新しいeSATAカードを試す
- 2012/05/21 13:22
- カテゴリー:散財
連休中のことですが,主にスキャンした本のPDFと,デジタルカメラで撮影したデータをたくさん詰め込んだ外付けの2.5TBのHDDが,突然認識しなくなりました。
これはさすがに目の前が真っ暗になるほどびびったのですが,結論から言うとケースの故障でした。MacBookProにeSATAカードを差し込んで接続していたのですが,ケースを使わず,eSATA-SATAケーブルを使って直結すると問題なく認識出来たので,ほっとしました。
eSATAインターフェースはJMicronのJMB362を使っているExpressCard/34です。このチップだとMacOSXでは32bit/64bit両方で,標準のドライバが用意されているので,差し込むだけで使えるようになります。もちろんブートもokです。
ケースはブリッジにInitioのINIC-1610を使ったもので,eSATAとUSB2.0に対応したものですが,このカードとの組み合わせで比較的安定した運用が出来ていたので,ケースの故障はちょっと痛いところです。
で,事前に調べて訳ではないのですが,安くて便利そうで一応ちゃんとしたメーカー品という事で,ロジテックのLHR-DS04EUを買うことにしました。しかしあれですね,。ロジテックというと海外の本家がもちろん有名ですが,こちらのロジテックも1980年代前半から知られた周辺機器メーカーで,5インチのフロッピーディスクドライブの広告が雑誌に出ていましたねえ。
1990年代には20MBとか40MBのハードディスクも売ってました。SASIとかSCSIで繋いでいたんですよね。当時からロジテックと言えば,ストレージの専業メーカーという印象があって,私はその真面目さが好きだったんですけど・・・
そういえば,当時のハードディスクのメーカーで,残っているのは本当に少ないですね。ICM,緑電子,日本テクサ,アイテック・・・このあたりは全滅ですね。まあその,こういう中小企業がちゃんと残っていけたのが1990年代前半までだったわけですよね・・・寂しいですね。
閑話休題。
新しいケースはフロントからドライブを抜き差しできるタイプで,ドライブを交換する手間がかかりません。しかもファンまで搭載していて,見た目もそんなに悪くありません。
連休中に手に入れて試したのですが,以前のケースとはちょっと使い心地が変わってしまいました。以前は先にカードにケーブルを繋いで,電源を入れてからカードをMacBookProに差し込むと難なくマウントしたんですが,今回はこれではマウントしないときがほとんどです。
ケーブルの抜き差しをやってマウントすることもあれば,もう片方のコネクタにつなぎ替えたらようやくマウントする場合もあって,どうもすっきりしないのです。しかも,このケースはケーブルを抜けばHDDがスピンダウンするので,あまり短い間隔でケーブルの抜き差しをするのはちょっとためらわれます。
どうにかならんものかと,まずこのケースを分解して使っているブリッジチップを確認すると,これまで大人時InitioのINIC-1610でした。
ただ,このINIC-1610は細かいカスタマイズが出来るので,今回のような挙動の違いは同じチップであっても異なるもので当然でしょう。
ブリッジチップをバイパスしてSATAコネクタ直接ハンダ付けで繋いでしまおうかと思ったくらいですが,手間もかかるし面倒なので,このままでなんとか使う事を考えます。
もしかすると,eSATAカードが古いのかも知れない・・・ドライブに対して発行するコマンドが古いものだったりすると,こういうトラブルというは出る傾向にあったりするものです。
もともと,このSATAカードも随分古いものです。2TBを越えるドライブをサポート出来なかったり,速度的に不利なことがあったり,あるいは突然壊れてしまってデータを全部ロストすることもあるかも知れません。これは買い換え時だと,神の声が聞こえてきましたよ。
ということで,MacOSXの標準ドライバで動作し,出来るだけ新しいものを探してみました。そうすると,Marvellの88SE9123を使ったカードがどうも条件に当てはまりそうです。
SATA3に対応,6Gbpsの速度を実現し,ちゃんと3TBのHDDまで面倒見ますというチップです。もちろんMacでブートもokです。これを使った製品で安いものを探してみると,毎度の玄人志向から「SATA3-EC34」が出ています。4000円ほどです。
もしかすると問題は解決しないかも知れないし,買い換えるメリットなどないかも知れません。もしかするといわゆる「相性問題」で状況が悪化したり,最悪のケースでデータの破壊があったりするかも知れません。
ちょっと迷うのですが,ここ数年放置してあった環境の1つですので,てこ入れに試してみましょう。
先週の金曜日に届いたものをさっと確認してみましたが,まずアクセスランプがカードにもついています。これは結構ありがたいです。以前のカードにはランプがなく,HDDを直結で使う時には結構不安でした。
ですが,明るさが足りないので,とっととLEDを交換。横から見ても十分な明るさになりました。
まず,マウントの問題を確認してみましたが,これは変化無しです。やはりつなぎ替えないとマウントしないです。ちょっと規則性がわからないのですが,ディスクユーティリティを見ながら抜き差ししたりすると,別のHDDにつなぎ替えても前のHDDの名前が残っていたりするので,これはOSかドライバの問題じゃないかと思うようになりました。とても怖いバグのように思うのですが,まあやむを得ません。
次に速度の話です。新しいカードですし,SATA3ですので,ちょっとは高速になってくれることを期待したいところです。
で,参考程度にベンチマークを取ってみました。
まず,今回の新しいカード,88SE9123です。ケースはLHR-DS04EU,HDDはWDのWD20EARSです。
Drive Type WDC WD20EARS-00MVWB0
Disk Test
Sequential
Uncached Write 100.32 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 66.75 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 18.28 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 90.01 MB/sec [256K blocks]
Random
Uncached Write 2.02 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 65.45 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 0.72 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 33.87 MB/sec [256K blocks]
で,同じ条件で,古いカード,JMB362です。
Drive Type WDC WD20EARS-00MVWB0
Disk Test
Sequential
Uncached Write 72.45 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 78.57 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 18.64 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 88.87 MB/sec [256K blocks]
Random
Uncached Write 2.05 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 79.58 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 0.72 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 33.60 MB/sec [256K blocks]
4kのシーケンシャルライトがかなり高速になっているように思いますが,256kでは逆転,それ以外はほぼ同じという結果になりました。うーん,よくわかりません。
ケースが影響している可能性がありますね。INIC-1610は1.5Gbpsでしか動いてくれませんから,これがネックになっている可能性があります。そこで,ケーブルで直結してみました。まず88SE9123,次にJMB362です。
Drive Type WDC WD20EARS-00MVWB0
Disk Test
Sequential
Uncached Write 99.69 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 67.24 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 18.40 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 77.67 MB/sec [256K blocks]
Random
Uncached Write 2.10 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 62.10 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 0.69 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 33.60 MB/sec [256K blocks]
Drive Type WDC WD20EARS-00MVWB0
Disk Test
Sequential
Uncached Write 72.41 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 78.47 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 18.50 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 88.35 MB/sec [256K blocks]
Random
Uncached Write 2.11 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 83.20 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 0.70 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 33.32 MB/sec [256K blocks]
うーん,ケースに入れたときとほとんど同じ結果です。ということは,ケースが速度の足かせになっているわけではないようです。
ちなみに,これまでの環境が安定して動き始めた2009年に測定した時の結果を再掲します。
Drive Type Hitachi HDT721010SLA360
Disk Test
Sequential
Uncached Write 70.14 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 76.09 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 11.64 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 98.49 MB/sec [256K blocks]
Random
Uncached Write 1.88 MB/sec [4K blocks]
Uncached Write 51.72 MB/sec [256K blocks]
Uncached Read 0.66 MB/sec [4K blocks]
Uncached Read 30.56 MB/sec [256K blocks]
ドライブがHGSTの1TBですので速度の違いが出てもそれは当たり前ですし,OSも古いものですから本当に参考程度ということになりますが,これを見ているとあんまり変わらないなあという印象ですね。
つまるところ,この速度の制限は,ディスクへの入出力,あるいはキャッシュの速度によるものであるということです。SATAの速度が1.5Gbpsだろうが3Gbpsだろうが差はなく,1.5Gbpsで十分という結論です。
最終的に,マウントの問題は解決せず,速度の向上もなく,カードを新しくした意味というのは,あまりありませんでした。
ただ,4kのシーケンシャルライトについていえば,新しいカードの方が圧倒的に高速です。ここを期待するのもよいですし,故障を未然に防ぐという意味で,今後はこの新しいカードを使おうと思います。
しかし,相変わらずeSATAは手強いです。USB3.0が普及してくれればこんな苦労はないのですが・・・でも,この速度は魅力的なのです。強力な掃除機を使っているような,あのどんどんファイルを吸い込む気持ちよさは,今のところeSATAならではです。
その昔,SCSI-1が5MB/secで高速とかいってたんですよね。40Mbpsですから,1980年代でこの速度はまさに光の速さだったことでしょう。
初めてHDDを買ったとき,初めて100MBを越えたとき,初めて1GBになったとき,初めて10GBを越えたとき,初めて1TBを越えたとき・・・CPUの速度よりも,私個人はHDDの容量が増えたときのことの方が,強い印象として残っています。
今や,デジカメから吐き出されるファイルが1つで,かつてのHDDがいっぱいになるほどの大きさになりました。身の回りのファイルがどんどん肥大化して行く中,その受け皿としてのHDDも大容量化,高速化してくれたことは,ありがたいことです。
同じ写真を撮っても,数年前とこれだけ情報量が違うのです。50年後,100年後に,この急激な情報量の変化を,後世の人々はどう思うのでしょうかね。