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2024年01月の記事は以下のとおりです。

二度目のUPSの電池交換

 昨年11月,高校の時の友人達とオンライン飲み会をやっているときに,突然けたたましい電子音がなり始めました。友人達も「大丈夫か」と心配してくれたのですが,当の本人は酔いが回っていたこともあり,原因はおろか,どこで鳴っているのかもをなかなか特定出来ず,判明したのはオンライン飲み会が終わってからでした。

 発生源は,無停電電源のBX35XFVでした。電池の交換時期を知らせるアラームが鳴っていた,というのが原因でした。

 このUPS,そういえばかつて,確か正月だったか,同じような電池の交換時期の警告が出て交換したことがあったのですが,艦長日誌を調べてみるとなんとちょうど10年前,2013年の1月に交換をしていました。

 そこには2003年に購入したとあるので,前回の電離交換から10年,本体は実に20年も使っていることになります。いやー,20年ですよ,20年。

 今手元に20年前のものがありますか?ましてそれが現役だったりしますか?

 私が若い頃,20年前の物と言えばもう古くさくて使い物にならず,動いたとしても買い直した方が全然便利で安くつくというのが当たり前でした。色やデザイン,文字の形や商品名だって,一目で嫌になるくらい古くさく感じたものです。

 それがこのBX35XVFはどうです,現行の機種と見た目もそんなに変わらないじゃないですか。出来る事も変わりませんし,変わったのはお値段くらいのものです。

 こういうところでも,進歩のなかった日本を痛感するのです。ああ失われた30年。

 とりあえずブザー停止ボタンを押して警告音を止めて,同じボタンを長押しして手動テストを行ってみますが,警告は出ません。しかし次の警告に備えて新しい電池を要しておくことにしました。

 ところが交換用のBP50XFを探してみると,すでに廃番。どこにも売っていません。20年も前の本体ですから,すでに壊れたり置き換えられたりしているのが大半で,今さら交換用のバッテリーなどを用意するのはむしろ危険だったりするかもしれません。無理もないことです。

 しかし,あきらめが付かない私は,このサイズの小型シール鉛蓄電池を探して見ることにしました。自動車用の中国製バッテリーを売る会社のものがなかなか良い感じだったので手配したのですが,2つ必要だったことがわかり一旦キャンセル。3350円の電池が2つですので7000円ほど,これに処分のための回収必要まで考えるとお得とは言えない金額でした。

 さらに探してみると,現行機種用の交換用のバッテリーが見つかりました。経常や仕様は同じなのですが,どうもコネクタの形状が違うらしいです。12000円ほどもするので気にしてもいなかったのですが,あるサイトで9841円という特価を見つけてしまい,急いでこれが使えないかと検討を始めました。

 BP50XFで使っている電池は,規格としては6V7Ahの鉛シール蓄電池です。ユアサなんかではNP7-6と呼ばれているものになります。標準品なのでメーカーが違っていても大丈夫でしょうが,現在使っている物はパナソニックのものでした。

 さすがは日本製,10年も使えたんですからもう十分です。

 現行機種の交換用のバッテリーはBXB50Fというものですが,これも同じ仕様です。コネクタの違いは,旧品のケーブルごと入れ換えてしまえば問題ないはずで,一応オムロンが採用した電池ですし,廃電池の無料の引き取りサービスがあることを考慮すると,BXB50Fが9481円なら下位でしょう。

 果たして数日後に届いたBXB50Fは,大きさや電気的な仕様は全く同じ,話の通りコネクタだけが違っていましたが,あとはなにも変わりません。電池のメーカーは残念ながら中国のメーカーでしたが,それもまあオムロンのお眼鏡にかなっているのであれば,信じるに足るでしょう。

 実際の交換作業は次の警告が出てからと思っていたら12月末に警告がでました。この時も手動テストはパスしたのでそのまま使うことにしたのですが,さすがに今回も同じように警告が出てしまえば,もう諦めるしかないでしょう。

 さっさと電池を本体から外し,ケーブルを交換します。電池のターミナルに刺さっているだけのケーブルですから,交換などは簡単な作業です。

 電池の用意が出来たら本体にセット。こちらも問題なく終わって手動テストを行うとこれもパス。あっけなく作業は終わってしまいました。

 作業後,何気なく調べてみると現行品が新品で12000円ほどで買えたんですね。電池が10000万円ですから,2000円ちょっとで本体ごとの新品になるなら,その方が良かったかもしれません。

 そんなことを言っていても始まりません。すでに3回目の電池で運用は始まっています。本体も壊れる気配はありませんし,このまま使えるだけ使うことにしましょう。

 この電池も10年持つとうれしいのですが,そうするともう娘は成人しています。前回の交換では,アラームがお昼寝中の赤ちゃんの娘を起こしてしまいましたが,今回は小学生です。

 次は大人ですか・・・人の一生とはかくも短いものだなと,思います。

 

実に微妙なSEQTRAK

 毎年恒例のNAMM SHOWの足音が聞こえてくるこの時期になると,世界中の電子楽器メーカーから新製品が発表になります。ここ10年ほどは大きなメーカーではなく,小さなメーカーが発表する物にも面白いものがあり,油断なりません。

 そんな1月17日,日本が誇る総合楽器メーカーにして,電子楽器の最先端を走る,VOCALOIDの生みの親,ヤマハから,興味深い楽器が発表になりました。

 SEQTRAKです。

 姿形からはどんな楽器か想像できません。鍵盤はなく,ディスプレイもありません。光り物は存在をアピールせず,どちらかというとツマミ類が目立ち,それらがグレートオレンジというかわいらしい色に塗られた横長の筐体にならんでいます。

 お値段55000円。安くはないけど,高くもないという印象・・・

 なになに,直感的な操作でアイデアをすぐに形にするミュージックプロダクションスタジオ?よくわからん。

 こういう商品は何が出来るかを知るのはなかなか難しく,従ってスペックを見ていきます。とりあえずAWM2の128音ポリというのはわかった。4オペのFM温顔があることもわかった。で???

 パッと頭に浮かぶのはQYシリーズです。VHSカセット(といっても多くの方はわからんでしょうが)サイズにシンセサイザー,ドラムマシン,シーケンサーを統合して,いつでもどこでも電車の中でも音楽制作が可能なガジェットとして登場した初代QY-10を皮切りに,小型のオールインワン音楽制作マシンとしてよく使われたシリーズです。

 とはいうものの,MIDI機器を繋いで本気で音楽を作っている人やキーボードを自在に演奏出来る人は案外持っておらす,持っているのはギタリストなんかの非キーボーディストで,しかし結局彼らはQY-10の複雑な操作をマスターできずに,後輩に法外な値段で売りつけることが散見されたように思います。私の周りだけかも知れませんが。

 かくいう私もQY-10には興味を持ったものの,店頭で音を聴いて買うのをやめました。その後QYシリーズは何世代か出たようですが,その頃にはすっかり興味を失っており,気が付いたら新品を買うことは出来なくなっていたのです。

 そう思うとQYシリーズを買わなかったことが悔やまれてきます。実際,大げさなMacなりPCを立ち上げてケーブルを配線し,大きな鍵盤に向かい合って「やるぞーいっぱーつ」と音楽を作ることはなかなか面倒になっています。

 見ればSEQTRAKなるものは小さく,電池で動き,音もなかなか良さそうな感じです。しかも128音ポリですから,同時発音数のやりくりをしなくても済みそうです。

 予約開始は1月19日,発売は1月26日という事ですが,きっと初回は売り切れ必至でしょう。QYシリーズも迷っているうちに買い逃しているわけですから,ここは買って後悔するべきではないかと予約をし,あれよあれよという間に1月26日に品物が届いてしまいました。

 もちろん,購入(予約)までのマニュアルは目を通し,動画も見てはみましたが,やっぱりよく分かりません。私の疑問は主に2つ,シンセサイザーのトラックが2つ,FM音源を入れても3つしかないのにどうやって音楽をつくるんだという点と,パターンを16個しか並べることの出来ないシーケンサーでは窮屈過ぎて音楽なんか作れないだろうということでした。

 ついでにいうと,ベースとメロディをどうやって打ち込むのかもさっぱりです。

 でもまあ,BluetoothMIDIにも対応するし,USBもついているんだから,最悪MICRO KEY2 Airを繋いでスタジオ用最小セットとして練習に使えるかもなと,割と簡単に考えていました。

 届いたところで私は,途方に暮れてしまいました。

(1)このマシンはループ音楽を作るものだった

 なにを今さら,な話で恥ずかしいのですが,このマシンはループで音楽を作る繰り返し演奏マシンです。さらにいうと自動演奏を行うためのマシンではなく,バッキングを延々ループで演奏させ,プレイヤーはリアルタイムで音色を変化させたり並べるパターンを変更して「パフォーマンス」する道具です。

 なので,アイデアを形にといっても,そのアイデアが荘厳なオーケストレーションだったり,複雑なコードプログレッションだったり,100年に一度のメロディラインだったり(大げさですが閃いた瞬間は本当に100年に一度と勘違いするものです)すると,このマシンでは全然形に出来ません。


(2)実は何にも繋がらない

 少なくともV1.10では,BluetoothMIDIもWiFiもUSBも,外部のキーボードやシンセサイザーに繋がりません。あくまでPCやスマホの専用アプリと接続するためのものと割り切った方が良さそうな感じです。

 以前にも書きましたが,私はコルグのMICRO KEY2 Airを持っています。しかし,USBかBluetoothでしか繋がらないという制約が弱点となり,ほとんど使い物になっていません。(キーそのものも弾き心地が悪いですが)

 これがSEQTRAKで使えると便利だと思ったのですが残念ながらBletoothでもUSBでも接続出来ませんでした。

 ならばとMIDIとBluetoothMIDIを変換するコンバータをSEQTRAKに付けてみたのですが,あいにく電源供給の問題から機能せず,こちらもアウト。

 こういう時,レガシーなMIDIというのは繋げばとりあえず音が出るという汎用性があり,信頼出来るんですよね。

 結局,MacをハブにしてSEQTRAKとMICRO KEY2をそれぞれUSBで繋ぎ,ようやくSEQTRAKに鍵盤を繋ぐことが出来たのでした。

 ここで分かった事があるのですが,リズムトラックのMIDIチャネルがちょっと使いにくくて死にそうでした。

 SEQTRAKはトラックごとにチャネルを分けています。このルールで行けばKICKはCH1,SNAREはCH2と言う具合になるのもわかるのですが,伝統的にリズム楽器は同じチャネルでノートで鳴らし分けますから,本当にトラックごとに楽器を分けられてしまうと打ち込む気が失せてしまいます。

 出来ればチャネル10にリズムキットを組んでもらって,GM準拠の配列でノートに振り分けておいて欲しいです。アップデートに期待です。

 それからシンセパートです。こちらもトラックが2つしかないので2つのチャネルしか使えません。これだと実質2つの音色しか使えませんから,ベースとコードを割り当てたらもうメロディーを割り当てられません。これじゃーマルチ音源としても使い物にはならないです。128音ポリが泣きます。


(3)音は結構すごかった

 そのシンセパートですが,音の良さに正直驚きました。AWM2は音が薄くて私は気に入りませんでしたが,それはもう昔の話。クオリティも高いですし,波形編集のセンスも抜群で,使える音がバンバン入っています。ストリングスもブラスも素晴らしいですが,トランペットやバイオリン,ギターと言った単独の楽器がこれほど使える音で入っているとは思いませんでした。バンドを始めた高校生は迷わずヤマハの10万円クラスのシンセサイザーを買うのが良いと思います。

 それからFM音源です。4オペといえばOPNやOPMのイメージしか持っていなかったので,これほどしっかりしたいい音が出るとは思ってませんでした。すみません。

 というのも,おそらくですがエフェクトの品位が良いからだと思います。個人的に,ヤマハのエフェクターは昔から好きで,空間系のエフェクトが好みでした。それは今回のSEQTRAKでも変わらないと思います。

 これにミニ鍵盤を組み合わせて鞄に突っ込めば,持ち運びに困らない練習セットが完成するでしょう。音も抜けがいいのでアンサンブルでも負けないと思います。


(4)アプリは必須,でも重すぎ

 操作系が独特で,ヤマハの狙いはこんな操作系でもマニュアルを見ずにサクサク操作できて思い通りに使える事にあったのでしょうが,それはどだい無理な話で,何をやっているのかさっぱりわかりません。

 ボタンもツマミも多すぎるし,今どんな状態にあるのかもわかりません。LCDなどのディスプレイをあえて搭載しなかったのはシンプルさを追求したかったんだと思いますが,ではなぜもともとディスプレイを持たなかった電子楽器に,今は巨大なディスプレイが搭載されるようになったのかを,本家本元らしく考え直して欲しいと思います。

 で,そのディスプレイの代わりとなるのが,アプリです。私はMac版を使いましたが,もう重いのなんの。M1を搭載したmacBookAirなのでまだまだ現役だと思っていますが,それでこの重さはもう市場に出したらダメなレベルです。

 しかし,このアプリがないと効率が悪くてなにもする気が起きません。ないと困るのに使うと困るという最悪の状態は真っ先に解決されねばならないでしょう。

 なお,接続はBluetoothでもOKなのですが,データのやりとりにWiFiを使うので,結局WiFiの世話になることになります。面倒くさくて死にそうです。


(4)てことで

 自分で鍵盤を弾ける人にとっては苦行です。自分のやりたいことがさっと出来ない事へのフラストレーションは想像以上の苦しさで,なにゆえこんな窮屈な仕組みに従って自分の好きな音楽を作らねばならんのだと怒りさえ感じました。そもそもこれは制作なのか,演奏なのか?

 思うに,良かれと思って作った箱があまりにきっちりしすぎていて,そこからはみ出すようなことは全く出来ません。そういう制約を超えたところにハック魂がみなぎる物なんでしょうが,それってこの商品のコンセプトとしては完全にハズレです。

 私は結局,MacでDP11を立ち上げ,MICRO KEY2とSEQTRAKをUSBで繋いで,SEQTRAKの内蔵音源を楽しみ,そこから沸いたインスピレーションで音楽を作り始めました。結局時間切れで完成しなかったのですが,いったい私はこのマシンで何をやっているだろうと,なんだかバカバカしい気分になりました。

 いやね,16パターンしか並べる事の出来ないこの手のマシンだからこそ,出来る音楽があります。無限トラックかつ無限小節はあまりに制限がなさ過ぎて,手の付けようがないものです。

 だから音源には妥協せず,パターンとトラックに「繰り返し」に特化した制限を与えたSEQTRAKは一つの解だとは思いますし,私だって仕組みに従えば,自分一人では決して作る事のない種類の音楽を作ることが出来る事を,すでにSEQTRAKで実際に体験済みです。

 でも,これって,AメロがあってBメロがあってサビの部分でドドーンとストリングスで盛り上げて,みたいな全体の進行や構成を作り上げるという,一番の楽しみが失われているように思いません?

 マニュアルを見ていれば,キーやスケールを編集できるのはもちろんのこと,コードの構成音を自由に変更出来たりするので,実はかなり奥深い事まで可能です。

 しかし,シンセサイザー2トラックに16パターンという一番厳しい枠は絶対に越える事が出来ず,はっきりいって128音ポリも細かい編集機能も,全部オーバースペックじゃないかと思います。これ,本当に楽しいですか?

 しかも入力された音には強弱がつきません。MIDI経由なら大丈夫ですが,単体で出来ることは同じベロシティ,ジャストタイミングの無機質な音を出すだけです。それが個性となる音楽なら何も問題はありませんし,それはそれで楽しいでしょう。

 でも,やっぱりアイデアを形にするには,制限が厳しいように思います。

 小節数は120小節くらい,コードをそこに並べていく事の出来るモードが欲しいなあと思いますが,多分それはSEQTRAKのあり方を根本的に変えてしまうので,無理な注文でしょう。

 音の良さは抜群だと思うので,惜しいです。

 KORGのkaossilatorも結局イライラして終わったなあ。ああ,やっぱり,この買い物も失敗か・・・

Temuを使ってみた

 先日,偶然目にしたのが新しい中国の通販サイトのお話でした。

 中国の通販サイトといえば,すっかりメジャーになってしまったAliexpressです。激安で様々なものが売られていて,しかも同じ物が複数の業者から出品され,値段や条件が結構違うという,まさにハイレベルな通販サイトです。

 価格も安いがリスクも大きいハイリスクハイリターンな,まさに勝負師の腕が鳴るサイトですが,かつては配送に2週間はかかりましたし,結局届かなかったという話もチラホラ。トラブルの解決は基本的には出品業者と直接やってくれと言うもので,日本語はもちろん,英語も通じない場合があるという,どう考えても素人には手が出せないものでした。

 ここ数年で大きく改善され,配達は1週間程度になりましたし,荷物がなくなることも聞きません。トラブル発生時に業者と揉めても最終的にはaliexpressが対応してくれたりするので,以前のような泣き寝入りはなくなったと思います。

 折からの円安と,そうしたサービスの向上のせいでしょうか,最近aliexpressが安いと言う話をあまり聞きません。代わりに台頭してきた新興勢力が,Temuです。

 Temuといえば我々世代では酸素欠乏症なわけですが,そんなことはどうでも良くて,最近注目を集める通販サイトです。aliexpressに比べてもさらに安く,その上送料無料で配送はTemuが手配,しかも数日で日本に到着するというスピード感,さらに長くかかった場合にはお詫びのクーポンまで用意するというのですから,そこらへんの国内通販業者のずっと先をいっています。

 個人的に気に入ったのは,トラブル発生時の対応で,私は経験がありませんがどうもTemuが間に入ってくれて返金や返品などに応じてくれるようです。Aliexpressが楽天なら,Temuはamazonという感じでしょうか。

 あまりに安いので詐欺ではないか,と言う話が出てくるようですが実際に詐欺に遭ったという話は今のところ目にすることはなく,検索しても好意的なものばかり目に付きます。これはいよいよ真打ち登場かも知れません。

 こんな面白い話があるなら,早速使わねばなりません。

 ぱっと目に付いたのが,250円のドリルシャープナーです。これまで使い捨てていたドリルビットが甦るならうれしいじゃないですか。

 ただ,時間もなかったので送料無料になる条件がわからず,ついでになにか買おうと考えてふと思い出したのが,スポット溶接機です。といっても大げさなものではなく,昨年から一部の界隈で話題に上っていた,組電池を作る事の出来るバッテリー式の小型スポット溶接機です。

 電池に直接ハンダ付けを行うのは爆発の危険もあるし,封止しているガスケットに変形が生じて液漏れが起こるので御法度で,代わりに一瞬で溶接の出来るスポット陽性にニッケルのタブを取り付け,これにハンダ付けをするのが一般的です。

 複数の電池を組み合わせた組電池もそうですし,コイン電池のようなバックアップバッテリーでもタブ付きの物がよくあります。

 しかし,こうした電池は普通のお店にはなく,ほぼ特注品です。コイン電池などはCR2032のような普通の電池なのにタブがついている物との交換品が手に入らず,筐体の外に電池ケースがはみ出ることを許すか,あるいは諦めるかの選択を迫られるものです。

 また,ポケコンマニアの間では頭の痛い問題なのですが,プリンターに内蔵された電池が単三のNi-Cdの組電池,間違いなく液漏れして死んでいるこの電池を交換しようにも,代わりの物が手に入りにくいのが現状です。

 4本組みなら手に入らなくはありませんが非常に高価,5本組みだと絶望的で,かといって電池ケースが入るスペースもないので,これも結局諦めることになるのです。

 ですがこのスポット溶接機があれば万事解決。安価なNi-MHを買ってきて自分で組電池が作れます。これまで素人には不可能だった組電池の製作が出来るというので,ここ最近バッテリ駆動の安価なスポット溶接機がブームになっているのです。

 もともと基板キットだったようですが,最近はディスプレイがついたりちょっとしたケースに入っていたりするようで,これだと1000円から3000円くらいまで。しかしamazonあたりで売られているものもちょっと値上がりの傾向がありますし,当たり外れもあるようなので躊躇していました。

 欲しいことにはかわりはないので探してみると,狙っていたディスプレイ付きの物は売り切れていて変えません。しかし,プローブ(というのが正しいのか自信がありません),コントローラ,バッテリーなどが一体化したハンディタイプのものが4000円で出ています。

 もともと2本のプローブを自分でお箸のように持って溶接するのは怖かったので,すでにプローブが固定されているこのタイプはむしろ好都合です。通常この手の物は5000円を割らないので,4000円は確かに安いです。買いましょう。

 Temuが面白いのは,発送までは品物の追加が可能で,しかもワンプッシュです。注文時間がバラバラな物を1つにまとめて発送するというのは難しい処理だと思うのですが,良くもそれをやるなと感心しました。羞悪飛車の審理で言えば,これがあると「ついで買い」の敷居が下がるので,すごいことだなと思う訳です。

 私も買い忘れたニッケルの薄い板を買いました。

 合計で4800円ほどの買い物でしたが特に問題はなく,月曜日に注文し,火曜日に発送,土曜日に到着しました。ちゃんと中国から飛行機で届いたのですが,この速さです。自宅に届けてくれたのはヤマト運輸で,関税も支払っていません。(まあもともと5000円程度なら関税はかかりませんが)

 さて,ここまでは順調。問題は届いた商品が使えるのかどうかです。

 結論を書けば,全く問題なし。スポット溶接がこんなに簡単に安全に行えるなんて,驚きました。溶接の強度は試行錯誤が必要ですが,作業は一瞬で仕上がりは綺麗ですし,溶接したタブを引っ張れば溶接箇所だけ残ってちぎれるくらいの強度も持っています。これなら実用レベルです。

 ということで,良い買い物をしたと思います。スポット溶接機も良かったですが,Temuを使ったことも良い経験になりました

 Aliexpressはまさに玉石混交で,しかもディスコンになった半導体が(偽物も多いですが)買えたりするまさにダンジョン。Temuは怪しげな物は少なく,そういった点での面白さは少ないと思いますが,amazonの中国の業者のマケプレを使うなら,もう断然Temuだと思います。

 これからどうなるかわかりませんが,一党独裁の計画経済の社会において,競争原理が働いている奇妙な状態を,なんだかんだで我々は享受していることを認めないといけないように思いました。

2023年の散財

  • 2024/01/11 11:59
  • カテゴリー:散財

 年も明けてしまいましたが,昨年2023年もやっぱり散財をしました。反省も込めて2023年の散財をまとめてみます。

 あらためて昨年の日誌を眺めてみると,実は大きな買い物をそれほどしていません。気分的にも沈みがちだったこともあるでしょうし,時間もそれほど潤沢になかったこともあるのでしょうが,小さい買い物でちょこちょこと楽しんだという,割に健全な過ごし方をしていたように思います。


(1)Zfとレンズ

 まずなんといってもZfとレンズです。カメラはここ数年値段が上昇した製品の1つだと思うのですが,安価だったZfcの2倍以上の価格に,本当にまだ実物を見ることの出来ない傍流の企画モノをホイホイと買ってもいいのだろうかと躊躇しました。今となっては思いきって速攻で予約して良かったと思っています。

 聞けば予約が数日遅れただけで入手が何ヶ月も遅れることになったといいますし,予約なしで買おうとすれば春頃になるという話も耳にします。欲しい人が欲しいときに欲しいと思う価格で品物を買える事はもはや普通ではなくなっていることを強く感じますが,かくいう私は無事に発売日に手に入った人でした。

 さすがに27万円ものお金をさっさと調達出来るわけもなく,Zfcを筆頭に使っていない物を処分した結果,4万円ほどの追い金で済んだのは幸いでした。

Zfcには手軽さもありましたが,やはりAPS-Cというセンサのサイズの限界も,安っぽさから来る感触の悪さがありましたので,Zfではそれらが解決していることが良かった点でした。

 同時に,最新のミラーレス一眼という位置付けも与えられていて,いわば最新のデジカメの別UIバージョンというところに単なる懐古主義ではないニコンの良心を見るわけですが,それゆえレンズについてもこれに見合った物を用意しないといけなくなるのは避けようのないことで,頭の痛い問題でした。

 結果,評判の良いZ24-70mmF4を中古で買いましたが(これは値段と外観の傷からあまり良い買い物とは言えませんでした),結局常用レンズになったのは7000円のキャッシュバックの対象だったZ26mmF2.8でした。

 フードまで付けるとパンケーキと呼べるほど薄くはならず,Zfに取り付けて見るとたたずまいは普通の一眼レフという感じなのですが,むしろそれくらいがちょうど良くて,ぱっと手に取って撮影するのに最適です。

 問題は26mmという広角の画角と,Zfの2400万画素という真面目な画素数です。遠くからとりあえず撮影してトリミング,と言うずるい方法が使えないので,きちんと寄って構図を考えないといけませんが,D850と35mmF1.4に慣れた頭からかなり切り替えないといけません。

 その点ではまだ撮影スタイルが固まっていないと言えて,最適なAFモードを選んで定着させることも今度の課題だと思います。

 レンズは前述の通りZマウントを2つ買いましたが,もう1つ,最後のFマウントとしてAF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6Dも買いました。

 このレンズは唯一無二のズームマクロなわけですが,細身の鏡筒にガラスが詰まっているというずっしりとした重さに感激するのと,その感激を裏切らない表現力が特筆されると思います。

 本来のズームマクロとしての性能は言うに及ばず,2mくらい離れてのポートレートでも美しいボケと緻密な解像感で被写体を浮かび上がらせる素晴らしいレンズです。

 重いこと,AFモーターが内蔵でないことから,Zfでの出番はないのですが,D850がある限りこれは持っていようと思います。

 ところで,Zfcを下取りに出したことで,APS-C専用のレンズは邪魔になるだけです。すでにZ DX24mmF1.7は売却済みですが,残ったTTArtisan 17mm F1.4も使い道がないと言うことで年明けに売却しました。

 APS-Cでは24mm相当になる貴重な広角単焦点で,F1.4という明るさも面白かったのですが,2年ほど前に15000円ほどで買った(今は19000円ほどしてますね)ものが,今回4000円で売れました。

 中国製のレンズですので1000円か2000円,もしかすると買い取ってもらえないかと思いましたが,4000円でも売れて良かったと思っています。


(2)DL103の針交換

 あれこれ試しても最後にまた戻ってくることで知られるカートリッジ,それがデノンのDL103です。NHK-FMで使われているカートリッジですので,日本の標準品といっても過言ではなく,その点でもリファレンスとして常に比較の中心にあり続けたといえるでしょう。

 そして恐ろしいのは,1964年の発売からすでに60年近くが経過しているにも関わらず,未だに当時の仕様のまま新品が量販店でさっと買えることです。50年前のカートリッジの音が今でも保証された形で聞けることはすごいことだと思いますし,これが日本製であることも幸運としか言いようがありません。

 また,未だに1つ1つに実測した周波数特性が添付されていることも素晴らしく,20Hzから20kHzまでほぼフラットな音が,まさにこの個体で手に入るのだという地に足のついた安心感は,校正済みの測定器を使う時を彷彿とさせます。

 MCカートリッジですから,新品が買えるという事は針交換も可能ということです。ということで私は生まれて初めて,DL103の針交換を昨年行ったのでした。

 厳密には針が悪くなったのではなく,本体の調子が悪くなったから交換したのですが,その交換価格が10年前の新品と同じ値段ですから,随分と値上がりしたものです。

 ただ,考えようによっては交換価格だからこそ3万円ちょっとで済んだとも言えますし,この価格でもその内容から言えば破格の値段であることは言うまでもありません。

 デノンという会社が偉いなと思うのはこのあたりで,単価を上げて利益率を高めるようなプレミアム路線を安易に取ろうとしません。DL-103もそうですし,先日出たDP-3000NEなんかも,本当はもう10万円や20万円高くても受け入れられる商品だと思うのですが,そういうのはうちの会社の仕事じゃない,少し背伸びをすれば手が届く商品を作るのが我々の役割だと言い切ります。偉いと思います。

 価格だけではありません。欲しい時に量販店で買えるという手軽さも重要です。飢餓感を煽って何ヶ月も予約させたり,高値での転売を黙認したりと,かつての日本製品の一番良かったことをないがしろにして,それで商品で人を幸せにするという気持ちがあるのかどうかと私は疑問に思います。

 一部の富裕層が商品も見ずに予約を入れ,何ヶ月も待たされたあげくにすぐに生産中止になるような商売が悪いとは言いませんが,かつて王様がお抱えの職人に自分専用の品物を作らせたことといわば同じであって,アメリカに端を発し日本が高めた大量生産は,経済と技術の民主主義という思想的な側面を持っていることを,ちょっと思い出してみると良いかもしれません。

 そう,大量生産品の代表であるマイクロプロセッサの登場が,一部の人によって独占されていたコンピュータを大衆化したこと,そしてそれが社会と文化を前進させたのです。

 閑話休題。

 その後のうちのDL103は絶好調で,その安定性にはもう安心と信頼しかありません。絶対的な音の良さは他のカートリッジに譲ることもありますが,やはりNHK-FMのあのプレーンな基準たる音への信頼感は揺るぎなく,最後にはここに戻ってこられるという故郷のような安心感があるから,あれこれとカートリッジを試すことが出来ているんだと思います。

 これから何度も値上げがあると思いますが,作り続けて欲しいと思います。

(3)何度目かのポケコンブーム

 PC-1261というポケコンの最終形があります。いや,発売時期や性能で言えばもっといろいろな物がありますが,本当の意味でポケットに入る大きさ,という条件において2行表示に高機能BASIC,そして最高速のクロックという最高の性能を誇るPC-1261は,私にとってもいつか欲しいポケコンでした。

 しかし,シャープのポケコンに見られるLCDの劣化がPC-1261にも襲いかかっていて,まともに動く物は数が少なく高価,しかもいずれは死ぬ運命にあるものですから,おいそれと手を出せません。

 私は1つの賭に出ました。PC-1250やPC-1245では,交換用のLCDが個人の手によって作られて頒布されていますが,いずれPC-1261にもでてくるであろう,と。

 ならば今の安いうちにLCDの劣化したものを買っておいたらどうだろうと考えて,LCDの劣化が始まったような程度のPC-1261を買ったのでした。

 果たして私の予想は当たり,しばらくすると交換用のLCDが登場,私のPC-1261は晴れて完全復活を遂げたのでした。

 もったいなくてあまり使えないのですが,今も完調です。PC-1246のLCDも同時に入手できたので2台のPC-1246も完全復活です。

 これで味をしめた私には,何度目かのポケコンブームが再来します。とうとうPB-100を入手してみたり,PC-1501を手に入れてみたりしましたし,CE-150の修理には失敗,何度か試みたカセットインターフェースの製作にもくじけてしまいました。

 PC-1250シリーズと同じCPUの最終形態であるPC-1475も手に入れましたが,これは年末に壊れていることが判明し,修理待ちの状態が続いています。

 ところで,一連のポケコンブームのおかげで試すことが出来たものに,レトロブライトがあります。ABS樹脂の黄変を元に戻す漂白ですが,春から夏の日差しであれば十分可能であることがわかりました。秋頃の日差しでは完全に漂白ができなかったりムラになったりするので1年のうちで可能な時期は限られますが,今年の夏も挑戦してみたいと思っています。


(4)Walkmanの修理

 カセットテープがブームだそうです。おっさん向けにいくつもの本が登場しているのですが,私もTDKのカセットテープの本を手に入れてから,カセットテープのブームがやってきてしまいました。

 家で眠っている未デジタル化テープをすべて処理しましたし,GX-Z9100EVのメンテも済ませました。そんな中で盛り上がったのが,Walkmanの修理でした。

 Walkmanは私も学生時代に使っていました(WM-EX70です)が,ゴムが切れてしまったので捨てました。こんな細いゴムは手に入らないだろうと思ったからですが,なんと今は手に入ることがわかってしまい,捨てたことを後悔した事がきっかけでした。

 かつて持っていたWM-EX70を買い戻すことを考えていましたが,なかなか良いものに出会わず,RQ-SX35, WM-805, WM-EX666, RQ-SX11, WM-FX70と,あれこれと手を出すことになってしまいました。

 一発で直れば良かったのですが,さすがに古いWalkmanは修理が難しく,部品取りに買い直したり,ついつい程度の良いものが目に付くと買っていたりと,ちょっと踏み外したような気がしています。

 結果,どれも音が出るようにはなっていますが,往路と復路でアジマスが異なっていたり,テープスピードが狂ったり(テープの最初と最後でスピードがズレる)と,なかなか上手くいかずに終わってしまいました。

RQ-SX11やWM-805はアジマスのズレが大きいですし,WM-EX666は走行系は安定していますが今ひとつ音質がよくありません。RQ-SX35はテープスピードのズレが目立つ上に傷だらけですし,WM-FX70は走行系とラジオは素晴らしいのですが,ボタンが時々誤動作してしまいます。これ,きっと押しボタンスイッチの劣化で抵抗値が大きくなってしまったからでしょう。

 結局1つも完璧な物を用意出来なかったことは悔しく,上手くいかなかった修理の1つとして記憶に残ることでしょう。


(5)ミニテーブルソー

 12000円ほどの買い物でしたが,これは本当に便利で,買った当時に感じた「もっと早くに買っておけば良かった」を今もって痛感する良い買い物でした。


 プロクソンの「ミニサーキュラソウテーブルEX」ですが,基板のカットにと買った物が,実はアクリル板や木の棒などでも威力を発揮するとわかり,工作のスピードと仕上がりの綺麗さで圧倒的な差が出てきたと思います。

 私の場合,速度調整を改造して取り付けたのですが,確かに最高速で回っていると難しい材料もありますので,速度調整は必須だと思います。その点では気軽にお奨め出来る製品ではないのですが,一度テーブルソーの良さを味わうと,もう少し大きな物が欲しくなるものです。

 テーブルソーとはいえ,結局は丸鋸ですので,油断していると大けがをして指を落としてしまいかねません。酔っ払っての作業は厳禁,安全には細心の注意を払って使いたいと思います。

 

 ということで,昨年買った物を拾ってみましたがこんな程度でした。もっと細かい物はあれこれと買っていて(例えばUPSの電池とか),その点での無駄遣いは例年並みなのですが,それを差し引いても昨年は低調だったようです。

 まあ,なにも新しい物を買って楽しむだけが趣味ではありません。今あるものを使い込むのも面白いですし,安い物を工夫して楽しむのも良い趣味だと思います。

 今年は娘の受験も終わり,我々家族に劇的な変化が訪れます。我々自身の年齢もそうですし,親の年齢も考えると,いつ何が起きてもおかしくない時期に突入します。

 毎日を淡々と過ごすだけではなく,残り時間を意識して,大切に過ごして行くことが,今年の目標になるように思います。

 

訳あり品でスピーカーを作ってみた

 昨年は12月に入ると急に寒くなってしまい,思いつきで始めた工作が寒さとの戦いになってしまったのですが,無事に年内に終わってホッとしています。

 なんの工作?スピーカーですよ,スピーカー。

 何年かに一度,急にスピーカーが作りたくなって手を出すのですが,結局使い道がないまま押し入れにこっそりしまい込まれてしまう,可愛そうな奴です。

 ラジオ用の5cmのスピーカーをプラケースに入れただけのものを起点に,粗大ゴミのステレオセットから取り外したスピーカーを3mmの薄いベニヤで作ったエンクロージャーに入れただけの2ウェイで自らの木工技術の低さを思い知り,その後は大人らしくパイオニアのPE-101に専用のエンクロージャーをセットで購入,歴史に名を残すフルレンジの実力を堪能しました。

 大人の科学だっと思いますがスピーカーユニットの組み立ても面白がって試したし,その後雑誌の付録のユニットを使って,これも雑誌の付録だったバックロードホーンのエンクロージャーのキットを組み立ててみたこともありました。

 いつかは試してみようと思っていたバックロードホーンと,中学生の頃から買う機会をうかがっていたフォステクスのユニットを念願叶って買って作ったのはいいものの,やはりレンジの狭さや乾いた音に抵抗があって,結局押し入れに肥やしになっています。

 その間完成品のスピーカーもちょいちょい買ってみたのですが,結局B&WのCM1,KEFのQ350,それからJBLのSTAGE A120(これはペアで16000円以下とは思えない音がしました)あたりが結局生き残り,自作品は完全にしまい込まれています。

 しかし,自作品が期待通りの性能を出し実用品となることを目指して歩んできた工作人生,スピーカーでもなんとか「これならどうだ」と思うようなものを作って使ってみたいと思っていたところへ,偶然面白そうなユニットを見つけてしまいました。

 NFJという会社が「訳あり品」として激安で販売しているユニットに,ケブラーコーンの10cmウーファーを発見しました。これに組み合わせると面白そうなシルクドームツイーターも激安です。

 ウーファーは細かいスペックはわかりませんが,ケブラーですから安い物ではないでしょう。大きなマグネットもしっかりした低音が出そうな感じです。フレームにゆがみなどがあるという事で,お値段1つ1980円。

 分かっている範囲でスペックを書くと,コーンはケブラー,エッジはゴム,フェライトマグネットでインピーダンスは4Ω,定格入力は40Wで最大80W,口径は4インチで101mm,重さは955gです。

 一方シルクドームツイーターはキズがあるという事で1つ1280円。なんとデンマークの老舗Peerlessの物だそうです。ほんまかいな。

 高域は20kHzは余裕,正面なら40kHzもクリアするという特性が謳われていますが,なによりシルクドームならではのとげの刺さらないしなやかな高音が期待出来そうです。

 こちらのスペックはそれなりに公開されていて,口径は1インチ,シルクドーム,マグネットはネオジムでインピーダンスは4Ω,入力は80Wで最大160W,再生周波数は2.5kHz~20kHz,F0は1084.63Hzで能率87.8dB,重さは46gとのこと。

 ペアで揃えても6500円。これは安い。失敗しても悔しくないです。

 ということで早速購入,こういうものはスポット品ですので,欲しい時に買うのが鉄則です。(といいつつ随分昔から在庫があるようですが)

 手元に届いたユニットは,ウーファーがフレームのゆがみとエッジのへこみがありましたが音は正常です。ツイーターはキズがありますがこれは気にならない程度でした。

 どっちもいかにもいい音が出そうな感じです。

 しかし,ここで苦手な木工と向き合わねばなりません。私の場合,綺麗に切断できず隙間だらけになったり床と3点でしか接しないなんてことが起きてしまいますし,塗装も下手くそですのでいかにも素人の工作になってがっかりです。

 その前に材料の調達も大変です。近所にホームセンターもありませんし,かといって自動車もありません。材料が手に入らず加工も苦手と来ればもはや話にならないわけですが,そこで登場するのが我らが自作派の味方のフォステクスの「かんすぴ」です。

 かんすぴは安価なユニットとエンクロージャーを組み合わせて自作のスピーカーを作るというありがたいシリーズなのですが,標準的なバスレフのエンクロージャーが大きさで何種類か選ぶ事が出来,しかも吸音材やターミナルまで取り付け済みという手軽さが素晴らしいです。

 登場時は本当に安くて心配になるほどでしたが,ここ数年は頻繁に値上げが行われていて,私が購入したP1000-Eはすでに1本3740円になっていました。それでも十分安いと思うのですが,これを年末のクーポンを使って直販サイトから購入しました。ちょっと容量が足りない気もしますが,まあなんとかなるでしょう。

 さて,ここからが本番です。

 まず,ユニットの動作確認です。音は出ることは分かっているので,エンクロージャーとの相性を見ます。仮組みしてウーファーだけをスイープでならしてみますが,60Hzあたりでもバスレフポートからバフバフと大きな音圧が出ています。これはなかなか良さそうです。DR-100mk2(PCMレコーダをです)でスイープさせた音のレベルを測定してみますが,上も4kHzくらいまでなら-3dBまで出ていそうです。

 ここにツイーターを3.3uFを介して取り付けてみますが,高音が出てくるだけで輪郭もはっきりしてくるし,みずみずしさも出てきます。多少耳障りな感じもしますが,ボーカルの定位も抜群で,期待度もうなぎ登りです。

 ツイーターの位置を前後させてウーファーとの干渉がないような位置を探すのですが,どうもツイーターの位相を逆にした方がバッフル面と同じ位置に出来そうで好都合です。低域カットのコンデンサは3.3uFにすべきか2.2uFにすべきがで悩みましたが,まずは3.3uFで進めることにします。

 さて,エンクロージャーを加工せず,ツイーターは上面に乗せておくだけというのも考えましたが,ここはもう少し手をかけましょう。ちょうどバスレフポートがツイーターの大きさとぴったりだったので,ここにツイーターを置くことにします。

 するとバスレフポートが潰れますので,これは背面に移設します。ウーファーを下に配置したいので天地をひっくり返すため,ターミナルも上下を反転させて取り付け直しましょう。

 全体の計画が見えてきたところで,早速加工開始です。まずエンクロージャーの中に手を突っ込んでポートを力尽くで外します。木工ボンドで接着してあるだけですので割に簡単に取れます。

 そしてもとのバスレフポートと同じ高さの背面に25mmの穴を開けます。MDFですのでサークルソーを使えば簡単です。

 穴が開いたらポートを裏側で接着しこのまま一晩放置。

 バスレフポートが完成したら,ウーファーの取り付け穴がこのままではちょっと小さいので加工します。ただ私はこういう時専用の工具も器用さも持ち合わせていないので,ゴリゴリとカッターで広げていくほかありません。

 このウーファーはフレームとエッジの間が狭く,あまり穴を大きくしすぎるとバッフルとの間に隙間が出来てしまいます。すり鉢状にして広げる必要があるのですが,そこはどんくさい私の事,真円にならず綺麗に仕上げることが出来ませんでした。

 気を取り直してツイーターです。これは元バスレフポートの穴がそのまま使えるのでここに取り付けることにしましょう。

 さて,ここまで来ればあとは配線の準備です。ターミナルから出ているケーブルを取り外し,ターミナル側の圧着端子にコンデンサをハンダ付けします。もう一方の圧着端子とコンデンサの足から配線を引っ張り出し,新しい圧着端子を付けてツイーター用とします。これで配線終了

 作業がやりやすいようにまずツイーターから取り付けます。先に圧着端子をツイーターにはめ込んでから,amazonで調達した木ネジでバッフルに固定します。

 そして重いウーファーを配線して取り付けて完成です。ターミナルをひっくり返すことも忘れずにやります。さあ,音を出してみましょう。

 アンプはかつて雑誌の付録になったラックスのアンプです。これ,ホントにいい音がするんですが,こういう場合にもってこいの手軽さも持ち合わせているので助かります。

 ・・・なかなか良いではないですか。

 P1000-Eは121x243x179mmで3.6Lという小さいエンクロージャーなのですが,このサイズには似合わないたっぷりとした中音域と,物足りないながらもタイトな低音,そして耳障りの良い伸びやかな高音が出てきます。ウーファーとツイーターの繋がりはいまいちなのですが定位感は抜群で,特にニアフィールドではまさに楽器が点で聞こえます。

 この大きさで,自作品,それも1万円ほどでここまでの音とは・・・素晴らしい。

 なにより,私が好む傾向の音です。これは何よりも代えがたい魅力です。ちょっとポンポンいいますし,高音も出すぎているのでドンシャリの向きはありますが,なにより位相が揃っているので定位は抜群,音の艶と言いますか,立体感も申し分なく,低音も無理をしないでしっかり出ているのでとても楽しいスピーカーです。

 しばらくならして当たりを付けたあと,ウーファーをツイーターの重なり部分を減らす目的で,コンデンサを2.2uFに減らしてみます。高音はやや引っ込みますが,ウーファーが担当する中域が広がりより自然に。

 よし,これでいこう。90cmのテーブルに並べて,1mほどの距離で2時間ほどいろんな音楽を愉しみました。硬めの木材を足にして浮かせてやれば,低音がぼやけずにしっかり出てきます。

 大きな編成のオーケストラはさすがに厳しいですが,楽器の分離がよいので5,6人までのジャズコンボにはその表現力で,ロックは元気の良さと中域の豊かさで楽しく,いつまでも聴いていられる音が出てきます。そしてボーカルの再現性がとても良くて,ちゃんと歌っています。市販品でもこれ以下のスピーカーなんていくらでもあるんじゃないでしょうか。

 ということで,今回のスピーカーの自作は大成功です。音の良さもそうですが,この大きさであることもとても重要です。見た目もケブラー特有の黄色いコーンが格好よくて,うまくまとまっていると思います。

 さて,今回つくづく思ったことが,スピーカーのサイズによってスピーカーの間隔が決まるということです。

 よくベストなリスニングポジションは,左右のスピーカーの間を一辺とする正三角形の頂点の場所だといいますよね,そこに座ってみると,スコッと真ん中が抜けてしまうことがあります。

 この時,スピーカーを大きな物に変えてみると抜けなくなるんですが,先程の抜けてしまったスピーカーがダメなスピーカーかといえばそんなことはなく,もう少し正三角形を小さくして近づいて聴けば,見事に立体的な音像が浮かび上がるわけです。

 違いはなんだといえば,それはスピーカーの大きさです。スピーカーからの距離が離れれば離れるほど,小さい口径のスピーカーでは点音源に近づいてしまい,中が抜けるのではないかと思います。

 だから,大きな部屋なら大きなスピーカーを,ニアフィールドなら小さいスピーカーを選ばないといけないんだと,ようやく気が付きました。

 あれほどいい音がするCM1をリビングに置くとどうもいい音がせず,Q350にすると定位が向上するのが不思議だったのですが,やっぱりスピーカーの大きさという単純なパラメータが影響しているように思います。

 また,特にウーファーの口径は,距離が離れるほど大きくないといけません。ヘッドフォンのドライバの口径が小さいこともそうでしょうし,小さいスピーカーも近くで聴けばしっかり低音が出ていることに気が付くのも,このことの証でしょう。

 そんなわけで,今回の自作は成功で,スイープで周波数特性を見た事,ツイーターの位置で位相を調整したこと,コンデンサを繋がりを調整したことなど,なかなか良い経験をさせてもらいました。

 結果,ケブラーコーンへの期待を裏切らない,実に良いスピーカーが完成しましたし,さらにいうとスピーカーの大きさとリスニングポジションの問題も関係性が見えてきたように思います。

 そして最後に,フルレンジにはフルレンジの良さがあるとは思いつつ,やっぱり小型スピーカーなら2ウェイだなあと思いました。

 とまあこんな良い成果を上げたスピーカーですが,やっぱり置く場所がないのでしばらくは押し入れの肥やしです。次に登場するのはいつになることやら。

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