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2022年08月の記事は以下のとおりです。

DiskII インターフェースカードの修理

 さて,前回のDiskIIの話に入る前に,実は私はもう1つ宿題を抱えていました。

 おそらく飛鳥に付属してきたものと思うのですが,日本製のコンパチのインターフェースカードがある時を境に動かなくなってしまったのを,なんとかしないとと思っていました。

 私は純正のインターフェースカードも持っているので,ずっとこっちで使っていましたが,いつ壊れるかわかりませんし,ドライブが増えたらこのインターフェースカードも使わないといけなくなりますので,動くようにしておけるならその方が好都合です。

 コネクタの接触不良で動かなくなったように思っていたのですぐに修理出来ると思って居たのですが,何度やってもシークも起こらなければ,リードも出来ていません。

 こういう場合はPROMが怪しいです。このインターフェースからPROMの6番(P6A)をはずし,純正のインターフェースのP6Aと交換してみたら,同じ現象が発生しました。P6Aについて回っているようです。

 P6Aって,MMIの型名で言うと6309というTTLのヒューズROMなんですよ。こんなもの,手に入るはずありません。書き込み済みの6309を喜んで買って,書けないと嘆くものが後を絶たず,新品を手に入れても書き込む手段がなくて涙を流すという悲劇が,今でも世界中で起きています。

 幸い,DiskIIのインターフェースカードは数がたくさんあるので,PROMが壊れても安く買い直すことが出来るわけですが,私はこれをなんとか修理したいと思うようになりました。

 PROMですからね,ROMならいいはず。容量は256バイトですので今どきのROMに比べればゴミみたいなもんなんですが,たった1つEPROMが6309にかなわないのが,アクセスタイムです。

 通常のEPROMは,アドレスの確定からデータが出てくるまで150nsとか200nsかかります。しかし6309はたった70nsです。CSからだと35nsですよ。めちゃめちゃ速い!さすがバイポーラ!

 しかし部品箱を漁っていると,これをしのぐものが見つかりました。WinbondのW27C512です。これ,私は512MbitのEPROMと勘違いして注文し,届いたものに紫外線を当てる窓がないプラスチックDIPであることに絶望し,ワンタイムを買ったと後悔し放置していたものです。

 よく見ると中古品なので,もしやと思って調べると,27C512互換のEEPROMでした。で,このW27C512,なんとアクセスタイムが45nsと爆速なのです。これなら十分に6309の代わりが務まります。

 さっとブレッドボードで配線をして確かめて見ると,なんとまあ一発で動くじゃありませんか。これはもう,突き進むしかありません。

 しかし,こんな大容量品を使うのももったいない。そこで普通のEPROMを使うことを考えたのですが,やはりアクセスタイムが問題です。

 そこで,回路図と解析をしたWEBサイトを見ていたのですが,P6Aはステートマシンとして動作していて,そのアクセスのサイクルは500nsとわかりました。

 非同期で流れてくる信号を2MHzのクロックで叩いているので,出来れば10倍,悪くとも5倍くらいの余裕が欲しいところです。ならアクセスタイムは100nsですね。

 悪いことに100nsの手持ちがなく,見つかったのは日立製の27C256で120nsのものでした。

 まあなんとかなるだろうと早速作ったのが以下の写真です。

20220817101030.JPG

 これでちゃんと動いています。いやー,PROMの不良まで手持ちの部品で対応したのですから,もうAppleIIもなんとか維持出来るでしょう。(いや,キーボードのエンコーダが壊れたらアウトか)

 手をかけて修理したものが可愛いのは親心かも知れません。リスクはありながらも,私の常用インターフェースに昇格したコンパチカードは,DiskIIと飛鳥を今日も動かしています。

 

DiskIIを修理

20220817101032.JPG

 AppleIIの純正フロッピーディスクは,言うまでもなくDiskIIです。

 このDiskII,純正のフロッピーディスクという役割だけではなく,歴史的意味合いも持つ独特の存在意義があります。

 それは通常大規模な回路で制御されるフロッピーディスクをウォズニアックが知恵と工夫でとても簡単な回路でAppleIIに用意したとか,シュガート社の世界初の5インチドライブであるSA400の不良品を安く調達し内部の回路を独自のものに置き換えて出荷したとか,その仕組みはMac時代にも受け継がれていてSuperWoz Integrated Machine略してSWIMと呼ばれているとか,いくつかのエピソードと一緒に語られる,とても重要な製品です。

 ウォズニアック自身も,DiskIIの開発については生涯で一番素晴らしいものだったと語るほどのもので,実際その回路のシンプルさは,様々な切り口で今なお絶賛の対象です。

 本来なら,フルハイトの旧式ドライブを使ったDiskIIはさっさと日本製の高性能で安価なハーフハイトのドライブを使ったものに置き換わってもいいはずなのですが,そうならないほどの完成度を持ち続けていたこと,精度の低さをついたプロテクトのために,高精度な日本製ドライブだとかえってプロテクトに引っかかって起動しなくなってしまったりするというのも,よく耳にする話でしょう。

 私はチノンのドライブを使った「飛鳥」というコンパチドライブを1台だけ持っていますが,困った事がないのはもちろん,その安定性や信頼性には絶大なものを置いていますから,DiskIIなど別に欲しいと思っていなかったのです。

 ですが,やっぱり2ドライブあると便利だということで,もう1台のドライブを探し始めたところ,ジャンク品を7000円ほどで見つけて即買いしてしまいました。このくらいの程度のドライブなら,10年ほどの前のアキバなら1000円ほどで転がっていたものなのですが・・・

 このDiskII,まずケーブルが付属していません。キズも多くて程度も良くなさそうですが,基板は綺麗ですし,メカ的な改造や修理を行った形跡もありませんので、その点では安心出来そうです。

 この手のジャンクの場合,メカの不良,例えばフレームの歪みであるとか,モーターの不良やベルトの破損が深刻ですし,ヘッドの断線などがあったらもうアウトです。

 そういう致命傷がない事を祈りつつ,手元に届いたDiskIIを見て見ると,とりあえずどうにかなりそうな雰囲気です。(のちのこれが誤りである事を思い知るのですが)

 偶然持っていた20芯のフラットケーブルと,これも偶然持っていた20ピンの圧着コネクタを使ってさっさとケーブルを自作します。モーターに12Vをかけて普通に回ることを確認し,Appleのインターフェースに繋ぎます。

 おお,とりあえずDOSが起動しました。致命傷はなさそう,というか完動品?ラッキー!

 んなわけありません。お約束のSpeedTestを行うと,Fastで振り切った値が出てきます。調整しようと半固定抵抗を回してみますが,全然調整出来ません。蛍光灯を取りだしてきてストロボで速度調整を行ったところ,リードも出来なくなってしまいました。

 そして,フォーマットがコケることが多いです。ライトも上手くいったりいかなかったりでとにかく不安定です。調整が狂っているのかも知れないと,恐る恐るサービスマニュアルの通りの波形が出るかどうかを確認して,調整を試みます。

 しかし,波形はきちんと出てきますし,調整もほとんど必要がありません。でもリードもライトも不安定ですし,安定するような速度は規定の回転数(300rpm)よりもずっと遅い速度でないといけなかったりします。そもそもSpeedTestはでたらめな値を返してきます。

 3日ほど悩んで,波形をじっくり確認したのですが,結局問題はわからず。もうダメかもしれないなあと思って改めて回路図を見ていると,どうも波形はリードを行っている時のもののようで,ライトの時の動作を確認出来るようなものではないようなのです。

 とりあえずコンデンサや抵抗を確認しますがこれらも問題はありません。疲れ果て風呂で頭を冷やしているときに閃いたのは,ライトの回路の不良なんじゃないかということです。

 ライトの回路は,CA3146というICが担います。ライト用のICといいつつ,このCA3146はトランジスタアレイで,1つのペアトランジスタと,3つのシングルトランジスタの,合計5個のNPNトランジスタを持つものです。

 これが壊れることはそんなにないそうなのですが,定番の故障である74LS125も壊れておらず,リード時の波形からリードアンプであるMC3740は無事なようなので,いよいよこれじゃないかと疑ってみたのです。

 ソケットからCA3146を取り外し,ブレッドボードに差し込みます。そしてトランジスタチェッカーを繋いで確認すると,なんとまあ,生きていたのは5素子中1素子だけ,あとは壊れていました。

 ICの破損とわかってホッとしたのも束の間,CA3146等という変なICは手持ちがないばかりか,入手不可能なんじゃないかと心配になりました。調べてみると案の定,どこにも在庫はなさそうです。DiskIIをもう1つ買って取り外すしかないのか・・・

 CA3146というICは,普通の小信号用NPNトランジスタを5つ持つICです。特徴と言えば300MHzあたりまでfTが伸びていることくらいで,高耐圧と言いつつ50V程度ですので2SC1815より低いくらいです。

 fTだって,条件によっては2SC1815でも十分対応可能ですし,DiskIIが300MHzの帯域を使うような使い方をしているかどうかが問題でしょう。

 DiskIIの回路を見ていて1つだけ注意するべきところがあるとすれば,エミッタを共通で持つデュアルトランジスタで,このペアは特性が揃っているということです。同じダイにあるので温度特性も良好でしょう。ここさえ押さえておけばなんとかなりそうです。

 なら,CA3146の互換品を自作することは可能じゃないか?

 手持ちの部品を調べると,まずシングルのトランジスタは2SC2712が使えそうです。この2SC2712はよく知られているように2SC1815の面実装版です。さすがに300MHzは無理ですが,100MHzくらいなら余裕です。hFEのランクはYとします。

 ペアトランジスタについては,やはり手持ちで2SC4207というのがあったので,これを使うことにしました。特性をみていると2SC2712が2つ入っている感じなので,今回の用途には好都合でしょう。

 さすがに面実装品を使って作りますので,14ピンのヘッダピンを出した万能基板上に並べて配線すれば,オリジナルとほぼ同じ大きさの互換品が出来ました。

20220817101031.JPG 

どうですか?なかなか小綺麗にまとまっているでしょう?

 トランジスタチェッカーで誤配線がない事を調べて,ドキドキしながらDiskIIに取り付けて電源を入れ,SpeedTestを起動します。

 すると,ちゃんと回転数が表示されるじゃありませんか!回転数調整用の半固定抵抗を回せばちゃんと回転数が変わって表示され,規定の回転数にあわせ込むことも,嘘のように出来ました。どうも上手く行っているみたいです。

 ライトのテストを行っても問題なし。フォーマットも問題なし。もうバッチリ動いています。そうか,やっぱり原因はCA3146だったのか・・・

 CA3146は世界的に入手が難しくなっているらしく,その需要はDiskIIの修理がほとんどでしょう。2022年の日本で,まさかCA3146の互換品が手作りされているなんて,誰が思うでしょうね。

 ということで,DiskIIは動き始めました。大きい,うるさい,使い勝手が今ひとつと,ドライブの価値だけで語れば飛鳥の方が圧倒的に上だと思います。

 しかし,DiskIIには純正品という価値以上に,歴史的な意味合いと,本体と一緒に必ず写真に写っている憧れなのです。

 2ドライブになったことの便利さと,精度の低さがかえってエラーを許容してしまうこと,そしてあのたたずまいと,DiskIIを常用出来ることにうれしさは,想像以上のものがありました。CA3146が壊れていることを突き止め,互換品を手作りし,動くようになったことも達成感があります。

 ケーブルのシールドが不完全で不安定な動きを見せることもありましたが,シールドを銅箔テープで行い,上手く取り回しを行うことでエラーも激減しています。メカ的なトラブルがなかったことは本当に幸いでした。

 パネルの傷をタッチアップしようとして,ペイントマーカーのペイントが本体に飛び跳ねてしまい,アルコールで拭けばいいだろうと思っていたら,なんと染み込んでしまって落ちなくなってしまったというミスもやらかしましたが,とにかくDiskIIが動くようになって,良かったなあと思っています。

 

AppleIIの電源をまた修理

 電源ユニットの故障でまたも稼働できなくなったうちのAppleII J-Plus。修理屋メンテナンスから解放されてようやく純粋に使うことを楽しめると期待していた矢先に,まるで誰かがわざとやってるんじゃないかと思うほどの絶妙なタイミングで壊れたAppleIIを,結局また修理する旅に出る私・・・

 今回は,電源ランプが消えているので,完全に電源です。これまでにヒューズを交換してもすぐに勢いよく切れることが分かっているので,どこかがショートしていることはほぼ間違いないでしょう。

 スイッチング電源の場合,こういうケースでは大体ダイオードの破損によるショートです。電源ユニットの回路図を見ていると,あちこちにダイオードがありますが,怪しいのは100Vを整流する高圧のブリッジダイオードです。

 基板にマウントされた状態だとトランスや他の部品によってショートしているように見えるので,ちゃんと確かめるには基板から取り外す必要があるのですが,問題のダイオードであるKBP10を取り外してテスターで確かめると,やはり交流入力とマイナス出力の間が導通してしまってました。

 ここがショートしていると,100Vが短絡してしまいます。ヒューズのおかげで助かりました・・・

 このダイオード以外にも壊れている部品はあるかも知れませんが,とりあえずこのダイオードを先に交換してしまいたいところです。調べてみるとKBP10というブリッジダイオードは1000V2Aのブリッジらしく,耐圧が高い事以外は普通のダイオードのようです。

 しかし,1000Vの耐圧のダイオードなんぞ,私は手持ちで持っていません。真空管アンプかいな?ああ,あれはブリッジなんか使わんと単品で使うんですよ,普通。全波整流の場合でも,センタータップのトランスを使って2本のダイオードで済ませるんですわ。なんでかって?うーん,きっと整流管時代の名残とちゃうかなぁ。
 
 確か1000VならUF4007があるはず,これを4本使って応急修理をするか!とおもってみたものの,UF4007は1A級ですのでアウト。2NU41という宝物をスイッチング電源に使うのももったいないので,ここは素直に,みんな大好き秋月電子にお願いしましょう。

 なんと,1000Vのブリッジでも安いじゃないですか。送料を考えても全然お得です。秋葉原に出向くのも面倒なので通販でお願いしたのですが,ここで私は大きなミスをしました。

 世の中,すっかり夏休みです。私が休みなのは,他の人も休みだからです。

 しかし,私はコロナの事もあり,どこにも出かける予定はなく,夏休みを指折り数えて待ちわびるような清い心の持ち主でもありません。そう,すっかり夏休みを忘れていたのです。

 いつもの気軽な気持ちで注文を先延ばしにしていたら,なんと夏休み前の駆け込みで混雑しており,最悪の場合夏休み明けになるという情報を目にして,私は「どんだけみんな秋月好きやねん」とつぶやいてしまいました。

 数日してどうにか間に合い,KBP10をさらに余裕のあるブリッジダイオードに交換してとりあえず電源をONします。ヒューズは飛ばず,電圧も出ているようです。心配なので波形も見てみますが,綺麗とは言わないまでも,コンピュータの電源としては普通の波形です。

 これで負荷をかけるとどうなるかわかりませんが,いったん組み上げて本体に戻してみます。電源ON,おおー,ちゃんと動き出しました。よかった。

 思うに,拡張カードを級に増やしたことで,電源に負荷が急にかかるようになってしまったのが,故障のきっかけだったんじゃないかと思います。40年以上も経過していれば,いつ壊れてもおかしくありませんが,そういえば前回のコンデンサの破裂の時にも書いた気がします。

 ですが,電圧は低め。これでは動作が不安定になることもあるでしょう。実際カラーキラーがきかなくなってしまうことも頻発していますし,心なしかフロッピーディスクドライブの動作も安定しない感じもします。

 Z80カードのZ80を触って見ると,かなり熱いです。NMOSですので熱いのはわかっていましたが,Z80を動かしていなくてもこれだけ熱いというのは予想外でした。

 熱いという事はそれだけ電力を消費しているということです。最大200mAということですので,電力では1Wですか・・・そりゃ熱いはずです。

 そこでCMOSに交換することにしました。ちょうど手持ちにuPD70008の6MHz版がありました。CMOSですからクロックによって電力が違いますが,4MHzで動かした時の最大値は20mAですので,1/10になっています。

 おかげでフロッピーディスクの動作も安定しましたし,カラーキラーもかかるようになりました。使っていない時に1Wも電気を食わせるというのは本当にもったいないことです。

 さて,これで数時間動かしていますが問題なさそうです。夏のAppleII大作戦はこれで終了と言いたいところですが,実はもう1つ増えてしまいました。これはまだどんな感じかよく分からないのですが,そんな簡単な話ではなく,どっぷりはまってしまいそうな案件です。

 続きは後日に。


AppleIIでCP/M

 AppleIIネタ,次はなかなか面白いですよ,Z80カードの話です。

 AppleIIのCPUは6502です。一方で当時メジャーだったOSは,なんといってもCP/M80です。

 インテルの8080をターゲットにした,世界初のマイコン用OS,それがCP/Mです。CP/Mは特定の機種をターゲットにはせず,CPUが一致していれば移植は簡単で,むしろ移植することが準備として前提になっているといってもいいでしょう。

 多くのアプリケーションがCP/Mで動作するので,CP/Mが動けばもう8080の世界は制覇したも同然です。そしてそのアプリケーションに,BASICやCOBOL,FORTRANやCなどの開発言語系があります。

 この言語系を食い扶持としていたのが,かのマイクロソフトです。

 マイクロソフトの創業者のひとり,Paul Allenは,当時最も先進的でもっとも売れていたパーソナルコンピュータであるAppleIIで,自社の製品を動かせないかと考え,Z80を搭載したカードを作ることを考えつきました。

 AppleIIのスロットは,DMAを使って6502を殺してバスを乗っ取ることができます。つまりカード側にバスマスタを持たせる事が出来るわけで,これまでにZ80や6809などのCPUがAppleII動いてきました。

 Paul Allenはこのカードをマイクロソフトで製品化しようとしますが,周囲の反対に遭います。しかし創業者の強みでしょうか,反対を押し切ってマイクロソフトでは異例のハードウェアが発売されて,これが予想に反して大ヒット。自社のCP/M用のソフトも売れたとの話です。

 そうなるとこのカードを自作する人もでてきますし,クローンを作って売る悪い奴らもで出てきます。こうして,マイクロソフトの「Soft Card Z-80」は,Z80カードの業界標準となったのでした。

 私が先日手に入れたカードも,クローンでした。

 いやね,ADTProも動く目処が立ってきましたし,AppleIIでCP/Mを動かして見たいじゃないですか。それで,8000円近くもしたんですが,つい買ってしまったのです。

 海外では,AppleIIでCP/Mというのは当たり前の話のようです。

 我々日本人にとってCP/Mといえば,PC-8801やX1なわけで,Z80に64KBのRAMにフロッピーディスクが当たり前に使える8ビットマシンが一番身近な存在だったから,CP/Mはそういう環境で動いていました。

 しかし,海外に目をやると,AppleIIが一番普及したマシンですし,他にはというとCommodore64くらいでしょう。TRS-80もありますしたが,フロッピーディスクが普及していたとはいえませんし,その頃にはIBM-PCが市場を席巻していました。

 つまり,8080やZ80で64kBのRAMとフロッピーディスクを持つマシンは,珍しい物だったという事です。

 だからAppleIIでCP/Mを動かすという無駄の多い行為がメジャーになったんです。これは,PC-8801やX1を使っていた私にはちょっと感覚的に知解できないものでした。

 ということで,手元に届いたZ80カードは汚く,見るからに動きそうにありません。実際私のAppleに差し込んでも動きませんでした。電源は入りますが,CP/Mを読み込ませると暴走して画面が変な文字だらけになります。

 さあて,修理の始まりです。

 とりあえず電源が入ってディスクの読み込みが始まったという事は,電源のショートはないということです。つまり電源に入っているコンデンサにショートはないということですので,予防的交換はあるかも知れませんが,起動しない原因としての交換はありません。

 そうなると次は基板の不良やICソケットの接触不良です。これは目視が主になりますが,ぱっとみたところ大丈夫そうです。

 次はTTLの破損です。先日購入したROMライタのTL866IIはロジックICのテスト機能を持っているで,早速使ってみましょう。ソケットから外したTTLをチェックしますが,どれもパス。もちろん,このテストは温度も時間も関係なく,一発勝負でOK/NGを判定するものですから,使っている内に徐々に動かなくなる,一度電源を切るとしばらく直るという良くある故障までは判断出来ませんが,少なくとも今壊れているものがないというのは,心強いです。

 あとは端子が酸化して真っ黒になったLS373やLS20の足を磨いて接触不良を解決しようとしましたが,あろうことか参加したピンは脆くなっているので,LS20の足を2本折ってしまいました。

 一応,LS373とLS20を手持ちの良品を交換した上で,再度動かして見ますがやはり変わらず起動しません。電源に入っている電界コンデンサの容量抜けで電源の電圧変動が大きいとかも考えたので,大きめのコンデンサに交換しますがそれもダメ。

 うーん,あとは基板か・・・と思ったところで,ダメモトでZ80を交換してみました。だいたい,こういう大物をまず最初に疑って交換するのは素人の証拠です。こういうものは滅多に壊れないし,動かない時はだいたい他の部品が自分の配線ミスです。

 ということで,面白半分に,ザイログ謹製のZ80Aを取り外し,見慣れたシャープのLH0080Aに交換してみます。

 するとどうでしょう,動いちゃいました。

 CP/Mが読み込まれ,見事に56K CP/Mが動いています。MBASICと打てばMicrosoftBASICが起動します。こりゃー面白い。

 接触不良かもなと,もとのZ80に交換しますが,先程と同じように起動せず。シャープのZ80に変えると動きますので,残念ですがZ80の故障,ということになりそうです。

 いやはや,まさかZ80が壊れるなんて思いませんでした。

 とはいうものの,実はZ80が壊れたケースは私は2度目です。最初はゲーム基板で,カプコンの1942の故障品を安く買ってきたとき,故障の原因がとうとうわからず,やけくそでZ80を交換したらサクッと動いてしまったことがありました。

 このとき,Z80も壊れるんだなあと感心したのですが,今回もまたZ80の破損が原因でした。確かにCPUだろうがメモリだろうがゲートだろうが,内部のトランジスタが1つ壊れてしまえば動かなくなるわけですから,Z80も壊れて当然です。でも,人生で2度もZ80を交換する経験をするというのは,ちょっと珍しいかもと思っています。

 ともあれ,無事にZ80カードが動作し,CP/Mが楽しめそうな感じになりました。ただ,ディスクのフォーマットは手持ちのCP/Mのものとは違いますし,シリアルで転送するのが可能かどうかもわかりません。ワードマスターもBDS-Cも,MS-FORTRANもMACRO-80も,Appleで動くと面白いんですけど・・・

 ということで,私は安心し,明日からの土日はじっくりAppleIIで遊ぼうと,カードを全部差し込んでフタを閉じて,久々にほっとしていました。

 そうだ,なにか動かしてみようと,手元にあったMidnightMagicをロードするも,なぜか起動せず。あれ,おかしいなとMysteryHouseを起動するも,エラーで止まります。

 そのうち画面のカラーキラーが動作しなくなり,変な色がつき始めました。

 そして,全く動かなくなってしまったのです。キーボードにある電源ランプは消えてしまっています。ああ,電源です。また電源ユニットが壊れたようです。

 今度は異臭も異音もしませんでしたから,危険なことはないでしょう。電源ユニットから電圧が全く出ていないことをテスターで確認してから電源ユニットを分解してみると,ヒューズが飛んでいました。

 一時的な高負荷かも知れないなとヒューズを交換しますが,電源を入れるとパッと青い光を出してヒューズがまた飛びました。原因は他にありそうです。

 一難去ってまた一難。ようやく平和な毎日がやってくると思ったのに,なってこったい。

 続く。

小文字を持ったAppleII Plus

  • 2022/08/10 09:42

 ADTProが動き出したわけですが,実はこれまでに気が付いた事がありました。

 それは,ProDOSの起動画面が,おかしな数字になっていることです。

 実はこれ,CPUをW65C02にしてから変わったことで,それまでは全部大文字で表示されていたのです。

 ADTProはProDOS8の2.4.2で起動します。いつのバージョンからか忘れましたが,ProDOS8はCPUが6502か65C02かを判別し,65C02なら拡張された命令を使うようになっています。

 で,65C02と判定されたなら,そのマシンは自動的にAppleIIeかAppleIIcなので,小文字のキャラクターが搭載されているわけで,起動画面の小文字が使われるようになっているのです。

 私のAppleIIPlusは過去にも書いたとおりW65C02に換装してありますので,ProDOS8は小文字を出そうと頑張るわけですね。でも,なんで数字になるの?

 そう,もともとAppleIIは大文字しかキャラクタを持っていませんでした。汎用のキャラクタージェネレータをそのまま使った関係で,小文字は使えなかったそうです。

 ですが,AppleIIのRev7以降は,キャラクタージェネレータに倍の容量を持つ2316/2716が使えるように回路が修正された関係で,実は小文字が使えるようになっていました。しかし互換性の関係から,そのエリアには数字が繰り返し書き込まれているということだったのです。

 なるほど,こういうことなら当時小文字を出すROMを売っていた業者がいたに違いない,と思って調べてみると,やはりありました。LCA-2というROMです。Rev7以前のAppleIIにはLCA-1という基板セットを装着することになるのですが,Rev7以降はROMだけでOKです。

 よし,これを2764に焼いて(私は2716を持っていない)交換してみようと,早速変換基板も作って試したのですが,画面全体にゴミが出てしまい,所々表示される文字もおかしいのです。

 いやー,これは参った。真面目に考えないといかんなあと,回路図を広げたりキャラクターをすべて表示させたりして規則性を探しました。

 すると分かってきました。

 うちのAppleIIPlusは,J-Plusであったことを忘れていました。

 J-Plusについては,情報があるようでありません。カタカナが出るとはいいながら,どうやったら出るかを説明したサイトは見当たりませんし,キーボードにカタカナが刻印されているとは書かれていても,どうやったらカタカナが入力出来るか,説明したサイトも見当たりません。

 それ以上に,Plusとの違いが正確に説明されたものもないのです。

 F8のROM,AUTOSTARTがJ-Plus専用のROMに変わっており,同時にVideoROMというキャラクタージェネレータもカタカナを含むものに交換されているのですが,せいぜいこの2箇所くらいです。少々気の利いた本には「他にも改造箇所があり動かないソフトもあったらしいが,自分はそういう経験をしていない」とありましたが,それでもその程度です。

 しかし,大変重要な改造がJ-Pulsにはなされていたのです。

 J-Plusは,ゲームポートのAN2を使ってカタカナとASCIIを切り替える仕様となっていました。そのための仕組みがF8ROMに書かれています。AN2がHighだとASCII,Lowだとカタカナになります。

 なので,ゲームポートのAN2とVideoROMのA10が繋がっています。また,面倒なので正確なことは解析していませんが,実はA9も改造されて配線が変更になっています。この結果,本来はスペースを全画面に表示するはずが,小文字の先頭に存在するバッククォートが全画面に出てくるようになっていたのです。

 最初はJ-PulsとPlusを両立出来ないかと思案しましたが,小文字を使う以上は無理と判断して,J-PulsをPlusに戻すことにしました。3箇所のジャンパをはずし,切断された9と10と11のタイを繋ぎ直します。

 これで先程の小文字がきちんと表示されるようになりました。

 ちなみに,AppleIIやPlusでは,一番下のドットが空白になっていて,次の行との隙間を作ります。しかし,AppleIIeでは一番上のドットが空白になっているので,実はAppleIIeでは,全体に1ドット上に表示されています。

 これ,Plusまでは小文字を持たなかったので汎用のキャラクタージェネレータと同じで済んだのですが,AppleIIeで小文字を持つ際に,jやgやyなどの,下にはみ出る文字を扱うために,空白を一番上に持ってきたようです。

 先程のLCA-2はこれを嫌ってか,むりやり空白を一番下に置いた上で,小文字をデザインしています。従って小文字を構成するピクセルが足りず,その品質は低いです。やっぱりAppleIIeの文字は見やすいです。

 ということで,私のAppleIIはPlusと同じ回路となり,キャラクタはIIeと同じ物をつ持つに至りました。ProDOSもちゃんと起動しますし,ADTProもファイル名を小文字で表示表示してくれるようになりました。(ただし反転は出てきません。それは仕方がありません。)

 ちなみに,F8のROMとVideoROMをJ-Plusに変更し,CTRL+Tを押すと,ちゃんとカタカナが入力出来ますよ。ただし,AN2がA10と繋がっていませんので,このエリアにある数字との共存はできません。まあ,聞くところによるとJ-Plusの専用ソフトはほとんどないということですし,実際私も1つも持っていません。ケースのロゴもPlusになっていますし,東レ時代のJ-Plusなのでちょっとさみしいですが,実用品として考えればPlusに戻すのもありでしょう。

 まだまだ続きます。

 

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