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2012年07月の記事は以下のとおりです。

Mountain Lionをインストールしてみる

 7月下旬というアナウンス通り,日本時間の7月25日の夜,Mac用の新しいOS,OS X 10.8 Mountain Lionがリリースされました。

 価格は1700円という,有償のOSの価格としては安い価格設定です。機能は200を越えるという事ですが,見た目の違いが乏しいため,比較的地味なアップデートという感じがします。

 販売方法はダウンロードのみ。物理メディアでの提供は現時点ではないという話ですが,どうしてもブロードバンド環境がない人はApple Storeへ持ち込めとありますので,将来的にもダウンロードのみではないかと思います。

 容量は約4.3GBですので,私のような低速ADSLの人だと,実に4時間もかかってしまいました。趣味や仕事だけではなく,コンピュータの維持管理に光回線が必要になる時代が来ようとは,思ってもみませんでした。

 Mountain Lionのコンセプトは,クラウドとの親和性です。1つ前のLionでiOSとの距離を縮める戦略は十分に理解されたとみて良いですが,iCloudをOSでサポートすることで,iOSの搭載機器との間で,データのみならず,「今していたこと」さえもシームレスに連携することになりました。

 まあ,これってOSそのもの,あるいはMacそのものの高機能化というより,iOS機器との抱き合わせのような気がしてくるので,iPadやiPhoneを持たない(ついでにいうと反りが合わない)私のようなマイノリティにとっては,あまり魅力的に見えないアップデートのはずでした。

 セキュリティアップデートのつもりで1700円を支払ったわけですが,実際にインストールして使って見ると,その考えは間違っていたとの認識に至りました。

 ということで,私の独断と偏見による,Mountain Lionの注目すべきポイントです。

(1)完全64ビットOS

 今なお名作の誉れ高い10.6,Snow LeopardでMacOSは64ビットOSへの道を邁進してきたわけですが,巧妙な方法でアプリケーションは32/64ビットを区別なく実行出来るOSであることは,今回のMountain Lionでも代わりません。

 とはいえ,カーネルやドライバは両用には出来ませんので,起動時にどちらか一方を選ぶ事になります。もちろん,メモリ空間もパフォーマンスも64ビットの方が有利なことはいう間でもありません。

 Mountain Lionでは,カーネルやドライバが32ビットでは起動せず,64ビット専用となりました。自動的に,Snow LeopardやLionの時に64ビットモードで起動出来ない古いMacは,動作非対象となります。

 私はMacBookAirの2010年モデルを使っていますが,カーネルはもちろん,ドライバも完全に64ビットのものに揃っており,気持ち悪さが払拭されました。まあ,もともと私は所有する2つのMacのいずれも64ビットモードで動かしていましたので,そんなに変化があるという事ではありません。

 ただ,このことはもっと大きく扱われて良いと思います。Macは68000から68020や68030への移行時,68kからPowerPCへの移行時,PowerPCからx86への移行時,さらにMacOS9からMacOSXへの移行時に,互換性の問題を巧みに回避してきました。

 1つはエミュレーションで,1つはAPIの追加で,1つはフォルダを「アプリケーション」に見せるNeXT由来の技術で,我々は非互換という精神的にも大きな打撃のある問題を,直視せずに済んできたのです。

 気が付いたら移行が終わっていた,どれもそんな感じがします。しかし,その移行は大きな事件として常に取り扱われ,過渡期の対応策の巧みさが賞賛されることも常だったわけです。

 今PCの世界で起こっている64ビットOSへの移行は,まさにこれだと私は思っています。Macが今後も「コンテンツを創るマシン」として生き延びるには,64ビット化が避けられません。しかし,一方で保守的なクリエイター達が反発せず,32ビットから64ビットへの移行を「気付かないうち」に行わねばなりません。

 アップルとMacは,またしてもこの移行を,深く静かに行ったわけです。

 同じCPUですし,あまり違いが取り沙汰されることはないようですが,64ビットと32ビットでは,もう別物だと私は考えています。移行期であったSnow LoepardとLionは,大変に見事でした。

 そして満を持して,Mountain Lionで完全64ビットになったのです。脱落者は,そろそろ買い換えを行う方が良い古いハードウェアを所有する人達だけです。アプリケーションについては,相変わらず32ビットでも動作しますから,ここでの脱落者はいません。

 これでMacは,当分安定したコンピュータでいられるでしょう。なにせ64ビットのアドレス空間は途方もなく広大で,使い切るのに当分かかるはずですから。

 今回の移行は,アーキテクチャを根幹から変えてしまう大きな変革です。他のOSのように古いアーキテクチャと新しいアーキテクチャを混在させれば,メーカーは別に非難もされませんし,ユーザーも不満を訴えませんが,あえてそうしなかったアップルの,シンプルで美しものを求める姿勢は,相変わらず健在です。


(2)音声認識

 デフォルトではOFFになっている機能ですが,実は密かに凄いことになっています。音声合成(Text-to-Speech)は以前からそこそこ使えるものになっていましたが,いかんせん実用性が乏しく,実際に使っている人も少ないのではないでしょうか。

 これが音声認識となると,桁違いの技術的な難易度であり,実用性を議論する前に使い物になるかどうかという時代が長く続きました。私も,結局ニーズもないまま,音声認識は特殊機能まま終わってしまうんじゃないかと思っていました。

 ところが,Siriによって音声認識が使い物になることを示したアップルは,Macにも使い物になる音声認識を機能として入れ込んできました。

 コントロールパネルから音声認識をONにしてから,Fnキーを2回押すと,音声認識モードになります。音声を入力してからFnキーを1度押すと,しばらく悩んだ後に,ほぼ正確なテキストを入力してくれます。簡単な単語なら,まず間違いません。

 一種のインプットメソッドですので,テキスト入力が可能な場所ならすべて利用可能です。また,これまでによく見られた音声認識ソフトのように,音声入力の始まりと終わりをキーの押下で明示しないものではないため,長い話し言葉を文章にするとか,スピーチを書き起こすとか,そういう用途には向いていないと思いますが,それくらいに割り切ってあるから,この認識率なんでしょう。

 実際の所,Twitterのような短い入力を,いちいちキーボードから打ち込むのは面倒なときがありますが,音声認識を使えば文字通り,つぶやくことが出来るわけです。

 私も面白がって試して見ましたが,本体内蔵のマイクでも概ね良好な認識率でした。私としては,とりあえずカナで入力してもらって,かな漢字変換はATOKで出来ればより高い認識率を目指せるんじゃないかと思っていたのですが,そういうことは出来ないようです。


(3)NotificationのOSへの統合

 アプリケーションからの通知が,OSによって用意された通知エリアに表示されるようになった機能については,iOSの機能を取り入れたという文脈で語られることが多いのですが,少し違って見方をしてもよいと思います。

 ファイルの読み書きなどの標準的な入出力やメモリ管理,タスク管理という,どんなアプリにも必要な機能を,共通のソフトとして用意しておくという発想から生まれたのが,Operationg Systemというソフトウェアです。

 OSは基本的なサービスを提供するだけではなく,GUI,グラフィック,検索などの機能も取り込み,それぞれのアプリケーションに提供するようになりました。現代のコンピュータ,とりわけパーソナルコンピュータにおいてOSの果たす役割は極めて大きいと言えます。

 それだけ肥大化したOSにおいて,アプリケーションからユーザーに対して知らせる通知が,各々のアプリケーション任せになっていたことは,考えてみれば不思議なことです。特にマルチタスクが当たり前になった現代のOSで,バックグランドのアプリからの通知が,それぞれに任されているというのは,非常に不自然でした。

 おそらく画面の広さという制約からでしょうが,androidではここをちゃんとOSでサポートしていて,アプリはOSに通知したい内容を渡せば,すべてのアプリに共通化された方法で,通知が行われるようになっていました。

 iOSはこの方法をパクったわけですが,さらにこれはOS Xにも導入されることになりました。これまでアプリが個別に行っていた通知を,一度OSが集約し,OSがユーザーに共通の土俵で伝える仕組みに整理されたわけです。これにより,タッチパッドのジェスチャー入力とも紐付けられ,「大きなお世話」と感じずに済む程度の,絶妙な通知を行ってくれるようになりました。

 Macでは,growlという通知を出すためのフリーソフトが事実上の標準となっており,これに対応したソフトは多く存在しました。私はgrowlは好きにはなれず,全く使っていませんが,この機能が全体のバランスを崩さない形でアップルの手によってOSに統合されるのであれば,大歓迎です。

 Macほど,アプリケーションの流儀にうるさいマシンもありません。どんなAPIを使えとか,そういう話のみならず,その背景や思想まで記述されたガイドラインに従ってソフトを書かねばなりません。なのに,通知をOSでサポートしていなかったというのは,今思えばおかしな話だと思います。


(4)Safari6

 Safariは良くなりました。滑らかになりましたし,高速になりました。私はQNAPのNASを使っていますが,WEBからNASの設定を行う際に,そのキビキビした動きはあらゆるブラウザの中でもはっきりわかる速度です。

 Safariで面白いのは,検索フィールドがなくなったことで,アドレスを入力するフィールドと統合されました。それがURLなのか検索文字列なのかを判断するロジックが入っているわけですが,慣れてしまえばこっちの方が絶対に便利だし,自然です。なにせ,我々はそのWEBページを見たいわけで,手段はどうでもいいのですから。


(5)全体的な速度と快適性

 SnowLeopardからLIonになった時,ちょっと引っかかるような不愉快な感じがあって,残念な気持ちになりました。しかし,今回のMountain Lionは全体にサクサク感が増して,スムーズに動くようになりました。スクロールの端に到達したときのスプリングも少し小さな動きになり,全体の小気味良い動きを後押ししています。


 というところで,全体的に好印象なMountain Lionですが,当然メジャーアップデートですから問題点も出ています。

 まず,QNAPのNASでTimeMachineが動作しなくなったことです。同じ症状の人がそれなりにいるようで,NASのファームウェアがアップデートするまで,TimeMachieは使えません。Lionの時にも同じ事があったそうですが,なんで事前に対応して置いてくれないのかなあと,思います。バックアップの話ですから,早めに解決して欲しいです。

 次に,ソフトウェアアップデートがAppStoreに統合されたことです。長年親しんだソフトウェアアップデートは,OSのアップデートなどの重要なものが一目で分かるものだったのですが,これがAppStoreに統合されると,他のアプリと同じ扱いになってしまい,あまり目立ってくれません。また,AppStoreって無駄に画面が広いので,面倒臭いなあという印象が先に来ます。ま,これは慣れればどってことないかも知れません。

 不具合らしいものは,今のところこのくらいですが,作業用のマシンであるMacBookProへのインストールは,少なくともNASでTimeMachineが動くようになってからにしたいと思います。ソフトの互換性やドライバの問題などで,いろいろ面倒が起こりそうな気がします。

 ということで,1700円という価格なら,やっぱりやっとくべき,アップデートだという結論です。マシンの買い換えまで必要かと問われれば,そこまでではないかなと思いますが,対象機種の方ならやって置いた方がよいと思います。

Ai AF-S Nikkor 300mm F4D が海外からやってきた

 先日,勢い余ってAF-S300mmF4Dを手配した,と書きましたが,手もとに届きました。

 今回の買い物はそこそこ高額だったこともそうですが,買い方が面白いものですので,ちょっとその辺も書いておこうと思います。

 まあ,別に珍しい事でも何でもないんですが・・・海外の業者から個人輸入で購入するという,この手の話としては定番の話題です。

 お願いしたのはこれまた定番のB&H。アメリカ・ニューヨークのカメラ,ビデオ,コンスーマエレクトロニクス機器のお店です。

 ここがアメリカにおける最安値かどうかはわかりませんが,海外発送をしてくれることが大前提で,日本からの買い物客にも丁寧確実,しかも迅速で海の向こうからやってくる商品が注文から僅か3日で届くという韋駄天っぷりで,大変評価が高いお店です。

 ということで,円高が長く続いてお買い得感も高く,数々の実績で名の知れたB&Hを私も一度は使って見たいと思っていたのですが,いくら円高と言っても5000円を超える送料や配達時に立て替えてもらった消費税を支払うことを考えると,あまり安い買い物であるとか,国内との差額が小さなものを買うと,かえって損になります。リスクも高く,その上国内で購入した商品と違って保証やサポートも難しくなる個人輸入は,慎重になる必要があります。

 今回,買うことにしたAF-S300mmF4Dは,国内では12円ちょっとくらいが最安値です。仮に125000円としましょうか。

 で,1ドル80円として,B&Hの売値が1149ドルですから,日本円で91920円です。その差はなんと33000円ですよ。

 うーん,そもそも91920円では,日本では中古だって買えません。

 で,実際にはUPSによる配送料62.23ドルも加わります。この段階で96898円です。これに消費税3%を支払うとすると,約99800円です。10万円として,差額はそれでも25000円です。

 その代わり,この商品はImportedということで,俗に平行輸入品と呼ばれるもので,ニコンが保証しない,非正規な商品です。初期不良があっても,故障があっても,お店の保証を使わないなら,すべて有償の修理扱いです。ここらがリスクですね。

 昨年だと,もう100ドルほど安かったのですが,タイの洪水や品不足もあってか,今はこの値段でした。それでも安いし,不良の少ないニコンのレンズですから,これは買っても良いだろうと踏んだわけです。

 ですが,日本人としてはちょっと複雑な気もしますね。もともとこのレンズは日本製で,日本の通貨「円」で作られて,売られるべきものです。

 10万円の商品を1ドル80円で輸出すれば,1250ドル。これを私が1ドル80円で買えば元の10万円になりますので,差し引きゼロに見えるのですが,ミソは日本人にとって125000円のレンズの値打ちは,アメリカ人にとって1149ドルしかないというところにあります。

 本来なら,日本で125000円のレンズは,アメリカでも1560ドルで売れて欲しいわけですね。でも,アメリカの人はこのレンズに1560ドルの値打ちはないといっていて,それで1149ドルという値段がついて売られているわけです。

 ですから,ニコンは日本国内なら125000円で売れているレンズを,アメリカでは9万円で売らねばならないことになっているのです。当然,ニコンは日本国内で売るよりも,アメリカに輸出した方が少ないお金しか手にできません。

 そして,いろいろな流通を通って,このお店に1149ドルで並びます。やがてそれを私がドルで支払って購入するのです。最終的に日本に住んでいる日本人の私は3万円も安く買えてしまうのですが,誰がこの差額を負担しているのでしょうか・・・そう,多くはニコンが負担しています。

 品物はのべで地球を一周するほど移動し,しかも飛行機や船の燃料を消費して,結局日本に戻ってきます。個人レベルの小さな事ではありますが,無駄なことをやれば儲かるなんて,根本的におかしいですよね。無駄を省かないと,儲かるはずもないのに・・・アメリカ人の価値観に合わせて安くしたレンズを,日本人が買う。本来だったら発生しないアメリカと日本を往復する運送費用と,クレジットカードのドルでの決済手数料が発生し,これが関係する会社を潤します。いわば,不必要な仕事で儲かってしまうのですね。

 いやはや,もう国とか関係ないなあと思います。


 それはともかく,日本時間で7月18日の夜に注文,翌日の朝には出荷されていました。時差があるとは言え早い対応です。

 そして成田に着いたのが7月20日,そしてなんとその日の夕方に届いてしまいました。2日で届いてしまうとは・・・おそるべし。

 UPSと提携するヤマトに,消費税を2700円ほど支払い,私だってしたことがない長い旅をしてやってきた,AF-S300mmF4Dを手に取ります。そうか,こいつがMJQやビリー・ジョエルのニューヨークからやってきたレンズか。

 まず,箱の大きさにびびります。嫁さんにばれないように,目に付かないうちに押し入れに入れてしまおうと思ったのですが,こんなに隠しようがありません。

 箱を開けると,ソフトケースが出てきます。そしてこの中にレンズが収まっています。大さは結構ありますが,重さは想像していたよりも軽い印象です。手で持つにも無理だ,と思うほどのことはありません。十分手持ちは可能でしょう。

 さすがにもともと18万円クラスのレンズです。プラチックが多用されているとはいえ,高級感もありますし,しっかりとした質感が好印象です。

 室内での試写を行いますが,これがもう鳥肌が出るほどの,素晴らしさです。

 F4開放から,びしっと解像感が出ています。色収差も小さく,さすが銘玉と言われているだけあります。トキナの100-300mmF4と比べてみましたが,もう比べるまでもないという感じです。誰の目にも明らかに差があります。もう完全にこの100-300mmには出番はありません。

 最初の間,AFを動かすとキーキーと音がして,やばいな初期不良かと思いましたが,そのうち音が全くしなくなって,スムーズに動くようになりました。ちょうど左手がフォーカスリングの所に来るのですが,AFモータが動作するとき,くくっとトルクがかかるのが今ひとつですが,これくらいは仕方がありませんね。

 そして,なんといっても寄れます。これもトキナの100-300mmF4では勝負にならない高性能さだと言えるでしょう。

  開放から十分シャープで使えるレンズ,色もコントラストも解像度も申し分なく,AFは高速,案外持ちやすく,振り回しやすいし,その上1.4m近くまで寄れる自由度が素晴らしく,まさしくこれは銘玉です。

 野鳥や動物,昆虫といったネイチャー系,飛行機などの飛びもの,自動車や鉄道などの動きものを捉えるのによく使われるレンズですが,なかなかどうして,人を撮影してもよいじゃないですか。ちょっと背景のボケがうるさいなあという印象がありますが,少し絞ってボケを減らしてやれば,解像度も上がってびしっと決まります。

 こういう写りがポートレートに良いかどうかは疑問ですけど,レンズの基本はやはり解像度です。300mmという焦点距離ゆえに,それなりに被写体との距離をとらないといけませんが,それだけのことをしても十分元が取れるほどの,素晴らしい写りです。これは,もっと早くに買っとけば良かったです。

NASのセットアップ完了・ネットワークオーディオ復活

 DLNAサーバをPogoplugからQNAPのNAS「TS-119PII」にリプレースして少し時間がかかってしまいましたが,昨日の夜ようやくすべての移行作業が終了しました。

 いやー,たいへんだった。

 豊富な機能をどこまで使うのか,その計画もなかなか立たないなかで設定を開始しましたが,幸いなことに基本的な設定とWEBサーバの移行は数日のうちに完了し,すっかり気をよくしていたのですが,やっぱり大変だったのはDLNA,特にネットワークオーディオ用のサーバでした。

 そう,WEBサーバはApacheがインストール済みなのでそのまま使うのであれば何の手間もありません。ただ,私の場合今の自前のホームページをそのまま持って行きたかったので,perlによるCGIが動いて欲しくて,そこが問題かなあと思っていました。

 が,これもあっさり解決。QPKGからperlをインストールすれば,ほとんど設定無しでperlが動き出しました。やったことといえば,シンボリックリンクを張ったことくらいでしょうか。

 ウイルスチェックの機能も気休めでもONにしましたし,SMARTによるHDDのチェックも定期的に実施しています。なにか警告が出ればメールが届くようにもしました。timeMachineのドライブに設定して,私のMacBookProとMacBookAirのバックアップも完璧です。

 しかし,DLNAによるネットワークオーディオ用のサーバ整備が大変でした。

 いやいや,技術的にはなんの問題もなかったのです。もともとLINNの推奨品であるQNAPのNASですから,決められた設定をちょこちょことやれば,もう問題なく動き出します。Pogoplugのように試行錯誤も必要なく,タグ入りのFLACを再生することも,ジャケ写をfolder.jpgとしてフォルダに入れておけばちゃんとジャケ写を表示出来ることも,簡単に確認出来ました。

 しかし,Pogoplugのときは,タグを埋め込めないWAVファイルで,かつリニアPCMのみの対応で,ジャケ写も出せませんでしたから,むしろ用意する音楽のファイルはとてもシンプルで,ほとんど手間がかかりませんでした。

 これがQNAPのNASになると,いろいろ出来る分だけ手間をかけて用意したくなるものです。容量を節約するためにFLACにし,ちゃんとタグを打ち込み,ジャケ写も表示したいです。

 しかし,これがとっても大変な作業になります。今あるWAVファイルをFLACに変換するか,それともCDのイメージから新たに作り直すのか,そこから悩みました。なにせ膨大な数のCDを処理しなければなりません。最初の計画にしくじれば,時間がかかるだけではなく,結局失敗なんてことになりかねません。

 いろいろ考えたのですが,CDのイメージから作り直すことにしました。XLosslessDecoderという定評あるソフトを使って,分割されたFLACを作ります。メタデータはFreeDBから取得してくれますし,なかなか処理も高速で好都合です。

 ただ,ちょっと不親切なところもあり,まずちゃんとしたマニュアルがありませんから,相応のリテラシーがなければ使いこなせません。私は出力ファイルのフォーマットをいじれることに気が付かず,前回のpogoplugの時も,初期設定で出てきたファイル名をリネーム用のツールに正規表現を使って後でリネームするという手間をかけていました。

 今回は,こんな手間はかけたくありません。調べてみると,アルバムごとにフォルダを分けて,ファイルネームのフォーマットも自由にいじれることがわかって,一気に作業が加速しました。いいツールなんですけどね・・・

 とりあえずすべてのCDをFLACにして,あとは手作業でタグの確認をしていきます。そして目処がついたらNASにコピーです。最後にfolder.jpgを入れて終わり,のはずでした。

 ところが,どうもコピーの速度が遅いのです。とんでもなく遅い。おかしいと思ってafpではなくsmbで同じフォルダに接続すると,爆速です。どうもこのNASはsmbでの接続で真価を発揮するようです。

 といいますか,もともとafpは効率も悪く,速度も遅いことで知られています。Macだからafpと決めてかかっていた私は,自分がネットワークの世界ではマイノリティであることを忘れていました。

 そこで以後はsmbで作業を行ったのでですが,ファイルネームの化けがちらほら。どうしたものかと思ったのですが,どうもこれはafpでコピーしたものをsmbでアクセスした場合におこってしまうようです。

 最初は原因がわからず,きっとXLDでデコードしたときに化けたのだろうとデコードからやり直していたのですが,これだとすべてのファイルを確認しなければならず,膨大な時間がかかります。

 原因が分かってからは,途中までの作業を放棄してafpでコピーしたファイルを全部NASから消去し,smbでコピーし直しました。これでこの問題は解決。

 次にジャケ写です。これはfolder.jpgをフォルダに置けばよいのですが,2000枚近いジャケ写をまた集めてくるのはあまりに大変です。そこでiTunesのライブラリから引っ張ってこれないものかと調べてみました。

 すると,あるものですね,AppleScriptで書かれたもので,ジャケ写をjpgに変換してアルバムタイトルのファイルネームで保存するものが見つかりました。これで一気にジャケ写の画像ファイルを作成します。

 しかし,これを各アルバムのフォルダに入れるのは手作業です。コツコツとここ数日,嫁さんと子供が寝息を立てる横で,作業を進めた結果昨日の夜にようやく完了したわけです。

 すべてのアルバムを確認したことで,変換ミスや抜け,タイトルの間違いなども見つかりましたし,こんなアルバム持ってたのか!やら,持ってると思っていたアルバムを実は持っていなかったなど,いろいろな発見がありました。

 すべてのアルバムを聴いて試すわけにいかないのですが,いくつかのアルバムを無作為に選んでN-30から聞いてみますと,ちゃんと動作しています。

 QNAPのDLNAサーバであるTwonkyMediaは,フォルダで音楽を探すと,ソートの順番が狂うのですが,これも設定ファイルを直接いじることで解決しました。とにかくうまく動いてほっとしています。

 おかげさまで,ついつい音楽を聴いて楽しんでしまい,練るのがすっかり遅くなってしまいました。久々に楽しい時間を過ごしたのですが,こういうことがあるから手間がかかってもやめられないんでしょうね。

 ということで,NASの問題はひとまず終了。今のところ目立ったトラブルもなく,快調に動いています。次のテーマはNASのバックアップです。

 これだけ苦労して環境を整えたのですから,データを失ったらもう二度とやる気が起きないでしょう。こんなことなら2ベイのモデルでRAID1を組むべきでした。個人用のNASでそこまで大げさなことはいらんだろうと1ベイにしたのですが,どうも精神的な不安が大きくなって,困ったものです。

 TS-119PIIは1ベイモデルでホットスワップは出来ませんが,eSATAやUSBで繋いだHDDにミラーを作り,これと本体のドライブを入れ替えることは出来るそうです。

 ミラーを今作るのがよいか,それともHDDを交換する時までやめておくか,ちょっと悩みどころです。内蔵したWDのHDDは,現時点で元気そのもので,動作時間の積算もまだ寿命に対して10%未満という状態です。

 PC用の安いドライブですので,簡単に壊れることでしょう。SMARTで予兆を見つけて,次はもう少し信頼性のある3TBのドライブを導入したいと思っていますが,その時までミラーを作るのを待ってもいいかなあと思っています。

 せっかく苦労して用意したNASです。もっと有効活用したいと思いますし,家族で文字通りファイルの共有をやりたいと思っています。


 

D800に戸惑う私

 D800を買って約1ヶ月,外に持ち出す機会にも恵まれず,室内で細々とシャッターを切る毎日ですが,撮った写真をMacで拡大してみることも,印刷することもなく,Lightroom4で現像を行うことも,時間的に出来ずにいます。

 D800はかなり手に馴染んできましたが,それでもどうも慣れないところがあって,ちょっと困り気味です。前に使っていたD2Hとの比較をついついしてしまいがちですが,結局D2Hというカメラは優秀だったんだなあと,見直すことが多いです。

 D800でDXにクロップするとD7000相当ということで,D2Hの出番はもうないだろうと思っていましたが,二束三文で手放すくらいならサブ機,あるいは高速連写機として,残しておくことにしました。後述しますが,実はサンヨンを手配してしまったので,D800でも楽しみですが,D2Hでもどれくらいすごいか,楽しみなのです。

 
 ということで,D800について気になっていることをいくつか書いてみます。


(1)被写体に奥行きが感じられない

 とても不思議なのですが,被写体が立体に見えないのです。

 例えば円柱を撮ります。真横から撮影しても,D2Hならちゃんとそれが円柱だと分かるのですが,D800だと長方形が写っているように見えます。エッジに微妙な陰影がつかず,奥行き情報が薄まってしまうのではないかと思っています。

 そんな話を同じ時期にD800Eを買った友人に話してみると,被写体の原寸大ポスターを撮影したような感じになる,と言っていました。同じような印象だと聞いて,やはりそうなのか,と思った次第。


(2)のっぺりとした画

 ノイズを無理矢理に潰した「塗り絵」とは全く違うのですが,ザラザラとした荒い粒状感がないせいか,平面的なツルツルとした画という印象です。(1)とも共通するのですが,これが被写体の立体感を損なっているように思います。

 3600万画素という高画素は,フィルムを越えたきめの細やかさを持つわけですが,もしかするとこれを手放しに喜べないのかも,知れません。

 先の友人との話で,私はD2Hの画を「挽き割り納豆のような」と表現しました。D800はすり鉢ですりつぶしたドロドロの納豆です。


(3)色が偏る

 ニコンの傾向だと友人は言っていましたが,ナチュラルで淡泊な傾向はニコンならではだとして,どうも黄色や赤に,やや偏る傾向があるように思います。特に肌色が黄色に偏るために,色の白さが損なわれるように思います。

 これがD2Hだと,ほんのり桜色になった赤ちゃんの白い顔がちゃんと再現されていて,とてもよいのです。確かに,D2Hはニコンのなかでも異端であり,独特の発色はD1同様,好む人は好むという感じです。一時期女子カメラとして中古が注目されたことがありましたが,その時も発色(と安さ)が原因でした。

 やっぱあれですね,CCDとLBCASTとCMOSで,色や画質の傾向って違うものですね。


 ここまでが,出てくる画像についての気になる点です。D2Hでは,出てくる画が想像できますから,思い通りに撮影出来ますし,結果については大きく外すか,思った通りになるかの二択です。

 D800は,出てくる画が全く想像出来ず,「ちょっと違うんだよなあ」という感想ばかりです。高い基本性能と圧倒的な高画素に救われて大きな失敗はない代わりに,自分が見ている「伝えたい」シーンを取り込めずにいて,フラストレーションがたまるのです。


(4)AFがちゃんと動いてくれない

 ハードウェアとしてはこれが最も困っています。

 AF-Sモードでシャッターボタンを半押ししAFを動作させてロック,構図を決めてから全押しするのですが,シャッターが切れません。ほとんど場合,一発で切れてくれないので,シャッターチャンスを逃してばかりです。

 なんでだろうと思ってフォーカスインジケータをよく見てみると,ファインダーで合焦しているように見えた時,丸い合焦マークではなく,前ピンと後ピンのマークが両方点滅する状態でした。つまり,合焦していないのです。

 フォーカス優先の設定なので,フォーカスが合っていないからシャッターが切れないのは当たり前の話ですが,こんなに合焦しないものかと,D800のレンズを外してD2Hに付け替え,同じ条件で試して見ました。

 結果,D2Hはほとんど迷うことなく,合焦マークが点灯し,チャンスを逃すことなくシャッターがどんどん切れます。

 一瞬,前ピンと後ピンのマークが点滅することもありますが,すぐに修正が入ってあっという間に合焦します。AFの性能はD2Hが一番だと確信しました。今や秒間8コマは珍しくないですが,当時のニコンの高速連写に対する意気込みは,並々ならぬものがあったということでしょうね。あらゆる部分が高速連写向けにチューニングされてるわけです。そりゃ快適なはずです。

 友人は,D800のAFは迷う,最後にジジジと前後してから合う傾向がある,と言っていました。確かにそんな感じです。

 AF-Cを使ったり,AF-Sでもレリーズ優先にすればシャッターは切れますが,ほぼピンぼけです。すでに,AFセンサの分解能は,3600万画素のCMOSセンサの分解能を下回っていると言われますし,3600万画素ゆえに,AFの精度を追求した結果,最後の微調整のところで時間がかかってしまうのではないかと,私と友人の意見が一致したのですが,もしこれが本当に事だとしたら,3600万画素という圧倒的な画素数がシャッターチャンスを逃すというカメラとしては致命的な問題を引き起こすということになり,非常に深刻です。

 このこととは違いますが,D800のAFには問題があって,ようやくニコンもその問題を認めたと聞きました。ファームの更新で対応するのか,サービス対応となるのかは分かりませんが,製造過程の調整にミスをしていたということらしいので,面倒な話になるかも知れません。同時にAFの切れ味も改善されるとうれしいのですが・・・


(5)広角に戸惑う

 D2HはAPS-Cですので,広角が苦手なカメラでした。18-200mmの広角端は27mm相当ですが,そのために大きなレンズを持ち出すのも気が進まず,どうしても中望遠域で撮影するのが中心になっていました。

 しかし,D800では普通に28mmなどの広角レンズが使えます。50mmでも,当たり前ですが,本当に50mmです。

 その結果,被写体の周辺にぽっかりと空間が出てしまうことがあります。同じ50mmでもD2Hで使えば75mm相当ですので,ぱっとファインダーを覗き込めば,すでにある程度の構図の整理は済んでいます。同じレンズを使っても,50mmだと被写体は小さく,周辺に余計なものがいっぱい映り込んでいます。距離感と画角の関係を,フルサイズに合わせて再構築しないといけません。

 あれ・・・フィルム時代はみんあフルサイズだったはずなんだけどなあ。


(6)フルサイズに戸惑う

 (5)と同じ理由に帰結しますが,フルサイズゆえに,想像以上に背景がぼけてしまいます。D2Hのつもりでちょうどよいボケ具合だと想像して絞っても,結果は思った以上にぼけています。

 センサのサイズが違うのですから当たり前なのですが,APS-Cではついつい絞りを開けがち(逆の見方をすると,フルサイズのつもりで絞ればぼけにくい)ですから,その癖が染みついてフルサイズを使っていると,どうしても開けすぎてぼけすぎるのです。

 これもフィルム時代には結構鍛えたつもりだったのですが,慣れというのは恐ろしいです。


 ということで,D800を使うのは,ストレスとの闘いです。

 D2Hのつもりで手に取れば,手に取った瞬間の印象が大きく重く,ファインダーを覗けば遠く小さく見えて,AFはなかなか合焦せず,シャッターボタンを押してもシャッターは切れずにチャンスを逃してしまい,しかも出来上がった写真は黄色にかぶり,過剰にぼけた大きな空白が小さな被写体を取り囲んでいる・・・

 気を取り直してD2Hを使うと,思い通りに撮影出来ます。実に快適です。K10Dでも思い通りです。

 こんなに違うものなんですね。

 今さらD800を放棄するわけにもいきません。慣れていくしかないのですが,果たして自分の思い通りになるのは,いつのことか・・・

 ところでところで,最初にサンヨンを手配したと書きました。

 詳しいことは届いてから書きますが,手配したのは現行のサンヨン,AF-S300mmF4Dです。欲しかったのですよ,これ,数年前から。

 10年ほど前に発売された古いレンズですが,その分価格も当時のもので比較的安く,しかしその画質,光学性能は圧倒的,飛びものを撮る人には「これ以外はない」と言われる定番のレンズです。

 人気も高く,中古の買い取りもこの時代のレンズとしては結構高めのようで,新品が13万円ほどなのに,中古が10万円ほどということで,中古の値段が下がらないのは人気がある証拠です。

 300mmといえばサンニッパですが,まるで新興宗教のツボみたいな大きさと重さは機動性を大きく損ないますし,値段も目を剥くような高さです。あんな高価なものを外で振り回すなんて,わたしゃー気が知れません。

 サンヨンは手で持てるサイズで値段も手頃ですし,冷静に考えてみるとF4とF2.8は1段しか違いません。言うまでもなくサンニッパは,シャープネスはもちろん,ボケの大きさや1段絞ってもF4というゆとりに凄さがあるのですが,手もとでISO感度をさっさと切り替えられるデジタル時代において,以前ほど1段のゆとりが現場で役立つシーンは,そんなにないように思います。

 安いレンズが高いレンズに画質で大きく見劣りするというのが世の常ではありますが,ニコンのAF-S300mmF4Dについてはちょっと事情が違うようで,サンニッパは別格としても,開放からびしっと決まる高画質で,ホントに悪い評判を全く聞かないのです。

 ズーム全盛の現代において,わざわざ単焦点のレンズを買うなんていうのは馬鹿にされるかもしれないですが,いかにズームレンズが単焦点に匹敵する性能を持つようになったとはいえ,それは最新のズームレンズに限った話。お値段も随分高くなりますし,大きく重たくなるものです。

 私の場合,ズームを使うのが下手くそで,結局ワイド端とテレ端の2箇所で使うだけだったりします。なら,70-200/F2.8VR買うよりサンヨンでしょう。

 私は銀塩の頃に,トキナのAT-X100-300mmF4というMFのズームを買って,今でも持っています。一応300mmでF4ですし,見た目に立派なレンズなので手もとに置いて,何も知らない知り合いを威嚇しているわけですが,これも15年ほど前にフジヤカメラで4万円の特価をしているときに買いました。

 特に300mmという望遠を使うシーンが日常的にあったわけではないのでそんなに出番はなかったのですが,望遠のMFがなかなか大変だったことと,ISO400程度ではシャッタースピードを稼ぎつつ絞ることも出来ずに,もやーっとした眠たい画質になりがちで,あまり良い印象があるレンズではありません。

 ですが,一眼レフの存在意義の1つに,望遠,超望遠レンズが使えるというのがあると私は信じていて,一眼レフを持っているからには300mmクラスは持っておくべきと思っているのです。

 この時代のズームはまだまだ単焦点にはかなわず,利便性によって画質が犠牲になることが当たり前でした。ですから,開放だと甘い画質ですし,色収差も派手に出ます。

 D2Hをメインに使っている頃,やはりレンズ類のてこ入れを行っていたとき,このAF-S300mmF4Dが欲しくて,かなり真剣に迷いました。ですが,300mmを今すぐ使うという状況でもなかったため,購入に踏み切らずに,今日まできてしまったわけですね。

 しかし,D800を買った今,思い切って買うことにしました。

 理由ですが,1つに娘が生まれて,これから出番が必ず出てくるであろうということ。遠方から狙うことも多くなるだろうし,D800に見合う望遠系のレンズで最も安いものは,おそらくこれしかありません。

 もう1つは,今を逃すと後々後悔するであろうということです。以前からこのレンズは手ぶれ補正がないことを指摘する声が高く,設計の古いレンズであることも手伝って,手ぶれ補正付きにリニューアルされることは間違いないと,ずっと言われ続けていました。

 同時に噂になっていた85mmF1.4などのレンズがGレンズになってリニューアルされたのに,不思議とこのレンズだけは現行のままです。

 これだけ長い間リニューアルされないのはきっと理由があります。説得力のある理由が,手ぶれ補正を入れてしまうと,今のレンズの性能に劣ってしまうため,と言うものです。

 昨今のレンズ設計技術に加えて,こなれてきた手ぶれ補正技術,そしてナノクリスタルコートを施せば,D800も一安心のサンヨンが出来る事は間違いないと思うのですが,おそらく倍近い値段になってしまうことは避けられない中で,性能を最低でも維持,出来れば向上させないといけないという大きな課題が突きつけられていて,これが非常に高いハードルになっているのではないか,というわけです。

 なるほど,手ぶれ補正の光学系を入れれば確実に画質は低下しますし,今のサンヨンは画質について特に不満も聞かれないほどの銘玉ですから,お値段が上がった分きちんと性能向上させないと,納得しません。それで時間がかかっているんじゃないでしょうか。

 とはいえ,リニューアルも一巡し,現行のサンヨンも随分古くなっていますので,大幅に光学系を見直した手ぶれ補正付き(ついでに絞りリングはなくなって)の高級レンズとして,登場することは自明でしょう。そうなったら現行のサンヨンは即座にディスコンです。

 そうなると,この光学性能をこの価格で手に入れる機会を失うことになります。そしてその時は,確実に近づいています。

 いずれ買うものなのですから,今買っておいたほうが良いです。

 ということで,結構簡単に購入を決めてしまいました。

 買い方も今回は新しい方法を試しています。このあたりも後日。

ジョン・ロードが亡くなりました

 ジョン・ロードが亡くなりました。享年71歳。膵臓癌と闘っていましたが,直接の死因は肺そく栓症とのことです。

 私にとっては本当に大きなニュースなのに,ほとんどメジャーなニュースでは取り扱われることなく,私も嫁さんの「ディープパープルの誰かなくなった」という,それこそぞんざいな,日常的な夫婦の会話のなかで知ったという,この残念さ。

 私ごときがあれこれ語ることはおこがましいのですが,ハードロックに嫌悪感があり,一生わかり合えない音楽だなと思っていた中学生の時でさえ,私はDeep Purpleというバンドを知っていました。

 ハードロック&ヘヴィーメタルというジャンルは,バカでかいギターアンプ,ボーカルを含むすべての楽器が爆音を出して,上半身裸かピチピチの格好をした長髪の兄ちゃんがやたら速い音楽をやっている,というそのものズバリなイメージしかなく(今でもそうなんですが),10代前半のナイーブな私には,とても縁遠いものだったのです。

 Deep Purpleは,そんなHR&HMでも古参のバンドであり,起源(ここはオリジンと読もう)でもあることを知識として知っていたのですが,他のバンドと違ってキーボード,特にハモンドオルガンという楽器の存在感が圧倒的であり,通常のHR&HMのスターがボーカルとギターであるところ,Deep Purpleはキーボードも主役であったことが,非常に個性的で特異に見えていて,当時の私の記憶によく残ったのだと思います。

 そして,覚えた名前が,ジョン・ロード。

 リッチー・ブラックモアではなく,デヴィッド・カバーデルでもなく,ジョン・ロード。ロジャー・グローバーでもなく,イアン・ギランでもなく,イアン・ペイスでもなく,ジョン・ロード。

 そして時は流れ,20歳の私は,あれほど嫌いで理解出来ずにいたハードロックのバンドにキーボーディストとして音を出すことを許され,遠くに霞んで全く見る事の出来なかったジョン・ロードの背中に憧れ続けていました。

 その背中は,とうとう見る事なく,私の前から消えてしまいました。

 いろいろ意見はあると思いますが,ジョン・ロードのすごさは,ロックやブルースを起源に持つハードロックが,大きな音を出すことの出来るエレクトリックギターを中心に発展してきた中で,ハモンドオルガンという古典的な電気楽器をギターと渡り合える主役に引き上げたことでしょう。

 ハモンドオルガンはなにかと不利な楽器です。大きい,重い,壊れやすい,高価,固定されているのでステージ上で動き回れない,真正面からは楽器の影に隠れてしまうと,特にアマチュアには簡単に扱えないものです。

 そのハモンドオルガンを,ギターと共にバンドの二枚看板にしたその功績は非常に大きく,ハードロックにはハモンドオルガン,と言う観念を定着させたことは,ハードロックというジャンルに,大きな自由度をもたらしました。

 それまで,正弦波に近い音を特徴としたハモンドオルガンは,ハードロックが歪んだギターによって爆音化する過程で,ジョン・ロードによって同様に歪まされ爆音化されていきます。

 Highway Starなどは左にギター,右にオルガンですが,3度を抜いた歪んだ音は,知らない人ならどちらもギターと思うかも知れません。

 思えば,ハードロックの黎明期,ジョン・ロードとリッチー・ブラックモアは,それぞれが相手を意識して音を作っていました。

 後に生まれるギターのライトハンド奏法も,キーボードの特権だった速いフレーズに対抗するために考え出されたものです。キーボードとギターは,互いに切磋琢磨して,新しい音楽を作って来たのだなあと,ちょっとこじつけですが思います。

 Deep Purpleのあと,ギターにハモンドオルガンという形態は70年代から80年代のブリティッシュハードロックのフォーマットとなり,キーボードは常に正式メンバーにいました。

 その原点が,Deep Purpleとジョン・ロードにあるということを,改めて考えさせられました。
 

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