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2020年07月の記事は以下のとおりです。

レトロPC救済作戦

 1980年代,90年代のリバイバルが,あちこちで活況です。ここ数年くすぶっていたレトロPCやレトロゲーム機ブームも定着した感があり,本家のゲームメーカーがミニ版を発売するに至って一般化した感じも拭えません。

 ただ,ミニ版で遊んでいるうちはいいんですが,やはり本物がいい,などと言い出すとその敷居は高く,多くの人は途方に暮れるでしょう。

 一番の問題は,ディスプレイです。

 コンスーマーゲーム機(ゲームコンソールといいます)は,余程の事がない限りコンポジットビデオ出力がありますので,最新のテレビでも接続出来るものが多いはずです。

 しかしこのコンポジットビデオ出力というのは,さすがにNTSCという過去の遺跡であり,これで表示される画面のひどさというのは,その当時の人々でさえも辟易していました。

 レトロPCになるとさらに事情は深刻で,MSXやPC-6001などのマシンはコンポジットビデオ出力でなんとか出来ても,RGBディスプレイを用いるPC-8801シリーズやX1シリーズ,そもそも水平同期周波数が15kHzですらないPC-9801やX68000などは,どうやっても今のテレビには繋がりません。

 そりゃそうです,当時だってこれらのマシンは特殊なテレビしか接続出来ず,基本的には専用のディスプレイとセットで使っていたのですから。

 問題はこの専用ディスプレイです。RGBであること,最低15KHz,24kHz,31kHzの3つの水平同期周波数で同期がかかることが必要ですが,人類はディスプレイをLCDに移行させた段階で,すでにこの機能を手放してしまっています。

 LCDはCRTと原理的に異なります。RGB方式というのは,いわばCRTを直接駆動する方式ですから,その画質は高くとも,LCDとは相容れない方式なわけです。

 ですのでここに辻褄合わせの回路が入り込むわけですが,これがまた高価でややこしい代物です。しかも画質がかなり劣化します。それで救えるのがレトロPCなんですから,誰が対応するのかという話です。

 この手の需要に応え続けたのが,電波新聞社のスキャンコンバータシリーズです。VGAのPCがまだ存在し,VGAのアナログRGBならまだ使える時代に,レトロPCやゲーム機のRGB信号を変換する装置ですが,目的が目的ですので,その画質やレイテンシにはこだわりがあり,現在も高い評価を得ています。

 発売時期が古いことで部品の入手が厳しくなったらしく,すでに販売が終了しているものも多いのですが,一方でディスプレイ本体よりも高かったりするお値段も,本当のマニアでないと買わないという特殊な機材になっていました。

 画質はともかく,とにかく表示出来るディスプレイはないものか,当時のCRTを使い続ける人々は,いつ火を噴くともわからない時限爆弾を抱えて,焦っていました。

 そんな中で,数年おきに出てくるのが,15kHzが映ったよ,という声です。

 それは,三菱のLCDが密かに対応していたとか,ある中国製の安価なディスプレイに繋いだらOKだったとか,そういう話です。しかし,X68000のあるモードには対応しないとか,複合同期信号に対応しないとか,なにかと問題があり,完璧な対応は非常に難しいものでした。

 しかしここ最近,またこの界隈が賑やかになってきているようです。理由は,11から13インチクラスの1920x1080のLCDパネルが安くなったこと,接続がeDPで統一されてきていること,そして安価なLCDドライバを用いた,汎用性の高いLCDドライバ基板がたくさん出回るようになり,ガレージメーカーを含めた有象無象なディスプレイが,1万円程度で出てくるようになったことがあります。

 もちろん,これらは中国製ですし,玉石混淆です。でも,当たりが出たときは大きくて,X68000に妥協なく完全対応するディスプレイが現れた時にはお祭り騒ぎになりました。

 私は,今さらX68000の実機で遊ぶこともないわな,とこの祭りに乗り遅れてしまったのですが,冷静に考えてみると実家にはPC-6001mk2,X1turbo,X68000,SegaSaturn,Dreamcast,何枚かのゲーム基板と,RGB目白押しです。

 これらをどうするか,以前から頭の痛い問題ではあったのですが,今回,ふとしたことをきっかけに,これらのヘリテージをいかに残すかを真面目に考える事にしました。

 これらのRGBを問題なく受けられるLCDは,今もあるにはあります。しかし,大きかったり高価だったりとなにかと制約があります。11インチから13インチまでのLCDで,使わない時は片付けられるものが理想ですが,この理想を安価に具現化し,かつてCocopar旋風を巻き起こしたCoCoperのTX133019はすでに廃番。

 これにかわる,現在入手可能なLCDは,なかなか見当たりません。

 ですが,探して見るものです,WIMAXITというブランドのM1160という11インチのLCDが,15kHzのRGBに対応するという情報を得ました。

 少し前によく見たサブディスプレイですが,ブランドも値段もピンキリです。形が同じだからとか,値段が似ているからとか,そういう話で選んでも15kHzに対応しないことも,情報として出てきました。

 私が購入したときは13800円ほどだったのですが,今はもう少し安くなっているようです。

 届いたので早速動作確認です。HDMIで繋げば,メガドラミニもファミコンミニもPS3も問題なし。すでにこれだけで満足している私がいます。あーゲームって楽しい。

 いかんいかん,15kHzに対応しているかを調べないといけません。しかしあいにく,15kHzのRGBを吐き出す機器が手元にはありません。

 ふと目をやるとPS2があります。これを使いましょう。

 amazonで安いコンポーネントケーブルを購入,届いたら分解してコネクタだけを残しあとは捨てます。

 ここにVGAコネクタを繋いで,M1160に接続します。

 だめです,映りません。まったく映像が出ません。入力がないと判断されています。同期信号まわりですね,これは。

 念のため,RGB-VGA変換基板として一部の間で定番化しているGBS-8800でも試しますが結果は同じ。まだあきらめるには早そうです。

 いろいろ調べていくと,PS2の複合同期信号のレベルが低いのが原因だったようです。PS2では21ピンRGBを前提しにしているので,同期信号は複合同期信号で1Vp-pもあれば十分同期がかかります。

 しかし,VGAの同期信号は,複合同期でもTTLレベルです。こりゃダメなはずです。

 周波数もたかだか15kHz程度ですから,ゲートを一発通せば済む話なのですが,垂直同期も必要になることを想定し,ここは贅沢にも定番シンクセパレータLM1881を使います。

 LM1881を使えば,1V程度のビデオ信号から,TTLレベルの複合同期信号と垂直同期信号を簡単に得られます。今回はこれを使いましょう。

 さっさと回路を組み立てて接続するとあっさりPS2がRGBで表示されました。

 うれしくて縦画面にしてレイフォースをクリアしてしまいました。死ぬほどコンティニューしましたが。

 あいにくX68000がないので24kHzと31kHzを確かめられませんが,まずは15kHzが通ってめでたしめでたしです。

 さて,こうなると音が欲しいですね。

 M1160は,過去にはオーディオ入力を持っていたようですが,私のモデルはここがヘッドフォン出力になってしまっています。ヘッドフォン出力を維持したままライン入力を増設することも考えましたが,中に入っていた基板をじっと眺めていると,どうやらこのヘッドフォン出力の端子をライン入力にするためのジャンパ設定がありそうだと気が付きました。

 抵抗を外しヘッドフォン出力用の電源を切断し,ヘッドフォン出力への配線を切り替えてライン入力にジャンパを設定しました。ここで失敗したのですが,ヘッドフォン端子の配線を少し工夫しないと,入力が有効にならないことがわかり,しばらく悩みました。答えはジャックに来ている信号の1つをGNDに落とす事でした。

 これで,PS2が楽しめるようになりました。うれしくておもわずギャラクシーフォースIIをすべての機種分やりこんでしまいました。

 DreamcastはVGAアダプタがあるので問題なし,SegaSaturnやPC-6001mk2も15kHzなので大丈夫でしょう。X1turboは24kHzが微妙ですが,15kHzだけでも御の字です。

 X68000こそ問題なのですが,これも試してみるしかありません。

 残念なのはコンポジットビデオが入らないことです。これが入ればPC-6001やApple][やM5もいけるんですけど,これはもうコンバータ使って繋ぐほかないと思います。

 てなわけで,レトロPCやレトロゲームをかなり救える環境になりました。実はSCSIをCFにする基板も買ってあるので,X68000を復活させる日も,そう遠くはなさそうです。

 

macにとってCPUとはなんなのか

 先日のWWDCで,これまで公然の秘密であった,macのCPUをARMに切り替えことが正式にが発表されました。

 この発表で,ARMのサポートを開始する新OS,そして互換性維持のための仕組み,開発者がなにをしなければならないか,さらにスケジュールについても同時に発表がありました。

 この手の発表についていえば,そのうちやりますよ,いずれやるつもりです,というのを「発表」したりしますから,2年というスケジュールとそのための準備,そして技術的に破綻がなく,「ほんまに出来るんかいな」と懐疑的になることがない施策を見るに,アップルが用意周到に準備を重ねてきたことが伺えます。

 しかしながら,これだけの変更を行う動機や,理由,そして実際に苦労をするだろう開発者に対するメリットについて,あまり十分な説明があったとは言えません。だからこそ名うてのライターたちがここぞとばかりに,似たような内容の推測記事を書き上げることになるわけで,私に言わせれば実際に負担を強いられるエンドユーザーに対する説明がないことそのものに,アップルの視線がどこに向いているかを感じて,ゲンナリするのです。

 ただアップルとmacのユーザーが持つ信仰心というのは,かつてほどではないにせよそれなりにありますし,今macを使っている人は何らかの形でmacを気に入ったかmacでPCを初めて体験したかのどちらかでしょうから,こういうユーザーの厄災への耐性は,それなりにあるものです。かくいう私もそうだったりします。

 話が逸れますが,今アップルを支持する人達というのは,純粋に製品の魅力で支持している人が大半でしょう。そういう人達はにとっては,製品を使用することへの我慢や辛抱がないどころか,むしろアップル以外を使うことがストレスになるでしょうから,アップルが嫌いでもiPhoneが好きな人はいるんじゃないかと思います。

 年寄りの昔話ですが,アップルにこんな時代が来るなど想像も出来ず,いつも少数派で周辺機器もソフトも揃っておらず,選択肢も少ない上,新しい技術を取りこむ速度も遅く,使いやすさや信頼性というコンピュータとしての重要な性能が,明らかに他に劣っていた時期もありました。

 つまり,かつてのアップルやMacintoshのファンというのは,製品の魅力以外の別の理由で彼らに付き従っていたわけで,今のアップルウォッチャーとは異なる,優しくも厳しい視点を持っていると思います。

 なにが言いたいかと言えば,そんなロイヤルティの高い人々にとって,CPUが変わることは避けようのない災害のようなものではあったけども,だからといってそれが他のコンピュータに乗り換えるような理由にならなかったということです。

 よく知られているように,Windowsの世界はその前身のMS-DOSのころから x86でした。今のx64になるともうさすがに8086の色は薄まっていますが,それでもそこここに当時の面影が見え隠れするものです。これはハードウェアにおいてもそうです。

 しかし,Macintoshは,当初モトローラの68000からスタートしました。68000は内部32ビット/外部16ビットのCPUですので,Macintoshは最初から32ビットへの移行が約束されていたと言えます。Windowsが16ビットから32ビットへの移行にとても長い時間をかけたこととは対照的だと思います。

 しかし,性能の限界と供給メーカーの問題で,アップルはPowerPCへの移行を決めます。完全に異なるアーキテクチャですので,もちろん大混乱です。

 ハードウェアでは,設計が進んでいた同じモトローラの88000系のバスインターフェースをPowerPCに持たせる事で初期の混乱を乗り切りましたし,ソフトウェアはPowerPCのバイナリで書かれたライブラリを徐々に増やすと共に,ダイナミックトランスレータである「Rosetta」をOSに組み込み,かつての68000のコードをそのまま実行出来る仕組みを使って乗り切りました。

 そしてOSがMachベースのMacOSXになる時にも大混乱です。この時にはPowerPCへの移行は完全に終わっていましたし,その粘りのあるパワーは,重たい映像や音楽系のクリエイターの仕事を支えてくれました。

 MacOSXでは,古いMacOS9との互換性を持たせるために,様々な施策を打ちます。1つは,OSXとOS9共通の暫定的なAPIの準備です。これを使えばどちらのOSでも動作するアプリを作る事ができます。

 ただし,強力なOSXの機能を使い切ることは出来ないので,あくまで暫定的なものでした。

 そんなAPIを使っていない古いアプリのために,OS9がOSXで動くような仕組みまで用意して,互換性を維持していたのです。

 OS9は信頼性が低く,モダンな設計になっていませんでしたから,アプリもない,重たい,メモリもいっぱい必要というOSXが,まだ使い物にならないころから,輝かしい明日を夢見て,Macと付いていなければもう完全に別OSであったOSXを,それこそ砂を噛む思いで使い続けていたのです。

 そうしてOSXはやがて使い心地のよいOSに成長しました。やっと落ち着いて「使うこと」ではなく「なにかを生み出すこと」に専念出来ると思ったところへ,今度はまさかのx86へCPUを替えると言い出しました。

 PowerPCはとてもよいCPUだと思います。少なくとも32ビットのx86よりはずっと美しく,パワフルです。しかしインテルは,出来の悪い息子を力業で世界最高の頭脳へ押し上げることに成功していました。

 アップルの信奉者はまだx86とWIndowsを目の敵にしていた(しかし勝敗が付いていたことも潔く認めていた)ので,さすがにこのCPUの変更には面食らいました。しかし,同時に彼らが渇望していた小さく軽く電池が持つモバイルマシンを,PowerPCのままでは実現することが出来ないのも,また事実でした。

 かくして,巨大な市場が鍛えたインテルのCPUを,そのおこぼれをもらうように,アップルがMacintoshに使い始めたのでした。

 この間,Windowsは非常に落ち着いており,災害の少なかった時代だったと思います。ビジネス用途のコンピュータとはかくも静かな世界なのかと思い知ったわけですが,大きな変動はx64への移行くらいだったように思います。

 この時はインストールするときに32ビットにするか64ビットにするか決めねばならず,OSが両対応するMacOSXを誇らしく思ったものですが,これもまあ移行が済んでしまえば過去の話で,Windowsは今や64ビットが普通ですし,macもCatalinaで32ビットを切り捨てて64ビット専用になってしまいました。

 そして今,ARMへの移行です。

 私個人は,すでにCPUの命令セットの違いなどもう気にしなくていいほど抽象化が進んでいると思っていますので,機能が揃っていればどんなCPUでもいいと思います。

 そもそもARMも64ビットの命令セットは,32ビットの命令に比べて明らかに「普通」になっていて,当時の設計思想「小さく軽く電気を食わない」を色濃く反映した32ビットの個性的な命令セットとは,もう完全に別物になっています。これをARMという理由はどこにあるのか,と思うほどです。

 命令セットの違いによって,内部の実装は当然違ってきます。得意なこと,不得意なことが出てくるのは自明ですので,ARMは64ビット化で普通のCPUになり,ようやくインテルと同じリングにあがるための切符を手に入れたと言えるでしょう。

 そうして,かつてインテルと死闘を演じたスーパーエンジニアたちが紆余曲折をへてアップルに集まり,そこで作り上げたのが,今のAシリーズです。これを育てて,強力なCPUにしていくことは,今の彼らには簡単でしょう。

 事実,同じ世代の他のCPUが4コアだったのに,アップルだけは2コアで戦えていたわけで,コアあたりの処理能力を高める技術力を,きちんと備えているということです。

 一方で,インテルはインテルでARMに負けていた電力を大幅に改善し,もはやARMなみの物を作る事が出来るようになっています。電力あたりのパフォーマンスを比較しても,ARMが絶対だとはいえなくなってきていることに,我々が気付くべきかも知れません。

 なら,アップルはなんでCPUをARMにするのか,です。これはもう,内製したいから,に尽きます。そう,コンピュータをやる人々は,CPUを内製することを必ず夢見るものなのです。

 SoCの内製は,お金があればどうにかなります。しかし,CPUコアの内製は,もう一部の選ばれた人の特権です。アップルはスマートフォンでそれを実現しましたが,今度は正真正銘のコンピュータで,それをやろうとしているのです。

 私は,Windowsも良くなってきているし,無理にmacでないといけないとは最近思わなくなってきています。それでも,ARMへの移行は面白そうだし,特にモバイルノートが進化することに期待して,当事者としてこの祭り(もしかしたら災害)にのろうと思っています。

 ここから先はよくある未来予測なのですが,CPUの変更という大事業をOSのサポートを受けながら影響を小さく乗り切る事が出来る事は,ハードウェアとOS,そしてアプリケーションを持つ会社の有利な点です。

 懐かしの名前を復活させたダイナミックトランスレータRosetta2,かつてx86への移行時にも活躍した仕組みを復活させARMとx64の2つのコードを1つのアプリケーションに持たせるUniversal2をOSに組み込んで,互換性を維持します。

 OSだけではなく開発ツールを握っているのも強みです。同じソースをリビルドするだけでARMに対応出来る新しいXcodeを用意して,開発者の負担を軽減します。。

 そして,視点をずらしてみると,iPhoneやiPadとアプリケーションを共通化することも見えてきます。Catalistと呼ばれる,macOSとiOSの両方で動作するアプリケーションの仕組みを用いれば,アップルの圏内にいる人達は,それがiPhoneだろうがmacだろうが,アップルの持つ製品を自由に行き来出来るようになるわけです。

 こうしてみると,過去数年かけて32ビットアプリを排除し,Catalinaで32ビットアプリを「動かなくした」ことも,説明がつきます。わざわざ動かなくする必要性は,技術的には全くなかったのですから,そこには政治的な意図があるはずです。

 それが,ARMとの互換性です。Universal2でサポートするコードが3つになるのを避けることもそうですし,それ以上にRosetta2がサポートするコードを64ビットに限定したかったというのが,一番大きな理由ではないでしょうか。

 こうして登場する新しいOSは,それまでのmacの世界を過去にするという強い意志でVersion10という意味を込めて名付けられたMacOSXはmacOS11と名称を変え,同じくここから先が全く新しい世界になることを我々に期待させます。

 CPUもかわる,OSもかわる,そしてiOSと共通のアプリケーションが動く,そんな全く新しい世界が,多くの犠牲を払ってやってこようとしています。

 これまで,iPadProとMacBookAirとの境界が曖昧で,私がいい加減買い換えたいと思っている11インチのMacBookAirが出てこなくなってしまいました。しかし,これがもしかすると,復活するかも知れません。

 ARMの特徴は,休んでいるときの消費電力の低さです。長い駆動時間,あるいは電池を小さくすることで全体を薄く軽くした新しいMacBookAirが登場するなら,私はとてもうれしいです。

 モバイルとエントリクラスはARMによって大きなメリットを受けるでしょう。MacBookProも時間をかけて,その名前に相応しい性能を持つようになると思います。

 しかし,デスクトップの最高峰であるMacProはどうでしょうか。消費電力を気にせず,価格を気にしない,最高性能を目指すマシンにとって,電力やコストに魅力のあるARMを使う理由は,それほど強くないでしょう。

 ここでアップルは,その時々のインテルのCPUに対し,純粋にパフォーマンスだけで勝利しなくてはなりません。インテルはARMとの差別化において,ひょっとしたらパフォーマンスの向上にリソースを集中するかも知れませんから,そうなってしまうとアップルのCPUはインテルに勝つことが難しくなります。

 しかし,ここでアップルが負け惜しみとも思えるおかしな屁理屈を並べ立て,結局パフォーマンスに劣る自社製CPUを搭載して,MacProを最高性能と言い切るなら,果たしてMacProを手に入れる事の出来る(あるいは手に入れねばならない)ユーザーに,どれほど支持してもらえるのでしょうか。

 今後ともインテルのCPUを使い続けるだろうWindowsの世界では,その時点で世界最高性能になることがはっきりします。ここでアップルはMacProへの期待を裏切り,その市場を失う事になるわけです。

 最終的にたどり着くのは,MacProの終焉と,macのカバー範囲がミドルクラスまでという図式です。そう,アップルの顧客から,シンのプロフェッショナルがいなくなるのです。

 それでもアップルは困りません。iOSのユーザーがmacに取り込めるのですから,その方が遙かにメリットがあるでしょう。これが私の思う5年後です。

 高い電力性能でラックマウントを復活させてサーバー市場に打って出るかもしれませんし,日本のスーパーコンピュータの富岳がARMベースである事からHPCの分野に出てくるかも知れません。

 ただ,アップルが自分たちの立ち位置をコンスーマーに近い場所(それはコンスーマーがコンテンツを消費する仕組みと,コンスーマーが消費するコンテンツを創る仕組みの両方を意味します)と考えて続けている限り,特殊とも言える用途への進出はほとんど考えられないと思います。

 コンスーマーに近いところ,というアップルのぶれなさこそ,アップルの魅力なのかも知れません。マイクロソフトがあれほどコンスーマーの目に触れた存在だったのに,彼らの目にはは今やオフィスにいるサラリーマンしか見えていません。

 今年の年末のmacはどんな姿をしているのでしょうか。そして新しいOSはどんな使い心地なのでしょうか。2年後アップルはどうなっていて,5年後のパーソナルコンピューティングはどんなものになっているのでしょう。

 ワクワクします。

 

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