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2017年10月の記事は以下のとおりです。

D850の画像をLightroomで眺めてみる

 昨日もD850の画像をLightroomから眺めていました。

 今回は高感度の特性とノイズについて注目してみました。D850は裏面照射型のCMOSセンサを採用し,高画素数と高感度を高い次元でバランスしたものではありますが,この高感度というのが案外くせ者で,画像処理エンジンで積極的にノイズを潰して高感度を謳うものも多く,そうしたものはJPEGでは有効でもRAWでは意味がありません。

 もっとも画像処理エンジンにとってはJPEGにすることなど仕事の一部に過ぎません。一番大事な仕事はCMOSセンサからのアナログ信号を取り込んで様々な加工を施し,それらしいものに整えて,ようやくRAWにするという仕事です。

 CMOSセンサから出てきた本当のデータなど,もう見るに堪えないものであるわけで,これをNEFファイルにするところまで考えても,膨大な画像処理が入っていることは,我々も普段あまり意識しません。

 ということで,感度を上げた写真を見てみました。D800ではISO3200が個人的な限界で,これはノイズが問題というよりも,コントラストや発色が問題となっていじりようがなくなるから,という理由からでした。

 同じような気持ちでD850をみてみると,コントラストや発色はISO12800までは大きく悪化しません。むしろノイズがISO3200くらいから増えてしまい,ISO12800ではかなり厳しいため,ISO6400を一応の限界にしないといけないなと思ったくらいです。

 ですから,ISO8000くらいの画像に対しても,輝度ノイズを強めに除去するだけで十分に使える画像が出てきます。すごいですね,これ4500万画素なんですよ。

 それ以上に私が驚いたのが,JPEGの綺麗さでした。JPEGにする時にノイズの除去などが行われますが,これがまた巧みで破綻がなく,私が見たところISO256000までは十分に扱えそうなくらいの画像でした。多少輪郭がデコボコしますし,ノイズの塗りつぶしに不自然なムラが出てきますが,そこは高画素機ですので縮小すれば気になりません。高画素機のメリットはこういう所にも出てくるんですね。

 正直に言うと,Lightroomで手間をかけて現像するよりも,JPEG撮って出しの方が綺麗に仕上がるんじゃないかと思いました。古いD2HはRAWをLightroomで処理すれば今でも使えるカメラになりますが,D850くらいになるともうそういう話は通用しないのかも知れません。

 いずれにせよ,ISO128000くらいまでは発色もコントラストも実用範囲,ノイズの除去で十分使える画像になります。さすが裏面照射です。

 それから,やはりハイライトで飛んでしまったと思われる情報がちゃんと残っているのもすごいです。

 先日のオーディオの修理の話で,XC-HM86がキズだらけになって帰ってきた話を書きました。実は,D850を購入したその日に,あれこれと部屋の中を試し撮りした際,偶然XC-HM86が写っていたのです。

 ただし,黒い被写体に合わせた露出のためシルバーのXC-HM86は完全なオーバーで,その上光が反射して真っ白に飛んだ状態で写っていました。

 これじゃどうにもならんなと思ってはみたものの,遊び半分で画面の隅にちょこっと写ったXC-HM86を等倍で拡大,そこから露出補正を-2.5ほどかけると,なんとまあ正面パネルのヘアラインが綺麗に浮かび上がってくるではありませんか。

 少なくとも,今回指摘した1cmの大きなキズもなければ,ボリュームツマミのキズも皆無です。9月初旬の画像で,修理に出したのが10月初旬ですからこの1ヶ月を指摘されれば弱いですが,この間ラックから出すこともせず,なにかをぶつけた記憶もないことを考えると,やっぱり私が付けた傷である可能性は低いなあと,思った次第です。

 あと,10月の満月をD850で撮影した画像もちょっと感動しました。満月って結構明るいので高感度云々はそれ程重要ではないのですが,それでもコントラストの大きな被写体になるので,月面の模様がきっちり出てくるというのは,なかなか大したものです。

 AF-S70-210/F2.8VRにテレコンで280mm相当,F8まで絞り込んで撮影したものは,手ぶれもきちんと補正されていますし,画面の真ん中に小さく移ったお月様も,高画素機で拡大すればその模様もしっかり確認出来ます。

 汚れた窓ガラスによってぼやっとしてしまった事は残念ではありますが,肉眼では見られない月の姿をとらえたこの写真を見て,D850はこんなことまで出来るんだなあと感心しました。

 一通り写真を印刷してみて思ったのは,まだまだD850を使いこなせていないという事です。特に色の傾向をまだつかめていない感じで,D800の頃には何の苦労もせずに出せていた深みのある緑や茶色が出ていないこともあり,特にホワイトバランスに気をつけないといけないと思いました。

 インタビュー記事でも出ていましたが,D850には自然光AUTOというホワイトバランスの設定があります。人工光と自然光は全然傾向が違うので思い切って分けたという話ですが,私が今回子供の撮影を行ったのは野外,それも晴天の午前中でしたから,もともと青みがかった色だったはずです。

 背景には常緑樹の濃い緑が頻繁に入るのですが,どうもこの緑の記憶色との間にずれが生じているんじゃないかと思います。これから屋外では,AUTOではなく自然光AUTOにして撮影しようと思います。

 こうしてみると,D850というのは実に高い次元で性能がバランスした,優れたオールラウンダーだと思います。

 4500万画素はトリミングを躊躇なく行える画素数ですし,センサは高感度でも処理の難しいコントラストが低下せず,ソフトでどうにかなるノイズが増えるくらいで済むのがうれしいですし,それがISO12800くらいまでは対応可能というのですから,明らかに撮影領域が拡大しています。

 それでいて最大9コマ/秒の連写に高速高精度なAFシステムが被写体に食いつきますし,D800に比べてほとんど気を遣うことがなくなった露出の正確さも地味に素晴らしい改善点です。ホワイトバランスも難しい条件でなければ,特に室内の人工光では,AUTOにしておくだけで大変に好ましい結果を出してくれます。

 XQDを使ったメモリシステムは高画素と高速をスポイルしない足腰を持っていますし,軽快なシャッター音に上品な振動は,撮影者をその気にさせます。

 つまり,撮影時にあれこれと考えないといけないことが,圧倒的に少ないのです。


 今もって品薄が続くD850ですが,40万円もするカメラがなぜそんなに馬鹿売れなのかという素朴な疑問は,このカメラを手に取って撮影すれば,おそらく大半の人が即座に理解出来るのではないでしょうか。

 

LightroomでD850のRAWを現像できた

 Lightroom6がようやくD850に対応しました。バージョンは6.13です。一応年末にもう一度くらいのマイナーアップデートがあるそうですが,今のところそれが最後になるという話です。

 まあ,D850が対応してくれさえすれば,しばらく使い続けられますので安心です。

 DNGコンバータは一足先にD850に対応しているので,NEFをDNGに変換して古いLightroomで処理する方法もあったのですが,それだとプリセットが対応しませんので,正式な対応まで現像するのを待っていました。

 果たして,D850のプリセットがちゃんと用意されていました。同じ画像を本体でJPEGに書き出したものとNEFを現像したものを比べてみたところ,完全に同じとは言えないまでも,一応それぞれのプリセットの方向性は同じであると分かりましたし,私はLightroomでこれまで通り,現像をすることにしました。

 4500万画素という事で,どんなに重たいものかと覚悟していましたがストレスはほとんど感じなく,D800のころと同じか,むしろ軽いくらいじゃないかと思ったほどです。

 SanDiskの外付けのドライブも素晴らしく,全く速度の低下を感じません。

 てなわけで,改めてRAWデータから現像を氏,等倍でD850の画像を見てみた印象です。

 第一印象ですが,正直に言うと,D800の時ほどの感動はありませんでした。もっというと,D800との違いが思った以上に少なくて,ちょっと拍子抜けしたというのが本音の所です。

 確かに発色はD800に比べてこってりと記憶色を軸に置くようになりましたし,ホワイトバランスもほとんど外しておらず,フォーカスもしっかり食いついているので歩留まりは圧倒的に上がっています。

 しかし,画像園ものを見てみても,D850にしてよかったなあと思うような写真が,案外少ないことに気が付きます。私のレベルではD800もD850も変わらんものなのかとちょっとがっかりしました。

 むしろ,D800では気にならなかったレンズの粗がD850では目に付くようになりました。特に色収差が目立ちます。AF-S 24-70/F2.8ですからね,最新のレンズではありませんが,それでも大三元ですしね,神レンズとはいわれないまでも,高性能で知られた標準ズームを使って,これだけひどい色ズレを見てしまうと,厳しいなあといわざるを得ません。

 高画素になると,より高い性能のレンズが必要になるというのは本当のことで,同じ土俵に上げてはいけないとは思いつつも,同じ35mmの画角を得るのに,安い18-35を使った場合も,24-70を使った場合も,何回かシャッターを切っただけで結局シグマの35mm/F1.4に戻ってきてしまいました。

 その高画質を,レンズの性能にがっかりすることで体感したわけですが,そうなってくるともはやレンズは資産などといってられないことに気が付きます。ボディが消耗品といわれて久しいデジタルカメラの時代にも,レンズだけは資産として残るものと考えていただけに,純正のレンズでさえこんな状況になっていることに,私は腕を組んで考え込んでしまいました。

 それにしてもD850はさすがです。構図の失敗はトリミングでどんどんカバー出来るし,露出の失敗は広いダイナミックレンジで救えます。白く飛んだところや黒く潰れたところから画像が浮かび上がってくるのをみると,ちょっとしか感動さえあります。

 救えないのは手ぶれやフォーカスのズレくらいで,それもVRと校正のAFで失敗が少なくなっている昨今,もう人間が撮影する時に注意しないといけない事など,なくなってしまったんじゃないかと思うほどです。

 画素数が少ない頃はトリミングなどできませんから,しっかり構図を決めて撮影することが求められました。D800くらいになると,構図に失敗した時にも救えるというくらいの認識になったのですが,いろいろ話を聞いていると,D850はもはやトリミング前提で,とにかくシャッターを切り,あとで構図を考えるというのが当たり前になってきているような感じです。

 画面のどこかに被写体が入ってさえいればそれでいいという状況は,もはやカメラマンは職人芸を持つ必要がなくなってきたといっていいかもしれません。高画素機は,シャッターチャンスと写真芸術の世界に,少なからず影響を与えてしまいそうです。


 さて,そんなこんなでサクサクと写真を選び,トリミングをし,ちょっとだけ露出を調整して印刷を行おうと思ったのですが,なにやらうまくいきません。

 OSアップデートしたせいなのか,リストアを行ったせいなのか,Lightroomをインストールし直したせいなのか,それとも他の原因かわかりませんが,CanonのツールであるPrint Studio Proが起動しません。再インストールで起動まではするようになりましたが,今度は環境の保存と呼び出しが動かなくなっています。

 試行錯誤をしましたが,なかなか解決しません。なにが問題って,PRO-100やPRO-100Sのドライバのダウンロード先に,Print Studio Proが登録されていないことです。仕方がないので,Googleで探して最新版を落としてきました。

 海外のCanonのサイトには登録されていますから,単なる抜けではないかと思うのですが,それにしてもOSがアップデートしたこの時期に,最新版をダウンロード出来ないというのはちょっと問題ですよね。

 

XC-HM86の修理~その2

 なかなか便利で使い勝手も良く,音質も満足しているパイオニアのXC-HM86ですが,CDのトレイが出てこなくなり,修理を依頼したところ,傷だらけになって戻ってきたという話を先日書きました。

 この話の顛末です。

 戻ってきたXC-HM86は,まず油や指紋でベタベタに汚れており,触る気が失せました。渋々拭き取って改めて見てみると,その前面パネルに1cmほどの大きなキズがある事に気が付きました。

 自分がつけたキズの可能性を考えましたが,こんなに目立つところに自分でキズを付けた記憶はないし,キズが付いていたという記憶もありません。家族もそういっています。

 輸送中のキズについても考えましたが,こういうことを避けるために,わざわざ全面を段ボールで覆って発送しましたから,それもちょっと考えにくいです。

 おかしいなと思ってあちこち注意をしてみると,あるわあるわ,小さなキズがあちこちにあります。

 前面パネルの1cmのキズを筆頭に,角をぶつけた箇所が2つ,ボリュームツマミに打ちキズ,,上面の操作ボタンにも打ちキズ,ディスプレイに縦方向の擦りキズ,背面にひっかき傷と,全部で20ヶ所ほどありました。

 それだけならいいんですが,さらによく見ると,ACコードのストッパー(ほら,ACコードの根元についている,抜けどめがあるでしょ,あれです)の一部が,被せた上ケースの内側に入り込んでいます。このことで背面パネルは内側に湾曲しています。

 うわ,これは安全上の不安もあるな・・・

 さらによく見ると,基板を交換したときのネジの締め方が強いようで,パネルが歪んでいました。これはひどい。

 ということで,パネルのキズで相当がっくりしていた私は,再修理をしてもらっても駄目だろうという気持ちになってきました。

 キズだけなら,再修理で構いません。むろん,どっちがつけたキズなのかで揉める可能性はありますが,購入してからまだ半年も経っていないものとは思えない傷の付きっぷりから,私ではないと認めてもらえると思います。

 しかし,ACコードの問題は,私が中をあけてみることが出来ないものである以上,ずっと不安を抱えて使い続けるのはかなりしんどいものがあります。

 ネジの締め方による歪みもそうですし,そもそも汚れた手でベトベトに人の持ち物を汚しておいて,そのまま返してくるような人が再修理をしたとしても,気持ちよく,不安なく使い続けることはもはや不可能だと,一晩考えて思ったのです。

 これは,とりあえず新品への交換を希望しよう。ダメモトだけど,こちらの気持ちは伝えよう,その上で,一流の担当者に丁寧な修理をしてもらおう,とそんな風に思って先方と相談しました。

 終始紳士的な対応をして下さったその担当者は,とりあえず現物を見るまでなんとも言えないので,まずは送り返して欲しいといってきました。とても丁寧な方でしたが,私を疑うようなことも,出来るとも出来ないともいわず,とにかく見てから判断したいと安請け合いすることも逆に突っぱねることもしませんでした。

 これも,先方にすれば安易に約束をせずに冷静に判断するために必要な時間で,怒っているだろう相手の頭を冷やしてもらう時間を稼ぐ意味でも,悪い言い方をすれば時間稼ぎとも言える,とても賢い作戦だと思うのですが,同時に私にとってもメリットがあります。

 出来る事は出来る,出来ない事は出来ないときちんという姿勢は,とてもよいことです。

 すぐに返送の宅急便を手配してくれました。送ったのが先週の土曜日でしたが,水曜日に経過を確認するために電話をし,週末までにという返事をもらった後,木曜日の夕方にもらった電話の折り返しを,金曜日の朝にしました。

 すると,新しいものへの交換品が手に入ったので,今日送りますというお返事です。交渉した方とは別の人と話をしましたが,平謝りでした。

 私は私で,無理を言ってすまなかったとお礼を言って,翌日無事に新しいものを受け取ったのです。

 新品ですからなにも問題はありません。

 品薄の中ようやく届いた以前の機械には愛着があり,さみしい思いがするのは事実ですが,やっぱり気分の問題もありますし,こうして私の所に来たのもまた何かの縁です。大事に使っていこうと思います。

 こういう場合,双方の意見が食い違って揉めることが多く,私も覚悟はしていました。それは立場の違いからくるものですし,相手にも出来る事と出来ない事があるわけで,特に厳しいオーディオ業界なら当然のことと思います。

 考えてみると,修理を受けて返すだけでも何万円もかかっています。保証期間内だから私は1円も支払っていませんが,それが最終的に全部無駄になり,あげく新品に交換されたわけですから,手続き上は私の持ち物を買い取り,新しいものを提供したことになるわけで,それはもう大変な金額になるはずです。

 XC-HM86はそもそも高価なものではなく,実売も安いですから,これ1台で稼げる利益も少ないでしょう。今回の私の対応にかかったお金を取り戻すだけで,一体何台のXC-HM86を売らねばならないのかと考えると,私も悪いことをしたなあと思うのです。

 でも,ここで思うのは,そもそも保証期間内に壊れてしまったことがすべての始まりです。壊れた原因はICの不良でした。数円程度のICだと思いますが,これが半年で駄目になったことで,これだけ大きな話になったことを,よく考えて欲しいと思うのです。

 販売店は在庫が,メーカーは品質が業績の足を大きく引っ張ります。それだけ大きな負担になると言うことですが,裏を返すとこれらを少しでも改善すれば,目に見えて数字が良くなるという事です。

 私の事例を正当化するものではないですし,まして私が役に立ったなどというつもりは毛頭ないのですが,今回の件では結局誰も得をしていない,みんな不幸になるケースだったことを思い出して頂きたいなと,そんな風に思いました。

 そして最後に,これまでとても良い印象を持っていたオンキョーのサービスが,一度地に落ちてしまいましたが,今回の無理をきいて下さったことで,規則に縛られるのではなく,個々のケースでユーザーの気持ちを最大限汲もうとする姿勢は健在でした。ありがとうございました。

 

 

Lightroomのスタンドアロン版が終息に

 先日のAdobe Maxで,今後のLightroomに関する発表がありました。

 Lightroomは本格的なクライドベースに移行し,LightroomCCとなります。
また,これまでのLightroomCCは,Lightroom Classic CCと名称が変わります。サブスクリプションサービスであるCreative Cloudのメンバーになると,常に最新版を入手出来るわけです。

 そして,CCのメンバーにならずとも永久にライセンスを保有できる,スタンドアロン番のLightroomですが・・・とうとう現在のLightroom6で廃止されることになりました。Lightroom Classic CCに相当するスタンドアロンバージョンは,出ないと明言されました。

 数年前の話ですが,アドビの売り上げが落ちていて,根本的な対策を取らないとまずいという状態になりました。ソフトの商売というのはなかなか難しいものがあり,膨大な開発費をまかなうにはソフトを売るしかないわけですが,一度行き渡ってしまうとなかなか安定した売り上げにならず,新バージョンの提供で一気に稼ぎたくとも,多くの場合アップグレード価格が適用されてしまいます。

 見方を変えると,新規に購入した人が,過去に購入した人の代金を一部肩代わりしているような感じにもなるわけで,この極端な例が,無償のアップグレードだったりします。

 無償のアップグレードでは,まさに新規顧客が過去の顧客にかかった費用を負担しているようなもので,こうした不公平感はむしろソフト開発の側に強いように思います。

 Adobeも,ソフトが売れるほど次のバージョンで入ってくる収入が減るという構図になるわけで,私にいわせればそれも作戦のうちだろうと思う訳ですが,フリーのソフトやクラウドベースで十分な機能を果たす現状や,PCの衰退という将来性の問題から,サブスクリプションという安定した収入を確実に手にできる方法に舵を切ることは,無理もないと思います。

 ただ,使わなくても毎月必ず出費があるサブスクリプションには,ユーザー側の抵抗もあるにはあって,この抵抗感を越えて納得してもらえるだけのサービスかどうかが,問題です。

 果たしてアドビは,見事にサブスクリプションを根付かせることに成功しました。

 そうなると,スタンドアロンをやめる話は当然ですし,一方でよりサブスクリプションのユーザーにメリットを感じてもらうことは必要不可欠です。ですから,サーバー側で処理を行って,端末側は表示と操作だけにするという,新しいLightroomCCには,あらゆる端末とあらゆる環境で,文字通りどこででも同じ作業が遂行できるメリットこそが,次に進む道だと考えたのでしょう。

 とまあ,ここまでは分かったとしますが,サブスクリプションの最大の問題は,契約解除後にそのソフトを使う権利が失われることにあります。毎月1000円なら1年で12000円ですが,12000円で購入したソフトは10年後も使用する権利を持っています。この差は大きいと私は思っています。

 もっとも,10年後に同じソフトを使いたいかといえばそんなことはほとんどないのも経験上知っていますし,常に最新のソフトを使い続けるための投資まで考えると,一概に損だとは言い切れません。

 しかし,私が懸念するのは,そのソフトの使用と不使用を,使う側である我々が決めるのではなく,メーカーが決めてしまえることにあります。ソフトのメーカーが,やっぱりやめたといえばそこでもう使えなくなります。

 お前が気に入らないといわれて退会させられれば,使いたくても使えなくなりますし,もっとありうる可能性として,メーカーが潰れてしまったり,買収されて業務内容が変わってしまった場合は,もうどうすることも出来ません。

 それを見越しておけばいいのかも知れませんが,それはつまり,そのソフトへの依存度を下げるという事に繋がるわけで,乱暴な言い方をすれば信用しないという事と同義になってしまいます。世の中,そういう厚い信頼をもって使いたい人だったいると思うのですよ。

 アドビは大きな会社ですので,それなりのゆとりを我々に与えてくれてはいます。Lightroomのスタンドアロンは廃止されますが,D850という特に要望の高いカメラへの対応は,Lightroom6.13というバージョンを10月26日にリリースすると発表しています。

 そして,Lightroomのスタンドアロンは,これが最後のバージョンになります。

 さて,私としては,とりあえずD850がLightroomのスタンドアロンで使えて良かったと,ほっとしています。Lightroom7が出たら買おうかなあと思っていたので,それがないのは残念ではありますが,正直なところLightroom6でも十分自分のイメージの沿った写真を作る事が出来るので,アップグレードがなくても今は構わないです。

 

 だから,バージョンアップするかどうかに悩むことも今後はなくなるし,常に最新版を使っているという割り切りに似た安心感も手に入るので,短期的にはこれでよかったとも思います。

 

 ただ,今後新しいカメラを買ったりした場合には対応しなくなってしまうので,CCへの以降を考えるか,そのカメラを買うのをやめるかという選択になるでしょう。

 あまり話題にならない小さな事件ではありますが,私にとってはカメラ趣味の新しい時代の到来と,後に思い出すことになるかも知れません。

 

XC-HM86の修理~その1

 この春に購入したパイオニアのネットワークオーディオ,XC-HM86ですが,故障したので修理に出しました。

 9月中頃の話です。嫁さんがCDを聴こうとトレイを開けるボタンを押したのに,うんともすんとも言わないと言い出しました。

 あれ,トレイが開かないような条件ってそんなに複雑だったっけな?

 おおむね,ベルトが切れたか,ギアが引っかかってしまったか,まあそんなところでしょう。

 しかし,本当にうんともすんとも言いません。ベルトが切れるなりギアが引っかかったりしたなら,モーターの唸る音や振動が出ているはずなのに,全く動いている気配がないのです。

 トレイが開かない条件も調べて見ましたが,そんなものはなさそうです。

 保証期間が過ぎていれば自分で調べて見るのですが,これはまだ半年しか使っていない,保証期間内のものです。自分でいじくって壊してしまうのもバカバカしいので,サービスセンターに電話してみました。

 いろいろやりとりがあったのですが,パイオニアのオーディオ製品は持ち込み修理が基本なので,販売店もしくはサービスセンターへの持ち込みをして欲しいということです。遠方や時間がないなどの事情で配送を使うことも出来ますが,その場合往復の送料は保証期間内でも,ユーザーが負担しなければなりません。それも3000円近い負担だったと思います。

 いやまあ,これは20年前なら当たり前なんですけど,外資系のメーカーはもちろんだし,ニコンなども保証期間内は無償だったりした記憶があるので,今どきのサービスは物流込みで考えるものだと,そんな風に暗黙で思っていたのです。

 そういえば,ヤマト運輸が新しい商材として,メーカーのサービスの集配を代行するサービスを展開していました。ゆくゆくはサービスのものも請け負うというものでした。

 これは,ユーザーにしかメリットがないもののように思いますが,そうでもありません。メーカーに取っては,全国にサービスセンターを配置して維持する必要がなくなります。修理のための部品や道具,資料はもちろん,人もサービスセンターの分だけ必要になるので,とても重たいです。

 しかし,配送が使えればサービスセンターは1箇所でも,全国のユーザーに同じレベルのサービスが提供出来ます。

 もちろん販売店経由で送ってもらえばサービスセンターは1つでも良いのですが,販売店経由だと時間もかかるし,販売店の仕事も増えますし保管場所も必要になりますから,あまり喜ばれません。無論,販売店もただでやっているわけではないので,当然手数料を支払うわけですけど,結局メーカーも販売店も,ついでにいうと時間もかかるし,販売店が近くになかったりすると,ユーザーにとってもうれしくない方法です。

 ここに商機があると思ったヤマト運輸はすごいですよね。感心します。

 こうすると,販売店は売ることに専念出来るし,ユーザーは全国どこでも家にいながらサービスを受けられるし,メーカーはサービス拠点を減らせる上,投資を集中して1箇所のサービスセンターを強力なものに出来るしで,みんなハッピーになります。

 だから,パイオニアくらいの会社なら,当然やってると思っていた訳です。しかしそうではなかったと言う事実をしり,なんだかさみしくなりました。

 そんなことをいっていても仕方がないので,いよいよ修理をお願いし,引き取りの手配までお願いしようとしたとき,電話の向こうの担当者が,ついぽろっとこんなことを言いました。

 「10月1日から,サービスが新しい会社に移管されるのですよ。」

 そう,パイオニアの音響機器部門は,オンキョーに譲渡されました。しかしサービスの統合はまだ行われていなかったのです。そしていよいよ,今年の10月から統合されるという話だったのです。

 「うーんと,それはつまり,修理の条件や仕組みは,オンキョーさんに準じたものになるということですか?」

 と,全然つまりになっていないような質問を,私はしれっとしてみたんですが,答えは「そういうことになります」でした。

 むむむ,実はオンキョーはサービスについては進んでいて。メールと配送でのやりとりがメインで,保証期間内は往復の送料もかからないのです。

 ここで私は少し考えてから,「そういうことなら,ややこしいので,修理を10月1日以降にします。」と話して,その場での手配を取りやめました。

 そして10月初旬。時間が出来たあるとき,パイオニア製品のサービスのホームページのリンクを探し,サービスの依頼をしました。するとオンキョーのサービスに飛んでいきました。メールで依頼できるようです。

 当然のように依頼をすると,すぐに「これはパイオニア製品なのでこのメールでは受けられない,このURLに書かれているところに電話しろ」と返事が来ました。

 URLはさっき私が見ていたホームページです。

 でたよ,たらい回し・・・

 悔しいので,電話をしました。

 事情を説明すると,先方は落ち着いて「お客様はメールでやりとりをされたいのですよね?」というので,いや,メールにこだわっていないが,保証期間内の配送料は無料だと書かれているので,それに準じて欲しいのだというと,それはすでにやっています,との返事。

 そういうことなら文句はありません。さっさと引き取り日時を決めました。そして最後に,

「ところで最初に伺うべきだったのですが,何が壊れたんですか?」

 というオチまで付いて,この電話は終了です。

 後日,指定した日に壊れたXC-HM86を引き渡して10日経過,トレイのモーターの駆動用ICが壊れていたそうで,保証期間内だから基板ごと交換しますと電話がありました。配送料も含め,私の負担は一切ありませんとのありがたいお話。

 9月に頼んだか,あるいは10月まで待ったかで,これだけの差が出てしまうことに,知る事と知らないことの差というのは大きいものがあるなあとつくづく思いました。

 細かい話をすると,実は9月中はフリーダイアルだったので,電話代はかかりませんでした。しかし,10月になるとナビダイアルになるので,1分で20円もかかります。都合15分ほど電話をしたので,電話代は300円ほどかかってしまいました。

 だから完全に無償になったわけではありませんが,配送によって全国どこでも同じサービスが提供されるには,全国どこでも電話が同じ料金でかけられねばなりません。

 ここをフリーダイアルにするのも手ですが,必ずしも保証期間内の話ではないわけで,電話をナビダイアルにするのは理にかなっています。

 戻ってきたXC-HM86は,当たり前のようにきちんと治っていることを期待していました。しかし・・・

 

 この顛末は,後日に。ちょっとだけ書いておくと,傷だらけ,指紋だらけ,ACコードの組み付けミス,LCDの傷と,一瞬自分のものとは思えないほど,変わり果てた姿で戻ってきました。さて・・・


 ・・・ここでちょっと思い出を。

 オンキョーのサービスについては,大昔,30年ほど前にもお世話になっています。

 中学生だった私は,父親がどこからか見つけてきた,古いシステムコンポを安価で買うことになりました。オンキョーのライセンスというシリーズで,下から2番目の4000シリーズというものでした。

 1970年代の製品で,もともと安価なものだったので,アンプもサンヨーの厚膜ハイブリッドICですし,カセットデッキもドルビーすらなく,チューナーも平凡なバリコン式でした。ターンテーブルもDCモーターによるベルトドライブで,ゴロとひらうよな安物でした。

 スピーカーも今思えば大したものではなく,音も特に印象に残っていないほどなのですが,それでも25cmと10cmの2ウェイはうちでは一番良いものだったので,アンプを自作しても使い続けていたのです。

 その自作アンプを調整中に,うっかりDCを出してしまい,片側のウーファーを焼き切ってしまったのです。

 さあ困った。それなりに気に入って使っていましたし,代わりののものに買い換えるほど経済的にゆとりはありません。それに,今ほど小型スピーカーの性能が良くなくて,良いものは大きいという常識がまかり取っていた時代でもありましたから,このくらいのスピーカーには選択肢が少なかったのです。

 そこで,ダメモトで修理を相談してみたのです。

 ビンテージでもなく,高価でもなく,廉価なシスコンのセット商品の,しかも古いものの片側のウーファーが断線したスピーカーを,修理してくれるはずはありません。

 当時高校生だった私が電話をしてみると,すでに交換用のスピーカーユニットは在庫がなく,通常の修理は出来ませんが,ちょっと検討してみるので,折り返しますというお話です。

 しばらくして,折り返しの電話を頂きました。しわがれた職人気質っぽい声の主は,私に信じられない事を言いました。

 ボイスコイルを巻き直すので,ユニットだけ外して近所のお店に持っていって下さい,と。

 ただし,できるだけ頑張りますけど,左右で音が若干変わってしまうことはご容赦下さい,と付け加えます。

 費用はいくらですか,と聞けば,5000円だといいます。

 ボイスコイルを巻き直す修理が可能なことも驚きですし,それをこんな安価に,しかも安物のスピーカーにほど越してくれることも,そしてユニットだけ送ってくれればいいという話も,なにもかも想像を超えた提案でした。

 私は即座に了解し,隣町の量販店にスピーカーを持ち込みました。店員さんの不思議そうな顔を今でも覚えています。

 そして2週間ほどして修理が完了。引き取って元の箱に組み込み直して音を出してみますが,全く以前と同じです。

 ここに,私の不注意で壊してしまったスピーカーは,職人の手で修理されたのでした。

 オンキョーがスピーカーに定評のあるメーカーである事は当時も知られていましたが,ちゃんとボイスコイルを巻き直す事が出来るメーカーである事も分かりましたし,それをそこらへんの高校生の依頼で行う体質に,私は深い感銘を受けました。

 こうしてオンキョーの社風に非常に良い印象を持った私は,就職先にオンキョーを選ぶのですが,私の時は就職難という事もあり,オンキョーから今年は採用しないと,丁寧なお返事を頂きました。

 結局違うメーカーで働く事になった私ですが,地元の企業だったということもあり,今に至るまでオンキョーにはとても良い印象を持っているのです。

 当時のシスコンもすべて廃棄し,取説の一部と,これも無理を言って送ってもらった当時のカタログくらいしか手元に残っていません。思い出深いそのスピーカーも,実家の建て替えに伴い,廃棄しました。

 その後,結局あまり縁がなくて,オンキョーの製品を買うことはなかったわけですが,こうしてまたサービスのお世話になったことに,私はなんだかうれしいものを感じました。

 今回も,サービスの担当をしている人から電話を頂きました。相変わらずしわがれた声の,職人のような声で,ぶっきらぼうですが親切な電話でした。昔々の事を,私はふと思い出しました。

 

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