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2006年08月の記事は以下のとおりです。

オライリーとかの地の文化

  • 2006/08/31 18:55
  • カテゴリー:make:

 オライリーというアメリカの出版社は,日本でもある種類の人々の間ではよく知られていて,それどころか畏敬の念さえ抱く方が多いでしょう。

 かくいう私も,学生の頃には随分世話になりました。今でもあの銅版画のような表紙には,ちょっとワクワクします。(といいつつタイトルを見てがっかりすることもしばしばですが)

 そういえばこの種の本で思い出すのが,Addison-Wesleyという出版社ですね。Inside Macintoshの版元だったと思うのですが,日本ではトッパンの和訳がでてました。えらく高価だったことを思い出しますが,トッパンが手を引いた関係で急激に遠い存在になりましたね。

 閑話休題。オライリージャパンは最近,極端に専門的な路線から少し脱却し,NerdやGeekを応援するような本を日本でも出すようになりました。かつては純粋なホビースト向けの雑誌が日本にもいくつかありましたが,今NerdやGeekを支援する雑誌をあえて上げると,ゲームラボやラジオライフというかなりアングラな世界のものが多いのではないでしょうか・・・

 アメリカやヨーロッパでは,閑静な住宅街のど真ん中に小さなDIYショップがあって,自動車の部品やら家電の部品やらが身近に手に入ります。基本的には自分で作る,自分で直す,そういうものだと彼らは考えているので,近所のスーパーにだって工具やら部材やらがきちんと売っています。うらやましいですね。

 話が逸れてしまいましたが,オライリーファンである私が買った3冊をご紹介しましょう。

(1)Make: Technology on Your Time Volume 01

 一番最近買ったのですが,先程の前置きは,この本の紹介をしたかったから書いたようなものです。

 アメリカでは年4回季刊誌として発売されているMake:ですが,いよいよ日本語版が発売されました。アメリカと違って雑誌ではありませんし,これまでの面白い記事からの抜粋を和訳したものですが,Make:のエッセンスは消えていません。

 これを科学雑誌と捉えることも,マニア向けの自作雑誌と捉えることも,子供向け工作雑誌と捉えることも,そのいずれもmake:にとっては誤りです。思うに,海の向こうには頭のいいバカがいるんだなあ,いいなあ,うらやましいなあ,と考えるのがおそらく正しく,さらに良いのは自分もやってみよう,と思うことでしょう。

 凧にカメラを取り付けて空撮する,フォークリフト用のモーターを使って電気自動車を作る,ビデオデッキを改造して猫の自動えさやり装置を作る等々,なんか日本のチマチマした工作魂とは違う,アメリカンな意気込みを感じさせます。

 ビデオデッキを改造した猫の自動えさやり装置は感動しました。ビデオデッキには非常に複雑な予約が可能なタイマーと校正される正確な時計が装備されています。これってなかなか自分で作ると大変ですよ。

 これを利用して,ヘッドを回すモーターにえさを送り出すスクリューを取り付けて,決まった時刻に決まった分量だけ,決まった間隔で自動でえさをやる装置にするというのだから,素晴らしいです。

 この本は工作のお手本ではないので正確な図面もありませんし,原理を詳しく説明する理論の本でもありません。そういうことをやってる人を紹介して,他の人を焚き付ける本ですね。

 一方で元が雑誌らしく,いわゆる記事というものもあります。常温核融合,懐かしいと思われる方も多いでしょうが,この研究を未だに続けている学者がいます。あれは結局ガセネタだったということで処理されてたのですが,世界中で試みられた実証実験においては,わずかではありますがやはり核融合が起こっていると考えるしかないという結果が出ているのだそうです。

 紹介されていた老科学者は,実はこの結果を安定的に再現できるところまで来ていて,核融合が起こっていると確信しているのだそうです。彼がただの道楽オヤジかといえばそうではなく,世界でも最高ランクの研究期間であるロスァラモスで長く研究を続け,その後退職して家で実験を続けているのだそうです。

 いやいや,おもしろいでしょう。

 ちなみにVol.02は今年12月の発売予定です。日本語版には日本独自のコンテンツも入るという予告がありました。とはいえこのVol.01が売れないと,Vol.02も出ないだろうなあと,思います。


(2)レボリューション・イン・ザ・バレー

 初代Macintoshの開発チームが成し遂げた業績の大きさについて今更あれこれ言うつもりは毛頭ありませんが,そうして伝説的に語られるすべてが,常に正しい歴史を反映しているとは言い切れません。

 開発チームは選抜された精鋭であり,その精鋭のみが歴史的現場に当事者として立ち会うことを許されるわけですから,選抜されなかった人々が何を言っても,そこに事実とは異なる事柄が混じることを避ける手だてはありません。

 著者のAnd Andy Hertzfeldは,この精鋭たちの間でも特に知られた天才の一人です。ただ,例えばBill Atkinsonのような神がかり的な人ではなく,それでも我々の目線に近い普通の人であったことが,この本を極めて親近感の近いものにしていると言えます。

 Macintoshの誕生は,すなわち現在のパーソナルコンピュータの誕生と同義です。この本は,なにもなかった画面にある日マウスポインタが現れ,ウィンドウが開き,アイコンが並んで,少しずつその誕生までの過程をつぶさに見る事の出来る,まさに歴史絵巻であるといってよいでしょう。

 多くの人は,Steve Jobsの人となりを再発見してそこに目を奪われるのではないかと思いますが,本当に大事なことは新しいものを生み出すエンジニアの情熱と苦労を,読み解くことではないかと思います。そして,その状況は20年経った現在においてさえ,どんな現場でも必ず見られる光景なのです。


(3)ハードウェアハッキング大作戦

 オライリーがこんなくだけた本を出すんだなあと驚いて買ったのですが,高い割にはつまらんなあ,が第一印象です。買ってまで読むべきものはないと思います。

 ならなぜ私は買ったのか,ですが,これはもう,海の向こうのホビーストに,大いなる親近感を感じたからに他なりません。

 海外のホビーストの実力は,実は恵まれた環境にある日本に比べて数段上であることはいろいろな局面で感じることが多いのですが,そこに金儲けやら犯罪やらを目指していない,無垢な情熱があることが特に私の心に響きます。

 その昔,確かにパソコンはアメリカのホビーストが始めた手作りコンピュータに端を発していて,日本はその背中を見てここまで来たわけですから,なにも不思議なことはないかも知れません。

 しかし,日本には秋葉原があります。かの国人々でさえも憧れるという秋葉原がある日本で,しかし彼らの実力と情熱に追いつかないとは,情けない限りです。

 楽しいからやる,面白いから頑張る。この単純で当たり前のことが,やはり日本では気迫になっているとそんな風に感じます。

 この本は,おそらくMake:を出すきっかけになった本ではないかと思うのですが,大衆文化としてのDIYが認知される社会とは,やはり成熟した市民社会の特徴であると,そんな感想を持ちました。


 てわけで,私が不安に思っているのは,あのオライリーがこういう訳のわからん本を兵器で出すようになったことが,先々この会社を窮地に陥れなければいいなということです。新しい顧客を開拓することが大事なことに疑問はありませんが,一方でそれは安定した固定ファンの反感を買うこともしばしばです。オライリーが本当に期待されていることをおろそかにしないことを,心から望みます。

破裂寸前

 ES2は現在,露出計とシャッター速度の調整をすれば完成,というところまで来ているのですが(とはいえ,その調整がまた問題なんですが),昨日ふと思いついて手持ちのコネクタを基板に取り付けて見るわけにはいかんか,と現物あわせを行うことにしました。

 コネクタはピッチが少し合わなかったため,直接基板にハンダ付けした配線をコネクタに置き換える検討はここで終わってしまったのですが,この後ビールを飲んでしまい,床にES2を転がしておいたのがまずかった。(結果としてはよかったのですが・・・)

 お約束通り,トイレに行くときにけっ飛ばしてしまいました。あわれES2はゴロンと転がってしまいました。

 まあ,これくらいで壊れてしまったらカメラとして使い物にならんなわははは,と最初は気にもしなかったのですが,ES2はなんと言ってもソレノイドの調整が実に微妙なカメラですし,基板も30年を経過した年代物です。メカが仮にしっかりしていても,乱暴な扱いをすればすぐに壊れてしまうのは明かです。

 目の前にあるカメラが,クラシックカメラの域に達し,自力で修理した不安定な存在であることをすっかり忘れていた私は,所詮素人ということでしょう。あわてて拾い上げ,シャッターを切ってみます。

 とりあえずパシャっといつもの音がしたので,問題はないのかなあと思っていたのですが,レンズキャップをかぶせたままなのに,最高速で切れるなんておかしい。

 やばい,ソレノイドの位置がずれてしまったのか,と急に焦る私。

 ファインダーをのぞき込んで露出計を見ると,シャッターボタンを半押ししたところで1000を指し示しています。暗いところでも1000,絞りリングを回しても1000。

 あああああああ,露出計も壊れた。

 これは本当に本当に最悪です。バッテリーチェックボタンを押してみます。1000を指し示します。

 ああああああああ,基板も壊れた。

 もう目の前が真っ暗です。うかつに床に置いたままにしたこと,うかつに蹴り飛ばしてしまったこと,やってはいけないことをやってしまった報いでしょうか。後一息で修理も終わるというのに,振り出しどころか,ES2を失ってしまうという最大の危機が訪れました。

 気休めとして,まずは電池を取り外して,電池の電圧を調べてみます。酸化銀電池ですから,この使用頻度では動作が不可能なほど電池が減ってしまうとは思えませんし,それに昨日まではバッテリーチェックを行っても規定を十分にクリアしていたのですから,それがわずか1日で動作しないほど消耗しているというのは,およそ考えにくいです。

 電池ブタを開けて,私は目が点になりました。電池の1つが,ぷっくりふくらんでいます。まるで3年ねかせたシュールストレミングのようです。

ファイル 19-1.jpg

 電圧を測ると案の定0.1V程しかありません。他の3つは1.4Vから1.5Vということで,こちらもすでに交換が必要な状態になっています。

 ピンときました。もしや,と思って電池ボックスをのぞき込んでみます。

ファイル 19-2.jpg

 酸化銀電池SR44を4つ使うES2は,左から上向き,下向き,上向き,下向きと電池を入れて,フタをします。上向きに入れた電池は,底にある電極が電池の負極と接する仕組みですが,よく見るとこの電極,外側にも随分広がっていますよね。

 この外側に出ている部分が電池の縁(つまり正極)と接触するのは,もう小学生にも分かることです。そう,蹴り飛ばしたショックでショートしていたのです。

 思い起こせば半年ほど前,オート不良を連発したときも,実は電池が極端に消耗していたからでした。その時の電池も,1つだけ0V近くまで電圧が下がっていたのを思い出しました。

 電池を外して,外部に安定化電源を接続して試してみると,きちんとスローシャッターが動作しています。消費電流も小さく,どうやら本体は無傷のようです。よかったよかった。

 そこまで分かれば対策です。電池の電極のうち,不必要な部分は絶縁しましょう。電池の負極に接する部分は中心のみで良いはずですから,これ以外はテープを貼ることにします。もちろんフタ側もです。

 作業はわずか10分ほど。このことに気が付かなかったら,また同じ事をやってしまったことでしょう。大きな事故に繋がった課も知れませんし,気付かず放置していれば液漏れが発生したかも知れません。どちらも人間やカメラに大きな被害をもたらします。

 さて,少しずつ実用機として完成度を上げてくるES2ですが,なんとか今週末にでも露出計を調整したいものです。EV16,EV12,EV8でのオートのシャッター速度を調整する必要があるのですが,これがなかなか手持ちの機材では難しいのです。

 いいアイデアが浮かばず困っているのですが・・・

ES2復活までの道その1~修理編~

 現在,うまく動いていないカメラがペンタックスのES2です。

 先日調子が悪いと書いたのですが,どうも多臓器不全の様相を呈していて,なかなか手強そうです。そういう読みもあって,まとまった時間が取れないと手出しできないと思い,昨日まで手を付けずにいました。

 今回の問題は,大きく2つありました。

(1)突然露出計が動かなくなる。
(2)メーターの指示と異なる速度のシャッターになる場合がある。

 最初に発生したのは(1)の問題で,絞りリングを何度か回すと動くようになるのですが,一晩ほど経つとまた動かなくなっています。

 「動かなくなる」というより,絞り込み測光のレンズや,レンズを取り付けないでシャッターボタンを押したように,メーターが振り切ってしまうのです。ですから,絞り込みレバーを上げれば,露出計がきちんと動作するようになります。

 先日は軍幹部のカバーを外し,擦動抵抗に繋がるリード線をいじっているうちに現象が出なくなってしまい,とりあえず直ったことにしておいたのですが,数日後に再発,もう少し本格的に分解することにしました。

 擦動抵抗に繋がっているリード線は屈曲していますので,内部での断線があるかもしれません。また,抵抗とのハンダ付けがダメになっているのかも知れません。そこでもう少し柔らかいリード線に交換することにしました。こうすることでハンダ付けのやり直しも出来るので,少なくともリード線に関係する問題はここで全部払拭できるはずです。

 これも組み立て直してみると,一見して調子が良さそうに思えたのですが,なんのことはない,しばらくして現象が再現してしまいました。ここ数日はF16にすると確実に動作しなくなってきたので,擦動抵抗の皮膜が削れてしまって機能しなくなっている可能性もあります。あるいは擦動抵抗ではなく電気回路の問題かも知れません。そうなるともうお手上げです。

 この修理の過程で,基板を取り付けるコネクタが割れてしまいました。交換しようと部品取りのES2を見てみると,こちらも割れていました。さすがに誕生から30年,月日を重ねてコネクタがパンくずのようにボロボロと崩れていきます。

 やむを得ないのでコネクタではなく直接ハンダ付けを行うことにしました。部品取り用のES2は基板が壊れていることが分かっていて,基板を交換するような形での修理は当分しない(できない)だろうという気がしたからです。

 しかしこの作業後も現象は出続け,結局何も変化はありませんでした。コネクタ破損による接触不良の可能性も消えました。

 そして昨日,とうとう意を決して,真面目に修理することにしました。

 まず,現状の把握からです。擦動抵抗の抵抗値を測定します。レンズを取り付け,絞りリングを回して各絞りの時の抵抗値を測定します。すると,F8くらいまでは安定しているのですが,それ以上にすると値がばらついたり,いつまでに収れんせず値がフラフラする,最後には数百MΩという値を示したり,無限大になったりします。右回しと左回しで値が変わるなども出てきてしまい,これはもう違いなく擦動抵抗自身の問題と確信しました。

 実はほっとしたのです。ここが正常だったら,もう電気回路の問題以外になくなります。基板のスペアがない以上,修理は非常に困難になると予想されたからです。最悪のケースは回避されました。

 さて,擦動抵抗を分解します。抵抗体の汚れを取り,もう一度組み立てますが改善せず。抵抗の被膜が完全に取れたのだろうと判断して抵抗体を部品取りから移植します。

 移植して組み立て直してみると,確かに安定しています。F11やF16でも,規格値に近い値が出てきます。やはり擦動抵抗だったかと結論して,組み立てていきます。その過程でもう一度測定をしてみると・・・なんとまたあの現象が出ているではありませんか。

 擦動抵抗を交換しても現象が出てきたということは,他に原因があるというのか。

 もうお先真っ暗です。

 絞りリングと一緒に動くブラシの接触圧が低いせいかも知れないと,少しブラシを起こして接触圧を上げてみます。しかしダメ。同じです。さてさて困りました。

 ここでふと考えてみたのですが,この抵抗ってどことどこの間を測定しているんだろうか,実はきちんと追いかけていないんですね。片側はリード線なのですが。もう片側は回転側のブラシで,それが最終的にアースに落ちています。

 私はアースとをリード線の間の抵抗をはかっていたのですが,ちょっと試しにブラシのハトメとリード線の間を測定してみました。すると,実に安定して動作するじゃありませんか。

ということは,抵抗の皮膜ではないなあ・・・
ブラシの接触圧でもないなあ・・・
ところでこのブラシから先はどういう経路になってるんだろう・・・
調べてみないとなあ・・・

 ということで,抵抗体を取り付けているビスを外してみようと,ドライバをかけました。すると,既にゆるんでいます。

 原因はこれでした。抵抗体を取り付けているビスがゆるんでいたため接触不良が起きてしまい,アースされていなかったのです。

 もしやと思い,最初からついていた方も確かめてみると,こちらもゆるんでいました。2つとも同じ場所が同じようにゆるんでいたため,同じような現象が出ていたのです。

 絞りリングの回転によって接触したりしなかったりして,動作が不安定になっていたと考えれば,これほどしっくりくる理由はありません。

 それに,このビスは絞りリングのストッパーも兼ねているため,頭が勢いよくぶつかります。そのせいでゆるんでしまったのでしょう。

 これをきちんとしめて,最初からついていたものに戻して組み立てました。結果は上々。これまでの不安定さがウソのように,綺麗に抵抗値が変化していきます。基準値と比べてもほとんど差がありません。

 原因が分かってきちんと修理が出来たと思われるので,最後までちゃんと組み立てました。軍幹部のカバーも貼り皮も元の通りに戻して,露出計が正常に動作することを確認しました。

 いや,ほんと良かったです。

 (2)の問題は,こちらもなかなか面倒な話でした。

 8月初旬,(1)の問題で悩んでいた時ですが,露出計がきちんと動作している時でも,指し示しているシャッター速度よりも随分短い場合が度々出てきます。数ヶ月前にソレノイドの調整を行ったときも,時々シャッター速度が制御されていない事に気が付いて取りかかりましたが,結論から言うとソレノイドは最良の位置に取り付けられており,これが問題ではなかったのでした。

 10回に3回くらいの割合で,シャッター速度が明らかに狂います。(1)と(2)が同じ原因で起きているのではないかと考えていたのですが,結果から言うとそれぞれ別の理由でした。

 シャッター速度が狂うこの問題の解決までの顛末は,今月初めの艦長日誌に詳しく書いてあるように,メモリブロックの故障でした。交換するとこれもウソのように安定したスローシャッターが切れるようになりました。

 ところが,この後どうも露出計の指示が狂うのです。感じでは1/3段くらいずれています。加えて,指針が1秒を示していても,実際のシャッター速度は1秒よりもずっと短いのです。

 こうなった原因ですが,それはずばりメモリブロックを交換したからです。メモリブロックはFETとコンデンサで構成されていますが,シャッターを切る前はFETが露出の値をスルーするバッファアンプの役割を果たし,シャッターを切ってからはコンデンサに蓄えられた電圧を出力する働きをします。

 このFETですが,IDSSに結構バラツキがあります。IDSSにバラツキがあればCdSの値が同じであっても,最終的な出力電圧にはIDSS分のバラツキがでてしまいます。ですから,メモリブロックを交換したら再調整が必要になるということなのです。

 幸いなことに,私はES2のサービスマニュアルの一部を持っていて,調整方法については知っています。これによると,EV16,EV12,EV8のそれぞれで開放測光時のシャッター速度を合わせます。

 ただ,私は基準光源を持っていません。ニコマートやCLEでは,グレーカードに蛍光灯を当てて,F3の露出計を基準に合わせていたのですが,ES2では明るさがはっきりした光源が必要で,しかも同時にシャッター速度の測定もしなくていけないのです。

 ですから,根本的に調整環境を整えねばなりません。

 ここから先は後日,となりますが,まずは修理がきちんと出来たことで,本当に安心しました。部品取りのES2をもう1つ確保しないと,もう復活出来ないかもしれないと恐れていたのですが,最悪のケースは回避されました。

 先日再開したカラーネガの現像は,現在13本が終わって,現像液の能力から残り2本まで。しかも1ヶ月以内に使い切らねばならず,あと1週間ほどで現像液が寿命を迎えてしまいます。

 あまりのんびりやっているわけにはいかないのですが,まずは一安心。

冥王星の悲運

 ここ数日世界が注目する議論の行方が,日本時間の昨夜10時半頃に決着しました。

 冥王星を惑星から除外するかどうするか,というテーマが議論される舞台となった国際天文学連合のでの多数決によって,冥王星は惑星の地位を失いました。

 宇宙の話を一惑星に過ぎない地球に生活している,しかも人間という一種族が勝手に多数決などで決めていいのかやら,教科書を書き換える必要のある内容を「選んだ覚えもない」代表たちが勝手気ままに決めていいのかやら,まあいろいろな意見や考え方があるとは思いますが,一応「惑星」定義を決めるのは天文学者の仕事ですし,太古の昔から我々庶民は彼らの決めたことを信じて生きているわけですから,いいんじゃないかと思います。

 私は天文・気象にとんと疎い理系の人なわけですが,それゆえかなり正確性を欠いている部分があると思いますし,所詮テレビのニュースレベルの情報を信じて書いているだけなので,そのあたりはご容赦下さい。

 そもそもこの話は,惑星の定義がよく考えてみるとあいまいだなあ,というところからスタートしたようです。

 数年前に同じ国際天文学連合で,19人からなるワーキンググループがこの問題を一度議論しているのだそうですが,やっぱり意見が割れて決着しなかったらしいのです。

 わざわざ議論されるに至った理由はいろいろあるようですが,まず冥王星の軌道が特殊であること,その領域に冥王星を超える大きさの天体が見つかったこと,そしてそれまで地球の半分くらいと思われていた直径が実は1/5程度しかなかったことにあるようです。特に1990年代以降の観測技術の進歩により表面化してきた問題だということでした。

 その領域からは今後も天体が発見されることが予想されたので,今後それは惑星なの?惑星じゃないの?という疑問に答える必要が出てきました。これまでは冥王星を超える大きさの天体(2003UB313:通称Xena)は惑星ではないとされていて,なのにそれより小さい冥王星は惑星であり続けるなんておかしいじゃないかと,そういう矛盾を解決するのが彼らにとっても懸案事項だったのです。

 もし冥王星が惑星ならそれ以外の天体も公平に惑星にしないといけないし,それ以外の天体が惑星じゃないなら冥王星も惑星から外さないとね,というのが今回のテーマだったわけで,ここ数日のニュースでは前者の流れが優勢で「惑星の数が12個に増えるかもしれない」ということだったわけです。

 それがころっと反転し,「やっぱ冥王星も惑星から外しちゃいましょう」となり,惑星は結局8個になった,というのが,この会議の結論だったのです。

 3000人近い天文学者がプラハに集結してこの問題の決着を図った様子を想像するとなかなかエキサイティングなのですが,最終的には参加者の多くが「冥王星は科学的に見て,他の惑星とはやっぱり違うよなあ」という意見でほぼ一致したそうです。

 そうなると,冥王星を惑星として残すかやめるかは,もはや科学の議論ではなくなります。科学に正直な科学者は,

「他の惑星とは明らかに違う性質の天体を惑星というくくりでまとめることは,科学的に許されない!」

 というもっともな意見を主張しますし,人間味あふれる現実主義の科学者は,

「まぁそうはいうてもやね,長年親しんできた冥王星を今更惑星ちゃいまっせ,なんちゅうのは,実際問題無茶なんちゃうのんかいな」

 という大衆を味方にしそうな意見を述べます。

 事務局も数日間の議論で結論を出せずに,結局挙手による多数決を取ることになりました。しかしこれは,科学者の集まりですからどちらの意見が通るかは自ずと答えが出ます。

 結果は当然,冥王星は惑星ではない,ということでした。

 ここで決まった惑星の定義は,

・それは、太陽を巡る軌道に存在しなければならない
・それは球状の形態を形成できるほど十分に大きな物体でなければならない
・それは、その軌道上の物質を「clear」にしていなければならない

 という3つです。3つ目はちょっとややこしいですね。冥王星の軌道は海王星の軌道と交差している部分があり,太陽からの距離で並べると順番が入れ替わることがあるのはご存じでしょう。今回の惑星の定義においては,こういった軌道の交差があったらいかんよ,といっています。

 ちょっと不思議な気がするのは,他の惑星とは性質が異なる冥王星によく似た天体がいくつか見つかり,今後も見つかる可能性が高いから,それらを惑星と見なすのは無理がある,がスタートだったのに,数の話は問題にならなくなっている点でしょう。

 文言だけ見ると数と言うより,やはりその性質が問題だったといえるので,もし地球の軌道上にもう1つ地球があったら,それはやっぱり「惑星」になるんでしょう。(ちょっと考えてみましたが,そりゃもう1つ地球があればそれは惑星ですよね)

 逆に2003UB313が冥王星と異なる軌道で,海王星の軌道と交差していないなら,冥王星を出し抜いて惑星に昇格したかもしれないのですね。(これも少し考えてみましたが,そんな天体が見つかれば紛れもなく惑星ですね)

 では今回惑星から外れた冥王星はどうなるのかというと,dwarf planet(わい小惑星)という新しいカテゴリが新設され,2003UB313と一緒に分類されることになるそうです。一応めでたしめでたしです。

 しかし,これによって我々の常識は大きく覆されることになります。教科書も百科事典も書き換えないといけません。もちろん学校の授業も対応を迫られます。この知識を最初から知っていたか,途中で訂正を受けて覚えたかによって世代間のギャップが生まれ,20年後には「生まれたときには冥王星は惑星じゃなかった」組が一大勢力を形成していることでしょう。

 個人的には,いきなり格下げされた冥王星の立場になって,惑星の定義を明確にしてこなかった人類の落ち度を認めた上で,今後はこの定義を運用するということで決着しても良かったかなあと思います。

 100年後に「冥王星がなぜ惑星かって?そりゃ人類がそのころ未熟だったからだよ」と,親子が空を見上げて話し合う姿があったら,なんだかいいなと思いませんか。

IC-R5のメモリ編集

  • 2006/08/22 14:20
  • カテゴリー:make:

 無線,と聞くと,どんな印象を持たれますか?

 UWB,ミリ波という具合に,最先端の無線技術を想像しますか,それともアマチュア無線のような「暗くて閉鎖的な世界」をイメージしますか,はたまた傍受や盗聴という言葉と一緒に犯罪や裏社会を思い浮かべますか?

 まあどれも正解でしょう。無線はそもそも,光の速さで進む電磁波に情報を載せて,遠くに瞬時に情報を届ける手段なのですが,人の命を救うこともあれば,人の命を奪うこともあり得る諸刃の剣だなあとつくづく思います。

 テレビでやたら耳にすることが多くなった「公共の電波で」という言葉も,電波は公共性が高い上に有限であることから,貴重な財産と見なされているところから来るのだと思いますが,次々と電波の新しい利用方法が提案される今日,管理者である国は一体どういう手綱さばきを見せるのでしょうか。

 私自身は,無線はなかなか技術的に敷居が高い印象もあってか,苦手意識があります。電子工作で何とかなるのはせいぜいFMラジオくらいまでで,それ以上になるときちんと基礎を身につけないと自分で手名付けることは難しいです。

 しかし,中学生の時に友人に触発されてアマチュア無線の免許を取ったり,初歩のラジオやラジオの製作の無線コーナーをついでに見ているうち,技術的な側面以外にもなにやら面白そうだという風に思うようになりました。

 ですが,高価な無線機や受信機を買ってまで楽しむことは考えていなくて,そのまま無線に触れることなく大人になってしまいました。

 それはそれで悔しいと思うことはなく,むしろ良かったくらいだと思うのですが,2003年の暮れにアイコムの受信機IC-R5を購入して,自分の知らなかった世界が開けた気がしました。

 2万円程度でこの性能の受信機が買えるなんて,私が中学生の頃には考えられなかったことです。素直にすごいなと思います。

 買った理由は,ちょっとしたお遊びで買ってみるのに無理のない値段だったこと,その割には今まで聞いたことのない周波数を捉えられること,小さく軽いので持ち運びにも便利で,ひょっとすると災害時などにも役に立つかも知れないと思ったことです。

 もしこの受信機を最も欲しいと思っていた中学生の時に手に入れていたら,きっとアマチュア無線を聞き倒して,おそらく開局に至っていたのではないかと思います。今はそのアマチュア無線もすっかり凋落していて,実はIC-R5を手に入れてから一度もアマチュア無線を聞いたことがありません。ちょっと残念です。

 ところでこのIC-R5,とりあえず怪しい趣味のためでなくても,1つくらい持っていてもいい「ラジオ」だと感じます。これが1つあれば,いざというときにも役に立つでしょう。

 ただ,使い方がなかなか難しい。キーが少ないため,多機能を実現するだけの操作性がかなり犠牲になっています。せめてディスプレイがもう少しリッチなら良かったのですが,現在どういう状態にあるのかを常に意識しながら操作しないと,とんでもない状態になっていることもしばしばです。

 とはいえ,実際に聞いてみたい無線というのは大体決まっているもので,その周波数やモードなどをメモリに入れておいて,聞きたいときにささっと選べばそれで解決するという使い方が,おそらく正しいのでしょう。

 ところがそのメモリの編集もなかなか面倒です。文字の打ち込みが致命的,一覧性が皆無で今どうなっているのかを把握しながらでないと大変なことになる,設定項目が結構あって,作業も多いというのが実際のところで,全部で1250もあるメモリを,私は20個ほど埋めたところで力尽きました。

 数年経過して現在に至ってますが,この受信機は,メモリをどれだけたくさん使ったのかによって,その真価が発揮されるのだと日々感じています。

 このメモリの問題を一気に解決するのが,PCでのメモリ編集です。スタンドアロンで編集するのも可能ですが非現実で,メーカー純正の接続ケーブルとソフトが販売されています。

 接続はいわゆるシリアル通信で行われ,専用ケーブルがやっていることは信号レベルの変換だけです。ならばさくっと自作しようというのがこれまでの私の行動なのですが,純正ケーブルが1500円と安価であることもあり,わざわざ作るのも馬鹿馬鹿しくなって,そのうちに買おうと思っているうちに数年経ってしまいました。

 先日,ふと思い立ってIC-R5強化計画を行うことになって,ケーブルはさっさと自作しようということにしました。

 レベルコンバータはICを使っても簡単ですが,ICの動作のために電源が必要になります。これが面倒。純正のケーブルOPC-478は電源をRS/CSから取っているようで,回路そのものもトランジスタ2つと軽くできています。

 私の場合,IC-R5との接続側の3.5mmステレオプラグ付きケーブルを手持ちのもので済ませたかったということと,ケーブルを出来るだけ流用して本数を減らしたかったことから,RS-232C側のコネクタからはジャックだけ出すようにしました。それと,RS-232C側もケーブルの先に接続できるようにしてあります。いちいちPCの背面に回るのは面倒ですから。

ファイル 16-1.jpg

 回路の規模も小さく,なかなか無難にまとまっています。

 テストを始めてみましたが,どうも通信がうまくいきません。うーん,これくらいの回路なら間違いようがないんだけどなあ,と思っていると,実はケーブルがクロスケーブルであることを思い出しました。TxDとRxDが入れ替わっていれば,そりゃエラーにもなります。

 慌てて修正をすると,今度はちゃんと動きました。リードもライトも出来ているので,これでハードウェアは完成としましょう。

 早速メモリの編集を始めてみましたが,調べてみると無線というのはいろいろな事に使われているんだとつくづく思いました。放送はもちろん,消防,防災,交通,警備,ワイアレスマイクなどなど。
 
 そうした中から,自分に関係のありそうなものをピックアップして200項目ほど設定しました。防災無線と鉄道無線は便利に使えそうですし,いざというとき役に立ちそうです。

 そうそう,くれぐれも言っておきますが,無線を聞くことそのものは違法でも犯罪でもありません。なぜなら電波は公共物だからです。ただし,その内容を他の人に話したり書いたりするのは違法です。あくまで聞いた人だけが享受できるものなのですね。もちろん,聞いた内容で犯罪を犯せば,これはもう無線云々の話ではなくなります。

 実査にメモリ編集済みのIC-R5を少しだけ触ってみましたが,使い心地という点でまだまだ工夫をしないといけないですね。表示の貧弱さをどうやってカバーするか,試行錯誤が続きそうです。

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