WX310にDCCデコーダを内蔵する
- 2021/04/09 12:12
- カテゴリー:鉄道模型
カトーの両渡りクロスポイント,WX310のDCC化が次のテーマとなった再開Nゲージですが,思った以上に上手くいきました。
今回のキモは,新たに導入したDCC出コータ,ロクハンのA060です。コイツはなかなか優秀ですよ。設計者の高い志も感じられます。
WX310はユニトラックの両渡りクロスポイントですが,その構造は6番ポイントを向かい合わせに4つくっつけたものです。ポイント駆動用のコイルもそれぞれのポイントに1つずつ付いているので,合計4つが同時に動くことになります。
そしてそのコイルはすべて並列に繋がっており,駆動電流も4倍になります。
後になって発売された片渡りクロスポイントSX248は4番ポイントを2つ組み合わせたもので,しかも1つのコイルで2つのポイントを動かしますから,電気的には通常のポイントと変わりません。
バネが強いこともあって,WX310は走行安定性に定評がありますが,設計の古い6番ポイントがベースなので非選択式に設定を変更出来ませんし,なんと言っても全長が長く,310mmもあります。
一方のSX248は4番ポイントがベースなので全長は248mmと随分短く使いやすいのですが,バネが弱いことと4番ポイントの持病である脱線が多いことで,私にはいまいちな印象です。
でもやっぱり最大の違いはポイントの駆動コイルの数でしょう。WX310は4つのコイルが動きますので,0.5A定格の現行のポイントデコーダDS51K1なら4つも必要になります。ただでさえ高価なWX310にデコーダが4つとなると金額的にかなり厳しいですし,そもそも内蔵できるスペースもあやしくなります。
以前使われていたDS51という古い型番のデコーダは駆動電流の定格が1Aまで許されていたので,2つまでならコイルを駆動出来ました。それでカトーが販売していた古いデコーダマニュアルには,DS51を2つ内蔵する改造例が掲載されていました。
しかし,現在無料で配布されている改訂版のデコーダマニュアルでは,DS52という外付けの大型デコーダを使うように変更されています。
しかし,せっかくデコーダを内蔵できるユニトラックを使う意味が半減します。なんとしても内蔵し,レイアウトに組み込めば配線不要でポイントを動かす事ができるようにしたいところです。
で,実はSX248を購入するとき,私はてっきり,これがコイルを2つ持つ物だと思い込んでいたのです。なのでDS51K1では駆動出来ず,なんとかしないとなあと思って探したところ,ロクハンという新しいメーカーさんの,A060というなかなか優れもののポイントデコーダを見つけました。
A060は実売2000円くらいの安価なデコーダですが,ユニトラックのような極性を替えることで開閉するシングルコイルのポイントマシンだけではなく,モーター駆動のポイントマシンを制御するモードにも切り替える事が出来る上,LEDや電球などのアクセサリを制御するデコーダにもなる,汎用性の高いものです。
シングルコイルのポイントデコーダとしても,駆動時間を調整出来る上,駆動電流が1.0AとDS51K1の2倍で安心,しかも規格上250ms以内なら2.5Aまで許容するとわざわざ明記していて,なかなかしっかり検討されているものだと感じました。
このデコーダをSX248用に購入したのですが,コイルが1つだけだったので,無理にA060を使う必要がなくなってしまいました。ですが,手持ちのDS51K1が1つしか残っておらず,かつ新しく買うのが難しい状況なので,壊すと怖いという理由からA060を内蔵することにしたのです。
まずは,これが本当に使える物なのかをチェックします。A060を内蔵しないでポイントを駆動してみますが,完全に切り替わってくれません。コイルが鳴いているので配線はされていると思うのですが・・・
そこで,A060の設定をいじってみます。A060はDS51K1と違い,CV値で設定を変更して調整が出来るようになっています。これが汎用性の高さ実現しているんですね。
取説によると,駆動時間がCV03で設定されていて,初期値は20msです。DS51K1が300msですから,20msというのは随分短いです。(ただ,300msというのは長すぎでコイルの焼損になるという話も耳にします。)
なら,CV03を変更してみましょう。最大値は250msまでですので,とりあえず100msにします。
ですが,どうやってCVを変更するのか・・・私が使っているカトーのD101というセットは,デジトラックスのデコーダを前提にしていますし,私自身もデジトラックス以外を使った事がありません。同じような方法でCVにアクセスするのですが全くダメで,アドレスも読み出せません。
目を皿のようにしてA060のマニュアルを読むと,「ダイレクトモードのみをサポートします」とあります。そういえばデジトラックスはページモードだったなあと思いだし,D101のマニュアルを読みますが,詳しく書かれた箇所はありません。
DCCでは,CVのアクセスにページモード以外の方法も規定されていて,互換性はありません。ページモードとダイレクトモードで何が違うのかはわかりませんが,D101でもダイレクトモードが使えるようなので,PROGボタンを何度か押して「dir」表示にしてから,CVアドレスを入力してCV値をリードしてみます。
するとうまくいきました。書き込みも出来るので,これでCV03を変更出来るでしょう。
しかし,値が残ってくれません。ここでまたしばらく悩んで,A060の取説を読んでみます。すると,CV03を変更するには,CV33を1にしないといけないとありました。
CV33は動作モードを決めるCVで,初期値は0です。0もしくは1がCV33に設定されているとユニトラックで使われるコイル駆動のモードで動作するのですが,0ではCV03は書き込み不可となり,20msに固定されます。これはきっとコイル焼損を防ぐための安全策だと思います。
なので,CV33を1にし,CV03を100にしてみますが,今度は無事に書き込みが出来たらしく,読み出し値も一致します。これでポイントを駆動すると,見事にカシャッとポイントが動いてくれました。
破損を防ぐため,ここから少しずつ駆動時間を減らしていき,私の場合は少し余裕をみて60msに設定しました。これで十分駆動出来ます。
さて,これで動作確認は出来ました。次は内蔵です。
A060の最大の欠点は,厚みが大きいことです。これは電解コンデンサに円筒型の物を使っているからですが,あえてこれを使っているのはそのタフさからだと思います。デジトラックスのデコーダのようにタンタルコンデンサを使う手もあったでしょうが,タンタルコンデンサは電圧オーバーに弱いですし,しかも壊れるとショートしてしまうので,なかなか怖い部品です。
ならば最近使われるようになった積層セラミックコンデンサならいんじゃないのかと思いますが,これはこれで大容量品は耐圧が低いですし,印加する電圧が上がると容量は減るし,高温になっても容量が減るので,実力は7割,最悪半分くらいになると思って使わないといけません。
しかし,今回はNゲージで用途限定ですので,ギリギリのところを狙って小型化するため,電解コンデンサを積層セラミックコンデンサに交換する改造をします。
電解コンデンサは2つ使われており,22uF25Vと,47uF16Vでした。
NゲージのDCCですので,電圧は15Vを越える事はないですから,どちらの耐圧も16Vでギリギリ許すとし,また容量も22uFで統一します。そもそも電解コンデンサも誤差が大きいので,47uFよりも小さめなことも多いです。
ということで,手持ちの22uF16Vの積層セラミックに付け替えてみたのですが,とりあえずコイル1つは問題なく駆動出来ました。
この段階でSX248に内蔵してレイアウトに組み込んだわけですが,先日書いたようにやはり両渡りにした方がおもしろく,WX310への置き換えを行う事にしたのです。
早速WX310を手配したのですが,やはりコイル4つの同時駆動というのは不安があります。規格上は2.5AまでOKなのですぐに燃えてしまうことはないでしょうが,使っている内に壊れてしまうことはあるでしょうし,そもそも駆動出来ないかも知れません。
ちょっと計算するとわかるのですが,20Ω程度の直流抵抗を持つコイルが4つ並列なので,約5Ωです。この数字ですでにびびっていますが,デコーダのFETのオン抵抗はこの値よりもずっと小さくないと,電圧が下がって動かなくなります。仮にオン抵抗が5Ωだとすれば,コイルにかかる電圧は半分になってしまうわけです。
なので,駆動電流の定格も大事ですが,オン抵抗の低さもとても重要です。
これはもうやってみるしかないなということで,WX310をA060で駆動してみました。結果は,あっさりと駆動出来てしまいました。確実に動作するので,このままいけそうです。すごいぞA060!
あとは内蔵です。WX310の底板を外し,入りそうなスペースにA060を納めて配線します。それでも厚みがあるので,底板のアルミを切り抜いて,デコーダを避けるようにしておきます。
同時に,非選択式への改造も行い,元通り組み立てます。そしてレイアウトに仮で組み込み,動作テストです。
結果は問題なし。綺麗に切り替わりますし,脱線もおきません。小さいレイアウトに無理に310mmの線路を組み込みましたので,高架やカーブの接続点で無理をしていて,いびつな隙間もあるのですが,なんとかごまかして使えるような感じです。
ということで,最終調整は後日として,とりあえずA060はWX310を駆動出来ること,そして内蔵出来ることが実証できました。
それにしても,DS51K1が入手困難な状態が続いている昨今,同じような価格でさらに高性能なA060は大変貴重な存在です。車両用デコーダのように数が出るものではないと思いますが,引き続き入手しやすい状態が続くことを願っています。
ついでにいうと,もうちょっと小さく出来るとうれしいですし,なにより厚みを薄くしてくれないと,内蔵が難しくて大変です。かといってA060から性能を落としてしまうとDS51K1となにが違うねん,という話になりますから,A060の性能を維持しながらの話になるわけですが・・・