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2015年03月の記事は以下のとおりです。

化学調味料で一発逆転

 我々ファミコン世代にとって化学調味料とは,禁断の毒物でした。多くは親,それも母親にすり込まれたものなわけですが,子供がゲーム脳なら親もまたゲーム脳だったと,つくづく思います。

 手放しに化学調味料を賞賛するのも,また否定するのも誤りで,どんなものでも,食べ過ぎは体に悪いものです。過ぎたるは及ばざるがごとしとは,まあよくも言ったものだと思います。

 その昔,味付けは海水で行われていたそうです。お米を炊くのも,魚を焼くのも,海水を使っていたという話なのですが,さすがに面倒なので海水の主成分である塩を抽出して,これを料理に使うようになったのが現代です。

 厳密に海水には塩化ナトリウム以外にもいろいろなものが溶け込んでいるのですが,海水を再現する調味料としてそれらを調合するという話はなく,やっぱり塩化ナトリウムが基本調味料として,世界の食卓に君臨しているわけです。

 こうすることで,いちいち海水を用意しなくて良くなったのですが,純度の高い塩化ナトリウムにしておくことで量の調整が確実に出来るようにもなりました。これは食品工業において,特に大量の食品を生産する場合に必須となるものです。

 また,塩という切り口だけで見れば,それは塩化ナトリウムであれば作り方はなんでもいいわけですから,海水を煮詰めて作る以外に,塩田に蒔いてもいいし,イオン交換樹脂を使ってもいいのです。

 同じ理由で,いちいち昆布や鰹節からダシを取っていたら,手間も時間もお金もかかって大変なので,これらから抽出し純度を高めた「うまみ」成分を使うようにすれば,料理がとても楽になり,しかも美味しく出来るようになるわけです。

 また,塩と違ってうまみ成分というのは複雑な構造をしていますから,海水を煮詰めて終わりとか,岩塩を掘り出して終わり,というわけにはいきません。

 ですが,昆布や鰹節から取り出すと手間も時間もかかって,うれしくありません。だから,うまみ成分を特定し,これを別の方法を駆使して安価に大量に,安定した品質で作る事が出来れば,大変にありがたいわけです。

 天然のダシからうまみ成分を特定し,高純度なものを作ることのメリットは,量の調整が確実にできる,安く作る事が出来る,僅かな量で硬い効果が得られる,ということになるわけです。

 うまみと塩味を同じレベルで話すことに無理があると思う人もいるでしょうが,その話も2004年までの議論です。2004年には,味を感じる受容体に,うまみ成分で信号を出すものが'発見されました。塩からい,甘い,酸っぱい,苦い,という4つの独立した味覚に,第5の味覚として「うまみ」が組み込まれたのです。

 ということで,私にとって化学調味料は,塩や砂糖と同じです。塩も砂糖も,食べ過ぎると体に悪いでしょう。同じ事です。味の素の大さじ一杯を昆布から摂取しようと思ったら,非現実な量の昆布を食べないといけません。

 自然の力が優れているとすれば,含まれている量が少ないから危険なほど大量に摂取するのが不可能になっているということでしょうか。そう考えると人間は,そのリミッターを解除することを「テクノロジー」と呼んでいるという事になるでしょうね。

 化学調味料は,すでに様々な食品に使われていますから,すでに食べない生活を長期間続けることは,不可能です。また,おいしいと思う食べ物には概ね化学調味料が使われているので,好むと好まざるにかかわらず,化学調味料を使って作った味が,現代のおいしさの基準になっていることも,認めざるを得ないでしょう。

 これで体に悪ければ話は別になるのですが,体に悪いかどうかはその分量で決まる世界であり,ここに気をつけて上手に使えば,料理が美味しくなること間違いなしです。

 事実,化学調味料を否定し,これを使わない家庭料理の,なんとまずいことか。あるいはなんと手間のかかることか。食品添加物には化学調味料以外にもたくさんのものがあり,それこそ体に悪そうなものも多いわけですが,手間がかかることで外食の回数が増えたり,冷凍食品や出来合いの総菜を使う機会が増えてしまうなら,保存料などの食品添加物が山盛り入ったこれらを食べる方が,よほど問題があると私は思っています。

 で,私は以前から,安いという理由で味の素を多用していたのですが,投入する分量が難しく,効果のある分量が非常に狭いことが経験的にわかっていました。ちょっと入れるだけで大幅に効き目が変わってくる,適量の範囲が非常に狭い,とてもピーキーな特性です。

 昆布だとたくさん使わないといけないですから,分量の多少の多い少ないが最終的な料理の味に影響することはほとんどありません。しかしうまみ成分そのものである味の素は,ほんのちょっとで自然界では考えられないくらいの「濃度」に出来るんですね。これが難しいのです。

 プロは,大量に作りますよね。だから化学調味料も大量です。多少の多い少ないでは,味にそれほど影響を与えないわけです。家庭料理はそうはいきません。

 入れすぎた化学調味料はどうなるかというと,うまみを感じる受容体以外の受容体にむりやり入り込み,ここでおかしな味として認知されることになります。化学調味料独特の薬品っぽい味とか,えぐみとか,ああいう不自然さは,入れすぎによるものです。

 話を戻しましょう。

 私も夕食を作る担当者になっていますので,手早くおいしく安価に,しかも毎日作ることを求められています。化学調味料を否定していたら,とても回りません。それなら積極的に使おうと,いろいろ検討してみました。


(1)うまみについて

 うまみと一口にいっても,いろいろあります。人間には「うまいな」と思う物質が複数あるという事なのですが,それぞれ感じ方が違います。

 また,よく知られた事実として,混合した方が単独で使うよりも強く味を感じるというのがあります。お砂糖にちょっと塩をいれると甘さが強くなることを経験している人は多いと思いますが,うまみもしかり。グルタミン酸とイノシン酸を一緒に食べると,単独で食べるよりも強くうまみを感じるのです。


(2)うまみ成分の種類

 うまみ成分には複数あると書きましたが,大雑把にいうと,こんな感じです。

・アミノ酸系・・・グルタミン酸
・核酸系・・・イノシン酸,グアニル酸
・有機酸・・・クエン酸,コハク酸

 核酸も有機物だよとか,そういう中学生レベルのツッコミは却下です。


・グルタミン酸

 グルタミン酸は,昆布だしの主成分です。かの池田菊苗先生により発見され,うまみを司るものとして世界に知られるようになった,記念碑的物質です。

 私がすごいと思うのは,世界共通で誰も否定することのない,塩辛い,甘い,酸っぱい,苦いの4つの味以外に,もう1つ「うまみ」を追加しようと考えたことです。これを明治時代にやってるんですから,なんという自信かと思います。

 そこから100年以上時間を経て,本当にうまみを感じる受容体が発見されて,味覚は5つだったことが証明されるわけですから,もう脱帽です。

 で,池田先生は昆布からグルタミン酸を抽出したのですが,その後小麦のグルテンを加水分解したり,石油から合成とか,紆余曲折を経て,今はグルタミン酸を生成する細菌にサトウキビの絞りかすの糖分をエネルギーとして与え,温度と酸性度を管理して発酵させ,大量に安価に安全に生産しています。

 このグルタミン酸(実際にはグルタミン酸ナトリウムですが)を商品化したのが味の素です。大企業になりましたが,もとはこのグルタミン酸を調味料として生産して販売するために立ち上げられた会社です。

 そして今も,味の素の看板商品は,味の素です。


・イノシン酸

 イノシン酸は核酸系のうまみ成分です。食品添加物としては「アミノ酸等」と書かれるし,同じ核酸系のグアニン酸と区別されないという可愛そうな物質ですが,これは鰹節のダシの主たるうまみ成分です。

 今調べて分かったのですが,致死量LD50が,14.4kg/kgなんですね。これ,60kgの大人だったら,860kg食べると半分が死ぬよと言う意味ですから,やっぱり食べ過ぎは毒なんですね。

 
・グアニル酸

 これも核酸系のうまみ成分です。同じ核酸系のイノシン酸と一緒にくくって「核酸系」とすることも多く,区別されない場合も多いようです。

 ですがグアニル酸は,シイタケのダシ由来の成分です。

 区別しないのか,区別出来ないのかはわかりませんが,どうも製法上一緒に出来てしまう,別々に分けることが出来ないということではないかと思います。
 
 どっちにしても,イノシン酸とグアニル酸は一緒に食べると,うまみがブーストするそうです。ただ,グルタミン酸ほど安く作る事は出来ず,核酸系の調味料はどうしても高価になりがちで,スーパーの店頭でも「高いな」という印象のものにしか入っていません。

・クエン酸

 クエン酸はよく知られているように,ミカンやレモンの酸味の成分です。実のところうまみの受容体には作用しないので,厳密にはうまみ成分ではありません。

 ですが,他のうまみを強める働きがあるため,配合されているケースがあります。


・コハク酸

 これも良く知られた物質ですが,れっきとしたうまみ成分です。貝類に由来するうまみです。

 また,日本酒やワインに含まれていて,あの独特のうまさを作っています。

 面白いのは,コハク酸は効き目が独特で,ちょっと多いと,独特のえぐみとして感じるんだそうです。(あの,貝類独特の味が私は子供の頃から苦手だったのですが,大人になると受容体の数が減って感度が下がるので,好き嫌いがなくなるんだそうです。)

 しかも,他のうまみを増強するか単独の味として認識されるかのしきい値が低く,ちょっとの分量でコハク酸単独の味になってしまうそうです。

 その意味では使い方が難しいうまみ成分という事になります。


(3)手に入る化学調味料

 うまみ成分にもいろいろあって,それぞれに由来や味に差があることがわかったところで,それらがちゃんと区別して手に入れられなければ,意味がありません。

 そこで,市販の化学調味料を調べてみます。

・味の素(味の素KK)

 安価で,個人で買っても困らない程度に小分けされて,しかもどこでも売っている,化学調味料の代名詞がこの味の素です。グルタミン酸が97.5%,核酸系が2.5%という組成ですから,ほぼグルタミン酸と考えてよい調味料です。

 グルタミン酸は昆布だしの成分ですから,味の素=昆布,ともう暗記してしまいましょう。

 これ単体でぺろっとなめてもマズーとなるだけで,ちっとも美味しくないのですが,それもそのはずで,他の調味料と組み合わせることで本気を出す調味料です。特に塩は必須なのですが,塩の使用量の10%以上を入れてしまうと,本当にまずくなります。入れすぎるくらいなら,入れない方が100倍ましです。

 味はシンプルで素材の味を上塗りするような暴力的なものではなく,まろやかと言うよりも鋭角的な味がします。コクはないですが,涼しげなうまみが上品です。

 個人的な経験では,これ単体で美味しくするのは大変で,他のうまみ成分とバディになってくれることを祈りながら,鍋に投入するという儀式が不可欠です。どちらかというと偶然性にかける部分も否定できなくて,それほど美味しく仕上がらなくても,まあ味の素だしなと割り切るだけのゆとりがなくてはいけません。

 シンプルな料理ほど成功率が上がるのも味の素です。エンドウご飯を炊くときにさっと一振りとか,とろろ昆布をお湯に投入し,醤油と味の素で味を調えるとろろ昆布のお吸い物とか,ありがたい調味料だと思います。


・ハイミー(味の素KK)

 ハイミーならスーパーに売っていますよね。お値段は味の素に比べると随分高いのですが,それは組成の違いです。

 グルタミン酸が92%,核酸系が8%となり,味の素から製造コストのかかる核酸系を3倍も増やしています。

 核酸系は前述しましたが,鰹節とシイタケのうまみです。暖かい料理の味をぐっと高める働きが強いのですが,量の増減に対する味の変化が大きいので,これこそ使いすぎに注意です。

 とはいうものの,私は使ったことがありませんので,パス。


・いの一番(MCフードスペシャリティーズ)

 いの一番は,昔はスーパーでも買えたメジャーな化学調味料だったのですが,今は業務用としてしか販売されておらず,1kgという個人なら子供の引き継げる暗いの量でしか買えません。お値段もそれなりにしますし,成分を見てもハイミーと同じですので,互換品かなと思ってしまいますがさにあらず。

 どうも,核酸系のせいぶんに違いがあるとのこと話で,名前の通り鰹だし由来のイノシン酸が強いようです。ゆえに,いの一番=鰹だし,と覚えてしまいましょう。


・ミック(MCフードスペシャリティーズ)

 さあ,このあたりから知名度がぐっと下がり,知る人ぞ知る世界になってきます。

 ミックは業務用化学調味料の傑作と言われ,どんな料理も一発で劇的においしく出来る,魔法の粉です。

 その組成は,グルタミン酸が89.8%,核酸系のリボヌクレオチドニナトリウムが8%,アスパラギン酸が2%,そしてコハク酸が0.2%です。

 いの一番なんかと比べて見ると,アスパラギン酸とコハク酸がミソなわけですが,アスパラギン酸はアミノ酸の宝石箱たる醤油を代表するうまみ成分であり,コハク酸は前述のように貝のダシ由来です。

 いってみれば,これでまずいはずがないというリッチな組成を実現した化学調味料であり,単体をぺろっとなめても,それなりにうまいと思ってしまう完成度です。

 また,組成が複雑であるがゆえに,すでに互いを高め合うように作られていますから,味の素のように運転を天に任せる味付けをするのではなく,狙った味にすぱっと収れんしていくキレの良さがあります。

 また,使用量も味の素よりもずっと少なくて済みます。昆布,鰹,貝,シイタケと何でもありですから,どんな料理にも使える幅広さも特筆すべき点です。

 値段もハイミーやいの一番とそれほど変わらず,業務用しか手に入らないという点さえ目を瞑れば,まさに最強の化学調味料といってよいと思います。

 とはいうものの,いい話ばかりではなく,味の素は素材の味を上塗りしませんが,ミックは「ミックの味」に塗り替えてしまいます。

 確かに美味しくなるし,これを天然のダシで実現するのは素人には無理と,脱帽気味になる問答無用のすごさがあるのですが,味噌汁でも野菜炒めでも煮物でも,ミックを使えば何を食べても同じ方向性の味になってしまい,素材や調理方法の「必然性」に疑問を口に入れた人々に投げかけたあげくに,「うまいんだけども・・・」という釈然としない後味が残ります。

 ですので,絶対量を少なめにすることも大事ですが,ミックを使う料理を一品くらいにとどめておくのが,鉄則ではないかというのが私の結論です。


・ミタス(富士食品工業)

 ミックと双璧をなす,化学調味料の雄です。組成はグルタミン酸が88%,核酸系のリボヌクレオチドニナトリウムが8%,クエン酸が4%です。

 注目すべきは,クエン酸です。うまみではなく,酸味の成分であるクエン酸をあえて配合しているのがミソなのですが,これも前述のように,他のうまみ成分をマイルドにする力があります。なにやら,鶏ガラスープのような味も感じられるんだそうですが,私は使ったことがありません。


(4)メーカーの変遷

 味の素を除き,何だか耳慣れない会社が作っているのが,化学調味料です。あれ,こんな会社知らんぞ,ってなことが,私も調べていてなんどかありましたが,変遷を調べると,妙に納得することもしばしばです。

 ここ10年ほど,大手企業のリストラが進み,主力事業ではないものはどんどん切り売りされてきました。販売停止にならなかっただけましなのかも知れませんが,製品名は知っていても,メーカーは初耳という状況の根源が,この20年ほどの不景気にあるというのも,また興味深いところです。

 なお,味の素については,昔からなにも変わっていないようなのでさくっと省略し,MCフードスペシャリティーズと富士食品工業を紹介します。


・MCフードスペシャリティーズ

 MCフードスペシャリティーズはいの一番とミックのメーカーです。もともと,いの一番とミックは別々の会社の商品でした。

 いの一番は,武田薬品が作ったもので,年配の方はプラッシーというジュースと一緒に,お米屋さんで売られていた事を覚えているかも知れません。

 その後,武田薬品の調味料事業はキリンビールとの合弁である武田キリン食品に移管されます。さらに武田薬品の食品事業からの撤退を理由に,武田キリン食品はキリンビールの完全子会社となって,キリンフードテックと商号が変更されます。

 一方,ミックは協和発酵が作っていたものなのですが,戦前から続く名門企業である協和発酵は,とにかくあちこちに事業を切り売りしており,食品部門が協和発酵フーズとして独立したのち,先のキリンフードテックと経営統合し,キリン協和フーズとなります。

 ここに至って,いの一番とミックが同じ会社の製品になるわけですね。

 この時,キリン協和フーズはキリンビールの持ち株会社であるキリンホールディングスが全株式の65%,協和発酵キリンが35%を保有しています。

 さて,このキリン協和フーズですが,元協和発酵である協和発酵キリンの株式をキリンホールディングスが取得し,キリンホールディングスの完全子会社になります。

 そして,ここに三菱商事が登場。三菱商事がキリン協和フーズの株式81%を取得して子会社化し,商号をMCフードスペシャリティーズと変更し,現在に至るわけです。

 武田薬品と協和発酵の製品が三菱商事の子会社で作られるようになるなど,およそ想像出来なかったと思うのですが,耳慣れないその会社名は,今や三菱商事に由来するものだと覚えておくといいでしょう。


・富士食品工業

 もともとミタスは,旭化成で作られていたものでした。旭化成の話をし始めるとこれまた大変な異なるので省略しますが,旭化成の食品事業が旭フーズとして分離します。

 これが,1985年に専売公社から民営化した日本たばこ産業に買収されて,子会社であるJTフーズと合併します。この段階でミタスはJTフーズの商品となります。

 一方,戦前から続く調味料のメーカーに富士食品工業があったのですが,ここが2008年にJTと資本提携します。おそらく,この段階でミタスが富士食品工業に移管されたのではないかと思います。

 JTの食品事業は,加ト吉に譲渡されたり,缶コーヒーから撤退するんじゃないかととか,なにかと騒がしいわけですが,ミタスもそうした波にのまれているということでしょう。


 こうしてみると,味の素がどれほど名門なのかがよくわかりますね。他の調味料は売られ売られて流されて,なんとか生き残っている感じがしますが,味の素は今も昔も,味の素です。大したものです。

D800以降に買ったレンズ

 D800という,現在でもこれ以上を望む必要がないと思う,完成度の高いデジタル一眼レフを手に入れてから,銀塩のカメラに安いレンズの組み合わせで頑張っていた事が,無理をしていたことだと理解出来るようになりました。

 これは悪い意味ではないんですけど,D800というカメラが現在の最先端を走っていて,使いこなすごとにそのポテンシャルの高さを感じるようになったことが大きいということだと思います。

 写真の基本はいつも変わりません。しかし,画質はもちろん,撮影時に楽をする仕組み,今まで撮影出来なかったものが撮影出来る進歩など,技術の進歩は確実にカメラを進化させています。

 D800を手に入れて,これほど進歩しているのかと思った事,そしてその進歩を「時運が少し手間をかければカバー出来る」と思っていたことが誤りだったと知る事で,やはりレンズも新しいもの,もっといえば世代が異なるものを使わねばならないと思ったのです。

 D800以降に買ったレンズは,総じて高画質,高レスポンス,高機能です。それは,私の目から見ると,明らかに過去のレンズとは「非連続」な進歩です。

 カメラは高額商品で,一生ものの代表格だったわけですが,デジタルの時代になってからは,陳腐化が進んで使い物にならなくなるから買い換えると言うより,技術の進歩がすごすぎて,つい先頭についていきたくなるという感じでしょう。

 そんなわけで,D800以降に買ったレンズをちょっとまとめてみようと思います。D800の性能にふさわしく,今どきの画像を作るこれらのレンズは,低画質を「味」を言い訳することなく,ただ素晴らしいと賞賛することが可能なものばかりです。


・AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007年11月)

 FXフォーマット,F2.8通しの標準ズームで,いわゆる大三元の1つです。私は並行輸入品を買いました。15万円くらいだったと思います。

 24mmという一昔前なら超広角から70mmという中望遠域までをF2.8でズームできる高画質レンズですが,重量は約900g,長さ133mmということなのですが,ズームで全長が変化するので,数字以上に長いという印象があります。

 このレンズ,改めて調べてみるとD3とほぼ同時発売なんですね。D3のカタログ写真に出てこないので,D3より後だろうと思っていたのですが,違っていました。

D3は今でも通用するカメラだと思いますが,すでに歴史に埋もれた感もあり,わざわざD3を選ぶ人が少ないのに対し,このレンズは今でも積極的に選ばれると言うのですから,やっぱりレンズは長生きなんだなあと思います。

 それまで私は,単焦点レンズを中心に使っていました。構図は自分が動いて決めれば良く,ズームレンズは焦点距離が変わるというメリット以上に,大きい,重い,高い,暗い,画質が悪い,というデメリットが満載で,とても使う気にはならなかったのです。

 しかし,ある友人がD800Eの導入と同時にこのレンズを買ったことで,ちょっと興味が出てしまったのがきっかけで,よく調べてみたのです。すると,数あるデメリットのうち暗いことと画質が悪いことは,解消されていることがわかったのです。

 しかも自分で動けば済む程度のズーム域(例えば35mm-70mmとか)からぐっと広がり,広角側が24mmまで広がっていることは,驚きでした。単焦点レンズをゴロゴロと持ち歩く必要がなくなるのであれば,大きい,重い,とは言えなくなります。

 ですので,AiAF24mmF2.8の代わりに,という気持ちくらいで購入したこのレンズは,完全にD800の標準レンズの座に落ち着くことになりました。

 実際に購入し,使ってみると,確かに良く写ります。これは標準ズームにふさわしいバランスを持ち合わせています。解像感も高く,あっさり目とは言え色のりもよく,収差の出方もボケも,水準以上のものがあると思います。

 しかし,このレンズの評価は,思ったほど高くありません。むしろ,1/5程の値段で買えてしまうタムロンの28-75mmの方が「好きだ」という人がいるくらいです。買う前には不思議だなと思っていたのですが,買って使ってみると,なるほどと思うようになりました。

 確かに高画質で,高い次元でバランスした素晴らしいレンズなのですが,意地悪な言い方をするとそれだけなのです。個性がないというか,際立った特徴がないというか,個性がないというか。

 これでなければならない写真が撮れるというわけではないし,これが写し取る画が心の響くわけでもない。本当に綺麗にスッキリ写るんですが,それだけだということなんです。

 考えてみれば,他のレンズは高いものも安いものも,ちゃんと「こういうレンズです」と他の人に説明が出来ます。でも,このレンズは他の人に説明するのが難しいです。

 実売で20万円のレンズなんですから,よく写って当たり前です。光学性能が劣っているのは,論外です。しかしそこから先が,物足りないんだと思います。普通の写真を確実に撮影する,これがこのレンズの最大の特徴なんだと思います。

 私の稼働率ですが,正直言うと低いです。外に出ない引きこもりだからというのもありますが,後述するシグマの35mmF1.4が常用レンズになってしまいました。


・35mm F1.4 DG HSM(2013年1月)

 シグマのラインナップが一新され,特に高画質を高めたラインに与えられるArtラインの第一号です。

 35mmという画角で,F1.4という明るさを実現するのはそれなりに難しく,大きく重く,高価なものになりがちです。それで手に入るのは,明るいという特徴だけなわけですから,一昔前は特殊なレンズでした。

 しかし,このレンズは本当に素晴らしいものでした。カミソリのようにキレキレの解像度に,F1.4開放から躊躇なく使える画質,良く補正された収差に,シグマらしいあっさり目だがしっかりした色のりと,もう撮影領域が拡大したと言って良いくらい,素晴らしいレンズです。

 純正と違い,カメラでの補正は出来ませんが,RAW現像なら問題なし。そもそもそんな補正だってなくても構いません。

 この手の大口径レンズは,開放だと甘く,結局1段か2段くらい絞らないと実用になりません。絞ること前提で,そこでの画質が高まることを狙っているというのも,この手のレンズの存在理由だったりしました。

 しかし,このレンズは違います。本当にF1.4から撮影出来ます。F2.8まで絞れば,もう信じられないくらいの切れ味です。

 そして大事な事は,案外デザインだったりします。かつてのシグマのレンズは,本当に格好が悪く,持っているのも恥ずかしいくらいひどいものだったと思います。

 しかし,これが新しいラインナップになってから,本当に格好良くなりました。どんなメーカーのカメラにもマッチし,どんな人にも使いやすいユニバーサルなデザインであり,曲線1つ1つにも理由がちゃんとある,シンプルで美しい鏡筒のデザインは,大きな前玉によく馴染んで,形が高画質を主張しています。

 持った感じもしっとりと手に収まり,ゴムのローレットも適度な引っかかりがあって,これは純正を越えているでしょう。

 純正に比べるとやや遅いと言われるAF速度ですが,純正が高速すぎるのであって,35mmという画角を考えれば,これ以上は必要ないと思います。静かですし,とても上品なAFです。

 最後に,これが純正の半額で買えるという事がすごいです。画質は純正に並ぶか越えたものを持ち,それが半分の値段で買えることは,どれほどありがたいことかわかりません。

 ただし,このレンズに関して言えば,もう値段なんてどうでもいいところまで来ていると思います。このレンズでないと駄目なシーン,このレンズ前提でカメラを構えている状況がこれほど増えてくると,低価格である事など忘れてしまいます。

 もし,この水準を「Art」というラインナップで保証するなら,私はもうシグマのレンズを積極的に買うことになるでしょう。だから,Artで大三元とか,Artでマクロレンズとか,そういう展開を期待したいと思っています。

 話が逸れますが,ここ最近のシグマは本当にすごいです。レンズメーカーとしての実力の高さもそうですし,メーカーとしての姿勢も大変素晴らしいです。なにより,社長さんの顔がちゃんと見えていて,彼のメッセージがちゃんと末端のユーザーに届いています。私はこのメーカーの製品のユーザーで,良かったなあと思っています。

 私の稼働率ですが,常用です。ボディマウントキャップの代わりにD800に常についているレンズです。

 F1.4から撮影出来るとは言え,最低でもF2までは絞って使いますが,それでも室内で妥協なく撮影出来ます。だから,試しに他のレンズに交換してみると非常にストレスが溜まり,結局このレンズに戻してしまうのです。

 もともと,私は35mmは苦手な画角でした。ですが,AiAF35mmF2を使ってみて,室内撮影にぴったりと分かってから,これを常用するようになりました。そこから買い換えたのが,このレンズです。

 外に持ち出すことが少ないのは,豊かな太陽光でF1.4の単焦点の個性を発揮させるのは難しく,それよりは焦点距離を自由に調整出来るズームの方が役に立つからなんですが,機会があれば外に持ち出してみたい思う一方で,室内専用レンズとして個性を爆発させるのも,よいかも知れないと思ったりします。


・AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(2011年6月)

 D800のポテンシャルを味わえる,一番安いレンズがこれです。F1.8と明るさは少々控えめですが,F1.4よりも大幅に安く,画質は抜群とくれば,1段未満の暗さなど問題にするほどの事はありません。

 ずっと昔から,標準レンズは50mmで,高級機にはF1.4,普及機にはF1.8かF2と,相場が決まっていました。わずか1段の差ですが,小さく軽く,画質も高く,しかも安く作ることができたのが,このレンズの系譜です。

 この伝統が現代においてもちゃんと継承されているのがうれしいですね。D800の推奨レンズに入っていないとはいえ,使った人は皆一様に「素晴らしい」と褒める,そんなレンズです。

 画質は十分なものを持っているとして,それ以外はどうかというと,それはやっぱり値段相応だと言えるでしょう。手に持った感じも高級感はないし,AFモーターも高速ではなく,機敏なAFを期待するとがっかりします。それにGレンズですから,絞り環がありません。古いボディでは実質的に使えないと思った方がよいです。

 個人的にとても残念な事があります。フィルター径です。かつてのAiNikkorやAiAFNikkorは,出来るだけ52mmで統一しようという方針で作られていました。それは28mmでも50mmでも,55mmマイクロでも,105mmでも,とにかく可能な限り52mmでいこうとしていたのです。

 前玉が大きくなると,フィルター径も大きくなるので,これはもう仕方がないと思いますが,F1.8のこのレンズは前玉も小さく,52mmでも十分可能だったはずです。

 わずか6mmの差ではありますが,この差が作る印象は大きくて,52mmのAiAFNikkorがF4やF5といった大型一眼レフにくっついている姿は,とても格好がよいと思っています。

 あくまで個人的な印象ですが,前玉が小さいレンズでフィルター径が大きいのは,安っぽい感じがします。デザインの統一やフィルター径の統一の話もあるとは思いますが,このレンズだけは52mmでもよかったんじゃないかと思います。

 そうすれば,のちのDfでも,もっと綺麗なたたずまいを見せてくれたんじゃないかなあと思います。

 私の稼働率ですが,これもあまり使っていません。50mmが欲しい時,特に全長が短いレンズが欲しい時には取り出しますが,35mmよりも暗い50mmのレンズにそれほど出番もなく,高価なレンズでもなかったこともあり,あまりもったいないという感覚もないまま,防湿庫にスタンバイしています。

 でも,軽くて小さいレンズですので,なにかのついでにぱっと持ち出すのに,よいですね。

 

・AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED(2013年3月)
 
 FXフォーマットの広角ズームで,標準価格で10万円を割る低価格なレンズです。ですが,とても良心的なレンズで,小さく軽く,でも高画質ということで,こういうレンズが純正で買えてしまうと,レンズメーカーはとても困るだろうなあと,当時思ったものです。

 ニコンの現在の広角ズームとしては,D800のカタログでも使われている14-24mm/F2.8という次元の違うレンズと,その下の16-35mm/F4がありますが,大三元と小三元と言われる高級レンズです。

 このレンズは,広角側が18mmまでですし,ニコンの高級レンズの象徴であるナノクリスタルコートを使わず,明るさもF3.5からF4.5に変動するズームですが,だからといって画質に手を抜かず,解像度も色も,優れたものを持っています。

 広角レンズで,2mmの焦点距離の差はとても大きく,もはや別のレンズと言ってもいいくらいの違いがあるものですが,そうはいっても18mmです。超広角の面白さは楽しめるでしょう。

 その代わりにこのレンズが手に入れたのは,機動性です。重さはたった385g,全長は95mmと,10cm未満です。この手の広角ズームは屋外で使うことが多いでしょう。その際にこの軽さ,この取り回しの良さは大きな武器になるはずです。

 欲を言えば,標準ズームの広角側が24mmスタートが普通になっているのですから,16-24mmとか,ズーム倍率を下げてその分高画質化,小型化をしてくれてもよいと思うのですが,まあこれ1本で24mm,28mm,35mmと広角側をカバー出来ることは確かに便利かもしれないですね。
 
 これを買うことにしたのは,結構衝動買いに近いものがありました。私がサブに使っているPENTAX A7に,08という広角ズームがあります。35mm換算で17.5mmから27mmまでをカバーするレンズなのですが,こいつがとにかく良く写るのです。

 小さくて軽くてよく写って,一時期私はこればかり使っていました。苦手だった広角レンズの,パースの面白さや遠近感を強調した撮影,あるいは被写体を追いかけなくてもどっかに必ず入ってくるという安心感など,これはこれで面白いなあと思っていたのです。

 そうなると,主力機であるD800でも超広角を用意したくなるものですが,やはり高価ですし,大きく重いわけです。そんなときに目にしたのがこのレンズで,画角も08のワイド端とほぼ同じで安い,しかも画質はよいと評判です。

 AF-S MicroNikkor60mmF2.8を買うための貯金を急遽こちらに振り向けて,買うことにしました。

 買った結果ですが,しばらくずっとこれで遊んでいました。とにかく面白いし,無理をしないで振り回せるので,気分的にも楽です。

 画質も問題なし,常用レンズになるかと思ったのですが,最後に問題になったのが,やはり暗さでした。18mmのF3.5はまだ許せるとして,35mmのF4.5はもう絶望的です。同じ画角でシグマのF1.4を使っていた私としては,ここがもう許せなくなってしまい,結局シグマの35mmF1.4に戻ってしまいました。

 でも,このレンズでは,随分と面白い写真を撮りました。また使いたいなと思っています。お気に入りの1本です。

 そうそう,このレンズの使い道として,もう1つ面白いものがあります。APS-Cのボディで使うと,27-52mm相当になり,28mm,35mm,50mmという,とても美味しいところが範囲に入ってきます。

 そう,D2Hの常用レンズにぴったりなのです。暗いことが問題なんですが,これにSB700と組み合わせると,全然問題なく室内撮影向きのシステムが完成します。


・Ai AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED(2000年10月)

 先日,大幅に小型化した新しいサンヨンが登場しましたが,それまでニコンのサンヨンと言えば,今から15年近く前に発売となったこのレンズが長く使われていました。

 サンヨンは画質と大きさと価格が最もバランスする望遠レンズといえて,これより長い,あるいはこれより明るいと,極端に大型化し,極端に高価になります。だから,特殊ではないレンズという範囲に,ギリギリ収まる望遠レンズだといえるでしょう。

 それにしても2000年秋の発売とは,また古いですね。まだF5が活躍していたころのレンズです。

 ですが,その画質には定評があり,当時はもちろん,デジタル全盛の現在においても積極的に選ばれるレンズです。飛行機や野鳥,鉄道の撮影には定番として長く愛されてきたレンズです。

 新しいサンヨンは,PEという原理の異なるレンズを用いたことで大幅な小型化を実現し,その上手ぶれ補正も装備されましたが,画質については旧機種との差はあまりないというのが定説で,PEに起因する点光源での不自然なフレアがむしろ懸念されることを考えると,次世代版と言うよりも別のレンズがでたというくらいに,私はとらえています。

 もともと,D800を買った時に,望遠側でまともに使えるレンズがないことを懸念した私が,当時1ドル80円という強烈な円高を理由に,アメリカの業者から個人輸入してみたというのが,購入のきっかけです。

 画質は評判通りで,それまで持っていた100-300mmのF4ズームとは比べものにならず,AFも高速で,今の私のレンズではD800をちっとも生かせないと,考えを改めるきっかけになりました。

 ただ,望遠はズームじゃないと,やっぱり実用的には厳しいものがありますね。自分が動けばズームはいらない,というのが持論ではありますが,動けないから望遠を使うわけで,そうなるとやっぱりズームがないと厳しいのです。

 300mmですから,1.4倍のテレコンで420mm,これをD2Hに付ければ実に630mm相当ですよ。こうなるともう別世界なわけで,果たしてこの組み合わせに出番があるのかと思いますが,まあこういうのは安心感に繋がるわけですし。

 このレンズ,新品なのですが,ちょっと気難しいところがあり,AFモーターがキーキー鳴きます。SWMにありがちなトラブルなのですが,何度か動かしていると鳴かなくなるので,もういいかということにしました。中古で売るときに大きく減額されるでしょうねえ。いずれ修理をしておく事も検討しましょう。

 私の稼働率ですが,これも非常に低いです。いいレンズだし,使いたいのですが,ズームではない300mmのレンズを,家の中で使うのはほぼ不可能です。外に持ち出すのも,この大きさゆえに躊躇するわで,じゃいつ使うんだよ,と自分でつっこんでいます。

 ま,子供が大きくなると,そうも言ってられなくなるんでしょうね。


・AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II(2009年11月)

 言わずと知れた大三元のうち,望遠域を受け持つプロスペックのレンズです。先日買ったばかりですが,さすがにこれを買うときは悩みました。

 でも,買ってしまえば全然後悔しないのも,このレンズなんですよね。

 嫁さんはこれを見て,その大きさに驚いていました。しかし,サンヨンもこのくらいありますし,標準的な大きさだと私は思います。

 ニコンには,大三元の広角側を担当するAF-S 14-24mmがありますが,これとならんで,その高画質っぷりにはプロアマを問わず,疑いの声が全く上がりません。同じ大三元の24-70mmが可愛そうになるくらい,賞賛の声ばかりなのです。

 70mmから200mmまで全域F2.8の明るさで,美しいボケ,豊かな色と階調,もちろん高解像度で,その上4段まで補正する最新の手ぶれ補正までついています。

 うれしいのは結構しっかりした三脚座がついていて,取り外しもワンタッチで出来るものがついています。基本的には三脚に固定して使うレンズなんでしょうが,VRがあることで手持ちでもどんどん使って下さいという,ニコンからのメッセージです。

 この高性能,高画質に私もさすがに腰が引けました。なんといってもプロが絶賛するレンズです。これで駄目なら,もうカメラのせいにもレンズのせいにも出来ません。

 ここで,私は新しい発見をします。いい機材を使う事で,下手な人でもいい写真が撮れる場合と,ますます下手になってしまう場合があるということです。私は前者を信じて疑わなかった人ですが,このレンズに限って言えば,下手な人が使うと,全然駄目な写真しか出てきません。

 ゆえに,練習が必要です。慣れることも大事ですし,癖を掴むことも大事です。画角になれること,構図を決める事が出来るようになること,被写体を追いかけるときにどのくらいレンズを振り回すのか,VRでどんなブレが止まるのか,どうすればフォーカスを外さずに撮影出来るか等々,とにかく練習が必要でした。

 ようやく慣れてきて,歩留まりも上がってきましたが,最初はもうひどいもので,まともな写真が全然取れませんでした。やっぱり,一眼レフは難しいですし,プロが使う機材は,素人が安易に手を出すものではありませんね。

 とにかく,うちで一番高価なレンズです。2年ほど前は実売で20万円を切っていたそうですが,今は1割ほど高値で推移している感じです。ちょうど1万円のキャッシュバックがあって20万円以下で買うことが出来たのですが,やっぱり20万円を越えるのは,精神的にきついものがありますね。

 稼働率ですが,ここ最近ずっとこれです。室内で望遠ズームってのもどうかと思いますが,近いうちに出番がありますし,それまでに練習して失敗ないようにしないといけませんから,少々無理があっても,糖分使う事になると思います。

 一応,24-70とこれを持っていけば,24mmから200mmまで,最高画質でフルカバーですからね,私も随分と偉くなったもんだなあと,うれしいやら飽きれるやら・・・


 とこんな感じです。面白いのは,今回とりあげた新しいレンズはすべて,新品を買っているということです。

 現行の高性能レンズは,中古とはいえ値段があまり下がりません。安いお店の新品との価格差は1割ほどだったりします。レンズは長く使うものですし,デジタル機器と違い,個体差もあり,扱い方で性能が変わってきますから,出来れば新品の方が望ましいのですが,この価格差だったら,わざわざ中古を買うこともないかなと,そんな風に思ったりします。

 考えてみると,10年ほど前までは「新品」「純正」に雲の上のものを感じていたのですが,気が付くと純正を新品でこれだけ買っていました。

 経済的な問題もあるのですが,つくづく思うのは,さすがに純正品はラインナップに隙がないなということです。例えば,いかにシグマのArtラインが素晴らしくとも,これで大三元を揃える事は今は無理です。

 純正ならF2.8通しも,F4通しもあります。

 そう考えると,やっぱりニコンやキヤノンというのは,歴史のある,大メーカーなんだなあと,思います。

オークションで手に入れたPC-6001の修理

 我々兄弟にとって,初代PC-6001とは,まさにマイルストーンともいえる,記念すべきパソコンです。

 私が11歳,弟が9歳の時にやってきたこのマシンは,貧しかった我々家族が迎えた,まさかの高価なオモチャでした。

 種類としてはパソコンであり,コンピュータそのものではありましたが,出来る事はゲームばかりで,そのゲームだってファミコン以下の性能では厳しいものがあり,見た目もオモチャそのもの,

 私が親ならこんなものを買うという決断はしなかったと思います。

 当時,PC-6001mk2が出たばかりで,これが専用のモニターと込みで15万円くらいで売られていたわけですが,一世代前の在庫処分として初代PC-6001は39800円という価格で売られていたのを,父親が新聞広告で見つけて,買い与えようと考えてくれたのです。

 我々兄弟は偏屈ですから,誰もが欲しいと思うはずのPC-6001mk2ではなく,以前から初代機の独特の雰囲気が好きで,父親のこの話に,我慢も妥協もなく,まさに欲しかったそれが,しかも新製品が出てしまった後に新品でやってくることになることに,心底うれしかったことを覚えています。

 はじめてPC-6001がやってきた日のことを,私ははっきりと覚えています。買いに行くとき,買った時,ソフトを選んだとき,電車で帰ってきたとき,家に戻ってきたとき,箱を開けて電源を入れたとき,その時々の記憶がちゃんとあります。

 その後,家のテレビと共用ではなにかと不便ということで,父がどこかから古い14インチのカラーテレビをもらってきて,これを専用にあてがってくれました。PC-6001は色ズレがミソなマシンでしたから,ゲームが最も綺麗に見えるように,調整をしたこともよい思い出です。

 せっかく打ち込んだプログラムが,データレコーダがないがためにきちんとセーブできず,消えてしまうことに業を煮やした我々兄弟は,親に強く専用データレコーダの導入を要望,渋々PC-DR311という安価なデータレコーダを買ってもらい,これでようやく信頼性のある外部記憶装置を我々は手に入れる事ができたのでした。

 以後,お年玉をためてプリンタPC-PR401を購入したところまでで,PC-6001へのハードウェアの投資は終わったのですが,このあとやってくるファミコンとMSXのせいでPC-6001は急激にソフトが出なくなり,我々は寂しい思いをするのでした。

 しかし,PC-6001も末期になると,出てくるソフトの数は少なくとも,非常に良く出来たゲームが多く,ハズレが少なかった印象があります。たしかにmk2専用のソフトもありましたが,一部の例外を除き,私はmk2でないと駄目だと思った事は,ありませんでした。

 「こんにちはマイコン」と同じマシンを手に入れ,BASICでプログラムを作ることが出来るようになり,やがてすべてのコマンドを一通り試すことをやった後,マシン語に踏み出していくわけです。


 そんなPC-6001ですが,弟がX1turboを買ってからは,主役の座を降りることになります。私はそのころ楽器や電子工作に明け暮れており,PC-6001には興味をほとんど失っていましたが,弟はPC-6001での音楽演奏に限界を感じ,当時最高のFM音源を搭載できたX1を選ぶわけで,私と違って弟はパソコンの断絶期間がありません。

 あわれ,使われなくなったPC-6001は,私の餌食となります。弟もそれほど執着していなかったと見えて,私の改造に拒むことはしませんでした。

 PC-6001は,Z-80Bに換装され,クロック6MHzになりました。確かに高速でしたが,それで遊ぶわけでもなく,不細工な穴が筐体に開いてしまうことになりました。

 それから10年ほど経過し,PC-6001は電源部とDRAM,そしてサブCPUが壊れるという満身創痍で,その度に修理をして甦ってきました。その時,オリジナルに戻そうという気持ちが起こり,改造箇所を戻し,開いた穴をパテで塞いで,塗装したのですが,当時の私の塗装技術では,似たような色のつやありスプレーラッカーを,ぼってりと厚ぼったく塗るのが精一杯で,見た目は大変に惨めなものになっていました。

 それが,さらに20年ほど経過し,経年変化でもっとひどくなっているというのです。

 考えていたのは,まず塗装をすべて剥がし,丁寧に色を塗り直すことでしたが,あれだけの大きさですから,塗装を剥がす作業だけでも大変な手間になります。その上で穴を塞ぎますが,パテでふさいでも,いずれへこみが出てくるものです。

 そして先日,オークションをさっと見ていると,故障品のPC-6001が2000円で出ています。私が欲しいのは筐体だけですから,これで十分です。

 あまり人気がないのか,入札者は私だけ。果たして2000円で壊れたPC-6001は我が家にやってきました。

 もっとひどい程度だと覚悟していたし,改造や部品の抜取りも覚悟していたのですが,どこかの会社の備品だったらしく,シールが筐体の上下にまたがるように貼られており,剥がされたり着られたりした形跡もありません。

 どうも分解されたこともないようなもののようです。

 日焼けはすごいです。しかし,ぶつけたり凹んだり,割れたりした部分はなく,汚れている以外はなかなかよさそうな感じです。

 電源を入れてみますが,やはり動きません。電源ランプは点灯するので,まずは一安心です。

 分解していくと,確かに分解された形跡はありません。当時のままのようです。

 PC-6001の持病としてよく知られているのは,電源ラインに入っているタンタルコンデンサの劣化による,ショートです。タンタルコンデンサは壊れるとショートするやっかいなコンデンサで,最近はほとんど使われません。どうしても使わねばならない場合には,使用する電圧の3倍くらいの耐圧のものを選ぶようにし,壊れる事のないように十分なマージンを取るようにします。

 しかし,PC-6001では,12Vの電圧に対し耐圧16Vのものが使われています。これはいけません。このPC-6001も,調べてみると12Vのラインのタンタルコンデンサがショートしていました。

 気持ち悪いので,すべてのタンタルコンデンサを取り除きます。ここでまず電源を入れてみます。パワーオンリセットは不安定でかからないのですが,ここでリセットボタンを押すと,ちゃんと動作することが確認出来ました。

 一部抵抗の一が変わっていたりと,手作業による改修がありますので,比較的初期のものだと思います。ただ,ROMは最初期のEPROM版ではなくマスクROMになっていますし,ICのタイムスタンプも1981年の後半でしたので,私たち兄弟の際後期のものよりは,古いものだと思います。

 実家にある我々のPC-6001をレストアするための部品として手に入れたものですが,基板や電源などの内蔵物は我々のものを使うとして,補修部品として完動品の基板が手に入ったことは安心に繋がります。PC-6001では,汎用品が多く使われていますが,マスクROMやサブCPUは専用品です。マスクROMはどうにかなるとしても,サブCPUは今の私の設備ではお手上げですので,ありがたいです。

 しかし,エミュレータで散々触ることが出来るはずのPC-6001も,20年ぶりに実機を触るととても感激します。この違いはなんなんでしょう。モニタを繋がずとも,PLAY"CDE"としてドレミと音を出させると,いろいろなことを一緒に思い出します。

 あの頃が決して良かったとは言いませんが,あの頃に経験したことは,今の私を作っているという実感があります。これは肯定するべきことだと思います。

 こうなったら,しっかりレストアするしかないでしょう。

 

大三元2つ,いよいよリーチ

  • 2015/03/13 13:48
  • カテゴリー:散財

 やってしまいました。

 すごい買い物をしてしまいました。

 AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II です。

 そう,大三元の1つ,ニコンが誇る高画質な望遠ズームです。価格は定価で30万円。実売で20万円前後という感じの,写真に本気で取り組む人しか買えないし,そもそも欲しいとも思わない,高級なレンズです。

 4段分の手ぶれをカバーするVR,逆光にめっぽう強いナノクリスタルコートという最新兵器を装備した,F2.8通しの望遠ズームレンズは,ニコンを代表するレンズであり,他社ユーザーをして「ニコンユーザーが羨ましい」といわしめ,多くのプロやハイアマチュアに支持されてきました。

 開放から使える高画質と手ぶれ補正で室内のスポーツ競技の撮影はもちろん,自然なぼけでポートレートにも使える,高い次元でその性能をバランスさせた万能レンズです。

 この値段でこの性能なら,文句の出るはずもないのですが,実売ベースでも多くのボディより高価なレンズですから,おいそれと手を出すわけにはいきません。かくいう私もかなり悩みました。何ヶ月も悩みました。

 私の(まともな)レンズのラインナップは,広角ズームがAF-S18-35mm/F3.5-4.5,標準ズームがAF-S24-70mm/F2.8,望遠がAF-S300mm/F4で,ちょうど70mmから200mmくらいの間が抜けています。

 そんなに使用頻度も高くないし,そもそも外に出ない私が望遠を欲しいと思うことなどなく,どうしても必要な時は300mm/F4を使うか,AF-S18-200mmDXを引っ張り出そうかと思っていたくらいです。

 しかし,ここで私は悩みました。300mmにしても,18-200にしても,暗いんです。18-200はVRがあるとはいえ,被写体ブレは防げません。そして,この悩みに対して答えを出す期限が,3月末です。

 そう,3月末には,娘の卒園式がひかえています。たかが卒園式,しかもB型保育園の卒園式ですから,本来ないはずの,卒園式です。わざわざ写真に残すようなイベントでもないと,私も思います。

 思いますが,我々家族にとっての,初めての公式行事であることから,目をそらせません。七五三などは公式行事と言うより内輪のイベントですから,撮影をするにしても我々の都合でどうとでもなります。

 しかし,卒園式は我々だけで行うものではなく,撮影には自ずと制約がついて回ります。暗い,遠い,タイミングなど,はるかに難易度が高いです。

 こういう難易度の高さを乗り越えるために,テクノロジーがあります。暗い室内には大口径レンズに手ぶれ補正,そして高感度撮影が,距離の遠さには望遠レンズが,用意されているのです。

 昨今,F4くらいのレンズであっても,ボディの高感度かのおかげで十分実用になります。だから,70-200のF4にするべきかどうか,これもまた随分悩みました。

 しかし,F4の値段が比較的高止まりしていること,確かに良く写るレンズなんだけどもやっぱりF2.8を越えられないことから,悩みをF2.8を買うかどうかに絞り込むことは,早いうちから可能でした。

 もちろん,F2.8は高いだけではなく,大きく重いのですが,おおきいといっても手持ちが出来ないレベルではなく,思いと言っても1.5kgくらいです。ボディとあわせて3kgくらいなら,もう大した差ではありません。

 あとは価格ですが,実はちょっとした臨時収入が10万円ちょっとありました。これはあぶく銭ですので,大事に残すようなお金と言うよりも,さっさと値打ちのある品物に買えてしまった方が生きるお金です。

 このお金でF4を買うか,このお金にさらに10万円を足してF2.8を買うか。

 本来F4しか買えない10万円を用意するだけで,F2.8が買えてしまうと考えれば,もう悩むことはありません。しかも今なら,キャッシュバックで1万円戻ってきますから,実質的に20万円以下で買うことが出来ます。

 高価な買い物です。嫁さんにもさりげなく許可を取り付け,信用のおけるカメラ屋さんにオーダーして,届いたのが今週の火曜日です。

 あいにく,私はこの日,娘からうつされた風邪がもっともひどい状態で,翌日会社を休んでしまうことになりました。おかげでボロボロで,開梱して軽く動作確認をするのが精一杯。

 しかし,試し撮りをした画像に,私は息をのみました。すごい。

 同じ大三元でも,24-70は良く写るんだけども,平凡すぎて特にすごいところはないという,いい意味でも悪い意味でも「良く出来た」レンズでした。

 しかし,この70-200は違います。本当にすごいです。切れ味,コントラスト,色のりと,とても室内とは思えない描写です。

 VRも,角に効くと言うよりも自然に手ぶれを防いでくれるので,違和感もありません。重いとはいえ,重量バランスはよいので,手持ちも可能です。

 新しいレンズは,新しいボディを買うのと同じくらいに,使い慣れないといけません。まだ少しだけ時間があります。出来るだけこのレンズを使うようにして,慣れていこうと思います。

 

プジョーのペッパーミル

  • 2015/03/09 16:37
  • カテゴリー:散財

 プジョーといえば,自動車です。フランスのこの名門は,世界で最初の市販車を完成させた「世界最古の自動車メーカー」として知られています。

 フランスの自動車は,自動車発祥の地であるヨーロッパにおいても,個性的なものがあります。低燃費と安全対策が強化され,生産地も消費地も世界中に広がった現在では,随分その個性は薄まったと言われていますが,それでもイギリスとイタリアとドイツとフランスでは,ぱっと見ただけでその違いに気が付きます。

 裏を返すと,その違いが出るように作ってあるということでしょうか。

 前置きが長いですが,プジョーは今でもそうですが,数を作る大メーカーですから,手作りで高価な車をちょぼちょぼ作るということはしません。今でもフランス本国ではタクシーに最も使われる自動車メーカーですし,いわゆる「普通」の自動車を作ることが,プジョーの役割でもあります。

 しかしそこは国民性もあり,乗り心地やインテリアとエクステリアのデザイン,色,テクノロジーで,他のメーカーと比べて見れば,やっぱり違いが見えてくるものです。面白いですよ,欧州の自動車というのは。

 私にとっては,始めて新車で買った車がプジョー306で,これも電撃的な出会いの末に衝動買いしたということもあって,とても良く覚えていますし,今でも大好きなメーカーがプジョーです。

 306の次の206が大ヒットし,そこら中で見たものですが,今はすっかりもとのマイナーメーカーになっています。それでも,高いデザイン性,独特の乗り心地,長時間の運転でも疲れないというプジョーの良いところは,継承されているんじゃないかと思います。

 その306は不幸にも父親が勝手に処分してしまったのできちんとお別れが出来なかったのですが,プジョーはなにも自動車だけではありません。

 ご存じの方も多いでしょうが,もともとプジョーはのこぎりやペッパーミルなどの金属製品を作るメーカーとして始まり,その後自転車やミシンを作るようになります。ここから自動車も手がけるようになりますが,このうち自動車と自転車,そしてペッパーミルが,現在も生産されています。

 自動車がプジョーであまりによかったこともあり,自転車も(安いものですが一応)プジョーです。そして,ペッパーミルもいつかは必ずプジョーが欲しいと思っていました。

 今使っているアクリルのペッパーミルは,嫁さんが持ってきたものです。しかし,うまく削れず,挽いたコショウをなめてみても,今ひとつ辛さもうまみも出てきません。

 それでも騙し騙し使っていましたが,ここにきていよいよ下側に大きな亀裂が入ってきました。もう限界でしょう。

 これは,嫁さんには悪いけど,プジョーのペッパーミルを買う好機です。しかも,私の誕生日のプレゼントとして,嫁さんに選んで買ってもらうという図々しいお願いをしてみましょう。

 私としては,この歳になると誕生日などめでたくもないので,プレゼントなど必要ないというスタンスを取っているのですが,それでも気持ちだからと,毎年いろいろ考えて用意してくれるようです。無関心にいると,プレゼント選びに困っている彼女に心が痛みますし,かといって催促するのもどうかと,私も正直どうしたものかと思っていたのです。

 そこで,考え方を変えて,せっかくだから欲しいものをきちんと伝えてみようという事にしたのです。

 今回は,ペッパーミルです。安いものは数百円からあります。料理が楽しくなって毎日やるようになった昨今,特にコショウをよく使う私としても,ペッパーミルが壊れてしまった現状を放置できません。

 私からお願いしたのは,憧れのプジョーであること,電動である事,背が低いことです。

 手動のものがいかにもプジョーなんですが,そこは実用性を重く見ました。やっぱ電動はいいですよ。片手があきますからね。

 しかし,毎日毎日使うわけでも,また一日中使うわけでもありません。だからあまり大きなもの,存在感のあるものは,困ります。邪魔です。

 という話になって,結局嫁さんが選んだのはゼリとゼフィアの2種類です。といいますか,これしか条件に合致するものがないのです。

 値段は高級なゼリが1万円,下位のゼフィアが7000円弱です。随分高いですね。ゼフィアは実売で5000円ちょっとで買えますから,私はこれかなと思っていました。

 しかし,嫁さんはステンレスコーティングの外観を持つゼリが気に入ったようです。なにも誕生日まで待つことはないだろうと,すぐに注文してくれました。

 日曜日の夜に届いたので,早速プレゼントしてもらいました。

 しかし,いきなり問題が。

 電池(単4がなんと6本も必要)を入れようと,本体の上の部分を外して中からモーターASSYを外すのですが,電池を入れて戻そうとしても,うまく収まりません。

 おかしいなとよく見てみると,モーターを上下に挟んで固定する枠に,隙間があいています。しかも,3箇所のうち2箇所が固定されていない様子で,電池のバネ圧のせいで,斜めになってひらいています。

 これを無理に押し込んでロックがかかればそれでもいいんですが,あいにくそういうわけも行かず,なんだか気持ちの悪い状態で組み立てることになりました。それでも,ちゃんと動いていますし,コショウもちゃんとひけているのですが・・・

 これが国産品なら,初期不良の疑いがあるという事ですぐに行動を起こすのですが,いかんせんフランス語の書かれたパッケージで,代理店は自動車から電子計測器まで取り扱う商社で,なにかと時間がかかって面倒臭そうな感じです。

 まあ,フランスの民生品ですからね,多少の事はおおらかに考えたいところですから,私はこのままでいいよ言ったのですが,嫁さんはなにやら納得がいかない様子。安いものではないのになあとつぶやくのを聞くと,そりゃそうだなと思います。

 悔しいので,壊さない程度に分解して,ちょっとしたことできちんと修理出来ないかどうかを調べてみます。しかし,残念ながらそうもいかず,結局この部分がきちんと固定されていない理由はわかりませんでした。

 仕方がないので,カプトンテープを上下の枠にまたがるように張り付けて,広がるのを防いでみました。カプトンテープは熱や油,薬品に強く,経年変化にもへこたれない強力なテープです。

 電池を入れてみますが,なかなか良い感じです。電池を入れても綺麗に本体に収まります。

 この状態で早速コショウを挽いてみます。粒の大きさを調整できますが,見てみると粒の大きさが一定と言うよりは,様々な大きさの粒がブレンドされるような感じになっています。いいですね。

 ぺろっと食べてみますが,これがもう辛いのなんの。ピリピリとして,同じブラックペッパーとは思えません。そして香ばしい風味も広がります。味は抜群です。

 そして,たたずまいもよいです。ちょっと大きいなあという気もしますが,ステンレスコーティングの本体は大変高級感がありますし,天辺の電源ボタンは500円玉くらいの大きさで大きく,握りやすい本体形状と相まって,とても快適に使うことができます。少なくとも,手が滑って料理の上に落っことすようなことは,ないでしょう。

 ゼリはライトも装備しているのですが,私は必要ないと思っていました。しかし,実際に使ってみるとライトはよいですね。

 さらに,これがLEDではないというのが,なおよいです。今どき豆電球かと思いましたが,点灯と消灯の緩やかな明るさ変化に,暖かな色合い,そしてLEDとは違って幅広い発光スペクトルが醸し出す高い演色性に,料理中の食材がとても美味しく見えます。

 これがプジョーのこだわりだ,と言うなら私も面白がったんですが,残念な事に上位機種ではLEDを使っているそうですので,豆電球はただ古いだけの装備です。

 ということで,買ったばかりですから交換や修理も考えたのですが,ミルそのものに問題はないし,私とてもすぐに使いたく,なにより縁あって私の家にやってきた,これから長い間一緒に料理をするパートナーですから,多少の問題があっても仲良くしていこうと,いうことです。

 今週の夕食の予定は,鮭のバター焼きと豚ロースのソテーが洋食ですね。娘が小さいのでコショウは難しいところですが,大人向けにはしっかり使って,美味しく食べようと思います。

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