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2010年01月18日の記事は以下のとおりです。

QuietComfort15を買う

  • 2010/01/18 15:47
  • カテゴリー:散財

 BOSEのノイズキャンセリングヘッドフォン,QuietComfort15(以下QC15)を買いました。アップルストアからWEBで購入,価格は値引き無しの39900円でした。即納だったので注文の翌日には届きました。

 なぜ,こんな高価なヘッドフォンを買う羽目になったのか,ですが,私の上に年末に引っ越してきた人の物音に,弱り果てているからです。

 今の部屋に入って8年にもなるのですが,これだけ物音の大きさにビクビクして過ごすのは初めてのことで,追い詰められるような恐ろしさにおびえているという感じです。

 もともと木造のアパートで,足音や扉の開け閉めが響くのは織り込み済みなのですが,かかとでドスンドスン歩く音がまず強烈で,天井の蛍光灯がビリビリと音を立てるほどです。最初は地震かと思いました。

 扉を閉めるときも,勢いよくパーンと閉めるので,それはもうすごい音がします。そしてじっとしていないらしく,ウロウロ歩き回るのですが,どこにいるのか手に取るように分かってしまいます。

 その割には夜は早く,11時に寝てしまうこともしばしばです。当然朝は早く,6時に起床,6時40分には出勤という感じです。私は8時まで寝ていられる恵まれた環境にあるのですが,仕方なく耳栓をして寝ていても,6時には必ず起こされてしまいます。

 どういうわけだか土日も出勤のようですし,出勤時間も帰宅時間もバラツキがあり,まだ規則性が飲み込めていません。二人いるときもあるようですが,平日は一人だけでいるようです。(ということも丸わかりなんです)

 自炊する人ではないようで,家にいるときでもお昼時と夕食の時間には1時間ほど外出してきます。

 てなわけで,まるでストーカーみたいな気分ですが,なにせ家にいても落ち着かず,一時食事も出来ないほどでした。12月の中頃から少しずつ荷物を運び始めたらしいのですが,その時から年末年始の間,毎日毎日不意にゴトゴトと音をさせ,その神出鬼没な攻撃に,さながらベトコンにおびえ心を病んでいくアメリカの新兵の気分でした。

 相手も悪気があってやってるわけではありませんし,朝6時の起床だって別に普通です。夜は早く寝てしまって夜中も静か,土日も不在が多いので,非常識と呼べるものは何一つなく,ただ,普通の足音が強烈だ,ということだけなのです。

 だから,苦情をいうのも難しく,ある程度の我慢は必要だろうと思う訳ですが,この部屋に来て8年,一人暮らしをはじめて15年になる私にとって,怖いと思うほど大きな歩く音は,未経験です。

 そういう歩き方をする人って,世の中にはいるでしょうし,今までそれで困ってこなかったのだろうから仕方がない気もしますが,誰かが下にいるかどうかを意識するまでもなく,いい大人が,大きな音を出して騒々しくドカドカ歩くということが,私にはみっともない事と思えてなりません。そういうことを気にしない親御さんだったんでしょうね。

 まあそれはそれとして,引っ越しをするにしてもすぐには無理,すでに会社から家に帰ることが嫌で,家にいてもずっと鼓動が早く,落ち着かない状況でいるのは体に悪いだろうと危機感が募っていました。

 寝るときは耳栓をして,かつ音が最も大きい扉の音から遠くなるように布団の向きを変えていますが,それでも目が覚めるくらいの音ですから,耳栓無しで過ごさねばならない起きている時間帯をどうにかしないと,もう参ってしまいます。

 そこで思いついたのが,ノイズキャンセリングヘッドフォンです。

 電子耳栓ともいうべき,最近流行っているこの電子機器ですが,私はかなり否定的な人でした。これは,電気の力を使って聴力を落とす機械です。不自然という直感的な気分が1つと,周囲からの情報を遮断するという事は,社会との関わりをカットするという意思の象徴的行為であり,それは自ら「孤独」を肯定し作り出しているという,究極の個人主義の形であると思ったからです。

 しかし,もともとノイズキャンセリングヘッドフォンは航空機の騒音をキャンセルして快適に過ごすことを目的に生まれましたし,戦闘機など軍事用途への応用では,パイロットの耳の保護が目的で採用されたりという,非常にまっとうな目的がその源流にあります。

 今回は,もう防ぎようのない「嫌な音」を防いで,心身ともに疲労するのを防ごうということですので,娯楽製品と言うよりも医療機器に近いという位置付けで,私は導入を真剣に考えることにしました。

 ノイズキャンセルヘッドフォンは今ブームですので,あちこちのメーカーから,高価なものから安価なものまで,それはもうたくさんの種類から選ぶことが出来ます。ただ,動作の確実な高価なものは実質2社で,BOSEとソニーです。

 ソニーは信号処理をDSPで行うディジタル方式で,実売が3万円ちょっとという感じです。性能の高さも定評があります。一方のBOSEはアナログ方式ですが,さすがに老舗ですし,30年もこの分野のリーダーだった会社ですから,作るものは確実でしょう。事実,BOSEのノイズキャンセリングヘッドフォンで,その消音効果に不満は一切耳にしません。

 BOSEではQC2,QC3,そしてQC15の3つが現在買うことの出来るものですが,QC3は耳の上から押しつけるタイプなので耳が痛くなり,長時間の使用には耐えられないと思われますので最初から除外。QC2とその後継のQC15になりますが,QC15は価格も下がり,電池も単4が1本であること,そして連続35時間動作するということで,申し分のない仕様です。

 私は,サーっというバックグランドのホワイトノイズがものすごく気になる人で,ノイズキャンセリングヘッドフォンがノイズを発生させてどうする,という笑い話に使うほどです。このノイズの大きさに関して言えば,ソニーの評判は今ひとつのようですが,対するBOSEは,最新のQC15についてはほとんど聞こえないとい話です。

 もう1つ,QC15は直販モデルなので,量販店では買えません。直営店では試すことも買うことも可能ですが,そんなにあちこちにあるわけではありませんし,もちろん値引きもポイントもありません。一方のソニーのものはどこでも手に入ります。この安心感というのは,心理的に結構大きなものがあります。

 散々悩んだのですが,QC15については悪い評判を本当に聞かないということで,もうこちらに決めました。あまり長い時間悩むことは,購入理由から考えて得策ではありません。とにかく急いで最高のものを手に入れることが,今回は重要なのです。

 BOSEの直販サイトへ行くと,納期が数日かかるという事で,次に探すのはアップルストアです。アップルストアではリアル店舗でも在庫があったりするそうなので,渋谷あたりに出向いてもよかったのでしょうが,24時間以内に発送可能ということで通販を使う事にしました。どのみち値引きもないのですから,もうどこで買っても一緒です。こういうのも気が楽なものです。

 さて,翌日届いたQC15,早速使ってみました。


(1)消音効果

 最初,すーっと周囲の騒音が消えたことに感心しましたが,私は耳栓をして眠る人なので,音がきこえないことを珍しがったり,とりたてて感動したりはしません。それで,実際に自分で扉の開け閉めをしたり,壁をコンコン叩いたりしてみましたが,どうもそうした音は良くきこえるんです。

 期待はずれかなと思ったのですが,そうした音を出していても,全然不愉快にならないことに気が付きました。

 つまり,私が嫌だと思っている低い音,特にドスンドスンという音については,確実に消えているんですが,扉が閉まるときのカーンという音や,人の話し声などはそれほど消えず,耳に入ってくるのです。

 また,近くで行われているマンションの工事の音も,ほとんどきこえなくなりました。特に重機のエンジン音は全くと言っていいほど聞こえず,金属があたるカーンという音くらいがきこえてくるので,工事をやっていることは分かりますが,不愉快な音は消えています。

 もともと飛行機のエンジンの音を消すために生まれたヘッドフォンで,特に不愉快な周波数の音を小さくすることが目的ですから,私が怖いとか不愉快と思う周波数成分を,きちんとカットしてくれているのでしょう。

 すべての音をカットしてしまうと,本当に周囲から切断されて社会性を失いますが,これは音として出ている情報のうち,人間が苦手な周波数成分をカットして,それ以外は聞こえるようにすることで,外部の状況を見失わず,また自我をきちんと保てるように絶妙な調整がなされているようです。

 技術的に全帯域を消すことも可能かも知れませんが,それこそ聴覚を失うに等しいわけで,外からの適当な情報の流入を防いでしまうと,その弊害の方が大きいはずです。QC15が見事だなと思うのは,ちゃんと外からの情報を通して使用者の実生活に支障のないようにした上で,不愉快だったり有害だったりする部分をきちんと消すことにあります。どこをどれくらい消せばよいのか,そこが各社のノウハウになるのでしょうが,QC15のそれはかなりのものがあるように思います。

 ここで,私はノイズキャンセリングヘッドフォンを,周囲の音を逆相で打ち消すという「音を消す装置」と思っていたことが間違いで,特定の周波数成分を取り除くものという認識に改めました。

 そもそも密閉型のヘッドフォンですので,スイッチをオフにしてあっても,かなりの音が遮断されます。だから,この段階でかなり情報量が落ちているとは思いますが,そこもまあ絶妙で,人の話し声や物音は消えません。

 不愉快な音の成分についてつらつら考えたのですが,危険な事,命にかかるような事が起きている,もしくは起きそうな時に出ている音に,どうも落ち着かないのではないかと思います。

 それはもう反射的な連想ともいえるのですが,例えば電話の呼び出し音や玄関の呼び鈴にどきっとしたり,扉をドンドンと叩く音に怯えたりという話は,実体験を持つ方もいらっしゃるでしょうし,そうでなくとも話くらいは耳にされたこともあるでしょう。

 そういう成分をカットすれば,安心して生活が出来ます。完全に音を消すとかえって危ないのは自明ですが,外で何が起きているかを知るくらいの情報はきちんと入ってきます。それがさらに安心と落ち着きに繋がります。


(2)バックグランドのノイズ

 ノイズキャンセリングヘッドフォンに付きものだったバックグランドのノイズですが,評判通りほとんど聞こえません。かなり優秀だと思います。


(3)装着感

 装着感も抜群です。パッドが柔らかすぎず硬すぎずで快適なこと,左右からの締め付けも適度で圧迫感は少なく,ヘッドバンドの位置もちょうど良いので,少々首を動かしたくらいでは外れたりずれたりしません。軽いこともあって,しっかり装着出来ている上に,付け心地もとても快適です。私はこれを4時間ほどしていましたが,付けていることを忘れるほどでした。


(4)音質

 音質については,私はそれほど求めていませんでしたから,まあどうでもよかったのですが,実際の所音を消してしまうと,テレビやオーディオの音はこのヘッドフォンを経由して聞くことになってしまいますから,実は音質は結構重要なポイントと言えます。

 QC15の音は,低音がやや強い傾向にあり,高域の伸びがないことと,解像度が低いことがまず最初に気になりました。ロックやポップスだと元気が良くてばっちりでしょうが,クラシックやジャズを聞き込むには,ちょっともの足りません。

 スタックスのヘッドフォンと比べるのも間違いですが,切れ味やスピード感は今ひとつな印象です。ですが,聴き疲れすることのない音で,中域の豊かさからくるボーカルの自然さには,とても心地よいものを感じました。

 加えて,ノイズキャンセルの効果も絶大で,静かな環境だけに良く音がきこえます。長時間の利用に対して,音で疲れるということが全くない味付けに,BOSEという会社のノウハウの高さを感じました。


(5)電池

 電池は前述の通り単4を1本です。QC2やQC3が専用の充電池だったことを考えると,非常に望ましい進化です。1本で35時間ということですから,1週間くらいはつかえるでしょう。私は付属のアルカリ電池がなくなったら使おうと,エネループを用意しました。


(6)外観,デザイン,質感

 外観は見たままですが,シルバーが目立つデザインはちょっとぎょっとするので,もう少し落ち着いたデザインにして欲しいと思いました。質感はもともと軽いこともあり,値段よりもちゃちに感じます。ソリッド感がないというか,しっかり感がないというか。決して悪いレベルではないのですが,中国製だといわれれば,その通りかなと思う感じでしょう。


(7)ケーブル

 ケーブルは160cmほどもあり,結構長めです。細いので取り回しは楽な方ですが,それでもテレビやPCに繋ぐと視野にケーブルが入ってきます。手に引っかかりそうで面倒臭いです。また,席を離れるとき,トイレに行くときなど,足先まで届くほど長いケーブルですから,はっきりいって邪魔です。

 大事な事なのですが,ケーブルを本体から外して使えます。本当に電子耳栓として使う事ができるのです。ケーブルが長いのは,ケーブルを外せるようになっているからだと思います。

 なお,ケーブルが外せるようになっているとはいえ,本体との接続は特殊な4極のプラグで,接続機器のインピーダンスに応じてゲインをHとLで切り替えるスイッチもついています。

 私がヘッドフォンを消耗品と考えるのは,ヘッドフォン本体は壊れてなくとも,ケーブルが壊れてしまって使えなくなってしまうからです。せっかく耳に馴染んだヘッドフォンですので手放すのは惜しく,その点プロ用のモニタヘッドフォンには,ケーブルを交換可能にしてあるものもあります。

 QC15もケーブルだけ別売りで購入可能ですので,長く使えそうです。


(8)付属品

 キャリングケース,飛行機の座席にあるジャックを変換するアダプタくらいのものです。キャリングケースは収まりも良く,使いたいと思ったのですが,ヘッドバンドの長さを最も短い状態にしないと収納できず,いちいち調整をしないといけないのは面倒なので,普段使いでは使わないことになりそうです。


(9)まとめ

 実は友人がWalkmanのXシリーズを持っており,週末これに搭載されているディジタルノイズキャンセリングを試してみる機会がありました。

 比べてみると,QC15よりも消えた音の成分が多いという印象です。嫌な低音もしっかり消えていますし,それ以外のものがぶつかる甲高い音も,室内モードに設定するとQC15より良く消えている感じがします。ノイズはやや多いのですが,気になるほどのレベルではなく,かなりよいと感じました。

 しかし,ノイズキャンセリングを行ったときの違和感というか,位相のズレのような感覚というのは,QC15以上のものがあります。QC15はすごく自然なのですが,ソニーのものはちょっとねじれたような感覚がありました。打ち消し用に作った波形の位相の違いでもあるんでしょうか。

 慣れの問題もあるとは思いますが,とにかく私はソニーのものは長時間はきついと思いました。QC15の情報の整理の仕方や装着時の違和感のなさ,快適さは,まさに特筆すべきものがあると思います。

 果たして4万円の価値があるか,といわれれば,これは難しいです。耳を大きな音から守る必要があるとか,工事現場が近く半年ほど毎日騒音に悩まされるとか,物音がうるさくて集中できないとか,そういう状況では確実に意味があると思います。

 特に,ノイズキャンセリングという機能に必要性がある人というのは,長時間の装着が避けられない人も多いことでしょう。装着感が優れていることは必須ですし,音も聴き疲れしないようになっていることは,長時間使用にとって最低限欲しい性能です。

 私自身は,これまで自分の部屋の真そばの3方向がマンションの工事だったことがあり,特に重機のディーゼルエンジンの音に随分と悩まされてきました。それがこれでスカッと消えたわけですから,どうしてもっと早くにこれを買って幸せにならなかったのだろうかと,後悔をしています。

 相手が原因で発生した不愉快に4万円かけて対策するという事に抵抗のある人もあるかと思いますが,相手に落ち度がなく,また社会というのは持ちつ持たれつな所がありますので,むしろ4万円くらいで問題が解決するなら安いものといえるかも知れません。

 最後になりますが,例えば子供の騒ぎ声が不愉快だからとこれを買っても,おそらくそれほど消えません。きっとがっかりすると思いますが,それを消さないこともBOSEのノウハウだと思うしかありません。また,これを装着して外出すると,音はそこそこ聞こえるので油断しますが,危険を察知するのに必要な成分の音が消えていて,エンジンの音とか電車の音などは消えて危険ですから,基本的に装着して出かけないことをおすすめしておきたいと思います。

 ところで,ケーブルの長さに面倒臭さを感じたときは,Bluetoothでワイヤレスにするとばっちりです。私も地デジマシンのUSB端子にドングルを取り付け,手元のステレオヘッドセットを使ってワイヤレス環境にしてみました。

 結果は上々で,もうあのケーブルをだらだら引っ張ろうとは思いません。ヘッドフォンを自由に選んで使えるステレオヘッドセットはまだ少々高価ですが,QC15との組み合わせは本当に快適です。

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