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2011年01月の記事は以下のとおりです。

100円ショップのイヤホンが,電子ブロックのイヤホンとして使えるのか

  • 2011/01/31 15:33
  • カテゴリー:make:

 先日,ある方からメールを頂戴しました。

 お子さんのクリスマスプレゼントに電子ブロックをプレゼントしたが,クリスタルイヤホンをなくしてしまった。いろいろな実験で使うだけに困っているが,代わりに使えるものはないかと思案されているそうです。

 100円ショップなどでイヤホンが売られていますが,電子ブロックに繋がるよう,配線の端っこをうまく加工すれば使えるものですか?という質問を頂いたわけですが,自己解決されたということで,お返事を躊躇していました。

 ただ,どうして使えないのか,どうすれば使えるのかと言うお話はなかなか興味深く,イヤホンをなくしたことをきっかけに,そのお子さんが「知る」きっかけになれば,大変良いのではないかと思って,ここに書こうと考えた次第です。

 結論からいうと,100円ショップで売られているイヤホンは,電子ブロックでは使えません。

 まず最初に,イヤホンの種類について整理します。

 イヤホンには,大きく分けて,磁力を使ったものと,圧電効果を使ったものがあります。

 磁力を使ったものは,マグネチックイヤホンや,ダイナミックイヤホンと呼ばれるものが属します。ウォークマンやiPodなどで使われるのがダイナミック型,ラジオのイヤホンとして売られているものは,マグネチック型が主流です。

 ダイナミック型は,電磁石に薄いフィルムを貼り付けておき,コイルの内側には永久磁石を置いておきます。

 コイルに音声振動が流れて電磁石になると,そこから出る磁力と永久磁石の磁力とが引かれたり反発したりして,コイルが動きます。これがフィルムを振動させて,音にします。スピーカと同じ仕組みです。

 マグネチック型はダイナミック型とは似て非なるもので,コイルの内側に磁石を置くところまで同じです。

 そして,その磁石の近くに鉄の薄い板を置いておきます。磁石からの磁力が鉄板を引っ張っている状態が続くのですが,この状態でコイルに音声信号が流れると,コイルの磁力と磁石の磁力があわさって,鉄板を引きつける力に変化が生まれます。

 この結果,鉄板が振動し,音が発生します。

 この2つは,原理は異なるものの,コイルに電流を流すことから,電圧と電流が必要です。電圧と電流の積は電力ですので,このイヤホンを動かすには,電力が必要になるということになります。

 その代わり,音が大きく,音質も良いものが得られ,小さく作ることも可能です。だから現在主流になっているのですね。

 さて,圧電効果を使ったものについては,クリスタルイヤホンが該当しますが,現在は作られていないはずで,セラミックイヤホンがこれに代わっています。

 クリスタルイヤホンというのはその名の通り,結晶を使ったイヤホンです。有名なものはロッシェル塩の結晶を使ったもので,出力が大きく音質もよいのですが,湿気を嫌い,吸湿すると性能が落ちるため,現在は使われていません。

 そこで現在は,同じような性質を持つセラミックを使っています。これがセラミックイヤホンで,クリスタルイヤホンに比べて音も小さく,音質もあまり良くないのですが,同じようなものとして扱って構いません。

 ある種の物質には,電圧を加えると変形し,また変形させると電圧を発生させる性質を持つものがあります。この性質を圧電効果といいます。

 圧電効果を示す物質にはいろいろありますが,特に強力なものはロッシェル塩の結晶や,チタン酸バリウム,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)といったセラミックがあります。

 これらは高い誘電率を持つ不導体であり,電流は流れません。つまり変形はあくまで電圧がかかることで起きる現象です。(詳しい理由は難しいので割愛します)

 これらにフィルムを取り付け,音声信号を加えると,その信号に応じて結晶が変形します。この変形がフィルムを振動させて,音が発生します。

 先程書いたように,圧電効果は結晶を変形させると電圧が発生するので,セラミックイヤホンにむかってしゃべると,音に応じた電圧が発生します。つまりマイクロフォンになるのです。

 先程書いたように,結晶そのものは不導体ですので,電流は流れません。電力が電圧と電流の積なら,セラミックイヤホンは,ほどんど電力を消費しないことになります。

 ただ,圧電効果の高いセラミックは誘電率が高く,容量の大きなコンデンサになる傾向があります。コンデンサは電気をためる性質があるので,音声信号として電圧が加われば,コンデンサを充電するのにいくらかの電流は流れます。しかしたまっているだけで消費されるのではありませんから,消費電力はほとんどゼロといってよいのです。

 こうして,非常に小さい電力しか消費しない発音体という利点を生かし,例えば腕時計のアラームに使われる圧電ブザーや,電源を持たないゲルマラジオに不可欠なイヤホンとして,使われています。

 しかし,物質の変形を利用する以上,大きな変形を作る事は難しいですから,大音量を作る事も,広い周波数を再生する高音質な音を出すことも苦手です。また,大きな音を出すためには高い電圧をかけねばならず,これが欠点といえるでしょう。

 さて,電子ブロックです。

 電子ブロックは,基本的な電子回路の実験が出来るものですが,ダイナミック型やマグネチック型といった,電力を必要とするイヤホンが駆動出来るような増幅回路を構成するだけの部品が用意されていません。

 そもそも,そうした複雑な増幅器を組み立てるのは,電子ブロックの主旨から外れます。電子ブロックは,簡単な電子回路を実際に組み立てて,その動作を原理を学ぶためのものです。

 電子ブロックに用意されている小信号用トランジスタが1つ2つで可能な増幅回路は,せいぜい電圧増幅回路です。電流を供給する回路を作るのは難しく,自ずとイヤホンは電圧だけで駆動できるもの,つまりセラミックイヤホンを使う事になります。

 また,前述の通りセラミックイヤホンは,セラミックマイクにもなります。カラオケのマイクや携帯電話のマイクに使われるエレクトレットコンデンサマイクや,ダイナミック型のマイクと違い,出力電圧が大きく,マイク用に特別なアンプもひつようなく,電子ブロックの実験にはもってこいです。

 こうしたことから,電子ブロックにはセラミックイヤホンが使われています。

 それでは,100円ショップなどで手軽に入手できるダイナミック型やマグネチック型のイヤホンを,電子ブロックでならすにはどうすればよいでしょうか。

 先程書いたように,電子ブロックの部品では電力増幅器を作る事は出来ません。だから素直に考えると「方法はない」が正解です。

 しかし,実は電子ブロックには,電力増幅器がこっそり用意されているのです。

 本体の右上にスピーカがついていますが,これはICアンプと呼ばれるモジュールです。このスピーカはダイナミック型ですので,電力増幅器がなければ駆動できません。

 当然,電子ブロックの部品ではとても駆動できるものではないので,このユニットの中に,LM386という定番のパワーアンプICを使った電力増幅器を内蔵し,音声信号を入れればスピーカから音が出るようにしてあります。

 この,スピーカの代わりにダイナミック型やマグネチック型のイヤホンを接続すれば,十分駆動することができます。そのためには分解が必要になりますし,復刻版の場合はオリジナルと違ってICアンプの部分だけ本体から外れるようにはなっていませんので,こんな実験を行ったら,まず間違いなく壊してしまうでしょう。

 というわけで,ちょっと詳しくセラミックイヤホンの話を書いてみました。

 ほとんど目にすることはなくなったとはいえ,このイヤホンの代わりになるものは存在しません。今でもゲルマラジオを作るにはこれが不可欠です。もっとも,ゲルマラジオが実用品であるわけではなく,我々に身近なイヤホンでないことは間違いないでしょう。

 ですが,こういう種類のイヤホンが世の中にはあって,電気をほとんど消費しないのだという事を知っておくと,知識の幅は広がることと思います。

 貴重なセラミックイヤホンですので,安易に分解してみろとは言いませんが,もし分解すると機械的に動く部分はほとんどなく,コイルも磁石も見当たりません。これで本当に音が出るのかと不思議な気分になることと思います。もし機会があったら,見てみて下さい。

androidに明るい未来を見た

  • 2011/01/28 15:20
  • カテゴリー:散財

 そして最後,私にとって初めてのandroid,久々に買った手のひらサイズのガジェット,IDEOSです。

 先日,WILLCOMのデータ通信カードを落としてしまったことから,解約を行ったことと,その後継として日本通信のb-mobileSIM U300を検討している途中に,IDEOSの存在を知って購入,というところまで書いたと思います。

 なかなかよく売れているらしく,その上ぽつりぽつりとレビュー記事が上がり,概ね好意的な内容であることから,慢性的な品薄状態が続いているようです。

 IDEOSは中国のファーウェィから出ているグローバルモデルということで,日本を除く多くの地域で安価に売られているのですが,これを並行輸入したものは技適が通っていないので,使用できません。

 日本通信は,このモデルを独自に輸入し,技適を通して国内で使用できるようにした上で,10日間のお試し可能なb-mobileSIMを同梱して,26800円で売っています。ファーウェィの日本法人は「自分らは日本で売る気はないし,日本通信が勝手にやってることなので,問い合わせなどしないよーに」と商売っ気のないことを言っていますが,キャリアと端末メーカーの力関係には,いろいろなものがあるようです。

 IDEOSは私が今持っている携帯電話より小さく軽い,android2.2をOSに搭載したスマートフォンです。日本通信の思想に準じてか,海外モデルに対して可能な限り制約がないようにしてあり,とても好感触です。

 CPUは500MHz程度,メモリも少なく(どうもユーザーが使えるのは128MByteくらいのようです),画面もQVGAでタッチパネルはマルチタッチに対応しません。確かに非力ですし,今の水準で考えると不安に駆られるスペックですが,思い出してみるとiPhoneだって昔はQVGAで500MHzのクロックだったことを考えると,まあいいんじゃないかと思います。

 同梱されるb-mobileSIM U300は,IDEOS専用ということになっています。10日間のお試しが終わったらチャージを行えば継続使用できます。通常のb-mobileSIMと違って,29800円で利用出来る期間は,初回のチャージのみ14ヶ月です。最初の1年だけは,月額2128円ということになりますが,2年目以降は12ヶ月に戻るようです。

 端末の動作が遅いこと,実力で300bps程度の通信速度とあいまって,サクサクとした軽快感はありません。使う人にそれなりの我慢を求めるものですが,私がやりたかったメールとWEBブラウズくらいなら,別になんてことはありません。

 androidについては,とにかく全く初めて触りますから,なにも分かっていません。それまでほとんど興味もなかったのですから,全くの白紙です。

 いろいろ触っていて思うのは,androidはWindowsMobileとiOSの間に位置するOSだなあということです。

 iOSは標準で十分快適に使えるように作られいます。アプリを追加して機能を増やすことは可能ですが,それはAppleが認めたものに限られます。だから日本語入力を賢くしたいなと思っても,ATOKは手に入らないわけです。

 一方のWindowsMobileはアドエスで散々触りましたが,これはもう標準ではどうにも使い物にならず,とにかくカスタマイズを行わなければまともに運用できません。その代わり,アプリの入手には制約も制限もなく,みんな勝手気ままに作っています。

 androidはまさにその中間です。標準のままでもそれなりに使えますが,アプリを使えばもっと便利になります。そのアプリの入手はWindowsMobileのようにユーザーが自分で探すわけではなく,androidマーケットにまとまっています。しかしandroidマーケットは制約も少なく,開発者登録費用の25ドルを支払えば,あとは登録も無料です。

 もちろん,androidの自由度はiOSよりも高く,様々なソフトを作る事も可能で,これを自由に公開できるわけですから,大変上手くまとまっていると思います。私はカスタマイズをしたいわけではなく,使いにくさを解決したいだけですので,出来るだけ標準のアプリで過ごし,どうしてもダメなものをアプリを探して解決するので,この程度のスタンスがちょうど良いと思っています。

 ところで,私個人はPDAを長く使っており,今はPalmTXを使っています。これでなにか特別なことを仕様というのではなく,使い慣れたPalmでスケジュールとアドレスの管理をしたいだけですから,ここにコンピュータの姿を見ることは(今は)ありません。

 先日,タブレットやスマートフォンとPCの根本的な違いについて考えたところ,後者はコンテンツを作成するもの,前者はそのコンテンツを消費するもの,という位置付けだと気が付きました。

 私は自炊にしても写真のレタッチにしても,PCを使わなければならない事が多いので,基本的にコンテンツを消費するマシンにはそれほど興味はありません。だからiPadも欲しいとは全然思わないわけですが,メールとWEBについては,もう文房具のようなものですから,肩肘張って使うものでもありません。

 もし,スマートフォンが便利だとすれば,文房具としてどれだけ便利かに尽きると思うのですが,その第一条件は,やはり持ち運びの負担の軽さです。小さく軽い,これが第一の条件であり,これを満たさないものはどれだけすごいマシンであっても,私は欲しいと思いません。

 だから,kindleは大好きですし,iPadは嫌いなわけです。そしてIDEOSは,私の所有欲を満たし,かつ私の生活を変えようとしています。

バランスドアーマチュア初体験

  • 2011/01/27 13:20
  • カテゴリー:散財

 3回目は,久々に買ったインナーイヤーのヘッドフォンです。

 先日,あるパーツ店のblogを見ていると,ZERO AUDIOというブランドで,新しいヘッドフォンが発売になったと紹介がありました。ケーブルで知られた協和ハーモネットのオーディオブランドがZERO AUDIOで,ここが昨年末に発売したのがZH-BX500とZH-BX300という,ヘッドフォンです。

 価格は前者が8000円ほど,後者が5000円ほどですが,この価格にしてバランスドアーマチュア型だというから驚きです。バランスドアーマチュア型が高級なヘッドフォンに使われるようになり,今や高級品の代名詞となった観すらありますが,それがこの価格で味わえる,しかもそれなりに評判も良いという事で,これは一発衝動買いです。中野のフジヤエービックで7100円でした。

 そもそもバランスドアーマチュアってなんだ,という恥ずかしいレベルの私は,まず勉強することにしました。

 電気を音にするのですから,電気の強弱で振動板を振動させて,それが空気を振動させて音になるという原理はとても単純ですが,現在主流のダイナミック型は永久磁石が作り出す磁束の中に電磁石を置いて,この電磁石発生した磁力の強弱によって電磁石の位置が変化し,これにくっついた振動板が振動するという仕組みです。

 大事な事は,電磁石が動くという事です。

 一方,マグネチック型と呼ばれるものもあります。オーディオ用ではなく,ラジオ用に売られている片耳だけのイヤホンは,このマグネチック型だったりするのですが,永久磁石の周りに電磁石を巻き付けておき,その上に振動板となる鉄の薄い板を置いたものです。

 磁石によって振動板は一定の力で吸い寄せられていますが,電磁石に信号が流れ,磁力が発生すると,磁石からの磁束に変化が生じ,振動板を吸い寄せる力も変化します。これが空気の振動を生むわけです。

 ここで大事な事は,電磁石は動かないという事です。

 マグネチック型は,ダイナミック型が登場するまで,主流だった方式でした。大きなスピーカーだってマグネチック型で作られていましたが,さすがに鉄の薄い板を大きくするわけにも行かないので,紙で出来たコーンにロッドと呼ばれる針金をくっつけ,この針金を振動板の代わりに置いた鉄片に繋ぎました。

 鉄片は動くため可動鉄片とよばれますが,これをアーマチュアといいます。

 ダイナミック型はいわばリニアモータで,振動板を軽く作ったり,大きなストロークを得られたりと,周波数特性が非常に広いことが特徴です。一方のマグネチック型は動く範囲が小さく,ストロークを大きくできないことや,振動板を軽く出来ずに高域が出にくいということで,帯域が狭く,なんとか音声帯域をカバーするのがやっとだったといわれています。

 ラジオのスピーカーはマグネチック型だったのですが,オーディオが音声から音楽を扱うようになり,Hi-Fiになるに従い,広帯域を再生できないマグネチック型が消えて,ダイナミック型に切り替わっていきました。

 なら,イヤホンだってダイナミック型にすればよかったのに,と思うかも知れませんが,ダイナミック型は原理的に強い磁石が必要になるため,小型化が難しかったのです。近年の強力な磁石が誕生して,ようやく小型化が可能になったと言う方が正しいです。

 マグネチック型は磁束の変化で振動板を動かすのですから,原理的にそんなに強い磁石を必要としません。それで小型ならマグネチック型が使われ続けていたのです。

 マグネチック型にはもう1つ欠点があります。それはひずみです。ダイナミック型は,フレミング左手の法則に従って,流れる電流に比例して動きます。ゆえにひずみは出にくいです。

 マグネチック型は,磁束の変化で吸引力が変化し,それが振動板を振動させるわけですが,厄介なことに吸引力の変化は,磁束の変化の二乗に比例するのです。つまり,原理的に比例関係にないことから,二次高調波というひずみを発生させてしまいます。

 この欠点を解決するための仕組みが,バランスドアーマチュアと呼ばれるものです。

 可動鉄片を磁石で挟み込み,それぞれに電磁石を配置します。2つの磁石の磁力がバランスしてゼロになる所に可動鉄片を置けば,この部分にかかる磁力はゼロになります。従来のマグネチック型では,常に磁力がかかっていたのに比べると,大きな違いです。
 
 電磁石に信号が流れると,表側の磁力が強くなる時,裏側の磁石には磁力が弱くなるようにすれば,片側の磁石が引っ張り,もう片側が押すようになります。これにより,二乗に比例する二次高調波成分は打ち消され,純粋に信号の変化に比例して振動板が動くようになるのです。

 うーん,なんだか狐につままれているような気がしてきました・・・

 ですが,いわばプッシュプルということですので駆動力は倍になり,感度はダイナミック型に比べて大きくできます。もともとマグネチック型の発展型だったわけで,超小型に出来るという素性の良さに加えて,ひずみを押さえ,また小さい電力で大きな音を出せるというこの方式は,補聴器用のイヤホンとして決定版となりました。

 声を明瞭に再生することをテーマに改良が重ねられたわけですが,強力な磁石が利用出来るようになるなど,Hi-Fi用として利用出来るだけの周波数帯域を持つことも可能になりました。

 そこで近年,小型であること,軽量であること,感度が高く小さな音を再現できること,そして(おそらく歪みを打ち消している事が理由なのでしょうが)解像度が高い事を積極的に利用して,高級なヘッドフォンとして理世売れるようになってきたのです。

 構造が複雑で小さいため,精度が要求され量産に向かず,高価になりがちという事もありますし,超小型であることを生かし,2Wayや3Wayのスピーカーのように帯域ごとに2つ,3つを搭載するものまであったりして,ますます高額になる傾向があります。

 基本的な性能から言えば,ダイナミック型の方が安く,しかも低域から高域までバランスを持つように作る事ができるのでしょうが,ダイナミック型にある大味な感じとは対照的に,繊細で解像度の高い音を得る方法として,好まれているのだと思います。

 私個人は,ダイナミック型の躍動感,低域から高域までカバーする広帯域が好きで,もともと小さいものに豊かな低音は望めないということから,大きなヘッドフォンに抵抗もなく,バランスドアーマチュアにはあまり興味を持っていませんでした。

 しかし,インナーイヤーのヘッドフォンが,かつては1万円でも高級だったのに,最近は3万円で中級,5万でようやく高級という状況を知り,やはりその原動力となったバランスドアーマチュア方式というものを体験してみたいと思っていたところでした。

 そこに登場したのが,実売8000円のバランスドアーマチュア型,ZH-BX500だったというわけです。

 さて,届いたZH-BX500を,早速試して見ます。小さく,軽いのはさすがです。金属製の筐体も高い質感を持っていて,装着感も良好です。耳の中に吸い付くような感じがあって,密閉感も非常に高いものがあります。

 なんといっても小さいために,耳への負担が小さい事はうれしいです。

 音を出してみますが・・・あまり良くないです。

 全体に奥行き感が小さく,平面的に聞こえます。ボーカルも奥行きがなく,随分手前にいるように聞こえます。

 低域の細さと,高域のだら下がりが,帯域の狭さを印象づけます。私が長く愛用しているATH-CK7と,最近のリファレンスであるQC15と比べると,パワー感やタイトなベースが聞こえてきません。元気がないです。

 そしてスタックスを使って見ると,ぱーっと頭の中に空間が広がり,その中でびしっと楽器が定位しています。この表現力はやはりすごい。

 ZH-BX500も,2時間ほどならしている内に随分馴染んできたようですが,それでも前後の奥行きが乏しく,平面的な音になっている傾向は変わりません。

 高域が強いとは言え帯域は狭いので,サシスセソが濁ることはありません。中域に大きなピークがあるようなおかしな癖もないので,音そのものは大変素直です。

 また,よく言われる解像度は確かに高いと思います。感度の高さもあってのことでしょうが,ノイズがよく聞こえるになったことと,音が消える瞬間の歪みが良く聞こえるようになりました。

 また,楽器の個性を良く表現していて,情報量の多さには多少の疲れを感じるほどです。

 位相特性も良好のようで,楽器の位置が動きませんし,周波数によって位置が変わることもありません。

 総じて,まるで測定器のようなヘッドフォンだと思います。音を楽しむ,声の豊かさを味わう,そうした用途にはちょっと厳しいですが,解像度の高さと情報量の多さは,他にないものを持っていると思います。

 惜しいのは,明らかに高域の帯域が不足していていることでしょうか。低域のエネルギーは原理的に望めないとしても,この高域の伸び不足にはフラストレーションを感じます。

 ZH-BX500の良いところは,

・小さく軽く,装着感の良さからくる,体への負担の小ささ
・感度の高さと歪みの小ささからくる,小音量時の再現性の高さ
・感度の高さからくる,アンプの消費電力削減
・解像度と低位の良さ
・色づけのない,素直な音
・価格以上の音

 悪いところは

・低域の貧弱さ
・高域のだらしない落ち方
・一聴して感じる帯域の狭さ
・奥行きがない,平面的で,ヘッドフォンの欠点がそのまま出ている空間再現能力

 というところでしょうか。

 他のヘッドフォンと性格がかぶらないので,これはこれで私の常用モデルとなりそうですが,それにしてもこんな味付けのないヘッドフォンがこれだけ話題になるというのは,なんだか日本のオーディオファンもよく分からないものです。

MacBookProのメモリ増設

  • 2011/01/26 12:09
  • カテゴリー:散財

 散財を紹介する2回目は,MacBookProのメモリです。

 DDR2時代の,DRAMの暴落は歴史に残であろう,ひどいものでした。巨大設備産業であるDRAMのメーカーがとうとう力尽きてつぶれていく様は,まさに生きるか死ぬかの戦いでした。アクセルを緩めればそこで脱落,しかし踏み続けるも地獄という状況で,DD3への移行は,まさに日照り続きでひび割れた田畑に染みこむ,恵みの雨のようでした。

 しかし歴史は繰り返します。DDR3に移行し,OSも64ビットになりつつある今,メモリの需要はそれなりにあるようですが,やはり価格が下がっています。DDR2時代に比べればましとはいえ,これ以上の値下がりはメーカーにまた血を流す必要を迫るでしょう。

 DRAMは旬の食べ物のようなものですから,主流のメモリの値段は下がりますが,一世代前あるいは一世代先のメモリは値段がそれほど下がりません。

 ところで私のMacBookProは,購入してもう2年以上が経過するわけですが,特に不満もなく,まだまだ立派に私の頭脳をアシストしてくれています。この手のマシンが陳腐化するのは,CPU速度でも画面の大きさでもなく,記憶容量です。それはHDDの不足,あるいはメインメモリの不足です。

 HDDについては,比較的緩やかな技術の変化ですし,従来の技術の上に大容量化が行われるので,最新の大容量品に交換することは容易です。しかしメインメモリであるDRAMは,まさに旬のものが使われているので,2年後には全く違うメモリが主流となっていて,入手も徐々に難しくなっていきます。

 また,ノート型のPCはスペースの関係から増設には制約があり,私のMacBookProも嫁さんのMacBookも,SO-DIMMは2つまでしか入りません。

 チップセットによる最大容量の制約もあるので,実はパソコンが使い物にならなくなる理由は,経験的にメモリによるものだと,私は断言しましょう。

 果たして,私のMacBookProは,最大搭載容量は6GBです。現在搭載している4GBではスワップが連発してカクカク動く状況においては,とにかく増やすしかありません。

 メモリスロットが2つしかないMacBookProですが,私はすでに2GBを2枚入れてトータル4GBにしてあります。6GBにするにはこのうち1つを外し,4GBのSO-DIMMと入れ替えることになります。もったいない。

 調べてみると,DDR2でもHynixのSO-DIMMが6000円ほどです。2万円近くしていたような記憶があって,値段が下がるまで待とうと思っていたのですが,6000円なら躊躇することはありません。

 上海問屋で見つけた安いメモリが届いたのは,やはりこないだの土曜日です。交換作業は簡単なので,さっと作業開始です。電池を外し,ビスを3本緩めて,メモリスロットのカバーを外します。

 ソケットから1つ2GBのSO-DIMMを外し,4GBのものに交換します。

 元に戻して電源を入れて,6GBに増えているかどうかを確認すれば,作業完了。

 不安なので,メモリテストツールを走らせて,問題ないことを確認しておきます。

 なにも問題が出なかったので拍子抜けしつつ,4GBでスワップの発生していた重たい処理を行ってみましたが,さすがに2GB増えるとスワップが減ります。軽くなった,速くなったと言うより,引っかかることがなくなったという感じで,作業や思考を中断されないことの快適さを手に入れるのに,この6000円という出費はとても安かったと思います。

 どのみちこれ以上のメモリは搭載できませんから,MacBookProの拡張としてはもうこれでおしまいです。次不満が出たら,買い換えになるのでしょうね。

 さて,MacBookProもMaBookも,同じメモリが2枚入った状態では,インターリーブが有効になり,メモリのアクセスが高速化されます。これまではインターリーブがきいていたはずですが,4GBと2GBのメモリになった今後,インターリーブは無効になります。

 速度がどれくらい遅いか気になるわけですが,はっきりいって差は感じません。調べたサイトがあるのですが,いわく数パーセントの差に過ぎない,と言うのようです。

 気になるなら4GBを2枚入れて,トータル8GBのうち6GBを使うようにすればいいのですが,これはさすがにもったいない使い方です。

 メモリを増やした事による速度の向上が,インターリーブによる速度向上を明らかに上回ると考えた私は,現在の6GBの体勢がもっともよいと思っています。

 ところで,外した2GBのメモリについてですが,嫁さんのMacBookに差し込んで使ってもらうことにしました。

 もともと512MBのSO-DIMMが2枚入っていましたが,私のMacBookProを4GBにするときに外した1GBのSO-DIMMを2枚入れて,トータル2GBになっていました。

 嫁さんのMacBookは3GBが最大なのですが,これは1枚を2GBのSO-DIMMにした場合です。インターリーブは有効になりませんが,MacBookの場合グラフィックチップが別になっておらず,メインメモリの一部にフレームバッファが確保されるので,インターリーブがない時の速度低下は結構大きいといわれています。

 嫁さんは,とにかくたくさんのアプリを立ち上げたままにする人で,現実の生活でも出しっぱなしで片付けの出来ない人ですから,広いスペースが必要になるのはリアルでも同じです。

 そんなですから,すでにメモリはカツカツとのことで,3GBになったマシンの軽快さを,喜んでいました。

 今度は,もともとMacBookProに入っていた1GBのSO-DIMMが1つ余ってしまいました。いつ必要になるか分かりませんので,とりあえず箱の中にいれてしまっておくことにします。

 DDR2という一世代前のメモリにどれくらいの影響があるかはわかりませんが,少しずつDRAMの値段が上がる傾向を見せているそうです。旧正月が開けると品不足に拍車がかかり,投機的な期待も込めて値段が上がってくると言う意見もあるようですが,これも経験的にDRAMの値段は,なかなか戻りません。世代が変わるまで,このままの値段で推移するんじゃないかと思っています。

 DDR2については,手に入りにくくなるまえに手に入れておくべきものですので,もし少し古いマシンを持っている方は,今のうちに増設されることをおすすめしておきます。

HC-20の修理~プリンタ動作時の電圧変動

 HC-20のプリンタの動作については,先日書いたように電池で動作させると,電源電圧が下がってLowBatteryの割り込みがかかり,印刷が停止するという問題がありました。

 プリンタは大電流が流れるので,単三のエネループくらいの内部抵抗なら,電圧が下がってしまうことはやむを得ません。

 しかし,電圧が一瞬下がったからといって,電池が切れたといちいち判断されては,電池を使い切れないわけで,電圧が下がる時間が短く,電流が元のように小さくなれば電圧も元に戻るような場合,電池切れと判断されないようにしないと,実用に耐えません。

 実際,電池切れと言われてプリンタの動作が止まった時の電圧は,無負荷時で約5.3Vでした。1セル当たり1.3V以上ありますので,まだまだ満タンに近いところです。

 そこで,電圧監視ICをだますことにします。

 電圧監視には,富士通のMB3761というICが使われています。いろいろな使い他の出来るICですが,HC-20の場合には1ピンの入力Bの電圧の変化が緩やかになるよう,コンデンサをGNDとの間に入れる事になります。

 この入力Bという端子には,電池電圧であるVBを抵抗で分割して,低い電圧が入るようになっています。私の場合,検出電圧を下げたこともあって,入力BとGNDの間に入っている合成抵抗は,14.2kΩです。

 ここに1uFのコンデンサを2つ並列に入れました。合計で2uFとなります。

 さて,ここで目安を計算しておきましょう。

 抵抗とコンデンサの積によって出てくる時間を時定数といい,与えた電圧に対して約0.6倍の電圧に達するまでの時間を示しています。これによると,0.284秒,284msとなりました。このICのしきい値がいくらかは面倒なので調べていませんが,300ms程度の瞬間的な電圧変動があっても,無視されるようになったわけです。

 本来電池が消耗することによって起こる電圧の変化というのはゆるやかなものであり,あまり急激な変動を監視していてはきりがありません。このくらいの値がちょうどいいのではないかと思います。

 結果ですが,ばっちりです。

 電池でプリンタを動作させても問題なく動作し,システムも不安定にはなりません。もっとも昇圧DC-DCコンバータをいれて安定化していますので,多少の電圧降下があっても,システムとしての信頼性は確保されています。

 今度こそ,HC-20は終わりにしたいところです。なにせ,次にPC-8201が控えていますし。

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