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2015年11月の記事は以下のとおりです。

GX-Z9100EVを初めてメンテ

 確か1993年だったと思うのですが,GX-Z9100EVというカセットデッキを買いました。10面円近い買い物でしたが,ようやくちゃんとしたカセットデッキを手に入れたと,とてもうれしかったことを覚えています。

 当時の目的は,FMで放送されていた,なも放送を含むライブの録音とアーカイブです。バリコン式の安物アナログチューナーに,カセットデッキは1971年生まれのA-450という組み合わせで始まった私のエアチェックですが,F-757と5素子八木アンテナの導入で一応残せる音質を入り口に据えることが出来ました。

 ここに4万円くらいで購入したアイワのXD-S260というDATを導入して,2時間そのまま番組を丸取りすることに成功し,カセットへのダビングを丁寧に行う環境が手に入りました。

 これは革命でした。1時間の番組を丸取りする方法はなく,カセットテープでは1度カセットを反転させないといけません。うまくCMで反転できればいいんですが,早すぎると番組の後ろを録音できなくなるし,遅すぎるとテープが終わってしまいます。

 そういう不安をDATで2時間録音できるようになってからは,全くせずに済んだわけで,音質も時間も,もう完全なタイムシフトです。

 こうなると,今度は最終のアーカイブメディアに,安価なカセットを使ってどんどんライブラリを増やしたいですね。しかし,A-450では音質に限界がありましたし,きちんと録音できているかを確認出来るのは,録音が終わってからになるので不安でもありました。

 そこで,FMエアチェックプロジェクトの総仕上げとして,3ヘッドのカセットデッキが必要だったのです。機種選定は個人的に好印象だったTEACから選ぼうと思っていましたが,買った人の意見やテープを傷めない工夫,そしてフェライトヘッド採用による耐久性の高さから,アカイを選ぶ事にしました。

 アカイの最上級機種は伝統的に,3ヘッド,クローズドループキャプスタン,PLLにdbxという特徴を引き継いでいましたが,残念な事に実質的なアカイの最終モデルであるGX-Z9100EVではdbxは非搭載となっていました。

 まあ,それでも最上位機種です。むしろ自然なノイズの消え方に定評のあるDolby-Cだけで十分という判断もあり,購入に至りました。

 それから27年。一度も修理も分解もせず,使えていました。テープガイドのグリス固着という持病も出ず,初期の音を維持してくれているように思ったのですが,それでももう30年近いわけですから,ここは1つケミコンの交換だけはやっておこうと,思い立ちました。

 GX-Z9100EVは,プリアンプがディスクリート構成のDCアンプなので,信号系に混電話が入っていません。それでも大量の電界コンデンサを交換しましたが,d年原型を含むプリアンプ以外にふんだんに使われていました。

 詳しいことは分かりませんが,ぱっと見るとオーディオ用の高級なコンデンサのように見えます。しかし秋月あたりではオーディオ用のものが一般のコンデンサと同じような値段ですので,躊躇なく交換していきます。

 交換が終わり,電源を入れて音を確認します。問題はなさそうです。しかし,なぜだかメタルテープを検出しません。メタルテープの検出スイッチが動作していないように思うのですが,うまく動かずその日は力尽きて寝てしまいました。

 翌日,続きをやるのですが,その過程でどうも基板がシャシーに触れたらしく,煙がもくもく出てきました。

 すぐに電源を切りますが,なんとか動いているようです。煙が出たというkとオハ,もうその部品は確実にアウトですから,本当は交換したいのですが特定出来ませんので,先に進みます。

 テスターで信号経路を追いかけていくと,問題の場所が特定,どうも,裸の製材を差し込むタイプのコネクタに,洗剤を差込損ねてしまったようで,1つの穴に2本のケーブルが刺さっていました。

 くだらないミスでしたが,これを戻している途中にまたショート,今度は煙は上がりませんでしたが,モーターの誤動作が止まりません。

 完全に壊れてしまったのですが,回路図を追いかけていくと,14Vから5Vを作ってマイコンに供給する電源ICの出力が出ていません。入力に入ったヒューズ抵抗があやしいと睨んで調べると,やはりここが800kΩくらいになっています。

 外して確認すると,やはり焦げています。これが原因だったのですね。

 電源ラインのショートでヒューズ抵抗が燃えているなら,他への影響はほとんどないでしょう。不幸中の幸いでした。

 三端子レギュレータは1Aのタイプで,ショートに対しても保護回路が働きますが,ここは安全を考えて2Aのチップヒューズに交換します。これで復活。

 今度はメカです。テープガイドの固着はないと思っていましたが,固着寸前の状態で,ジワジワと動作していることに気が付きました。これではいつ固着するか分かりません。

 最初はばらしてグリスの入れ替えをしようかと思ったのですが,テープガイドの位置の調整が面倒で,ミラーカセットも持っていませんから,現在のテープパスをよく見てから考える事にしました。

 透明なハーフのテープを何度も再生してみましたが,テープパスは非常に良好で,これを分解してしまうのは惜しいと考えました。そこで模型用の柔らかいオイルをテープガイドに注入して,スムーズに動くようにしました。

 これでとりあえず大丈夫です。

 リールのトルクが弱くなっていて,これはおそらくゴムの劣化によるものと思いますが,IPSSが動作しないなどの問題はありますが,それ以外は問題なし。これでしばらく使えそうな感じです。

 30年の汚れを綺麗に落として組み立てて完成。このデッキは隙間がないので,内部にホコリが入り込まないので,内部はとても綺麗です。

 ということで,カセットデッキはとりあえず復活。録音機能も問題なしで,再生音も昔の状態を維持してくれています。肝心なアーカイブしたテープには,例えばカシオペアやJIMSAKUなどが元気いっぱいの演奏をしているライブがあったり,人間椅子,PSY.Sなど,今ではもう忘れ去られているようなものまで,いい状態で残っています。

 これをとにかく,デジタル化しておかないといけないなあと,思っているところです。

 それで,気をよくした私は,DATのデッキを確認してみることにしました。ソニーのDTC-59ESJとアイワのXD-S260の2つですが,後者の方が導入が早かったので,こちらで録音したテープが多いです。

 ですが,XD-S260はトレイが出てこず。トレイ駆動用のゴムベルトが伸びていましたが,これを交換してもまともに再生せず,貴重なテープを切ってくれました・・・

 ここで私は気が付きました。サルベージすべきなのは,カセットデッキではなく,DATなのだということを。

 カセットデッキはそれでも修理がやりやすく,最悪新品を買うことも出来るでしょう。しかしDATはもうダメです。新品はおろか,程度のいい中古を探すことも難しく,かつ高度なメカゆえに,修理も大変難しいです。

 音が出るとはいえ,途中でドロップアウトが出たりすることは想像にたやすく,DATのデッキをとりあえず動く状態にして,ICレコーダで録音しないと本当にまずいなと思いました。

 DATは現在修理中ですが,並行してPCMレコーダーを選定中です。デジタルINのあるレコーダーって,本当に少ないので困っています。

 しばらく,30年前の機材と格闘することになりそうです。


 

El Capitanはあきらめた

 Macの最新OS,El Capitan。MacOSX10.0から数えて12番目にリリースされた最新のOSですが,うちのMacBookProでもなんとかインストールが可能ということで,機会を窺っていました。

 正直なところ,Yosemiteでちゃんと動いていますし,El Capitanの御利益も少ないマシンですので,別に無理はしないでもいいかとおもっていたのですが,今回は初めて,新しいOSにすることをあきらめました。

 理由は2つあります。1つは「プレビュー」が不安定である事です。PDFの閲覧のみならず,編集にも大活躍の標準ツールですが,ScanSnapのモノクロでスキャンしたPDFにカラーのPDFを差し込むと,レインボーサークルがクルクル回り続けてハングアップです。

 カラーやグレーなら問題はないのですが,モノクロだとどうもうまくいきません。他のバグは許しますが,PDFの編集が出来なくなってしまうことは私にとってはとても問題で,ほとんどこれが理由でEl Capitanをあきらめてしまった感じです。

 2つ目は,USB3.0のExpress/34が動かなくなってしまったことです。これまで,Multibeastから汎用のドライバをインストールして,NEC/ルネサスのチップを搭載したカードを動かしていましたが,El Capitan対応のMultibeast8.0がリリースされたことを機会に,El CapitanにアップグレードしてMultibeastを起動したところ,汎用のUSB3.0ドライバがありません。

 chage Logを見てみると,USB3.0のドライバは削除したよ,と書いてあるだけです。なにか理由があるんでしょうが,ドキュメントには記載がなく,調べてみても今ひとつわかりません。

 汎用ドライバ無しで動くようになったから,と言う話を目にしたので試して見ると,確かにカードを認識し,USB3.0が存在していることがわかります。

 しかし,実際に動かしてみるとだめです。ScanSnapは認識せず,途中でカーネルパニックが起きて再起動がかかる始末。HDDも全然認識しません。

 それ以前の問題として,Multibeast8.0が(8.0.1もですが)異常終了してしまい,ドライバをインストールすることができません。eSATAのドライバを入れようと思ったのですが,ダメでした。

 PDFの編集については,スキャンした書類を廃棄してしまうので,保存ミスや編集ミスがあったり,ファイルが破損したりしてしまうと,笑い事では済まされないのです。実績のあるツールを使い,人為的ミスによってのみトラブルが発生するという状況に保たれていないと困るわけです。

 そうした危険があってもメリットがあれば考えもしますが,速度の向上も僅かですし,見た目にもそんなに変わるものではありませんから,当面これでいいか,という話になったわけです。

 こなれてきて,バグも出尽くした頃に,USB3.0をあきらめてもインストールする価値が出てくるかも知れません。MacBookAirでEl Capitanを触っていますから,ちょっと様子を見ながらと言うことにしましょう。

 というか,もうマシンを買い換えてもいいのかも知れません。まてよ,El Capitanしか走らない最新モデルを買ってしまって,PDFの編集に支障が出たら,マシンもろとも使えないと言うことになってしまいます・・・うーん,困った話です。

安物機械式腕時計を調整

 昨年の冬ですが,amazonで安物の機械式腕時計を買いました。具体的な名前やブランドを書くのも恥ずかしいくらいなのでいちいち書きませんが,記録を見ると6000円ほどで買ったようです。

 ベルトはしっかりとしていますし,それなりに面白いデザインで憎めないのですが,ムーブメントは悪いもので,音も「ガジガジ」といった音がします。

 機械式腕時計を試すのにちょうといいと思って買った時計でしたから,その後にちゃんとしたセイコーの時計を買うための布石になったという点では,その役割を果たしたと思う訳ですが,それでも時々付けてみては,精度の悪さに閉口して使うのをやめるということを繰り返していました。

 そうこうしているうちに,時々止まっていることに気が付きました。やがて完全に動かなくなってしまい,娘のオモチャに払い下げられてしまったのが,先月の話です。

 ベルトだけ他に使うからと撮っておいたのですが,娘が乱暴に扱ったことがよかったのか,はたまた私が手持ち無沙汰に竜頭をグルグル回しまくったことが幸いしたのか,突然動き始めたのです。

 そのうち止まるだろうと思っていたら,何日もそのまま動き続けています。治ったと言いたくはないのですが,ゴミでも噛み込んだものが,外れたということでしょうか。どっちにしても調子が良さそうです。

 数日様子を見ていると,やっぱり精度の悪さは強烈で,3時間で5分ほど遅れます。これでは,昼間の活動時間に限ったとしても,日常生活に支障が出ます。

 どうせ一度壊れたものだし,このままでは使えない訳だからと,調整してみることにしました。

 ケースに傷がついても気にしないということで,なんとかフタを外してみようと観察をしますが,これだと思うとことが見当たりません。そこで,太めのマイナスドライバーを,ケースの縁とベルトの留め具のところにひっかけて,ぐぐっとこじりました。

 幸いなことに,ピンといい音がして,フタが綺麗に外れました。テンプについている調整機構をピンセットでいじり,どちらに回すと進むのかを確かめた上で,少しずつ合わせていきます。

 1週間ほど毎日調整を繰り返して,かなりいいところまで追い込んだところで,裏蓋を閉めますがこれが大変でした。

 とにかく閉まりません。万力で挟み込んでみますが,ガラスが割れそうです。指で押しても歯が立ちません。

 これも数日,悪戦苦闘したのですが,顎が大きく開くペンチで三箇所を同時に挟み込んで,パコッと閉めることが出来ました。二箇所ではどうしても閉まらなかったのです。

 ここで,蓋を閉めるための専用工具を買うという手もありましたが,6000円の一度壊れた時計を,数千円の工具で修理するというのも本末転倒な気がして,頑張って見た次第です。

 幸いにして,傷も付かず,変形もせず,元通りになりました。

 そしてフィールドテストとして,休日に家の中でずっと使ってみます。止まったり狂ったりしたときに,外出先では被害が大きいですから。

 ところが,想像の以上の精度の高さなのです。3日たっても4日経っても,狂いません。アナログの時計ですから,少しずつずれるのが分かるものですが,時刻の再調整が必要なほどずれることが,ほとんどないのです。

 大きい時計で,見やすく,見た目に面白いデザインで,その上精度がとても良くなりました。時計にとって精度は基本機能です。安物ではありますが,なんだかけなげで,とても気に入って使っています。

 セイコーの時計は,10万円近くしましたが,1日で1分くらいの遅れが生じます。これでは出かける前に毎日時刻を合わせないといけませんから,なかなか面倒です。

 調整に出せばいいんでしょうが,自分で調整出来た安物時計が目の前にあることを考えると,なんだか複雑な気分でもあります。

 それでも,自分で分解して調整しようという気はおきませんが,もう少し精度が出ていればいいのになあと思うのです。

 修理から10日以上が経過しましたが,この間時刻の調整を一度もしていません。絶好調です。しばらく使い続けてみようかと思います。

 

 

トーンアームを交換

  • 2015/11/09 15:01
  • カテゴリー:make:

 アナログプレイヤーに関して,20年来のテーマになっていたのが,トーンアームでした。

 カートリッジはいくつか試した結果,自分の好きなものを2つ見つけることができましたし,イコライザアンプも何台が作ってみて,今の形に落ち着きました。

 ターンテーブルは一度故障したものを自分で修理する時に,きちんと内部を理解してメンテナンスしましたから,これも気になりません。そうすると,残るはトーンアームです。

 完全にメカで,電気的な要素がほとんどないものですから,私には門外漢もいいところで,現在の状態がいいのか悪いのか,交換すると何が違ってくるのかがさっぱりわかりません。

 理想的にはトラッキングエラーをゼロにできればいいわけですが,そうもいかないので費用だったり扱いにくさだったり大きさだったりというデメリットの許せる範囲で,個々人が折り合いを付けるものでもあります。

 そもそも,私のプレイヤーはジャンク品を買ってきたものです。機械的な精度を要求されるトーンアームが一番壊れやすく,初期性能を保っていない部分である事は容易に想像がつきます。

 そこで,トーンアームの交換をずっと考えていたのですが,なにせ高価なものです。そうそう簡単に交換出来ません。かといって安いものを探して取り付けてしまえば,現在ついている純正のトーンアームよりも,性能的に落ちてしまうかも知れません。

 「かも知れません」というのが実に微妙なところで,なにせ比較をしていないので,私もよく分からないのです。10万円ならいいのか,40万円ならいいのか,純正のトーンアームがどのくらいのレベルのものなのかも,わかっていません。

 それに,私は恥ずかしいことに,綺麗にメンテナンスされたハイエンドのアナログプレイヤーをほとんど使った事がありません。一番高だったのは叔父が持っていたプレイヤーでしょうが,それだってそんなに大したものではなかったと思います。

 そうなってくると,最初の交換は性能の保証された新品でと思う訳ですが,それにしても安いもので10万円です。一番安価なもので10万円ですから,これで高性能だとしたら,50万円のトーンアームの存在理由が問われてしまいます。

 しかし,中古品,ましてオークションなどは,見極めが出来るだけの能力がないので非常に危険です。

 いろいろ思案したところ,とりあえず安い上に評価が高く,特に海外の評判が良いSA-750Eにしようということになりました。フォノケーブルが安いもので8000円ですから,ざっくり予算としては,8万円までです。

 キャビネットもフォノモーターもこのまま使うので,憧れであったロングタイプを使う事はあきらめます。今ついている標準的な長さのものに近いものを探すと,これになりました。

 アナログプレイヤーの関連は,市場が小さいだけに,今ある在庫がいつまで買えるか分かりません。仮に買えても値段が倍になることもあったりするので,欲しい時に買う,もうこれしかありません。

 ところが,やっぱり10万円は高いなあと思う訳です。10万円で,使いこなしが楽しめるものならいいんですが,そういう感じのものではありませんし。

 と思って,いろいろ物色していると,非常に気になるトーンアームがひっかかりました。グレースのG-940というものです。

 品川無線という会社のブランドがグレースで,そんなに大きな会社ではありませんが,非常に優秀なカートリッジやトーンアームを製品群に持ち,オーディオブームだった1970年代から80年代に,大きな存在感を持っていたメーカーです。

 ここのトーンアームが優秀なことは私も聞いていましたが,具体的な話は何ひとつ知りません。そんな中で,G-940はシングルサポート,オイルダンプ式という強烈な個性を放っていることに気が付きました。

 トーンアームというのは,レコードに対して水平方向に動く部分と,上下方向に動く部分が必要です。水平方向は言うまでもなく,レコードの外側から内側に渦巻き状に刻まれた溝を,レコード針がトレースするのに必要な移動です。

 上下方向はレコードの反りに追従する必要があることと,適度な針圧をかけるために必要です。ですが,これ以上に必要な可動部分はないということでもあります。

 で,可動部分ですから,支点が必ずあるわけで,支点があればそこに必ず摩擦があります。摩擦があれば動きを妨げる力が働くことになるわけで,素人の頭で考えても摩擦は少ない方がいいとわかります。

 一方で,もしどんな振動に対しても完全に追従できてしまうと,レコード針の振動にも追従してしまうので,音が出ません。かといってどんな振動にも追従しないようにしてしまうと,25分で10cmほど移動することもできなくなり,レコードを再生出来なくなります。

 つまり音として拾い上げたい振動だけは動かず,それ以外の振動については動いて欲しい,そういうものが理想的なトーンアームです。なかなか難しいですよね。

 しかも,その周波数特性を決定するパラメータが,カートリッジ,キャビネットの材質,キャビネットの足,ターンテーブルの防振シート,トーンアームの関節の構造,それぞれの質量,密度,長さや節の数に関係するというのですから,もうたまったものではありません。

 こうした要素で,アナログプレイヤーにはシステム全体で非常に複雑なピークやディップを持った周波数特性があって,200g程度の塩ビの円盤から吸い出せる情報量に,差が出てしまうというわけです。

 当然,ちょっとした違いから出てくる音に変化がつくわけで,それが好ましいものになるように追い込んで行くのが,アナログプレイヤーの面白さでもあります。

 話をトーンアームに戻しますが,摩擦を減らすには支点を減らすのが一番です。水平方向と上下方向にそれぞれ1軸の間接があったら,全部で2つの支点があります。特に上下方向を点で支えるか,線で支えるかでまた違いがありますし,どっちの場合でも摩擦が発生する部分は2箇所出てきます。

 ちょっと考えると,やじろべえのような,1点でバランスを取って支える仕組みが一番いいと言うことに気が付きます。なるほど,これだと水平方向でも垂直方向でも同じように動き,同じ支点を共用しますので,無理がありません。

 しかし,やじろべえを作った子供の頃を思い出すと,うまくバランスを取らないと、落っこちてしまいます。それに,摩擦がほとんどなくなりますので感度は高くなりますが,追従して欲しくない周波数にもついていってしまうでしょう。

 最も大きな問題は,動いて欲しくない方向にも自由度があることです。トーンアームに欲しい自由度は水平方向と上下方向です。トーンアームがねじれる方向には動いて欲しくありません。カートリッジが斜めに傾いた状態になるとステレオ再生に問題が出ますので,実はこのタイプのトーンアームは,ステレオ時代に廃れてしまったという事実があります。

 そこで,動いて欲しくない周波数の「動きにくさ」を増やし,減衰させます。これがダンピングです。ダンピングにはいろいろ方法がありますが,摩擦を使う方法や油を使う方法などがあります。

 G-940というトーンアームは,このダンピングにシリコーンオイルを使う方式です。シングルサポートというのはやじろべえと同じく,1つの針の上にのっかる構造,そしてそこに制動用の硬いシリコンオイルをもちいて,ある周波数以上の振動には追従しないようにするわけです。

 これが,取り付けるターンテーブルやキャビネットが決まっている,同時にヘッドシェルやカートリッジも決まっているなら,話はそんなに難しくないでしょう。しかし,このトーンアームはユニバーサル型で,どんなものにも適合しなくてはなりません。

 カートリッジの大きさも重さも,重心の位置もバラバラです。これで,水平方向の長周期の追従性と,上下方向の数Hzの追従性を損なわず,それ以外の動きをがちっと規制するようにするのですから,そりゃ大変です。

 G-940は,その構造故に大変優秀なトーンアームとして,1970年代前半に登場して好評価を得,ベストセラーになったそうです。しかし,調整も難しかっただろうし,なにせシリコンオイルを使わないといけないという,難しい条件で性能を発揮するものだったのですから,ユーザーが気を抜いたらたちまち性能が出なかったのではないかと思います。

 当然,カートリッジを交換すれば複雑な調整をやり直さないといけないだろうし,経年変化も大きかったでしょうから,そういう面倒を嫌がる人には向かないでしょう。だから,この構造のトーンアームは,現在新品では手に入れられないはずです。

 なら,挑戦したくなるもの,これまた人情というもの。

 手に入れる方法は,とりあえず中古オーディオショップか,オークションです。一般的にオークションの方が安く手に入るものですが,質はもうまちまちです。それこそゴミ捨て場から拾ってきたようなものから,大事に個人で使っていたものまで様々です。

 私は,値段が上がる傾向のあるものを狙いました。他の知恵のある入札者にのっかってやろうと考えたのです。まあ,私のような素人が二人で競り合いをするようなことがあると,最悪なわけですが。

 で,落札したのが10月末です。はっきりいって中古ショップよりも高価な値付けになりましたし,届いたものは私に言わせれば価格以下のものだったので,かなりがっかりしたわけですが,まあ仕方がありません。それでも,新品を買うよりはずっと安くついたと,あきらめることにします。

 まず,全体に錆びだらけです。使わずに長期間放置されたんだろうと思います。また,タバコのヤニもついています。オーナーは喫煙者ですね。

 また,動作確認のためにオイルを入れたんでしょうが,抜くわけにいかないので天地指定で届いたのはいいものの,開封するとやはりオイルが漏れていました。漏れた分は拭けばいいのですが,残ったオイルがどれくらいあるかがわからないので,出来れば一度空っぽにして入れ直したいところです。

 とにかく,付属品が揃っているか,破損はないか確認です。見たところ大丈夫そうです。かなり劣化も進んでいるので,フォノケーブルはかなり厳しい感じですが,低容量ケーブルが必要なフォノケーブルは高価ですし,当面このまま使います。

 次に,可能な限り分解し,清掃です。パイプのメッキをピカールで磨きます。しかし今ひとつくもりが取れません。リューターを使ってみたのですが,手元が狂って回転部分が接触,ゴリゴリという嫌な音がして,傷がついてしまい,そのまま寝てしまった日もありました。

 そんなこんなで磨き終わりましたが,オイルをどうやって抜くかが次の問題です。

 分解は出来ればしたくないのですが,良く探してみると分解している人のブログが見つかりました。大いに参考になったのですが,これによると下側にあるプラスのビスをはずせば,支点部分が外れてオイルカップが出てくるようです。

 ということで,早速緊張しながら試したところ,残念ながらうまく分解することが出来ませんでした。無理をすれば壊してしまいそうでしたし,いじっている間にオイルもほとんどこぼれてしまったようなので,もうこのまま進める事にします。

 とりあえずレストアが終わったので,次は取付です。

 プレイヤーをラックから取り出し,今のトーンアームを外します。テンプレートを使って取り付け位置を決めますが,今の穴は使えそうにないので,新たに開ける必要があります。

 以前のトーンアームの取付穴から,斜めに2cmほど内側に入った所に穴を開ける必要があるのですが,そのままでは穴を開けることもできませんので,まずは塞ぐことにします。

 穴は径50mmで7mmほど掘り下げてあり,そこからさらに径25mm程で貫通しています。7mmの合板を2枚重ねてキャビネットを作ってあり,さらにその下におがくずを4cm固めて充填してあります。

 とにかく,トップにあいた50mmの穴を塞ぐ必要があるのですが,これがなかなか大変です。パテで埋めるわけにも行きませんし,7mmの合板で埋めるには,綺麗な円を切り出す必要もあります。

 そこで,今回は手持ちの関係から,3mm厚のMDFを,コンパスの形になったカッターナイフでコリコリと2枚ほど切り出しました。そして,0.4mm厚のプラ板を同じサイズで何枚か切り出して,両面テープで重ねて貼り合わせました。

 このままだと不格好なので,木目のシートを一番上のMDFに張り付けて,一応形になりました。このシートの色が全然あっていないので,いかにも塞ぎましたという不格好さが満載なのですが,わざわざ買うのも面倒だし,加工そのものは綺麗に出来ているので,ここに元々のトーンアームがありましたよ,という印も兼ねて,このままで進めます。

 そして,テンプレートで再度取り付け穴の位置を確認し,中心に6.5mmの穴を開けます。お,この作業中に娘がやってきました。しゃがみ込んで,私の作業を見ています。

 次にこの作業のために購入したホールソーを用意します。25mmにセットし,木目シートを少し大きめにカッターで切り抜いておきます。ホールソーの先端が広がって真円になっていないことも問題なので,ここは結束バンドで縛っておき,のこぎりが広がらないようにします。

 そしていざ,電気ドリルでゴリゴリと穴を開けていきます。予想以上に綺麗にあきましたが,娘もその音と穴に,びっくりです。

 25mmの穴が貫通したのですが,このままではおがくずが分厚く取り付けできませんから,そこは50mmほどでザグっておきます。キャビネットを裏返し,ゴリゴリと切り進めます。娘は音と木くずに驚いています。

 最後に,テンプレートに従って,アームレストを取り付けます。これは簡単ですね。

 これでとりあえず,トーンアームが取り付けられる様になりました。

 一方,ターンテーブルもメンテをしておきます。

 DP-2000ももう40年近く前の製品ですから,電界コンデンサくらいは交換しておきたいところです。久々に裏返し,ケースをあけて,電解コンデンサを交換していきます。

 ストロボスコープ用の平滑コンデンサと思われる4.7uF/250Vが液漏れをしており,容量を測定したら案の定抜けていました。これを交換すると,これまで問題になっていたストロボスコープのちらつきが治りました。

 困ったのは1000uF/63Vや,4.7V/160Vといった高耐圧品の在庫がなかったことで,これは通販で手配しました。

 動作を確認し,ケースを閉じて,フォノモーターはメンテ完了。すべての電解コンデンサを交換し,ハンダ付けも怪しいところはすべてハンダ付けをやり直しておきました。

 うっかり壊したインシュレータを修理したり,いろいろ面倒だったのですが,とりあえずキャビネットにすべてを取り付けます。

 トーンアームをラフに調整し,ラックに収める前にオイルを入れてしまいます。
あらかじめ購入してあったエーゼットの100000を0.5ml,シリンジで注入し,フタをして終了。

 次は調整です。ヘッドシェルを取り付け,オーバーハングを確認し,カートリッジを取り付けます。そしてトーンアームの高さを合わせて水平を出します。

 バランスウェイトを調整してバランスさせ,この状態でサブウェイトを調整し,ラテラルバランスを取ります。これでラテラルバランスが取れればいいんですが,駄目な場合はバランスウェイトを外し,偏心している取り付け軸をまわして,なんとか水平を出します。

 ついでにいうと,このG-940ってアンチスケーティングがないんですね。S字のアームだからインサイドフォースは発生するはずなんですが,振動ではなくて力ですし,オイルダンプがあっても駄目なものはダメだと思うんですが・・・

 まあ,インサイドフォースキャンセラーとか,アンチスケーティングとか,ほとんど影響しないから気にすることはないという意見もあるし,存在は認めつつも発生条件が複雑で,同じ設定でキャンセルなど出来るはずがない,という意見もあります。

 溝のないレコードでインサイドフォースを確認する方法にさえ,条件が違うから参考程度だという考え方もあるので,あまり気にしても仕方がありません。

 ME97HEを取り出して,トーンアームに取り付けます。ゼロバランスを取り,次にラテラルバランスを取ります。針圧をかけて,レコードを聴いてみます。

 見てみると,なんとかバランスし,綺麗にトレースしているようです。まるで滑るようにトレースしています。ラテラルバランスも取れているし,ゆらゆらと動く振動も制動がかかっている感じです。これが1点支持だと思うと,ちょっと感動します。

 肝心の音ですが,これは随分違うものです。しゃきっとエッジが立っていること,なによりトラッキングエラーが軽減され,これまでだと音が濁ったり歪んだりしていた内周部でも,音の劣化が軽減されています。

 高さの調整が難しかったこと,オーバーハングが15mmということで,これまでのトーンアームに比べて少し短いためカートリッジとシェルの取付をやり直す必要があったことなど,ちょっと面倒な事がありましたが,これも終了。

 最後に,アープリフターが勝手に降りてしまうという問題がありましたが,これはほっとくと針を壊してしまうので,改造を前提に分解して,簡単に降りないようにしました。

 一応これですべて調整が終わりです。

 音も満足,何より高いポテンシャルを持つトーンアームを使いこなす楽しみは素晴らしいです。滑るようなアームの動きはとても魅力的です。

 反りや偏心にもちゃんと追従しますし,意図的に与えた振動もきちんと制して,びしっとトレースしています。いいですね。

 ところでこのトーンアーム,カートリッジを交換するごとに,針圧はもちろん,ラテラルバランスも再調整が必要です。そして完全な水平を出すのが思った以上に難しく,水準器を使わなければ作業が進みません。

 しかも,カートリッジの標準針圧に対する,最適な針圧の差分が違っているので,本当に細かく調整して追い込まないといけません。最適値から外れた状態で,音に変化があるというのは予想外でしたが,特に大振幅時のトレース能力に差が出るようですので,きちんと合わせていかねばなりません。

 以前のトーンアームに比べると,針圧は重めにかける必要がありそうです。

 こういう作業を繰り返しているうちに,もうこのプレイヤーは,私以外には使えないものになってしまったことに気が付きました。これまではなんとか嫁さんまでは使えたのですが,こんな難しいもの,多分無理だと思います。

 そんなわけで,PV集が発売になり盛り上がっているビートルズのうち,2003年再販のLET IT BEを聞いてみましたが,どうも音が薄く,しかもビリビリと歪みがでています。

 音質云々以前の問題として,聞くレベルに達しておらず,これは調整ミスだと思ってあれこれいじってみましたが,全然解決しません。

 もしやと思って,無理をいって叔父から譲ってもらった,オリジナルの発売時のLET IT BEをかけてますと,歪みもなく,低音がどどーんと出てきて,ボーカルが艶やかに立体的に浮かび上がってきます。そうそう,これです。

 ビートルズの場合,生産国の違いによる音質の違いなんてのは当たり前の話ですし,よせばいいのにしょっちゅうリマスターをしては不評を買っていますから,少々のことでは驚きませんが,歪んでしまって聞くに堪えない状態が設定でも調整でもなく,レコード自身の問題で引き起こされていること意外でした。

 中学生の時の,アナログレコード(というかオーディオ)の私の原体験である,叔父のDP-3000とV15tywpeIIIによるLET IT BEと同じ感動を,音が出た瞬間に味わえたことはとてもうれしいものでした。

 ただ,カートリッジと針圧の関係がかなり複雑で,これまでのトーンアームと違って,バランスウェイトの目盛りに合わせればいいという話ではなさそうなので,針圧計を買って,1つ1つきちんと管理していこうと思います。

 今回の作業の,一番派手な木材加工をつぶさに見ていた娘が,アナログレコードの意味や価値に興味を持ったとき,このプレイヤーがどんな風に見えるのか,その音を聞きながらつくづく考えていました。とても楽しみなことです。

BlackBerryQ10を導入

  • 2015/11/06 15:52
  • カテゴリー:散財

 かつてRIMと呼ばれた名門Blackberryですが,こと日本ではマイナー機種としてほとんど顧みられることはありませんでした。

 まるでCYBIKO(知ってる人はいないんじゃないかなあ・・・)じゃないかと声を上げてしまう小さなキーボード,正方形のLCDに,パチンコ玉のようなトラックボールという個性的な出で立ちから,ぱっと見るとそっち方面のガジェット好きに向けた,マニア向け製品のように見えて,その実体はカリカリのビジネスツールというアンバランスさが,ますます謎めいています。

 真面目な話をすると,企業内で使われているイントラネットをそのまま外に持ち出すにはどうすればいいのかという問題を,システム全体で解決したのがこのBlackberryです。

 メール1つとってみても,会社の中にあるメールサーバーに,外からアクセスすることはセキュリティ上許されません。かといって,外からアクセス可能なメールサーバーに会社のメールを転送するなどもってのほかです。

 なら,専用の端末だけがアクセス出来る専用のメールサーバーを会社の中に立ち上げておき,端末とサーバー間の安全性を担保すれば,イントラネットを外に持ち出すことが出来るというのが,Blackberryの面白いところです。

 ですので,Blackberryは端末だけでは成り立たず,専用のサーバーがなければなりません。日本ではこうした仕組みは一般的ではなく,携帯電話はあくまで個人と紐付いて,キャリアが用意したシステムに繋がることが前提になっているので,Blackberryは市販されることはありませんでした。

 別に珍しくもなんともない,とお思いでしょうが,これを彼らは20世紀である1999年にやっています。このころは日本の携帯電話が世界最先端とチヤホヤされた時期で,PDAが世の中に出てきたころでもありました。携帯電話は話をする物であり,データをやりとりするものではなかった時代に,キーボードまでつけたんですから,大したものです。

 こうして,企業向けの情報ツールだったBlackberryですが,キーボードにトラックボールというある種の人々の心を鷲づかみにする装備のおかげで,世界中に愛好家がいるのも事実です。

 日本でも実物を見たことがなくても名前は知っているとか,マニアが自慢げに使っているとか,ドコモが導入したけども真面目にやってくれなかったのでいつの間にか消えたとか,そんな程度の扱いだったのですが,昨今の格安SIMとの組み合わせで販売されることが決まり,正式に日本に再上陸することになったのも,記憶に新しいところです。

 こうなると,スマートフォンの選択肢の1つとなるわけですが,かつてのシステムとしてのBlackberryはどうなったかというと,これが結構崩れているのです。

 まず,OSが独自のBlackberryOSではなくなりました。独自OSだったのはBlackberryOSのVersion7までで,現在のBlackberry10というOSはQNXという組み込みOSをベースにし,DalvikVMとAPIを実装し,androidのアプリが走ります。

 もともとQNXは軽いリアルタイムOSですから,本当かどうかは別にして,LinuxベースのAndroidに比べると随分サクサクと動くといわれています。

 で,専用のサーバーが必要という問題は,なくても動くようになりました。ここに至って見た目が個性的なAndroid互換スマートフォンになったというわけです。

 日本人が知らない間にBlackberryは社名が変わっただけではなく,これだけの変化をしていました。もともとポケベルだったBlackberryが,今こんな状態になっていることを,とても感慨深く感じています。

 で,その新世代Blackberryですが,さすがにキーボードもなくしてしまったモデルは不人気だったため,次の世代ではキーボードを復活,ここでもトラックボールがないことを攻撃されて,最新世代ではトラックボールも復活させました。

 そうなると,一世代前のトラックボールなしのモデルが,安く売られるようになるわけです。

 調べてみると,Blackberry10搭載モデルである,BlackberryQ10とQ5が,いずれも2万円以下で手に入るじゃありませんか。Q5はQ10の下位機種で,価格は安く,メモリも半分というモデルなのですが,後のデザインコンセプトである矩形が取り入れられています。

 機能としてはQ10の方が圧倒的に上で,これが2万円程度というなら,ぜひ使ってみたいと思うじゃないですか。気が付いたら,ぽちっていました。

 しかしあれですね,台湾からわずか数日で家まで届くんですね。いろいろな人が私のこの小さな荷物を,リレーして届けてくれるんですよ,飛行機まで使って,わずか1400円で。申し訳ない気持ちになります。

 てことで,届いたBlackberryQ10(以下Q10)をメインマシンとして運用を始めた記念に,ちょっとレビューを書いてみます。

・買ったモデルのスペック

 Q10は世界各地で販売されるので,様々なバージョンが存在します。主な違いはモバイルネットワークの対応なのですが,私が手に入れたのはSQN100-3というモデルです。

 対応しているバンドは,

LTE(4G)・・・BAND3(1.8G),7(2.6G),8(900M),20(800M)
W-CDMA(3G)・・・BAND1(2.1G),2(1.9G),5(850M),6(800M),8(900M)

 ということです。

 一方,ドコモが提供するのはLTEがBAND1,3,19,21,28,W-CDMAがBAND1,6,9,19ですから,SQN100-3で利用可能なのはLTEがBAND3のみ,W-CDMAがBAND1と6だけです。

 このLTEのBAND3というのは,ドコモでは東名阪バンドと呼ばれているもので,都心でしか使えません。そんなわけで,日本の事情に最もフィットしていると言われているSQN100-3でさえも,この程度だと割り切る必要があります。

 ところでLTEのBAND3は下り150Mbps,W-CDMAはHSDPAで37.5Mbps~112.5Mbpsです。このうちBAND1は全国でOK,BAND3は東名阪で必須,BAND6は800MHzで山間部などで有利です。

 参考までに,SQN100-1からSQN100-5までの対応を書いておきます。2Gは省略。

SQN100-1 
 4G:BAND2,4,5,17
 3G:BAND1,2,5,6

SQN100-2
 4G:BAND4,13
 3G:BAND1,2,5,6,8

SQN100-3
 4G:BAND3,7,8,20
 3G:BAND1,2,5,6,8

SQN100-4
 4G:BAND25
 3G:BAND1,2,5,6,8

SQN100-5
 4G:BAND2,4,5,17
 3G:BAND1,2,4,5,6

 ネットワークの話はこれくらいにして,私の手元に届いたQ10の話を続けます。Q10は仕向けによってキーボードに他の国の文字が印刷されています。補助文字といって,中国語だったりアラビア文字だったりするようですが,私の場合は幸いなことに,補助文字の印刷のないモデルでした。

 電池は2100mAhで取り外し可能,ディスプレイは720x720ドットの3.1インチOLEDで解像度は328ppiです。すごいですね。

 カメラはリアが800万画素,フロントが200万画素です。リアのカメラはパンフォーカスではなく,ちゃんとAFが働きます。WiFiは2.4GHZと5GHz両対応で802.11nです。

 CPUはSnapdragonS4PlusでDualCoreの1.5GHz,ストレージは16GB,RAMは2GBを搭載しています。発売が2013年のQ2だったと思いますので,もう2年前のモデルです。その頃のスペックとしてはまずますですが,今となっては大したことはありません。

 SIMはmicroSIMで,microSDカードは一応128GBまで対応という事になっています。NFCにも対応しますが,私の場合は使わないのでOFFにします。GPSは当然内蔵していますが,ON/OFFは位置情報のON/OFFで行うようです。

 そうそう,大きさですが119.6x66.8x10.4の139gということで,今どきのスマートフォンとしてはやや小さいかなという印象を受けます。

 Q5と違って,角が丸まっているのを私は今ひとつと感じていましたが,実際に手にしてみるとなかなか馴染むので,Q10でよかったと思います。

 キーボードですが,なるほどこの道を切り開いてきたパイオニアだけに,素晴らしく使いやすいです。最新のOSでは日本語の入力にも標準で対応しているので,海外の端末を使う際の儀式である日本語化という作業は,全く必要ありません。

 もともと高価な端末だったこともあって,最初から安物の端末とは比べものにならないくらい,密度感があります。かちっとした剛性もあり,持っていることがうれしくなるガジェットだと思います。


・やったこと

 具体的な方法は他にいくらでも出てくるので,やったことだけを書きます。

 まずOSのアップデートです。10.2からは日本語の入力に対応していますし,10.3になると漢字フォントが中国の文字ではなく日本の文字になりますので,読みやすくなります。他にもAndroidアプリの互換性なども上がるという事ですので,ここは迷わず最新にします。

 私の場合,2GBを越える容量をダウンロードすることになり,アップデートには一晩かかりました。現在は10.3.2.2474が入っています。もっと新しいものがあるそうですが,私の所ではアナウンスされません。

 そしていよいよモバイルネットワークの設定です。私はIIJmioでデータ専用のユーザーですが,SIMをmicroSIMに交換してもらいました。

 一度目はなぜかうまく繋がらず,交換に失敗したのかと焦ったのですが,元のスマートフォンに戻してみると使えるのでSIMの問題ではなさそう。再度Q10に入れたところ,無事に動き出しました。

 私の住んでいるところでは4Gは掴まず,もっぱら3Gですが安定しています。一方品川の職場では4Gはなんとか掴みますが,3Gも含めてどうも不安定で,データ通信が切れてしまう事が多いような印象です。

 なお,ネットワーク設定でこのSIMがアクティベートされていない,というメッセージが出てくるのですが,これは私のSIMがデータ通信専用で,3Gの場合は音声通話が出来なくなっているからだと思います。4Gを掴むと,このメッセージは出てきません。

 その4Gですが,設定を自動にすると掴みません。しかし手動にしてDOCOMOを洗濯すると,4Gを掴んでくれます。ただ電波は弱く,そのせいで3Gを優先しているのかも知れません。

 しかし4Gの速度は体感できる位の差があります。できればこちらで運用しようと思っていましたが,帰宅するとQ10がホカホカになっていて,消費電力が増大しているという事故が発生,これが4Gのエリア外に来たことで発生しているのであれば,3Gに固定する方がよいと思っていますが,これはもうちょっと調査が必要です。

 BlackberryIDの取得もやっておきます。BlackBerryのストアに相当するBBWorldへのログインにも必要ですし,BlanedやLinkでも必要になります。

 次はGooglePlayのインストール。海外にいるBlackberryのファンが開拓した世界ですが,要するにGoogleのアカウントを扱えるようにすることで,それらが必要なGoogleのアプリが動くようになるというわけです。

 GooglePlayが動き出したら,マップやChromeをインストール。開発者サービスがないと通知でいちいち怒られますが,後述するAndroidSettingで黙らせておきます。

 ATOKを入れるために,AndroidSettingをインストールします。これを入れないと入力メソッドを選択出来ません。ただ,ATOKは物理キーボードで使うことが出来ませんから,結局アンインストールしました。

 ツイッターは標準インストールのものをそのまま利用します。問題ありません。メールも標準のものを使い,BlackBerryHUBで一括管理しようかと思いましたが,思いの外使いにくく,見た目も良くないですし,一括管理のメリットよりも,個別管理のこまわりの良さの方がメリットがあると判断し,K-9Mailを従来通り使う事にしました。

 SimpleNoteはアプリが問題なく動きます。私のレシピはここにたくさん入っているので,必須です。

 そうそう,Googleカレンダーは公私の予定管理に必須なのですが,これは標準のものが良い感じです。標準のカレンダーはGoogleカレンダーと同期してくれます。

 他にも,出来るだけ前の機種で使っていたものを引き継ごうと思いましたが,ウィジェット系は全滅ですし,ゲーム類も動かないものが多いです。予想外だったのはクロネコヤマトのアプリで,これは落ちてしまいます。JR東日本のアプリは問題なく,サクサクと動いて快適です。

 テザリングはUSB経由で行う予定でしたが,Windowsではドライバが専用になるということと,あまり安定しないということこともあり,Bluetooth経由で運用します。WiFiで接続するほど高速である必要もありませんし,電池の持ちも重要ですから。

 ちなみにLinuxでは,特にドライバをインストールせずともUSBでテザリングが出来ました。ただ不安定です。

 Blackberry BlendとBlackberry Linkは便利そうでインスト-ルしてみたのですが,PC上でQ10を操作できてもあまりうれしくなく(あくまで個人の話であり,会社のネットワーク接続がBlackberryに限定される場合,この方法は非常に便利なはず),Blackberry Linkもうっかり初期化してしまいそうになるなど,危険なので使うのを控えることにしました。PCドキュメントとの同期にメリットがあるなら,うれしい機能でしょう。


・実際に使ってみて

 まず,サクサク動きます。画面がサクサクという意味もありますが,キーボードによる入力がとても楽ちんで,特にメールアドレスやパスワードの入力にストレスがありません。日本語の入力は不満が残りますが,それでもタッチパネルよりずっといいと思います。

 カメラも思った以上にきれいに撮れますし,16GBのmicroSDを1つ入れておけば,音楽もたくさん突っ込んでおけます。地味にBluetoothのapt-Xに対応しているので,実はワイアレスでも高音質で音楽を楽しめたりします。

 動画系はどうせ使いませんし,期待していなかったので評価していません。一応VLCを入れておきましたが,使うのはローカルか,WiFi経由でしょう。どっちにしてもこの端末で動画を見ようとは思いません。

 電池の持ちは,予想通りという感じです。あまり使わなければ数日いけるかなという感じです。ただ,前述のように変なトラブルが発生して電池が急激になくなることもありましたので,このあたりは様子見です。


・不明なこと

 Blackberry Protectという,端末をなくしたときの保護機能があるのですが,これがうまく動きません。端末側で設定してもWEBからは見えず,端末側を再設定しようとすると途中で止まってしまいます。

 あると便利な機能で,端末がどこにあるかを確認出来るのは面白いのですが,冷静に考えるとIDでの認証だけで場所が分かって初期化も出来るなんてのは,ちょっとどうかと思ったりもします。


・総じて

 持っていることのワクワク感,普通に使える実用性,分からないことを自分で解決していく達成感は,期待通りでした。こんないいものを日本人以外の人は普通の選択肢に持っているんですね,うらやましい。

 やっぱりキーボードがあるということは,なによりもメリットだと思います。私個人は,もう20年もするとキーボードは絶滅すると思っていて,それまでの間の,しかも旧世代の拠り所となるものだと思っていますが,今のところこれに勝る入力デバイスもなく,BlackBerryという端末の個性として輝いていることは否定できません。

 これからあれこれと問題も起きるでしょうが,壊れるまで使っていこうと思います。

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