シャッタースピードを簡単に測ってみよう

2021年8月30日

はじめに

 2021年,フィルムカメラが流行ってます。

 デジタルカメラの市場が蒸発して久しく,このまま民生品としてのカメラは消え去るのかと思っていたら,まさかのフィルムカメラですから,なにが流行るかわからんもんです。

 私などはフィルムカメラの面白さを知っているので,中古カメラ店でその凋落ぶりをリアルタイムで見ていてとてもさみしい気分になっていたわけですが,かつてはワゴンで捨てるように売られていたコンパクトカメラが数千円でポンポン売れるのを見ては驚愕し,カビや収差だらけのレンズが絶賛されては首をかしげてみたりと,なかなか複雑な気分でいます。

 フィルムのカメラは一部を除きすでに生産はされておらず,手に入るものは特別なものを除き中古品に限られます。しかし中古品ですから程度の良いものは限られますし,その数は年々減っていきます。

 ゆえに価格は高騰し年寄りは腰を抜かすわけですが,一方で故障したものや程度の悪いカメラは相変わらず安価で,これらをうまく活用することも中古カメラの楽しみ方の1つです。

 しかしその際問題となるのが性能の評価に必要な専用の測定器の入手が,アマチュアには難しいことです。

 シャッタースピードの測定もカメラの性能評価には欠かせないのですが,かつては専用の測定器を用意する必要があって,アマチュアはテレビなどを用いた簡易的な方法か,あるいは実際の撮影結果によって,大雑把な精度を確認するしかありませんでした。

 しかし,近年低価格が進み,個人でも所有することが珍しくなくなったデジタルオシロスコープを用いると,簡単かつ高精度な測定が可能となります。そこで,その方法と結果についてご紹介しましょう。

シャッタースピードとは

 シャッタースピードとはフィルムに露光を行う時間のことで,フィルム感度と絞り値をシャッタースピードと組み合わせ,適正露出を得ます。シャッタースピードの単位には秒が用いられ,マニュアル操作においては一般的に2倍ずつ変化するように設定されています。

 シャッターには被写体の動きを止める働きもあり,シャッタースピードが高速になるほど速い動きを止めることが出来るわけですが,あえて動きを止めずに躍動感を強調するなどの効果を狙う場合に,シャッタースピードは撮影者によって積極的に調整されます。

 従ってシャッタースピードの設定範囲の広さは,適正露出となる組み合わせを多く持つ事に繋がり,高度な写真表現を可能にしてくれます。

 このように,シャッタースピードの設定範囲の広さと正確さは非常に重要なわけですが,誤差が大きいと適正露出から外れるなど意図しない結果になるので,厳密に管理されています。

シャッタースピードの規格

 シャッタースピードはJISではJIS B7091-1992によって規定されていて,これに対応する国際規格はISO516-1986です。日本語表記も含め,JISはISOにほぼ準拠しています。

 シャッターが動作している時間はもちろんゼロではなく,露光開始からシャッターが全開になるまでの間はフィルム面の照度が増減します。このためシャッタースピードの測定には露光開始と露光終了の時刻をどこに設定するかをまず定義しなければなりません。

 JISでは最大照度の半分になる時刻を起点と終点として,この間の時間を露光時間と定義しています。

シャッタースピードの定義

 また,許容される誤差は結構複雑な式で規定されているのですが,ここでは計算結果だけを示します。

シャッタースピード(s)規格値(ms)許容範囲(ms)
11000812 – 1230
1/2500406 – 616
1/4250203 – 308
1/8125102 – 154
1/1562.550.8 – 76.9
1/3031.125.4 – 38.5
1/6015.612.7 – 19.2
1/1257.816.35 – 9.62
1/2503.912.86 – 5.34
1/5001.951.43 – 2.67
1/10000.980.71 – 1.33
1/20000.490.36 – 0.67
倍数系列におけるシャッター速度の許容範囲

シャッタースピード(s)規格値(ms)許容範囲(ms)
11000812 – 1230
1/2500406 – 616
1/5200162 – 246
1/1010081 – 123
1/254032.5 – 49.2
1/502016.2 – 24.6
1/100108.1 – 12.3
1/20054.1 – 6.2
1/4002.51.8 – 3.4
大陸系列におけるシャッター速度の許容範囲

 なお,倍数系列では1/15秒よりも高速なシャッタースピードにおいて,カメラの表示と実際のシャッタースピードが異なっています。例えば1/500秒は正確には1/512秒であるので,露光時間は2msではなく1.95msとなることに注意が必要です。

 でもあれですね,こうしてみると大陸系の方がきちんと割り切れる数字になっていて合理的にも思えますし,一方で倍数になっていないので撮影時にはちょっと面倒というのもありますね。まあ,このくらいの違いは実際の撮影結果にほとんど影響を与えないものなので,気にしないのが精神衛生上よいのかも知れません。

シャッタースピードの測定に挑戦

 シャッタースピードは露光時間で表現されるので,フォトトランジスタなどの光センサをフィルム面に配置し,センサが反応した時間を計測することで測定出来ます。

 前述のように,かつてはテレビの画面を撮影し,その明るさの濃淡からおおよそのシャッタースピードを判断したり,アナログオシロスコープの管面を撮影して得られた輝線の長さと掃引速度からシャッタースピードを求めたりすることも行われてきました。

 プロが使う専用の測定器は時間計測のために専用のカウンタを組み込む必要があったり,扱いやすい光センサがないために回路が複雑になる傾向があったのですが,近年はフォトトランジスタが簡単に入手出来ることに加えて,時間計測もすでに完成した高精度の測定器としてデジタルオシロスコープが利用出来るため,簡単に測定を行うことが出来るようになりました。

 ところで,シャッターには動作時間が存在するので,露光はすべての面で均等に行われるのではなく,露光時間が長い箇所と短い箇所が出てしまいます。

 この問題は,常にシャッターが全開となるレンズシャッターやフォーカルプレーンシャッターの低速側では顕著になるのですが,スリットが均等な速度で移動して露光する高速側のフォーカルプレーンシャッターでは顕在化しません。

シャッタースピードを測定する治具

 いきなりですが,シャッタースピードを測定するための治具です。

シャッタースピード測定用治具の回路

 回路はフォトトランジスタを用いた極めて簡単な物です。フォトトランジスタは東芝製のTPS603Aですが,コレクタ電流が1mAの時に立ち上がりおよび立ち下がりの時間が10us程度のもので,特に高性能な物ではありません。

 光センサの選定ではもちろん反応速度も重要な条件となりますが,今回の用途ではフォトダイオードを用いるほど高速である必要はなく,手軽に電圧出力が得られるフォトトランジスタを用いることにしました。

 回路は,光が当たるとコレクタ電流が流れ,抵抗によって発生した電圧をオシロスコープで観測するというものです。電源電圧は9Vから15V程度まで適当でよく,電圧が高いほど出力電圧が高く取れ,かつ反応速度も高速になるのですが,コレクタ電流が最大定格を越えないようにしなければなりません。

 今回は,設計目標である1/2000秒の測定に対応するため,少々多めにコレクタ電流を流し,立ち上がり及び立ち下がりの時間を露光時間の1/100である5usとして影響を無視できるようにしています。

シャッタースピード測定用治具の作成例(左:表面 右:裏面)

 上の写真は治具の作成例で,基板中央にフォトトランジスタを取り付け,裏面で回路を配線してあります。

測定の方法

 早速作った治具で測定してみましょう。フィルム面に光センサを実装した基板をテープで貼り付け,電源とオシロスコープを接続します。

治具のカメラへの取り付け

 シャッターの向かい側に光源を配置し,シャッターを動作させると,光センサに光が当たり,オシロスコープに波形が現れます。この波形を読み取ることで測定結果を得るのです。

測定中の様子(ニコンF2)

 この時オシロスコープの設定を,トリガモードをノーマル,トリガレベルを自動ではなく波高値の半分にしておくことで,確実にトリガがかかり,また捕捉した波形が上書きされず保持されるようになります。

測定結果の表示

 この波形は1/1000秒に設定したシャッタースピードを測定した時のもので,波高値の中央でトリガがかかっており,シャッターが開いている時間(1.14ms)を直接カーソルで読み取ることが出来ます。

 どうです,簡単でしょ。それに,ただ数字が出るよりも,こうして波形で出た方がわかりやすいし,シャッターがどんな風に開閉しているかわかって安心ですよね。

測定例

 ということで,いくつか測定例を紹介します。

ニコンF3

 ニコンF3は1980年に日本光学によって発売された電子制御式のレンズ交換式35mm一眼レフで,水晶発振による基準クロックからシャッタースピードを生成しているため,極めて正確なシャッタースピードが得られます。

ニコンF3

 測定した個体はメーカーによるオーバーホールと測定によって精度が基準値を満たしていることがはっきりしている個体で,この個体での測定結果をもって,今回の測定系の信頼性を判断したいと思います。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
110001000812 – 12300
1/2500500406 – 6160
1/4250250203 – 3080
1/8124125102 – 154-0.80
1/1562.862.550.8 – 76.90.48
1/3031.431.125.4 – 38.50.96
1/6015.815.612.7 – 19.21.28
1/1257.727.816.35 – 9.62-1.15
1/2503.763.912.86 – 5.34-3.84
1/5002.001.951.43 – 2.672.56
1/10000.960.980.71 – 1.33-2.04
1/20000.550.490.36 – 0.6712.2
ニコンF3の測定結果

 結果が示すとおり,偏差は非常に小さいですね。個体の状態からシャッタースピードは大きく狂っていないと考えられますから,この測定系は概ね信用出来ると判断しました。

ニコンF2

 ニコンF2は1971年に日本光学によって発売された機械式のレンズ交換式35mm一眼レフで,チタン幕を備えた横走りフォーカルプレーンシャッターで1/2000秒までのシャッタースピードを実現しています。この時代ですごいですよね。

ニコンF2フォトミック

 すべてのシャッタースピードが機械部品によって作られるので,電子制御式と異なり誤差が大きくなる傾向がありますが,その反面で電子部品の入手困難による修理への不安がなく,長く使えるものとして高く評価されていますが,ここ数年は人気がなく中古価格も悲しいほど安くなっています。1つに,その電子部品の問題で不動品となったフォトミックファインダーが仇になっているんじゃないでしょうか。電子部品を持たないアイレベルファインダーのF2は人気があって高値ですからね。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
110501000812 – 12305.00
1/2496500406 – 616-0.80
1/4254250203 – 3081.60
1/8124125102 – 154-0.80
1/1560.062.550.8 – 76.9-0.40
1/3033.031.125.4 – 38.56.11
1/6014.215.612.7 – 19.2-8.97
1/1258.607.816.35 – 9.6210.12
1/2503.903.912.86 – 5.34-0.26
1/5001.801.951.43 – 2.67-7.69
1/10001.000.980.71 – 1.332.04
1/20000.390.490.36 – 0.67-20.4
ニコンF2の測定結果

 機械式で,未保証で安価に販売されていた中古カメラであるにもかかわらず,すべてのシャッタースピードがJIS規格におさまっていて,特に実用域におけるシャッタースピードの精度には注目すべきものがあります。実用機としては完璧です。

ローライ35

 ローライ35は1967年にフランケ&ハイデッケによって発売された小型35mmカメラで,デッケル製コンパーシャッターを,小型にまとめるために機構の一部をボディ側に展開して搭載しています。

ローライ35

 シャッター速度はすべて機械部品によって作られるが,当時のドイツの工業水準から精度がよく維持されており,また調整も細かく可能であることで,現在でも完全動作する物がたくさん流通しています。

 この個体はシャッタースピードが大きくずれた中古品で,オーバーホールから調整までを自分で一通り行ったものです。苦労しました。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
1/2472500406 – 616-5.60
1/4232250203 – 308-7.20
1/8110125102 – 154-12.0
1/1569.262.550.8 – 76.910.7
1/3027.631.125.4 – 38.5-11.3
1/6015.415.612.7 – 19.2-1.28
1/1258.907.816.35 – 9.6214.0
1/2504.603.912.86 – 5.3417.6
1/5002.001.951.43 – 2.672.56
ローライ35の測定結果

 すべてのシャッタースピードがJIS規格におさまっており,実用性も十分にあることがわかります。特にガバナーによる調速が行われない最高速の1/500秒において偏差が2.56%であることは特筆すべきで,製造から50年近く経過した現在においてもシャッターそのものの性能が十分に維持されていることに驚かされます。バネも劣化してないようで,大したものです。

ミノルタオートコード

 ミノルタオートコードは1955年に千代田工学によって発売された中判二眼レフで,レンズシャッターはシチズン製MXVを搭載しています。

 このMXVシャッターは製造時期が古く,シャッタースピードは倍数系列ではなく戦前のヨーロッパに見られた大陸系列になっています。

ミノルタオートコード

 この個体はシャッタースピードが大きくずれた最初期型の故障品を購入し,破損した部品を別の個体から移植して修理を行ったものです。これも苦労しました。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
19201000812 – 1230-8.00
1/2484500406 – 616-3.20
1/5194200162 – 246-3.00
1/1098.010081 – 123-2.00
1/2036.94032.5 – 49.2-7.75
1/5019.22016.2 – 24.6-4.00
1/10012.2108.1 – 12.322.0
1/2004.005.04.1 – 6.2-20.0
1/4002.922.51.8 – 3.416.8
ミノルタオートコードの測定結果

 すべてのシャッタースピードがJIS規格におさまってはいるのですが,全般に露光時間が不足する傾向が見られ,また1/100秒は規格値から大きくずれてしまってます。

 また,ガバナーによる調速を行わない最高速の1/400秒で露光時間が長くなっており,シャッターの劣化も心配です。実際,この測定の後壊れてしまい,シャッターユニットを完全に分解して修理することになりました。

フジカGW690プロフェッショナル

 フジカGW690プロフェッショナルは1978年に富士写真フイルムによって発売された中判レンジファインダーカメラで,レンズシャッターは自社製のものを搭載しています。

フジカGW690プロフェッショナル

 この個体は内蔵のシャッターカウンタが669(シャッタ-回数は6690回)という使い込まれたものをジャンク扱いで購入した物で,購入後しばらくしてシャッターが故障したため修理を行っています。トホホ。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
112101000812 – 123021.0
1/2636500406 – 61627.2
1/4278250203 – 30811.2
1/8171125102 – 15436.8
1/1566.062.550.8 – 76.95.6
1/3030.631.125.4 – 38.5-1.61
1/6019.615.612.7 – 19.225.6
1/1258.407.816.35 – 9.627.55
1/2505.643.912.86 – 5.3444.2
1/5003.301.951.43 – 2.6769.2
フジカGW690プロフェッショナルの測定結果

 測定結果をみると全体的に規定値よりも遅めになっていることがわかります。偏差も大きい上,各シャッタースピードでばらついており,シャッターの劣化が進んでいるようです。

 JIS規格に対しては,1/2秒,1/8秒,1/60秒,1/250秒,1/500秒が許容範囲に収まっておらず,特に1/500秒では撮影結果に影響を与える可能性が大きいです。

 しかし興味深い事に,メーカーが規定する製品仕様はJISよりも広くとってあり,これに従えば1/500秒のみが僅かに外れている他,すべて仕様の範囲内という結果になりました。ええんかなあ。

バージョンアップで幕速も測定

 ASAHI PENTAX SPのオーバーホールを行った時,幕速をきちんと出さないといけなくなったのですが,その時この測定治具をバージョンアップしました。フォトトランジスタをもう1つ追加して,2つのフォトトランジスタの間を通過する幕の時間から,幕速を出すというものです。

フォトトランジスタを追加した基板

 先幕と後幕の両方の幕速を出せますので,後幕が追いついていないかとか,シャッターの走り始めと終わりで露光ムラがないかとか,そういうこともわかります。

 フォトトランジスタは,5穴分だけ離して追加したので,距離にして12.7mmの間隔があります。ここを通過する時間をオシロスコープで測定するのが基本となります。
なんで5穴なの?いや,縦走りのシャッターにも使いたいと思ったからです。

幕速の測定(ニコンF3)

 上記はシャッタースピードを1/500秒にしたニコンF3の測定例(写真写りが悪くて申し訳ない)です。2つのフォトトランジスタに光が当たっている時刻に差があることがわかります。

 この図では,先幕が通過し露光が始まる時刻に3.16msの差があることが観測されていますが,2つのフォトトランジスタの距離は12.7mmですから,フィルムの長辺である36mmを8.96msで走っていることになるわけですね。

 ニコンF3の幕速の仕様は10msとなっていますので,10%ほど速いことになります。幕速は重要ですが,シャッター速度を決定するものではなく,あくまでテンションを決めるものですので,そんなに気にすることもないでしょう。

 次にお見せするのはニコンF2の幕速を測定した結果です。

幕速の測定(ニコンF2)

 同じ1/500秒での結果なのですが,F3と同じように計算すると幕速は7.6msとなり,規格値の75%しかありません。これはかなり速すぎです。

 実はF2のサービスマニュアルには,36mmをF3と同じく10msで,もしシャッターテスターを使う場合は8.8msで,と書いてあるんです。これ,なんでかなあと調べてみると,当時のシャッターテスターが32mmの間隔で幕速を測定する物だったかららしいです。この数字で換算すると確かに8.89msとなるので納得です。

 同じ理屈でF2を考えると随分高速側に寄っていることになりますが,せめてF3と同じ程度にしようとつい幕速を落としたところ,すべてのシャッター速度が全く調整不能に陥り,結局幕速を戻した上で調速カムとガバナーを丸ごと交換するという,えらいことになってしまいました。

 で本題のASAHI PENTAX SPですが,仕様書によると36mmを14msで走ることが規定されていますから,12.7mmであれば4.9msで通過すれば良いことになります。

 そこで1/1000秒に設定してから,この数字を目指してまず後幕のテンションを調整します。そして仕様書に規定されているように,先幕をこれより0.1msだけ早く4.8msになるようにテンションを調整して幕速を出してから,カムの調整を行って1/1000秒を出すわけです。

 幕速を調整しないで1/1000秒を無理に調整しようとすると,テンションを無用に上げすぎてしまうことがあります。こうなると露光が不安定になりますし,調整も狂いやすく,壊れやすくなる上に,シャッターが終点で跳ね返ってしまったりするので,ろくな事がありません。まず幕速をそれなりに出す,それから各速度を調整する,これがとても大事です。

 この時の結果です。

シャッタースピード(s)測定値(ms)規格値(ms)許容範囲(ms)偏差(%)
19101000812 – 1230-9.00
1/2484500406 – 616-3.20
1/4244250203 – 308-2.40
1/8117125102 – 154-6.40
1/1558.062.550.8 – 76.9-7.20
1/3032.831.125.4 – 38.55.47
1/6016.915.612.7 – 19.28.33
1/1257.27.816.35 – 9.62-7.81
1/2503.763.912.86 – 5.34-3.84
1/5002.421.951.43 – 2.6724.1
1/10001.300.980.71 – 1.3332.7
ASAHI PENTAX SPの測定結果

 どうですか,全速ギリギリですけどJISに入ってます。1/500秒と1/1000秒がちょっと心許ないんですが,もともと高速なのでこれくらいならそんなに問題とはならないでしょうし,それ以上に1/250秒と1/500秒にしっかりと差があること,1/500秒と1/1000秒にも倍近い差があることが大切です。差が小さいとわざわざシャッタースピードを切り替えて使う意味がなくなりますからね。

 結構深いレベルの分解を行ったことと,もともとそんなに使い込まれた個体ではなかったということもあり,巻き上げのフィーリングもシャッターの音も非常に良く,よくあるSPの程度の悪い中古品とは別物の感じで,使っていてとても楽しい軽快な仕上がりです。

 今回の治具無しで行き当たりばったりで調整を行っても,これだけの結果を得るのは難しかったんじゃないかと思います。

おわりに

 わずかな費用で,アマチュアが確認を行うのに十分な精度でシャッタースピードを測定出来る事を紹介しました。

 前述のようにシャッタースピードはカメラにとって基本的な性能の1つであり,その精度の維持管理は確実な撮影結果を得るために必須です。

 自分で修理や調整を行うために必要なことは言うまでもないのですが,普段から実力がどの程度出ているかを知っておくことは確実な撮影に非常に有益で,特にいつ壊れてもおかしくない古いカメラを使う際には安心感に繋がります。

 なお,今回測定結果を示したカメラは実写テストの結果,いずれも実用上全く問題がなく良好なネガを作る事が出来たことを付け加えておきます。

Posted by gshoes