小された機能は,各キーにユーザーが単語を割り当てて登録できる機能がなくなり,代わりにBASICのコマンド類をあらかじめ割り当ててありました。かえってこっちの方が便利でした。

 BASIC言語は本格的で,書式フォーマットも可能,GOSUBやGOTOにラベル名も使えました。電卓として使用できるモードでは,強力な関数電卓として機能しました。

 バッテリーはCR2032というコイン電池を2つ。これで数ヶ月持ちます。もちろんバッテリーバックアップ可能で,複数のプログラムを記憶できましたから,非常に便利に活用できます。

 当時のPC-8001などと比べても遜色ない機能満載で,大きさは134mm×70mm×9mm。まさに電卓と同じです。価格も安く,これもベストセラーになっています。

 で,このマシン,私にとってもとても思い出深いマシンです。中学1年の時に,親に買ってもらいました。当時私はちょっと体を悪くし,通院生活をしていたのですが,待合室での待ち時間に使いたいと思っていたのです。16文字しか表示できない画面でしたか,そこは想像力でカバー,まさになんでも出来る気がしていました。

 ところが,やはりアルファベットしか使えないことと,BASICでは処理が遅く,ゲームはとても無理。これが限界なのかと思ったところに,隠しコマンドでマシン語が使えることが,あるユーザーによって発見され,ユーザーの手でマシン語が開拓されていきました。

 ドット単位で表示可能,マシン語なので高速,シューティングゲームを含め,この小さな画面にフロンティアが生まれました。BASICコンパイラ,アセンブラ,デバッガなどのツールが完備されていき,ハードウェアもロジックアナライザ,FM音源ボードなど,奇想天外な物が雑誌に次々と発表されていきます。

 熱い時代でした。そういうことの出来る人を,ただただうらやましく思っていました。

 そして,あれから15年ほどの時間が経過しましたが,今でもこのマシン,私の右腕です。複雑な計算をちょろっとやってくれる,とても便利な奴です。繰り返しの計算はBASICでさくっと作る。高校,大学,そして社会に出た今も,私の大切な相棒です。私の数値演算プロセッサ,ってところですか。

 ちなみに,RAMは10.2KBに改造されています。

 以後,シャープのポケコンは肥大化する傾向を見せます。大きな物は必要ない,そういう私の思いもあって,このマシンだけは買い換えされずにきてしまいました。このサイズがPDAになっていく現在,このマシンの代わりはますます現れないだろうと思います。


PC-1600K(シャープ:1986年,99,800円)

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 シャープのポケコンには,2つの流れがあります。1つはPC-1210を祖に持つ,低機能小型バージョン。PC-1250で8ビット化され,以後PC-1400シリーズ,PC-1300シリーズと高機能化していきました。これが電子手帳PAシリーズにつながります。

 一方,PC-1210の少し後に,PC-1500シリーズが登場します。大容量メモリ,高速8ビットCPUにグラフィック可能な画面,カラープロッタプリンタとマイクロカセットレコーダを装備したドッキングステーションでオールインワンハンドヘルドマシンになる,高性能モデルでした。

 PC-1500シリーズは,PC1200シリーズが次々に新製品が出るのとは対照的に,長年モデルチェンジもありませんでしたが,突然信じられない高機能をひっさげて,後継機PC-1600が登場しました。

 PC-1600はPC-1500のCPUとZ80の2つのCPUを搭載し,PC-1500とはマシン語レベルでの互換性がありました。240ドット×80ドットの液晶にはドット単位でグラフィックが可能でしたし,RAMも64KBが実装,強力かつ高速なBASICが用意されていました。

 PC-1600Kは漢字ROMを装備,熟語変換可能な日本語入力も可能でした。さらにシリアルインターフェースを標準で搭載,このころブームになったパソコン通信にも対応しました。

 画期的だったのは,ドッキングステーションには80桁のカラープロッタプリンタと,ポケットドライブという小型フロッピーディスクが装備されていたことです。

pc1600_1.jpgこれが母艦。左下に本体がくっつく。これでA4サイズ。

 PC-1500では,マイクロカセットが装備されていました。しかし,これでは不便だと言うことと,すでにこのころデスクトップマシンではフロッピーの時代が訪れていたこともあり,なんとかならないかと思っていた人も多かったでしょう。

 しかし,当時主流の5インチを付けるわけにもいかず,3.5インチでもドライブが大きかったので,なんとシャープは新しいメディアを作ってしまいます。これがポケットドライブです。

pc1600_2.jpgドライブのアップとディスク,Clik!よりもちょっと大きい。

 これで片面64KB,両面128KBで,きちんとランダムアクセスできます。このへんがクイックディスクとの違いですね。Z80搭載,ディスクドライブ利用可能,漢字印刷可能な80桁プリンタを持ち歩ける,漢字表示に通信機能,本来ならこれは,本当に持ち歩くことの出来るビジネスマシンになるところでした。

 PC-1500系らしく,大きさは195mm×86mm×25mmと巨大でしたし,電池は単三4本とこれまたでかい。持って歩くには厳しい存在でした。ちなみに,シャープ自身もこれをポケットコンピュータとはいわなかったようです。

 残念ながらさっぱり売れず,ただのマイナーマシンになってしまうのですが,基本性能の高さは今でも語りぐさです。

 ここで採用された低消費電力のZ80は,PC-E200という後継機に搭載されます。

 ポケットドライブを用いれば,CP/M-80も動くと思うのですが,どうなんでしょう?

 入手は,これも大学時代の仕事先です。ちょっと大きいのですが,ポケットドライブも手に入れましたので,ポケコンマニアの私としては,ちょっと手放せない存在です。


PC-1210(シャープ:1980年,29,800円)

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 電卓競争が決着を見ようとしていたころ,勝ち組であるシャープから登場した「ポケットコンピュータ」が,このPC-1210です。愛称を「ピタゴラス」といいました。

 いわゆる関数電卓はすでに存在しましたし,プログラム可能な電卓もよく知られていましたから,PC-1210がこれらの延長にあるという見方をすれば,別に珍しいものではないかもしれません。

 しかし,このマシンがそれまでのものと明らかに異なっていたのが,プログラム言語としてBASICが動作したということです。

 1980年といえば,かのPC-8001登場のわずか1年後です。汎用機に独占されていた対話式高級言語であるBASICが,ホビーストたちの手作りマシンから,ようやくメーカー製のパソコンで動き出した頃です。

 大きく,電気を大量に消費し,そしてとんでもなく高価という,BASICの動作するコンピュータのイメージが,このPC-1210によってうち砕かれたのです。当時の人々の驚きようは,いかほどのものだったでしょうか。

 まさにポケットに入るサイズ,ボタン電池SR-44で動作,価格は3万円と,どれも当時の常識を越えたこのマシンは,すべてのLSIをCMOSで構成,日立製の4ビットマイコンを2チップ構成で搭載し,クロックは256kHz(当時のCMOSは低消費電力ですが,動作速度が一桁以上遅かったのです)と極めて遅く,フリーエリアはわずかに400バイト,英数字しか表示できない液晶ディスプレイは反応速度も遅く,関数電卓として使えるようになっていても,あまり重宝しなかったのではないかと思います。

 しかし,BASICが走り出すと状況はかわります。遅く,機能も少なく,メモリも小さなこのマシンは,そこらへんの「電卓」には真似の出来ない,ちょっとした計算の自動化などにとても役に立ったはずです。

 PC-1210の登場で,ポケットサイズのBASICマシンが1つの市場を作り,ここに完全に関数電卓とは別の領域,ポケットコンピュータが新しいカテゴリとして誕生したのです。そしてこの流れが,後に電子手帳やPDAに行き着くことになります。

 この歴史的名機を是非手に入れたいと思っていたところ,Yahoo!オークションで2000年2月に入手しました。CE-121というカセットインターフェースと一緒に譲って頂きましたが,液晶が端から劣化してきています。この劣化は,おそらく液晶パネルの中身の劣化でしょうから,交換以外に直す方法はないと思います。

 写真はCE-121を装着した状態なのですが,このCE-121,PC-1250シリーズ用のCE-124と違って,本体をそのまま抱き込むタイプで,結構な大きさがあります。中を見てみましたが,部品が大きく,基板が収まらなかったのが理由のようです。

 先日もテストを兼ねて電源を入れてみましたが,全く問題なく動作しました。液晶の劣化も止まっているようです。回路図も実は手に入れてあるので,これからも動作する形で持っていたいと思います。


PC-1251(シャープ:1982年,29,800円)

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 PC-1245の項でも書きましたが,PC-1251はPC-12xxシリーズの第2世代で,システムアーキテクチャとしては,PAシリーズの電子手帳と,PIシリーズのザウルスに続く,完成度の高い物でした。

 PC-1210/1211でBASICの走るポケットコンピュータを市場に投入するも,同じく電卓戦争の一人の勝者であるカシオから,関数電卓の拡張という形でBASICの走るマシンが登場します。カシオのfxシリーズは4ビットCPUながらPC-1210よりも高速で動作し,またこの数年間でPC-8001やMZ-80等のBASICが走る8ビットパソコンが登場してブームとなっていたこともあり,PC-1210はどう見ても不利な位置にいました。

 そこで満を持して登場したのが,PC-125xシリーズです。2kByteのPC-1250,4kByteのPC-1251,そして最終的には10.2kByteのPC-1255と廉価版のPC-1245に続く,ロングセラーとなります。

 PC-125xはシャープオリジナル8ビットCPUをクロック1MHzで駆動,当時出てきたばかりの8ビットバスを持つバッテリバックアップを前提に設計されたCMOS-SRAM6116を採用し,低消費電力と大容量を両立していました。ROMも24kByteとデスクトップパソコン並みを搭載し,電池にはこれまた登場したばかりのリチウムコイン電池CR2032を使用していました。

 また,PC-1210よりも小型化,薄型化がはかられ,文字通りのポケットコンピュータになることが出来ました。私の知る限り,いわゆるポケコンのたぐいでこのPC-125xシリーズよりも小さな物を見たことがありません。

 当時,私などはPC-125xの性能と,そしていかにもメカメカな感じがする周辺機器にしびれまくっていたのですが,その筆頭が写真にでているCE-125でしょう。PC-125xを接続すれば,サーマルプリンタとマイクロカセットをA5サイズに凝縮して持ち歩けました。しかも内蔵Ni-Cdバッテリでモバイル運用が可能。そのころパソコンでもここまでのことを行うのは大変で,こうしたぶっ飛んだアイテムがそこら辺で買えたのが,このころの日常なわけです。

 で,このPC-1251とCE-125のセットは,やはりYahoo!オークションで2000年2月に手に入れました。それなりに高値がついたと思うのですが,程度は非常によいものでした。

 PC-1251は完動品で傷もなく,PC-1255と同じ10.2kByteへのメモリ増設をすませました。CE-125はNi-Cd電池の交換と,マイクロカセットのゴムベルトを交換しました。完全復活したCE-125を使って,PC-1245用にたくさんあったソフトをすべてマイクロカセットに移してあります。

 それと,サーマルプリンタのロール紙はPOS等に使われたロール紙を箱買いしてストックしてありますし,プリンタのメカも,特にヘッドが寿命を迎える可能性が高いので,交換用の新品を1つだけストックしてあります。10年以上前に偶然購入したジャンクでしたが,こんなことで役に立つとは思いませんでした。

printer_mecha.jpgCE-125に使われているプリンターメカ。交換用のストックです。

 PC-1251は,私にとってはディスプレイの広さをいつも愛機のPC-1245と比較して寂しい思いをした,憧れのマシンの1つでした。特にマシン語が使えるようになってからその広さへの憧れは高くなり,シャープのサービスセンターにPC-1250のLCDやLCDコントローラを注文し,PC-1245を大改造しようと計画したほどです。そんな思い出のマシンが,こうして今手元にあるというのはとても贅沢な気持ちにさせます。


PC-E500(シャープ:1988年,28,800円)

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 PC-1200系はPC-1300シリーズやPC-1400シリーズに発展し,PC-1500シリーズはデスクトップパソコン並みと言われたPC-1600に行き着きました。そのころ,まさに1980年代の後半,社会も技術もニーズも「ポケットコンピュータ」が生まれたころとはすっかり状況が変わっていて,シャープは自らが生み出したポケットコンピュータをきちんと再整理する必要がありました。ちょうど電子手帳PAシリーズがバカ売れしていた時代でもあります。

 ポケットコンピュータは,その小ささを生かして,出先で使えるパソコンとして使われたり,関数電卓の高機能版という形で理系の学生の間で使われたりしたのですが,もう1つ,非常に安価で持ち運びの出来るBASIC学習機として工業高校で非常によく使われたようです。ビジネスマンが使うマシンとしての役割は終焉を迎えていましたが,科学技術用と学習用には根強い人気があったのです。

 PC-1300シリーズやPC-1600は,どう考えてもビジネス指向でしたから,市場の評価もいまいちでした。そこでポケコンが生き残る分野にフォーカスして,再構築されたのがPC-E500とPC-E200の2つのシリーズでした。

 PC-E200はZ80を搭載したポケコンで,その意味ではPC-1600の子孫といえなくはないのですが,その目指すところは「教育分野」でした。関数電卓としての機能も高くないのですが,なんといってもZ80が使われていたことで,Z80の機械語を扱えるようにしてありました。また,外部のインターフェースも公開され,ロボットなどの制御コンピュータとしても使えました。

 一方,PC-E500はPC-1200シリーズの末裔にあたります。シャープオリジナル8ビットCPUを搭載していましたが,メモリ管理周辺を改良し,大きなメモリを扱えるようにしてあります。関数電卓としての機能を非常に強化してあり,このあたりは同じ先祖を持つPC-1400シリーズに近い物があります。またLCDサイズはPC-1300シリーズですし,BASICの文法などもPC-1200シリーズのクセを持っていますので,これはPC-1200シリーズの集大成だと言えると思います。

 PC-E500は高速動作,大容量メモリ,そして高機能でベストセラーとなります。

 ポケコンのマニア(というか現代に続くPDAマニア)はいつの時代も熱い。大容量メモリを手に入れたことから,モニタ,アセンブラ,コンパイラやその他のユーティリティを次々に開発,しまいには日本語表示と仮名漢字変換システムや日本語エディタまでを整え,日本語モバイルコンピュータに仕上げてしまいました。しかも,WindowsやMacとの連携も可能になり,現在のPalmのような使い方も可能となるに至りました。

 さて,私のPC-E500ですが,やはりこれもYahoo!オークションで手に入れました。比較的新しめのモデルですし,際だった特徴もないので比較的安価に買えましたが,程度は余りよくありませんでした。とはいえ,私にとっては初めてのPC-E500です。

 メモリは写真のように,1MbitのSRAMを4つ内蔵し,512kByteに改造してあります。

ram.jpg改造済みPC-E500の内部のクローズアップ。手持ちの1MbitのSRAMを4つも使ったので配線はとても多い。

 また,クロックも倍速にしてあります。スイッチで切り替えられるようになっているのですが,さすがに日本語表示を行う場合には倍速の方が便利です。さらに,MacやPCと接続するアダプターも自作しました。PC-E500はシリアルI/Fを内蔵していますが,レベルコンバータがないとRS-232Cには接続できないんですね。私の場合はMacがメインマシンでしたから,Macを母艦にしてソフトのインストールを行っていました。

 PC-E500はその後,PC-E550やPC-E650となり,後にPC-1490Uといった大学生協専用モデルなどへの変遷を経ながら,現在でも学校教材として販売されています。


Palm Top PC 110(IBM:1995年,198,000円〜)

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 A6サイズの超小型パソコン,PC110。ウルトラマンPCで話題になりました。486SX-33MHzでメモリは最大20MB。Type2のカードスロットを2つ装備し,コンパクトフラッシュのスロットも持っていました。

 生意気に256表示可能な640×480のカラー液晶を装備し,モデムまで内蔵していました。電池はビデオカメラ用のリチウムイオン電池で,フルパワーで動かして約90分の稼働時間です。

 世界最小のWindowsマシンの名を欲しいままにしていましたが,いかんせん486SX。直後に出たWindows95が満足に走らないことで,一気にマイナー化しました。

 しかし,熱烈なファンと,熱心なある販売店のお陰で骨まで諸ぶり尽くされ,HPの200LXと列んで小型PCの名作とされています。

 入手ですが,本当に最近,友人から新品の物を手に入れました。メモリを増設し現在は16MB,コンパクトフラッシュで48MBのドライブを用意して,圧縮してWindows3.1とDOSのツール類を入れています。

 モデムは33.6kのものに換装して,Windows上ではインターネットへのアクセスが可能です。

 この撮影の後,カバーを緑色にしました。こんなカバーが作られて売っているんですよね。

 画面は,PC-6001のエミュレータ。遅くて実用になりませんが,ちゃんと音も出ます。

 「古パソ」というのは忍びないのですが,すでに歴史の彼方のマシンであることから,ここに出しました。ちなみに私の中では,ばりばりの現役です。

 その後ですが,結局多くの先人達のおかげで,Windows95を入れることに成功しました。現在は256MBのコンパクトフラッシュを使って,完全なシリコンWindowsで運用しています。メール端末としてはこれほど使いやすい物もないので,メールを読む必要のあるところへは,いつでもどこでもこいつと一緒です。


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