54645Dのドナーを手に入れた
- 2017/07/04 10:13
- カテゴリー:make:
今年の春に高速コンパレータの部品不良による,CH2のトリガがかからないという問題が修理された,私の愛機HP54645Dですが,さすがに20年近く経過したクラシックマシンだけに,あちこち具合が悪くなってきます。
ツマミのロータリーエンコーダがおかしくなっているのはもう仕方がないことではあるのですが,不良のままではこれがまた使いにくくて,とりあえずあまり使わず劣化の程度がましなものと入れ替えて,垂直軸と水平軸とカーソルのエントリだけは,元の快適な操作に戻すことができました。
そのあおりを食らって,ロジックアナライザのロータリーエンコーダがクリック無しのものに交換されていて,しかもこれが汎用品だったりするので,操作感覚が全然違ってしまいました。
しかし,実際にはほとんど使わないツマミなので,実害なく一応修理は終わったことにしてあったのです。
とはいえ,機会があれば交換可能なロータリーエンコーダを手に入れて交換しようとずっと思っていましたし,先日の修理の際にも「ここが壊れたらもうおしまいだなあ」と思うものも多数あったので,できればもう1台,壊れていてもいいので部品取りの個体を確保しておいた方がよいなあとも思っていました。
余談ですが,2465Aの部品取りとして,2445を確保してあります。とはいえ,もっとも壊れやすい垂直軸のハイブリッドカスタムICには互換性がないので,あまりうれしくないのですが・・・
そんなこんなで,偶然54600Aというデジタルオシロを安い値段で手に入れました。ジャンクなので故障していることが前提で買いましたが,筐体の割れ具合から落下があったようです。ひどいなあ。
まあ,欲しいのロータリーエンコーダです。CRTも手に入ればうれしいし,メインボードもOP400などの入手の難しい部品がのっているので,この値段ならうれしいです。
届いた日にとりあえず様子を確認してみます。雨風に晒されていたと思っていたので汚れがひどいことを覚悟していましたが,実際にはそれほどではありません。ただ,もともとの筐体の破損以上に,輸送中の破損もあったようで,これは残念です。
つまみもロータリーエンコーダも機械的な破損はありませんし,パネルは全体に綺麗なのですが,CRTは焼き付きがあります。長時間使われたんでしょうね。
とりあえず筐体をあけて,中を見てみます。ホコリはすごいのですが,泥や水の進入はなさそうで,おかしなサビも粉もみあたりません。これはいいかも。
一か八か電源を入れてみると,あっさり起動しました。しかし波形はぐちゃぐちゃ。CH2の垂直感度を変えてもほとんど変化がないので,アッテネータがおかしいのかと目処を立てたのですが,なんとバーニヤモードになっていただけでした。波形がぐちゃぐちゃなのはトリガがかかってなかっただけの話で,これも正しく設定すると問題なく波形が出てきます。
セルフテストも全部パス,セリフキャリブレーションも問題なく通ってしまい,普通の問題なく動く良品になってしまいました。
使えそうな部品だけ取ったらすぐに捨ててしまおうと思っていたのですが,これだけ動いてしまうと,捨ててしまうのも可愛そうです。いろいろ考えたのですが,しばらくこのまま置いておくことにしました。
仮に部品の交換をするにしても,動作している個体から外せば部品が死んでいるのか生きているのか,疑う必要がなくなりますからね。部品レベルにまで分解してしまうと,交換前に部品単体のテストが必要になったりします。
で,54600Aを触って見たのですが,これってやっぱり54645Dよりも前の世代だけに,全体に速度が遅い上に,メモリも少ないんですね。1990年代の半導体の進歩というのは強烈なものがあって,この時代の数年はもう数世代の差になると言ってよいです。
MegaZoomがないのはまあいいとして,一番困ったのはリアルタイムベクターが使えないことでした。RUNモードで波形がリアルタイムで出ている間は点と点が繋がらず,どうも見にくくて仕方がありません。
そこでVectorをONにするのですが,わざわざ「STOPモードにしないとONにならないよ」と警告されます。確かに表示画面はベクター表示されていません。STOPボタンをおして画面を止めると,昔の8bitパソコンのLINE命令のように,せっせと点が繋がって,ベクター表示が出てきました。
なんじゃこりゃ。
これでもないよりましでしょうけど,これではおよそアナログオシロの代わりにはなりません。なに,昔のデジタルオシロってこんなにひどいものだったのか???そりゃ,アナログ原理主義者が跋扈するはずだわ。
これが数年後の54600Bになると,どうやらリアルタイムベクター表示が可能になっているらしく(とカタログに書いてある)ので,もしかしたらファームウェアを入れ替えたら動いたりするかもしれません。
しばらく使ってみたのですが,私がかつて酷評していた横河のDL1500シリーズの欠点として挙げていた点が,ことごとくこの54600Aにも存在しました。この当時の水準としては,こんなもんだったんでしょうね。
ということで,まずは54645Dのロータリーエンコーダを交換します。分解し,54600Aを綺麗に掃除してから部品を外します。54645Dの部品と入れ替えて,組み立てるのはとても簡単で,1時間ほどで完了です。問題なし。
しかし,これで終わらないのが私です。54645Dのツマミが突然割れて外れてしまいました。綺麗に半分になっています。他のツマミも見ていると,ひびが入っているものが2つほどありました。うーん,傾向的な破損ですね。
接着剤で割れが進まないようにした上で,54600Aのツマミと交換しました。しかし54600Aのツマミの色は54645Dの色とちょっと違うのですよ。このまま交換しても不細工なので,どうしたものかと思案中です。