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2021年05月の記事は以下のとおりです。

DCCデコーダを手作りする

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 安価な製品の入手が現実的に難しい中,実質的に倍近い値段になってしまったDCCデコーダをなんとかしないといけないと,意を決してDCCデコーダの自作をやってみることにしました。

 かつて,海外のサイトで自作デコーダの回路とファームウェアが掲載されていて,私もこれを作ってみたことがありました。PIC16F84Aという懐かしのマイコンにディスクリートのフルブリッジを組み合わせてあります。

 PICは面実装品が手に入ったのですが,三端子レギュレータはTO-92の78L05でしたし,Hブリッジは配線ミスで火を噴いてしまい,面倒になってパワーオペアンプを使うことにしたせいで小型化できませんでした。

 動いたとはいえ,PWMの周波数が低かったらしく滑らかさな動作が出来ませんでしたし,結局高く付いたこともあって,1つ作っておしまいにしました。

 あれから15年,えらいもんですね,日本の方が実用になる小型のデコーダをちゃんと継続的に作ってらっしゃいます。多くのフォロワーがいて,実績もたくさんありそうです。

 私もこの回路とファームウェアを,そのまま利用させて頂く事にしました。

 こういう場合問題になるのは基板で,この方は親切に専用の基板を頒布なさっています。それでも部品代の合計が500円程度に収まるというのですから素晴らしいのですが,私の場合万能基板で手配線することが楽しく,それこそ電子工作の醍醐味と思っている変わり者なので,秋月電子で面実装用の万能基板も合わせて購入しました。

 20セットくらい作る事が出来ればと思ったので,ざっと10000円ほどの部品代を支払って待つこと数日,届いた部品を早速確認して,組み立てを始めます。

 基板を細長く切り出し,ここに4つの主要ICを並べていきます。ブリッジダイオードと三端子レギュレータが上手く配置できずに悩んだのですが,ブリッジダイオードを裏返してハンダ付けという禁じ手でしのぎました。

 基板を起こさず,万能基板で作るというのは手間がかかって大変ですし,ミスもしがちです。ですが,好きな大きさと形で作ることが出来るので,いわば車両ごとにカスタムメイドできます。

 ということで,部品を一列に並べた細長いものをまず1枚。少し小さく作って7枚,基板の切れ端を使って両面貼り合わせで超小型を2つ,正方形に近いものを3つ,合計13個を作ってみました。

 万能基板を使うと,パターンの面積を考えずに済みますので,場合によってはかなり小さく作る事も出来ます。写真にある超小型のものは電源で1枚,マイコンとHブリッジで1枚の基板を貼り合わせて作ったもので,これってDZ123よりも小さいです。

 長細いものでも片面ですので,DZ123の半分以下の分厚さです。Nゲージはスペースが厳しいのですが,特に隙間がないので,小さい事も大事ですが薄いことも大事です。

 注意しないといけないのは,ランドを一部剥がしておかないといけないことです。三端子レギュレータは背面のフィンと2番ピンが繋がっているので,背面にハンダが回ると予期しないところが繋がってしまいます。

 同じ事はHブリッジにも当てはまります。Hブリッジの底面には放熱のために金属が露出しています。ここはどの端子にも繋がっていないので放熱も考えてそのままにしていたのですが,2,3,6,7番ピンのランドにかかってしまい,ショートするという問題が発生して困ったことがありました。

 こういうICは放熱しないと性能を発揮しませんので悩んだのですが,上手くショートの方が深刻だと考えてランドを剥がすことにしました。

 で,電気的な性能ですが,Hブリッジにしっかりした保護回路があるので,ミスによって焼損することが今まで起きていません。これは助かります。

 小さいですが駆動能力も大きく,発熱も小さいです。LEDなら直接駆動出来るファンクション機能もあるそうです(私は使っていません)

 欠点は,まず加速率と減速率が設定出来ないこと。DZ123を含む多くのデコーダは,加速率と減速率を設定出来ます。私もこれをすべての車両で設定しているのですが,この自作デコーダは設定出来ないです。

 あと,BEMFが使えません。これはDZ123にもないので仕方がないのですが,EM13には搭載されている機能で,しかも効果絶大ですので,ぜひ欲しい機能です。

 そうそう,ちょっと気になる事があります。グリーンマックスの旧型の動力ユニットなんですが,どうもガクガク動いてしまうのです。3つある同じ製品のうち,1つは問題なし,1つは注油で改善,しかしもう1つはどうしても改善出来ませんでした。

 集電不良かと思って何度も磨いたりしたのですが,デコーダに直接電源を入れてもギクシャクします。

 モーターを直流電源に繋いでみればスムーズに回転するのでモーターの問題ではないでしょうし,DZ123にすれば綺麗に動くのできっとデコーダの性能なんだろうと思っていました。

 しかし,スムーズに動く動力ユニットもあるので,これはおかしいと考えて調べたところ,直流では上手く回るモーターも,PWMではギクシャクするものがあるとわかりました。

 試しにユニクリーンオイルをブラシに注油すると,ウソのようにスムーズに回り出します。モーターが汚れていて,高速回転では上手くPWMについて行けないのかも知れません。

 しかし,トミックスの旧製品のモーターで試すと,今度はユニクリーンオイルでもダメ。正常に回転する回転数がどんどん低下しています。

 そこで,パーツクリーナでモーターを洗浄してみたところ,かなり改善されました。PWMでは上手く回らないこともあるんですね・・・

 それと,やっぱりモーターに注油は御法度みたいです。綺麗に洗浄した方がずっと上手く回ります。モーターといえばミニ四駆で,あちらの世界では注油は普通に行われているようなのですが,おそらく数年もすると上手く回らなくなるんじゃないのかなあと思います。

 まあ,文句があるなら自分で設計せんかい,という話で,加速率も自分でソースをいじって書き換えようかと思ったのですが,ROMサイズに収めるのが大変そうでしたし,面倒だったのでやめました。

 ということで,DCCデコーダが500円で出来ました。DZ123である必要も,EM13である必要もない車両はこれに置き換えていこうと思います。これでデコーダの入手と価格の問題は,とりあえず解決です。

 

DD54とC57とDE10とキハ81とキハ181

 連休を挟んで,Nゲージの集中作業を行っています。ナンバープレートも取り付けず,DCC化も行っていない,購入したままの車両もいくつかあり,これを片付けてしまいます。

 DD54はカトーのブルートレイン牽引期です。Hゴムの後期型です。ポンつけできるデコーダもありますが高価ですので,DZ123を使うことにします。

 もともとのライト基板にDZ123を取り付け,天井の部分をくりぬいてしまえば完成です。ライトLEDに抵抗を入れ忘れて燃やしてしまったのはここだけの話です。

 後はカトーのキハ81とキハ181です。これはEM13とFL12を使えば無改造ですので,簡単に終わります。10年前なら手に入った安い室内灯は入手出来ず,倍の値段になったLEDタイプの室内灯を奢って,これらも完成です。

 さて,これで一段落かと思いきや,トミックスのC57とカトーのDE10(暖地型と寒地型)の3つが発掘されました・・・

 C57はテンダにEM13を組み込みました。EM13はファンクション機能がない代わりにBEMFがありますし,安かったので私は多用していたのですが,最近は値上がりと入手が難しくなっているので,大事に使わないといけなくなってきました。

 DE10は苦労しました。DZ123を使うのですが,キャブの下あたりを削って場所を確保するのが一苦労。配線をして完成したと思ってもキャブの組み立てに失敗したりして,なかなか大変でした。

 先に暖地型を片付け,次に寒地型を改造しますが,壊してしまったのか後ろのLEDが点灯しません。デコーダを交換して完成しましたが,壊れたDZ123の修理を試みてモーターの駆動回路も壊すという失敗をやらかします。

 その後頑張ってなんとかモーターの駆動と片側のLEDは復活させましたが,もう片方は点灯しません。どうもPICマイコンのポートを壊してしまったようです。

 DE10の寒地型は,手が滑って落下した時にスノープラウとステップを壊してしまいました。修理も接着に失敗してしまい,結局部品を買い直しました。

 さて,DZ123を3つも使うことになるので,これらを電車のモーター車に使っているDZ123から外して対応しました。電車ですのでファンクション機能は必要ありません。EM13で十分なのですが,旧製品の動力車はEM13もポンつけ出来ません。

 しかし,改造は比較的楽で,117系,キハ25,103系をEM13に交換しました。

 ただ,EM13も今や貴重品。ストックがそれなりにあるのですが,例えばグリーンマックスのキットの動力車などにEM13はもったいないですから,なんとか良い方法を考えなければなりません。

 そもそも,安いデコーダーが入手出来なくなっていますから,1両あたり5000円の予算を見込む必要があります。これは高い。

 EM13なら2000円でしたからね,なんとかしないといけないということで,考えたのが自作です。

 ということで,一気に電子工作の世界に突入です。以下次号。

温故知新のエコノミーキット

 ということで,久々に気合いの入った模型作りが終わってしまいました。やっている間は夢中になってやっているわけですが,終わってしまえばぽっかりと穴が開いたような気分になってしまいます。うう,模型ロスです。

 塗装の用意も残してありますから,ここはもう1つ,キットを作ってみましょう。

 実は自動車のプラモデルが4つほど積みプラになっているんですが,それはちょっと大変そうなのでパス。スーパースムースクリアーの練習も兼ねて,やはり鉄道模型を選びたいところです。

 そうなると,手軽に安く組めるキットとして長年親しまれているあれですね,そう,グリーンマックスのエコノミーキットです。

 あっけなく組み上がり,しかも安く,かつてはどんな模型屋にもぶら下げてあった定番キットですが,なけなしのお小遣いから,ガムもアイスクリームも我慢してひねり出した数百円で買ってきたキットをワクワクしながら組み立てた子どもたちが,出来上がった目の前のねずみ色一緒の小さな電車に唖然とし,しかも台車が別売りと知って奈落の底にたたき落とされるという,そんな経験をかつて味わったモデラーも多いんじゃないでしょうか。

 完成までは誰でもたどり着くものの,そこから先の完成度の向上はまさに底なしで,やってもやっても終わりが見えずまさにエンドレスです。

 作成例をゴールと置いてもなかなかそこにたどり着けず,あちこちに落とし穴が潜んでいます。うっかりしているとリカバー出来ないミスも出るので気を抜けません。

 私もかつて近鉄の車両をエコノミーキットで作りましたが,なかなか手強く,今見てみると恥ずかしいくらいの完成度です。

 今回はそんなに頑張らず,習作というくらいの気軽さで作ってみたいと思います。

 選んだのはオハ35の2両セット。1500円ほどで売られています。半切妻のものしか買えなかったのですが,これは予想通り,後に組み立てと塗装に手こずることになります。

 台車は別売りで2両分で1000円ほど。合計2500円で2両ですので,1両あたり1200円ほどとなりますが,特に台車の値段が上がったこともあって,これが安いかどうかはちょっと微妙になってきました。

 いやいや,模型作りというのは,作っている過程を楽しむ趣味です。金額の大小を論ずるのは野暮というものです。

 ということで早速作って行きます。板キットですのでランナーから丁寧に切り離し,ヤスリで綺麗に仕上げて接着。以上!でも,本番はこれからです。

 床下は説明書を見ながら部品を選んで丁寧に接着。細かい部品が多いので難しいです。

 一番の難関は屋根です。ベンチレータを取り付ける穴がなく,所定の位置にただ接着するだけのものですので,場所を決めるのがまず大変。作った2両でズレていたら格好が悪いですし,さらにいうとカトー製のオハ35とズレているのもみっともないです。

 この,カトー製のオハ35を基準に,実測して場所を決めて接着しました。しかし,ベンチレータもシャープさがなく,その甘さに時代を感じさせます。

 それぞれ別体で塗装してあとで組み立てることも考えましたが,屋根とボディは先に取り付けないとあとで隙間を埋められません。それに,今回のオハ35は半切妻ですので,車端部は塗り分けが必要ですので,先に組み立ててしまいます。

 出来上がったらさっとペーパーをかけて,プラサフを塗ります。これで隙間や修正箇所に気が付きますので,そこから本気で修正です。やはり車端部が難しく,ここの段差をなくしておく事が大変でした。

 作業効率を考えて,今回のパテは光硬化型をメインに使いました。これ,紫外線で硬化するので,太陽光や蛍光灯を使うのですが,お日様をあてにすると夜は作業が止まりますし,蛍光灯はピンポイントで光を当てることが出来ませんので,ほとんど使ってきませんでした。

 しかし,紫外線硬化樹脂に付属していた紫外線LEDを使ったハンディタイプのライト思いだし,これを使うとなんとまあ便利なことか。僅か30秒で硬化して,作業を続行できます。DE50でも試験的に使ってみましたが,塗装中にさえその場でさっと修正できる対応力の高さに感激しました。

 ということでこれをメインに使って修正をしていきます。板キットならではのバリやヒケもあり,完全ではないにせよ,気付いたところは妥協しないで数日かけて修正を行っていきます。

 気が済んだら(そう,気が済んだらです)塗装です。先にマスキングを行って,屋根とボディの塗り分けをします。車端部は難しい曲面を塗り分けることになるので,吹き込みが心配です。しっかりテープを貼り付けて,エアブラシも弱めに吹き付けましょう。

 今回はグリーンマックスの鉄道カラーではなく,評判のいいガイアカラーのぶどう色2号を使ってみました。評判通り粒子が綺麗ですし,発色もいいです。そして色の再現性も高く,メーカーの完成品に並びます。

 今回は塗装にも大きな失敗はなく,後でタッチアップを行ってからクリアを吹き付けます。窓ガラスを接着し,黒で塗装した床下にウェイトを組み込んで組み合わせ,台車を取り付ければ完成です。

 うーん,仕上がりそのものは悪くないですし,これだけ見れば良くやってるなと思うのですが,やはりカトーのオハ35に連結して走らせてみると,安っぽさというか完成度の低さが目立ちます。

 板が薄くて華奢な感じがするのは,実車がそうだから別にいいと言う考え方もあるでしょうけど,やぱり旧型客車の重厚感がこのキットにはないように思います。

 特に大きな失敗もなく無難に完成したオハ35。どこら辺で手を引くかという妥協で完成度と製作時間が変わってくると思いますが,最終的な完成度から考えると,潔く完成品を買った方がよいかもなあと思ったりしました。いやですね,大人というのは。

 ああ,歳は取りたくないものです。

 

DE50落成

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 先日から復活した鉄道模型,その理由の1つに,DE50のキットを組み立てるというのがありました。

 かのワールド工芸から2016年に発売になった時には,まさかこれがキットになるなんてと驚いた物ですが,かつてはDE10とDD51を使ってスクラッチするかと思っていたほどでしたので,速攻で購入したのでした。

 ただ,引っかかったのは,プラスチックとエッチングのハイブリッドのキットであったことでした。すべて真鍮で出来たキットならと思ったのですが,プラスチック,それも不慣れなABSですので,どうも上手く作れそうな気がしないのです。

 その上,私が買ったのは動力ユニットも自作するクラフトキットなるものであり,走行用の線路がなければ作る事が出来ません。すでにレイアウトを分解してしまっていた私にとって,線路の準備が最大の問題だったのでした。

 レイアウトを組み上げた現在,もうDE50から逃げる理由を失ってしまい,あまり気が進まない中で部品の確認をしたところ,エッチングパーツが曲がっているのを発見,ここでくじけてしまいそうになりました。

 ですが,そこは冷静にワールド工芸に連絡し,部品を分けてもらう相談をすることにしました。破損した部品を1つだけ分けてもらう事は出来ず,エッチングパーツ丸ごとを買うことになったのですが,ともあれ4月上旬にはすべての部品も揃いました。

 ところで,DE50ってなんだ?という人もいると思いますので,簡単に紹介しておきます。

 DE50は1972年に1両だけ製造された,国鉄の大型ディーゼル機関車です。当時は本線用の大型機としてDD51が量産されて全国で活躍していましたが,2000馬力級の大型機の初号機みたいなもんですから,問題点も残っているし,その後開発された新しい技術を使えばもっとよくなるというものもあったりするので,それらを一気盛り込んだ最新鋭機を作りましょうという話になったのです。

 DD51の最大の問題は,エンジンが2つ搭載されていたことです。DD51はエンジンや変速機,足回りもすべて2セットもつ機関車で,いわば1000馬力の小型機を2台くっつけたような構成です。これでは大きく重くなるので運用線区に制限が出ますし,製造はもちろん,保守や点検にもお金や手間がかかります。

 そこでエンジンを1つにして,駆動系も1つにまとめてしまいたいのですが,DD51の後継機にするには2000馬力のパワーが必要です。当時は1350馬力のDE10が精一杯だったわけですが,DD51のV12エンジンに4気筒追加してV16にて2000馬力のエンジンを作る目処が立ち,その大出力を受け止める液体変速機も開発に成功,足回りはDE10で実績のある軸重と横圧の軽減と高い粘着力を持つAAA-Bという軸配列を採用して,当時の最新技術を結集したディーゼル機関車の集大成として誕生したのが,DE50です。

 DE50は試作機ではなく,量産機として誕生しているので,トップナンバーは1です。試験の後,営業運転もスタート,それまでDD51では厳しかった亜幹線で大型機の運用が実現し,開発陣の面目躍如となったわけですが,鉄道貨物の需要減少,客車列車から電車や気動車への移行,そしてオイルショックとディーゼル機関車に吹き始めた逆風にはあらがえず,量産に移行する事なく,1両だけが製造されたにとどまりました。

 DD51との協調運転を行う機能も持っており,かなり柔軟な運用が可能な万能機だったのですが,1両限りというのはなにせ現場には嫌われるもので,ある時圧制した故障をきっかけに運用から外れ,廃車されました。

 私は国産にこだわる人ではないので,純国産技術にそんなに価値を感じないのですが,ドイツ本国では故障も少なく現場で重宝されたロングセラー機であったのに,その技術を日本に持ち込んで作ったDD54があの体たらくだったことを考えると,純国産のDE50が50両ほど配備されたらどんな風になっていたかなと,ふと思ったりします。

 DE10をそのまま引き延ばしたような外観で,特徴あるセミセンターキャブですが,長い方のボンネットにはV16,81400ccの巨大なエンジンが1機格納されています。これで2000馬力ですからね,音を聴いてみたかったものです。

 台車はDE10とほぼ同じで軸配置もC-BではなくAAA-Bですが,左右のラジエータは2倍の面積を持ち,空冷ファンも2台が前後に並んでおり,大型機に相応しい迫力があります。

 運用は伯備線を最後に,廃車後は津山に長く留置されて非公開とされていましたが,有志が保存に務め,やがて正式に保存機となり公開されるに至りました。

 少し前までは知る人ぞ知る機関車だったのですが,近年は広く知られるようなり,勝手に留置場に侵入してくるマニアもいたらしく,今は展示の目玉として大事にされているというお話です。

 EF500-901もそうですが,こういう技術的な理由以外で日の目を見なかった鉄道車両というのは私は大好きで,ぜひDE50も自分のレイアウトを走らせたいと思っていました。それでスクラッチを考えていたところへ,まさかのキット発売だったのです。

 しかし,それから5年,模型を作るために必要な気力,体力,技術,そして道具と材料のすべてが失われており,作り始めるには想像以上の手間がかかってしまいました。

 まずは動力ユニットの製作です。しかしここでも問題発生です。なんとエッチングパーツを切り離すニッパーがありません。そこから買い直しです。

 金属に塗装するためのプライマーもありません。ABSも使いますので,これは今どきのモデラーに常識であるミッチャクロンマルチを導入します。

 勘を取り戻しながらのつたない作業ではありますが,なんとか動力ユニットは完成,どこにDCCデコーダをおさめるか,考えながら走行試験を行います。

 次にボディです。ABSの接着剤が必要ということなので,20年前にはなかったABS用接着剤を購入。臭いといい粘度といい,プラモデルに同梱されていた小型チューブに入っていた接着剤そっくりです。

 すぐに固着しない接着剤で,なかなか苦労しながら組み立てて行きます。キャブと前後のボンネットを接着すると塗装が大変なので,ここは分割して塗装です。

 側面の複雑な造形や空冷ファンの表現は緻密なエッチングパーツを貼り付けます。G17クリアで接着するのですが,手持ちのG17クリアがもう古くて,粘って粘って大変です。

 ある程度組み立てたところで塗装ですが,先にミッチャクロンマルチを軽く吹き付けておきます。そして,あらかじめ固着しかかったグリーンマックスの鉄道カラーを薄め液で溶かしておいたものを引っ張り出し,実車の写真を見ながら色合わせと塗り分けの確認です。

 グリーンマックスの朱色4号は似ていないというのがモデラーの定説で,私はこれに京急バーミリオンを混ぜて使っています。これ,明らかにたらこ色なんですが,白帯を入れると不思議と朱色4号っぽく見えるので不思議です。

 グレーはニュートラルグレーですが,私が基準とするトミックスのDD51(HG)のグレーに比べて,やや濃いようです。

 DE50は白帯が一周しておらず,キャブだけにあります。これも特徴的です。このキットでは,帯とナンバープレートはエッチングパーツを貼り付けることになっていて,曲げてから白で塗装することになります。

 ・・・そして,いよいよ,目をそらすことが出来なくなってきました。実際の塗装をどうするかという問題です。

 もちろんエアブラシを使うのですが,一人暮らしの時に作っていた自作の塗装ブースはすでに捨ててしまいましたし,あれでは家族からの非難が殺到しそうです。そこでまずは塗装ブースの手配です。

 定番のタミヤかクレオスと思っていましたが,ここはエアーテックスのレッドサイクロンに決定。騒音が大きい以外に悪い評判を聞かないこと,値段が下がっていたことでこれに決定です。当てにしてなかったLEDライトは非常に便利で,うれしい誤算でした。

 次に目に入ったのは,コンプレッサーです。数年前から,時々中国製のコンプレッサが安く高性能だという評判を聞いていたのですが,私はタミヤのREVOを使っていたので,気にしないでいたのです。

 しかし,本格的な模型作りをするにあたって,20年選手のREVOはいつ壊れてしまうからわかりません。壊れてから慌てるのも嫌なので,いい物があったらこの際買ってしまいましょう。

 すると,1万円ほどでタンク付きのコンプレッサーがあります。ハンドピースは買い換える必要がなかったのですが,コンプレッサー単品とハンドピースのセット品とではコンプレッサーが異なり,セット品の方が静かというレビューを信じて,セット品を買いました。

 11000円ほどでしたが,これならハンドピースはオマケで付いてきたと思っても十分ですよね。一切,付属のハンドピースは使い心地も悪く,使う気も起きずにそのままです。

 次の問題は塗料です。まずプラサフですが,これも今は番号できめの細やかさを選べるんですね。いい時代です。クリヤー塗装も悩ましく,以前はスーパークリアーUVカットを使っていましたが,今はいろいろあるようで迷います。スーパースムースクリアーのつや消しに,スーパクリヤーIIIを混ぜて使ってみようと思っています。

 これらが相次いで届き,もう言い訳無用になったところで,塗装ブースを設置です。屋根裏の倉庫にブースを設置,排気用の換気扇にダクトを取り付けて排気します。

 コンプレッサーも想像以上に静かで,REVOと同じくらいです。パワーもありますし,タンクがあるので脈流も少なく,しかも圧力が上がればコンプレッサーは自動停止しますから,連続使用時間も延びますし,これはいい買い物をしました。

 プラサフを吹き,まずは白を塗り,次に朱色4号を塗ります。マスキングしてグレーを塗り,最後に黒で塗装は終了。でも楽しい作業なので,ついついのんびりやってしまいます。1色あたり2時間かけてしまいました。

 その後最終組み立てを行います。手すりやサッシを取り付けていきますが,このあたりから急激にそれらしくなっていきます。筆でレタッチを行って整えて行きますが,最後にクリアーを塗装してボディは完成のはずでした。

 ところが,まさかのクリヤー塗装に失敗。表面はザラザラ,黒い部分は白っぽくなってしまい,隙間には白い粉が溜まっています。

 塗料の調合や濃度を調整してリカバーを試みますがすべて失敗。これほどクリヤー塗装って難しい物かと頭を抱えましたが,これまでと変わったのはコンプレッサーです。圧力が大きく吐出量も大きいのですが,さっと吹いてさっと乾かし,何度も重ねることを心がけたこともあり,どうも空気の吐出量が大きすぎて,表面に載る前に乾いてしまったようです。

 どうしようかと迷ったのですが,ここは面倒くさがらずに可能な限り後戻りが鉄則です。手すりなどを取り外し,キャブとボンネットと台枠を分解して,白い粉の吹いてしまった黒い部分はガンダムマーカーエアブラシシステムでさっと塗り直しました。

 同時にオレンジやグレーの部分もタッチアップして,綺麗に修正をした後に,今度は分解した状態でつや消し塗装を試みます。

 今回はエアーの吐出量を少なめにした上で,スーパースムースクリアーつや消しのみを吹き付けることにしました。

 鉄道車両というのは,実物はつやあり塗装を行います。しかし自動車と違って磨き上げることをしませんので,数日もすると半光沢になりますし,廃車されて放置されればつや消しになってきます。

 なので,つやの調整は個人的には非常に難しい調整の部分だと思っているのですが,新製時を再現することを基本とするうちの鉄道模型も,あまりテカテカではリアリティが出ませんし,かといってつやを消すと軍用車両やメンテされていないボロボロの車両になってしまうので,半光沢を狙っていく必要があるのです。

 このあたり,さすがにKATOやTOMIXは心得ていて,うまい表現を安定的に行っています。

 私もかつてはスーパークリアーを調合し,独自のつやになるようにしたものをボトルに入れておいたくらいなのですが,それでもメーカー品の塗装のつやの表現には及びません。

 今回,スーパースムースクリアーがどのくらいの物かを確かめせずにいきなりつやありのクリアーを混ぜて失敗しているので,今回は混ぜることなしに,純粋なスーパースムースクリアーだけで試しました。

 すると,これが非常に良いのです。メーカーの塗装と同じレベル,あるいはそれ以上の質感です。ガンプラのような架空の存在か,衣服の表現に使って好印象というレビューばかりが目に付き,鉄道車両への応用はあまり語られていないように思うのですが,私が試したところ,非常にリアルで,しっとりとした質感が重量物である鉄道車両にマッチして,重量感も出てきます。(つやありはどうしてもプラスチッキーになりがちで,オモチャっぽくなったり,重量感がなくなったりします)

 結果として,いろいろ迷走しましたが,うちはスーパースムースクリアーつや消しで行くことにします。ちょっと特殊な塗料なので,ディスコンが怖いです・・・

 今回は綺麗に吹きつけも出来ましたし,キズもタッチアップの跡も目立たなくなっています。

 満を持して組み立てを行い,手すりなども綺麗に取り付けて,いよいよ完成,のはずだったのですが,あろうことかグレーのタッチアップ時に筆がキャブの側面に触れたらしく,汚れてしまっていました。

 エナメル溶剤では拭き取れず,アルコールでは取れたのですがスーパースムースクリアーも溶かしてしまったので,結局やり直し。キャブだけ取り外してスーパースムースクリアーを塗り直しです。

 今回こそと,慎重に組み立てて,ボディは完成です。

 一方,動力ユニットはDCCデコーダをどう搭載するか考えておきます。電車用のEM13が安くて,しかもライト点灯をしないので好都合なのですが,大きさがどうしても入りません。そこでDZ123を使いますが,これも厚みが少し厳しくて,ボンネット内には収まりません。

 キャブに入れるしかないのですが,キャブも案外狭くて綺麗に収まりません。しばらく悩んだのですが,DZ123の端っこの厚みのある部分だけをキャブ内に逃がし,あとはボンネットに納めることにしました。

 最初に取り付けたデコーダが故障品であることを見逃してしまい,動かずに四苦八苦したのは内緒ですが,新しいDZ123にすれば問題なく走行しました。よし,これでいけそうです。

 そして連結器。これは結構私は軽く考えていたのですが,アーノルトカプラーではない別のカプラーを取り付けるには,結構加工が必要になりました。それでも勾配を登るときには,連結が外れてしまいます。解決は難しく,このままとします。

 そして最後に足回りとボディを組み合わせて,試運転です。

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 走行系も自分で作る必要があるクラフトキットですが,上手く走ってくれています。前後ともスムーズですし,脱線もしません。ボディも今の私にはこれ以上のレベルは無理だと思います。手はかかりましたが,今出来ることは全部やったという気がします。

 客車を牽引させてみますが,連結器に問題があること以外は大丈夫。幻のDE50による列車が目の前で走っていることには,なかなか感動的なものがあります。

 今回のキットはABS製のプラ部品と,エッチングパーツの組み合わせによるキットでした。鉄道模型ではこうしたキットは珍しいと思うのですが,自動車や飛行機のプラモデルには時々見かけるものです。

 とはいえ,これほどエッチングパーツを多用するキットはあまりないと思いますが,このキットではラジエータの細かいディテールやの再現に適したエッチングパーツと,曲面の再現に長けたプラスチックのいいとこ取りを狙っていて,上手く作ればメーカーの完成品に迫る仕上がりになると思います。

 さすがにワールド工芸だけあって,エッチングパーツは手慣れたもので,破綻がありません。手すりなどもエッチングで作ってありますので,実に精密な印象です。

 ただ,プラスチック成形品の精度がいまいちで,気を付けて組み立てないと隙間が出来てしまいます。私もキャブの組み立てに問題があって,塗装前に修正するのが大変でした。

 あと,前後の手すりがちょっとなあと思いました。エッチングパーツですので複雑な形状の再現は難しいとしても,チェーンが省略されているのは残念でした。

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 つくづく模型というのは,手をかければかけるほど仕上がりが良くなっていくもので,妥協すればそこでもうおしまいというのを実感した製作でした。失敗しても後戻り出来るし,後戻りした結果以前よりもずっと良くなることもしばしばあります。失敗をネガティブにとらえず,永く楽しむ時間をもらったと思って取り組むといいのかも知れないですね。

 とまあ,特に塗装は準備に手間もかかりますし,あまり間が開くと腕が落ちますので,もう1つくらいなにか作っておきたいところです。

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