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2017年08月の記事は以下のとおりです。

D850は最後の最強モデルになるのか

 以前から噂が出ており,半ば確定路線とも言えたD800系列の最新モデル,D850が昨日正式に発表になりました。

 開発そのものは7月末に発表になっていましたが,詳細スペックや発売日,価格などが出てきたのが昨日です。

 スペックは事前の噂通りだったのでそんなに驚くことはなかったのですが,驚いたのは発売日と価格です。発売日は9月8日とわずか2週間後ですし,価格はカメラ店での一発目価格が税込み約36万円です。

 いやなに,36万円は高いです。D800の価格が27万円くらいで始まり,D810が現在20万円前半で買えることを考えると,同じシリーズの後継機種が36万円は,やはり実質値上げだと,私などは思っています。

 しかし,世の中,安すぎる,ニコンは商売が下手,バーゲンプライスだと絶賛の嵐です。

 正直に言って,ここまで褒める気は私にはないのですが,安いという意見には私も同意します。理由は2つ。1つはD850はD800系列の最新モデルというよりもむしろ,D5の高画素機とも言える内容になっていることです。

 登場時に皆腰を抜かしたD5のAFシステムと同じAFを搭載し,連写速度も最大で9コマ/秒,シャッター耐久20万回のプロ仕様です。

 中級機種には必須であるストロボをあえて内蔵せず,小型ストロボが便利にならないプロを意識し,その代わりに見やすい光学ファインダーにこだわるという姿勢は,間違いなくD800やD810とは別のユーザーを取りこもうとしています。

 思えば,D800も一眼レフのその後の方向性を決定付けた記念碑的モデルでした。いきなりジャンプアップした3600万画素にD4から移植されたAF,しかし20万円台の価格と,その後の高画素モデルのあり方を決めたと言ってもいいと思います。

 その後,ライバルのESO5Dシリーズの価格が,性能アップと共に一気に上がり,40万円を越えるようになってしまい,完全にプロに軸足を置くようになりました。ニコンもこれに追従するのではないかと思っていたのですが,D810についていえば,それはなかったと言えます。

 でも,D850の噂が聞こえてそのスペックがわかってくると,これはもプロを相手にしたカメラだな,きっとD800系が担っていたハイアマチュアは,もう1ランクしたのカメラをあてがうつもりだなと,そんな風に感じてしまい,自分の世界から外に追い出していたのでした。

 そこへ,昨日の発表です。

 36万円なら,なんとかなるんじゃないか・・・今なら発売日に手に入る・・・とりあえず予約だけはしておこう・・・

 気が付いたら,D800を買ったカメラ屋さんに,電話で予約を済ませていました。

 D800を購入したのが2012年の6月頃。あっという間に大きくなるこの時期の子供を,可能な限りの高画質で残しておきたいと,思い切って買ったものでしたが,5年を経過した現在においても,D800の画素数や画質には不満はありません。むしろ手に馴染み,クセも分かったD800は,買い換える理由を見つけられません。

 しかし,D800に対する不満や,我慢をしていることがないわけではなく,それはやはり連写速度とAFの性能,そして高感度性能でした。

 D2Hと併用すれば,大昔の失敗機のシャッターの機敏さと心地よさにD800が色褪せて見えます。単純な連写枚数ではなく,高速連写を実現するために鍛えた筋肉と骨格が持つ,ゆとりと軽快感が欲しいのです。

 AFも当時は最高性能であり,今も十分なものを持っていますが,さすがに撮影や構図に集中出来るかといえばそれは難しいです。

 そして高感度性能。ノイズがの多い少ないなんてのはもう昔の議論であり,ノイズが気にならない範囲での,発色の良さとダイナミックレンジの広さがどれくらい維持されるかが重要です。D800は,ISO800くらいが劣化のない範囲であり,ISO3200は限界ギリギリでした。

 それらが,一気に解決します。約4600万画素という強烈な画素数で最大9コマ/秒です。ブレを押さえるためのシャッターカウンターバランサーの搭載まで搭載し,強靱なバネとしなやかさを兼ね備えた,まるでバレエダンサーのようなメカに,おそらく私の脳みそはアドレナリンをドパドパ出す事でしょう。

 ソニーが撮像素子の歴史を塗り替え,人類が後世に残す画像に新しい基準を作った裏面照射CMOSセンサは高感度と高速性を両立し,これもおそらく高感度時の画質を高い次元で維持していることでしょう。

 また,これまで撮影サイズで変化していた連写速度が,フルサイズでもAPS-Cでも変化しないことにも注目です。もはや,連写速度は,画像データの転送速度によって制約されるのではないと言うことなのです。

 AFはD5からの移植ですが,測距点をただ増やしても面倒なだけ,しかし増やした測距点をデータ収集拠点と考えたニコンは本当に偉いです。複数の測距点をまとめて,AF性能を高めると言う発想は強烈です。

 AEも,一点の明るさ,多点の明るさ,やがて色まで判断するようになりましたが,すでに初期のテレビカメラと同じ画素数をもつ18万画素のAEセンサは,とうとう画像そのものを判断するようになりました。

 これに加えて,私は冷静に,もしかすると,ニコンの長い歴史の中で,ミラーボックスを持ついわゆる「一眼レフレックス」が,このモデルで終焉を迎えるのではないかと,そんな風に思っています。

 すでにデジタルカメラになることで,光学ファインダーが必須ではなくなっています。電気的に解決しないといけない問題が多く,俗に言うミラーレスカメラがまだまだ光学ファインダーを持つカメラに追いつかなかったのですが,それももう昔の話です。

 一般撮影に限って言えばすでに光学ファインダーでなくても構わないくらいに電子ファインダーの性能は改善されており,一方で電子ファインダーのもつ素晴らしいメリットが,カメラをより魅力的なものにしています。

 ニコンも本格的なミラーレスの開発を宣言しており,フィルムカメラをデジカルカメラが置き換わったように,実は一眼レフがミラーレスに置き換わることの真実味を,ニコンがイメージし始めたのではないかと思うのです。

 そんな矢先に出たD850を見ていると,出し惜しみ無しで,今一眼レフに搭載出来るものをすべて盛り込んだものと,私には見えます。それはまるで,F5に対するF100のようです。

 そう考えると,D850は,価格と性能という単純な軸のみで考えるべきではなく,私が長く親しんできた一眼レフの1つの頂点であると見えてきます。

 単なる記念碑的モデルではなく,実用モデル,あるいは戦闘用モデルとしての最強一眼レフは,もしかするとD850で終わりになるのかも,知れません。

 なら,やはり欲しい。

 9月8日が,とても楽しみです。



amazonで買える部品だけでケルビンクリップを作ってみる

  • 2017/08/21 13:57

 このところ,技術的な検討に消極的な状況が続いていて,どうも知的好奇心の薄い毎日を送っています。

 相変わらず家事と子育てにバタバタしていることには変わりはないのですが,仕事も昨年比べると忙しくなっているのは事実ですし,子育てについても子供の急激な成長にその意味合いも内容も変化が大きく,否が応でもその興味が子供に向いてしまうものです。

 今日が昨日と変わらず,明日が今日と変わらないことを何より価値のあるものと考える大人としても,毎日必ずどこかに変化のある子供と時間の許す限り一緒に過ごすことを,今日と同じ一日は二度とやってこないという強迫観念のみならず,純粋に子供の話を聞いていると面白いわけで,すでに私の時間は目一杯になっているというのが,今の生活だとつくづく思います。

 まあ,こういう趣味や興味に関する波というのは往々にしてあるもので,数年周期でカメラ,電子工作,オーディオ,楽器,模型,という具合にグルグル回るものですが,不思議とどれにも没頭していない状態というのは,ちょっと珍しいかも知れません。

 そんな中でも,夏休みに工作をしないというのは,私の人生ではあり得ません。小学校の頃から続いている習慣ですし,なにより夏休みにと言うだけで,自然に工作したくなるものです。

 今年は,懸案だった「ケルビンクリップ」を作る事にしました。

 ケルビンクリップというのが正しいのかどうか自信がないのですが,ほら,4端子法による抵抗測定に使う,あのクリップにリードが付いているやつです。

 私の持っているマルチメータ,HP34401AやDL2050には,4端子法による抵抗測定機能があります。これを使えば,特に低い抵抗での測定誤差を小さくすることが出来ます。

 オームの法則はE=IRで,電圧と電流を測定すれば抵抗がわかります。テスターで抵抗を測定する機能はこれを利用しているわけです。

 2端子法というこの方法は,電圧計と電流計の内部抵抗の影響がどうしても出てしまいますし,リード線が持つ抵抗も測定誤差の原因になります。

 それでも,1kΩとか10kΩといった抵抗なら影響は小さいですが,これが1Ω以下の抵抗を測定したり,100Ωで0.5%の誤差を考慮しないければならない場合などでは,無視できなくなってしまうわけです。

 そこで,かのケルビン卿が考えたと言われている方式が,4端子法です。

 測定したい抵抗に直列に電流計を入れて,電源を繋ぎます。当然電流が流れるわけですが,ここで電圧計を繋ぐ場所を,抵抗の両端にします。電流計が繋がる端子が2つ,電圧計が繋がる端子が2つで4端子法と言われます。

 どうしてこれで正確な抵抗が測定出来るかを考えてみましょう。

 まず電流です。電流計は直列に入れるものですから,どこに挟まっていても同じ値を示します。もちろん,リード線に抵抗があれば電流も変わってしまいます。

 しかし,思い出して欲しいのは,先程電圧を測定したのは,まさに測定したい抵抗の両端だったということです。リード線の抵抗の両端の電圧はここには含まれませんから,電流計のリード線の抵抗がどれだけあっても,関係ないのです。

 電圧計のリード線の抵抗は無視できないだろうという声が聞こえてきそうですが,これも心配ご無用。電圧計の内部抵抗が極めて大きい場合,電圧計と,電圧計に繋がっているリード線にはほとんど電流は流れません。

 電流が流れないという事は,リード線の抵抗がどんな大きさであっても,電圧計の値には影響がないということですから,こちらもリード線の抵抗がどれだけえあっても,関係ないのです。

 見事にリード線の影響を無視できる測定系が完成しました。すごいですね。

 しかし,これには結構重要なポイントがあります。電流を流す端子と,電圧を測定する端子は,共用されていてはいけないのです。

 共用されれば,共用された場所に大きな電流が流れてしまい,ここで起きる電圧降下によって電圧の値に誤差が出ます。

 ですから,電流を流すミノムシクリップに接触しないように,かつできるだけ知覚に,電圧を測定するミノムシクリップを取り付けないといけないのです。これって,なかなか難しいです。

 そこで,専用のクリップが作られました。これがケルビンクリップです。

 洗濯ばさみのような大きなクリップの先端は,上と下に別々の金属で作られています。閉じれば接触していますが,開けば接触していませんので,絶縁されています。

 そして,上側と下側に,電圧計と電流を流す回路とを繋げておきます。これを2つ作り,測定したい抵抗を挟みます。

 そうすると,上側と下側は直接接触せず,それぞれ抵抗の足に接触するだけです。接触せず,できるだけ近くという難しい問題を,挟むだけで解決してしまうんですから,なんとまあアイデア商品なことでしょうか。

 ところがこれ,測定器メーカーから出ている完成品は結構なお値段がします。数千円から数万円と,さすがに手が出ません。それに,もともとmΩやμΩといったオーダーの超低抵抗を測定する専用の測定器を前提にした物だったりするので,実に真面目に作られています。

 マルチメータの機能ですから,そこまでの低抵抗を測定する力はそもそもありませんし,そんなにおかねのかかったケルビンクリップを買うのも,出番が少ないだけにバカバカしいです。そこで私は昨年,ミノムシクリップのついた普通のリード線を4本用意し,これを使って4端子法による抵抗測定をやってその場しのぎをしました。

 これでもそれなりに意味があったわけですが,何せ手間がかかります。そこで機会があったらケルビンクリップを自作しようと思っていたのです。

 今回はサブテーマとして,amazonから調達可能な部品で作る,というのも加えてみました。最近のamazonは,こうした特殊な部品も入手出来るようになってきました。

 まず,クリップ本体です。ただのでかいワニグチクリップを買うと泣きを見ますので,慎重にケルビンクリップを探します。すると2個セットで777円のものが見つかりました。安い。

 次にバナナプラグです。BNCコネクタではなく,あくまで34401Aに繋ぐバナナプラグが必要で,4つ使います。これがなかなかいいものがありません。スピーカーの端子としてよく使われている関係もあり,オーディオ用のものはあるのですが,普通のものはどうも安価に買えません。

 そんなとき,テスターリードが150円ほどで売られていることに気が付きました。これを2つ買えば,バナナプラグ付きのリード線が300円で手に入ります。

 合計で1000円ほどの材料費で,4端子法のケルビンクリップの材料が揃いました。

 ケルビンクリップははるばる中国から郵便で届きました。テスターリードは国内の業者から届きましたが,いずれも問題なし。

 早速作って見ます。テスターリードの先端を切り取り,ケーブルの皮を剥いてはんだめっきをします。そしてケルビンクリップにハンダ付け。たったこれだけです。

 早速試してみましょう。100Ω程度の抵抗でも,2端子法と4端子法では誤差の出方が違います。概ね0.3Ωくらいの測定差が出るようで,これは結構大きいですね。

 ということで,あっけなく完成したケルビンプローブ。これで超高精度な抵抗測定が出来ると喜んでいたのですが,冷静に考えるとそもそものマルチメータの精度がどれくらい出ているかを考えないといけません。

 DL2050と34401Aでは,4端子法による測定値にも差があります。その差は2端子法と4端子法の差以上のものです。これでは,4端子法を使う以前の問題です。

 一応,電圧リファレンスによる精度確認で34401Aの方が高精度であることが分かっているので,こちらを信用することになると思いますが,まさに測定器というのは底なし沼です。追い込んでも追い込んでも,納得出来ません。ああ恐ろしい。

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