エントリー

2016年03月の記事は以下のとおりです。

GPSで周波数を追い込む

  • 2016/03/31 15:57
  • カテゴリー:make:

 周波数カウンタにTCXOを搭載し,2ppm以下の周波数精度を手に入れた私ではありますが,2ppmといえば,1MHzに対して2Hzですから,8桁の周波数カウンタの精度としては,ちょっと心許ないのも事実です。

 フルスケール10MHzを測定するとすれば,1ppmなら10Hzです。ちょうど3桁目が10Hzの桁ですので,8桁のカウンタなら下2桁が信用出来ないという事になります。せっかくの8桁カウンタなのに,寂しいですよね。

 温度変化や経年変化はやむを得ないとして,今出ている周波数が一体どれくらい正確なのか知りたいと思っても,そういうチャンスはなかなかありません。ルビジウム発振器に手を出すとか,校正済みのOCXOを買うとか,そういうことは費用の問題もそうですし,維持の問題もあるので,素人には厳しいです。

 ちょっとまった,手軽に高精度な「絶対値」が手に入る方法があります。GPSです。かつてはJJYの10MHzをつかまえるとか,カラーテレビの内部からカラーバースト信号を引きずり出すという方法がありましたが,JJYの短波は停波して久しく,カラーバーストも地デジになった現在では無い物ねだりに過ぎません。中国政府が威信をかけて出している標準電波もありますが,それこそ知る人ぞ知るでしょう。

 GPSではすべての衛星で位相まで揃った高精度な周波数が手に入り,これを元に測位を行います。周波数の精度が高くないと測距精度が上がりませんので,GPSの衛星には10E-13という精度の原子時計が搭載されて,しかも精度は地上で管理されています。

 GPSの受信機はこの周波数と位相まで一致させて測位を行います。ですから,理屈の上では10E-13の精度が手元にくるはずですが,なにせ宇宙から飛んでくる電波ですから,空気の揺らぎもあって,そこまでの精度は出ません。
 
 調べて見るとGPSモジュールが出力する1秒パルス(1PPS)の精度は10nsくらいとのことです。1nsは10E-9秒ですから,1PPSの精度は10E-8ということになります。

 ここで重要な事は,この1秒で10nsのズレという精度は,常に補正され続けているので,10秒だろうが100秒だろうが1000秒だろうが,トータルのズレはやっぱり10nsということです。ということは,長いスパンで見れば見るほど,精度は上がっていくのだという事です。

 また,正確なパルスは1秒に一度しか出ませんから,パルスが出ていないときは,GPSとは別の時計を持っていないといけません。ここに変動の大きな発振器を使うと,1秒ごとに正確な時間に補正されるとは言え,1秒未満の時間は全くあてにならないということになってしまいます。

 よく,GPSを使ったタイムベースにOCXOを使う例を見るわけですが,1秒未満の時間はOCXOを使い,これを1秒ごとにGPSで補正して使っているわけです。

 GPSの1秒ごとの精度は10E-8から10E-9くらいですが,これが1000秒になると10E-12くらいに精度があがります。こうして長い時間かけてOCXOの補正を続けて,最終的に10E-12という原子時計に迫る精度を手元に作り上げるのです。

 まあ,ここまでやると結構大変です。そこでふと見方を変えてみたのですが,10E-8でよければ,1秒でいいのです。なら,面倒な仕組みも必要なく,GPSモジュールから出てくる1PPSだけでいいですよね。

 もちろん,周波数も異なるので,この1PPSをそのまま,周波数カウンタのタイムベースにすることはできません。しかし,タイムベースを校正するための基準クロックとしてなら,十分です。

 そう,GPSの1PPSのパルスが,正確に1Hzになるよう,周波数カウンタのタイムベースを調整するのです。

 とはいえ,この方法では1秒に一度しかパルスが出ませんので,ゲートタイムが10秒程度の普通の周波数カウンタでは10個のパルスしか数える事が出来ません。10MHzがGPSから出てくればいいんだけどなあ・・・

 そんなことを数年前から考えていたんですが,周波数は周期の逆数ですので,周期を計ればいいんじゃないかと気が付きました。

 周波数カウンタのモードを周期を測定するモードに切り替えます。正確な1秒を入力に突っ込むのですから,この1秒の間にタイムベースのパルスがいくつあったかを数えれば,校正できそうです。

 例えば10MHzのタイムベースを数えることにすると,カウントされた数字は10000000となり,1000000.0us,すなわち1秒という測定結果を得られることでしょう。

 とまあ,そんな風に妄想していたところ,ふと最近のGPSモジュールのタイムパルス出力が,1PPSではなく10kHzや1MHz,はては10MHzまで設定可能であることを知りました。

 なんと,GPSから10MHzが直接出てくるなんて,夢のようです。

 しかし残念ながら,それは夢でした。というのも,ジッタが大きすぎて使い物にならないんだそうです。理由はどうやら,GPSモジュールの内部クロックが48MHzで,ここから10MHzを作っている関係で,どうしてもジッタが大きめに出るのだとか。だから,1MHzや8MHzといった整数比であれば,ジッタは少ないものが手に入ります。

 さて,話を整理します。

 うちの周波数カウンタは,TCXOを使って安定度を2ppm程度にしてあります。これは10MHzフルスケール(8桁フルカウント)で,20Hz程度の測定誤差が出ることを意味しています。

 ただし安定度ですから,初期値に対する変動が2ppmというだけで,初期値がいくつかはデータシートを信用するしかありません。VM39S5Gという秋月のTCXOは1ppm以内に合わせてあるということですが,以前ここに書いたように電源電圧で大きく変動し,0.1Vで40Hzも動きます。0.03Vずれると1ppm変動するというのですから,これはかなり大きいです。

 一応,高精度な電圧計で電源電圧を5Vぴったりに追い込んでいますし,秋月の話を信じるなら5Vで1ppm以内に調整されているということですので,そんなにずれているわけではないと思いますが,それでも初期値は現在不明なままです。

 そしてその初期値は,絶対精度がはっきりしている,GPSから生成された周波数との比較で手に入ります。本来GPSでは1PPSしか出てきませんし,これも長期的に平均を取らないと10E-12レベルにはなりませんが,1秒でも10E-8程度の精度は持っているという話です。

 そこで,GPSで1PPSを元にしたもっと高い周波数を作り,これを周波数カウンタに突っ込み,その周波数になるように周波数カウンタのタイムベースを調整します。タイムベースの調整は,TCXOに供給する電源電圧の微調整で行います。

 よし,あとはどうやって行くかを考えましょう。

 GPSといえば,aitendoです。aitendoのGPSの取り扱い品種は多く,でもあまり詳しい説明がないので,正直敷居は高いです。ですが,先人達の苦労のおかげで,なにを買えばいいのか,調べることができます。

 今回私が買ったのは2種類,u-bloxのNEO-6Mが搭載された基板とアンテナのセットでNEO6M-ANT-4Pです。数ヶ月前のトラ技にも出ていたんですが,値段が上がったようで1980円ではなく2780円で買いました。

 もう1つは最新のNEO-M8Tが搭載された,GM-8013Tです。最新だけにちょっと高くて,3980円でした。最新のものが欲しいのは,別のいろんな衛星をつかまえたいわけではなく,少しでも感度を稼ぎたいと思ったからです。

 そうと決まれば,在庫があるうちに注文です。迅速な対応で,翌日には届きました。ありがたいですね。

 さて,届いたGPSですが,いずれもシリアルポートで繋ぎます。RS-232Cではないので,レベル変換はいらないのですが,この時手元に,USB-シリアル変換基板が1つもありませんでした。

 しかも,u-bloxのツールである,u-centerはWindows Vista以降しか動かないという事なので,古いPCではダメ。USB-RS-232C変換ケーブルも新しいOS用のドライバがなくて動かず,結局買い直す羽目になりました。

 Windows8.1でu-centerが動くようになって,ようやくこの2つのモジュールに火を入れます。PCとの通信は問題がないのですが,室内なのでなかなか衛星をつかまえてくれません。特にGM-8013Tは全然だめです。壊れたのか?

 そのうちつかまえるだろうと,u-centerで先に設定をいじってみます。configuration viewからTP5の設定をあれこれいじって,8MHzを出してみました。衛星をつかまえていないので,あくまでこのモジュールの内部クロックです。

 周波数カウンタで調べると,7Hzほど高いです。なるほど。

 ・・・さて,そのうちつかまえるだろうと思っていた衛星は,なかなかつかまりません。やっぱり壊れたのか?

 ふと気が付くと,一緒に電源を入れたNEO6M-ANT-4Pは結構しっかりつかまえているようです。

 こっちにシリアルポートをつなぎ替えて,設定をします。衛星をつかまえていないときには1MHzを,衛星をつかまえてロックしたら8MHzになるようにしました。こうすれば,いちいちPCを立ち上げなくても状態が出力される周波数でわかります。

 衛星をつかまえない状態では1MHz,つかまえたら8MHzに鳴っていることを確認して,これを10MHzに設定してみると,値がパラパラとばらつきます。オシロで見れば,それはそれはひどいジッタで,これは全然使い物にならないです。

 1MHzや4MHz,8MHzや規格外ですが12MHzにすると,ジッタが目視できないくらいの綺麗な波形が出てきます。周波数カウンタでも値は動きません。

 とりあえず,この8MHzを校正用基準周波数として,周波数カウンタのタイムベースの電源電圧を調整し,8MHzになるようにあわせます。最初はゲートタイムを1秒にして大まかにあわせ,次にゲートタイムを10秒にして追い込んで行きます。

 10秒に一度しか値が更新されませんので調整は難しいのですが,ちょっとずつちょっとずつあわせます。

 8000000.0Hzになるように根気よく合わせるのですが,5Vを作っている可変電圧LDOの可変抵抗が,いかに多回転型を使ったとはいえ,時間と共に変動があるのです。TCXOで温度変化を相殺しても,電源電圧に温度依存があったり経年変化があったらなんか意味がないです。

 最終的に,0.1Hzの桁まであわせ込みました。

 8桁の周波数カウンタは,ゲートタイム10秒で0.1Hz以下をカウント出来ません。最大0.1Hzの測定誤差を起こすわけですから,これは0.0125ppm,すなわちこの段階では1.25ppb以内の精度になっているということになります。

 もちろん安定度が2ppm以下ですので,こんなものはすぐに変動してしまうでしょう。そんなに意味はありません。けど,やっぱり限界ギリギリまでせめた,という気持ちよさはありますね。

 一応,このまま二晩通電して周波数を測定し続けました。周波数カウンタは最終桁が2ほど動く事はありますが,なんとか追い込めたようです。ゲートタイムが10秒で精一杯ですので,1PPSから作る8MHzの精度も10E-8くらいがいいところでしょう。あるいはGPSモジュール内蔵のPLLから生成する8MHzなので,もっと悪いかも知れません。

 仮に10E-8出ていれば,この周波数カウンタの精度としてはまずまずでしょう。
 
 ところで,GM-8013Tも同時に調べていたのですが,翌日の朝になるとちゃんとつかまえるようになりました。窓際に置いておくとたくさんの衛星をつかまえるようになり,ロックした瞬間に7Hzのズレがあった8MHzも,ピタッと8MHzになりました。

 ということで,周波数カウンタの校正は終わりました。TCXOの安定度が気になる場合は,GPSで校正をしてから測定をすればいいわけで,TCXOとGPSの手軽さが生きてきます。

 この状態で,手元のOCXOも調整をしましたし,TCXOも可能な物は確認して調整をしました。優秀だったのは以前鈴商の店頭で買ったNECの15MHzで,これはもともと1ppm以下のズレしかない上に,電源電圧の変動に対しても安定でした。優秀です。

 TG-5021も電源の変動には強かったです。これがトヨコムの9.98MHzのものだとバンバン動きます。VM39S5Gもそうです。こういう観点で評価をしないと,このあたりの発振器は難しいですね。


AVRtiny13Aでつくるシリーズ3 TCXOを使って時計を作る

  • 2016/03/31 12:04
  • カテゴリー:make:


 さて,今回はCPUのクロックに外部のTCXOで作った10MHzを突っ込み,これをもとに時計を作るという話です。少し前に,わざわざSi5351で32.678kHzを生成して時計を作ったという話を書きましたが,そんなことをしなくてもTCXOの時計を作る事は出来るんじゃないかという発想を,実際にやってみたという話です。

 そのTCXOの周波数ですが,別に10MHzでなくてもいいんじゃないのと思われると思いますが,そうは問屋が卸しません。

 なにせtiny13Aです,最終的に1秒を作る事の出来る外部クロックは,限られます。ここでは手持ちの関係もあり,10MHzのTCXOを使う事にします。

 原理は簡単で,以前の32.768kHzの時計と全く同じです。ただ,CPUクロックを使いますので,プリスケーラを通せます。

 まず10MHzをプリスケーラで1/64します。そうすると156250Hzになるのですが,これをカウンタで数えます。一定の数になったら割り込みを発生させますが,割り込みの発生が整数回数でなければ,1秒を作れません。

 そこで,数える数を250とします。すると1秒間に625回の割り込みが発生します。割り込み処理で変数をインクリメントし,625になったら1秒です。あとは普通に作ればいいだけです。

 変数はint型になりますし,16ビットの加算になるのでコードも大きくなりますが,処理時間としてはこのくらいの内容なら,まあ大丈夫でしょう。

 LCDは,引き続きデジットの8桁14セグのものです。

 

続きを読む

AVRtiny13Aでつくるシリーズ2 LMT01を使った温度計

  • 2016/03/30 10:50
  • カテゴリー:make:

 秋月の少し前の新製品に,TIのLMT01という温度センサICが登場しました。面白そうだったのでそんなに安くはなかったのですが,買ってみました。

 デジタル式の温度センサなのに,わずか2端子で電源の供給から測定値の送信までやってしまうという,なんだかよく分からないセンサなのですが,使いやすさ向上のためにピン数を減らして行く過程で,いつのまにやらピン数を減らすことが目的にすり替わり,使い勝手はむしろ悪くなっている事に気が付かないという,賢い人がよく陥る罠を地で行っているICだと思います。

 まあ,本来の目的そっちのけで,意地になって違う道を追い続けるという姿勢は,私は嫌いではありません。

 このIC,測定値をパルスの数にして,消費電流の変化で出力します。考えましたね,消費電流の変化とは。

 元々の消費電流が極めて小さいので,抵抗を挟んで電源を供給しても動いてくれます。その抵抗の両端に発生する電圧をつかまえれば,パルスの数を数えることができますね。でも,数を数えるといっても,どこからどこまでの数を数えればいいのやら。

 もしここで,勢いでLMT01を買ってしまい,途方にくれている人がいらっしゃったら,データシートを横目で見つつ,読み進めて下さい。

 LMT01は気温を測る温度センサICです。出力はデジタルで,2ピンの小さなICの中に温度センサとA-Dコンバータ,そしてシリアルインターフェースが入っています。どんな風にやってるかは知りませんが,リニアリティの補正も行われているので,出てくるデジタルデータをそのまま使う事ができます。

 その上,測定温度範囲が広く-50度から150度(おいおいシリコンの破壊限界じゃないか),しかも精度が他に比べて良好で,-20度から90度までなら誤差はわずか±0.5度です。電圧出力のセンサICではないので,A-Dコンバータが必要ありませんし,A-D変換時の誤差を考えなくて済みます。

 デジタル出力のセンサですので,データは電圧でも電流でも抵抗でもなく,数字で出てきます。電源とデータ出力を兼ねるという変態っぷりを実現したのは,その特徴的なシリアル通信によってですが,これ,クロックが別にないだけではなく,スタートもエンドもわからないなんて,なんちゅう無茶をやるんだか。

 私は最初,温度に応じた頻度でパルスが出る程度の物だろうから,ローパスフィルタで平均化して電圧値に変換すればいいか,位に考えていました。けど,それだったら,デジタル値で出力されるというこのセンサのメリットを生かせません。別にサーミスタでもいいという話です。

 考え方としては,測定1回分のデータは,決まった時間の中で出てくるという事が基本になります。かつ,パルスの周期は温度に無関係で一定です。

 このICは25度くらいで1200くらいのパルスを送って来ますが,温度の変化でこれが500になっても2000になっても,1回分の時間はほぼ同じです。パルスの周期も同じですから,あいた時間はパルスが出てこない期間となります。

 なら,こうしましょう。とにかくパルスの数を数えます。パルス何周期分かの時間を待って,前後のパルスの数を比べてみましょう。もし変わっていればパルスが出続けている,つまりデータの転送中ということになりますから,まだ数え続けます。

 もし,前後で値が変わっていなければ,もうパルスは出ていないという事ですから,転送は終了ということになります。すなわちその値が,測定値です。

 僅かな電流の変化を,ほんの僅かな電圧変化に変換してマイコンに突っ込むわけですが,ここにはトランジスタによるIV変換を使う事が,データシートでは紹介されています。しかし,コンパレータを内蔵するマイコンなら,直結が可能です。幸い,tiny13Aにはコンパレータがあります。

 コンパレータで電圧変化を掴んで,変化があれば割り込みで変数をカウントし数を数えます。しばらく待ってから数を比較してやればいけそうです。

 そして,その値を摂氏に変換しないといけません。データシートでは,(パルスの数/16-50)になるということです。すごいですね,ちゃんとリニアリティの補正もすんでいます。

 ですから,パルス数が1234だったら,27.125度ということになるわけです。お,小数点が出てきましたね。面倒くさそうです。

 LCDは前回と同じデジットの8桁14セグのLCDを使います。

続きを読む

AVRtiny13Aでつくるシリーズ1 電圧計

  • 2016/03/29 07:05
  • カテゴリー:make:

 AVRtiny13Aを使った工作,第一弾は電圧計です。


20160329082048.jpg


 この工作のテーマですが,複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ,さまざまな謎や疑問を徹底的に究明するようなものではなく,たった50円で手に入る一番安いマイコン,AVRtiny13Aを使って,いろいろなものを作ってみようという物です。

 改めてAVRtiny13Aを眺めてみると,

・最大20MHzで動作,内蔵クロックを使う場合は最大9.6MHz
・1kバイトのプログラムROM
・64バイトのRAM
・64バイトのEEPROM
・10ビットA-Dコンバータ
・8ビットタイマ/カウンタ
・コンパレータ
・最大6本のGPIO
・ちゃんとCで書ける
・安い。秋月価格で1個50円

 てな8ピンのマイコンです。なにせ8ピンですからね,配線数が少なくて,作るのがとっても楽ちんなのですよ。ピン数が少ないマイコンってこんなに楽だとは思いませんでした。

 ワシの若い頃はな,CPUが40ピンもあってな,GPIOも外付けで40ピン,カウンタ/タイマも28ピン・・・そもそもメモリも32kByteで28ピンじゃからな・・・配線だけで頭がおかしくなりそうじゃった・・・

 ・・・その時作ったZ80ボードは捨てられずにまだとってあります。

 それでも,CPUもTTLで自作していた時代から考えると随分楽になったんだろうとは思いますが,細いリード線を切り,両端を剥いてはんだめっきをして,ハンダ付けをしていくという単純作業をしていると,まるで写経をしているかのように,心が澄み渡り,世の中の煩わしい物がすべて後ろに流れていくような感覚に陥ります。ええ,単純作業大好きですよ。

 本題に戻ると,こんな小さなマイコンでどこまで出来るかという話です。GPIOについても,1つはRESET端子と排他ですから,これを使うと安いライタでのプログラミング(ISP)も出来なくなります。

 それ以外でも,GPIOは必ずなにか他の機能と兼用になっています。でも,この数本というGPIOの数と1kバイトのプログラムというのは,やってみると案外バランスが良くて,特にCで書いた大雑把なプログラムだと,1kバイトくらいでちょうどGPIOを数本動かす程度で一杯になります。

 そうなると64バイトのRAMなんてのはユーザーが意識するRAMというより,スタックや変数といった,いわばコンパイラが使うスクラッチパッド,と言う感じです。これは悪い意味ではなく,むしろCでプログラムを書くことが出来る,ギリギリのマイコンに仕上がっているという話です。堂々とCで書きましょう。

 これが,ちょっと上位のtiny2313だったり,あるいはmegaシリーズだったりすると,ペリフェラルも豊富ですから,やりたいことは大体できます。でも,すべての機能を試し,いつでも使えるように鍛えておくには少々骨が折れます。使い切った感じがしないというのは,懐の深さでもありますが,底なし沼の深さでもあるのです。

 てことでtiny13Aです。

 手始めに10ビットのA-Dコンバータで遊んでみましょう。

 13Aの前世代品にはなかったものだそうで,こんなちっこいマイコンにマルチプレクサ付きの10bitA-Dコンバータなんかいるんかいなと思うのですが,なかなかどうして,これがあるといろいろつぶしが利きます。

 もちろん,単純に電圧を測ることにも使えますが,ボリュームを使ってデータのエントリーに使うことも出来ますし,抵抗分割でスイッチを8個くらいぶら下げる事もできます。GPIOが不足するtiny13Aでも,結構便利に使えそうです。

 まず,LCDはデジットで売っていたポケベル用と思われる200円の8桁14セグメントのもの,A-Dの基準電圧は内蔵の1.1Vで,1chだけ使います。

 14セグメントLCD,なかなかいいですよね。

20160329082049.jpg

続きを読む

見せてもらおうか高級炊飯器の実力というものを

  • 2016/03/28 14:29
  • カテゴリー:散財

 これまで少しずつ家電品を入れ替えてきましたが,最後に残った家電品が,炊飯器でした。

 いやはや,電気炊飯器は今や白物家電を代表する調理家電となって久しく,日本人のこだわりが詰まった日本人のために作られたものとしてきちんと成立している,数少ない製品です。作る側も買う側も「日本人」のことしか考えていない時代が長く,もはやそれは,作る側と買う側の真剣勝負といっていいかも知れません。

 近年,そのこだわりから生み出されるご飯があまりにおいしいため,特にアジア圏の人達からも高い評価を受けているそうですが,これもただただ美味しいだけではなく,日本人が日本人のためだけに,たかがご飯を炊くという行為のために本気を出しているという職人芸が,心に響くからではないかと思います。

 私もご飯は美味しく食べたいし,せっかくのお米ですから大事に使いたい,日本のエンジニアが日々試食を重ねて練り上げた炊飯の自動化の恩恵をぜひ私も享受したいと,そんな風に思っていたわけですが,しかしここ数年炊飯器を使う事はありませんでした。そう,鍋で炊くのです。

 まことに日本人らしいと思うのですが,目的のために邁進し,他の面倒な事には目を瞑るというバランスを欠いたこだわりが,美味しい代わりにいろいろなものを犠牲にしているように思えるのです。

 それは大きさだったり価格だったり消費電力だったりするのですが,私が結局鍋で炊くことになってしまった決定的な理由は,後片付けの面倒さでした。

 嫁さんが15年ほど前に購入した高級炊飯器を結婚当初は使っていたのですが,方だけがとても大変で,使わなくなってしまったのです。

 作る時は楽です。米を洗って水を入れて,スイッチを押すだけです。これで1時間後にはご飯が出来上がっています。しかし,食べた後の片付けが大変で,釜は大きく重く洗いにくいし,内蓋は小さな部品も隙間も大きく,デコボコしていて綺麗に洗えません。

 しかも小さな部品を一々取り外して洗う必要があり,なくしたらもうおしまいです。

 そんなある時,ふと鍋でご飯を炊いたところ,実に美味しく,作る時の手間もそれほど変わらず,しかも後片付けが普通の鍋を洗うくらいの手間しかかからずとても簡単ということがわかり,以後ずっと鍋です。

 30分の吸水をし,5分ほど強火で加熱し,沸騰したら軽くかき混ぜ,15分弱火で加熱。あとは15分ほど蒸らして完成です。これでもう十分,粒の立った美味しいご飯が炊けます。保温機能などいりません。1時間くらいなら美味しく食べられますし,その後は急速冷凍で保存しますので。

 唯一の問題は,3合までだったことです。これも飽くなき挑戦により,4合,4.5合,そしてとうとう5合と,混ぜ方や時間と火力の調整によって,十分対応可能になりました。もう炊飯器は買わない,そう宣言したのは,この技術の完成をみてです。

 一方で,10万円を超える高級炊飯器が売れています。炭から削り出した内釜やら,内釜の周囲に飛び出た耳が美味しいご飯の秘密だったとか,もうよく分からない事になっています。

 ダブル踊り炊きなんて,作る方も買う方もダブルで踊らされてるだけやん,と私は冷ややかでした。

 そして我が家では,私が完成させたた鍋でご飯を炊く技術が嫁さんにも伝授され,安定した美味しいご飯が食べられるようになったのでした。

 しかし,嫁さんはあまり口に出しませんが,どうも炊飯器が欲しいようです。鍋で炊けるようになったとはいえ,付きっ切りで番をしないといけませんし,保温もなければ予約もない。それに銘柄や精米時期,季節や気温によって水の量を調整せねばならず,炊きあがったご飯の味にも属人的なムラがあって,今ひとつ納得出来ない様子でした。

 私も鬼ではありません。そんなに言うなら(言ってませんが),炊飯器を買わないわけでもないわけではありません。

 ということで,1年くらい前から炊飯器をチェックしていました。メーカーと新製品の情報はもとより,新製品投入時期と新旧入れ替え時期,価格の変動,人気と評判,新製品で搭載されたものと搭載されなかったものを,気にするようにしていました。

 分かった事は,買うなら最上位機種だということです。最上位機種が下位機種よりも味で劣っていることは,まずないでしょう。それこそ採算度外視でおいしくなっていないといけないはずです。これ以上美味しいものはない,という状態でなければ,あのクソ面倒な後片付けの壁を乗り越えられません。

 しかし,最上位機種は10万円を超えます。そんなに投資をして大丈夫か?心配性の私は常に自らに問いかけます。

 いつなら安いのか・・・そう,今です。

 先日パナから新製品が登場しました。これをうけ,昨年のモデルは急激に値下がりし,最も安い物だと6万円くらいになっています。例年の価格変動からみると,だいたいこの時期に底値になるらしく,ここを過ぎて4月になると新製品に入れ替わって価格が戻るようです。

 そんなおり,ある家電店から,極秘連絡を受けました。

 「いいのがでてますぜ,だんな」

 それは,最上位機種SR-SPX105の,街の電気屋さん向けバージョンであるSR-WSX105です。炊飯機能は同等で,一部の機能を省き,「ごはんからおかゆ」モードを追加したものだそうです。

 なるほど,そういえばうちのプラズマテレビWoooも,日立ショップ向けのバージョンでした。最後に特価で出てくるのは,案外こういう商品なのかも知れません。

 で,このSR-WSX105,お値段は6万円です。スマホ連階機能がなくなり,音声ガイドがつきました。また前述のように「ごはんからおかゆ」モードが搭載され,内釜の水位ゲージが見やすくなっているそうです。

 スマホ連携など私には無関係です。炊飯器くらい,スタンドアロンで使いたいものです。音声ガイドもいりませんが,ご飯からおかゆは,実は決め手になった機能でした。食べたい時があるんですよ,おいしいおかゆを。

 なんでも,パナソニックの炊飯器は,買収した三洋の技術を取り込んでいるとのこと。Wおどり炊きというのは,パナと三洋それぞれが編み出したおどり炊きを併用するからだそうです。私は三洋が大好きでした。

 なになに?加圧と減圧を繰り返すことと,IHの電流を細かく切り替えて米を踊らせるのがWおどり炊きですか。

 220度に加熱した水蒸気でふっくら,保温もしっとりですか。

 内蓋にもIHを装備し,6面全面加熱。

 感心して笑ってしまったのは圧力解放の方式で,従来はここにソレノイドとボールを使っていたのですが,パナはこの機種でモーター駆動の圧力弁を開発して搭載したそうです。なにが笑ったって,このモータ-,ステッピングモーターなんですって。

 これにより減圧時間が短縮され,しかも減圧時のソレノイド動作音がなくなって,とても静かになったそうです。

 ・・・炊飯器ですよ,これ。

 色は赤にしました。白がなかったからですが,私はある時期から,手に入る色が自分に縁のある色と考えるようになり,自分の好き嫌いで色を選ぶことがなくなりました。自分では選ばない色が縁あって手元にくれば,それは楽しい事だと思いませんか?

 極秘の家電店ですのでカードは使えず,銀行振り込みで支払い,翌営業日には出荷されて,スムーズにパナソニックの高級炊飯器が,我が家にやってきました。

 ・・・さて,届いた炊飯器は,案外大きく,スクエアな感じです。内釜は軽く持ちやすく,これで大丈夫なんかいな,と少々不安です。

 ん?見慣れない金属製のカップが内釜の横にはまっています。

 嫁さんに「これなによ」と聞かれ,まともに答える気がなかった私は実に適当に「湯気を水にしてためるものだ」と言い切ったわけですが,5分後に「ここに水をいれるんだってさ」としっかり訂正されました。そうなのか!

 第一印象はこんな感じですが,取説を見て,私は失敗フラグがスパッと立った音を聞きました。

 洗い物が相変わらず面倒くさいのです。炊飯器の中だけではなく,外側の部品も外して分解し毎回洗う必要がありますし,内蓋もデコボコして隙間だらけで洗いにくいです。

 その上で悲しかったのが,食洗機禁止です。しゃもじでさえも禁止ですって。

 あのな,君とこは食洗機も作ってるんとちゃうのか?自分とこの製品を「使うな」て,よーそんな話が通るもんやな。

 最上位機種で,しかも最新の炊飯器で,食洗機禁止なんて・・・私の期待は裏切られました。

 ただ,唯一いいなと思ったのは,内釜で米をといでもいいと書いてあったことです。昔は禁止でしたからね。

 しかも,内釜だけは3年保証。よほどコーディングに自信があるようです。ちなみに先日発表になった後継機種は5年保証になったそうです。

 炊飯時間は,銀シャリモードで約50分。吸水時間も含んでいますので,鍋で炊くのとあまり変わりません。

 しかしまあ,文句ばっかり言っていても仕方がありません。

 何はともあれ,ご飯を炊いてみることにします。お米は,唯一4歳の娘が自らの手で食べようとする福井県産のコシヒカリです。

 失敗するといやなので,とりあえず3合です。取説を見ながら銀シャリモードで,銘柄指定をコシヒカリにします。硬さを選べるそうですが,まずは「ふつう」で炊いてみます。

 最初ですので部品を外し洗って,また組み立てます。なんか拳銃を分解して組み立てる作業をしている気がしてきましたよ。

 釜にお米を入れてざぶざぶ研ぎます。さっと釜の外側の水を拭いて蓋を閉めて,炊飯スイッチをONします。

 吸水時間込みで48分と出ていますが,想像していたよりもずっと早くに沸騰し,蒸気が出てきました。Wおどり炊きは蒸気を抜いて加圧と減圧を繰り返して沸点を短時間で変えることで,お米をかき回すわけですが,減圧の際に大量の蒸気が出ます。

 出る出るとは聞いてましたが,なんと天井に届くほどの勢いです。思わず「おおっ」と声を出してしまいました。

 このあと数回,1m程の高さの蒸気が噴き出し,静かになりました。そして炊きあがりです。

 炊きあがったらかき混ぜておきます。これが美味しいご飯の秘訣です。

 さて,食べてみます。

 ・・・鍋の勝ち。

 米粒が立っていませんし,色がくすんでいる(これは圧力をかけるので避けられません),米の周りにネバネバした物が過剰にくっついていて気持ち悪いです。

 甘みもあるし,もちもちしていますが,ちょっと甘すぎるような気がしますし,もう少し水気が飛んでいる方が美味しいように思います。

 決してまずいわけではないし,十分美味しいですが,びっくりするほど美味しいとか,皆が言うように絶賛という程ではなく,公平に見て鍋の方が美味しいと思いました。

 食べ終わったあとの片付けのモチベーションが低かったことは言うまでもありません。

 おーっと,炊飯器側から勝負のやり直しが申し入れられました。

 なになに,3合では炊飯器は不利だ,5合で勝負したい?

 ということで,5合で勝負です。おーっと,もう炊けました。

 ・・・炊飯器の勝ち。

 見た目も艶やかで,硬さも適度で,水分もちょうどよくネバネバも気になりません。かみ応えもあるし,甘みも上品です。初回に感じたおかしな臭いもなくて,とてもおいしいです。

 鍋は3合がベストで,5合炊くと味が落ちることは分かっていました。ですからこの結果は想像していたことではありますが,炊飯器で5合炊くとこんなにおいしいとは思わなかったです。やはり炊飯器は少量炊くのは苦手なようです。

 3合と5合で,準備も片付けも変わりません。なら,これからは5合炊くことにしましょう。

 ところで後片付けですが,3度ほど洗ってみたところ,案外慣れてしまう物だと感じました。蒸気からうまみ成分を回収する箱のようなものが不衛生で,綺麗に洗えないしイライラさせられますが,内蓋もそんなにデコボコしておらず,水の拭き取りも楽ちんでした。


 てなわけで,私個人の感想としては,

・鍋は3合までならいい勝負が出来る
・5合になると炊飯器にはかなわない
・片付けの手間は慣れてくる
・量や季節に関係なく50分で食べられる
・誰がやっても失敗しない,味にさえムラがない
・でもこれに10万円を越えるお金は出せないなあ

 という感じです。耐久性とか,お米の銘柄による違いとか,炊き込みご飯や赤飯などの仕上がりや,密かに楽しみにしているおかゆなど,これから確かめていく必要があるとは思います。

 特に5合炊くときの炊きあがりには満足でしたが,一方で3合以下を炊くことはしないと思います。3合以下でも5合並みにおいしく炊けるようになるには,まだまだ技術開発が必要だということなのでしょうね。

 さて,これで何年,ご飯を炊くことになりますか。頑張ってもらいましょう。

ページ移動

  • ページ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4

ユーティリティ

2016年03月

- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed