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2017年05月の記事は以下のとおりです。

ニッケル水素電池,その後

  • 2017/05/31 09:40
  • カテゴリー:make:


 先日の秋月電子八潮店の激安ニッケル水素電池ですが,進展がありました。

・充電可能だった11本について

 最初から充電が可能だった11本については,その後の放電と充電の繰り返しで,1Aで1時間ほど引ける程度の復活をしてくれました。仕様上は2500mAhの電池が,1000mAh位だという事ですから半分以下の容量しかないのですが,まあ安いですし,それはあきらめましょう。


・カツ入れで充電出来るようになった電池

 残った9本の電圧を測定すると,完全にゼロ。意味があるかないかは別にして,直流抵抗を測定すればこれも完全にゼロになるという,もうどうしようもない状態でした。

 そこで,ダメモトで俗に「カツ入れ」というやつをやってみました。

 5Aくらいの電流を一気に流し込むと復活することがあるんだそうですが,うちにはそんな電源はありませんし,仮に出来ても5Aという大電流ですから,爆発がこわいです。

 とりあえず,手持ちの電源器の限界である3A(2.7A)で試してみます。最初は0,2Vとか0.3Vで電流がリミットに引っかかるくらいだったのですが,徐々に電圧があがり,1.5Vで1Aくらいになった電池も出てきました。

 電圧を測定すると,1.2Vくらい出ています。こうなってくると充電器で充電をスタートできるはずなので,早速充電開始です。

 すると,10分で充電が終わるものもあれば,3時間ほどかかるものも出てきました。長時間の充電がなされたものはさすがに発熱が大きかったのですが,これも放電特性を調べると40分くらいで放電してしまう程度に,充電が出来ていました。

 何度か充電と放電を繰り返し,とりあえずまともに使えそうな感じになった電池の本数が,6本です。このうち1本はあやしく,すぐに放電しきってしまうのですが,もう少し充放電をくりかえしてみようと思います。


・いよいよだめだった電池

 さて,カツ入れもダメだった電池が3本残りました。このうち1本は,カツ入れをすると電圧も上昇し,もしかすると充電可能かと思わせるのですが,電源を外すと急激に電圧が下がり,数秒でゼロになってしまいます。

 内部ショートか,プラスとマイナスの電極の隙間に電解質の結晶かサビが付いているのかもしれません。

 後の2本は全然ダメで,カツ入れもなんのその,全然電圧が上がってきません。これも内部ショートかも知れないです。

 それこそ,もっと大きな電流をバチンと流せば復活するかも知れませんが,逆にボカンと爆発するかも知れず,そうなると怖いし面倒なので,もうこの3本はあきらめます。


 すでに,11本の充電出来た電池と,6本の無理に充電した電池の管理だけで手一杯で,どの電池がどのくらい放電したかとか,どのくらい充電時間を確保出来たかなど,もうわからなくなってきています。

 きっと,厳密なデータを取るとがっかりしますし,適当な所でもう実戦配備して,駄目になったらさっさと捨てることにしようかと,そんな風に思っています。

 思えば,初めて手に入れたニッカド電池も,9本組みのジャンクでした。この時も9本もある,こんなにたくさんどうしよう,ムフフ,などと皮算用していたのですが,結局どれも使い物にならず,ニッカド電池ってよく分からないという印象を植え付けたにとどまりました。

 ドリルや掃除機に内蔵されたニッカド電池についてもその印象はあまり変わらず,エネループを使うようになってから,ようやくこの手の二次電池が生活の中に違和感なく入ってきたという感じがしました。

 ニッケル水素もそうなのですが,なかなか初期投資や充電の手間をペイするほど,繰り返して使う事って難しいものです。素直に安いアルカリ電池を使った方が安く付くし面倒な事を考えなくていいし,それがアルカリ電池がまだまだ電池の主役にいる理由になっていると思います。

 私の場合,高価なアルカリ電池はもったいない用途が多く,かといって安いアルカリ電池は簡単に液漏れがおこってしまうので,使えません。

 そこでニッケル水素なわけですが,さすがに危険性のある電池だけに,液漏れについてはしっかりと対策がされ,普通に放電で使っている限り,液漏れで困るという事はありませんでした。

 ですので,ニッケル水素を使う理由として,大電流が引けるということ以外に,小さい電流での液漏れが少ないことをあげてもよいのではないかと思います。

 しかし,仮に17本全部の電池が実用的に使えるようになったとしても,そんなにたくさんのニッケル水素電池を,どこにどうやって使おうかと,ちょっと考え込んでしまいます。

 容量は半分以下で1000mAh程度,自己放電も大きく,劣化の個体差が予想され,混在して使って大丈夫かどうかも怪しいこの17本の電池。もうなんだか面倒になってきました。

秋月電子の八潮店に行ってきました

  • 2017/05/29 14:45
  • カテゴリー:make:

 先日,友人に誘われて,秋月電子の八潮店に行ってきました。

 関東では東京と神奈川しか行ったことがない大阪生まれの私にとって,つくばエキスプレスは銀河鉄道999ですし,八潮なる場所はアンドロメダ終着駅のようなものでした。

 ですが,そこは機械の体ならぬ電子部品の宝島と伝え聞きます。そう,秋葉原の店頭でも,通販でも手に入れる事の出来ない,八潮店の店頭にしかない掘り出し物があるのです。

 しかし,他に八潮に用事もなく,わざわざ通販でも十分ありがたい秋月電子に,片道500円の電車賃と時間と労力をかけるというのも気が進まず,ついぞ出向く機会に恵まれませんでした。

 そんな話を友人にしたところ,んじゃいくかい,という話になったわけですが,彼も同じ気持ちだったらしく,私にいつ声をかけようかと考えあぐねていたところでした。なんというか,まるでラブコメですわね。

 それはともかく,10時半過ぎにつくばエクスプレスの秋葉原駅を出発,八潮には約20分後に到着しました。当日は夏日となり,雲一つない快晴でしたが,八潮は太陽を遮るものがなく,ジリジリと照りつける太陽に,少々困惑して歩いていました。

 友人も私も方向音痴で,結局たどり着けないという事態も覚悟したのですが,幸い道順がわかりやすく,また見通しもよかったので,迷うことはありませんでした。

 なにやら既視感があるなあとおもっていたら,私の実家の周辺の雰囲気によく似ています。郊外の地方都市なんてのは,どこでもこんなもんなんでしょう。人口も似たような数ですし。

 遠くから見えたお店がどんどん近づいていきます。写真でしか見たことがなかったお店に到着すると,おっさん二人のテンションは最高潮です。聖地巡礼というのはこういう感激があるものです。

 そこからは,あまり覚えていないくらい,高揚した気分で買い物を楽しみました。気が付くと1時間半ほどお店の中をウロウロしたのですが,全然長く感じませんでしたし,疲れたという感じもなかったです。まさにワンダーランド。

 すべてではありませんが,買ったものを書いてみます。


・ニッケル水素電池

 単三2本を組にしたニッケル水素の電池パックが1つ50円でした。容量は2500mAと高容量です。組電池として使うもよし,ばらして使うもよし,1本あたり25円ですので,悔しくありません。

 欲張って10個も買ってきました。全部ばらして使うつもりで,20本もどうしようかなムフフと思っていたところ,いざばらして充電すると,全く充電出来ないものが多数出てきました。

 そう,電池の劣化の可能性をうっかり考えていなかったのです。

 この手のジャンク電池で安いものは,概ね死んでいると思っているべきなのに,舞い上がってすっかり忘れていました。バカですねぇ。

 結局,すべてばらして作った20本のうち,充電可能になったものはわずか11本でした。それでもまあ1本50円くらいですので悔しくはないのですが,これでどれだけの寿命があるのか,そもそも自己放電がどのくらいあるのものなのか,さっぱりわかりません。

 使い方が限られるでしょうが,リモコンくらいなら使い物になりますかね。


・温度計

 入り口の脇に置いてあったのですが,1つ100円で電子温度計が売っていました。3つ買ってきましたが,動くのかどうか,まだ試せていません。

 電池の電極が腐食していたり,電池の蓋がなかったりするから100円なんだそうです。電池はAG9という電池らしく,おそらくLR1130のことでしょう。

 家にLR1130がたくさんあると思っていたのですが全くなく,せっかく秋月にいったんだから買ってくれば良かったと後悔しました。

 で,手元にあった電池を入れて見たのですが,どういう訳だか1つは壊れていて,値がパラパラとでたらめな数字を表示します。

 分解すると,C2というコンデンサが割れていました。

 他のものに電池をいれ,まともな数字が出るものを分解してC2の値を計ると,2200pFでした。同じ値のものに故障したものを交換しますが,やっぱり直りません。

 これはもうあきらめようと,正常に動いていたものを元に戻しますが,組み立て終わって電池を入れると,動きません。おかしな値がパラパラでます。同じような壊れ方をしてしまいました。

 あわててもう1つだけ残ったものに電池を入れて見たら,これはそれらしい数字が出てきます。

 3個のうちちゃんと動くのは1個だけだったという,なんとも歩留まりの悪い結果になり,やっぱりこういうのはゴミだと思って買うべきだなあとつくづく思った次第です。


・ガラエポの基板

 A5サイズのスルーホール万能基板が10枚で2000円でした。これは安い。仕様変更かなにかの処分品なんですが,10枚も多いなと思っていると,友人が「山分けしませんか」とありがたい申し出をくれました。

 これで5枚を1000円で買うことが出来ます。電子部品の買い物などという,極めて個人的な作業においても,友人と一緒に来ることのメリットは,こうした山分けが出来る事があると思います。

 厚みもあり,いい基板でした。


・超硬ドリルとルータービット

 秋月と言えば,超硬ドリル。かつて10本300円で売られていた超定番品で,アマチュアの基板作りには欠かせないものでした。1mmのドリルは高価な上に折れやすく,作業中に折れてしまい,作業が止まってしまうことの悔しさといったらありません。

 そこへ秋月のドリルです。チャックがくわえる部分は3.15mmでブレも出ず,切れ味も良く,万が一折れても安いので気にしない,という夢のような存在だったのですが,たしか2000年頃までに姿を消してしまいました。そういえば,日本の製造拠点がどんどん海外に出て行った時期でした。

 私はその後も,10本で1500円ほどで似たようなドリルを買ってしのいでいたのですが,ありがたいことに八潮店で復活していました。値段は高くなっていましたが,それでも10本で1000円です。数がないから通販には出来ないんでしょう。

 残念な事に1.0mmな売り切れていたので0.95mmを買ってきました。それと,いろいろなサイズが入って10本組みになったものも1200円で売られていたので,これも買ってきました。1.5mmとか2.15mmとか,便利なんですよ。

 これらの超硬ドリルは再研磨品です。かつての300円のドリルは再研磨品ではなかったように思います。

 もう1つ,ルータービットが10本400円で出ていました。これも超硬タイプで,1.0mmでもこの値段ですから安いと思って買いました。でも,ドリルじゃありませんし,先端の形状から再研磨できないので,400円は妥当な金額かも知れません。

 
・リレー

 電子工作ではほとんど使わなくなった部品の1つに,リレーがあります。昔はなにかというとリレーを使ったものですが,最近は半導体がほとんどで,リレーを使うことは本当になくなりました。

 欲しい時には欲しい部品であることに変わりはないのですが,以前ほど入手も簡単ではなくなってきましたし,高価であることは変わりません。ちょっとした用途で使えるようにストックを持っておこうとも思いますが,やっぱり値段がネックです。

 八潮店の店頭限定で,標準的な大きさのものが40円,小型のものが50円で売られていたので,5個ほど買っておきました。まだきちんと確認をしていませんが,こういうのは欲しい時には急にいるものだったりするので一安心です。


・JF1033B

 モトローラの高周波用JFETで,パッケージこそTO-92ですが,リードは金メッキで,背面にランクを示したカラーコードが手描きされているという,なにやらビンテージ色が濃いものです。

 4個入って200円だったので買ってきたのですが,高周波用のJFETのようです。1984年のモトローラのデータブックを見ていると,今でも使われるベストセラーJ310の次のページに書かれています。

 J310はUHF用とありますが,残念ながらJF1033Bは高周波用と書かれているだけで,NFの周波数は100MHzです。これはちょっと厳しいですね。そのNFも2.5dBですので,無理にこれを使わないといけないケースは少ないように思います。

 もう少し詳細を見ていないとなんとも言えませんが,修理や保守に使えればと思って買いましたが,他でも代替可能で,しかも性能アップになっちゃいそうな,中途半端なFETという印象です。


・トグルスイッチ

 サトーパーツの3Pトグルスイッチで,レバーが短いものですが,これが1つ80円。確かに安いのですが,別に大安売りというわけではありませんし,中国製で良ければこのくらいの値段で買えたりします。

 ただ,そこはサトーパーツのスイッチだという事で,2使っておきました。

 もう1つ,6Pのトグルスイッチなんですが,基板取り付け型で,パネル用のネジが付属していません。そのかわり1つ50円と大特価でした。


・ミゼットヒューズのホルダー

 これもサトーパーツのものですが,私がよく使うミゼットヒューズのホルダーです。確か1つ50円じゃなかったかなあ。

 お店にいたときはうろ覚えで,ミゼットヒューズのホルダーがディスコンになったことを思い出しました。一部の商品だけかも知れませんが,もし本当にディスコンになていたら悔しいので,6個ほど買っておきました。大きなヒューズは面倒だし,かといって付けないわけにはいきませんから,うちはミゼットヒューズで統一しています。

 で,後日調べて見ると,別にディスコンになったわけではないようです。ただ,ラインナップがかなり整理されてしまったようなので,入手はちょっと難しくなるかも知れません。そういう点で言えば,買っておいて正解です。


・多回転ボリュームとバーニアダイアルのセット

 5kΩのもので,ボリュームはバーンズのもの,ツマミはドイツ製のものでした。少々古いもののようでしたが,セットで1000円です。これ,今買うと1500円するので,確かに安いと言えば安いです。

 こういう精度をメカに任せるような仕組みって,今どきではないなと思うのですが,個人的には好きですし,楽だったりするので,安いときに買っておくのは特だろうと思って買いました。それでも1000円ですからね,本当に使うのかこれ,という感じです。


・多回転半固定抵抗

 もはや八潮店名物となった,多回転タイプの半固定抵抗です。いろいろな抵抗値が混ざっているので,どれでも1個20円と破格値です。

 多回転型の半固定抵抗って,一度使うと調整が楽で,従来の半固定抵抗に戻れなくなってしまいます。温度特性もよく,経年変化もある程度考慮されているので,値段次第ではどんどん使いたいものです。

 20円ですから,普通の半固定抵抗よりも安いくらいですが,もし本当に性能が出ていたらお得です。逆に水がかかったとか,変なガスにまみれたとか,そういう話になっていると20円でも価値はなくなります。

 まあ,細かい事を気にしていたらダメですね,私も運試しで,ひとつかみ買ってきました。もっと値が偏るかと思いましたが,案外ばらけるもので,こんな事ならもうひとつかみ買ってくれば良かったです。


 とまあ,ざっと思い出すものを書いてみたら,こんな感じです。2SA1015とか2SA970とか,通販でも買える物はわざわざ書いていませんし,結構楽しみにしていた「お楽しみ袋」も在庫はあったのですが,どうも中身が今ひとつで,結局買わずに帰りました。

 秋月くらいのお店になると,使い物にならない物を高い値段で売るというような阿漕なことはしないので,まともなものは高い(といっても普通という意味ですが),層でないものは安いと,とても公平で正直です。

 言い方を変えると,そんなにお買い得なものはないよ,ということです。先程のニッケル水素電池パックでも,10個買ってきて,もしもばらした1本だけしか生きた電池が出てこなかったら,1本500円になったわけで,これだと大損です。安いには安いなりの理由があり,秋月はそこは儲けもしないけど損もしない,というまっとうな商売をしているということだと思います。

 とにかく,通販をしていない,店頭のみの特価品というのは本当に訳ありで,しかも激安のものも多くあります。こういうのは意味が分かる人しか使えないですし,通販で売ってしまうとクレームだらけになるんだろうと思います。

 つまり,これって在りし日のジャンク屋さんの姿そのものなのですね。それで,店頭に1時間半もいて,とても楽しい時間を過ごせたのだろうと思います。


KEFのQ350を買いました

  • 2017/05/16 15:28
  • カテゴリー:散財

 リビングのオーディオをデノンのDRA-N5からパイオニアのXC-HM86にしてから,音を出すのが楽しく,音楽との接し方も変わって来たことを昨日書きました。

 アンプ1つでこれだけ変わるというのも驚きですし,CM1というスピーカーがアンプによって良くも悪くなることを思い知った気がしますが,そうはいってもやっぱりニアフィールドに適したモニターであるCM1でリビングは少々しんどいなと思っていました。

 これはCM1がダメだという話とはむしろ真逆で,CM1がとても気に入って大好きなので,そろそろ私に返して欲しい,と言う意味です。2mくらいの間隔で目に前に置いたCM1から出てくる音を聞くと,ふっと目の前の光景が消えてなくなるような感覚を覚えます。CM1はこうでなくちゃ。

 そこで適材適所,CM1は返してもらい,代わりにリビング用にいいものはないかな,と探していたわけです。

 するとですね,連休明けの各ニュースサイトに,KEFの新しいスピーカーが出ていました。なになに?「価格破壊」ですか?

 日本のメーカーでも最近価格破壊などという話はしないものですが,英国の,それも定評あるスピーカーのメーカーが価格破壊なんていうのは,ちょっと物騒ではあります。

 見ていくと,第8世代のQシリーズという事です。以前から低価格で本気のオーディオと言うよりも,リビングのホームシアター向けという感じのシリーズだったように記憶しているのですが,とりあえず同軸2ウェイという最大の特徴をどう考えるかです。

 タンノイもそうですが,イギリスってのはなんで同軸2ウェイが好きなんでしょうね・・・

 個人的には,音像が周波数によって動いてしまうことがとても気になり,CM1でそこがきちんと管理されていることの良さを知ったこともあってか,原理的に点音源となり,周波数によって音源の位置が異なることがない同軸2ウェイにはとても興味がありました。

 特にKEFのUni-Qという同軸2ウェイユニットは位相管理もされているらしく,点音源から出てくるのと同等の位相特性を持っているんだそうです。これなら音像がスルスルと動いてしまうことは,ないんじゃないでしょうか。

 また,Qシリーズのうたい文句に,部屋中に音が広がると書かれた箇所がありました。リビングのどこで聞いても不自然にならないことと解釈してもいいんですが,どちらにしてもスピーカーのコンセプトとして,部屋のどこでもそれなりの音像に鳴ってくれることを意識されていることが重要でした。

 CM1のようなモニターは,最適なリスニングポジションが狭く,そこで聞けば素晴らしい音像が得られるかわりに,ポジションの変化による音像の劣化が大きいというものは,やっぱりリビングにはつらいわけです。

 これは,左右方向も前後方向もそうなのですが,上下の高さも結構大変で,目線にツイーターがくるように背筋を伸ばして浅く腰掛けて聞き始めたところ,疲れて深く座り直すと急に音像が変わってしまうため,あわててまた背筋を伸ばして座り直す,てなことが結構苦痛だったのです。

 これでは音楽を聴くのに,疲れてしまいます。

 さて,そのリビングに適したような印象を持った新しいQシリーズのうち,ブックシェルフはQ150とQ350の2種類です。前者は小型,後者は大型です。CM1の時は,その大きさも魅力でしたが,やはり離れて聞くと低音不足が気になりました。後にCM5が出た時に,低音のゆとりをとても羨ましくなったことを思い出し,ここはQ350でいこうと決めました。

 価格差は1万円ほど。これだったら置き場所が許せばQ350です。スピーカーは最終的に空気に振動を与えるものですので,どうしたって物理的な制約が強くて,大きいものが正義となります。

 で,価格破壊といっちゃうくらいですから,価格も期待したいところです。ペアで税抜き68000円が標準価格ですが,私が見積もりをお願いしたお店では税込み送料込みで58700円でした。もっと安い店もあるでしょうが,在庫があってこの値段ですから,ここで決めました。

 さあ,こんなに簡単に決めていいんでしょうか・・・いいんです。自分を信じろ。

 しかし考えてみると,1本3万円未満です。CM1でも安いなあと思っていた(というかこれこそ価格破壊といってよい)んですが,この値段だとそれこそ国産のローエンドです。これで妥協のない音がするはずないですわね・・・

 ワシが若いころはの,1本6万円が激戦区での,ダイヤトーンのDS-77やらオンキョーのD-77やら,価格以上の物量を投入した出血大サービスモデルが覇を競っておったものじゃ。今D-77なぞ作ったら,1本20万円にもなるんじゃなかろうかのう・・・

 そんな話はどうでもいいんですが,ペアで6万円とバブル期の国産品の半額で買えるスピーカーとはいえ,そこは英国KEFの作品です。そう,憧れのKEFなのです。

 私が憧れたスピーカーのブランドというのが,米国JBL,英国B&W,英国KEF,そして英国タンノイです。タンノイは別格なので一生縁がないとして,JBLは昨今の脱線気味にほぼ興味を失い,事実4312Mでの手の抜き方に幻滅しました。

 B&WはCM1で満足しましたし,KEFは使ってみたいメーカーだよなあと思っていた所で,このQ350です。安いモデルで自慢にもなりませんが,私にとってはいよいよ憧れのKEF,なのです。

 KEFといっても知らない人が多いかも知れません。その昔,英国BBCが規定したモニタースピーカー「LS3/5A」を製造するメーカーとして知られた名門です。1000万円を超える超高級モデルも持っているメーカーで,あまり安いモデルは出ていないものだと思っていたら,廉価版のQシリーズは以前から定評があるとのこと,私も不勉強でした。縁遠いメーカーだと思ってましたもので・・・

 いや,もうこの盛り上がりは止められません。

 5月初旬に全世界一斉発売で,ボツボツ展示が出始めたQ350が我が家に届いたのが先週金曜日の夜です。なんの偶然か誕生日の前日という事で,なんとうれしい誕生日プレゼントfor meとなりました。

 ということで,早速CM1と入れ替えることにします。

(1)外観

 私が買ったのはブラックなのですが,正直にいうと,そんなに高級感はありません。ぱっと見れば,素人の自作スピーカーの上手に作ったやつ,くらいに見えたりします。そこはさすがにCM1は素晴らしく,見た目も高そうです。Q350の残念なところは,外観かも知れません。

 ど真ん中にいるスピーカーユニットも,ちょっと違和感があります。我々の目にはウーファーが下に位置しているのが自然に見えるので,この真ん中にドドンと居座るスピーカーは,どうも自作スピーカーっぽく見えてしまいます。

 これでサランネット(グリル)でもあればいいんですが,残念な事に別売りです。1つ2000円ほどですから,同梱して欲しかったなあと思います。

 とはいえ,そこはさすがに名門KEFです。しっかりと精度良く作られています。手で触り,しっかり抱きかかえたときに,ただポンポンというだけではなく,まさに楽器の胴体の如く,しっかりとした音が響くあたり,スピーカーのあるべき姿を垣間見せてくれます。

 個人的経験から,スピーカーは奥行きがないとダメというのがあり,Q350も随分ズドーンと奥行きがあります。そこに綺麗な形状のポートがあり,ここに声を入れると,本当にQ350がしゃべっているような感じになります。いいですねえ。

 端子は廉価版ということもあり,バナナプラグ対応のターミナルが1つだけです。低域と高域で分かれてはいません。バイワイアリングは出来ません。残念。

 大きさですが,分かっていたことではありますが,CM1からの置き換えではかなり大きくなります。私としては許せるレベルですが,他の家族としてはかなり熱燗を感じるんじゃないでしょうか。

 で,ユニットの形というか,デザインというか,これがどうも気持ち悪いんです。好みの問題もあると思いますが,まずエッジにポツポツとある突起。そして中央のツイーターの形状。中央部はツイーターの保護のためだと思いますが,放射状に柵のようなものが出ていて,まるで種がはぜる直前の,花の実か何かに見えます。

 自作スピーカーとの違いを悟るのは,おでこに付いたメーカーのオーナメントです。これもまあ,たいしたことないというか,毒にも薬にもならんというか・・・

 CM1との比較は意味がないと思いますが,高級感や凝縮感は劣ると思いますし,ユニットのデザインもよいとは思えません。見た目はバランスや高級感でCM1の圧勝です。


(2)設置

 セッティングですが,割と胴鳴りがしないので,設置面から大きく浮かせることはしないでおこうと思いました。CM1では4cmくらいの立方体のウッドブロックを足にしましたが,Q350でやってみるとちょっと腰高な音になってしまったので,高さ1,5cmくらいの黒檀の三角柱の頂点を設置面側にして,3点支持をしてみました。

 それなりに重量のあるスピーカーなので,しっかり設置できたのですが,音もしっかり座るようになり,これで決定です。

 本当は壁から離さないといけないのですが,設置上の制約でそうも行きません。ポートに差し込むスポンジも迷いましたが,音を聞いてみて,スポンジを使わずにそのままにすることに決めました。

 ところで,Q350から50cmほど離れたところでたまたましゃべったのですが,Q350から私の声がするので驚いてはっとしたことがありました。私の声に共振して,Q350から音が出ていたんですね。

 CM1も含め,こういう経験はしたことがなかったので,スピーカーってのは本当に音響製品なんだなあと改めて思った次第です。



(3)音

 さていよいよ音です。

 レンジについては文句なしです。やや低音がポンポンいいますが,これは壁が近いことも影響していると思います。それでも200Hzあたりがポンポン言う感じではなく,腰の位置も低く,音が飛び回っている印象もありません。

 高域も欲張らず,しかし自然の伸びていて,どの帯域も気持ちよく聞かせてくれます。耳障りな音も聞こえてこないので,きっと高域の歪みが少ないのでしょう。

 音像の定位ですが,これは本当に素晴らしいです。CM1では本当に真ん中に座らないといけなかったのが,Q350では大体真ん中で十分ですし,少々動いてもきちんと定位します。

 楽器によって,あるいは音程によって音像が動くことも本当になく,特にライブハウスくらいの小さな箱でのライブなどは,拍手ですらぴたっと止まり,その臨場感に目の前に見えているいつものリビングがふっと消えてしまうくらいです。

 音量も十分で,そのリニアリティも良いようです。音量の変化ぬ無理がなく,ついつい音を大きくしてしまいがちなのですが,これってスタックスでも経験しています。

 全体の印象としては,鋭角的な解像度を持っている訳ではありませんが,薄っぺらいきりきりとした音ではなく,豊かな奥行きと表情を持つ,自然で素直な音が出てきています。

 その音は緊張感よりはリラックスですし,解像度よりは表情の豊かさです。しかしレンジの広さも透明感もあり,空間の再現能力が素晴らしいです。イントロが終わり,ボーカルが出た瞬間のゾクゾクは,Q350ならではと思います。

 期待した上下方向の位置の許容度ですが,CM1にくらべて随分寛容になったのは事実です。姿勢もリラックス出来たこともあってか,Kind of blueで心地よくウトウトしたのなんて,久々でした。CM1で居眠りをしたことって,そういえばなかったです。

 低音も豊かに伸びて出てきます。いやはや,立派に鳴っていると思います。人によるとは思いますが,このくらいの豊かさがあれば,オーケストラも楽しんで聴けるんではないでしょうか。


(4)ここが気に入らない

 やっぱり外観です。高級感がなく,繰り返しになりますが自作スピーカーっぽいのは,リビングにはちょっと寂しいです。

 なのに,グリルが別売りというのもいけません。ちゃんとしたグリルがあれば自作っぽく見えないのではないかと思うのですが,ペアで3000円や4000円価格が上がってもいいので,同梱して欲しかったなあと思います。

 あと端子です。Y型の圧着端子がうまく差し込めない太さも悔しいし,バイワイアリング出来ないのも残念ですが,まあ基本性能に関係ないし,見えないところだから許しましょう。

 まあ気に入らないといっても,この程度です。


(5)まとめ

 これが2本で6万円ですか・・・CM1でもびびりましたが,Q350ではもっとびびりました。こんなにいいものが買えるんですねえ。XC-HM86と組み合わせても,10万円ですよ。

 繰り返しますが高級感はないので,そこにこだわる人はダメだと思いますが,音は間違いなく素晴らしく,かつリビングに置いても立派にみんなを満腹にするだけの能力を持っています。

 ある特定の位置の人だけを満足させるのではなく,そこにいる人をみんな満足にするというQ350の性格は,まさに私が求めていたものです。聴く側にも集中力が必要な極端な解像度はないですが,臨場感と自然なレンジの広さを持ち,音そのものと言うよりも空間を組み立てることに,能力を割り当てているという気がします。

 もちろん,細かい音も聞こえますし,とても繊細な表現力も持っていますが,それらが目立つことなく,様々な音を調和して空間再現の「材料」になっていることが,Q350のよさです。

 こういう,リラックスしたスピーカーは私は初めてでしたし,これまでは避けてきたので,新しい発見をしました。

 これまで聞き慣れた音楽を散々聴きまくりましたが,どれも好印象です。ちゃんと聞くならヘッドホンで,と思い続けてきましたが,Q350ならリラックスして,ちゃんと聞くことができそうです。

 そしてなにより,肩の力を抜いて,音楽を楽しむことが出来るのが素晴らしいです。音と向かい合うと言うより,音に包まれるという感じが,CM1とは違うなあと思います。
 
 Q350は,このサイズが許されるなら,間違いなく満足出来るスピーカーだと思います。この値段なら売れるだろうなあ・・・


(6)余談

 CM1は自分の小さい部屋に戻しました。よくマッチしているアンプに繋いでならしましたが,やっぱりいい音します。安心しました。


(7)余談2

 グリルがないままいこうかと思いましたが,5歳の娘がものを投げたり,振り回したりする度に「あーー」と声を上げてやめるようになだめるにももういい加減疲れました。娘も「ええかげんにせえよ」という顔をしているので,グリルを付けることにしました。

 まだ出始めという事もあり,見積もりを取ると1つで4000円と回答してきた店もあったのですが,正しくは2つで4000円らしく。これなら自作しないほうがいいということで,注文しました。

 自作するのも良かったかなあ。

XC-HM86を買いました

  • 2017/05/15 16:14
  • カテゴリー:散財

 4月上旬だったと思うのですが,パイオニアとオンキョーのネットワークオーディオが,e-onkyoに対応したというニュースを見ました。

 対応機種に,パイオニアのXC-HM86という機種があったのですが,ちょっと気になってスペックを調べて見ると,なんだかちょうどいいんです。

 それまでリビングで使っていたネットワークオーディオは,デノンのDRA-N5だったのですが,これはNAS前提の小型機で,CDを全廃したうちの環境にぴったりと導入したのでした。

 ところが,悪くはないんだけども好みにあわないデノンの音がどうもしっくりこなくて,しかもCM1を駆動し切れているとも思えず,そのうえ動作が不安定で,音楽を聴きたいと思った時にさっと聞けないという事が悩みの種でした。

 結局稼働率は下がり,リビングで音楽を聴く習慣そのものがなくなってしまいました。

 音の好みって大きいですね。自然と音楽から遠ざかってしまうのです。

 これではいかんということで,リプレースをずっと考えていたのですが,XC-HM86を見た時に「これだ」と思ったのです。

 CDを全廃したとはいえ,案外CDを聞きたいと思うことは多く,CDがかかる機能は,邪魔から欲しいものに変わっていました。

 パイオニアの音は私は好きなので音の傾向は大丈夫なはずですし,N-30のユーザーとしてはNASの音楽をプレイすることの安定性に不安はないので,これも大丈夫。あとはスピーカーとの相性ですが,これはもうCM1が相手ならある程度の所で妥協しないといけないところです。

 FMチューナーが入っていることもポイントが高く,これでSACDがかかったら文句なしなんですが,さすがにそれは高望みです。

 評価も概ね良いようで,大きなLCDがついていること相まって,即座に購入を検討することになりました。価格も30000円弱にまで下がっています。安い。

 ヨドバシでも32800円に10%のポイントで買えると言うことで,取り寄せでしたが注文をしました。まあ連休前には買えるでしょう。

 しかし,甘かった。

 私が注文をしたあたりで在庫が払底したようです。納期の連絡が届いたのですが,なんと6月初旬とあります。そしてあちこちのお店で在庫が次々になくなり,価格もどんどん上がっていきました。

 うーん,こんなことってあるんですねえ。

 まあ,急ぐものでもないですし,気長に待つかと思っていた所,さすがヨドバシ,連休の直前に発送され,私の手元に届いたのです。

 もっと時間がかかると思っていましたし,今さらキャンセルしてもこの値段で買うことは無理なので期待していなかったのですが,じっくり連休中に使うことが出来ました。よかったよかった。

 さっとインプレッションです。

(1)外観

 DRA-N5に比べて大きいのですが,それでも大出力アンプにネットワーク機能,そしてCDとAM/FMチューナーまで入っているのですから,凝縮感はあります。

 今どきのパイオニア製品らしいシンプルなデザインは私は好きで,LCDも大きくてうまくまとまっていると思います。

 ただ,操作ボタンが本体の上面に並んでいるのは良くないです。ここにモノを重ねられないだけではなく,手で操作するだけの空間を用意しないといけません。

 使わないボタンなら無視すればいいんですが,CDを取り出すのはリモコンでは出来ず,本体のボタンしか方法がありません。これも残念な所です。

 それに,セッティング中に手で掴むと,意図しない動作をすることが度々ありました。こんな所にボタンがあると,触らないように気をつけることがそもそものストレスになります。

 正面右側の大きなツマミはボリューム専用です。これもロータリーエンコーダなんですから,設定時のパラメータ変更に使えてもいいんですが,そういう仕様にはなっていません。もう少し詰めて欲しかったなあと思います。


(2)音質

 びっくりしました。よいですよ,かなり。もともとパイオニアの音を期待していましたが,それをやや一般寄りにしたという感じがする程度で,傾向ははっきり出ています。透明でスピード感がある,しかし丁寧で真面目な音というのは,とても好印象です。

 パワーアンプもかなりよいようで,CM1もなかなか頑張って駆動してくれます。DRA-N5とは比べものになりません。

 XC-HM86の機能の1つに,デジタルフィルタの切り替えがありますが,この違いはとてもはっきり分かります。ヘッドフォンではわかりにくいものだったので,パワーアンプとCM1の組み合わせであれば,このくらいの差はきちんと表現出来るという事でしょう。

 ネットワークオーディオもCDも期待以上の音です。FMチューナーも悪くなく,ちゃんとしたアンテナを繋げば,見事な音が出てきます。


(3)安定性

 うちのNASはQNAPのTS-119P2ですが,N-30同様とても安定しています。バグでコケることもありません。操作レスポンスもN-30に比べて大きく向上しているので,音楽を聴きたいと思う気持ちをスポイルしません。

 時に操作不能になることもありますが,それでもしばらく放置すれば動き出しますし,DRA-N5の時の恐る恐る動かすあの感覚からすれば,もう天国のような使い心地です。


(4)まとめ

 細かいところで不満もありますが,総じて良く出来ていますし,なにより音楽を聴きたいという気持ちにすぐに応えてくれるレスポンスの良さと,出てくる音がとても楽しいことに満足で,これがこの値段で買えるのかと,感心しました。

 DRA-N5もしばらく置いておこうと思いましたが,XC-HM86があまりによいので,もう使うこともないだろうと,さっさと捨ててしまいました。結論を言えば,DRA-N5は失敗だったということになるでしょう。

 SACDはBDプレイヤーから再生することにしていますが,これがまた実につまらない音なので,ここは次のテーマになりそうですが,それ以外についてはとても満足です。

 FMチューナーもなにげに便利で,ちゃんとしたアンテナを繋げば十分な音が出ますし,AM補完放送にも対応しているので,AMラジオを高音質で楽しめたりします。これも面白いですね。

 インターネットラジオも良くなっています。理屈を知らなくても,十分楽しめると思います。

 ところで,CM1はすごくいいスピーカーですが,もともとニアフィールドモニターですから,スピーカーの間が広くなり,部屋が大きくなってしまうと,どうしても無理が出てきます。もうちょっとゆとりが欲しいと言うか,セッティングをラフにしたいとか,リスニングポジションがもっと広くなってくれないかとか,いろいろ不満も出てきます。

 CM1の素晴らしさは知っているわけで,これをここに置くのはもったいないとも思えます。ならば,リビングに相応しいスピーカーに交換するのが最善です。

 そんなことをつらつらと思っていたら,なんとタイムリーなことに,ぴったりなスピーカーが登場したことを知りました。この話は後日。

DSO Shell DIY kit を買ってみた

  • 2017/05/12 10:46
  • カテゴリー:make:

20170512105027.jpg

 秋月で買いたいものが少し溜まってきたので,そろそろ通販をお願いするかとカートにポンポン部品を入れていた時のこと,概ね片付いてから,他に面白いものはないかなといろいろ見ていたら,ミニオシロのキットに面白そうなものを見つけました。

 5年ほど前にちょっとブームになったミニオシロか,モノクロLCDの基板上バラックキットか,そのくらいのもんだろうとスルーしかかったんですが,なかにきちんとしたケースに入ったキットが目に付きました。

 DSO Shell DIY kit (15001K)と書いてあります。


 白くて丸い上品なケースに,今どき4:3の小さなカラーLCD,入力端子はBNCで汎用のプローブやケーブルが使えそうで,電池駆動もOK。

 それで値段が3500円ということで,これまで完全に見逃していました。

 惜しいのは1現象なことくらいで,帯域の狭さは値段相応と割り切れるポイントです。調べて見ると1年くらい前からその界隈では話題になっていたもののようで,もともと基板キットだったものをリファインし,ケースまで用意したもののようです。

 基板キットというのは工夫の余地がありそうに見えて,昔と違って基板を分割したり回路を分けたり出来ないので,結局適当なケースに収めることも出来ず,実用性が落ちてしまうものですが,今回のキットは基板も筐体に合わせた専用設計をやり直しているようですので,使いやすく小さく収まり,テスター代わりになると考えても3500円なら買ってみてもよいでしょう。

 てことでカートに入れて決済完了。果たして連休直前に届きました。

 連休中はなかなか取りかかることも出来ず,伸ばし伸ばしになっていたのですが,目ざとく見つけた5歳の娘が毎日のように「オシロスコープ作った?作った?作った?」と聞いてくるので,プレッシャーに負けて,連休終盤の夜中に作る事にしました。

 久々ですね,こういう完成して当たり前の工作をするのは。説明書をよく読んで,決められた部品を取り付けていく楽しさ。これはこれで夢中になるものがあります。

 組み立て前の確認から完成まで2時間程度。幸いミスもなく一発で動いてくれました。上下ケースもきちんと勘合してくれて,ネジバカになったネジが1つだけ出てきた事は残念としても,それ以外はとてもうまくまとまってくれました。

 調整は高域と低域のレスポンスをトリマコンデンサであわせ込むのですが,完成させてからでは調整は出来ないので,何度も慎重にやったつもりでしたが,完成してみると高域がちょっと落ちていてしまいました。

 余っていた60MHzのプローブを繋いで矩形波で調整をしてみますが,これも調整出来るところまで追い込めず,いまいちな結果となりました。10:1のプローブが使えると,使い道が随分と広がるんですけどねえ。

 電源はACアダプタでは面倒なので,これも余っていた006P型のNi-MH電池を使うことにしました。内蔵できないので背面にベルクロで張り付けています。でもなかなか収まりが良いです。

 早速娘に見せると,ふふふと笑いながらボタンをおして,つまみを回し,遊んでいます。なにがおもしろいのやらと思うのですが,こういうものに免疫がないというのはさすがに子供らしく,これで1つの関門を越えたかなと思いました。(なんの関門だ?)

 完成後,きちんとした評価はしておらず,測定結果が信用出来るか,どのくらいの範囲で使えそうかがはっきりしていないので,実戦投入はしていません。感触では,オーディオ帯域でもややあやしく,出てきた波形がどれくらい実際と異なっているかを心得ておく必要があると思っているのですが,それはまた後日。

 機能的なところで,随分良く出来ているなと思ったところも多かったので,それをいくつか書いておきます。

 まずそのコンパクトさです。以前からLCDを使った簡易オシロは,キットや完成品を問わず出ていたのですが,綺麗にまとまったオシロとしてはかなり小さい部類でしょう。手のひらサイズでどこにでも置けて,さっと片付けることもできます。

 小さい割にはUIも良く出てきており,操作に困りません。操作感も悪くなく,サクサクと動いてくれます。画面も見やすくて,楽しく測定できると思います。(この楽しくと言う要素はとても重要で,楽しくない,苦痛という事態は,あらゆる作業の質を低下させますし,意欲を削ぐものです。)

 で,基本機能ですが,帯域が狭いことを除けば,いっちょ前に通常のオシロスコープと変わりません。入力はAC/DC/GNDの切り替えが可能ですし,垂直感度は5mV/DIVですので,特に困ることもないでしょう。

 水平軸は10us/DIVが最小なのですが,これだと50kHzから100kHzくらいの波形を確認するのが精一杯でしょう。

 帯域幅が200kHzということですが,実力はもう少し低い印象です。矩形波の観測ではざっくり10倍の帯域がいりますので,前述の掃引速度からも,用途としてやっぱり20kHz程度の音声帯域の観測に限定されるのではないかと思います。

 しかし,トリガは結構切れ味が良くて,UpとDownのエッジも切り替え可能,トリガレベルももちろん可変できるので,欲しい波形をスパッと取り込めます。これでノイズ除去や高域除去があれば本格的だったんですがねえ。

 もちろんノーマル,シングル,オートの3つのモードを選べますので,単発現象も拾えます。

 波形の取り込みを止めることも出来るので,デジタルオシロの便利さは損なっていません。トリガボタンの長押しで,トリガレベルを50%にする機能があるのは,実際に使ってみるととても便利な機能で,よく考えてあるなあと思いました。

 プローブ調整用の1kHzの矩形波も出ているので,きちんとした波形を見ることが出来ますし,なにより,測定前には調整するという基本的な習慣を身につけることができるところが,こういうところをおそろかにしないという点で好感が持てます。

 使っていると,リードアウトとカーソルがないことにがっかりして,これでこれはもうゴミだなあと思っていたのですが,説明書を読むと電圧や周波数の測定値の表示が出来る事がわかりました。

 試してみると,やや波形にかぶりがちですが,とても綺麗にまとまっており,一発で波形と各種測定値が一覧できる便利さに,最近のオシロと同じ利便性の高さを感じました。

 実際,カーソル機能は,こうした測定値を手動で見るために使われていたケースが多いので,最初から一覧で出してくれれば,そんなに必要になることはありません。確かに,オマケでいいからカーソルは欲しいのですが,これはまあ,将来に期待しましょう。

 それと,セットアップの保存が出来ません。これは結構残念で,前回の測定状態が再現されることと,測定を新たに仕切り直ししようとした時を,両立するために有益な機能だったりします。

 これも簡単な機能なので,アップデートされるかもしれないですね。

 写真は,ファンクションジェネレータで生成した「ハート型」の波形を,TDS3054Bとこのミニオシロで表示させたものです。生意気に,けどけなげに,同じ波形を出してくれていますよね。感心感心。

 さて,可愛い外観にしっかりそろった基本機能と使いやすさで,なかなか見込みのあるこのミニオシロキットですが,実用性はと問われると,やっぱりちょっと疑問符が出ます。

 これは私に限った話なのかも知れませんが,音声帯域で波形を見たい事って,あんまりないのです。デジタル回路では最低でも10MHzくらいきちんと見えてくれないといけないし,トリガの条件もあれこれと駆使しますので,これでは物足りません。

 音声帯域で波形を見るのは,発振の有無を確かめるとか,ノイズや歪みをぱっと見るくらいなのですが,発振を見るには20kHzでは全然足りませんし,ノイズや歪みは波形で見るより定量化できるオーディオアナライザを使いますから,あんまりうれしくありません。

 正弦波か矩形波かなんてのは音を聞けばわかるし,やっぱり音声帯域を可視化することの意味って,あんまり見いだせないのです。

 唯一,シリアルポートの確認に使うことがあるなと思いましたが,これも最近は動く事が当たり前になっているので,波形をみて追いかけることなど,ほとんどしません。

 I2Cでも200kHz以上ですもんね。そう思うと,波形が出ますという面白さと,測定値が一揃い出てきますというテスター的な便利さくらいが,このミニオシロの価値なのかも知れません。

 ただ,3500円とちょっとした組み立ての手間で,ここまでのものが手に入るのは正直驚きです。オシロを学ぶ人にとっては,ここで得た知識と経験が上位のオシロスコープでも必ず役に立ちますので,この値段で初めてのオシロスコープが手に入ってしまうという事そのものが,価値であるのかもしれません。今の若い人は羨ましいです。

 純粋にかわいいし,面白いものです。実用性云々は,野暮ってもんです。

 そういえば,私が始めて手に入れたオシロは,5MHz帯域の1現象で,リードアウトもカーソルもない,単純なものでした。

 当時バイトしていたデジットに入荷したいくつかのジャンク測定器のうち,どれか1つを買って帰りたいと店長に相談したところ,ちょっと高い(とはいえ5000円)けど,これがいいと選んでもらったものでした。

 当時はプローブのことも全然知らず,同期方式の違いもわかってなくて,気が付いたらそれがトリガ同期式だったという感じだったのですが,後日店長にトリガのツマミをどういじるのかを尋ねたところ,これが使いこなせたら一人前とニヤニヤされた覚えがあります。トリガがオシロスコープのキモである事を,その時知ったのでした。

 使いやすいものではなく,結局あまり出番もないまま,2465Aを手に入れてから他の人に譲ってしまったので手元にはありませんが,とても大事にしていた事はよく覚えています。テスターもそうなのですが,最初の1台というのは,心に残るものですね。

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