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2020年09月の記事は以下のとおりです。

EN-EL18の充電とFマウントの今後

 D850は私の体にすっかり馴染み,出てくる画像が自分の思ったとおりになっています。それどころか,未だに「すごいなこれは」と思うようなドキッとする画を見せてくれることがあり,結果にこだわらない撮影でない限り,これ以外の選択肢はありません。

 縦位置を多用する私は,縦グリップであるMB-D18を常用している一方で,秒間9コマを実現するためのEN-EL18は(持ってはいるが)使っておらず,安価なEN-EL15を使っています。

 以前も書きましたが,EN-EL18を使うことで変化するスペックは,秒間9コマを実現することなわけですが,そのために全体的なレスポンス,特にミラーの動作速度が大きく向上しており,これがシャッターフィーリングを大きく変えている要因になっています。

 全体的なレスポンスの向上によって,キビキビとした小気味よい音とフィーリングが手に入ることは歓迎なのですが,その分ミラーショックも大きくなり,ブレには気を遣うことになります。

 先日,コロナ禍でギリギリの判断の結果,規模を大幅に縮小した運動会が開催されることになりました。娘も頑張って練習に励んでいますし,歴史に残るコロナ禍の日常を残したいとD850にAF-S70-200mmF2.8Eを使うことにしたわけですが,せっかくなので久々にEN-EL18を使って秒間9コマで運動会を記録しようと考えました。

 EN-EL18は高価な電池で,Dヒトケタのプロ機のために用意されている電池です。充電器はさらに高価で,これらに加えて縦グリップも必要なD850では,秒間9コマを実現するための追加投資が10万円を越えてしまいます。

 電池は仕方がないとして,充電器に4万円近くを出すのもバカらしいと思った私は,EN-EL4用の充電器を改造し,後に中国製の純正充電器のコピー品を使うようになっていました。

 電池そのものは内蔵のマイコンで本体と通信することが分かっていたので安価な互換品を買うことは避ける一方,充電器についてはマイコンを読む事はあっても書き込むことはないだろうと私は考えていて,電池の電圧と充電電流で充電の状況を管理するだけの充電器に,あまり価値を見いだしていませんでした。

 1年半ぶりにEN-EL18を取り出し,偽物の充電器で充電を行いました。80%程の容量が残っており,充電はすぐに終わりました。なんの心配もせずD850(正確にはMB-D18
)に取り付けてみますが,電源が入りません。

 おかしいなと思ってよく見ると,電池のアイコンが点滅しており,どうも正しい電池として認識していない様子です。

 電池はもちろん純正で,前回は問題なく使用出来ていました。

 おかしい。何度か放電させて再充電を行いますが変化はありません。電池の抜き差しも縦グリップの付け外しも何度も行いましたが,これでも改善されません。電池の電圧も正常,劣化も起きておらず,定電流負荷で1Aを引っ張っても2時間以上動いています。

 なにかがおかしいのですが,運動会まであと2日。これは間に合わないかも知れません。

 まず電池の故障です。マイコンのデータが壊れたとか,実は劣化が進んでいたとか,そういう話です。

 D850や縦グリップの故障も可能性はありますが,MB-D15で問題なく動いているので,可能性は低いと思います。

 あとは,考えたくはないのですが充電器の問題です。

 とりあえず,安い互換品の電池をバックアップで1つ手配です。4300円ほどですので随分安いですが,この業者の電池にハズレはこれまでにありませんでした。

 充電器は高価なので,これが原因でなかった場合にはショックが大きいですし,google先生に聞いてみてもこれが理由で問題が出たという情報は見つからなかったので,手配することはしないでいました。

 しかし,せめて中古でも出ていない物かと調べていたら,あるお店でアウトレット品が2万円で出ていました。それでも高価ですが,この機会を逃すと後悔すると思い,買うことにしました。

 2日後届いた純正のMH-26aAKで,認識しないEN-EL18bをキャリブレーションしてから満充電し,D850に取り付けたところ,すんなりと認識してくれました。

 そうか,これが原因でしたか。

 私は充電器が電池のマイコンに書き込むことはしないと思い込んでいましたが,これ本当かいな?

 ニコンのプロ用電池の充電器には,キャリブレーション機能があります。時間がかかるのと必要だと言われることはなかったので私は使っていませんでしたが,これは劣化などによる電池の実際の容量と表示される容量との間に出てくる差を校正する機能です。

 やっていることは,まず完全充電を行い,そこから満充電を行うというものなのですが,冷静に考えてみると完全放電時に0%を,満充電時に100%をマイコンに書き込むという仕組みという事から,充電器はマイコンに読み書きを行う機能を有しているのは間違いなく,私の推測が根本的に間違っていたことに気が付きました。

 そういえば,偽物の充電器で充電を行っても,なぜか100%にならなかったことを思い出しました。それでも実害はなかったので気にしなかったのですが,しばらく使っていなかったことでマイコンに記録された残容量と,実際の容量との間に大きな差が出るようになってしまい,この電池は故障しているか非純正品だと判断されて,跳ねられてしまったのでしょう。

 互換品の安い電池も届き,これも満充電後にD850に取り付けたところ問題なく動作しています。

 ということで,EN-EL18を2つ持ちでD850を使うことが出来るようになってしまいました。

 ちょっと重くなりますし,9コマの連写はしないので無駄なように思いましたが,せっかくの投資ですし,シャッターフィーリングの良さを買ったと思って,常用することに決めました。

 ところで,D850とFマウント周辺の状況について雑感を。

 ニコンは業績が良くないようです。とはいえ,ニコンはD800やD850といった高額なヒット商品があったときには業績がぱーっと上向き,そうしたヒット商品に恵まれないとサーッと業績が下がってしまうという事を繰り返すので,今回の事も大騒ぎするようなことでもないかなあと思っています。

 コロナ禍でD6の発売が遅れたことを理由にする筆もいますが,あれはそんなに数の出る商品ではないでしょうから,ここまでの業績悪化に関与しているとは思えません。

 ちょうどZシリーズへの移行期で,ボディだけではなくレンズの開発にリソースを集中しているために,Fマウントのレンズの更新需要が消えたことが大きいと思います。

 また,Fマウントボディが更新されないことも理由で,例えばD850SやD860が出ていれば,買い換えを行った人もたくさんいたはずで,そうした手堅い顧客を失ってでも,Zマウントに移行しようというニコンの決意を感じますし,あれだけの会社が社運をかけて行うことですから,それなりの準備も勝算もあってのことでしょう。

 Zマウントはゼロから立ち上げですので大変ですし,頑張ってもFマウントのレンズよりは売れないはずです。Fマウントは買い換えだけでかなりの数が手堅く読めるでしょうから,私はもったいないなあと思ってしまいます。

 それが証拠に,神レンズと言われたAF-S14-24mmF2.8Gが更新されず,その後継機はZマウントで登場しています。この新レンズはFマウントの14-24mmの欠点をことごとく解決していて,まさに決定版の広角ズームと言える出来になっていますが,それがZマウントという新マウントのおかげで達成出来るものであったとはいえ,10年以上前の設計のFマウントの14-24mmの改良は可能であったと思いますし,そうした声に応えることでニコンの台所事情も随分改善されたのではないかと思います。

 ただ,中途半端なものを出してしまうことを是とせず,出すからには最高のものをという心意気が,単純なお金儲けでレンズを出すことをしないのだと私は思いたいですし,その答えが社運をかけたZマウントだったということだと思っています。

 内心,ボディとレンズの更新に悩むこともなく,また大きな出費をすることもなくなったことにホッとしているところもあって,現在の機材に対する不満を解決するにはFマウントとの決別という判断を先にしないといけないという高い壁に阻まれて,しばらく現状維持することが許されることも,正直助かっています。

 一方で,それを退屈だと思っている私もいて,ニコン純正に限らず,シグマやタムロンといったレンズメーカーでさえ,まるで潮が引くようにFマウントを見放した事実は,それまで無視できない存在として常に真ん中にいたFマウントが,すでに相手にされなくなりつつあることを,Fマウントを支持し,これまで様々なメリットを受けていたものとして,今後どうするかの判断を突きつけられていると感じます。

 画質や操作性,レンズの性能に現時点で不満はありません。腐っても現行機種でユーザーも多い機種ですので,買い換えの必要は今はありません。しかし,Fマウントに未来はなく,Dシリーズも既に主役ではありません。

 D850の受け皿になるようなZマウント機がない現状では,移行したくても出来ない訳ですが,仮にD850の代わりになるようなZマウント機が出ても,似たような機種への移行という話だけなら,別にD850のままでいいです。

 大きな動機となるのは,更新されないFマウントのレンズがZマウントのレンズに比べて見劣りするようになることだと思います。すでにそうした兆候は見えていますし,前述の14-24mmF2.8などはその証拠とも言えますので,いずれ何らかの手を打たないといけなくなるように思います。

 レンジファインダーのSシリーズから一眼レフのFに移行するときも,こういう葛藤がユーザーとメーカーにあったのでしょう。Sシリーズは確かに名機ですが,今レンズが揃うかと言えばそれはなく,今使っている人もほとんどいません。

 少々無理をしてもニコンではなくライカにしておけば,今でもMマウントを使っていられたはずなので,ニコンSPのユーザーは悔しい思いをしたのかも知れません。

 そう考えると,カメラというのは,やっぱり量産品なんだなと思います。

さすがはCherry

 先日購入し,キー配列に満足したDN-915975ですが,使っているとやはり価格相応だなあと思う,気になる事が出てきました。

 それはキータッチの問題で,キーを押した時の感触,キーを離したときの感触,そして音です。

 3つとも,Gateoronのキースイッチに起因する問題で,キーを押し返すときのバネの品質に問題があるように思います。

 とにかく音が耳障りで,最初は音が大きいからだと考えて,静音リングなるものをはめ込んでみましたが,結果は全然ダメ。音が云々と言うよりも,ストロークが1.5mmも短くなってしまえば打鍵感覚が全然変わって来ます。それに,上段と中断ではキートップの厚みが大きく異なりますから,そこに1.5mmのリングなどを差し込めば,ストロークそのものが変わってしまいます。

 この状態で無理に使っていたら,急に肩が凝るようになってしまい,もう大変でした。

 CK-63CMB-RDJP1はCherryの赤軸ですが,同じ赤軸でもこういう不満はなく,静音リングを試そうと思うこともそもそもなかったですし,気持ちよくタイピング出来ることは変わらずでした。

 なら,もうキースイッチの違いだろうと,よくよく調べてみました。

 結論は,やはり戻りバネの品質です。特にキーを離すときに「ピーン」と甲高いバネの音が響いています。全体のガタも大きめですし,軸の摩擦も均等ではないので,引っかかったような感じも,僅かですが差があるように思います。

 押し込むときの反発力のかかり方にも違いがあり,スコンスコンと心地よく入っていくのはさすがにCherryです。Gateronはよく頑張っていますが,接点がコリコリとくっつく感覚や,バネが縮むときにビリビリと振動する感覚も,大きめに出ているようです。

 気のせいかも知れないと思い,Cherryの赤軸をために10個ほど買ってみて,1つ交換してみました。するともう全然違います。やはりCherryは偉大です。値段だけのことはあります。

 軸のブレがありません。キートップのどこを押しても同じ沈み方をします。押す場所によって力のいれ具合が変わってしまったり,キーが反応する力に差が出たりすることがありません。これは精度の差が原因でしょう。

 それと音です。CK-63CMB-RDJP1は鉄のプレートを使っているので音が元々響きにくいのですが,DN-915975はトップパネルがアルミなので,甲高い音がそのまま響きます。

 Cherryにするとピーンと言うバネの音がしなくなるので,耳障りな音がなくなります。快適です。

 ということで,これはもうCherryに全交換です。

 しかし,全交換するためにお金をかけるなら,最初からRealForceでも買っておけば良かったという話になるでしょう。

 なら,DN-915975とCK-63CMB-RDJP1のキースイッチを交換です。

 とはいえ交換には,あの大量のハンダ付け箇所をすべて外さなければなりません。キースイッチに2ヶ所,LEDに2ヶ所で合計4ヶ所,それが73ヶ所と63ヶ所で合計133ヶ所。これまでだとハンダ吸い取り線を使っていたのですが,さすがにこの数をハンダ吸い取り線で行うのは,コストを考えても作業効率を考えても無理があります。

 そこで今回は,新兵器を投入します。そう,ハンダ吸い取り機です。

 最初はその場しのぎで,手動の物を買うことにしていたのですが,今回は数が数だけに電動の物を買うことにしたのです。ハッコーのFR301というものです。

 私は以前,これと同じバキューム式のハンダ吸い取り機を持っていたことがあります。ポンプが外付けになっている大きな物だったのですが,両面スルーホールのハンダを取り除くことも出来ないくらい非力なものでした。

 私は中古品を譲ってもらったのですが,もともと10万円近くしたんじゃないかと思います。ピストル型の先端部は作業中にかなりの熱を持ちますし,電線とホースで繋がっているので取り回しが悪く,音も振動も大きくて,捨ててしまいました。

 そのイメージが残っていたので半信半疑だったのですが,現行製品が無鉛ハンダや両面基板も扱えないはずもないだろうと,思い切って買ってみたのです。

 2万円という価格は,それまでの値段を知っている私にとっては十分安すぎ,性能を疑う理由になり得るのですが,果たしてこのハンダ吸い取り機,買って良かったと思います。

 両面スルーホールは余裕で,4層くらいまでなら対応可能でしょう。多層基板への対応は熱容量が重要なのですが,最新式のヒーターとコントローラで,温度も高く,素早い熱回復性でその温度をしっかり維持することが出来るので,ハンダがしっかり溶けてくれます。

 吸引力も十分です。これが一体型で2万円の商品かと,驚くと共に,作業が楽しくて仕方がありません。あっという間に作業が終わってしまいました。

 ハンダくずをキャッチする仕組みも改良されています。それまではスチールウールにくっつけていたのですが,今回は冷えた金属にぶち当てて冷やして,固めてため込むようです。これならたくさんのくずをため込めますし,吸引力も落ちません。

 ハンダくずを捨てるときに熱い思いをしないといけないところは相変わらずですが,それでもこのスムーズな作業を仕上がりの綺麗さには,もう病みつきです。買って良かったとつくづく思いました。

 ということで作業手順は,まずキートップを外し,キースイッチとLEDの両方のハンダを一気に取り除きます。

 それから基板を慎重に外し,外れたらLEDを抜取ります。そうしてようやくキースイッチを枠から外すことが出来ます。そして外したスイッチを入れ換えて,逆の手順で組み立てると完成です。

 せっかくの大改造ですので,DN-915975の気に入らなかったもう1つの問題点,LEDも交換します。元々青色だったのですが,青色は気が散りますし,周囲の人にも迷惑です。

 何色にしようかなと思ったのですが,100本近い数を持っている3mm砲弾型のLEDなんて白色しかありません。昔秋月で100本900円で買った物です。

 1つだけ試してみたところ案外綺麗に光るので,これを採用。

 組み立てが完了して早速PCに接続します。

 お,LEDはかなり綺麗です。白色だとまぶしいかと思ったのですがそんなことはなく,上品ですし文字が見やすく,変な装飾という印象はなくとても実用的です。

 タッチは激変しました。これだけ違う物かと驚きです。やはキートップのどこを押しても同じ力,同じストロークで確実に入力が入ります。音も快適で,バネのピーンと言う音が全くなくなりました。カチャカチャという軽い音ではなく,カコカコという歯切れのいい音が,タイピングを邪魔しません。

 GateronをあてがわれてしまったCK-63CMB-RDJP1ですが,これはこれで案外悪くありません。キースイッチの枠が鉄製で重量がある事,基板も1.6mmの剛性の高いものでしっかりしているので,あのバネの音が残らないのです。

 確かに押し心地は違うのですが,我慢できないレベルではもともとなかったですし,キースイッチと実装方法との相性というのはあるんだなあとつくづく思いました。

 そんなわけで,どちらのキーボードも好ましい物になったと思います。Cherryのスイッチの良さを見直したと共に,Gateronなど中国勢はまだまだ頑張らないととも思いました。価格の安さは大切な要素ですが,それでもCherryを選ぶのが確実だと思います。

 これでキーボードの問題は解決です。

さらばBlackQueen,あなたは私には厳しすぎた

  • 2020/09/07 15:36
  • カテゴリー:散財

 新型コロナとの共存を「なんとなく」目指している社会が強いる,可能な限り「元に戻そう」という半ば根性論のような空気感に漠然とした不安を感じるこの頃,それでも変わらないだろうなと思うのが,テレワークの日常化です。

 もともとオリンピックによる社会的混乱から逃げるための作戦として,以前からPCがあれば仕事出来る環境に意識して移行してきた私としても,それがまさか未曾有のウイルス危機に役立つとは思っていなかったわけで,テレワークが始まった当初はそれが暫定的な物として考えていましたから,会社がメイン,自宅はバックアップくらいに考えていたのです。

 自ずと設備や機材もそうした位置付けになるわけですが,気が付いてみれば3月から始めたテレワークも,もう半年です。その間会社に行ったのは僅かに一日だけですが,こんなことならお気に入りのRealForceを持って帰ってくるんだったと後悔しています。

 4月末には耐えかねてCherry赤軸のキーボード,CK-63CMB-RDJP1を購入して使うようにしました。テンキーレスの小型キーボードが好みの私は,ぱっと見たときにピピッと感じて買うことにしたのですが,当初不安だったメカニカルキーの打鍵感覚の問題ではなく,配列とコンビネーションに悩むことになったのでした。

 まあ,慣れの問題だと軽く考えていたのですが,配列以上にFnキーによるコンビネーションが深刻で,これがなかなか体に染み込みません。

 なにがダメかと言えば,カーソルキーとDELキーとINSキー,それからPageUpとPageDownキーが独立していないことでした。

 いっぱしのvi使いを気取っていた私ですから,そんな物がなくても全然平気と信じていましたが,実際Windowsの環境で使ってみれば苦痛で苦痛で仕方がありません。

 確かにviなら平気でしょうが,ここはWindowsの世界です。特に私が使っているメールクライアントは,メールの削除がDEL,メールの取り込みがINSです。これがコンビネーションになっているCK-63CMB-RDJP1は,とにかく頻繁にFnキーを押さねばならず,本当に効率が悪いのです。

 日本語入力もそうです。いや,それこそCTRLキーでいいだろうと思うでしょ,でも文節の伸縮については,CTRLとSHIFTの併用が必要になるので,これはなかなか苦痛なのです。

 ここに普段からDELキーとBSキーを使い分けている私としては,DELキーが独立していない事に対するイライラが爆発,もうだめだ,コイツは私には合わないとあきらめてしまいました。

 そんな中,偶然目に付いたのが,上海問屋のDN-915975というキーボードの新製品紹介記事でした。

 私が独立していて欲しいキーを選び抜いたように,独立してくれています。

 

 3月に始まったテレワークも,すでに半年が経過しています。当初は暫定的だと考えて,マウスもキーボードも一時しのぎのもので間に合わせていましたが,長期化し,やがてこのままずっと定着するのではないかと思うようになって,出来れば会社と同じかそれ以上のマウスやキーボードを揃える事の必要性を感じるようになっています。

 手っ取り早いのは会社から引き上げることですが,いつまた会社で仕事をするようになるかわかりませんし,そうなるとRealForceを持って家と会社の間を何度も往復したくもないわけで,家用の物をきちんと揃えるのがベストという事になります。

 とはいえ,会社で使っているキーボードは長年東プレのRealForce。これと同じ物を家で使うには,ちょっとお金がかかりすぎな気がして,躊躇します。

 なので,当座をしのぐものとして,英語配列のHHKBLteを使っていたわけですが,Windowsが日本語と英語の配列を上手く判断してくれないので不便で仕方がありません。

 テレワークの長期化が見えてきたので,この際だからと4月下旬に買ったのがCherry赤軸のCK-63CMB-RDJP1でした。

 これで4ヶ月粘って見ましたが,どうしても体が慣れてくれません。そう,キーコンビネーションがどうもだめなのです。

 CK-63CMB-RDJP1はDELキー,INSキー,カーソルキー,そしてPageUp/DownのキーがFnキーのコンビネーションになっています。どれも私は多用するキーで,CK-63CMB-RDJP1を買うときにも不安はありました。

 ただ,vi使いで,日本語入力でファンクションキーなど一切使わない私は,きっと次第に慣れていくだろうと思っていたのです。3ヶ月もあれば十分だと。

 しかし,甘かった。viはUNIXだからですし,日本語入力も文節の伸縮ではカーソルキーはやっぱり使うのでした。

 普段からDELキーとBSキーを使い分けている私は,次第にDELキーを避けるようになってしまいました。そう,fnキーのコンビネーションというのは,普段は使わないけど,なくすと困るキーを仕方なく割り当てるものなのです。

 私のように,DELキーを便利に使う人はFnキーに追いやられてしまうことでそのメリットが薄れてしまい,最初からなかったことにしてしまいます。そうなると,「ない」ことに対するストレスが溜まってしまいます。

 これがINSキーやPageUp/Downでも起きるわけで,3ヶ月どころか4ヶ月でも手が慣れてくれませんでした。このままでは業務の効率が落ちてしまいます。

 そんなおり,上海問屋のDN-915975というコンパクトキーボードが紹介されているのを偶然見ました。

 カーソルキーだけではなく,私が多用するキーの大半が独立しています。私が使わないキーはFnキーのコンビネーションですので,これは好都合です。Cherry互換で知られる中国Gateronの赤軸を採用しており,価格は激安の5180円。

 私は赤軸が好き(と言うよりこれが最低ライン)なので,まさに私のために作られたようなキーボードであるということで,すぐに買うことにしました。安いし失敗しても悔しくありませんし。

 調べてみるとこれ,安価で評判のいい中国のMagicForceというキーボードのOEMらしいです。悪い評判は聞きませんし,日本のメーカーが日本人の目で品質や性能を判断してくれているならば,まず大丈夫です。

 実はこのキーボードは1年前に出ていた同じ配列のキーボードのアップデート版にあたる新製品で,変更点はスペースキーやエンターキーのバンパーにグリスが塗られているかどうかくらいの差しかありません。

 なんで4月の段階で買わなかったのだろうかと後悔するほど良い商品で,非常に気に入って使っています。

(1)キーのタッチ

 同じ赤軸ということですが,激安の理由は肝心のキースイッチが中国Gateron製だからで,そこは本家Cherryと比べると可愛そうだと思っていました。

 しかし,驚いた事に,比べれば精度や剛性感に違いがあることもわかりますが,それだけで使っていればGateronになんの不満もないくらい,良く出来ているのです。いやはや,大したものですよ,これは。

 私はもともと,ここ数年の中国製品の品質向上に信頼を寄せていて,もう中国製だからと言う理由で避けることも,日本製を選んで買うこともしなくなっているのですが,Gateronのキースイッチも感触は本家Cherryの良いところをちゃんと引き継いでおり,とても心地よくタイピングできます。

 キーボードというのは酷な製品であって,キースイッチが100も200も並んでいる製品なので,1つ1つのキーのバラツキがすぐにばれてしまうものです。しかし,Gateronキーは優秀で,音やぐらつき,重さなどもよく揃っており,精度の高さを思わせます。

 耐久性,あるいは長寿に差が出るのだろうと思いはしますが,それは今すぐわかることでもありませんし。このバラツキの少なさから推測するに,そんなに簡単にダメになるような感じはしません。(もっとも,ある日を境に連日ボロボロとキーが効かなくなっていくのだろうとは思います)

 Cherryの赤軸と比べてみましたが,やはり多少Gateronの方がガチャガチャという感じです。Cherryよりもわずかに軽いような感じもしますし,接点の軽さというか確実感も本家に負けていて,ピンピンというバネの音も聞こえる下品さがありますので,そうした点でのチープさは否めません。

 しかしそれでも十分な感触で,特にCherry寄りも軽く感じるというのは,Cherry赤軸よりももっともっと軽いキーを欲しいと思っている私には好都合なくらいです。

 値段以上にいいですよ,などと負け惜しみは言いません。値段を考えなくても,このキーはいいですよ,と言っておきたいです。

 そうそう,それとスペースキーと左SHIFTキー,そしてENTERキーに備わっているバンパーですが,グリスアップされているということで,とてもしなやかで,高周波の音が消えてとても心地よく,まさに私が求めていた感触になります。願わくばすべてのキーでこの感触になって欲しいのですが,バンパーがないのでそれは難しい注文でしょう。


(2)配列とコンビネーション

 まず配列からです。私は特に配列で文句を言う人ではないのですが,最下段の列びに,レギュラーサイズの横幅を持つキーを置くのは良くないと思います。基本的にこの段のキーは親指は小指で押されるものですし,いわゆる装飾キーですから,小さいと他のキーを押すときに無理を強いられます。

 どのみち私は最下段のキーはほとんどCTRLキーにアサインするので別にどうでもいいといえばいいのですが,ショートカットを多用する人としては,CTRLキーは小さいと不便だと思います。

 CK-63CMB-RDJP1はこのあたり,変換キーや無変換キーを最初から搭載しないことで,見事に割り切っていました。その分CTRLキーやスペースキーを大きくしていて,使い心地も見た目も綺麗だったと思います。

 次にコンビネーションです。カーソルキー,DELキー,INSキー,PageUp/Downキーが独立していて,そもそもFnキーの世話になることがほとんどなくなりました。これは快適です。そう,これらのキーはとても便利で,使わなくてもどうにかなるが,使えるようになると実に快適になるキーだと思っています。

 CK-63CMB-RDJP1でFnキーとのコンビネーションでこれらのキーを駆使できればそれが一番よかったのでしょうが,さすがにSHIFTとの併用をすることになると,3つのキーの同時押しを行う必要が出てきてしまいます。残念な事に3つのキーの同時押しは日常的ではないので,他の指の可動範囲が狭くなってしまい,かなりタイピングスピードが低下します。

 そう,全角キーがDELキーの上に置かれているのが私は気に入りません。もともと1の左側をESCキーから奪って居座った全角キーが流浪の旅に出るのは当然の報いだとしても,私がこよなく愛するINSキーの場所を奪うというのは言語道断です。

 INSキーとの入れ替え機能と交換用キートップが付属しないことには不満がありますが,このE/Jと書かれた不細工なキーは,キー入れ替えソフトによってINSキーとして活躍してもらう事にしました。

 私が使っているメーラーは,カーソルキー,DELキー,INSキー,PageUp/DownキーにEnterキーだけで,マウスを使わずメールの取得と閲覧と削除が右手だけで出来るようになります。左手はパンをぱくついてもいいですし,ショートカットのためにCTRLで待機するのもよいです。とにかく,右手だけで操作できるかどうかは,結構重要なポイントなのです。

 Fnキーが右側と場所が悪く,入れ替えが可能でも1つしか用意されないことで使いにくいだろうという気もしていましたが,先程も書いたようにそもそもFnキーを使うようなコンビネーションがほとんどないので,別に気にならないこともうれしい誤算でした。


(3)大きさ,質感

 大きさはやや大きいですが,カーソルキー独立でこの大きさは立派です。

 たわみもなく,重さも十分でグラグラしませんし,厚さも適度です。

 剛性感も十分ですし,安定感もあるのですが,CK-63CMB-RDJP1と違って重量も精度も違いますから,キーが底に当たったときの感触や音は,やはり軽いです。

 ところでこのキーボード,外周部に壁がない,といいますか,枠がないのです。板の上にキースイッチが並んでいるのが横から見ればむき出しになっていて,LEDの光もそこから漏れているのです。

 わざとだと思うのですが,個人的にはどうもこういう光の漏れ方はだらしないと思うので,どうにかならんかなと思っています。


(4)LED

 最近のキーボードはLEDによる電飾が派手で,私は暗い所でうっすら光ってくれればそれでいいと思うのですが,このキーボードはブルーのLEDが仕込まれています。

 明るさも調整可能,もちろん消灯もできますが,押したところだけ光るとか,広がるように光るとか,いろいろ選べるのは楽しいです。とはいえ,結局最後には上店頭に戻してしまいました。

 LEDの色も,青だけというのが心配だったのですが,青と言うよりシアンニ近い色のLEDです。これはこれで上品だと思います。個人的にはピュアグリーンかアンバーがいいのですが,まあ仕方がありません。

 残念なのは,ここで選んだ発光パターンや明るさ,動作速度などの設定が記憶されず,USBを一度抜いてしまうと初期状態に戻ってしまうことです。


(5)ケーブル

 私はキーボードは有線派なのですが,底面のケーブルガイドが抜けやすいのがとても残念です。このガイドからケーブルが外れてしまうと,キーボードとUSBケーブルを繋ぐminiBコネクタが抜けてしまうのです。

 そのケーブルガイドも,左だし,右だし,真ん中だしの3つを用意して欲しかったと思います。

 
(6)まとめ

 まず,小型メカニカルキーボードの範疇で,カーソルキーだけではなくDELキーとPageUp/Downキーが独立しているだけで,もう私は100点です。この文章を書いている間に,Fnキーの複雑なコンビネーションに少し慣れてきた手が,すっかり元通りになってしまい,サクサクと文章を書けるようになっています。

 Gateronの赤軸は思った以上に良い感触ですが,やはりピンピンという高周波音が精度や耐久性でCherryにかなわないことを暗示しており,そこは価格なりの物と割来る必要があるといいつつ,5000円でこのキーボードが買えるという事実に,まずもって驚くほかありません。

 カナを廃したキートップの印刷には全く同意しますし,ギラギラ感のない上品なLEDも厳しいコスト面での制約の中での激しい攻防を彷彿とさせます。

 もう1つ予備を買おうかと思わせるほどの良い製品ですが,前述のように4月の段階でこの前の製品を買っておけば良かったと後悔しています。ただ,それもCherryで調べたから候補に出てこなかったわけで,Gateronというキースイッチの良さを知らなかった当時なら,それは仕方がない事だったといえるかも知れません。

 中国製品の面白さは,海外製品に品質面で追いついてからが本領発揮です。Cherryにない独自の個性をもつキースイッチがいくつかすでに出ていますが,さらに個性的で面白いもの,出来る事なら静電式のキーに似せたキースイッチなどが出てくると,すごく面白い事になるんじゃないかとワクワクします。

 このキーボード,私はすっかり気に入りました。

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