その他周辺機器など

 昔のパソコンは,周辺機器を集めるのが大変でした。コンポーネント化されていたという意味では,高級なオーディオのような感じですね。

 今の世の中,フロッピーディスクドライブやハードディスクが別売りで,繋げるのにインターフェースカードが必要で,しかも価格が本体以上だったなんて,誰が信じることができるでしょう。

 まるで自作AT互換機を組み立てるような感覚で,少しずつ周辺機器を集めることもまたマニアの楽しみでした。

 周辺機器を組み合わせないと働かないわけですから,結局パソコンの価格が20万円以下であっても,まともに動かすようにすれば100万円かかることは珍しくなく,そういう意味でも今のパソコンは安くなった物だと,つくづく思います。

 なんで別々になってたのか,そんなことを考えながら見ていただけるとうれしいです。


PC-6031(NEC:1983年,89,800円)

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 PC-6001専用のフロッピーディスクドライブです。5インチ1D(片面倍密度)で,160KBの容量でした。ドライブは見てのとおりTEACのFD-55Aです。

 PCシリーズの伝統として,ドライブ内部にフロッピーディスクコントローラ(以下FDC)とCPU(Z-80),そしてRAMとROMでちいさなコンピュータシステムを組み込み,本体とはパラレルインターフェースで通信をするという,まるで汎用機のようなことをやっています。この方式をインテリジェントタイプといいます。

 インテリジェントタイプの特徴は,ドライブやFDCの差を吸収できることがありますね。その気になれば,内部のCPUでドライブの物理的な差を吸収できますから,1Dドライブ2つを2Dドライブ1つに見せかけることだってできるでしょう。アクセスが簡単になるとか,本体との接続の信頼性が上がるなどいいこともありますが,一方でコストが上がる,直接FDCをたたけない,処理が素早くできない(間に1段入りますからね)という,ちょっともどかしい欠点もあったりします。

 結局,フロッピードライブが内蔵されるようになったらこれらの利点も薄れてしまうわけで,なるほどPC-9801ではインテリジェント方式を採用しませんでした。(ただ,これは一概にいえません。8インチドライブがベースのマシンは,転送速度の関係でインテリジェントタイプは使用するのが困難です。PC-8801でも8インチはノンインテリジェントタイプでしたから。PC-9801は5インチもノンインテリジェントタイプでしたが,これはどのドライブを主軸にするかという設計者の思想の問題でしょう。)

 さてこのPC-6031,当時としては非常にお安く出てきたドライブです。それでも9万円ですが,他がもっと高価であったことを考えると,シングルドライブで出てきたことや,家庭用を意識したなかなかスタイリッシュなデザインは,好感が持てます。

 接続は,PC-6001ではPC-6011拡張ユニットとN60拡張BASICカートリッジが必要です。PC-6001mk2では,これらは内蔵されているので,このドライブとケーブルで大丈夫です。

 PC-6001は,ドライブ周辺のハードこそ,PC-8001のそれを継承していますが,ソフトは考え方も違っていて,いわゆるディスクBASICは存在せず,BASICでのディスクサポートは,ROMカートリッジで供給されるN60拡張BASICで行われました。

 入手ですが,PC-6001mk2と同時に手に入れました。ドライブのメカ的破損が心配なこのごろです。


PC-80s31(NEC:1984年,168,000円)

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 PC-8001および,PC-8801の周辺機器です。5インチ2D(両面倍密度)で,ドライブあたり320KBの容量があります。ドライブはTEACのFD-55Bを採用し,ベストセラーであると共に,憧れの的でした。

 PC-8001には,PC-8031というドライブが先行で出ていました。これはフルハイトといって,ドライブ自体の厚みが2倍の厚さをもつFD-50Aという1Dドライブを横に並べたものでした。価格は約30万円。それでも安かったそうです。

 本体がPC-8001mk2,PC-8801とかわり,PC-80s31が登場します。小さく,静かで,2倍の容量。価格も下がっていました。

 もちろんインテリジェントタイプ。ゲームなどでコピープロテクトがかけられたディスクの場合だと,サードパーティ製のドライブでは動かないなどの問題がよく出ていました。インテリジェントタイプでは,中に入っているマイコンの設計も互換性確保のため重要だったのです。

 あと,ヘッドロードといって,アクセスしてないときにヘッドをディスクから浮かせる機構をきちんと持っていたことも個人的には印象深いです。X1では,このヘッドロードを使っていません。代わりに回転を止めるのですが,この方が静かなのです。NECのきまじめさを感じました。

 入手は,PC-8801と同時です。PC-8001での動作も確認し,N-BASICのディスクバージョンやCP/Mがうごきました。2000年春に実家の取り壊しがあって,やむなく売却しました。


飛鳥(ニューテック:1980中頃,10万円くらい)

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 これはApple][用の,ディスクドライブです。Apple][の純正ドライブはDisk][といって,非常に特殊な仕組みで動く物でした。ですからその他一般的なドライブとはちょっと分けて考えることが多いのですが,設計の古い分,高価で大きなものでした。ドライブだってフルハイトでしたから。

 そこで,主に日本のメーカーがコンパチドライブを作ります。インターフェースカードはTTL数個でできるのでコピーはできるとして,問題はドライブ。

disk2_2.jpg左が飛鳥の付属品,右が純正のインターフェースカード。

 しかし,どうやったのかは知りませんが,ある時から突然コンパチドライブがでるようになりました。

 これもその1つです。ニューテックという会社が出した物で,ハーフハイトで静か。信頼性も高いです。価格も10万円程度だったと思います。入手はもちろん,Apple][と一緒にです。

 Apple][の場合,ドライブはソフトでコントロールされる比重が大きく,ハードとの相性問題が結構深刻でしたから,互換ドライブと言いつつあるゲームが動かないとか,特にプロテクトのきつい物でよく問題になったようです。

 私の手元にあるこの「飛鳥」は,いまのところそういった問題を経験していません。ちゃんと動作しています。


MZ-80FD(シャープ:1981年,298,000円)

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 MZ-80シリーズに接続する純正のフロッピードライブで,5インチ2D(両面倍密度)です。見て分かるとおり,1つあたりの厚さが2倍です。こういうドライブをフルハイトといいます。

 ドライブは信頼性に定評のあったY-EデータのYD-274。これを2つも装備した贅沢仕様です。

 NECがPCシリーズでインテリジェントタイプを採用したのに対して,シャープはノンインテリジェントタイプを採用します。FDCはウェスタンディジタル社FD1791の流れを汲む,富士通のMB8876を採用し,やはりNECのμPD765とは対照的でした。

 型番からすると,MZ-80Cシリーズなどに用意されたものだと思うのですが,入手はMZ-80Bと一緒です。MZシリーズは伝統的に拡張性が弱く,カード1枚差すにも何万円もする「枠」を買わされたりしたものでした。他社は最初から本体に入ってるんですけどね,枠なんて・・・

 考えてみればYD-274を2つ,電源とケース込みで手に入れただけの話なので,大した値打ちもないのですが,そうはいってもそこは純正,これもMZおよびX1シリーズ伝統の,37ピンDサブコネクタでインターフェースが用意されています。ここを自作するのは,実はコネクタの入手が難しいので困難だったりするんです。MZ-80B,FDインターフェースカード,そしてこのMZ-80FDの3点をセットにして,2000年春に同じ方に売却しました。


PC-DR311(NEC:1984年,12800円)

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 「なんじゃこりゃ」,きっと今のパソコンしか知らない人にはそう思えるでしょう。これは,データレコーダといいます。

 なんのことはない,ただのカセットテープのレコーダーです。データレコーダというからには,なにか特別な仕掛けがあるとか,あるいは入出力がディジタルなんではとか,思われるかもしれませんが,それこそ入出力は「音」ですし,そういう意味での音質は,安物のラジカセ以下なんです。

 その昔,フロッピーディスクが本体よりも高価だった時代の外部記憶装置は,もっぱらカセットテープでした。モデムと同じ理屈でディジタルのデータ列を音に変換し,これを音としてカセットに録音するのです。

 音楽であれば多少の劣化は許されるのですけども,データ列を取り出すために記録する音ですから,劣化があるとそこでおしまい。もともとそういうちょっとのミスも許されない用途に作られてるわけではない(それは製品もそうですがカセットの規格自体もそうです)カセットに,これは酷な話です。

 しかし,エラー訂正符号の付加や,回路の工夫でかなり信頼性も上がるようになって,このころ盛んに使われるようになったのです。

 なにより,メディアが安い。フロッピーディスク1枚が数千円の時代です。数百円のカセットは魅力です。コピーも簡単。音楽用のデュプリケータをそのまま流用できますから,どこででもソフトを生産できますね。これはCD-ROMと同じ利点です。だからでしょうけど,当時のソフトの標準的な値段は,同じ内容でもカセット版が3800円くらい,フロッピー版が6800円くらいでした。

 もちろん,ドライブ装置も安価です。ラジカセの部品をそのまま流用できます。

 でも,速度は遅い。普通は600か1200ビット/秒,速い物でも2700ビット/秒ですから,仮に64kBのデータを転送しようとすると,30分ほどもかかってしまうのですね。ぴーごろごろごろーという不快な音を出しながら。

 でも,この待ち時間にロマンがありました。30分の待ち時間ののち,ゲームが起動する。雑誌を読んでマシンの勉強する,宿題をする,コーヒーを飲む,漫画を読む,ボス攻略のイメージトレーニングに励むなど,様々な時間の使い方がありました。

 いつかはフロッピーに・・・そんな夢を抱いて,パソコン少年はその日もカセットテープをぴーごろごろーと再生していたのでした。

 で,このデータレコーダですが,PC-6001のために手に入れたものです。PC-6001には他機種でもその信頼性で圧倒的に有名だったPC-6082というものがあったのですが,なにぶん高価でしたので,基本性能の充実した安価な,このモデルを手に入れたのです。

 正解でした。これ,とても使いやすいのです。それまで普通のラジカセを使っていましたが,セーブもロードもエラーを連発し,組んだプログラムが保存できないという問題に我々兄弟は日々絶望し,頭を抱えていたのですけども,これを導入して以来,そういう恐ろしさとは無縁の安定した生活が訪れます。

 データレコーダは,その性格上1200Hzと2400Hzの音を正確に記録出来ることが望まれます。高帯域や低ひずみは必要なく,これらは後の波形整形回路で補正されます。この補正が普通のラジカセには入っていないんですね。

 我々のマシンもPC-6001からX1に世代が変わり,このレコーダの出番はほぼなくなりました。しかし,酷使されたその形跡として,テープの幅にすり減って段の付いたヘッドが,痛々しく顔をのぞかせるのです。ちなみに,ゴムベルトが弱っていたので,同じサイズの物を秋葉原で探してきて交換しました。


PC-6082(NEC:1982年,19,800円)

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 ワンボードマイコンの時代から,安価な外部記憶装置として貧乏ホビーストを支援したカセットテープ。しかし,信頼性はむちゃくちゃ低いわ,転送は遅いわ,頭出しは出来ないわで,本当に本当に不便でした。

 そんな中に登場したデータレコーダの決定版が,このPC-6082です。 6000番台ですが,PC-DR320というもう1つの名称が付いているとおり,いろいろなパソコンとの接続でも高い性能を示し,それこそ他社のマシンに至るまで業界標準となった感さえあるデータレコーダです。

 信頼性は抜群。エラー知らずの性能は,徹夜プログラミングマイコン少年をどれだけ救ったか。前後5つまで頭出しの出来るサーチ機能で一発検索。さらに基本性能の高さでこの後出てくる転送速度のアップした新型マシンにも余裕で対応と,高価でしたがその分しっかりしたマシンでした。

 私が手に入れたのはPC-6001mk2と同じ時でしたが,PC-DR311がそろそろ駄目になると思っていたこともあり,残しています。これもベルトが弱っていたので交換してあります。


CZ-8RL1(シャープ:1985年,24,800円)

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 X1turbo,X1F,X1Gシリーズに対応した,外付けデータレコーダです。

 あれ,と思った方,するどいです。

 X1シリーズは,初代モデルからカセットデッキは「電磁メカカセットデッキ」で,単純に音を記録するラジカセまがいのデータレコーダとは本質的に違う物なのです。

 それもそのはず,シャープはテープレコーダの制御に,1つCPUを与えるほどの力の入れようだったのですから。

 初代やその後のX1Cなどは内蔵でしたからいいんですが,不幸なのはX1Dというディスクドライブ搭載モデルです。X1Dは3インチ(3.5インチじゃないよ)のドライブを内蔵していましたが,そのせいでカセットデッキは内蔵されません。

 でどうしたかというと,他のマシンと同様に普通のラジカセと「音」でやりとりすることになったのですが,そうなると当然「電磁メカ」にはなりません。カセットのコントロールをソフトで出来ることが当たり前だから,それを使ったソフトも多く,哀れX1Dでは,多くのソフトが動作しませんでした。

 X1turboとX1Fで,再びディスクドライブを内蔵したマシンが出るのですが,同時にカセットの問題が浮上してきます。X1Dと同じ間違いをしないために,シャープの選択は,今まで内蔵していたカセットデッキをそのまま外に出し,内蔵の時と同じ信号でやりとりすることでした。

 そして登場したのが,このCZ-8RL1です。本体との接続は7ピンDINという,これまた特殊なコネクタです。デザインはX1turboのあうようにされていますが,こうしてみるとなかなかスタイリッシュです。

 もちろんマシンから見てこのデータレコーダは内蔵された物と同じように見えますから,キーボードからのカセットの制御,BASICコマンドによるサーチや巻戻し(驚くなかれ,X1のBASICではカセットテープ専用のドライブ名にCAS:というものが用意され,フロッピーなど同様に扱えたのです。ですから,FILES"CAS:"とやれば,カセットのファイル一覧が出てくるんです。),ゲームなどもきちんと動作しました。

 もちろん信頼性も最高。音でやりとりする端子も用意されていましたし,位相切り替えなどのスイッチもついているという至れり尽くせりで,他のパソコンにも最強のカセット環境を提供できます。

 しかしながら,カセットの優秀さが仇となってフロッピーへの移行が遅くなったと揶揄されるX1でさえ,このころにはフロッピー普及の兆しが見えていました。X1Fが12万円で登場するときに,過去の資産を継承するためだけに25000円も投資できる人がどれだけいるかということです。

 私は,カセットが使ってみたいという理由でX1turbo3と同じ時期に中古を買いました。日本橋の中古専門店,今はなき「ユーバース」さんで,確か14800円くらいで買ったと思います。

 あまり出番はありませんでしたが,ないと困るシーンもありましたので,まぁいいとしましょう。これもベルトは交換しました。


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