今年の1月初旬に髭剃り器をパナソニックのラムダッシュES-LA72に買い換え,このそり心地に毎朝ご満悦な私ですが,購入当初から自動洗浄機に不満があり,どちらかというと辛抱して使っていました。当時の艦長日誌を読み返してみても,自動洗浄についてはブラウンの圧勝とあります。
で,その自動洗浄機の具合が悪く,ここ数週間ほど頭を抱えています。
問題の発覚は,自動洗浄機の下が洗浄液でびしょびしょになっていたことを今月初旬に見つけたことでした。購入後10ヶ月ですが,こんなことは初めてです。
留守中に洗浄していますからなにが起こったかわかりませんが,まず最初に疑ったのは嫁さんで,「うごかしたやろ」と詰問するも「しるかぼけ」と反論されたのち,謝罪と賠償を要求されました。
法外な要求にくずおれながらも,真の原因を追及する姿勢は忘れません。次こそは尻尾をつかもうと,危険を冒してしばらく使い続けます。ある朝,ヒゲを剃ろうと本体を洗浄機から取り外すと,本体のヘッドから洗浄液がしたたり落ちるではありませんか。
よく見ると,洗浄機の下側に水濡れがあると同時に,洗浄液をためるプールに洗浄液がかなりの量溜まっており,タンクに戻っていないことがわかりました。
プールを見ると,10ヶ月間使い続けた結果,水垢やゴミが溜まっており,これが穴をふさいだのではないかと考え,意を決して掃除を行いました。
休日にその成果を試したのですが,やはり相変わらず洗浄液が回収されず,水濡れも発生します。よくよく様子をみると,以前に比べて泡が大量発生し,洗浄中もあふれ出てきそうな勢いです。こんなに泡が出るというのはなにかおかしいと思ったのですが,濃度の調整を私がやるわけではありませんし,別の薬剤やローションなどは一切使っていないですから,不純物が混じることもありません。
きっと水垢や汚れが内部のパイプや経路をふさいでいるに違いないと素人判断し,いちいち修理に出すのも面倒臭いという理由で,よせばいいのに自分で分解して掃除をすることにしました。
外側のカバーを外し,内部をよく観察します。まるで1980年代のターボエンジンのような,なんだかよくわからないけど格好いいパイピングに萌えつつ,汚れを確認していきますが,思っていたほど汚れていません。おそらくフッ素かなにかが入ったチューブなのでしょうね,ゴミも水垢も付着せず,液体の流れは邪魔されていません。
せっかく分解したのですから,一応隅々まで掃除をします。せっかくですので洗浄カートリッジもこの機会に交換しておきましょう。太っ腹です。
組み立ててテストをするとき,元のようにカバーをつけてしまうと洗浄液の流れが分かりませんし,水漏れの原因も分からないままになりますから,カバーを外したまま洗浄をやってみます。
すると,写真のように,向かって左側にある電磁石(ソレノイド)のあたりが,妙に濡れているのがわかりました。洗浄中もじーっと観察していると,このソレノイドに繋がっているパイプから洗浄液が漏れて出てきているようなのです。
そもそもこのパイプ,いったいどういう役目のものなのだ?
そこでいろいろ調べて,ラムダッシュの自動洗浄機の洗浄液の流れを解明しました。写真を見ながら説明を読んで下さい。

下部手前にあるのがポンプユニットです。モータがダイヤフラムを前後に振動させ,液体を吸い込み,吐き出します。原理的には金魚のエアーポンプと同じものです。
まず,自動洗浄機のスイッチが入ると,ソレノイドがONになり,パイプの一方をふさぎます。このパイプはタンクの上部の穴に繋がっており,空気抜きの役割をします。
フタがふさがれた空気抜きからは,当たり前ですが空気が抜けず,タンクは密閉状態になります。ここでポンプが動作すると,まず空気がタンクの入り口に入り込みます。
タンクには反対側に出口の穴があいていますが,これはタンク内の壁で仕切られた区間に繋がっています。この空間はタンクの下側に口が開いているので,入り口から空気が入ってくるとタンク内の洗浄液の液面が空気で押し下げられ,洗浄液が仕切られた空間を登っていき,出口から洗浄液が吐き出されるのです。ちょうど,電気ポットと同じ原理ですね。
出口から出た洗浄液はプールに溜まりますが,プールの下部には小さい穴が開けられており,これがカートリッジの上部の穴と繋がっています。カートリッジの横の穴とはポンプが繋がっているので,ポンプの回転によって発生した負圧によってカートリッジに洗浄液は吸い込まれていきます。
ただ,この吸い込み量はそれほど多いわけではなく,ポンプの能力をカバーできません。そこで,プールの少し上の部分にも排出口があり,液面がある高さを超えるとここから流れ込む仕組みになっています。写真のソレノイドの上を這う太いパイプは,この時流れ出た洗浄液を戻すものです。
このパイプは,おそらくですがカートリッジをバイパスする経路になっており,洗浄液の回収能力を排出能力が上回った場合でも,プールから洗浄液があふれることを防いでいます。

さて,洗浄が終わってタンクに洗浄液を全て戻す場合を考えます。これには,先程の空気抜きパイプのソレノイドをOFFにしてポンプを動かしてやると,このパイプから空気が抜けるため,洗浄液が登ってきません。ポンプによって洗浄液はタンク内に送られて来ますから,しばらく回していると全て回収して終了,となるわけです。
なかなか考えたものだなと思いましたが,いかがですか?
問題は,この空気抜きのパイプです。
タンクの液面の最高値よりも高い位置に穴が空いているため,本当ならここから液体が流れてくることはありえません。しかし実際にこの周辺が濡れています。
何度も何度も洗浄して動作を確認すると,空気を抜いているとき,つまりソレノイドがOFFの時に,少しずつ洗浄液が出てきていることがわかりました。
そうこうしているうちに,どういうわけだかソレノイドが動かなくなってしまいました。これは完全に故障です。
調べて見ると,ソレノイドのコイルが切れているようです。これは本当に困りました。自分で分解してしまいましたから,今さら修理というのもお願いしにくいです。保証期間中なのに有償になるのもバカらしいですが,ここはお約束の自己責任です。
ソレノイドのコイルをほどいてみると,幸運なことに,すぐに断線箇所が出てきました,黒く錆びて切れています。以前からずっと水濡れがあって,それで切れているようです。これは欠陥品ではないのかと,その時から私は自分の行為が間違いであったことを悟り始めました。
切れたコイルをハンダ付けし,またまき直してソレノイドは復活しました。コイルの巻き直しをするなんて,21世紀にはありえません。
元のようにソレノイドを組み付けてテストをしますが,やはり水濡れは発生します。さらに観察すると,どうやら洗浄液が循環するときにタンク内部で泡が盛大に発生し,これがはるかに液面を越えて,空気抜き用のパイプが繋がる穴に入り込み,パイプを流れてくることが分かりました。
しかも,その泡の量が多いと,空気が抜けずに洗浄液が循環し続けてしまい,全量を回収できないままにポンプが停止してしまうこともわかりました。これで自動洗浄機の下側が,洗浄液のこぼれた後がないのに濡れていることも,コイルが腐食して断線していたことも,そして洗浄後も洗浄液がプールに残っていることも,全部説明が付きました。
原因が特定出来たので,対策を考えますが,根本原因はとにかく泡の発生を抑えることにあります。見ていると,タンクの入り口から入った洗浄液は高い位置からボトボトと落とされており,ここで大量の泡が発生しています。低い位置まで洗浄液を誘導すればいいのではないかと,細いパイプをタンク内に入れてみたところ,泡の発生はかなり抑えられました。
結果,空気抜きのパイプに泡が流れ込んで来ることもなくなり,正常終了するようになりました。
しかし,泡の発生がなくなったわけではありません。特に洗浄開始の時に,タンクに空気を送り込む時に,それこそ金魚のエアーの様にぶくぶくと気泡が上がってきますので,泡の発生原因になります。
そこで,次なる対策を考えました。目のあらいスポンジをタンクの入り口にはめ込み,洗浄液流入の勢いを落とすと共に,気泡を破裂させ,しかも高い位置から勢いよく落ちることを防ごうというものです。
このスポンジの選定が成否を握ると思われ,これには慎重な検討が必要という事で,この週末にチャレンジします。
ところで,某掲示板を見ていると,気になる記述を見つけました。私と同じ症状で修理に出した人がたくさんいるようなのですが,メーカーの調査原因として,洗浄液の成分に不具合があり,泡が大量発生したというのがあったそうなのです。
洗浄液の成分の不良というのはおだやかではありません。泡の大量発生が今回のトラブルの原因ですので,カートリッジの不具合ということになると,同様の事件が多発していることになります。
前述しましたが,確かにこれまでの10ヶ月間,洗浄中に本体のヘッドを覆い隠すほどの多量の泡が発生したことは記憶にありません。試しにこぼれて減った分を水を足して洗浄液を薄めると,さらに泡の発生が少なくなります。
ラムダッシュの自動洗浄機のカートリッジは,過去の機種から現行機種まですべて共通です。洗浄剤の仕様が変更された時に泡の発生が増えて,これが旧機種で問題を起こしているというパターンではないでしょうか。
洗浄力のパワーアップかコストダウンか,理由は分かりませんが,どうも私の個体だけの問題ではなさそうです。
いずれにしても,泡の発生が多い現状ではこのまま使う事は出来ません。もうメーカーへの修理は考えていない私としては,いくところまでいくしかなく,「スポンジで泡消し大作戦!」を決行するほかありません。
結果は週明けです。同じようなトラブルで,留守中に安心して自動洗浄できない方々,どうぞお楽しみに。