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2014年01月の記事は以下のとおりです。

10年ぶりに腕時計を新調

  • 2014/01/27 13:48
  • カテゴリー:散財

 腕時計を買いました。

 私は趣味で腕時計を買う人ではありませんので,これまで長く使っていたシチズンのプロマスター以来,実に10年ぶりになります。

 2003年9月末に買ったこのプロマスターは,電波時計でかつ太陽電池でしたから,精度は抜群,閏年や閏秒も自動で補正,太陽電池で電池切れも起きず,20気圧防水で汚れたら水でジャブジャブ丸洗いと,本当にメンテフリーでした。

 ケースもバンドもチタンコーティングで傷も付かず,本当に悪くなる部分,消耗する部分がない,優秀な時計でした。問題があるとすれば,結構大ぶりなことと,実用性の反面で今ひとつ格好良くないということでしょうか。

 そして私の趣味とはちょっとずれていて,最近は違和感がありました。買った時はまだ若かったのですが,ちょっとフォーマルな場には使えないなと思っていました。

 高校生の時に使い出したセイコーのクオーツは皮のバンドで,何度も交換しましたし,電池も交換しました。パッキンが悪くなって水が入り込み,8年ほどで壊れてしまいました。

 その後,大学卒業時に総長賞でもらったセイコーのクオーツを就職と同時に10年ほど使っていましたが,記念の時計でもガンガン常用したため,傷がついてしまいました。

 しかも,秒針が外れてしまい修理に出したのですが,元の部品は手に入らずちょっと違う部品で修理をしました。

 自分で電池交換をするとパッキンを壊すのでいつも時計店に頼んでいましたが,プロでもヘマをするらしく,水が入っていて,オーバーホールも必要になりました。やっぱり記念の時計を常用するのはやめようと,その時思ったのです。

 皮バンドは交換が面倒臭い,電池交換は故障のリスクが大きいという事で,結論はメタルバンドに太陽電池,そして防水です。この条件を満たしたのが,先のプロマスターでした。

 こいつは本当に手がかからない素晴らしい時計でしたが,正確な時刻は携帯電話で手に入る現在,腕時計にそこまでの精度が必要だろうかという疑問もあり,機械式の時計に興味がわいてきたのが,1年ほど前の話です。

 そんな折,セイコーが文字盤をホーローで作った機械式時計を限定で生産したのが一昨年の末で,シンプルなデザインに,透き通るような白い文字盤がとても綺麗で,欲しかったのですが,すでに完売。

 縁がなかったのだと諦めていたところが,今年1月にカタログモデルとして販売されることを知りました。1月24日発売という事で値段を見れば,そんなに高いものではありません。定価で84000円です。

 いい大人が10万円を割るような時計をするのもどうかと思いましたが,気に入ったのがたまたまその値段だったわけですから,あきらめるのもおかしな話です。

 いろいろ迷ったのですが,結局シンプルな3針式の安いモデル,SARX019を予約しました。ポイント10%で,実質6万円ちょっとというところでしょう。

 実は,この時計を予約する前に,激安の機械式時計を買って使っていました。amazonのタイムセールを見ていると,ブルッキアーナという聞いたこともないようなメーカーの腕時計が5800円でした。すぐ壊れた,精度が良くないなど,定価18万円とはどういうことだ,などなど悪い評判ばかりが目に付きますが,なによりこの値段で機械式ですから,おもちゃとして買ってみるのも悪くないでしょう。安い時計を安いものとして使う分には,別に恥ずかしいことではありませんし。

 それまで,時計に全く手間をかけることがなかった私が機械式のような面倒な時計を本当に扱えるのか,とにかくこの時計で試して見ることにしました。実際に使ってみると,毎朝家を出る前にさっと時刻を合わせることは思ったほど面倒ではなく,これは苦になりません。自動巻のくせにゼンマイが切れていたことが2度ほどありましたが,1日30秒ほどの誤差はあっても,別に実生活で困ることもありませんでした。

 それより,機械式時計のがっしりとした存在感が好ましく,使っていて楽しいものであることがよく分かりました。針が太いのは機械式の特徴ということで,クオーツだと消費電力低減のために,細い針しか使えないんだそうです。

 果たして,1月24日に届いた,自分で買った初めての機械式腕時計は,想像以上の上品さでした。数字上は大きいなと思っていた厚みも,実際には全然気にならず,機械式時計らしくうまくデザインとしてまとめてあります。

 針は青色で,バンドもクロコダイルの黒地と,シワの部分に紺色が使われていて,とても綺麗です。そして文字盤はホーローの白さが際立っているのと,ぽってりとした厚みがまた素晴らしくて,良く出来ているなあと感心することしかりです。

 これが6万円ほどで買えるんですから,日本という国は大したものだと思います。

 精度については,まだ使い始めたばかりで馴染んでいませんが,日差で10秒ほどとい感じです。これなら全然問題はありません。

 SARX019はプレサージュという中級シリーズに該当するらしく,そのキャリバーである6R15は,低コストで精度も高いベストセラーとして,セイコーの機械式時計のラインナップを支えており,機械式時計を親しみやすいものにしています。

 早速常用することにしましたが,純正のバンドは同じ物を数年後に手に入れるのが難しいし,高価だと思うので,消耗品として別のものに交換することにしました。紺色のクロコダイルを選びましたが,そんなに悪くはないという感じです。

 機械式時計は,3年くらいでオーバーホールに出す方がよいということですが,そうやって一生使えるのもまた魅力といいます。もとが安い時計ですからオーバーホールなんてもったいないような気もしますが,買い換えるというのが当たり前のクオーツ時計と違って,機械式時計には長持ちさせようという気持ちにさせるものがあるようです。3年はともかく,5年ほどしたらオーバーホールにだしてみましょうか。

 ということで,シンプルな文字盤に皮のバンドの腕時計を,20年ぶりに常用することになりました。時計に手がかからない10年を過ごして来ましたが,時計にちょっとした手間をかけることが苦にならないよう,ギアを1段落としていきたいものです。

安価なHDDの買い方と2TBの壁

  • 2014/01/08 13:33

 ここしばらく続いた円安傾向がすっかり定着し,円安を理由にした製品の値上げについても慣れてしまった今日この頃ですが,頻繁に買うものというより,ごくたまに必要に迫られて買うものの値段が,自分の覚えている価格に比べて違っているとき,その影響が身近なものであることを痛感する機会となります。

 昔から相場に敏感な商品に,パソコン関連の商品があります。コモディティ化が進んで海外製品がそのまま使えるようになったことで,激しい価格競争が始まりました。

 HDD,メモリ,マウスやキーボードなどの周辺小物などは顕著で,HDDやメモリに至っては投機的な意味合いを持ち始めた頃から大きく価格が乱高下し,それが在庫を持たない傾向に拍車をかけ,小売価格まで乱高下するという状況が,すっかり当たり前になりました。

 だから,メモリやHDDの価格変動を見ていると,まさに「経済の小宇宙」を俯瞰しているような気分になります。需要と供給という基本原則に始まり,災害や事故による影響,投機による価格の乱高下,新製品への世代交代,決算前の大放出,そして経済は人々のマインドを映すという現実など,なるほどこういうことなのか,というリアリティがそこにはあります。

 とまあ,大きく出ましたが,ここ2年ほどHDDを買い増ししていなかった私は,増え続けるデータに切迫感を感じ,場当たり的に複数のドライブに分割してデータを管理する事への危機感を募らせておりました。

 2014年も始まったところですし,ここは意を決して3TBのHDDを買って,一気にデータの整理をしましょう。うちは音楽CDはもちろん,CD-ROMやDVD-ROMもイメージデータでアーカイブしてあります。DVD-Videoについても,違法化される前にデータ化したものが大量にあり,これらはすでにオリジナルの光ディスクを処分してしまったので,きちんと管理しなければなりません。

 これまで,大きな容量のHDDに交換して出てきた小さい容量のHDDを,その有効活用にと,これら滅多に使わないデータを保存するものとして使って来ましたが,もはやドライブの数がゴロゴロ増えてしまい,どこに何があるのかわからなくなっています。これでは非常にまずいので,新品の大容量ドライブに集約しようというのが今回の主旨です。

 私の頭の中では,3TBは9000円くらいからあって,どこでも1万円を切る,と言うのが尺度としてあったので,それくらいの気分で探してみたのですが,いやはやとんでもない。12000円を超えるじゃありませんか。

 タイの洪水の時の価格高騰に比べればましですが,2TBでも1万円を切るかどうかという値段だったりしますので,かつて6000円台だったことを知っている私としては,今買うのはお得じゃないんだなあと思った次第です。

 とはいえ,せっかくやる気になった「お片付け」ですので,ここは安いものを探してみることにしました。目標は実質1万円で3TBを買うことです。

 年末からのセールでは1万円は出ていたし,今でも秋葉原の店頭では買えそうな気もしますが,足で探す時間もありません。通販のセールは年始には終わっているし,以後その値段を出してくれる店はぱっとみるとありません。

 こりゃ今は買わない方がいいかもなあとあきらめかけていたところ,amazonでWDの外付けHDDが目に付きました。

 WD Elements Desktop 3.0TBです。WDのリテールですので中身がWD以外ということは間違ってもないでしょう。これが10290円でした。

 ケース付きで10290円ですから,実質1万円切りです。無論,ケースはUSB2.0専用ですのでそれほど価値はありませんが,シンプルなケースは見た目にも悪いものではなく,他になにかと使えそうな気がします。

 3TBのバルクのドライブが12000円程度で推移していること,現在の円安傾向が当分続くことを考えると,この商品だっていつまでこの値段かわかりません・・・という勝手な理屈をこねて,ポチることにしました。

 届いたWD Elements Desktop 3.0TBですが,とりあえずさっと動作の確認をすべく,USBでMacBookProに繋いでみます。無事にマウントしましたが,初期化を行うところでなぜかエラーが出ます。

 そこで,GPTで初期化すると問題なく3TBでマウントしています。初期化直後で使用容量が146MBというのはちょっと大きい気もしましたが,まあいいでしょう。

 しかし,合計3TBを埋め尽くすデータをコピーするのは,大変な時間がかかります。僅かな転送速度の差が作業時間の大きな差になってくることを考えると,USB2.0なんかでチマチマとコピーをするのはうんざりです。

 仮にUSB2.0での実質的な転送レートが20MByte/secとすれば,実に35時間もかかります。時間がかかるだけでも大変なのに,その間に停電があったりしたら最悪です。これはさすがに非現実です。

 これをeSATAで繋ぐと,実質100MByte/secくらい出ますので,時間は7時間ほどの劇的に短縮されます。(実際にかかった時間もこのくらいでした)

 普段はUSB2.0の方が汎用性がありますが,最初のコピーは分解してeSATAでやろうと決めて,早速分解して,中身を取り出します。

 中身はWDのGreenが入っていて,製造時期は2013年8月とありました。そんなに長期の在庫ではないようです。

 これをeSATAに繋いで見ますが,MacBookProの画面には即座に「初期化されていません」と出てきます。おかしいなと思って繋ぎ直しますが同じです。

 ディスクユーティリティを開いてみると,ちゃんと認識はしています。パーティションマップを見ても,確保したはずのパーティションが消えてなくなっています。

 ここで「ははーん」と思った人も多いと思いますが,そもそも3TBのHDDがWindowsXPで動くとうっている製品なのですから,今にしてみれば当たり前の話です。

 HDDに特殊なファームを書いてあって,USB-SATAブリッジと組み合わせて使わないと動かないプロテクトでもかかっていると面倒だと,この状態で再度フォーマットして3TBを確保して見たところ,これは問題ありません。

 次に,このHDDを再度ブリッジ基板経由でUSBで繋いでやると,今度も正しくマウントしません。ディスクユーティリティでパーティションを確認すると,今度は3TBだったはずの容量が,350MBと1/8程度になっていて,あとは空き容量になっています。

 はいはい,みなさん,ここで「ははーん」と言って下さい。

 USB-SATAのブリッジがなにかしているということは分かったのですが,このブリッジが壊れてしまった場合に,HDDのデータを取り出せなくなってしまうという悔しい事態は避けたいところです。そこで私は,HDDを取り出し,ブリッジを介さない形で運用することにしました。

 読み書きするのにいちいちケースに入れないといけなくなりますし,WindowsXPでは扱えなくなるわけですが,これはやむを得ません。

 夜のうちに仕掛けたコピーは,朝起きてくるとちゃんと終了していました。7時間ほどかかっていたので,ほぼ計算した理論値に合致しています。

 翌日,この状況をきちんと整理してみました。

 まず,スタートは「2TBの壁」です。WindowsXPまでで使用されていたマスターブートレコード(MBR)は,HDDのセクタアドレスを32bitで管理します。これまでの慣例でHDDは512Byteを1セクタとしますので,512byte x x2^32 = 2Tbyteとなります。(えと,Tなどの補助単位が1000ではなく1024であることを明示するためにTiBと記述することが多いですが,煩わしいので皆さんの頭の中で読み替えて下さい)

 3TBのHDDを認識するにはMBRではなく,別の管理方式を使う必要があります。GUIDパーティションテーブル(GPT)ではこの制限はなくなっていますが,WindowsではVistaからのサポートとなります。

 もう1つの方法は,1セクタの大きさを大きくすることです。HDDは大容量化の過程で,すでに内部では512Byte単位での管理はしておらず,4Kbyte単位で管理をしています。これをそのままセクタの大きさとすれば,32bitの管理能力でもざっと8倍の16TByteまでアクセス出来るようになりますね。

 とはいうものの,HDDも内部はともかく外に対してはセクタの大きさはこれまでずっと512Byteで来ていますし,チップセットやドライバも512Byte前提で動いていますのでなかなか難しく,とっととGPTに移行しろよ,となるわけです。

 ですが,もしもUSB-SATAのブリッジに細工をして,1セクタ512byteのHDDを4セクタまとめてアクセスし,これを1セクタ4KbyteのHDDだと見せかけることが出来れば,MBRでも2TBの壁を越えられそうです。

 調べてみると,WD Elements Desktopのブリッジには,この機能があるそうです。これですべてすっきりしますね。

 問題は,そうやって見せかける機能がブリッジにあることで,ブリッジが壊れてしまうともうそのHDDにアクセスする手立てがなくなります。WindowsXPを救済するという後ろ向きな対応の結果生まれた技術ですから,こんな機能を持つブリッジは早晩消えてなくなる事でしょう。

 ならばと,2TBのHDDをこのブリッジ経由で繋いでみたんですが,どうも4KByteに見せかける機能がONになってしまうようで,つまり容量にかかわらず,その機能の必要性にかかわらず,繋いだHDDはこのブリッジ専用になってしまうと考えてよさそうです。

 うむ,これはちょっと考えどころです。そもそもWindowsXPでアクセスすることがあるのかどうかという疑問もありますから,こんな変なブリッジは挟みたくないのですが,ケースは邪魔にならないシンプルなものなので,使いたいところです。

 なので,とりあえず雑多なデータを投げ込むHDDとして使う予定の2.5TBのHDDをこのケースに入れて,使えるようにしておこうと思います。ブリッジが壊れてしまったら・・・恐ろしいなと思いますが,滅多に使うものではありませんし,まあ大丈夫でしょう。


 ということで,4TBのHDDが当たり前になりつつあるなかで,お買い得感のある3TBにしておいたのですが,さすがに1TB以上の容量のHDDには使い道もあり,捨てるのが惜しいです。そうすると数ばかり増えて収拾がつかなくなってしまいますから,これはこれで問題です。

 最近物忘れがひどく,買ったものを見失い,買ってなかったことにしたり,捨てたことにするというご都合主義まで飛び出す始末ですが,こういうときこそ持ち物はシンプルにしないと行けないと,そんな風に思います。

 それにしても,世の中にはいろいろなものがあるんですね。ブリッジチップで無理矢理昔のOSを救済するとか,そんな話は遭遇しないと知らずに通り越してしまいます。面白いものです。

角形マウスの復刻

  • 2014/01/07 17:35
  • カテゴリー:散財

 MacがMacintoshと呼ばれていた15年前,そうですね,MacintoshSEやMacintoshIIが,プラチナホワイトの美しい筐体に身を包み,高嶺の花として我々の手の届かないところに鎮座していた頃のお話です。

 当時のMacintoshは,キーボード無しで使えることを主張するかのように,キーボードが別売り(かつ高価)でした。また,マウスがなければなにも出来ないことを主張するかのように,マウスは標準で付属していました。

 当時の多くのパソコンが,キーボードは標準で付属,マウスは別売りだったことを考えると,当時のAppleをひねくれ者と感じた人がいても,ちっとも不思議ではありません。

 しかし,Macintoshが先進的だったのは,キーボードもマウスも同じ端子に繋ぐようになっていた事です。その名もApple Desktop Bus,略してADBです。

 マウスやキーボードをUSBで繋ぐ現在,別にそんなことは珍しくもなんともありません。しかし,当時はキーボードとマウスはそれぞれ専用の端子に繋ぐ時代です。マウスに至っては端子さえ用意されておらず,マウスインターフェースを拡張スロットに差し込んで用意することも珍しくありませんでした。

 ADBはマウスやキーボードなどの入力機器をデイジーチェーンで接続出来るシリアルバスで,USBも開発時にお手本にしたと言われるほど良く出来た仕組みでした。

 ADBの自由度はプロダクトデザインにも生かされていました。キーボードには左右に1つずつコネクタが存在し,マウスはキーボードのコネクタに繋いでも動作しました。右利きの人は右側のコネクタに,左利きの人は左側のコネクタに繋ぐことで,どちらの利き腕の人にも対応することが出来ました。

 当時のAppleの志の高さを象徴する例の1つがこのADBですが,今回の話はADBではなく,当時のマウスのお話です。

 Appleのマウスはボタンが1つしかついていません。いわゆるワンボタンマウスです。マイクロソフトのOSが動くパソコンだと2つ,UNIXのワークステーションが3つだったのですが,なにせ人と接するインターフェースだけにユーザーのこだわりが強く,マウスについているボタンの数で論争が起きたことなど,今となっては懐かしい話です。

 MacintoshSEやAppleIIGSなどのADB搭載機種の登場と同時に用意されたマウスが,初代のADBマウスです。本体と同じfrogdesignによる角形のマウスは,エルゴノミクスが流行した当時においてはとても使いにくそうに見えて,デザインを優先し人間工学をないがしろにしたものと思われる節もありました。

 しかし,ADBのマウスに実質的に他の選択肢がなく,多くのMacintosh(とAppleIIGS)のユーザーが文句を言うこともなく使い続けていることは,その使い心地が見た目以上によいことを物語っていました。

 ADBマウスにはボールがやや大きく重たい前期型と,ボールが黒くて小さく,とても軽い後期型が存在しました。そして1990年代前半には,局面を多用した本体デザインへの切り替えにあわせて,丸みを帯びたADBマウスIIに切り替わります。

 以後はUSBに移行しますが,特に角形のADBマウスには熱狂的なファンもいて,ADBとUSBを変換するケーブルがしばらくの間店頭に並び,MacOSXの時代になっても使い続ける人がいたものです。

 そして2013年末。この角形のマウスが復刻するという話を耳にしました。2.4GHzのワイヤレス,ブルーLEDで1600dpiの光学式,左側にはプッシュにも対応したホイールが用意され,見た目は1ボタンなのに押す場所でONになるスイッチが違うという2ボタン仕様と,現代のマウスにふさわしいスペックになって甦るという話です。

 形や大きさは角形マウスとほぼ同じですが,本物の角形マウスが日焼けによる変色がひどかった反省からか,表面はポリカーボネートで覆われており,非常に光沢があります。

 むむ,角形マウスを長く使っていた私としては,駄目になりつつある愛用のマウスの後釜にしようと考えましたが,なんと限定100個というじゃないですか。6000円という,割に高価なマウスにもかかわらず,速攻で注文しました。

 当初12月中旬と言われていた納期は下旬になり,年末のクリスマスの後に私の手もとに届きました。

 この微妙な形がとても懐かしく,でも古くさく感じないのは,さすがだなと思います。電池を入れて早速動作の確認をしますが,問題はなさそうです。

 年が明けて実戦配備。使って見た感想を書いてみたいと思います。


・形と大きさ,重さ

 前述のように,大きさや形は本物のADBマウスとほとんど同じです。私の場合,マウスは親指と薬指で挟んで持つのですが,指のかかりもほぼ同じなので,とても馴染みます。

 ただ,重さが違うような気がします。本物はもっと軽かったと思いますので,触った瞬間の違和感は拭えません。


・使い心地

 本物のADBマウスの真骨頂は,そのボールの位置にありました。ちょうどマウスの山になった部分あたりにボールがあったのですが,親指と薬指で脇腹を挟んで持つと,ちょうど手首の回転でボールが綺麗に転がり,腕も指も疲れずに快適でした。

 ボールがテーブルに接する点が描く軌跡と分解能が一致しないと,あの使い心地は再現出来ないんだろうと思いますが,この角形マウスの光学センサの位置は本物のボールの位置からは大きくずれていて,かなり左上にあります。

 センサの位置は,ちょうど指のあたりにきています。だから,指先の動きがそのままマウスの動きになってくるので,より理想的であることは否めません。ただ,それが本物のフィーリングを再現出来たのかについては,疑問が残ります。

 例えば,本物のボールがあった位置を中心に今回のマウスを回転させてみて下さい。本物だとマウスカーソルは動かないはずですが,今回のマウスは動いてしまいます。マウスを大きく動かす人に取っては大した差にならないかも知れませんが,それこそ手首や指先でマウスを数センチの動きで操っていた人にとって,それは大きな感触の変化だと理解頂けるでしょう。


・ボタンとホイール

 本物にはなかったものとして,2つのボタンとホイールが追加されています。

 本物は1ボタンですが,ボタンを押す位置で2つのボタンを押し分けられるようになっています。いいアイデアだと思う一方で,どこを押しても同じボタンだったという自由度がなくなり,押す場所が制限されるようになりました。

 私は,本物は人差し指と中指の2本でボタンを押していました。これができないんですね。これだけでもうまるで別物のような感じがしますが,現実的にボタンは2つないと不便ですので,これは辛抱するしかありません。

 ホイールについては,もともとなかったものですから,この場所に取り付けたのは苦肉の策と考えるべきでしょう。

 その場所は右利きの人が親指で操作することを前提にしていますが,せっかく左利きの人でも同じような使い心地を実現する優れたデザインなのに,それを継承できなかった事は非常に残念なことです。

 あと,私に限って言えば,この場所では手首に近すぎて,回しにくくて仕方がありません。繰り返しますが,親指と薬指で挟んで持つと,ホイールに親指をかけるときに持ち替える必要があるんですね。

 かといって,親指を常時ホイールに添えると,今度は人差し指がボタンに届かず,結局持ち替えが必要になってしまいます。

 個人的な要望だけ言えば,もうあと15mmだけ,前にあったら持ち替えをしなくて済みそうな感じです。でもそれは,人それぞれですよね。本物のADBマウスは利き腕がどちらでも大丈夫ですし,手の大きさが違っても問題ないように配慮されていたので,いわばユニバーサルデザインの走りと言えます。

 それが,ホイールを付けることで簡単に崩れてしまうわけですから,プロダクトデザインとはかくも難しいものなのかと,あらためて思った次第です。


・感触

 表面が変色を防ぐ目的で,ポリカーボネートでカバーされています。光沢のある表面の奥に沈むホワイトというのは,2世代目のiBookのような清潔感があって私は好きです。

 ただ,カバーされているのは上側だけで,下側半分は塗装のままです。触った感じでそれは悪いことではないのですが,見た目に違和感があって,ちょっと残念だと思います。

 肝心の感触ですが,表面の光沢は手に触れないのであまり意識しません。しかしボタンの部分の光沢は指のかかりが悪く,また指先の汚れが目立ってしまい,あまり歓迎できません。

 下側の塗装はしっとりした良い塗装で,触った感じはとても良好です。これをすべてに施しても良かったかと思いますが,それをやると塗装が剥げてしまうので,良くないんでしょうね。


・全体の話

 全体に見て,とても良く出来ています。これは間違いないです。かつて本物があって,その復刻であるとか,そういう話を別にして,マウスとして考えた時に6000円の価値は十分にあると思います。

 質感も剛性もあり,重厚で軽い感じの音がしません。部品は良質なものを使っているようですし,USBのドングルも小さく,十分な感度を備えているので,マウスとして不満に思う所はありません。

 あら探しになりますが,塗装のムラや成型のバリもないし,本当に良く出来ています。

 ちょっと惜しいのは,省電力モードの話です。正確な時間は測定出来ていませんが,しばらく使わないと勝手にスリープになってしまいます。スリープに入ってマウスカーソルが動かない事に最初に遭遇したとき,マシンが落ちたと慌てました。

 スリープに入った時には,ボタンを押すなりホイールを回すなりしてスリープから復帰させないといけないのですが,こういう作法を私は身につけたことがなかっただけに,止まったマウスカーソルを動かす時にはとりあえずクリックという習慣が身につくまでは,ちょっと苦労しそうです。

 あと,Bluetoothにするという手もあったかも知れませんが,私は小型のドングルで信頼性のあるワイヤレスであるなら,専用のドングルを使ったものの方が良いように思います。PCからみて,それがUSBマウスであると認識してくれた方が,私は安全かなと思っています。

 使い勝手の話は,まあそのうち慣れるでしょう。オーダーメイドでない限り,体が合わせるという話は洋服でもマウスでも同じかなと思います。

 それともう1つ,今のところ限定100個のままで,予約も出来ない様子です。マウスは消耗品で,いずれ壊れて買い換えることになります。本物のADBマウスのような頑丈なものならあまり心配しませんが,新しい角形マウスはボタンも2つ,ホイールもあるので,壊れやすいことは間違いないでしょう。

 このマウスならきっと手に馴染み,壊れた時には同じ物が欲しくなると思いますが,それが困難という現実は,マウスがとても高価なものだった頃を別の理由とはいうものの,思い起こさせます。

 大事に使おうと思います。

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