AF-S Micro Nikkor60mm/F2.8Gを買ってレンズラインナップ完成
- 2017/02/28 10:00
- カテゴリー:散財
久々にレンズを買いました。といっても,以前からずっと導入計画に入っていた,AF-S Micro Nikkor60mm/F2.8Gです。
3年ほど前は6万円を切る値段が当たり前だったのですが,最近は7万円前後で売られることが多くなりました。元々の値段を考えると1万円高くなるというのは,結構厳しいものがあります。
ニコンに限らずどこでもそうですが,ジワジワと下がった価格は,新型が出ると旧型の登場時よりも高い値段になりがちです。原材料費が上がり,古いレンズでさえも値上がりする傾向があるここ数年では,むしろ当たり前の事だと思うのですが,キットレンズから最初に買い足すレンズとして,このMicro Nikkorが存在していることを考えると,出来れば6万円という魅力的な価格を維持してもらいたかったなあという気がします。
なんでも,カメラ関連の市場が急速にしぼんでいるそうです。ワールドワイドで,レンズ交換式のデジカメ(一眼レフやミラーレス)の出荷台数は2012年がピークで2100万台ですが,2013年には1680万台,2014年には1350万台,2015年には1300万台,そして2016年には1160万台となっています。2017年は1120万台という見通しがCIPAから出ていますが,この数字を改めて調べてみて,大変なことが起きているんだなあと驚きました。
2012年と言えばつい最近のことで,たしかに一眼レフがとても元気だったことを記憶しているわけですが,そこから5年で,なんと1000万台も市場が小さくなったというんですよ。こんな短期間で,これだけの数売れなくなってしまうなんて,なんと恐ろしいことだと思います。
一方で平均単価は上がっているそうで,確かに2012年にD800が登場した時,その安さにみんな驚いて,たちまち品薄になったことを覚えているわけですが,技術革新による価格の低下とは別の力学によって,D800クラスのカメラがいきなり26万円ちょっとで販売されるようなことは,もうないんじゃないかと思います。
数が出ないんですから,高くなるのは当たり前ですわね。
交換レンズも価格は上がるわけで,モデルチェンジをすれば数万円上がるのは当たり前,古いレンズも前述のように価格が上がっています。そうすると買おうという人が減り,また値段が上がるということを繰り返していくわけです。
そもそも,高級なカメラなんてのはそんなに数がバンバン出るようなものではありませんので,これくらいがちょうどいいという意見もあるでしょうが,同じ物が,買った時期で値上がりしてしまうと言うのは,欲しい人に取っては面白くない話です。
私も,AF-S24-70/F2.8GとAF-S70-200/F2.8Gを買った時に,思い切ったことをしたと思ったのですが,それでも当時はあれで底値でしたし,今はもっと高いですから,後悔してはいません。むしろ,当時買う予定だったAF-S Micro Nikkor60mm/F2.8Gを買っていないことを後悔しているくらいです。
さて,そのAF-S Micro Nikkor 60mmF2.8Gですが,最も安い「ナノクリスタルコート」採用のレンズであり,高コントラストで高解像度の今どきのレンズでありながら,ボケも綺麗で何でも良く写るレンズとして知られています。
60mmという焦点距離は,APS-Cのカメラでは90mm相当となり,マクロレンズとしては使いやすいものになります。エントリーモデルの「2本目レンズ」として用意されたというのはあながちウソではないと思うのですが,その性能は折り紙付きで,ロングセラーの定番商品になっています。
私の場合,タムロンのmodel72Bという,90mmのマクロを随分昔に買ったのですが,実のところあまり出番がなかったのです。原稿のSP90mmマクロと同じ光学系なので,そんなに写りは悪くないと思うのですが,そんなに接写をするわけでもなく,一般撮影なら85mmや105mmの単焦点の方が明るいですし,ズームでも事足ります。
よって,SP90mmの個性を好ましいと思わなかったということになるのでしょうが,デジタル時代になっても同じ傾向であり,防湿庫の肥やしになっています。
レンズの個性も流行がありますから,72Bが常用されることはもうないだろうなあと思っていますが,そうなると今どきのマクロレンズが欲しくなるわけです。
接写が重要と言うよりも,寄れる中望遠という位置付けで考えると,結局このAF-S Micro Nikkor60mm/F2.8Gしかなくなってしまうんでしょうね。
さて,軽く撮影してみました。
まず,全体の傾向ですが,色はニコン純正に共通するトーンで,適度の濃さがあって,特に暖色系が好ましいです。30万円近い高級なレンズと同じ傾向のレンズですので,価格差を考えると,これを手にとって感激する人が多いのも頷けます。
もっとも,純正レンズはカメラ側で補正がかかりますので,このレンズそのものの個性がどのくらい出ているかは,ちょっとわかりません。でも,そういうカメラ側での補正も含めて,純正ならではと考えてもよいと思います。
AFは十分に高速です。マクロレンズというのはフォーカスで鏡筒の長さが伸びてしまうので,撮影に夢中になっていると前玉が被写体に接触することがあるんですが,このレンズは全長が変化しませんので,安心して撮影に集中出来ます。これは案外大きいですよ。
本来の接写ですが,タムロンのSP90mm/F2.8(72B)に比べると解像度が高く,数世代の進化を見せつけてくれます。マクロ撮影の醍醐味を堪能出来ると思います。60mmという焦点距離がどうかなと思いましたが,私は全く問題なし。扱いやすいと思いました。
私の好きなAi-MicroNikkor55mm/F3.5と比べて見ますと,解像感はトントン,でもAi-MicroNikkor55mm/F3.5の方がコントラストが高く,カリカリの描写です。Ai-MicroNikkor55mm/F3.5は色のりがいまいちで,寒々とした写真になることが多いですから,その意味でこのレンズは,今どきなんだなあと思います。
で,一般撮影に使えるかどうかを見てみました。繰り返しますが,色の傾向や色のりは今どきの純正レンズを踏襲しますので,ぱっと見たところで非常に豊かな写真になってくれます。
ですが,やっぱりなんとなく眠いんです。拡大すると,明らかに解像感が少なく,コントラストも低いです。ポートレートにはこのくらいがちょうどいいのかもしれませんが,普段シグマの35mm/F1.4Artを使っていると,目がこれに慣れてしまうんでしょうね。
ただ,AF-S24-70/F2.8Gと比べて見ると,それほどの差があるようには思えませんでした。一般撮影に使えないということではなく,もはやこれは画角も含めた好みの問題といえるかも知れません。
もう1つ,標準域のレンズとしては,周辺光量の落ち方が目立ちます。APS-Cサイズなら問題はないのでしょうが,フルサイズで一般撮影では,ちょっとしんどいかもなあと思います。これも,カメラ側での補正が入れば問題なくなるので,割り切っても構わないかも知れません。
結局の所,私の場合一般撮影用には好みに合わず,やっぱりシグマの35mm/F1.4が常用レンズになりました。というか,そもそも同じ土俵で好き嫌いを語っていいとはいえないくらい,別領域のレンズだよなあと,書いていて思いました。
時にこういう風に新しいレンズを買うと,手放しに新しいものを絶賛することと同じくらい,それまで使っていたものの良さを再発見することがありますね。シグマの35mmは,本当に良いものに出会えたと思っています。解放でも十分カリカリのレンズが,2段絞ってもまだF2.8ですからね。この性能のゆとりが,撮影者のストレスをどれくらい軽くするか。CarlZeissのレンズが好まれる理由も結局ここにあるんじゃないかと思います。
必ずしも高価なレンズである必要はなく,大事な事は撮影者の心の鍵に勘合することです。そういうレンズに出会うことが出来た私は,とてもラッキーだったと思います。
蛇足ですが,同じシグマでもDP2Merrillには,あまり手が伸びないんです。画質はすごいんだけど,その画質の傾向が,よりシグマっぽいと言うか,シグマの方向に行きすぎているというか・・・Lightroomで好き勝手にいじれないこともあって,あれでは手の付けようがないという感じがいつもしてしまい,画面に出てきた画像を前に手が止まってしまうのです。