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2007年02月の記事は以下のとおりです。

とりあえず直ったオシロスコープ

  • 2007/02/28 14:40
  • カテゴリー:make:

 オシロスコープが直りました。いやー,助かりました。

 アナログ技術の粋を集めたこの頃のオシロスコープを修理する自信はなく,直せても校正が出来ない以上は使い物にならんなと,買い換えを真面目に考えていました。

 あるお店で,アジレントの2ch,60MHzが12万円。もちろん新品。私はアジレントのオシロが使いやすくて好きなので,これを機会に買い換えるのもよいかと思っていましたが,60MHzというとデジタル回路のタイミング測定をする場合,6MHz程度しか見る事が出来ません。さすがにこれでは,PICマイコンのデバッグも出来ません。

 最低200MHzと考えると,これがあまり安くないのです。そう考えると,古いとはいえ,アナログとはいえ,これまで使っていた2465Aが高級機であったことをしみじみと感じます。

 とりあえずサービスマニュアルと入手して,トラブルシューティングです。電源が入らない場合に確認すべきチェックポイントを順番に見ていくと,電源スイッチの直後に電圧が出てこないことが分かりました。

 スイッチの前は電圧が出ていますので,これはもうどう考えても電源スイッチの不良です。

 こういう機構部品が壊れてしまうなんてあるのかなあと半信半疑で基板を取り出し,テスターであたってみると,やはり導通がありません。

 間違いなかろうと基板から取り外してもう一度確認してみますが,やはり導通がありません。ピン配置が特殊なのかも知れないと思って,スイッチを捨ててしまう覚悟で分解します。

 すると,恐ろしいことが・・・

 ピン配置は私の想像と違っておらず,導通がないのは間違いありませんでした。それはいいのですが,接点の周りが真っ黒に煤けており,しかも固着して全く動かなくなっています。それでレバーを動かしても導通しなかったわけです。

 代わりのスイッチに交換するのが安心できる修理ではあるのですが,基板取り付けタイプのスイッチは寸法が一致しないと交換が難しく,また手持ちもないため,このスイッチの再利用を検討することにしました。

 固着した可動側の接点をまず取り外します。幸い,固着していたのはスパークによる金属の融解ではなく,どうもケースのプラスチックモールドが溶けていたのが原因のようです。

 なにが直接の原因かは分かりませんが,固定側の接点と可動側の接点の間が少しずつ開いていき,スパークが徐々に大きくなっていったのだと思われます。その結果接点温度が上昇し,固定側の接点がケースにめり込むようになり,溶けたプラスチックが固定側の接点を固着させたのだと思います。あたりが黒くなっていたことや,接点の中央部がへこんでいたのを見ると,かなり激しくスパークしていたようです。よくもまあ,火事にならなかったものです。

 次に固定側の接点を見てみますが,こちらはかなり傷んでいます。NO-COM-NCのモーメンタリータイプなので,使っていない方の接点と強引に入れ替え,新品にします。

 固定側の接点も使っていない側にするため入れ替えて,これで一応接点は新品同様となりました。

 プラスチックモールドが少し溶けているのでこれを削って整え,元の通りに組み立てます。テスターで調べてみるとうまく直ったようです。接触抵抗も低く,2接点で揃っています。

ファイル 107-1.jpg

 これは修理後の写真です。2465Aは,このスイッチを本体後方に下向きにマウントしてあり,フロントパネルの電源ボタンから長いレバーを使って操作しています。それで今ひとつ操作感が悪いのです。

 直ったと思われるスイッチを,もとの基板に戻して組み立てます。そしてドキドキしながら電源を入れてみると,うまく直りました。

 半導体やその他の電子部品の破損でなかったためにとても簡単に修理ができたのですが,故障の原因といい修理の手順といい,まさに扇風機か換気扇を修理するかのような低次元のお話でした。

 この修理が終わってから,もう1つ検討しようと思っていたトラブルがありました。リードアウトの表示が安定せず,画面上でチラチラと動くのです。

 最初は時間が経つとなっていたのですが,ここ最近はずっとなっていました。波形そのものはしっかり安定して表示されていますので,リードアウトの回路の接触不良か,リードアウトの表示を垂直方向の出力に混合する部分の問題だろうと思っていました。

 ところが,今回の修理後,その問題がぱったりと出なくなってしまったのです。

 時間が経つと出るかも知れないと1時間ほど放置しましたが全く問題なし。安定して綺麗に表示がなされています。

 ここで推論です。リードアウトの回路は,実は電源器版の近くに列んでいて,しかも電源スイッチのまそばにあります。

 もし電源スイッチの内部でスパークが起きていたら,ここでかなり大きな電磁波が発生していたでしょう。これがリードアウト回路に飛び込んで,表示が乱れていたという可能性がありそうです。

 それなら他の回路,特に波形表示の回路にも影響があるんじゃないのかと思うでしょうが,2465Aの場合,リードアウトの回路以外はなんらかのシールドがなされており,電磁波の影響はかなり小さくなっているのです。

 もちろん多少の影響はあったと思いますが,リードアウトに比べて小さかったために目立ちにくかったのでしょう。

 そう考えると,リードアウトの表示が乱れている間,ずっとスイッチ内部ではスパークを続けていたんですね。本当に恐ろしいことです。もし揮発性の薬剤などで充満していたら,ドカンと爆発してこっぱみじんでした・・・

 そんなわけで,とりあえず修理は完了しました。新しいオシロスコープを買う必要もなく,これまで問題だったリードアウトの表示も完治して,万々歳です。

 ついでにDIAGで使用時間と電源投入回数を見てみました。使用時間は約4800時間,電源投入回数は約2800回。結構使い込んでありますね。

 スイッチはさすがに不安ですし,一度起きたことは必ずもう一度起きるものなので,代わりになりそうなものを気をつけて探しておきます。使えそうなものが見つかったら交換してみたいと思います。

 さて,それで一通りのチェックを続けていたのですが・・・どうも垂直軸のDCバランスが悪いようなのです。校正なんて10年以上前にやってそれっきりですから,当然と言えば当然です。

 2465Aには,自動でDCバランスを校正する機能があります。問題があればエラーが出るので,校正後にエラーが出なかった今回も安心していたのですが,VARつまみを回してみると輝線が0.8div位下がってしまいます。

 悪いことにch1とch2で落ちる量が違ってしまっており,明らかにおかしいです。

 VARつまみをロックしてレンジを切り替えれば,仕様通り±0.2div以内の変動に収まっていますから,自動校正機能そのものは正常に動いているようです。VARつまみの回路がどのようになっているかによって,故障なのか調整が狂ったのか,それともこんなものなのか,判断出来るはずです。

 ということで,もう一度サービスマニュアルに目を通して見たのですが,結論から言うと「こんなもの」だそうです。

 VARつまみをロックしてレンジを切り替えた場合の変動は±0.2div以内だそうですが,VARつまみを回した場合の変動は,1div以内であれば良いのだそうです。

 ch1もch2も1div以内の変動なので,仕様通りということになります。ちょっと気持ち悪いですが,仕様という事なら調整をすることも出来ませんし,またその必要もないでしょう。

 ちょっと釈然としませんが,一応これでオシロスコープの件は終了とします。

一難去ってまた一難

  • 2007/02/26 14:17
  • カテゴリー:make:

ファイル 106-1.jpg

 300Bのシングルアンプの再組み立ての作業が昨日に終わりました。

 2月12日に秋葉原にシャシーを買いに行き,翌日から部品のレイアウト検討,けがきを済ませ,翌週の土日に穴開け,塗装を行ったことは以前にも書きました。

 そして25日に,ようやくすべての配線と動作確認が終わりました。

 今回の改良点は,300Bのフィラメントを安定化するという点です。5V1.5Aが必要なので,TO220パッケージで安価な7805など1Aクラスの三端子レギュレータは使えません。

 ところが,可変電圧型のLM317が実は1.5AまでOkということを知り,たくさんある手持ちから2つ用意して,使ってみることにしました。

 電圧の設定抵抗は680Ωにしました。計算では4.8V位になっているはずです。

 仮に入力電圧を10V,出力を4.8Vとしてその差は5.2V,ここに1.5Aが流れますので7.8Wの熱が発生することになります。これだと10W/℃の放熱器が最低ラインですが,とりあえずシャシーに取り付けて様子を見ようと思います。

 最初は6.3Vの巻線を使ってみたのですが,当然のようにリップルが取り切れません。今回のトランスは適当な電圧の巻線がないので,5V巻線を直列につないで10Vの巻線と相当の状態にして使い,ようやくリップルが綺麗に取れるようになりました。

 おかげでハムもかなり低減され,貴重な300Bがやや低い電圧で動作させられるようになったことや,ACラインの電圧変動に対しても安定化されることにも,安心感があります。

 さて,一通りの動作を行ってから,測定をおこないます。

 オシロスコープの電源を入れてみたのですが,なんと,壊れていて電源が入りません。なにをやっても動作せず,ファンも回ってくれません。これはかなりショックでした。

 しかし,このまま測定もせずに使うわけにもいきません。波形を見ることが出来ませんが,とりあえず電子電圧計だけで測定を始めます。

 周波数特性は1W時で21Hz~22.38kHz(-3dB)。無帰還のアンプとしてはこんなものでしょう。ダンピングファクターは1W/1kHzで3.077。これも三極管の無帰還シングルならこのこのくらいですね。

 歪率は測定器がないのは測定できません。波形を見られればおおよその見当もつくのですが,今回はそれも出来ません。

 ですから,最大出力も測定出来ず。無帰還のアンプですので,出力が飽和する点が見極めにくく,やはりこれも波形を見ないと分からないと思うのですが,前回測定した8.3Wくらいの電力は出ている感じです。

 夜だったので短い時間だけですが,音出しもしました。手前味噌ですが,やはり直熱三極管のシングルは,とても心地よい音を出しますね。

 一回り小さなシャシーに組み立てましたが,熱の問題も心配するほどではなく,三端子レギュレータもきちんと動作をしているので,これで完成とします。

 しかし,小さくなったとはいえ,スピーカの近くに行けばハムが耳につきます。アースポイントが問題なのか,電源トランスからの誘導なのか,原因はいろいろ考えられますが,これもちょっと一休み。

 写真を見ていただくと分かるのですが,つくづくシャシー加工が下手だなあと,自己嫌悪に陥ります。ちょうどEF37の陰に大きな傷が見えますが,これが前回書いた300B用の穴を開けたときの傷です。

 真空管アンプというのは,そのルックスも心地よい音に実質的にも精神的にも貢献するものと思うのですが,私はそのあたりのセンスも技術もないようで,シャシーをいいものに変えれば少しは見違えるかなと期待したのに,結果はそんなに劇的に変わりませんでした。

 ただ,シャシーそのものの剛性はかなり上がっているので,安心感はあります。重量級のアンプですので,このしっかり感はありがたいところです。

 気になっていたことが1つ片付いたので,よかったです。

 しかし・・・オシロスコープの故障は,これはさすがに困りました。簡単な故障ならと開けてみましたが,さすがに80年代のTektronixだけに頑丈な作りで,ぱっと見てもよくわかりません。もう少し検討をしてみますが,ダメなら買い直すしかないのかなあと,がっかりです。

 このオシロスコープは1994年の年明けに買ったもので,当時は一生ものと言われて買った記憶があります。350MHzまで見られるアナログオシロは100MHz程度は咲いて欲しいなあと思っていた私にとっては最高級品で,それが中古で20万円でしたから,お買い得だったとは思います。(プローブの値段の高さには閉口しましたが)

 それこそ一生ものと思っていたのに,こんな中途半端な時期に壊れるとは,残念です。

 最近は200MHz位までなら随分安く手に入るようになっていますが,最近のものはデジタルオシロに変わっているため,シャッター速度の確認には使えません。それにアナログオシロにはアナログオシロならではの良さもあります。

 この際だから,新しいオシロスコープを買うことにするかなあ。

ペンタブレット訂正

 先日書いたペンタブレットに関してですが,2つ訂正があります。

(1)MacOSXでのバックライトの自動消灯に関して

 バックライトが自動的に消える設定にしてあっても,タブレットを接続してあると消えてくれないという問題ですが,先日消えていました。あれから何度か再起動を行っているので,それで直ってしまったのかも知れません。ということで,USBにつなぎっぱなしが出来るようになりました。

(2)マウスはいらないのではないか

 マウスに関して,せっかくだしとりあえず調整だけはやっておくことにしたのですが,そうやっていつでもマウスが使える状態にしてあると,いつの間にかマウスに手をかけて違和感なく使っていることが何度かありました。

 キーボードを中心に使っているときはトラックパッドが便利なのですが,そうでないときには真卯を使っていることもあるようです。

 まだまだ使用頻度は低いですが,必要なし,使い物にならん,というほど悪いものでもないということにしておこうと思います。

今さらMCカートリッジ

  • 2007/02/20 18:08
  • カテゴリー:散財

 先日,LPレコードを久々に聴いて,MCカートリッジを買ってみようという気に突然なりました。

 MCカートリッジといえば,必ず名前の挙がるDL-103というDENONのカートリッジは放送局で使われるリファレンスで,特に特徴もない素直な音が特徴という定番です。

 昔はそんなに高いものでもなかったと思うのですが,今は26000円。実売でも2万円ちょっとするというので,ちょっとした高級品が買えてしまう値段になっています。

 もっと手軽にMCカートリッジを楽しむ方法はないものかと調べてみると,ありましたよ,私の大好きなオーディオテクニカから廉価版のMCカートリッジが。

 AT-F3IIというカートリッジで,実売で9000円ほど。これならちょっと試してみようという気分にもなります。(というかこないだからちょっと試してみようが購入動機になり続けているように思いますね,やばいですね)

 ご存じの通り,レコードを再生するには,イコライザアンプと呼ばれる専用のアンプが必要です。以前はアンプ本体に内蔵されていたのですが,省略されたものも随分増えました。レコードプレイヤーに内蔵されたものもよく見ますが,これなどはイコライザアンプが内蔵されていない今時のアンプに直結できることを売りにしています。

 ところがイコライザアンプだけで済むのはMMカートリッジの話で,MCカートリッジにはMCヘッドアンプか昇圧トランスが必要になります。ややこしい世界です。

 MCカートリッジはこうして敷居が少しだけ高いので,1万円というお手頃価格のAT-F3IIがどういった客層を狙ったものなのかよく分かりません。

 MMカートリッジの経験で言えば,1万円を切るカートリッジは今ひとつという印象を拭えず,結局V15typeVに落ち着いたわけなので,MCカートリッジも1万円以下が残念なものになってしまう覚悟はしておかねばなりません。

 とはいえ,これがDL-103にすれば期待通りなのかと言われれば,特徴がないのが特徴なわけですし,むしろがっかりするかも知れません。カートリッジ以外に機材が必要なMCカートリッジですから,1万円でも手を抜いていないだろうと考えて,買ってみることにします。

 はて,ヘッドアンプも昇圧トランスも持ってないのにどうするのだと思われると思いますが,実は今使っている自作のイコライザアンプには,ゲインを切り替えてMCカートリッジにも対応できる仕組みがついています。本格的には昇圧トランスを用意するとして,とりあえず暫定でこのイコライザアンプで試してみようという作戦です。

 買ってきたAT-F3IIは私にとってオーディオテクニカの初めてのカートリッジです。カートリッジのメーカーとしてスタートした,日本ではよく知られたメーカーの製品をこれまで1つも持っていなかったのは,偶然とはいえ意外に感じました。

 一緒に買ってきたヘッドシェルのMG10にマウントし,トーンアームに取り付けます。針圧の調整を行って何枚かレコードをかけてみます。

 V15typeVとの比較になりますが,その差ははっきりと分かります。

(1)伸びやかな音
 V15typeVも決してナローレンジではありませんが,AT-F3IIに比べれば急激に高音が天井にぶつかるような印象を受けます。AT-F3IIはすーっと頭のてっぺんを抜けていくような高音を出してくれるカートリッジで,闇雲に高音を強調せず,あくまで自然に「のばす」ということを心がけているような感じがして,とても好印象でした。

(2)高い解像感
 解像度の高さもあり,V15typeVとの比較でも,それぞれの楽器が綺麗に分離して,これまであまり目立たなかった音が良く聞こえるようになります。

(3)平面的な定位感
 奥行き感についてはV15typeの方が好ましく,AT-F3IIは楽器の分離が良い上に,平面的に楽器が列びますので,目の前にわーっと広がる空間の広さは,特に奥行き方向でV15typeVの方が優れているように思います。(ただ,こうした奥行き感はチャネルセパレーションが悪い方が良く聞こえるものでもあるので,ひょっとしたらAT-F3IIのチャンネルセパレーションの方が良いということなのかも知れません)

(4)細い中域
 中低域のエネルギーや密度の高さでAT-F3IIはV15typeVの足下にも及びません。V15typeVの場合,その中域のエネルギーがボーカルの存在感を非常に高めてくれるので,まるで目の前で歌っているかのような生々しさを味わうことが出来ますが,AT-F3IIではそこまでの張り出し感はなく,あくまで自然に音が出ているという感じです。

(5)まとめ
 KennyDrewのピアノソロを聴いてみたのですが,ピアノの機種が変わったのか思うほど劇的な変化がありました。V15typeVではよく耳にする普通のピアノなわけですが,AT-F3IIではキンキンとした金属音が耳につくようになるため,華やかな印象を受けるのと,強弱の変化がより明確になります。

 そんなわけで,MMCカートリッジの場合,安物になるほど磨りガラスを目の前に置いたようなもどかしさが増えるものなのに,MCカートリッジでは,いかに廉価なAT-F3IIでもすきっととても明瞭な音を出してきます。

 その上で,レンジの広さや粒状感の少なさ,まるで高い秋の空を思わせる音を味わうことが出来るということに,まず感心しました。

 よく言えば上品でおとなしく,しかし繊細であるという感じがしますし,悪く言ってしまえば「CDみたいな音」と言えなくもありません。

 カートリッジによってこれほど音が変わってしまうと,なにが本当の音なのか迷ってしまうのですが,おそらくどれも本当の音なんだと思います。

 私は,あまりジャンルによってカートリッジを交換しようとは思いません。ボーカルを生々しく聴いてみたい時には,V15typeVを使うと思いますが,今回のAT-F3IIの音が大変に気に入ったので,常用カートリッジとして使うつもりでいます。

 カートリッジはの多くは手作りで作られます。その点では工業製品でありながら同時に工芸品のような側面もあります。

 レコードやプレイヤーの生産台数は減りもせず増えもせずと言う状況のようですが,採算性が良い世界ではありませんし,職人さんはどんどんいなくなります。

 このくらいの手頃さで,カートリッジを取り替える楽しみを味わえるのは,ここ数年が最後になるかも知れないです。

 一応,タムラ製の昇圧トランスは以前に買ってあって,ケースに入れて組み立てれば使える状態になります。すでにケースの加工は済んでいるので,本当に組み立てだけ。1時間もあれば終わってしまう作業です。

 イコライザアンプのゲインを上げてしまうと,ノイズやハムが目立ってしまいます。半導体アンプの性能が向上した今日でさえ,定番として使い続けられる昇圧トランスがどれほどのものなのか,今から楽しみです。

ペンタブレット初体験

  • 2007/02/19 15:47
  • カテゴリー:散財

 先日,CaptureNXで写真の加工を行っていたのですが,投げなわツールで範囲指定を行っていたところ,トラックパッドではどうにもうまくいかず,イライラすることがありました。

 それでもマウスで範囲選択を行っていたときに比べると随文楽になったと思っていたのですが,マウスやトラックパッドの移動範囲を超えるようなケースの場合,ボタンを押しながらマウスや指を中央に戻すという作業が厄介であることは変わりません。ついつい辛抱しきれずにボタンから指を離してしまい,作業をまたやり直すことになることもしばしばです。

 こういう事が起こらないように,本格的にフォトレタッチを行う人はペンタブレットを使うと聞きます。10年ほど前に5万円ほどした電磁式タブレットは,調べてみると1万円を切っているんですね。それなら試してみるか,とamazonで買ってみました。

 買ったのは一連の商品の中でも最廉価になる,ワコムのFAVOでA6サイズ,CTE-440W0という製品です。

・第一印象
 A6サイズのくせに,結構設置面積をとります。マウスパッドくらいは覚悟しておく必要があるでしょう。ただ,設置してからの安定感はよく,どっしりと机にへばりついてくれるおかげで,タブレット本体がガタガタしたり動いてしまうようなことは一切ありません。安くともこのあたりは手を抜いていないようです。

 なお,心配していたCaptureNXでの対応ですが,筆圧機能も含め,きちんと動作しています。


・操作感覚
 他のどんなヒューマンインターフェースデバイスとも似ていません。A6サイズのタブレットの表面が画面全部を投影する絶対座標系であることがマウスとは全然異なりますし,はたまたペンが接触したときだけ反応するPDAなどのタッチパネルとも全然違います。

 ろくに説明書も読まずに触り始めたのですが,ペンをタブレットから浮かせて動かすとマウスカーソルの移動,ペンダウンで動かすとドラッグなんですね。ペンを浮かせて動かすという動作は,本物の紙とペンではほとんど行わない動作ですし,タッチパネルやトラックパッドでも行わないので,私はここに一番面食らいました。

 どうしてもペンダウンをしてしまうクセがついてしまっていて,マウスカーソルをただ移動させたいだけなのについついファイルやフォルダをドラッグしてしまい,ファイルがあちこちに散らばってしまって大変な目に遭いました。

 おそらく一番自然なのは画面の上に直接ペンを走らせるということなのだろうと思いますが,ペンでなぞる面と画面とが分離している今回のような場合,やはりペンを浮かせてカーソルを動かすという「不自然」な操作は,やはり避けようがないのでしょう。

 これも慣れてしまえばなんと言うことはなく,慣れてからはペンを意識せず自然に操作することができ,快適に使えます。手首の移動だけでサクサクと操作できる感覚は非常に新しいものだと思いましたが,だからといってマウスとの比較で利点となるような部分が見あたらなかったので,常用することはやめました。


・筆圧
 マウスやトラックパッドではどうやっても実現できない機能が,筆圧の感知です。私はイラストを描くわけでもないので筆圧機能を特に必要としていたわけではないのですが,せっかくですから試してみました。

 これは実に楽しい機能です。筆圧で線が太くなったり細くなったりするというのはペンや筆がもつ価値の1つですが,これがコンピュータの画面上でも再現できると,確かにいろいろな事が出来そうです。

 ただ,世の中にある筆記用具のうち,筆圧で表現を積極的にコントロールするものはそう多くなく,むしろボールペンやシャープペンシルのように筆圧による変化が少ないものを日常的に使うことが多いでしょう。だから,筆圧機能があるということを,私のような画を描かない人間はどうやって使うか,ちょっと考え込んでしまいます。

 1つ,手書き文字があるかも知れません。言うまでもなく,筆圧によってはねる,はらう,とめる,を表現するには筆圧機能がなくてはなりませんが,試してみたところ実に見事に再現できるのです。

 太さと色をうまく筆圧でコントロール出来ると,味気ない年賀状も一気に人間くささを取り戻すことが出来るかも知れません。


・問題点
 MacOSXでの話ですが,一定時間が経過するとバックライトが消えるように設定してあっても,タブレットを接続しているといつまで経ってもバックライトは消えません。おそらくですが,タブレットの接続自体か,あるいはバックグランドで動作しているタスクが,操作していない時間をリセットしてしまうため,無操作時間がいつまで経ってもバックライトの消える時間に達しないせいだと思います。

 同じ事は無操作で自動的にスリープに入るような設定をしているケースでも起こるのではないかと思うのですが,私はこの点も気に入らず,常用する気にはなりませんでした。


・マウス
 電磁式のタブレットは,ペンの形を変えればマウスを作ることも簡単です。ということでこの製品には専用のマウスも付属するのですが,可もなく不可もなく,ただのマウスに過ぎない代物です。

 操作感が良いとか,精度が抜群とか,わざわざ特殊な方式でマウスを実現しているのだからと期待をするのですが,使ってみると本当に1000円ほどで売っている,何の取り柄もないマウスです。

 大きさも形状も使いやすいわけではなく,でも別に使えないわけでもないという中途半端なもので,おそらくタブレットをマウスパッドと置き換えた場合に,汎用のマウスが使えなくなることを想定して専用のマウスを同梱したのでしょうが,タブレットの上にマウスパッドを置けば済むことですし,それにノートPCのトラックパッドを使っている人には,まさに無用の長物です。

 これを付属させないセットも「コミックセット」として用意されていますが,これにはマンガ用のソフトが付属しているので,通常のセットでマウスなしというものを用意してくれれば一番良いと強く感じました。


・結論
 私の場合,常用はしない,写真の加工の時だけ使う,という使い方になりそうです。ひょっとしたら今度の年賀状で使うことがあるかも知れませんが,そもそも字が綺麗ではないからプリンタを使ってきたという現実に矛盾するので,おそらく使うことはないでしょう。

 私のように絵心のない人間がタブレットまで揃えるとは全く考えなかったのですが,マイクロソフトもTabletPCを立ち上げていますし,MacOSXでも標準でタブレットをサポートしています。

 紙と鉛筆という非常に身近なものにお手本を求めたユーザーインターフェースには長い歴史がありますが,これまで縁がなかった方にとっても,試せば面白い発見があるかもしれません。この値段はそういうきっかけを提供してくれるものもあると思います。

 ただ,我々のように,紙と鉛筆を知っている人間がタブレットを使って感じることと,紙も鉛筆も知らずにいきなり学校でタブレットを触る子供が感じることには,随分と開きがあるのではないかなあと,少しだけ心配になりました。

 なにもわざわざ不自由なメタファーを持ち込む必要は,オリジナルを知らない新しい世代には不必要なんじゃないのか,という気がしたということです。

 筆圧だって例えばマウスを握る強さで変化がつくようにすればいいだけの話であって,我々がそれに拒否反応を示すのは,マウスという道具を「こんなもんだ」と決めつけているからに過ぎません。

 握る強さで線の太さが変わるマウスと,押しつける強さで線の太さが変わるペンタブレットとの違いは,どちらも初めて体験する人にとって,純粋に使いやすいかどうかだけにかかってくるではないでしょうか。これから20年,30年と経過する中で,どういったインターフェースが生き残るのか,楽しみだなあと思います。

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