エントリー

2019年07月の記事は以下のとおりです。

ルータを新調する

  • 2019/07/29 13:18
  • カテゴリー:散財

 自宅のネットワーク環境が老朽化してきました。

 我が家はインターネットへの依存が低く,21世紀初頭のまま時計が止まってしまったんではないかと思うほどなのですが,実際,高速である事よりも常時接続であることが長年求められていて,私がADSLの登場時にいの一番の飛びついたのは,速度よりも繋ぎっぱなしでも大丈夫という,従量課金ではなく定額であったことが重要でした。

 ですから,光ファイバや高速モバイル通信によってADSL加入者が減り,ADSLの設備が老朽化で維持できなくなりつつある昨今,いつまでADSLに頼ることが出来るか気が気でなりません。

 光ファイバにするのが順当ですが,維持にかかる費用が今の倍くらいかかるわけで,速度よりも常時接続を目的にしている私にとっては高価な上にオーバースペックです。

 そのうち安い接続サービスが出てくるよと思って早10年,競争はモバイルに映ってしまい,固定回線は競争がなくなりました。価格は下がらず,参入業者も増えません。

 なので,このままサービス終了までADSLにしがみつくことになるんだろうなあと思っているのですが,ここ最近,ADSL使い続けることで別の問題が出てきました。

 セキュリティの問題です。

 ADSLはすでに過去の技術です。モデムを作っていたメーカーは統廃合が続き,少なくとも国内向けに新しい製品は投入されていません。

 従って,長い間ファームウェアのアップデートが行われていません。インターネットの,それも最前線に立たされるモデム(とルータ)が,10年以上もアップデートされずそのままというのは,もう蜂蜜を塗りたくってアリの巣の前に寝転がっているようなものです。

 そのアップデートも,メーカーの撤回もあって今後も期待出来ず,我々ADSLの人々はセキュリティリスクに晒され続けているわけです。

 実際,ここ数年,うちも外部からのアタックがひどく,ルータ0が処理能力を超えて止まってしまうこともしばしばです。特にここ1ヶ月ほどは,毎日再起動をしないと全く通信が出来ない状態に陥っています。

 さすがに対策をしないとなと思っていたところ,とうとう先日大規模な障害が発生し,再起動後も1日も持たないという事態に発展し,これはこのまま放置できないと緊急対策を取ることになりました。

 ADSLモデムは,厳密にはADSLで繋ぐモデムと,IPアドレスをもらい,グローバルネットワークとローカルネットワークを橋渡しするルータで構成されています。障害の発生やセキュリティのリスクはこのルータの部分が原因ですので,ここを新しいものに置き換えればとりあえず解決しそうです。

 我が家には,AirMacExtremeがありますし,これをルータとして使えばいいと考えたのですが,電話回線があるのが1階,従ってADSLモデムも1階に設置しなければならず,自動的にルータを1階に置く必要がでてきます。

 しかし,無線LANを1階に置くと3階からは繋がりにくくなるので,やはり2階に設置しておきたいところです。

 そんなわけで,もったいないと思いましたが,有線のルータを買うことにしました。ここでルータを独立させておけば,ADSLから別のネットワークに移行しても,無線LAN機器を入れ換えたとしても,その部分だけ交換出来るので楽でしょうし。

 で,家庭用の有線ルータなんて,もう絶滅しているだろうと思っていたのですが,SOHO向けにはVPNを手堅く実現する方法として定番化しており,今でも安価に有線ルータを買うことが出来るようです。

 TP-LINKのTL-R600Vは実売8000円ほどでとにかく安く,基本機能は十分に持っているのですが,いかんせん速度が遅く,ADSLなら問題はないですが,先々は厳しいでしょう。

 プラネックスのVR500-A1は13000円弱ですが,価格差分くらい高速なので,選ぶならこちらでしょう。

 ということで早速手配。週末に設定を行いました。

 やることはとても簡単で,ADSLモデムのルータ機能を殺し,VR500-A1のWANをPPPoEで繋ぐようにしてやるだけです。LAN側の設定は従来の設定を踏襲すればOKのはずです。

 作業そのものは10分もかからず,簡単にADSLが繋がるようになりました。ただ,電話局とのリンク速度がわからなくなってしまったのは,ちょっとさみしいところです。

 そして設定と動作のチェックです。

 NATの設定,ポートフォワードの設定などを進めていくのですが,どうしても従来の設定を引き継げないものがありました。UPnPです。

 以前のADSLモデムにはUPnP機能があり,QNAP Cloudではこれを使っていたのですが,VR500-A1にはUPnPがないようで,QNAP Cloudでエラーが出るのです。

 UPnPでの設定をなんとかしようとちょっと頑張ってみましたが,もともと植木鉢の底に鍵を張り付けておくようなUPnPを私はどうも信用することができず,これを機会にUPnPをやめることにしました。

 とりあえず使いそうなポートを手動で開放して,設定完了。テストも済ませて運用に入りました。

 VR500-A1は設定も楽ですし,速度もまずまずで,なんといっても価格がこのクラスでは飛び抜けて安いです。しかし,前述のUPnPには対応しませんし,耐久性についてはなんとも言えません。(TL-600Vは5年保証ですし,なかなか壊れないそうです)

 私は使っていませんがVPNにも対応しますし,きちんと使えれば便利なルータかも知れません。
 
 ルータが新しくなると,ネットワーク速度が確実に向上したと感じます。もっと早くに入れ換えておけば良かったと後悔しました。

 

MC20mkIIをならしてみる

 V15typeIII用の互換針が1つ余っていて(V15typeIVの動作確認用にとにかく安い使えそうな針を探したところ,動作確認後に不要になってしまった),せっかくの楕円針ですし,使わないとなあと思っていました。

 V15typeIIIの動作品を何度か手に入れようと思っていたのですが,V15typeIIIの価格が私の想像を遙かに超えるような高価格である事を知り,入手はあきらめてしまいました。

 ふと思いついたのは,楕円のダイヤモンドチップを他のカートリッジに移植しようという話です。この方法で一部の好事家はカンチレバーが折れたカートリッジや,針交換できないMCカートリッジを修理しては現役に復帰させていいるわけですが,私はこれまで自信がなくて,行って来ませんでした。

 そもそも,カンチレバーを折ってしまうと心の傷が大きくて,物理的に修理出来ても立ち直れないという私自身の狭量さに問題があります。これを癒やすには,お金をかけて針交換をし,「なかったこと」にするしかありません。

 この,お金で解決という,日本人が誠に嫌う札束で頬を叩くような行為に対する背徳感が,また自分のやらかしたことの大きさを増幅するわけで,若かりし頃の私は,そもそも折らなければいいんだと気が付いて,以来無事故無違反を続けています。

 そんなこともあり,カンチレバーの移植という技は全く磨いてこなかったばかりか,経験したこともないという状況ですが,もし針が折れて安く売られているカートリッジがあれば,このV15typeIIIの互換針で修理しても面白いんじゃないかと,そんな風に思ったわけです。

 早速某オークションを見てみると,結構あるものです。ただ,価格は全般的に高め。半年くらい前まではこの半分くらいの価格で落札できていたようですが,昨今のアナログブームで価格が上がっています。って私もその片棒を担いでいるわけですが・・・

 せっかく手間暇と新品の交換針を突っ込んで修理を行うわけですから,修理後に実は方chが断線してましたとか,もっと安く交換針が売ってましたとか,そもそも不人気で誰もありがたがりませんとか,オリジナル以外の音は認めないという原理主義者が跋扈しているとか,そういう話は避けたいところです。

 探していると,オルトフォンのMC20シリーズが目に付きました。チップを飛ばしたというMC20mkIIとMC20superがあり,どちらも動作品だったという個人からの出品のようです。

 MC20といえば,1970年代に登場したオルトフォンの柱の1つです。MCの原器とも言えるSPUを持つオルトフォンが,さすがに20年前の設計ではなあと,何度かSPUの次世代機を作るわけですが,中でもMC20は今もその後継機が登場する,代表的なモデルです。

 伝聞で恥ずかしいですが,SPUのナローレンジで重たい音に対し,ワイドレンジで軽快な音がMC20の狙いだったそうで,当時の軽針圧化(ハイコンプライアンス)の流れに沿うような設計を行ったのでしょう。

 本家MCカートリッジの構造を踏襲し,ダンパに工夫を凝らして出来上がった軽針圧SPUはまさにファンの期待に応えて,こうして40年も続くシリーズになっています。

 これも伝聞で恐縮ですが,MC20から廉価版のMC10,そして主にダンパを一新したMC30を登場させたあと,その技術を中核モデルのMC20に転用しMC20mkIIとなります。当時から不評だったプラスチック製の外筐をアルミの押し出し材に変更した(もちろん変更はそれだけではないでしょうが)MC20superになって,CDに席巻され絶滅寸前のアナログオーディオの1990年代をしぶとく支え続ける事になるわけです。

 MCカートリッジはDJには使えませんから,その需要はHi-Fiオーディオだけです。だから,とっくの昔に消えてなくなってもいいくらいなのですが,MCカートリッジが手作り可能なくらいに少量の生産にも対応出来る構造であること,針交換は原則的に現行機種の同等品へ交換となるので本体への需要が一定数あることもあって,今もこうして我々は,MCカートリッジの新品を手に入れる事が出来るのです。ありがたい。

 で,もう本質的にMCが引き出せる情報量にMMは絶対にかなわないと確信した私は,個性の差ではなく優劣としてこの2つを比較するようになっています。

 いや,反論もあると思いますが,MMに10万円かけてもSPU#1から出てくる情報量に勝てないなあと思うので,それなら潔くSPU#1を買えばいいと思うのです。MMを選ぶのは,あのブーミーな低音が欲しい時,ジュークボックスから出てくる音などの当時の雰囲気を味わいたいときになると思っていて,DJ向けの需要も減っている今,MMは確かに生き残ることが難しいだろうと思います。

 閑話休題。

 紆余曲折がありましたが,結局MC20mkIIを,少し前なら完動品くらいの価格で手に入れました。チップが外れて飛んでしまっていますが,それまではきちんと動作していたものだということです。だからカンチレバーもほぼそのまま残っています。

 まあ,これに47000円足せば針交換対応として最新のMC Q20が手に入るのですから,MC Q20の新品を買うより合計で1万円ほど安くなるとは思います。ただ,MC Q20もなかなか微妙な評判のようで,ライバルたちも交換用の種としてではなく,修理用して復活させMC20mkIIの音を楽しもうと考えていたのではないでしょうか。

 9000円ほどで手に入れた不動品のMC20mkIIは,心配していた断線もなく,チップがない以外は正常です。30年以上も前のものですので汚れもサビも浮いていますが,それは綺麗に磨けば済む事です。(この後済まないことが起こるわけですが)

 ところで,届くのを待っている間に私はふと,V15typeIIIの互換針を潰してしまうのはもったいないかもしれないと思うようになりました。極論すると欲しいのはチップだけです。

 なら,V15typeIIIのようなメジャーな高級カートリッジではなく,国産の名もないカートリッジの互換針でいいんじゃないかと,そう思い至ったのです。ただ,名もないカートリッジのしかも互換針が出回っている時代ではすでになく,しかも最低楕円針で,V15の互換針の価格(約3000円)よりも安くないといけません。

 そんなのあるわけないなあと思っていたら,ありました。0.3mil x 0.7milの楕円針が付いた国産カートリッジ用互換針が2000円です。ムク針ではありませんが,私はそこにはあまりこだわらないので,早速手に入れます。

 届いてみると,どうも複数機種に使い回せるよう,共通化したカンチレバーの外側に少し太いアルミのスリーブを差し込み,反対側にマグネットを差し込むという構造になっているようです。サスペンションワイヤもなく,ゴムのダンパに差し込んであるだけの簡単な構造も,この値段の理由でしょう。

 さて,役者が揃ったところで作業開始です。まず,修理前に本体を磨きます。メタリック塗装ですので,指紋がくっきりついて艶もなくなっています。コンパウンドで磨きますが,あまいr磨きすぎると下地の銅めっきが出てきますので,注意して磨きます。

 写真ではくすんだ銀色だったものが,綺麗なシャンパンゴールドになってきました。

 不幸はこの時起こります。磨いている間に,手元が狂って残っていたカンチレバーに激突,「あっ」と思ったあとには,無残にも90度に曲がって横を向いたカンチレバーがありました。

 やってしまった・・・

 この時,どうやって修理をするか,まだ決めかねていました。カンチレバーをできるだけ残した方が,オリジナルの音に近づくはずです。カンチレバーがほと丸々残っているのですから,出来ればチップだけ移植したい所です。

 しかし,今回のチップは楕円です。向きを正確に出さないといけませんから,チップだけの移植はあきらめます。そうするとカンチレバーのどこまで残すか,大いに悩むわけです。

 厳密に言えば,共振の節の部分で繋ぐとか,そういうことも考えないといけないのでしょうが,そんなことより確実にまっすぐ繋いで,強度を持たせる事が優先です。

 でも,それぞれのカンチレバーの太さも内部構造もわからないなかで,最適解など出るはずもなく,運次第でうまくいくという現実に,なかなか踏ん切りが付かずにいました。

 実のところ,カンチレバーを派手に曲げてしまった瞬間,まずいと思うよりも,これで方針が決まったと言う安堵感の方が強くありました。だから,曲がったカンチレバーを反対側に曲げて折ってしまうことにも,何の躊躇もありません。

 しかし,あくまで方針が定まったというだけの話で,次の問題が私の前に横たわります。

 カンチレバーが,あまりに根元で折れてしまったのです。

 カートリッジの表面から飛び出ている部分がほぼすべてなくなってしまった状態で,折れた部分のすぐ先には,もうコイルが巻いてあります。

 幸い,移植する予定のカンチレバーは十分に長いことがわかり,移植出来なくなってしまうことは避けられたのですが,ほとんどゆとりはありません。

 それに,接合する場所は本体の中に潜り込んでしまうわけで,これで作業をするのはかなり難しいだろうと思いました。加えて進んだ老眼は,作業そのものを難しくします。

 どっちにしても,移植予定のカンチレバーの降誕にあるマグネットを外し,太くなっているパイプをMC20側に差し込んで接着するしかありません。マグネットを外し,長さを揃えるところまでは,やっておきましょう。

 ここで頭を冷やすため,寝ます。

 翌日,潰れた切断面をまち針で広げる作業でウォーミングアップ完了。

 そして,事前に考えた作戦をおさらいします。

 作業を確実に行う為に,本体を可能な限りばらします。まずは邪魔なケースは外してしまいます。場合によっては前側のポールピースも外してしまい,接合部分を露出させます。ただ,それだけコイルの断線を引き起こしやすくなりますから,細心の注意が必要です。


 早速,カバーを外します。上面にあるシールを剥がし,爪で引っかかっているプラスチックのカバーをゆっくり下げていきます。この時,背中側にある端子盤も一緒に動いてきますが,なんとここにコイルの細い線が直接繋がっているので,動かないように気を付けてカバーをずらしていきます。

 ここでポールピースを眺めてみると,接合部がちょうどポールピースの穴の中です。これでは作業できませんので,ポールピースも外します。マイナスネジを緩めると,マグネットと前後のポールピースが外れますが,強力な磁石で工具が持って行かれないようにすることと,コイルが宙ぶらりんになるので,断線に気を付けることがとにかく必要です。

 ポールピースを外したら,そのままネジを戻して仮留め,マスキングテープでベースに固定して接合作業を進めます。

 まず,そのまま移植するカンチレバーがささらないか確かめますが,さすがにそれは無理。そこで,もとのカンチレバーの残った部分を抜き取り,コイルのボビンからでている接合部を1mmほど露出させます。

 口で言うのは簡単ですが,なにせすぐそこにはコイルがいます。小さいニッパーで力加減を工夫して外側のアルミスリーブを切り取っていくわけですが,下手をするとコイルもダンパも壊してしまうわけで,そうなったらもうすべてがおしまいです。

 実体顕微鏡で様子を確認しながら,少しずつ剥いていきます。

 よし,ひとまわり細い棒が出てきた。これなら刺さるはず。

 先にまち針で広げた,少し太めのアルミパイプがとりあえず刺さることを確認出来たら,これを接着して固定するため,2液混合のエポキシ接着剤を練ります。ほんの少しだけ塗って,新しいカンチレバーを差し込んでみます。

 5分で硬化しますので,それまでに位置を出します。上下左右からみてまっすぐかどうか,針は傾いていないか,針の先端の場所は適切かなど,これも顕微鏡を見ながら確認して修正をしていきます。

 5分経過し,正しい位置で固着しました。指で触っても大丈夫です。

 本気で使うには24時間経過しないとだめですが,音出しくらいは出来るでしょう。慎重に元通り組み立ていきますが,ポールピースの取付には随分と遊びがありますので,固定する位置を慎重に出していきます。

 ケースも,外すときはカンチレバーが折れてなくなっているので気にしませんでしたが,組み付けるときは針が突き出ていますので,引っかけてしまわないように,信用に被せていきます。

 取り付け,針圧をとりあえず1.7gかけて,音を出します。心配なのは断線です。

 左から音が出ません。やってしまったーーーー。

 ・・・と思ったら,ラインケーブルの接触不良でした。ややこしい。これもどうにかしないと。

 とりあえず,音は出ているようです。そして私は,その伸びやかさとみずみずしさに,心を奪われました。

 もっときいていたい,と思いましたが,接着剤がきちんと固まっていないのに,2g近い針圧をかけていいはずもなく,早々に切り上げました。

 修理完了後の写真が,これです。

20190712113309.jpg

 どうです,接合部が奥に引っ込んでいるせいで,綺麗に修理が出来ているでしょう。

 本格的な視聴は後日やります。シェルはどうしよう,針圧はどれくらいかけよう,オーバーハングも調整しないとなあ,テストレコードで性能の確認も必要だと,いろいろやることがあります。

 でも,とにかく音を出してみて,その素性の良さは一発でわかります。SPUは濃密ですがきらびやかさはなく,DL-103は情報量は多いですが凡庸で,AT-F3/2は派手ですが希薄で重心が高く,うちのMCは各々のカバーレンジが小さい事が悩みでしたが,MC20mkIIは濃密さと情報量はSPUゆずりで,程ほどの重心の低さと華やかさが備わっています。これはどんなジャンルの音楽でも,華麗にならしてくれるのではないでしょうか。

 1つ気になる事があるとすれば,出力電圧が非常に低いことでしょうか。DL-103では0.3mV,SPU#1では0.18mVであるのに対し,MC20mkIIは,なんと0.09mVです。

 実際に音を出してみても,小さいなあという印象が強くありますし,レベルを上げればイコライザアンプやヘッドアンプのノイズが目立って来ます。トータルのS/Nの良さはMMにかなわないというのがMCの弱点ですが,MC20mkIIは特に厳しく,気にならない程度を越えてしまっています。

 MC20mkIIを本気で使うなら,このS/Nの悪さを解決しないといけないですね。

 

 

世にも珍しい魚眼ズームAT-X107DXを中古で買う

 突然魚眼レンズが欲しくなりました。

 チェキをオモチャ代わりに遊んでいる娘が,エフェクトの1つである「Fisheye」の面白さに目覚めてしまい,私も再発見の機会を得たというのが理由です。

 「魚眼」ではなく「フィッシュアイ」で,ひどく歪んだ画像を生み出すレンズを覚えた娘は,私よりもずっと先に特殊レンズの洗礼を受けました。

 ついでにいうと,B&Wというエフェクトも再発見の対象となっていて,なんでもないポートレートが,なにかを語ろうとする意味深なものに変わることに新鮮な驚きを感じてしまいました。

 なんというか,私がモノクロで撮影していた頃というのは,とにかく枚数を稼ぐことが目的だったので,そんなに感動的な説得力のある写真を撮ることは一度もありませんでした。

 加えていうと,さすがフジフイルム。デジタルなのに,そのコントラスト,その階調には,思わず笑ってしまうほどの再現性があります。
 
 話を戻すと,私はこれまで魚眼レンズを使ったことも欲しいと思った事もありませんでした。高価ですし,ほぼ例外なくデメキンレンズなので神経質になるし,その割には使い道は限られてしまい,常用出来るレンズではないというのが,興味を全く持たなかった理由です。

 だから,PENTAX Qのトイレンズで,数千円の魚眼レンズがでた時には,真っ先に買いました。結果,面白いと思いましたし,案外使えるもんだなあと思いましたが,やっぱり常用出来ないので,一眼レフ用のまともな魚眼レンズには手を出しませんでした。

 そして,偶然見かけたのが,ペンタックスがコーティングを変更して発売した,魚眼ズームの記事でした。

 APS-C用の10mm-17mmというズームですが,10mmだと180度の対角魚眼,テレ側になると歪みが減り超広角ズームとして使えるという,面白い一本です。

 これ,トキナーとの共同開発らしく,同じ光学系のレンズが他のマウント用に,トキナーから発売されているのですが,これもペンタックスの旧製品も,10年以上前から売られるロングセラーです。(なにせ作例がD200とか,そんな懐かしい時代の作例です)

 ですので,定価はは8万円ほどですが,実売は45000円以下と安くなっています。AFもボディモーターで駆動するものですし,デザインも垢抜けていません。光学特性もずば抜けているとはいえず,この当時の平凡なものですので,今どきの基準で見れば全然ダメなんじゃないかと思います。

 なにより,APS-C用というのが厳しいです。海外版はフードが取り外せて,フルサイズでも使えるようになっているそうですが,国内版はフードが作り付けですので,ケラれてどうにも使えません。

 でも,魚眼ズームだと,ズームによって魚眼と超広角を切り替えて使う事が出来るわけで,魚眼だけではどうにも使えない状況でも,このレンズであればさっと広角に切り替えて使う事ができます。

 ズームレンズは単焦点レンズ数本分の役割をするといいますが,これこそその真骨頂でしょう。APS-Cなら17mmは25.5mm相当です。今どきこれは超広角とは呼びません。

 しかも幸いなことに,このレンズは欲しいと思っていたトキナーのレンズです。

 トキナーのレンズは,AT-X16-28mmF2.8PROを買った時,その色を大変気に入りました。あいにく,解像度が今ひとつで手放してしまいましたが,この青色には未練があり,安ければ買い直そうかなと思っていたくらいです。

 もちろん,この魚眼ズームが同じ「トキナーブルー」を出してくれるとは限りません。でも,時代的にも大なり小なり同じ方向を向いているでしょうし,少なくともタムロンのような傾向ではないと思います。

 だとすれば,この値段で,しかも広角域で,トキナーブルーが楽しめることになります。これはおいしい。

 ただ,今さらこのスペックのレンズを新品で買うのも,ちょっと勇気がいります。ということは,中古を探すことになるわけです。

 AT-X107DXという名前のこのレンズは,ロングセラーではありますが,大ヒット商品ではないでしょうし,そんなに球数があるとは思えません。でも,買った人の多くが「だめだ使いこなせない」とさっさと売りに出している可能性もあり,数は少ないけど値段は安いというレンズかも知れません。

 探してみると,中野の某店で,程度がAランクのニコン用が26000円。他に在庫はないようですし,他のお店では在庫すらありません。むむむ。

 現物を見ないままで中古を買うことは,必ず1つや1つがっかりさせられるものなのですが,いちいち中野に出向けませんし,確認したところで結局買うのですから,もう買ってしまいましょう。Aランクという言葉を信じて・・・

 届いたものは,キャップくらいしか付属品がない状態で,レンズ本体は綺麗で使用感も少ない良品でした。ちょっと当て傷のようなものがありますが,ほとんど気になりません。

 問題はフロントレンズキャップでして,フードに被せるものなのですが,分厚いアルミで出来た非常に質感の高いものなのですが,コイツの表面に傷がたくさんあるのです。

 なにか,シールでも貼り付けたものを無理に剥がして,ゴシゴシ擦ったような感じの擦り傷で,随分目立ちます。安いものならキャップだけ別に買うかと探してみましたが,あいにくアルミ製なので非常に高価とわかり,あきらめました。

 ちゃんと調べていませんがこれ,ペンタックスのFA43mmやFA77mmのキャップとよく似ています。

 手に取ってみると,これがなかなかずっしりとして,いい質感です。小型で取り回しもいいのですが,ちゃちな感じはせず,見た目に反して凝縮感があります。設計はペンタックスだということらしいですが,さもありなん,という感じがします。

 ズームもフォーカスも,可動部分も滑らかです。4万円そこそこで売っているレンズとは思えないです。

 実際に撮影してテストをしますが,光学的には問題なし。さすがに暗いですし,画像も高価なズームに比べるとさっぱりですが,そこはやはり一眼レフ用,ちゃんとした画像が撮影出来ます。

 D850はAPS-Cにクロップすると,撮影エリアの外側が黒く塗りつぶされてファインダーに投影されます。ですのでこのレンズでもなんら問題不自由を感じる事なく使えるわけですが,12mmという超広角の世界に見慣れた人でも,画面がグイーンと曲がる魚眼の面白さは,ファインダーを見ただけで感じられることでしょう。

 ということで,何枚か撮影してみます。このレンズは14cmまで寄れるありがたいレンズで,これだけ寄れれば魚眼も超広角も怖くありません。魚眼は,中央部は歪みが少なく,外に行けば大きく歪むレンズなわけですから,ぐっと寄って被写体を真ん中に据えることは必ず必要になります。

 くっつくんじゃないかと思うほどに近寄った娘の顔を撮影し,本人に見せてみると,にやっと笑ってから「フィッシュアイだ」とうれしそうにいいます。この歪みを表現手法として使うのは難しいですが,魚眼も含めた広角はとにかく「寄る」ことが基本です。

 その上で,180度言う視野角を使い,ぱーっと目の前の画像を一網打尽にするというのはなんと気持ちのいいことか。特に縦位置でいけば,足下から空まで全部入り込んできます。これは面白いです。

 機会があれば,D850をAPS-Cに固定して,このレンズだけで外に出てみたいところです。きっと面白い景色を切り取ることができるでしょう。同時に,バリエーションの少ない,どっかで見たことのあるような写真が量産されることにもなりかねず,そうしたつまらなさに,案外がっかりすることになるかも知れません。

 

GPSDOが壊れたので修理

  • 2019/07/08 13:36

 先日,ふと自作のGPSDOのパネルに目をやると,OCXOの制御電圧を示すメーターが振り切れていました。PLLが特区していて,10MHzをきちんと出力しているときは中央に来るようにしてありましたので,振り切れるというのは明らかに故障で,出力も10MHzではなくなっています。

 このGPSDOは2016年8月に完成したもので,その後大きなトラブルもなく,うちの基準クロックとなってくれていました。

 これはいかんと,あわてて詳細を調べます。

 調べてみると,周波数を制御する電圧が,条件と下限を行ったり来たりしている状態でした。つまり,PLLが全くロックしていない状態です。

 しかし,これほど制御電圧がへんかしているのに,出力周波数が変化しない(フラフラと変動はしている)のもおかしいと,OOCXOのVC端子に,電源器を繋いで電圧を動かしてみました。

 しかし,周波数が全く変化しません。

 周波数が変化しないなら,PLLがロックするはずがありません。OCXOの制御電圧端子に直結した電源器の電圧を動かしても周波数が変化しないのですから,もうこれはOCXOの故障です。

 このOCXOはヤフオクで手に入れたもので,4000円ほどで購入しました。ダブルオーブンではないのですが,何かの役に立つだろうとGPSDOの自作を始める少し前に買って置いたものでした。

 24時間運転とは言え,3年で壊れるとは・・・

 まあ,ジャンク品なんていうのはそんなもんです。

 気を取り直して,修理を試みます。OCXOはGPSDOのキーパーツです。これが壊れた以上は交換しかありません。

 そこで,やはりオークションを探して2つ手に入れました。1つは小型のシングルオーブンで,5Vで駆動するもの。もう1つは12Vで駆動するもので,ダブルオーブンです。

 どちらも電圧制御が可能と書かれていませんが,端子の数や周波数調整用のトリマがないことを考えると,電圧制御で間違いなさそうです。

 届いたので早速確認をしますが,5Vの小型のものは問題なく,1Vで2Hz程度の周波数の可変が出来ています。もう1つは動作が怪しい。

 12Vのダブルオーブンのものは,GPSDOを5V用に改造しなくて済みますし,しかもダブルオーブンですので,さらに高性能化が図れます。一石二鳥とこのOCXOに交換することを本命としていたのですが,動作が怪しいとあれば慎重にならざるを得ません。

 古いOCXOを取り外してから,ダブルオーブンのOCXOをミノムシクリップのコードで仮接続します。するとやっぱりロックがかかってくれません。

 しかも,OCXOに手書きで書かれた端子名に誤りがありました。信じて電源を入れていると,ヒーターのONとOFFで周波数が大きく変動します。どうも,Vref端子を電源と間違えて書いてあったようです。

 正しい端子につなぎ替えてもやっぱり周波数は制御電圧で変化しません。きちんと調べてみると,通常2Hz/1V程度であるはずの所,0.5Hz/1Vくらいです。しかも,電源電圧で圧12Vをかけても,10MHzを越えてくれません。これでは,ロックなどかかるはずがありません。

 しかも,制御電圧を電源電圧と同じにしても,周波数がフラフラと変動して定まりません。2から3Hzの変動がありますので,これはOCXOとしては不適切です。

 うーん,どうも壊れているようです。

 残念です。一応10MHzが出ている事は画像に出ていましたし,実際にそれらしい周波数は出ていますが,GPSDOにつかえるようなものではありません。

 もう,このOCXOはあきらめました。嫁さんは「詐欺だ」といってましたが,まあジャンク品ですし,仕方がないところでしょう。

 もう1つの5VのOCXOは非常に調子が良いです。5Vを外部から与えてGPSDOに繋いで見ると,きちんとPLLがロックします。

 そこで,基板に12Vから5Vにする7805を追加し,ここから5VをOCXOに供給することにしました。

 動き出せば,ゆっくりPLLがロックしていきます。24時間後には,10mHzの桁がポロポロと1から2くらい,変動する程度まで安定してきました。

 ダブルオーブンを奢ることは出来なかったのですが,従来と同じ程度の最終性能は出ていそうな幹事です。

 ちなみに,故障前のOCXOと同じ型番のものをebayで見つけ,オーダーしましたが,出荷前のテストで不良品である事がわかり,キャンセルされてしまいました。

 残念ですが,仕方がありません。

 ダブルオーブンのOCXOは故障品を掴まされました。釈然としませんが,オークションにはこういうリスクは折り込み済みで,仕方がないなあとあきらめました。

 しかし,ジャンク品だけに,簡単に壊るもんですね。予備を買っておいた方がいいかもしれません。

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1

ユーティリティ

2019年07月

- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed