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2008年05月の記事は以下のとおりです。

ダビング10などどこ吹く風

 6月からスタートするはずだったダビング10,暗礁に乗り上げ,期限の決まらないまま延期となるのが確実となりました。

 権利者側の意見も,メーカー側の意見も,それなりに分からなくはないのですが,お互いを辛辣に攻撃し合っている現状では,両者が問題の解決をしようと思っていないと考えざるを得ません。

 こうした議論に,利用者の意見が入りにくいことを今さら問題にするつもりはありませんが,どちらの立場の人も,ちょっと条件を変えれば利用者の立場になる,むしろ利用者としている時間の方が長いのだということを思い出してもらえればと思います。

 すでに感情論になっている中では,もうこの話はそう簡単に着陸しないだろうと,私は悲観的です。

 それなりに関心の高かったこの問題が未解決になってしまうことは残念ではありますが,でも実は利用者の中には,もうどうでもいいと思っている人も多いのではないかと思うのです。私もその一人です。

 例えばですね,20年前のFMラジオ全盛時代,週間の番組表まで買ってエアチェックに勤しんでいた頃に「1回しか録音できません」などと言われれば,随分と反対意見も出たことでしょう。

 しかし,今同じ事を言われて,どれだけの人が反対意見を言うのかなあと思うわけです。この背景を考えると,FMラジオの役割がこの20年で随分と変わって来たということを見逃すわけにはいきません。

 20年前までは,FMラジオはその高音質を生かした音楽ソースの1つでした。録音し,編集し,ライブラリとして保存する。そうした習慣が音楽ファンにきちんと存在していたからこそ,高性能なFMチューナー,高性能なカセットデッキ,日夜改良されるカセットテープが買えたのですね。

 番組制作側もこのニーズを理解していたから,エアチェック前提の番組はナレーションが曲にオーバーラップすることもなく,フェードインもフェードアウトもなし,もちろん1曲まるまる放送され,しかもきちんと送出レベルも管理されて,音楽ソースとして十分な品質を備えるよう,配慮がありました。

 今,そうした番組は非常に少なくなっています。DJを楽しむ番組が増えたこと,ヘビーローテーションに代表される,完全なプロモーションの道具と化した現実に,FMラジオはAMラジオと同じように,役割が変わったんだなあと実感します。

 そうした番組を高音質で録音し,編集,ライブラリとして保存するわけはありません。自ずと録音の市場は縮小していきます。音楽との関わりは刹那的になり,生まれてからずっとそういう付き合いしかしてこなかった世代にとって,音楽とは心に刻む物から通り過ぎる物に変わっていったと,そんな風に思います。

 同じ事がテレビで起こっているように思いませんか。

 面白い番組,残したいと思うべき番組が激減している今日,私個人はテレビの役割は変わったのだと思っていますし,結果として録画して残そうと思うこともほとんどなくなりました。

 だから,ダビング10については,もうどうでもいいです。テレビもニュースくらいしか見ていませんし,見逃しても構わないので,録画に失敗しても問題なしです。

 ということで,権利者さんもメーカーさんも,もう勝手にやってください。私はもう関心がありません。

 しかしこの点,映画は実にうまくやってますね。一日の長ありといったところでしょうか。テレビは所詮テレビですね。

鍋でおいしくご飯を炊く

  • 2008/05/29 12:29
  • カテゴリー:料理

 一人暮らしを始めたときに「とにかく米さえ炊ければどうにかなる」という考えのもと,3合炊きの安い炊飯器を買って使っていたのですが,購入後10年を経過し,とうとう満足にご飯が炊けなくなりました。

 いつもよりも多めのご飯を炊くと生煮えになることが多く,特に3合を炊くと確実にアウトです。

 ある時,夕食を一緒に食べようと友人が来たときに多めにご飯を炊いたのですが,この時はわずか数分でスイッチOFFになってしまいました。中を見ると当然お米がぬるま湯の中に沈んでいる状態です。

 これはさすがに続行不可能と判断し,ここから先は鍋で炊くことを思いつきました。IH調理器(電磁調理器)を手に入れた際,母親から厚手のIH対応の鍋をもらったのですが,この鍋の説明書にいろいろなレシピが載っており,ここにご飯を炊く方法が書いてあったのを思いだしたのでした。

 ご飯を鍋で炊く・・・そもそも,鍋でおいしく炊けるなら,炊飯器など専用の道具が売れるはずがありません。考えてみて下さい,パンを作る,魚を焼く,餅をつく,シチューを煮込む,ケーキを焼く,シューマイを蒸す,それぞれ専用のマシンが必要なのに,それらは本格的に料理に取り組む人々が買う物です。

 しかも炊飯器は基本的に国内専用。最近は主としてアジア各国でも売れているそうですけど,北米やヨーロッパで「一家に一台」ではないでしょう。

 なのに,ご飯だけは炊飯器です。しかも一家に一台です。ここから導き出される結論は1つ,ご飯を炊くのが難しいから,でしょう。

 ご飯を炊くのは火加減が大切で「はじめチョロチョロなかパッパ赤子泣いてもふたとるな」は,炊飯器全盛のご時世でも知らない人はいないでしょう。

 はじめチョロチョロ    水を吸わせる
 なかパッパ        強火で一気に沸騰
 赤子泣いてもふたとるな  弱火でムラしている間にフタあけるな

 という意味だそうですが,マイコンの登場によってこの火加減を自動で細かく制御し,実においしいご飯を確実に炊くことが出来るようになったわけです。

 このままでは食べられませんし,捨てるしかない3合のお米ですから,躊躇していても思案していても始まりません。とにかくその厚手の鍋にお米を投入です。

 説明書によると,沸騰したら弱火で12から15分,よく蒸らして食べろ,とあります。随分簡単ですが,こんなことでおいしいご飯が炊けるなら,炊飯器はいりませんよね。

 出来上がりました。ぱっと見るとつやつやしていておいしそうです。
食べてみました。・・・うーん,おいしい。

 友人も絶賛したご飯だったのですが,私の場合は油断するとおかゆを作ってしまう炊飯器を使っていたせいもあり,そのおいしいこと。あれ,こんなに簡単にご飯って炊けるものなんだっけなあ。

 考えてみると,飯ごうを使ってご飯を炊いたことは誰でも一度は経験があると思いますが,あれも考えてみると不思議な物でした。あの時は,やっぱり炊飯器で炊いたご飯の方がおいしいと思ったものですが,今回は違います。鍋の方がおいしいです。

 炊飯器を買い直さないといけないというプレッシャーから解放され,そして根っからの探求心が頭をもたげ,おいしいご飯を安定して確実に,そして手早く炊くにはどうすればいいかを半年以上研究しました。

・お米をとぐのはさっと3回
 あまり頑張ってといでも意味がありません。3回がベストです。

・水の量はお米と同じ量が基本
 カップで同じ量の水を入れます。ただ,お米をといだ時に水が綺麗に切れないものですので,心持ち少なめがよいようです。

・吸水時間は最低30分
 「はじめちょろちょろ」に相当する部分です。冬場は1時間かけましょう。

・沸騰まで一気にいこう
 「なかパッパ」です。IHは温度の立ち上がりが速いのでこういう用途にはぴったりです。しかも鍋全体が熱源ですので,温度の偏りも小さいです。実に理想的ですね。大体5から6分で沸騰に達します。

・沸騰したらしゃもじでよく混ぜる
 これが大事です。炊飯器では出来ないことの1つ,沸騰したらよくかき混ぜるのです。ムラがなくなり,お米が立ちます。

・弱火にして12分から15分
 私のIH調理器は,弱火にすると間欠制御となりますが,ガスで弱火というのはなかなか難しいですから,やはりIHならでは,です。1/5合までまでなら12分,2合以上は15分弱火にします。ここでタイマーを使って,15分経過したらスイッチが切れるようにしておくと便利です。ガスではこうはいかんです。

・蒸らしに15分から20分
 炊きあがってもそのままではコツコツしてあまりおいしくありません。フタをきちんとしてじっくり蒸らします。この時,軽くかき混ぜておくとなおよいです。大事なことは,フタについた水滴を鍋に落としてはいけないということです。


 こうして出来上がったご飯は,お米の銘柄に関係なく,実においしく食べることができます。米粒の間に適度に空気を含みほくほくとしたご飯は,歯ごたえのある堅さと噛んだときの弾力を持ち,香りと甘さが広がります。

 鍋でお米をとがないとか,お米を洗った後ザルできちんと水を切るとか,備長炭を一緒に入れるとか,火加減をもっと細かく調整するとか,手間のかけ方はいろいろあると思いますが,私はこの程度でよいと思ってます。炊飯器と同じくらいの時間と手間ですからね。

 で,結局安定しておいしいご飯が炊けるということで,炊飯器を買うことはやめました。全自動でないとダメになったとき,買うようにします。

 大したノウハウではないですが,案外簡単に,しかもとてもおいしく,ご飯を鍋で炊くことは出来るもんだ,というそんなお話でした。

 

6V6シングルを改造

  • 2008/05/28 12:12
  • カテゴリー:make:

 2000年に作った6V6GTのシングルアンプを改造しました。

 改造と言っても性能の向上はなにもありません。このアンプは自分でゼロから設計したものだったのですが,案外性能が平凡で,特にこのアンプでないといけないような音でもないことから,ほとんど使っていません。

 自分で設計をしたということもそうですが,旧タンゴが廃業した時の,最後の生産分として入荷したU-608というトランスを手に入れたことがきっかけでした。5Wくらいのシングルアンプを作るのに,どんな真空管を選べば良いかを考えたのですが,どうせメインのシステムにはならないだろうし,ヘッドフォンジャックも付けておきたいということで,あまり欲張らないようにしたのです。

 U-608はUL接続用のタップが出ていませんので,五極管を使う場合でも素直に五極管接続をするか,あるいは三極管接続をする,もしくは最初から三極管を使うしか選択肢がありません。

 三極管はすでに5998のプッシュプルがありますし,ここで2A3みたいな本格的なアンプはドライブも大変なのでちょっとしんどい。かといって6BQ5や6BM8みたいなタマでは,最後のタンゴトランスがもったいないので,悩んだ末6V6にしたのです。

 スクリーングリッドへの電圧供給はなにかと面倒ですし,出来ればUL接続したかったのですが,仕方がないので設計課題の1つとして,真面目に五極管接続をすることにしました。

 電源トランスはいつもお金がかかるものなのですが,新規の投資をしたくないという気分もあって,手持ちにあったST-220の中古品を使うことにしたのです。ところがこのST-220というトランスB電源を220mAも確保されていて,6BQ5や6V6のプッシュプルに対応できるちょっと大きめのトランスです。今回の6V6シングルでは100mAもあれば足りると思っていたのですが,まあいいかと使うことにします。

 ところが,電流が少ないのでやはり電圧が高めに出てしまうことと,サイズが大きく重たいことで,小型のシャシーではたわみが大きく,また配置にも無理があることなど,かなり不自然な状態で使っていたのです。

 ま,それはそれでなんとかあわせ込んで,4.5W+4.5Wの出力のシングルアンプが完成したわけですが,すでにあれから8年。

 昨今の原材料高騰からトランスの値段もうなぎ登りです。1.5倍から2倍になったトランスもざらです。いわば贅沢品ですし,食料品と違って1回買うと数年は買いませんから別にいいのですが,それでも出来るだけ「鉄の塊」には投資をしたくないものです。

 そこへノグチトランスというトランスの専門店が値上げの予定を発表しました。ST-220などというオーバースペックのトランスから,適当なサイズのトランスへ交換しないといけないなと思って矢先の話で,以前なら5000円を切っていたPMC-100Mという手頃なトランスも,今や6000円近い値段になっています。

 これ以上値上がりすると,価格的に交換する意味もないですから,こういうのはさっさと注文するのがよいです。

 出てきたST-220で,ちょっと出力の大きめのプッシュプルアンプを作ることが出来ない物かと考えたのですが,220mAという電流も,280Vという電圧もちょっと小さくてダメそうです。(この段階で電圧に思い違いをしていて,40Wクラスのプッシュプル用出力トランスを2つ注文済みであったことは内緒です。)

 そこで考えたのは,ST-220を5998プッシュプルに転用,5998プッシュプルについていたPMC-283Mを,新しいプッシュプルアンプに使ってはどうか,ということです。

 PMC-283Mは320Vで280mAですから,6CA7でプッシュプルを組むと30Wくらいはいけそうです。しかも120V巻線も出ているので,固定バイアス用の負電圧も作ることが出来ます。(ST-220にはありません)

 このトランスも10年前は1万円くらいだったのですが,今は結構高いですねえ。

 しかし,問題は5998プッシュプルにST-220が使えるのかどうかです。

 固定バイアスではありませんし,電圧も280Vあれば十分なのですが,電流が220mAは実は少ないのです。5998Aのアイドル電流が1ユニットあたり60mA,これが4つ分ですでに240mAですから,軽くオーバーです。

 まあ,少々多めに電流を取っても電圧が下がるくらいでたぶん使えると思うのですが,長時間の使用は難しいでしょうね。

 しかし,ST-220を使わないともったいないですから,やっぱりこの作戦でいきましょう。

 こう決めて,6V6シングルの改造を始めます。トランスの配線を外し,シャシーからST-220を取り外します。ここにPMC-100Mを取り付けますが,幸いなことにちょっとヤスリで削るだけで固定穴を作ることが出来ました。しっかり固定できます。

 しかし,合計100mAのトランスというのは,小さくてかわいらしいものです。

 配線を終えて,各部の電圧を測定すると,当たり前ですが改造前と全く同じです。これなら間違いないだろうとさくっと音出しをします。

 ハムも全然なく,ノイズもほとんど聞こえません。まずは成功でしょう。

 しかし,音を出すと,スケール感がないのです。広がりもなく,随分と頭打ち感がします。ジャズは言うまでもなく,クラシックはもう苦痛というくらいの狭さです。

 効率のいい大きなスピーカならもっと鳴るんでしょうが,やはりドライブ能力が特に必要と言われるCM1では,全然だめですね。いやー,がっかりです。

 試しに5998プッシュプルに切り替えると,広がりはそこそこ,低音もしっかり出てきますが,高音に伸びがありません。やっぱ頭打ち感があります。クラシックで顕著ですね。

 それならばとうちの常用機である300Bシングルを投入,自然な伸びはあるのですが,低音のモコモコとした分離の悪さ,スケール感のなさからくる広がりのなさに「こんなに悪かったかうちのアンプは?」と思うほどでした。パワー不足です。

 最後の手として,MOS-FETの40Wアンプです。これはあまりにソリッドな音でつまらないのですが,どうしてどうして,クラシックを鳴らしてみると一番ましなのです。友人も「これでやっと普通になった」といってましたし,確かにすべての音が等しいバランスで鳴っています。

 やっぱクラシックのようなスケール感重視の音楽は,パワーが必要なんだなあと思ったことと,変に特性に偏りのある「個性の強いアンプ」ではなく,ストレートでソリッドなアンプこそクラシックには適しているのではないかと,そんな風に思った次第です。

 楽器の数が少なく,ボーカルやピアノなどの柔らかい音が主役なら,負帰還の少なめのシングルアンプは,本当にいい音を出すと思います。

 一方で,6CA7やKT88,6L6GCなどの銘球を使った大出力プッシュプルアンプも,音楽のジャンルに関わらず昔から高い評価を得ています。五極管でアンプを作るくらいなら半導体でいいじゃないかと思っている私ですが,UL接続という絶妙な負帰還システムは半導体では実現できず,ここに試してみる価値があるのではないかと思います。

 

インチキ科学に要注意

 今日は小ネタを1つ。

 理系の皆さん,もし子供に「電子レンジはなぜあったかくなるの?」と聞かれたら,きちんと答えられますか?

 「電子レンジは電波で食べ物の分子を振動させ,その摩擦熱であったかくなるんですよ」

 って,言えればとりあえず安心。もう少し突っ込む人は,

 「水分子の共振周波数が2.4GHzで,電子レンジはこの周波数の電波を使って,最も効率よく水の分子に吸収,振動させて,熱を出すようにしている」

 などというでしょうね。2.4GHz・・・共振周波数・・・水分子・・・いやー,難しそうな言葉だらけですね。子供もすっかり納得してしまうでしょう。


 実際,そうした説明をした専門書もあったりするので引っかかりやすいのですが,実は間違いです。ウソなのです。

 某教えてなんとか,にもしたり顔で間違ったことを書いている人がいたりします。これはちょっと恥ずかしい。

 では,正解はといいますと・・・

 導体に電波が吸収されると,導体に電流が流れます。電流が流れると,導体が持つ抵抗のせいで,熱が発生します。そう,この熱は紛れもなくジュール熱です。

 たったこれだけの話です。

 うそだ,水だからあったかくなるんだ,という人に反論。電気抵抗が無限大の純水を電子レンジにかけても,ほとんど暖かくなりません。この時電波は純水を透過しています。逆に電気抵抗が低い金属では,反射が起こってしまいます。どちらにしても吸収はされません。

 うそだ,水分子が振動するからだ,という人に反論。振動しても摩擦で熱が出るなどということは物理学で否定されていますし,冷静に考えてみると分子は絶対零度まで冷やさないと運動(振動)は止まらないのです。

 うそだ,2.4GHzは水分子の共振周波数なんだ,という人に反論。水分子の共振周波数は22GHzくらいです。それに,海外には900MHzの電子レンジもあります。

 じゃなんで2.4GHzなんだ,ということですが,これは暖める具材の大きさから,内部への浸透などを考えてこのくらいが適当だろう,で決まったものです。
 
 うそだ,絶縁物でも電子レンジであったかくなるぞ,という人に反論。先程書いたように,純水はほとんどあたたかくなりません。陶器のお茶碗やガラスのコップだけを電子レンジに入れてみると,実はほとんどあったかくならないことがわかるでしょう。


 さて,かくいう私も,こないだまで勘違いをしていました。

 この話は,先日発売になった雑誌「RFワールド」の初心者向け記事に書かれていたものなのですが,RF初心者である私は「そうだったのかー」と衝撃を受けたのです。

 ひょっとするとインチキ科学の最たる例として広く知られている話だったのかも知れませんが,子供の頃から信じていた電子レンジの動作原理が,まさかこの歳になって「ウソだった」と知ることは,感動的ですらありました。

 いや,きっと私と同じ間違いをしてる人がいるはず。さて,心当たりのある人,特に子供にウソを教えた記憶のある人は,今のうちにきちんと謝って,正しい動作原理を教えてあげてください。私のような不幸な子供を増やさないためにも。

バックアップメモリの電池交換

  • 2008/05/26 14:54
  • カテゴリー:make:

 5月の連休には実家に戻っていたのですが,1つ気になっていたことを片付けてきました。古いシンセサイザー達の電池交換です。

 今時のシンセサイザーはフラッシュメモリがあるので電池交換など不必要ななのでしょうが,80年代のシンセサイザーのユーザーメモリはSRAMで,唯一長期間のバックアップが可能な書き換え可能なメモリだったのです。

 バックアップ用の電池はおおむねコイン型のリチウム電池で,大体5年程度持つと言われています。今となっては使うこともないシンセサイザーではありますが,それでも当時のデータが永遠に失われるのは忍びなく,わずか数百円の投資と少しの手間で救えるなら,やっぱりなんとかしたいといいうのが,これ人情というものです。

 実家にあったのはローランドのD-20。これは私が10代の頃に使い込んだ1台です。ゴミ同然ですが,やっぱ捨てられないものです。

 使われている電池はCR2032で,メイン基板の電池ホルダーに取り付けられています。通電しながら電池交換をするのがミソで,これを忘れるとメモリがふっとびます。

 幸いにして私のD-20が,遙か昔の記憶を失ってはいませんでした。

 作業時間はわずか10分ほど。ここから先また5年,こいつは長い眠りにつくのです。

 ついでに,JX-8Pも見ておきましょう。中古で買ったJX-8Pは確か私が改造し,RAMカートリッジと同等な機能を内蔵させた時に,バッテリバックアップの電池も高性能な物に変えた記憶があります。

 電源を入れてみると・・・カートリッジを認識しません。その上,ユーザーデータをすっかり忘れています。うーん,かわいそうなことをしました。

 中をあけてみますと・・・あれ,元に戻してある。

 ・・・思い出しました。JX-8Pはいかにも80年代的なアナログシンセですが,これを初めてステージに持ち出す際,信頼性を高めようとして,改造箇所を全部元に戻したのでした。電池もCR2032になってます。

 近所のスーパーにまた買いに走り,CR2032を交換しましたが,記憶が失われてしまったJX-8Pは,私がエディットした音を出してくれることは,ありませんでした。

 妙な虚脱感が私を襲い,私はそのまま電源を落とし,ケースにJX-8Pを戻し,そのまま部屋を後にしました。新しい記憶を与えられることは,結局ありませんでした。

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