kobo libra COLOURを買いました
- 2024/05/03 16:33
- カテゴリー:散財
電子ペーパー(特にEink)に縁のあった私としては,技術的な面白さに加えて視認性の観点から,自炊を含めた電子書籍のプレイヤーとしてKindleを昔から愛用してきました。
とはいえ,近年のKindleはディスプレイの進歩がほとんどなく,新しい端末に更新する機会を逸していました。考えてみれば,日本語に未対応のKindleに始まり,300dpiになったり7インチになったりと,技十的な進歩をきっかけに新しい物を買い足していったわけですが,ここ数年そうしたことがなかったことに気が付きます。
300dpiで印刷物相当になった次は,当然カラー化な訳ですが,これがなかなかお手頃価格に降りてくることがなく,またKindleシリーズにカラーモデルが登場する気配もない(当然タブレットがそれを担うからですが)ので,ずっと手を出さずにいました。
ところが,koboにお手頃なカラーモデルが登場するという話を聞きつけました。6インチモデルは3万円を切ります。7インチモデルは35000円でペンまで使えるというありがたいマシンです。ああ,Kindleはもうだめかも・・・
これまで何度もkoboには心が揺らいできたのですが,PDFも無加工でそのまま流し込める汎用性に魅力を感じつつも,Kindleのコンテンツが読めないことが足かせとなって,手を出さずに来ました。
しかし,カラーになったなら話は別です。これは新しいEinkを試す絶好のチャンスでしょう。
ということで,予約開始とほぼ同時にポチって,約束通り発売日の5月1日に届きました。買ったモデルは7インチモデルであるkobo libra COLOUR(色はブラック)です。
正直なところ,koboにはあまりいいイメージを持っていません。これはもう好き嫌いの話なのですが,koboが楽天傘下にあるということがまず決定的でした。いや,楽天が嫌いというわけではなく,これ以上「〜経済圏」と呼ばれる物に巻き取られたくないという気持ちから,避けてきたということです。だから,今回のkobo libra COLOURについても楽天Booksのコンテンツを買うことはしないと思います。
それだと安価に端末を(しかも継続的に)作ってくれているkoboに申し訳ないんですが,amazonのように赤字でばらまくということでもないでしょうから,許してもらいましょう。
前置きが長くなりましたが,kobo libra COLOURのざっくりレビューです。
(1)外観,質感
外観は⒎イントしてはそつなくまとまっていて,物理キーも備わっていて助かります。6インチモデルにしなかったのはこの物理キーが欲しかったからで,大きさはKindleOasisとほぼ同じです。
ただし厚みはかなりあり,持った感触は全然別物です。また,Oasisは高級機と言うこともありアルミ製ですが,kobo libra COLOURはプラスチックです。この値段なら仕方がないのですが,質感は今ひとつです。
電源ボタンが左上の背面にあるというのもいまいちですが,これは慣れの問題かも知れません。
とても残何なのは,ディスプレイが奥に落ち込んでいることでしょうか。Kindleの高級機はディスプレイが表面とツライチになっていて,あたかも文字がそこに浮かんでいるように見えて,奥行き感を感じません。これが読書体験としては思った以上に好感触なのですが,それはすでに私が紙に印刷された文字を追いかけているのと同じ感覚である事の裏返しだともいえます。
しかしkobo libra COLOURはディスプレイが奥に落ち込んでいることで,どうも一世代前のノートPCを見ているような気分させられます。つまるところ,表示面と同じ高さに余計な枠が目に入ると,その段階で紙との違いを認識してしまうようで,全然違う気分になってしまうのです。
このあたり,すでにディスコンになって久しいKindle Voyageが最高傑作だと思っているのですが,kobo libra COLOURはこの円安時代に頑張っているとは言え,もう少し頑張って欲しかったと思います。
(2)カラー
カラーは想像以上に素晴らしいです。読書を始めてしまえばカラーもモノクロも関係ないと思っていましたが,挿絵や表紙がカラーになるとこんなにワクワクする物なんですね。読書体験というのは装丁も含めての物だと再認識しました。
それに,本の一覧表示でもカラフルな表紙がずらーっと並ぶと,これも感動的です。表紙は本の顔です。手に取ってもらおう,買ってもらおうとみんな必死に磨き上げてきます。いわば未来の読者との対話であって,私の琴線に触れた結果私のkobo libra COLOURに収まった本が並ぶ姿は,ちょっとした感動があります。
これだけの本がここにすべておさまっている,これさえあれば何日も本と暮らせるという期待感を,最初にKindleを手に入れた時に味わったことを思い出します。
そのカラーの表示品質は,下地が完全な白ではないこと,発色が悪くくすんでいること,そして150dpiになってしまうことから,はっきりいってよくありません。一言で言うなら新聞のカラー印刷くらいの物です。LCDやOLEDのタブレットには全く歯が立ちません(そりゃそうです,解像度もすごいですからねipadなんかは)
でも,それらLCDなんかは肝心の文字を見ることには向いていません。これは反射型デバイスのEinkが圧勝で,そもそも写真を鑑賞するのではなく文字を読むという行為が大半である読書には,文字の読みやすさこそが正義です。その点で言うと,私はこのkobo libra COLOURこそベストバランスだと思いました。
ところでカラーと白黒の切り替えについてですが,これはまだはっきりしません。グレースケールのページでもカラーのモアレが出てる場合もありますし,600dpiのモノクロ二値の場合には白黒白黒モードで動いているような感じがします。
なにがスイッチになっているのかさえわかれば,コンテンツを生成するときに意識できるのでありがたいのですが,これはもう少し試行錯誤が必要だと思います。
え,なんでそんなことにこだわるかですか?
だって,白黒なら300dpiなのに,カラーだと150dpiになってしまうんですよ。カラーなら150dpiもあれば十分なんですが,白黒のページが150dpiで表示されるなら,それは残念ですよね。
(3)使い勝手
UIまわりはKindleとは違って少々違和感があります。例えばホームに戻るためにタッチするエリアが中央部であることなどは混乱の原因になっています。
前述のように電源ボタンの位置もどうかと思いますし,USBコネクタも側面にあるのは充電の時に邪魔になって困ります。
そのUSBについても,PCに接続した時にいちいち確認を取ってくるあたり面倒くさくて,そもそもPCに繋ぐのだからファイルの転送をしたいわけで,即マウントして欲しいわけです。この一手間がサーッとやる気を削いでくれます。
読書を始めてみると,ややレスポンスが遅いことは期待外れでしたが,別に実用上問題があるほどではないので気にしません。
ただ,表示の品質はKindleの高級機に比べると今ひとつで,やはりバックの白がよくないです。もっと鮮やかな白であって欲しいと思います。
とはいえこれはディスプレイデバイスだけの問題とへいえず,フロントライトの問題もあるようです。Kindleではフロントライトがとても良く出来ていて,暗い所での視認性ではなく,明るいところで白をより白く見せるためのものでした。
kobo libra COLOURはフロントライトが良くないので,Einkの地の色が目立つのだと思います。ではその良くない点というのはなにかといえば,それは色と明るさの調整機能です。
色も調整が可能ではありますがちょうどいい色に出来ないところがもどかしく,寝る前に勝手に電球色に切り替える機能などいらないから,もっと作り込んで欲しかったです。
明るさについては自動調整がありません。Kindleなら周囲の明るさにあわせてフロントライトの明るさも調整をし,白がより綺麗に見えるようにしてくれましたが,kobo libra COLOURにはこの機能がないので周囲の明るさで見え方が大きく変わります。
かといって手動で毎回調整するのも面倒なので,ここは不満点の1つです。
(4)扱えるファイル
Kindlenの最大の欠点は,その素晴らしい読書体験を実質的にKindleのコンテンツだけでしか享受できないことだったと思います。一応PDFも読めますが,表示品質が悪かったり拡大縮小が実質的に出来なかったり,動作がとにかく遅くなったりと,使い物になりませんでした。
そこで私などはPDFをKindleの解像度に合わせてリサイズし,縁をカットしたmobiに変換していたのですが,これがなかなか手間でついついサボりがちでした。
そこへ行くとこのkobo libra COLOURはScanSnapで作ったPDFをそのまま無加工で快適に読めます。
動作もサクサクですし,縁のカットも112%の拡大でOK,拡大率も拡大中央もちゃんとコンテンツごとに覚えていてくれるので快適です。
epubなどの他のフォーマットはまだ試せていませんが,PDFがこれだけしっかり扱えるならむしろ他のフォーマットの必要などないかも知れなくて,少なくともうちでは「自炊プレイヤー」としての立場を不動のものとしました。
(5)スリープモード
kobo libra COLOURは電源OFFとは別にスリープモードがあり,こちらが実運用では使われるモードです。Kindleでは電源OFFは見えない位置にありますが,kobo libra COLOURでは電源OFFも別にあり,このステートに入るための条件も設定出来ます。
スリープモードでは,画面に今読んでいる本の表紙がカラーで表示されます。これがなかなかよくて,そろそろ寝るか,と本を閉じたときに,目に入る本の表紙がそこに出ている事は,明日の夜に続きを読むのが楽しみになる仕掛けだと思います。
これがKindleでは広告かあまり意味のない画像であり,面白くありません。以前のKindleでは好きな画像をスリープモードでの表示画像にすることができましたので,私は古今東西の書店のブックカバーをスキャンして順番に表示するようにしていました。これはこれでとても面白かったのですが,同じ事がkobo libra COLOURでできたらいいなあと思います。
(6)残念な事
デザイン,プラスチックで出来た筐体,そしてディスプレイが落ち込んでいることは先に述べましたが,もっともバカらしいのが別売りのペンです。このペン,なんと2万円近くします。35000円の本体に2万円のペン,しかもそのペンで出来る事は大した事ではないという,そんな状態で一体誰が買うのかと思います。
先日4万円で買ったiPadでは,中国製のペンが3000円ほどで買えました。これでも立派に使える事を考えると,koboでペンを使うことはないと断言しましょう。
(7)まとめ
なんと言ってもカラーです。カラーの電子書籍リーダーがこの値段とこの大きさで手に入ることそのものが買う理由になりますし,私もその点だけで満足していますが,細かいところはやはりKindleに及ばないという感じがします。
ハンドリングの悪さもあって,私はkobo libra COLOURを家で使う専用にして持ち歩く事をしないつもりです。悪い点として書くと気の毒なのでここに書きますが,背面にRakutenと書かれていることも正直恥ずかしいです。
Einkの質も,カラーという点を除けば最上位とは言いがたく,文字を読むという行為だけで見ればまだまだ上があります。その点で,これですべてを置き換えると言うよりも,Kindle Oasisとの併用になるだろうと思います。
とはいえ,原稿のOasisをあの値段で買うのかと言えばそれもバカバカしく,今から買うならkobo libra COLOURは有力な選択肢の1つとなるでしょう。