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2010年05月の記事は以下のとおりです。

MZK-MF150の回収騒ぎ

 先日,テレビを無線LANに繋ぐために購入したプラネックスのMZK-MF150ですが,4月の末にリコールがかかっていました。知りませんでした。

 小型のモバイルルータとしても人気の機種ですが,実のところ単純なメディアコンバータとしてもとても安い製品であり,私は4月中頃にamazonで約3000円で買いました。

 もう1つ無線LANに繋ぎたいものがあったので2つ目を買おうと本日探してみると,amazonにはなぜか在庫がありません。おかしいなあ,終息品で処分価格が出てたのかなあと思ってさらに調べてみると,なんとまあ回収騒ぎになっているではありませんか。

 ユーザー登録もしてあるので,こういうのは連絡が欲しいところですが,偶然とはいえ回収しているというのですから,これはもう聞き捨てなりません。もう少し調べて見ると,あるユーザーが分解して,電源ラインに入っている電解コンデンサの極性が逆になっていることを発見し,メーカーに報告していたようです。

 電解コンデンサの逆接続ですので,最悪の場合電解コンデンサが破裂します。アルミ電解コンデンサで良かったですね,これがもしタンタルコンデンサだったら,発煙発火間違いなしでした。

 とはいえ,もしもアルミ電解コンデンサが破裂すると,パン,と言う派手な音と煙,そして得も言われぬ悪臭が襲いかかります。また,破壊に至らずとも逆接続された電解コンデンサは,電解コンデンサとしては正しく機能せず,所定の静電容量を持つ部品として動いてくれません。電源ラインに入っているということですから,電源のインピーダンスを下げる役割は期待できず,結果として電源の質が低下して,安定した動作をしなくなるでしょう。

 うちは24時間繋ぎっぱなしにしているので,発煙発火が怖いです。賃貸ですから,ボヤなど出されてしまってはたまったものではありません。社会的に抹殺されます。

 もう1つ買えなかったことのがっかり感に加えて,リコールの手続きが面倒という事でなんだかとても嫌な気分なのですが,とりあえずプラネックスのサイトからフォームを使って連絡です。保証書をスキャンしたPDFからシリアルナンバーを調べて送ると,10分ほどしてメールに返事が来ました。早い対応におどろきましたが,内容はやはりリコール対象であるとのこと。

 手順としては,対策済みのMZK-MF150の本体のみが送られて来るので,交換対象の本体を添付されている着払い伝票で送り返す,のだそうです。こちらとしては使用できない時間がゼロになるという,ありがたい対応です。

 ただ,気になるのは,電源ラインに入った部品の極性の問題だというのに,現在問題がなければ使い続けても結構だ,と言う点です。規定よりも短い時間で壊れてしまうような設計が行われており,しかも壊れるときに事故が起こる可能性がある今回の場合,特に電源というエネルギーの大きな部分での事故は被害も大きくなる傾向があるだけに,即刻使用を中止するというアナウンスが適当ではなかったかと思います。

 幸い,実際の事故が起こっているわけではないようですが,逆接続した電解コンデンサの劣化が進んでいるのは疑いようがありませんし,煙が出たり動かなくなってしまうという問題の可能性をゼロに出来ない以上は,やはり慎重になるべきかなと思う訳です。

 とりあえず週末に受け取ることが出来れば早く片付いていいのですが,どんなもんでしょうね。

 プラネックスはあまり良い評判を聞かないメーカーではあるのですが,どういうわけだか私はここで失敗したことがなく,安い上に結構信用していたりします。私としては,3000円程度で買えるメディアコンバータの供給元として,早くMZK-MF150の販売が再開されることを願っています。

 うーん,でも,今回の回収騒ぎで,この製品で稼いだ利益など吹っ飛んだと思われるので,このまま対策して販売を再開するくらいなら,さっさとディスコンにして後継品を5000円くらいで売り始めた方が得ですわね。ということは,もう3000円でメディアコンバータが買えるチャンスは当分ない,ということになりますか・・・どうするかなあ,もう1つ買っておけば良かったかなあ。

Torneを買った

  • 2010/05/25 15:01
  • カテゴリー:散財

 偶然ヨドバシ.comを見ていると,品薄ということで店頭で一度も見かけることのなかった,PS3のデジタルテレビチューナーであるTorneの在庫が確認できました。

ぼつぼつ生産も追いつき,行き渡るようになってきたんだろうなと思いつつ,その評判を自分で確かめたくてポチったところ,先日の土曜日に手に入れることが出来ました。

 おりもおり,6月にはH.264AVCによる長時間モードのサポートや,追いかけ再生が可能になるというアップデートもアナウンスされて,いよいよ専用のHDDレコーダに機能面でも追いつきそうです。これまで購入を見合わせていた人も,本気で欲しいと思うようになることでしょう。

 Torneの最大の売りは,そのGUIにあると言います。60fpsでグリグリ動く軽快な操作感には絶賛と言っていいほどの好意的意見があふれています。面白いのは,エンジニアやGUI設計者といった同業者からの好意的意見が目立ちます。

 PS3という強力なコンピュータを,テレビの録画ごときに使う,それも有り余る演算パワーをGUIに振り向けるなど,なんと贅沢なことかと年寄りになった私などは思うのですが,昨今商品の差別化は機能の数の大小よりはむしろ,ユーザー体験の質の高低であるというのが,家電業界の認識です。

 機能を増やして低コストで実装することに長けた日本のメーカーは,その申し子である携帯電話を「ガラパゴス」と揶揄され,システム的にはとりたてて目立つところのないiPhoneが絶賛され世界中で売れまくっている現実を突きつけられています。

 そんな中で,ゲームという世界はユーザー体験がすべてであり,ハードの進化も機能の追加も,ユーザー体験の向上にのみ許されています。いきおい,ゲームにかかわる方々はユーザー体験の良し悪しを見る目をごく普通に養っているし,試行錯誤の中からある程度の解を得ている数少ない業界だと言えるでしょう。

 とはいうものの,かつてPS2をベースにしたPSXというレコーダが,鳴り物入りで登場した割には大コケにコケて絶滅危惧種認定を受けたことは記憶に新しいところです。

 PSXも決して悪い製品ではなかったのですが,PS2をベースにしてはいても結局PS2とは別物になっていたことや,ゲーム機のオプションというリスクの少ない商売ではなく,本体を丸ごと作って売るという一大ビジネスにチャレンジしたこと,結局値段の安さばかりが注目され,それ以外の要素で評価を受けるチャンスを逃したことが残念です。

 PSXの暗い過去が我々の記憶から消えつつある中で,PS3をHDDレコーダにするという話はすでに欧州で実現しており,なにもTorneが突然沸いて出た話というわけではありませんが,国内ではなにかと著作権の縛りも多いこともあり,日本向けでこうしたオプションが安価に出てくるとは思っていませんでした。

 演算能力だけでもダメ,GUIの設計に長けたエンジニアだけでもダメ,その両方が揃って始めて,Torneは生まれることが出来たということですが,この2つが揃う世界というのはつまりゲームの世界です。極論するとTorneの本質はゲームである,ということになるかも知れません

 早速箱から取り出し,アンテナを繋ぎ,USBで本体と繋ぎます。諸悪の根源B-CASカードを差し込み,セットアップ完了です。

 無駄に大容量なBDで供給されるソフトをインストールすると,直後にアップデートがかかります。少々待ち時間がありましたが,起動してしまえば軽快そのもので,とにかく操作が引っかかったり,待たされたり,不愉快な想いをすることがありません。

 カラフルな画面は遊び心あふれてはいますが,好き嫌いの好みは分かれるでしょう。しかし見やすく,操作のしやすいEPG,チャネル切り替え時の待ち時間をタイトルを出す事で長く感じさせない工夫,いついかなる時でも決まった方法で呼び出せるメニュー,そして多くの人に録画予約されている番組の情報を共有出来るお遊び機能など,さすがゲームの専門家が作っただけあるなあと,そう感じました。

 PS3のコントローラでの操作も悪くないですが,驚いたのはBDリモコンでの操作が快適であることです。コントローラではゲーム機を触っている感覚になりますが,BDリモコンだと完全にHDDレコーダを触っている感覚です。そしてそのHDDレコーダは他の例を見ないほど,軽快で使っていて楽しいものになっているのです。

 残念ながら,うちのPS3は80GBしかHDDがない機種ですので,録画を中心にした積極的な利用は現在は考えていません。これがH.264AVCによる三倍モードと追いかけ再生が実現すると,かなり使い道が出てくると思います。

 つらつらとここから先に実現しそうな機能を考えてみたのですが・・・もう1つTorneを買ったらダブルチューナーになるとか,24時間全チャネルを録画し続けてDLNAでテレビに配信するホームサーバになるとか,BSもサポートされるとか,携帯電話への書き出しが許されるとか,USB接続でDVDに書き出せるとか,PSPに限って本当にロケフリとして動作するようになるとか,3D変換を行うようになるとか,東芝のCELLテレビに匹敵する超解像を可能にするとか,HDMIを通してCECによるテレビとの録画連携・・・なにせPS3ですから,いろんなことが出来そうです。

ARMが覇権を握る

 富士通(厳密には富士通から分離した子会社の富士通セミコンダクターですが面倒なので富士通)がこの4月に,ARMのプロセッサコアCortex-M3のライセンシーとなり,その第一弾のチップFM3シリーズを発表しました。

 最近多くある,国内大手半導体メーカーのARMへの宗門替えというとらえ方をするとそれまでなわけですが,実際のところ,東芝,旧NEC,旧ルネサス(日立と三菱),沖電気,シャープといった,マイクロコントローラを大量に作って売りまくっていた日本のメーカーのほとんどが,すっかりARMコアのお得意さんなっていることにはっとさせられます。

 こうしてみると,独自プロセッサコアにこだわっているのは,大手ではパナソニックくらいではないかと思いますが,少しこのあたりの状況を考察してみようと思います。

 1980年代,日本の産業は実に多くの分野で世界トップに君臨し,我が世の春を謳歌していました。この時に次の時代への仕込みを怠ったことが現在の凋落に繋がっているという指摘もなるほど道理ではあるわけですが,そんな最強無敵な時代においても,68000や8086といったパソコン向けのプロセッサでは結局覇権を取ることが出来ませんでした。

 日立や三菱はTRONチップと呼ばれたG-microシリーズを作り,NECは独自設計のV60やV70,その後継であるV80を作って,その技術力を見せつけはしましたが,いずれもメジャーになることは出来ずにおわりました。V60やV70に至っては,あまりに知られていないが故に,不正コピー対策として業務用のゲーム基板に採用されたという,なんとももの悲しい話さえあるくらいです。

 当時の論調では,半ば悔し紛れに「汎用のプロセッサでは後塵を拝すも,組み込み用途の4ビット,8ビットの独自設計のプロセッサでは数も売り上げも最強だ」と,その力を誇示していました。子供心にそんなものか,となにやらもやもやとしたものを感じて20年あまりが経ち,いよいよ大手メーカーから独自設計の火が消えたことが,私にはとても感慨深く思えるのです。

 つまり,特定分野限定の「独自アーキテクチャ世界制覇」でさえ,日本の半導体は手放してしまったのだなあということです。

 当時,半導体の入門書に,日本はメモリのような同じ回路をたくさん詰め込み,これを高品質で作る技術に長けている,一方アメリカはプロセッサのようなアルゴリズムが重要な独創的な製品に強みがある,と書かれていました。当時の日本もこういう自分達の弱点,欧米の強みを理解していたはずですが,とうとうその流れは止まることなく,最後の砦も陥落した,という言い方は,多少大げさでしょうか。

 日本はかつて,家電製品の設計拠点であり,生産拠点でもありました。製品の設計現場から上がってくる多種多彩な要求に愚直に応え,その結果コストも性能も最適化された無数の組み込みマイコンが生まれて,家電品の性能アップ,低価格化に貢献していました。

 よって生産数も膨大で,価格も下がりました。こうして単価が安く数を売らないと商売として成り立たない組み込みマイコンは,半導体専業メーカーが主力とするにはリスクが大きく,垂直統合型を強みとしていた当時の日本の家電メーカーが,系列の半導体を使う流れも加味されて,それぞれの独自マイコンが一定の地位を確立したわけです。

 独自アーキテクチャですから,一度入り込んでしまうと他のメーカーのマイクロコントローラに切り替えることはソフトウェア資産の継承や回路の流用の観点からとても大変なことで,自ずと次も,またその次も,同じメーカーのマイクロコントローラを使い続けることになります。

 面白いのは,こうして進んできた日本の組み込みマイコンの世界に起きている,ここ数年の異変です。それが,英ARMのプロセッサを採用するという流れです。

 ARMという会社は,もともと1980年代初頭に,イギリスのAcornというパソコンメーカーが,自分のパソコンのCPUにぴったりのものがないので作ってしまおうという無茶を起源としています。1990年代にノキアの携帯電話に採用されたことで爆発的に普及し,世界制覇の流れが加速しました。その最大の武器は,圧倒的な低消費電力と,設計情報を売って自分達では半導体を生産しないという,ビジネスモデルでした。

 やがて世界中のプロセッサメーカーが生産を始め,多くの製品に組み込まれていきました。日本の独自アーキテクチャによるマイクロコントローラは,相変わらず日本の製品には多く使われていましたが,すでに日本以外の国が多くの家電品を作る時代にあって,すでに少数派となっていました。

 NECも東芝も富士通も日立も,大型の汎用機を手がけたコンピュータ界の巨人であり,しかも黎明期から半導体に挑戦し続けたメーカーですから,プロセッサには相当のこだわりがあったはずです。事実,それぞれに独自の個性を持つ,優秀な組み込みマイコンがこれまでにたくさん作られてきました。

 それが,ここへきて,すべてARMからライセンスを受ける立場に変わったのです。

 と,ここまでがやや感情的なお話です。

 実際の所,Cortex-M3やCortex-M0は独自アーキテクチャであることがバカバカしくなるほど,よく考えられて作られている非常に優秀なプロセッサです。M3は割り込み応答も高速ですし,消費電力も低く,回路規模も小さいです。処理速度もコード効率も優秀であり,これまでの国産マイクロコントローラの売り文句がかすんで見えてしまうほどです。

 ですので,半導体メーカーとしても,無理に独自アーキテクチャにこだわる理由が純技術的な理由においても,見当たらなくなりつつあるという現実があります。

 ただ,見落としてはいけないことがあります。

 それは,開発環境です。これまでの独自アーキテクチャのプロセッサの場合,統合開発環境をはじめ,コンパイラやデバッガ,ICEはもちろん,ライブラリやサンプルコードのすべてを自前で用意しなければなりませんでした。

 これには膨大な時間とお金がかかりますし,出来上がったものは必ずしも優れたものになるとは限りません。ユーザーとしても,使いにくい統合開発環境やパフォーマンスの上がらないコンパイラに嫌気がさしても,他に選択肢はなかったのです。

 開発環境の専業メーカーが自分のプロセッサ用の製品を作ってくれればまだよいのですが,星の数ほどあるプロセッサすべてに対応するはずもなく,自ずと人気のあるプロセッサしか用意されません。

 その代わり,といってはずるいのですが,多くのメーカーは,自前で作ったツール類を,プロセッサを採用した大口ユーザーに対して,無償かそれに近い形で提供することが多く,ユーザーもそれを当たり前の事と考えていたところがあります。

 半導体メーカーにしてみると,プロセッサだけを作ってもどうにもならないので,開発ツール類はどうせ作らなければなりませんし,良し悪しは別にして開発ツール類が主力製品というわけではありませんから,これで儲ける必要もありません。それに,社内で作っているわけですから実費がかかっているわけではないので,それをツール類の売り上げで回収する必要もありません。その分,プロセッサがしっかり売れてくれれば,全部カバーできるという算段です。

 ところが,ARMを採用することで,ユーザーは,開発ツール類に専業メーカーが作るものを使う事になります。もはや半導体メーカーは自前で開発環境を整える必要から解放されるのです。よって,プロセッサ開発の費用と時間がぐっと抑えられることになるわけです。

 ユーザーも,複数の製品から選ぶことが可能ですし,専業メーカーですから専門的なサポートも期待できます。しかし一方で,それが製品として彼らの唯一の売り物である以上,絶対に無料にはなりません。

 ということは,ユーザーにとっては,それまで無料だった開発環境が有料になるのです。しかも,一般にARMの開発環境はARMにに対するライセンス料があるためか,他のプロセッサのものに比べて高価です。

 こんな風に見ていくと,国内の半導体メーカーが独自アーキテクチャをやめてARMに乗り換えて行く流れというのは,一種のリストラと見ることも可能です。つまり,これまで内部で開発環境を作っていた部署を,縮小もしくは廃止することが出来るというわけです。膨大な費用が節約できそうです。しかも大きな顔をして,他の会社から別途買って下さい,と言えるようになるのですから,悪い話ではありません。

 それに,餅は餅屋,という言葉の通り,専業メーカーの優秀なツールが使えるようになることは,非常に大きな武器になります。

 ただ,ユーザーは,これまでなかった負担を考慮しなくてはならなくなるという点だけ,忘れないようにしないといけないです。

 例えば,その半導体の単価が3000円もするものを使えるような,高価な製品の開発なら,トータルで100万円かかる開発環境に投資することは可能でしょう。あるいは,単価が100円でも,100万台の出荷が見込まれる製品の開発であれば,100万円の開発環境を用意することは可能でしょう。

 問題は,1万台以下の出荷台数で,単価が50円程度の安いマイコンを使う場合です。100万円の開発環境が必要となった場合,仮に10000台の出荷台数では1台あたり100円かかることになり,なんとプロセッサ自身の単価の2倍にもなってしまうのです。

 これなら,多少使いにくいものであっても開発環境が無償かそれに近い価格で利用出来る独自アーキテクチャのものを選んだ方が,それが数十円高い単価であっても,トータルで安く出来るということになります。

 忘れてはならないのは,こうした開発にかかる費用というのは,最終的には消費者が負担するのだということです。企業はかかったお金にいくらか上乗せして作った商品を売るのですから,間接的にとはいえ,原則的には全額消費者が負担しています。だから,エンドユーザーである我々にとっても,無関係な話ではありません。

 この,開発環境にかかるお金というのは100万円単位のなかなか大きな金額なのですが,初期費用として見えにくくなる上,測定器などと同じような固定資産として扱われることが多いため,案外見過ごされがちです。ですがこのあたりの事情に気付いている半導体メーカーもぼつぼつ出てきていて,ARMのコアを使っていても,自前でちょっとした開発環境を無償で提供するメーカーが現れたり,専業メーカーのツールを自社のプロセッサ専用の機能限定版として無償提供したりするところも出てきました。

 ARMというプロセッサは個人的にも好きなのですが,実際にこれを使ってなにかを作ると考えた時に,その開発環境をどう考えるべきか,という頭の痛い問題を解決できずにいました。自ずと,仕事であれば国産メーカーのものを,プライベートであればPICやAVRを使うということになってきたわけですが,制約があっても無償であったり,高機能だがとっても高価,という具合に,ARMにおいても様々な開発ツールを選べるようになって来つつあることは,本当の意味でARMがデファクトスタンダードになってきたのだなと感じます。

 ARMは,Cortex-M0という32ビットのRISCプロセッサが,すでに8ビットや16ビットの過去のプロセッサよりもダイサイズが小さくなる場合すらある,といっています。

 ちょっと大げさな話かも知れませんが,それでもわずか12kゲートという回路規模ののCortex-M0が,これまで使われてきた16ビットクラスのマイコンに比べて,処理能力についても価格競争力についても,十分な競争力を持ち合わせていることは事実です。

 これに匹敵するプロセッサをどうして日本のメーカーが開発できなかったのかと,残念な気持ちは確かにありますが,もはや国だの会社だのは小さい事なのかも知れません。最終的に,安くて良い製品が市場に投入され,価値あるものとして社会が良い方向に向かえば,それが一番大切なことです。

 余談ですが先の富士通のFM3,1981年に半導体部門が作り上げた富士通初のパソコンであるFM-8にひっかけているという話を,富士通の方が自らされていました。最近何かと目にする「オッサンホイホイ」である可能性もありますので,該当する方はお気をつけ下さい。

Die Young

 書かずにはいられないので少しだけ書くことにしました。

 ヘビーメタルを代表するヴォーカリスト,ロニー・ジェイムス・ディオ(Ronnie James Dio)さんが,現地時間の5月16日午前7時45分に亡くなりました。67歳でした。

 昨年11月には胃がんであることを公表していたわけですが,結局病魔には勝てなかったということでしょうか。

 昨日,Twitterで死亡説がだーっと流れ,これをマネージャーでもある奥さんが即座に否定,一度は沈静化した話が今日になって本当だったということになり,私もHeaven and Hellな気分です。

 67歳を若いというのも無理がありますが,彼の場合は衰えを知らず,小さな体から飛び出すハイトーンと声量は健在でした。

 そのヴォーカリストとしての能力はもちろんですが,中世をテーマにした世界観はその様式美でうるさいだけのヘビーメタルに一定の流れを作ったと感じます。

 過激な歌詞やステージ上のパフォーマンスに,なにやら暴力的,あるいは気味の悪さを感じることもあるわけですが,本人さんは至って普通の気のいいオッサンで,ファンを大切にし,メンバーを尊敬し,あれだけの大スターでありながら低い目線で常に生き続けた,人徳の人でもあります。

 特に,映画「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」でのインタビューは,およそヘビーメタル界の大御所という風格以上に,慈愛に満ちた一人の男として,彼の人となりをよく示していると思います。私は彼をこの映画のインタビューで2度好きになりました。

 私ごときがごちゃごちゃ書くのも憚られるのでこのくらいにしておきますが,ロッカーとしてだけではなく,虚勢を張らず,素直に優しく生きた人として,彼に憧れ,その死に哀悼の意を表すものです。R.I.P

両端が尖ったアイロンを買う

  • 2010/05/17 12:53
  • カテゴリー:散財

 アイロンがけって面倒臭いです。

 私は営業職でもなく,自分のシャツに多少のシワがあっても問題のない仕事ですが,自分でアイロンを綺麗にかけるのは難しく,一枚何百円かかけてクリーニングに出す人の気持ちもよく分かるというものです。

 思った以上に時間もかかり,夏場は汗だくになるアイロンがけですが,週に一度の事ですから,あまり改善をしようなどと考えてきませんでした。

 嫁さんも似たような考えの人で,彼女が持ち込んだアイロンは1992年製,スチームは茶色の汁が出てきてシャツを汚すので使用不可,アイロン台も先端部がぐにゃっと曲がり,かけにくいというより,もはやアイロン台として成立していません。

 そんなアイロンを買い換えるかどうかはその投資に見合うかどうかで悩むべきポイントだったわけですが,アイロンの裏面のコーディングが剥げてしまい,滑りにくくなっているところに,なにやら焦げのようなものが付いてしまうと言う事件が起こり,買い換えを決断することになりました。ちょうど友人達からお祝いをいくらか頂いていて,それを使って買わせて頂く事にしました。

 我々は自分の分は自分でアイロンをかけます。仮に1万円のアイロンを買ったとしても,一人あたり5000円ですから,ちょっとした贅沢は許される範囲でしょう。せっかくだから,いいものを買おうと言うことになり,パワーのティファールか,独創的な形のパナソニックか,候補を2つに絞りました。

 ティファールは重く大きく,大量のスチームが売りですが,そのパワー故コードレスでの運用は重視されていないようです。私はコード付きのアイロンの取り回しの悪さに閉口していましたので,そこは覚悟せねばなりません。

 一方のパナソニックですが,両方が尖っていて,後ろ向きにもかけることができるという目からウロコなアイロンが出たのが今年の初め。後ろ向きにかけられればどんなに便利かと思い続けてきた私の夢が叶ったと思いました。

 しかし,どうもスチームのパワーが不足気味らしく,軽いこともシワを伸ばす能力にマイナスの要因となっているような意見があります。

 ということで,なんとなくティファールにしようと決めて,家の近所の量販店に買う気満々で出かけました。

 実際に店頭で現物を見てみると,ティファールは相当大きいです。それに見るのも嫌なACケーブルがものすごく存在感を持っています。うーん,これは厳しい。

 一方のパナソニックですが,後ろ側もとがっているので,随分小ぶりに見えます。コードレスですし,手に持った感じではそんなに重いわけではありません。このくらいが取り回しという点でも望ましいように思います。私だけが使うのではなく,嫁さんも使うことを考えると,無闇に重いものを買うのもためらわれます。

 ということで,値段を見ると,最上位機種のNI-WL600が11800円と,アマゾンよりも安い値段ででています。もっと安い店もあるでしょうが,近所ですしこの値段で買うことにします。

 ところが在庫切れ。予約することにしたのですが,数日後に入荷連絡があり,早速この前の週末に使ってみる事にしました。

 結論から言うと,アイロンがけが苦痛でなくなります。シャツ1枚4分です。

(1)良いデザイン

 両側が尖っていて,前後どちらでもかけられるというのは,慣れればとても便利です。倍速とは言いませんが,後ろ方向に動かすと布を巻き込んで新しいシワを作ってしまうこれまでのアイロンとは違い,往復でアイロンがかかるというのはとても快適です。

 後ろ側が尖っていることで面積が減ってしまうことを気にしていましたが,むしろこのくらいの面積の方が無駄がなく,思うようにアイロンが動いてくれるので楽しいです。

(2)パワー

 スチームのパワーは少し弱いかも知れません。スチームだけできついシワを伸ばすことは難しく,霧吹きにドライで伸ばすのにはかないません。しかし,薄手のシャツなどは綺麗になるので,そこは使い分けということではないでしょうか。

(3)滑り心地

 テフロンコーティングが出てきたときにも驚きましたが,NI-WL600はさらに良く滑るコーティングがなされているそうです。おかげで横方向の力がいらず,快適です。両端が尖った形とあいまって,手首だけでさっさとアイロンがけが出来ます。

(4)霧吹き内蔵

 これが感心したのですが,霧吹きが内蔵されていて,スチーム用の水を先端から噴霧する機能があります。スチームアイロンというのは,とかくスチームが壊れるので,結局最後はドライの自動アイロンとして長く使われる運命にあります。その時,霧吹きとアイロンを交互に持ち替えて作業をするのは効率も悪く,大変面倒でした。スチームアイロンでなくてもいいから,霧吹き内蔵の安いアイロンがあったら,それを選んでいたかも知れないと思うくらい,素晴らしいアイデアです。

(5)コードレス

 コードレスアイロンを使うのは初めてですので比較は出来ませんが,私の使い方で熱量不足を感じたことはありません。

(6)立ち上がりの遅さ

 1つ難点を挙げれば,電源投入から使えるようになるまでの立上り時間がやや遅いことでしょうか。もうそろそろかな,と思って目をやるとまだLEDが点滅しているということが何度か続いたのですが,正確な時間は計っていないとはいえ,これまでのアイロン以上に「待つ」という印象が強くありました。

(7)まとめ

 両方が尖っている,コードレス,よく滑る,という3つの要素が絶妙にバランスしていると思いました。どれか1つバランスを欠いても,使いにくいものになったでしょう。手首を動かすだけで細かいところもちゃんとかかり,しかも無駄な力はかかりません。動きを制約する要素を出来るだけ排除したことで,アイロンがけの下手な人ほどその恩恵にあずかることができると思います。

 そう,アイロンがけが上手な人は,多少の制約があったところで,スピーディに綺麗に仕上げることが出来るわけで,自分は下手だ,と思う謙虚な人に,ぜひおすすめしたいと思います。アイロンがけが嫌いにならなくなりますよ。

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