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2009年10月の記事は以下のとおりです。

地デジPCその後

 地上デジタルテレビへの移行をPCベースで行ったのが6月ですから,もう4ヶ月ほど経過しています。大容量1TBで無尽蔵に録画可能,ダブルチューナーで裏番組もしっかりサポート,xxxがyyyしてzzzなので@@@という点も素晴らしく,残しておきたい番組はMacのturbo264HDでH.264にして保存しています。

 今のところ番組を取り逃したことは少なく,その点では信頼性も低いわけではありませんが,時に復帰に失敗していることがあり,完全に任せられないなあと言う気分があるのもまた事実です。

 当初復帰の速さと仕組みの簡単さからスタンバイを使っていましたが,これだと1週間に一度くらい復帰に失敗します。考えてみると2GBもDRAMがあるんですから,そのうち1bitくらいころっと化けてもおかしくないわけで,それがスタンバイ前の内部状態と食い違っていたら即暴走です。実に危ういです。

 ということで,サスペンドを使う事にしました。仕組みが複雑ですし,デバイスやドライバがちゃんと対応しないと不安定になりますが,休止前の状況をHDDに残す方法であり,復帰時にはすべてのデバイスが一度リセットされる点でも,信頼性としてはこちらが上のように思います。

 結果,復帰失敗は1ヶ月に一度くらいの割合に減りましたが,それでも起きてしまった事実は消えません。

 そこでさらに,復帰後再起動をかける設定を行いました。復帰はあくまで再起動を行うためのトリガに過ぎず,録画はあくまで再起動後の綺麗な体で行うわけです。

 今のところこの方法で問題は出ていません。

 それでも心配なのは確かです。かといって電源を入れっぱなしにするのは,機器の寿命の問題もあるし,それに停電があったら完全にアウトですので出来ませんしね。

 そう考えると,PCではなく,ちゃんと信頼性のある専用機を買うのが筋なのかも知れません。データの融通性の高さをとるか,信頼性を取るか,難しいところです。

 もう1つ心配なのは,故障や破損です。

 汎用品ばかりですので,壊れたら買い直せばいいだけのことですが,問題はチューナーです。xxxをyyyするのに,特殊なチューナーが必要なわけですが,現在私のつ買っている製品は対策が行われており,xxxをyyy出来なくなっています。

 「けいあん!」でその筋に知られるメーカーの製品が,今やxxxをyyy出来るチューナーになっているのですが,私は一応予備機としてこれを9月に1台だけ購入してあります。xxxをyyy出来る事も確認済みです。

 こうして考えてみると,家電品の値段と今回PCを用意するのにかかったお金とを,単純に金額だけで比較して損得を云々するのは間違っているなあと思ったりします。やっぱ信頼性という点で,専用機にはかないませんね。

どんな本を持っているかを把握する楽しみ

 以前書いたかも知れませんが,MacOSXには,Booksというフリーソフトがあります。名前の通り蔵書管理のソフトです。蔵書管理など面倒なことこの上ないのですが,人間誰でも記憶力は落ちますし,一方で長く生きていれば当然所有物も増えるわけで,両方の限界点から私はこの年齢で蔵書管理の有用性を感じた,ということでしょうか。

 特に私は,実家と自宅に分けてあること,一部はPDFになっていて実体が廃棄済みだったりするので,持っているかどうかではなく,どこにどんな状態であるのか,を覚えておかねばなりませんが,これはなかなか大変なことです。

 BooksはISBNコードをiSightで取り込み,amazonにアクセスして書名や表紙の写真などを引っ張ってきてくれる便利なソフトです。それでもドイツ製ということでちょっと馴染まないUIがあったりして,手放しに満点を上げるソフトとは言えません。

 原則雑誌は登録しない,手に入れたらその日のうちに登録,場所と状態を正確に記録することなどを運用規則として決めてから登録を初めて約7ヶ月,ようやく登録が終わりました。

 全部で1369冊のエントリとなりました。もっと多いかと思いましたが,こんな程度なんですね。もっとも雑誌も入れれば2000冊くらいになりそうです。

 手元にある本は新しい本が中心ですし,冊数も400冊くらいですから比較的簡単に登録が終わったのですが,実家にある本が難航しました。実家に屋根裏にある倉庫に段ボールにいれてある本を1冊1冊取り出し,ISBNコードをデジカメで撮影します。(というのも実家にはまともなMacがないからです)

 ISBNコードがない古い本や,雑誌の別冊などは書名などのデータを記録するため,奥付を撮影します。また,ISBNコードの有無にかかわらず表紙の写真も撮影しておきます。(というのも実家にはスキャナがないからです)

 撮影したISBNコードの画像ファイルを直接Booksに流し込めればいいのですが,どうもそんなことは無理なようで,1つ1つ自分でコードを読み取って,テキストデータにします。このテキストをコピペしてBooksに打ち込み,amazonにアクセスします。

 ところが古い本はamazonにあるはずもなく,結局書名を手で打ち込むことに。さらに表紙写真がありませんから,撮影したデータをPhotoshopに取り込み,ゆがみをとって色を調整してコピペします。

 それでも撮影忘れがあったりするので,次の機会に撮影するようにメモを残し,また実家で撮影してきます。これを何度か繰り返して,ようやく実家のデータも揃えることができました。

 Booksの面白いところは,このデータをWEBに置くことができることです。FLASHを使ったもので,表紙をブラウズしたり,検索を行ったり出来ます。生成されたデータをサーバーに置くだけですので,とても簡単にWEBベースで私の蔵書を公開出来るというわけです。

 他人に自慢するような蔵書ではないので,ここで公開することはしませんが,私自身は例えば会社で「あの本どこにあったかな」という疑問をその場で解決出来ますし,本屋さんでも同じ本を二度買うことを避けられます。

 でも,こんなことをしていたら,持ち物全部をデータベース化しないと気が済まなくなりそうで,なんか病的な自分が嫌になります。そうだ,電子部品の在庫データベースを作るってのはどうかなあ・・・

疑惑のエコナ

 花王という洗剤メーカーが放ったエコナという食用油は,脂肪が付きにくいという触れ込みで市場に投入された,ベストセラーです。特保指定という役所のお墨付きまでついていれば,効能に半信半疑な人であっても,まさか危険な食べ物とは思わないでしょう。

 しかし,数年前,ヨーロッパで報告されたある報告が,エコナを地獄に落としました。

 私は電気屋であって化学屋ではありませんから詳しいことはわかりません。それゆえ無責任な話になるかもしれませんが,私の理解ではこうです。

 エコナを製造する過程で出る生成物の濃度が結構高く,悪いことにこの生成物には発がん性が指摘されている,というお話です。

 まあ,生成物を全部除去していたら純度100%になってしまうわけで,そんな非現実な話もないでしょうから,既知のやばそうな不純物だけ除去して出したら,後日別のやばいやつが見つかった,ってなもんでしょう。

 花王としても,そう易々と危険性を認めるわけにもいかないので,化学屋としての客観性とメーカーとしてのプライドにせめぎ合っている状態ではないかと思います。

 個人的には,安全安全といいつつ,その根拠は「実験方法が国際基準と違うから危険とされるデータは信用できない」といったような,危険というデータの否定が中心であるかのうような印象をもちました。そんなに安全というなら,自分達の客観的なデータで説得すればいいんじゃないかと思います。

 その上,来年2月に当該成分を減らした改良品を出す予定だとか,特保指定を自主的に取り下げたとか,ほんまに安全なんか?と思うような動きを見せています。

 どうも,この改良品を2月に出すというのがひっかかります。私たちの世界でも,密かに改良品を出す事はありますが,それでも改良前の製品が危険だったり欠陥を持っていることはありません。もっというと改良はコストダウンや生産性の向上,耐久性や外観の改良であって,その製品の性能を期待して買って下さった方を裏切るようなことはありません。でもエコナの場合,どうもその辺が不透明な気がしてならないのです。

 消費者はバカではありませんから,こういう話があると敏感に察知するものです。花王は返品に応じるようになりました。最初は電話をした人だけに返送先が伝えられたようですが,最近は電話無しでもホームページにある住所に送れば返品できるようです。

 実は私も,未開封のエコナクッキングオイルを1本持っていました。今使っている1本は自分で買ったもので,もうすぐなくなります。これは使い切るつもりです。

 未開封のものは,母がお歳暮かお中元で頂いたもので,たくさんあっても困るからと分けてもらったものです。

 正直,エコナはおいしい油ではありません。コーン油のような香ばしさとか,紅花油のさっぱり感とか,そういう感覚からは遠い油だと思いますが,そこは健康のためと割り切る現代人が多いという事でしょう。

 危険な可能性があり,メーカーも回収をしている,しかもいずれ改良品が出て特保指定を自ら取り下げるなどという話を聞かされてしまうと,わざわざ新品を開封して食べようという気が起きないのも無理からぬことで,かといって油ですから気軽に捨てる訳にもいきません。

 そこで,申し訳なかったのですが,別の荷物を持ってきてくれたクロネコヤマトのおっちゃんに,エコナを着払いで持っていってもらうことにしました。

 4日ほど経過し,花王から私に宅急便が届いていました。中身は1000円分の商品券です。送料に1000円ですからね,花王も大損害です。大丈夫なんやろか。

 それに,一般消費者もさることながら,OEMや業務用に出荷したエコナの対応も大変なはずで,関係者はもう寝る間もないくらいの状態ではないかと,お察しします。

 さらにびっくりしたのは,印刷された定型文に書き添える形で,手書きの謝罪文がかかれていたことです。安全性云々は別にして,心配をおかけしたという内容なわけですが,私としても心配なので返品したのですから,その誠意は十分に伝わって来ます。手書きの謝罪文というのは,想像以上のものがあります。

 改良品を頑張って出します,とあるので,思わず頑張ってくれと思ったのですが,この1000円分の商品券で改良強化新型エコナを買うことが,この誠意に対する私のお返事になると考えています。
 

カセットコンロの買い換え

 ここ数日でめっきり寒くなって,少し前にはあれほど暑苦しいと思っていた土鍋が恋しい季節になりました。

 私も冬は土鍋を使った料理を自宅で友人と囲むことが多くなるのですが,そうなると欲しいのはカセットコンロです。

 カセットコンロは1980年代に登場し,それまでホースか電線で繋げるしかなかった一口コンロをコードレスにし,取り回しのよさだけではなく,足を引っかけて鍋をひっくり返すという命にかかわる事故を激減させたに違いなく,結果として一家団らんに革命をもたらした大発明だと個人的には賞賛しています。

 実はボンベが1つ100円程度とそこそこ安く,滅多に調理をしない独身者は,立派なコンロを都市ガスで使うよりも,基本料金を考えるとカセットコンロの方がずっとお得になるんじゃないかと思います。

 私も電磁調理器に変えるまで,カセットコンロを常用していた時期があり,なかなか便利に使っていました。ただ,高熱にさらされるため劣化がはげしく,塩分や油分がさらに追い打ちをかけて,3年もすると見るからに「危険」な様相を呈してきます。

 原理が単純なだけに一瞬使えそうと思うのですが,いつしかカセットコンロの下にたまった酸化鉄の粉の山をみると,これがどこから落ちてきたのか考え込んでしまい,火を着けようと伸ばした手を引っ込めてしまいます。

 そもそもガスのような得体の知れない物騒なもの(私が電気屋ではなく化学屋なら逆を言っていたように思いますが)に警戒感を持っていた私は,最後には電磁調理器に切り替え,以来IGBTとコイルが鉄の鍋と一緒に紡ぐ美しいハーモニーに酔いしれ,現代科学の偉大な勝利に祝杯を挙げる日々を送る事になるのですが,今週は寒いので土鍋で鍋焼きうどんにしようという話になりました。

 ところがかつて使っていたカセットコンロを見やると,まるでデロイアの砂漠に朽ちるコンバットアーマーのようです。

  鉄の腕は萎え 鉄の脚は力を失い
  埋もれた砲は二度と火を吹くことはない

  狼も死んだ 獅子も死んだ・・・
  だが砂漠の太陽にさらされながら巨人は確信していた
  若者は今日も生き 若者は今日も走っていると

  巨人は若者の声を聞いた
  吹きわたる砂漠の風の中に 確かに 聞いた


 あれ,前がかすんで見えないや・・・ちょっとダグラム全75話見て来ます・・・

 ・・・

 ・・・戻ってきました。Not even justice,I want to get truth.

 えと,なんだっけな,そうそう,カセットコンロでしたね。

 ということで,次世代制式カセットコンロの導入のため,会社の帰りに大手家電量販店に行ってきました。枯れた商品ですが,今まで数多くの私の期待を裏切り続けたお店のことです。価格が高いだの在庫がないだのと,結局通販で買うことになるような気がしますが,行くだけいってみます。

 面倒臭いので結果だけ書くと,イワタニのCB-CG-8というモデルを,2780円のポイントなしで買いました。ネットでは2980円に10%のポイントって感じですね。てことはネットだと実質2700円ですね。いやー,毎度毎度ふっかけてくるなあ,ここは。

 以前のものより火力が強く,しかもボンベを常時暖めてガス圧が下がらないという,一歩間違うとアフロ確実なギミック搭載で気分もブーストアップな商品ですが,2006年発売ですので事故が起きてリアルアフロになってる人がいたら,すでに話題になっているでしょう。

 早速使ってみますが,全体に剛性が低く,土鍋を置くと重みで歪みが出ます。これでは松任谷正隆さんと田辺憲一さんから厳しい意見が飛び出すことは必至ですが,もしかすると柔よく剛を制す,この歪みがボディ全体をサスペンションにして接地性能や追従性能を高めているのかもしれません。でもそれって初代CR-Xだよなあ・・・故ポール・フレール先生はそんなCR-Xの大ファンだったしなあ。

 中国製に見られるような精度の低さはなく,そこは(表記を信じるならば)さすがに日本製というところでしょうか。テフロンでコーティングされているので吹きこぼれも簡単に掃除ができて,全体的に不満はありません。極めて無難な買い物だったと思います。

 個人的な考えですが,私のように電気に依存する人間でも,やはりエネルギーは分散させた方がよいと思っています。特に液化ガスは熱源としては優秀で,これを少しでも確保しておくと,災害などの時にも役に立つと思います。

 最後に軽くレシピですが,市販の白だしの素を買ってきて,これを1:6で希釈,だしはこれだけでokです。うどんに白菜,鶏のもも肉にかまぼこや椎茸,焼き豆腐やネギなど思いつくままに投入し,一煮立ちしたら頂きます。とてもおいしかったですよ。
 

二子玉のライカ

 すでにプロの道具としてより,お金持ちの道楽となって久しいライカですが,写真を楽しむ人間の間に横たわるライカ原理主義には,確かに抗いがたいものがあります。

 こういうことを言っているのも日本人だけのような気がしなくもありませんが,ライカ自身も自分達の製品のどこが支持されているかをよく分かっているので,そこから外した製品を作ってこないところは,さすがだなと思います。イタリアもドイツもフランスも,それぞれ相容れないほどの個性があるのに,こういうところは共通していますよね。

 私はライカには今ひとつ魅力を感じない人で,つくづくNikonとPENTAXの国に生まれた良かったと胸をなで下ろしているのですが,世界で最初の直営店を銀座にオープンしたというニュースを聞いたときには,ライカもよく分かっているなあと感心したものです。

 さて,続く2号店が出来るというので聞いてみると,なんと二子玉川の高島屋です。

 確かに世界中のブランドが軒を連ねる二子玉の高島屋ですが,だからといってライカの直営店を出してどうすんのかなと,興味というよりに心配になりました。Nikonが御殿場にアウトレットモールを出すのとは訳が違います。

 そのオープンが先週だったので,この土曜日に偵察してきました。

 まず,やや薄暗く照明を落とした上質な内装,ぴしっとした服装の店員が,一見さんを遠ざけています。展示された品物はすべてガラスケースに入っており,手に取ってみることなど全然出来ません。カタログは完備されているようですが,同時に写真集なども用意されており,こういうところをちゃんと押さえているところに好感を持ちました。

 でも,まるで宝石店のような値札と,宝石に匹敵する値段のカメラが鎮座していますが,これじゃますますここでライカを買うのは難しいんじゃないでしょうか。

 扉などもなく,非常にオープンなスペースではありますが,その入りにくさは通りすがりに目で追いかけるのがやっとという雰囲気です。仮に用事があっても,一度足を止めると,また翌日に来る羽目になるでしょう。

 うーん,中学生の時にはじめてエロ本を買った時を思い出しますね。

 しかも,お客さんは誰もいません。

 私は,彼らの放った「貧乏人は来るな」オーラに強い向かい風を感じ,すっかり戦意を喪失しました。まさにATフィールド。この見えない壁を越えた人は,どれだけいるのだろうか・・・そこにあるのは屍です。

 最初から一人で入るのは無理とふんで,友人に一緒に来てもらいましたが,すっかり戦意を喪失した私は友人の方を見て「やっぱ無理だわ,せっかくだけど帰ろうか」と尻尾を巻いて逃げるつもりで横を向くと,いつもの間にやら彼女は私のはるか先を歩いてグングン店に近づいています。

 おいおいおい・・・と手を伸ばした時には,彼女はすでにお店の中にいました。なんと突入成功です。いやはや,カメラマンはファインダー越しなら怖いものがなくなるといいますが・・・

 やむなく私も彼女の後を追いかけて店内に入ります。

 お店には私と彼女の二人だけです。しかし明らかにライカを分かっていない人丸出しで,しかもお金の匂いの一切しない貧乏人であることが見透かされていますから,店員さんも無理に声をかけてこようとはしません。

 私も,カメラとレンズがいくつか展示されている程度だと見るべきものも少なく,店に入ったことを本気で後悔したほどでした。はっきりいって,秋葉原の真空管専門店の方が100万倍楽しいです。

 実は,レンズキャップやボディキャップなどのちょっとした小物が確実に手に入る場所として期待している所もありました。しかし,仕立ての良さそうな高価な革製のカメラケースがいくつかあった以外に,そうしたオプションのたぐいがあるような気配もなく,もしかすると言えば出てくるのかも知れませんが,そもそも尋ねにくい空気が充満しているので,はっきりいって電車で新宿までいった方が楽です。

 私は,はっとしました。

 このアウェイな感覚はなんだ,と。

 これをホームと思える人でないと,ライカを買う資格はないのか。その価値を認めるだけでは全然足りないというのか。

 無邪気に「これなに~」と私に聞く彼女の背中を押し,私は頭の中を真っ白にしながら,そそくさとお店を後にしました。撤退です。

 しかし,一矢報いたと思うのは,私たちが店に入った後,数人続けて店に入ってきたことです。みんな興味はあるんですね。入りたいとも思っているんですね。でも,やっぱり入りにくいのです。誰かがいればそれでも入りやすいんでしょうが,誰もいない所に入り込んでいくのは,二子玉川のような場所だからこそ難しいのです。

 窒息寸前で意識が朦朧としている私は,近くにあるカメラのキタムラに逃げ込み,NikonとPENTAXの中古品に囲まれ,その傷を癒しながら,「ここが私の居場所だ」とつぶやいて,2800円のレンズを買うかどうか迷っていました。幸せを噛みしめていました。

 真面目な話,銀座の直営店が出るとき,売れなくても儲からなくてもいいと言う事でしたから,ライカとライカのカメラを見てもらう機会を作る事,現在の顧客はもちろん将来顧客になりそうな人,あるいは顧客になる条件を備えた人の貴重な意見を吸い上げる場所として機能することが,最重要なのだと思います。

 すでにライカを持っている人,あるいはこれからライカを負う人にとって,サロンのような役割が期待されているのだと思いますが,ヨドバシやビックでカメラ自慢をするじいさんがこういうお店に吸収されてくれると,我々のような買い物客は待たずに買い物できるなと思いました。

 ただ,私のような人でさえ,ライカがとっても格好良く見えました。これは事実です。M8もM9も実にかっこよかったですし,無骨なS2も実物は流麗で,手に取ってみたくなりました。X1も展示がありましたが,写真よりもずっと格好良く,特に上からの眺めが実にいいです。値段によっては買ってもいいかなと思わせる魅力があります。

 レンズも双眼鏡も展示がありましたが,やっぱり高いです。ただ,その重厚さは手に取るまでもなく,見ているだけでも十分に想像が付きます。そして,フードが格好いい。ライカの角形フードはなんであんなに格好いいんでしょうね。

 かつて,ライカのM3は業界を震撼させ,特に「俺たちはライカに迫った」と勘違いをしていた日本のカメラメーカーを,完膚無きまでにたたきのめしました。

 ライカとM3に恐れをなした日本のメーカーは,しょんべんをちびりながら,ライカが手を付けていなかった一眼レフに逃げ込みます。ライカは王者の風格で,敗走する敵を追う事はしませんでした。

 しかし,ここで敵を逃がしたことが仇になり,大量生産技術と電子化技術でカメラを高級品から日用品にした日本のメーカーに,ライカは土俵際まで追い込まれてしまいます。

 ミノルタがライツと技術提携した際に,ミノルタの社長が恩返しのつもり,と言ったことはよく知られたエピソードですが,この時,果たして日本側に奢りはなかったでしょうか。

 自動車メーカーと同じく,資本が入れ替わり立ち替わり,そのオリジナリティを維持するのも苦しかった時代があったと思うのですが,Mシリーズをデジタルカメラのブランドとすることで明確なメッセージを発信した覚悟はすばらしく,今のライカは良いスタンスを保っているなあと感心しています。

 私の場合,一生オーナーになる事はないと思いますが,その輝きを失わず,今いる顧客を大事にして,写真の歴史と文化にこれまでと同じ足跡をきちんと残して欲しいと思います。

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