NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを買いました
- 2021/11/29 11:43
- カテゴリー:散財, カメラに関する濃いはなし
作例を示さないレンズのレビューというのも無意味に思えるのですが,個人的な買い物メモの延長にありますし,実際数年して読み返してみればいろいろ思い出すこともあり参考になるので,今回も書こうと思います。
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR,買いました。(フードも買いました)
発表時に予約したので,発売日に手に入れる事ができました。
Zfcはすっかり私の手の届く範囲にいつもあり,ぱっと手に取って電源を入れては撮影するという習慣が出来上がっています。
D850はZfcをもってしてなお最高画質,最高のフィーリング,そして最高の信頼性を備える最高のカメラだと思いますが,Zfcのカジュアルさと画質のバランスは,普段の生活の時間の流れの中にあいたくぼみに,上手く嵌合する感覚があります。
カジュアルさだけでは成り立たないのがカメラの世界で,撮影結果を確認したときの,期待以上の画質を見て,また撮ろうという気にさせないといけません。
それは,生活の一部である以上室内である事も多いですし,夜である事も多いです。そういう悪い撮影条件でも期待を越える結果を出してくれないと,カジュアルである個とは安物の烙印を押されておしまいになるのです。
とまあ,そんなことを書けたのも,今回のNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを使ってみたからです。
・質感,手に取った感じ
さすがニコンと言うべきか,全身プラスチックのレンズなのに,このしっとりとした質感は素晴らしいです。デザインも今どきの洗練されたもので(とはいえこのデザインの流れはシグマが方向付けたものだと思います),装飾をなくしてもこの格好良さというのは,やはり基本がしっかり作られているからだと思います。
でもですね,実売7万円のレンズですので,当たり前と言えば当たり前。これで2,3万円同等の質感だったらそりゃ問題でしょう。すでにマウントが金属ではなくプラであることに対する批判もあるわけですし,価格相応,あるいはそれ以下という評価に落ち着くことになると思います。
・重さ,取り回し
18mmから140mmのAPS-Cですから,35mm換算では27mmから210mmをカバーする,いわゆる便利ズームです。その割には小さいです。小さいというのは長さもそうですし,直径もそうです。特に直径が小さいことは新鮮な気分にさせられます。前玉もこんなに小さくて,周辺が落ちまくりなんじゃないかと思いますが,そんなことはありません。
望遠側にすると全長が伸びるレンズなのですが,それでも70-200のF2.8くらいの長さに収まっているので,すぐに慣れることが出来ました。
むしろ軽さが画期的で,Zfcの軽さもあってか,ぱっと手に取ると「軽いな」と毎回思います。こういう取り回しの良さも,Zfcへの懐かしさの1つかも知れません。
・画質
16-50mmの画質が素晴らしかったため,このレンズにも期待が高まっていました。実際に使ってみると,ちょっと物足りない感じがしました。印象としては広角側は良好,70mmくらいまでの中域は平凡で,140mmまでの望遠側は積極的になれない感じです。
決して画質が悪いわけではないですし,Zマウントらしい切れもあって,価格に相応しい画質だとは思うのですが,色は期待ほどのってきませんし,コントラストも凡庸,グラデーションもごく普通の再現度です。詰まるところ便利ズームの妥協点を1つ減らしたものという感じだと思います。
大事な事は,かつての便利ズームから,明るさへの妥協があったことです。望遠側でF6.3というスペックによる辛抱は思いのほか強く,それでこの画質かというがっかり感も,望遠側での不満に繋がっているように思います。
繰り返しになりますが,広角側はF3.8と普通の明るさですし,少し絞ってF5.6くらいで使いますので,画質は文句なしです。APS-Cは広角側のレンズになにかと悩ましいものですので,28mm相当でこの画質なら,常用レンズにできると思います。
・機能的なところ
まず手ぶれ補正。私は手ぶれ補正はあまり重要な機能と考えていません。手ぶれが押さえられても,被写体ブレを押さえなければならないシーンが多いので,結局シャッタースピードを高めなければいけないからです。
ただ,手ぶれは画角が狭くなるほど影響が大きくなるのに対し,被写体ブレは画角に関係がありません(ただし被写体の大きさを同じにした場合です)から,望遠で1/60秒が使えるというのは,メリットだと思っています。
私はあまり望遠を使いませんのでVRのメリットを感じてこなかったのですが,このレンズでの望遠側のVRにはとても自然なものがあり,知らず知らずのうちに助けられていることが多くありました。
結論。便利ズームには手ぶれ補正は必須です。広角側から望遠側までシームレスに使うレンズだからこそ,気持ちも覚悟もシームレスでないといけないわけで,広角と望遠が出来るだけ同じ感覚で使えるようにするためには,やはり手ぶれ補正は必要だと思います。
しかし,VRのスイッチやA/Mの切り替えスイッチは欲しかったです。Zfcではメニューに潜らないといけない設定だからこそ,スイッチが欲しいと思いました。特にA/Mは欲しかったです。
というのも,マルチファンクションリングの滑らかさが素晴らしく,ここをフォーカスにして使えば,置きピンも楽しいだろうと思ったからです。もちろん,このリングを回せばMFに切り替わりますので目的は達成出来そうなものですが,初期設定ではシャッターボタンを押せばAFが働いてしまうので。不便なのです。
設定をすればいいようなものですが,そうすると親指AFを使うことになります。でもこの親指AFって誰でも出来るものではありませんから,例えば娘が「ちょっと課して」と言ったときに,いちいち設定を変えているうちに,娘の気が変わってしまうこともあるわけです。
こういう割り切りがあったことは,7万円のレンズでは残念な所だと思います。
・フードが別売り
これも私は問題で,フードは付属して欲しかったと思います。多くのレンズ設計者がフードの常用を光学的にも事故を起こしたときの被害軽減にも役立つとして薦めているわけですが,そう高くもない花形フードをわざわざ別売りにすることも,ちょっと首をかしげてしまいます。
それにですね,このフード,プラ製の花形フードの癖に,えらく格好いいんですよ。最近のレンズのデザインのトレンドはシグマが作ったと思いますが,そのシグマもフードそのもの,あるいはフードを装着したトータルの格好良さはまだまだだと思います。
ですが,Zマウントのレンズはフードをしても格好がいいです。ずっと付けていたくなるようなうれしさがあります。だからこそ,付属して欲しかったなあと思うのです。
・寄れるレンズ
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRの特徴の1つに,寄れるというのがあります。ズーム全域で20cmから40cmとかなり寄ることが出来て,撮影倍率は0.33倍と言いますから,35mm換算では実に0.5倍です。一昔前ならマクロレンズを名乗っても良いスペックです。
近距離時の画質もなかなか良くて,しかもVRがききますから,マクロ撮影の定番である花も,見事に写しきります。これだけ寄れてこの画質なら,このレンズを持ち出すときの不安はほとんどなくなりますね。
画角が大きく変化することもそうですが,寄れることも撮影者の「がっかり」を防止するものであるわけで,まさに便利ズームの真骨頂だと思います。
・欠点,期待外れ
先にちょっと書きましたが,なんといっても「暗い」です。私はF6.3のレンズは暗すぎると思っていて,これまで手を出したことはありませんから,このレンズが初めてのF5.6より暗いレンズです。
望遠側だけなのでどうにかなると思っていましたが,想像以上に厳しいです。
NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRは開放からシャープでガンガン使えるレンズです。ですので中域まではF5.6に収まってくれるのですが,さすがに望遠側のF6.3は非日常で,まるでF4の望遠をテレコンで使っているような,暗い気分にさせられました。
このくらい暗いと,いくらVRがあるから,いくら高感度耐性があるからといっても,コントラストの低下や彩度の低下は避けられません。特に室内では使い物にならず,実質18-70mmくらいのレンズだと思わないといけないです。
そうして明るさを犠牲にした望遠側は,画質も平凡です。積極的に使おうというシーンは限られます。
そして,やっぱり価格です。質感が素晴らしいし画質も良いのですが,でもこのスペックで実売7万円は高いと思います。もう1万円安いと他の人にもお奨め出来るんですけどねえ。
・総評
とにかく便利,それも妥協の少ない,真に散歩に相応しいレンズだと思います。機能的にZfcにマッチするレンズだけに,クラシックなデザイン(やっぱ43-86だろうなあ)のSpecialEditionが出れば大喜びだったんですが,そうでなくてもこのレンズの質感とデザインは持つ喜びも与えてくれると思います。
画質は平均以上,広角側では高画質で,どんどん撮影したくなります。むしろ望遠側は緊急用と割り切っていた方が私は気楽でした。
ただ,広角でAFが使えるレンズってなかなか貴重で,35mm換算で28mm相当の単焦点レンズが純正で手に入らない以上,手軽さではこのレンズ以外に選択肢がありません。そう考えた時に,やっぱZマウントは高いな,という印象を持ってしまうのです。
・最後に
他に被るレンズではないですし,Zfcのカジュアルさと機動性を活かす良いレンズである事は間違いありません。ただ,このレンズではないといけないというシーンはちょっと想像が難しく,強いて言えば28mm相当のレンズが必要になったとき,くらいかなと思います。それが便利ズームの宿命なのですが,Fマウントでシグマの2万円ちょっとの17-50mmF2.8の画質が素晴らしかったことを考えると,もうちょっと心に響くレンズであって欲しかったと思います。
しかし,小さいこと,軽いことは正義です。Zfcとの組み合わせは,最新の画質をこんなに手軽に持ち出せることを示してくれました。被写体の警戒感も薄れていることが表情からもわかりますし,周囲に対する遠慮も少しはましになります。
実のところ,D850では便利ズームは使わず,ストイックの画質を追求する役割に特化し,普段使いはZfcでいこうと役割分担を考えていたので,このレンズを買ったわけですが,その目論見は一部達成出来たと思います。
一部というのは,やっぱりD850の画質にはトータルでかなわないなあというZfcの問題に加えて,このレンズの暗さと画質の凡庸さにあります。使いこなせば面白くなるかも知れませんが,もうちょっと常用して使い込んでみたいと思います。