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2017年09月の記事は以下のとおりです。

カメラのカルテ~D800


 このテーマは,本来なら「カメラのカルテ」に書かないといけないのですが,最近放置していることもあり,艦長日誌に書くことにしました。

 2012年7月1日 友人の予約分を譲ってもらいフジヤカメラで購入
 2017年9月 売却

 
 D800は,その後の高画素デジタル一眼レフカメラの方向を決めた,歴史的名機です。3600万画素はフルサイズ一眼レフでは当時頭一つ飛び抜けた最高の画素数,そして登場時の実売価格が27万円前後という価格帯,これらに相応しい信頼性と性能と,このクラスのカメラを「定義」したカメラです。

 画素数が絶対ではないと言われ始めていた中で「それでもやっぱり画素数は正義だよなあ」と唸らせ,同時に画素数だけではダメで,カメラとしての性能や信頼性がバランスすることの大事さを知らしめたのも,D800でした。

 思い起こせば,D800がまだ噂レベルだった頃,リークした画素数などのスペックに「いくらなんでもそりゃウソだ」と鼻で笑ったものが,しばらくして現実になり,30万円のカメラが品薄で半年間も予約で待たされるとは,誰も思わなかったんですね。

 登場時,型番からD700の後継と思いきや,その成り立ちはD700とはかけ離れており,これがやがて全く別のカテゴリを作るカメラであると認知されるまで,そんなに時間はかからなかったように思います。

 D800にはもう1つ大きな役割を果たしていて,高画素になるとローパスフィルタがいらないのではないか,という疑念を,完全に払拭したモデルでした。

 ニコンは当初,ローパスフィルタ搭載のD800が中心に据えて,ローパスフィルタのないD800Eを派生機種として準備するにとどめました。しかし実際に売れたのはD800Eでした。

 高画素になるとローパスフィルタの必要性が薄れることは理論的にはわかっていましたが,それをフォトグラファーが受け入れるかどうかは別の話ですし,精神論ではなくローパスフィルタのメリットとデメリットをきちんと理解して,撮影に反映できるかどうかがとても大切なわけで,ニコンはD800Eが主流になったことを受け,後継機のD810ではローパスフィルタなしに一本化しましたし,他のメーカーもローパスフィルタを搭載しないものを普通にしました。

 また,高画素機の魅力を高めるものとして,レンズ資産がどれだけ豊富に揃うかが大事だと再認識させられました。もしD800がGレンズやAF-Sレンズしかサポートしない,あるいはAi連動をサポートしない割り切りをしていたら,レンズの良いも悪いもすべて取りこむ高画素機の魅力が半減していたことでしょう。

 レンズのすべてを取りこむことが出来る高画素機だからこそ,レンズに対する高い互換性が重要であるとみんな気が付いたのです。

 同時に,高画素機の登場によってレンズのトレンドが変わって来たなあとも思います。とにかくキレキレの画質,MTFが全域で高く,画面の隅々まで収差が補正され,高いコントラストがますます好まれ,市場に投入されるようになったと思います。

 高画素機が高解像度なレンズを渇望し,高解像度なレンズがますます高画素のカメラを求めるという循環が,D800によって生まれたと私は感じました。

 そうした高解像度なレンズのせいもあるのでしょうが,高画素機になると目立つ手ぶれやシャッターの振動にも注目が集まるようになり,とにかくD800以前と以後では,デジタルカメラの評価軸が変わってしまったとさえ,思います。

 私はそれまでD2Hを使っており,高画素にはあまり興味がなかったわけですが,いい加減強がっていても仕方がないなあと思っていたことに加え,画素以外の性能についても近代化の必要を感じていました。

 しかしD2Hを使う私としては,今さらエントリーレベルのカメラを使う気にはなりませんでしたし,D2Hの不満点の1つであったAPS-Cサイズからフルサイズへの移行がないと,とても気に入っていたD2Hから乗り換える意味がないとも思っていました。

 さりとてD3は高すぎますし,D700はそのころすでに絶版。悩んでいたところに登場したのがD800です。連写機能を除いて私の望みをすべて越えたこのカメラは,私が生まれて初めて手にした20万円を越えるカメラだったのでした。

 D800が私にもたらしたものは,一般のそれとは違い,ようやく普通のカメラ趣味の常識を手に入れるものであり,かつ私にとっては革命的でもありました。もう強がる必要がなくなったのです。

 1つは,多くの人が良いと言うものを素直に良いと受け入れる,常識を持ったことです。オールドレンズを楽しむのもよし,クセ玉に手を出すのもよしなのですが,それは「今,万人がよいと認める」レンズを常用し,使いこなした上での話で,私もそれは分かっていたのですが,なかなか実感を伴うものではなく,結局言い訳や強がりばかりをしていました。

 ひどいのは,雑誌やWEBで評価されるレンズを,確かめも体験もせずに鵜呑みにしてあれこれと語ることです。大三元がなぜ必要なのか,神レンズと言われる最新のズームレンズがなぜ評価されるのか,それを私に「知る必要があることだ」と強く認識させたのが,D800の3600万画素だったのです。

 個人差はあると思いますが,1000万画素くらいではレンズの差を「なんとなく違うな」くらいでしか認識出来ません。しかし3600万画素なら話は違います。どこが違うか分かるだけではなく,これはダメだ買い直そう,と思わせるだけの違いを,容易に突きつけてくるのです。

 低コントラストも精細感のなさも逆光耐性のなさも全部「レンズの個性」と肯定的に考える力しかなかった私が,3600万画素によってはじめてこれらの弱点を体感し,否定的意見も受け入れることが出来るようになったことは私にとっては革命であり,新しいものはいい,高いものはいい,と言うシンプルな理屈に,一定の理解が出来るようになりました。

 だから,古い単焦点レンズや廉価な高倍率ズームでは戦えないと痛感し,それでもなんとななるんじゃないかと手を出したタムロンの28-75mmF2.8が結局値段相応で,やはり純正の大三元でないとダメだと心底思った上で,AF-S24-70mmF2.8の良さに感激したことは,私のカメラと写真の向き合い方を完全に変えたものだと,今でも思います。

 最近レンズの趣味が変わったなあと思うのはこういうがあったからで,澄み切った冷たい冬の朝の空気を吸い込んだような清涼感をレンズに求めるようになったのは,D800のおかげだと思っています。

 撮影スタイルが大きく変わったのもD800でした。親指AFが当たり前になったのもD800ですし,AFポイントをグリグリ動かして被写体を追いかけるのもD800からです。最新のAFシステムを受け入れて,そのシステムがなぜ高く評価されているかを身をもって体験した事で,人間が出来る事と機械に任せた方が良いことを,シビアに切り分けるようになりました。

 撮影スタイルでいえば,退化した部分もあります。高画素機はトリミングの自由度が大きいですから,思い切ったトリミングで失敗写真を救えます。これが結局緊張感のなさをうみ,トリミング前提のダルな撮影をしてしまうこともしばしばです。

 同じ事は露出にも言えて,少々のオーバーやアンダーもD800ならRAW現像で救える場合が多く,露出補正もAEロックもしなくなりました。高画素機はノイズの処理にも有利で,ノイズ除去を行ってもあまり荒れません。色とコントラストがおかしくなる方が先のように思います。

 ホワイトバランスもオートに任せてしまうので,グレイカードもどこにしまったか,忘れてしまいました。

 そしてその印刷までの流れですが,Lightroomを使うこともD800で本格化しました。D800だけではなくすべてのカメラをLightroomのワークフローにのせて処理する訳ですが,D800は高画素だけではなく,調整することが少ない,手のかからないカメラだったとつくづく思ったことを思い出します。

 最新の機材は,手間を省いてくれる。
 最新の機材は,失敗を減らしてくれる。
 最新の機材は,今流行している画像を作ってくれる。

 D800を使って思い知ったことは,つまりこの3つでした。

 そしてこの3つこそ,カメラの王道であり,メインストリームです。私はこれを理解することなく,カメラを趣味にしていたことを恥じました。

 もう1つ,ごく個人的な事情を話せば,D800が我が家で活躍した2012年夏から2017年夏までの間は,娘が0歳から5歳までを過ごした時間でもあります。カメラの役目が記録であり,被写体が娘である以上,その成長をその時最高の画質でとらえることはこの上ない喜びであり,D800はその期待に十分応えてくれました。

 幸いにして,D800は一度も故障することもなく,一度も不具合を感じる事なく,また一度も点検に出されることもなく,D850を購入するための資金作りのために,売却されました。

 いよいよ売却するというその前の夜,掃除をしていたD800はとても綺麗になり,我ながら大事に使っていたんだなあとつくづく思いました。娘も,人生の大半を共に過ごし,自分を記録し続けたD800との別れを,とてもさみしそうにしていました。

 27万円で購入したD800は5年後に9万円で売却されました。5年間という時間,2万枚という撮影枚数,そして差額の18万円によって私が得たものは,計り知れないものがありました。

 それは,ひょっとすると私のカメラ趣味が普通のものになっただけに過ぎないかも知れません。しかし,私にはその道はとても長く,D800を買う前の私には想像すらしていなかった,まさに楽園だと言えました。

 D850がどれだけ優れていようと,私にとってはD800の踏襲であり,変化ではなく前に進めるものです。D800で撮影した時に感じたあの驚きとがっかりが懐かしく,慣れるまでのイライラも慣れた後の心地よさも,私の手が覚えています。

 最後に,D800の画質と性能は,今でも十分通用します。3600万画素もD4ゆずりのAF性能も電池の持ち具合も最新レンズへの対応力も,まだまだそこら辺のカメラには負けていないと断言出来ます。

 だからこそ売却したわけで,性能に対して遥に安くなった中古のD800が,初めて一眼レフを触る学生さんを支えてくれたらいいなあと,そんな風に思います。

秒間9コマのために

 半年もすれば高価なバッテリグリップ「MB-D18」も少しは値下がりするだろうと,年明けくらいに買おうかと思っていたのですが,やっぱり長玉を縦位置で使う時には脇を締めないと落ち着かず,結局在庫が復活した購入の翌日に買うことになったのは,先日書いた通りです。

 繰り返しますが,電池ケースにボタンがいくつか付いただけのものが実売で5万円ですから,普通は理解出来ない値段と思います。今でも思いますが,やっぱり高いです。

 ここだけの話,非純正品(悪く言えばコピー品)が出てくれば1万円以内で買えるようになるわけで,たまにしか使わないならこれでもいいかなあと思っていました。(それに,コピー品と言えば聞こえは悪いですが,純正よりも持ちやすかったり,ボタンが多かったりすれば,それはもうコピー品ではなく,上位互換品です)

 しかし,いつも装着している状態で使うわけで,本体と同じ信頼性や剛性感を持っていて欲しいと思いますし,そもそも互換品が出てくるまで待っていられないということで,結局純正品をさっさと買ったのですが,値段のことはさておき,買って満足,期待通りのものでした。

 やっぱり,縦位置の時に脇が開かないのはいいですよ,レンズを中心にクルクルまわして縦と横を持ち替えることも長年のクセで染みついていますし,大きさと重さをスポイルしてもこのオプションは必要だったと思います。

 ところで,D800の時には単三電池を使うと連射速度も向上したのですが,D850ではそうもいかず,連射速度を最速の秒間9コマにするには,EN-EL18というD4やD5用の電池を使うしかありません。

 いわく,高速の連写には大きな駆動力が必要で,そのためには高電圧が必要なのだそうです。標準のEN-EL15は2セルで7.2V,EN-EL18は3セルで10.8Vです。

 ちなみに単三8本だとニッケル水素なら9.6Vですので,EN-EL15とEN-EL18の間になりますから,本当なら秒間8コマくらいになってくれてもいいんですけど,電圧の下がり方の問題もあり,出来ないと判断したのでしょう。

 ですから,せっかく高価なMB-D18を生かすのに,安価な単三電池で機能アップしないのは残念至極,秒間9コマにするには,2万円の電池と4万円の充電器がさらに必要になります。

 考えて見て下さい,バッテリグリップと電池と電池フタと充電器で10万円です。本体が40万円ですから,秒間9コマにするなら合計50万円です。これって,ちょっと前のプロ機の金額そのものです。厳しい。D5が50万円後半になっていますから,そっちを買った方が幸せになれるんじゃないかと思ったり・・・(いやいや,そもそも50万円が非常識な金額であることに気が付かないといけませんよ)

 そこで,少し考えて見ました。

 秒間9コマに必要なものは,MB-D18に電池フタBL-5,そしてEN-EL18bという電池と,充電器MH-26aです。

 MB-D18は買いましたし,BL-5は2000円ほどなので大したことはない,問題は充電器と電池なのですが,電池は互換品か中古品で済めば1万円以内,充電器は・・・なんとかD2Hに付属していたものを使えないかと考えました。

 D2HはEN-EL4という電池です。外形はほとんど同じなのですが,電池端子の位置が左右逆になっているのと,ガイドキーが異なっているので,物理的に装着出来なくなっています。

 ただ,調べたところでは,電池端子は6ピンでピッチも配列も同じ,つまり位置が異なっているだけだということです。

 というのは,充電器のMH-26aには,EN-EL4を充電するためのアダプタが存在していて,これがどうもコネクタの位置を変えるだけのもので,配列を入れ替えるとか,なにか別の電子部品を挟むなど,特別な事はなにもないんだという話を,事前に聞いていたのです。

 ただ,バッテリの充放電特性は異なりますし,完全に良い状態で充電出来るとは思っていません。あくまで間に合わせということです。でも,試してみたいじゃないですか。

 次に,EN-EL18です。EN-EL18には無印とaとbの3つがあります。EN-EL18はD4やD800が出た頃の製品ですので2012年生まれ,すでに5年が経過している古い製品でもあります。

 今回,開封済みだけど一度も使用していない新品を見つけたので,買ってみました。5000円ほど安いだけだったのですが,怖いもの見たさでポチってしまいました。

 届いた電池を見れば,確かに未使用品です。傷一つありません。しかしカメラに装着してもまったく動作せず,認識もしません。充電もすぐに異常を検出して充電が止まります。

 これはおかしい。

 電池の電圧を調べると全く出てきません。充電を強制的に行って見ても,電流が流れません。

 おそらくですが,過放電により内部のスイッチが切れているんだと思います。こうなると,もう普通は手出しできません。裏技で内部のスイッチをONにする方法がないわけではありませんが,過放電を本当に起こしているのであれば,ここで充電を行うと爆発や発火などの事故が起きそうです。やめときましょう。

 そもそも製造から5年も経っている電池が,途中で一度も充電されずにおかれていて,過放電になっていない訳がありません。これはハズレだったということです。

 残念ですが返品の手続きを取り,代わりにヨドバシで新品を買いました。高いとは言え5000円ほど高いだけですし,ポイントを突っ込んだので,1万円くらいで買えたからよしとします。

 到着してカメラに取り付けると,ちゃんと認識しています。ただし残量は僅か7%でした。試しに連写もしてみましたが,秒間9コマに放心し,私の目は無限遠を見ておりました。

 さらに,MH-21のコネクタを取り付けて充電を行ってみたのですが,これは残念ながら,すべてのLEDが点滅して充電できませんでした。

 想像すると,MH-21が電池と通信し,返事が来ないものには充電を開始しないようになっているのだろうと思います。

 さあ困った。うちには3セル充電出来る充電器がこれ以外にありません。

 そこで,禁じ手なのですが,充電電流だけEN-EL18bに流し,後の端子はEN-EL4に繋ぐということで,MH-21を騙してみることにしました。この結果充電がスタートし,30分で9.6Vから11Vまで電圧が上昇しました。

 D850に装着してステータスを確認すると,7%から37%に容量が増えています。これで当座はなんとかなりそうです。

 気になるのは,MH-21の充電LEDが,ずっと90%のところで点滅していることです。本来は10%以下であり,50%を越える事がなかったわけですから,こんなところで点滅しているのはおかしいです。

 EN-EL4の残量が90%だったので,どうも残量は電池内蔵のマイコンと通信をして得ているようです。このあたりはもう少し検討してみます。

 とりあえず,充電出来る目処は立ちました。

 翌日,さらに充電を続けて,CC充電からCV充電に切り替わるかどうか,そして満充電を検出し自動的に充電が終了するかどうかを確認してみました。

 前日手を抜いた電流計もきちんとつなぎ,電流と電池の電圧を見ながら充電を進めます。電池電圧は10.8V程度で,ここから充電を開始すると予想度落ち1.2Aの充電電流が流れています。

 順調に電池電圧が上昇し,充電開始から1時間ほど経過して12.6V付近になった頃,電流が減り始めました。CC充電からCV充電に切り替わっています。また,12.6Vで切り替わったという事は,セルあたり4.2Vを終始電圧としていることも分かりました。

 実は,この終始電圧というのがミソで,4.3Vだと目一杯充電出来る代わりに電池の劣化が進み充放電の回数が減ってしまいますし,4.1Vだと電池の劣化が抑えられる代わりに,目一杯の充電が出来ず動作時間が短くなってしまいます。

 また,電池の素材や特性によって終始電圧の設定は変わってくる場合があり,4.2Vの電池に対し4.3Vの充電器を使ったら,簡単に電池が劣化してしまいます。

 4.2Vというのは,そういう意味では非常に無難な標準的な電圧と言えて,MH-21がこの電圧になっていることが分かってほっとしました。

 さらに充電を進めると,順調に電流が減っていきます。電流が減ると電流計での電圧降下も減るので,ちょっとずつ電池電圧もあがっていきますが,それでもほとんどかわりません。

 そして200mAを割ったときに,とうとう電流がゼロになり,充電が終了しました。充電開始から2時間15分経過していましたので,昨日の30分と合計しトータルで165分です。充電中のLEDは点滅をやめ,充電終了を示す点灯になっていました。

 EN-EL18は2500mAということですので,1200mAで定電流充電すれば約2時間で充電が終わりますが,CVモードになってからは時間がかかるものなので,160分ほどという結果は,うまい具合に充電が出来たと考えて良いでしょう。

 満充電になったというEN-EL18をD850に取り付けて電池のステータスを確認したところ,劣化もなく,容量も98%となっていました。100%でないことも気になりましたし,撮影枚数が1枚になっていたことも気になったのですが,ここは充電後にリセットされる数字なので,正しくリセットされたことをもっとはっきり確認しなければなりません。

 ということで,不安がないわけではありませんが,MH-21は1.2AのCC充電と,12.6VのCV充電を切り替える充電器であり,MB-D18もきちんと充電出来ることがわかりました。ただし,電池の温度は全く伝えてはいませんし,電池のステータスも偽情報ですので,どんな事故が起こるかわかりません。危険なので他の方はこんな方法を使わないようにお願いします。


 てなわけで,満充電になった電池で,秒間9コマを味わってみました。

 本体に内蔵した標準のEN-EL15bと,MD-B18に内蔵したEN-EL18bをメニューから切り替えて,動作の違いを見てみます。


 まず,秒間7コマと秒間9コマでは,もはや別のカメラと思うほどの感触の差があります。動作速度全体が上がり,音も大きくなります。ミラーショックが大きくなっているのには私も驚きました。

 秒間7コマの気持ちで構えていると,そのショックの大きさにびっくりしますし,当然ブレも出てくるのではないかと思います。秒間7個までも十分な場合も多いですし,音の大きさとミラーショックから,普段はEN-LN15出使うのが良さそうです。

 そして秒間9コマはやっぱり強烈で,やっぱり脳内麻薬が出てきますね。前述の通り動作速度が全体的に上がってとても機敏になりますし,駆動力も上がってぐいぐい動きます。この力強さは手に伝わって来ますし,キレも良くなります。

 力強い駆動力にそれを支える骨格,高精度なAFシステムにシャッター速度を上げられる高感度特性を持ち,高速連写に耐えうるハードウェアを持ちながら,4500万画素というトリミングも楽々こなす画素数を実現したD850は,確かにどんなシーンにも活躍し,まさに撮影領域を大きく拡大するカメラだと思います。


 ・・・しかし考えて見ると,安く済んだのは充電器を買わずに済んだと言うだけの話で,他の3つはすべてヨドバシで買ってしまいました。ヨドバシも昔は安かったんですが,今はポイントを差し引いたら他の店と同じ,という程度の割引になっているので,もうすっかりポイント無間地獄です。(ヨドバシのポイントは他の店では使えないので,結局ヨドバシで買うことになる)

 こういうことなら,最初からD850の購入予算に入れておけば良かったと後悔しているのですが,問題はこの大げさなシステムを,どこに担ぎ出すのかという話です。今の私には,秒間9コマだと,1回のレリーズで3枚ほど撮影出来てしまうくらいなので,明らかに体が慣れていません。

 こうなったら,もっとD850を触って,体を慣らしていくしかありません。


LA音源30周年

 「世界よ,この音がローランドだ」で世界が衝撃を受けた,ローランド初のデジタルシンセサイザーD-50の発売から,なんと今年で30年になりました。

 今ひとつ盛り上がらないのは,D-50がプロ用の機材であり,1980年代を生きた人の間でも,身近に感じる人が限られているからじゃないかと思います。

 誰もが知るヤマハのFM音源は画期的でしたし,プロ用の機材から8ビットパソコン,果てはゲームマシンや携帯電話にまで入り込んでいたのですから,身近に感じるマニアがたくさんいるのもわかります。

 しかし,LA音源は何かに内蔵されることはなく,MIDIで繋がるものがほとんどでした。パソコンを中心に考えたシステムでは周辺機器として知られたにとどまりましたし,D-50に至っては鍵盤が弾けること,ライブで使うこと,そしてこれが重要なのですが,他にもシンセサイザーを持っていなければ,欲しいとすら思わないシンセサイザーだったと思います。

 ですが,その音は必ずどこかで耳にしたはずです。

 技術的に面白いのは,D-50はローランドで最初のデジタルシンセだったわけですが,同時にMT-32も同じカスタムICで開発されており,心臓部であるLA音源チップ「LA32」はプロ用のシンセサイザーと,ピアノの拡張音源であったMT-32の両方に使われていたのです。

 さらに興味深いのは,同じ音源チップを使っていながらも,D-50とMT-32や後のD-10/20系列とは,音そのものも異なりますし,パラメータも違い,音作りの考え方にもズレがあって,全く別物と考えなくてはならなかったことです。

 理由を考えて見ますと,LA32というチップはPCM片の音出しとサウンドジェネレータを32備えたチップに過ぎず,LA音源の音の個性はLA32の外に置かれたROMに格納されたPCM片によって生まれることから,D-50とMT-32とで異なるPCM片を持たせて異なる個性を与えることは,容易であったということです。

 そのPCM片も,D-50が音色の一部分を作るのに最適化されているのに対し,MT-32系列ではそれ単独で音色になるようなものを中心に用意されています。これはMT-32がマルチティンバー音源であり,できるだけパーシャルを少なく音を作らねばならなかったという事情があります。

 D-50はライブ用のシンセサイザーで,16音ポリなら2パーシャル,8音ポリでも4パーシャルを1つの音色に使っても演奏に支障がないですから,一部分だけをPCMで作るなどの贅沢が許されるのです。

 また,一番大きな音質の差の原因が,エフェクトだったように思います。D-50とMT-32のエフェクタの音質差は大きく,D-50はさすがに高品位でしたし,EQもコーラスも搭載されていました。MT-32ではリバーブとディレイだけで設定の範囲も限られていました。

 こうして考えていくと,あくまで今にしてみれば,と言う話ですが,アナログシンセとFM音源が人工的で自然な楽器にほど遠い音だったのに対し,サンプラーは自然な楽器そのもののリアリティを備えていた中で。D-50のLA音源はちょうどその中間にあり,人工的でも自然でもない,どちらでもありどちらでもないという,つかみ所のない音だったといえるのではないでしょうか。。

 これがD-50の個性であり,LA音源がその時代を代表するシンセサイザーであった理由ではないかと思うのです。

 それは,きっと生い立ちからそうだといえて,FM音源のような既に理論として完成しており,開発はそれを半導体に実装することだったわけでもなく,サンプラーのように技術的に目処が付いていながらもコストが理由で作る事が出来ず,開発はコストを下げることだったわけでもなく,LA音源はどういう音源にするかという根本部分から開発された,完全スクラッチの数少ないものであったことも,影響しているのではないかと思います。

 つまり,開発中はどんな音が出てくるのか不明,そもそも完成するかどうかもわからない状態だったはずで,手探りで進んだ開発は困難だったとは思いますが,何かに似せる必要もなく,どんな音でも許され市場に出る可能性があった,とても恵まれた状況であったとも言えます。

 FM音源の開発のゴールは,FM理論に従ったシンセサイザーが動作することですから,FM理論に従った音が出ることが求められます。サンプラーの開発のゴールは,いってみれば安く作る事がゴールですので,何回作っても音そのもののゴールは変わりません。LA音源はそうではなく,開発者,設計者が思い描いた音がゴールであり,偶然出てきた予想外の音もゴールです。

 当時開発に大きく関わったEric PersingとAdrian Scottの個性や傾向がD-50を支配していたことはその音を聞いても明確で,ここで定まったローランドの音は,しばらくの間不動の個性として君臨することになります。おそらくですが,FM音源でもサンプラーでも彼らの個性を表現する事は難しく,LA音源のようなゼロから作った音源だからこそ,彼らの創造力が具現化されたのではないでしょうか。

 そして筐体のデザイン。それまでの何にも似ていない洗練された新時代のデザインは,これまでのローランドはもちろん,他社のシンセサイザーとも明らかに違う音を期待させました。いやー,格好良かったなあ。

 そして誕生から30年。当時のCDとその後のCDを聞けばいかにD-50が画期的で,その後の音楽の方向を作ったかを思い知らされるわけですが,D-50そのものはなくなっても,音は引き継がれ,時代に関係なく使われていることを考えると,それが単に流行のものではなかったことを思わせます。そんな楽器に,そうそう出会えるものではありません。

 ただ,当時もその個性が万能ではなかったゆえに,好き嫌いがはっきりしたシンセサイザーだったとは思います。使われ方も,流行っているから使っていると言うだけで,その音で新しい音楽を作ろうというアプローチを,あまり目にすることはありませんでした。

 その後出てきたM1となにかと比較されたD-50は,リアルさから評価が低かったこともありますが,それでは30年後の今,M1の音と言われて思い出す音があるかと問うと,案外思い浮かぶものがないことに気が付きます。M1は確かに音楽制作の現場を変えたほどの影響を与えた歴史的名機でしたが,それは現場での即戦力として高次元でバランスしており,それ1台で何でも出来た事が理由で,D-50のように強い個性で記憶に残り,歴史に名を残したものとは,対極にあったと考えて良いでしょう。

 そんなわけで,D-50の30周年,おめでとう。あなたも歳を取りましたが,私も歳を取りました。

D850を買いました~その2

  • 2017/09/12 10:46
  • カテゴリー:散財


 さて,D850を発売日に手に入れたので,早速触ってみました。

 最初に書いておくと,バッテリグリップMB-D18は,なんと55000円もするので,必要になったら買うことにしてありました。D800の時もバッテリグリップの値段の高さに目を回していましたが,結局不便で買ってしまいました。D850の場合,さらに高くなっているのでもう気絶しそうです。(気絶したついでにポチってました)


(1)質感,外観

 剛性感の高い骨格に,ぎゅっと内臓が凝縮された密度の高さは,手に取ったときにしっかりとした質感と満足感を伝えてくれ,D800同様大変好ましいです。これはもうD800系の伝統でしょうね。

 外観もほとんど変わらず,握った感じもほぼ同じです。グリップ部が数ミリ変わっていて,そこに気が付く人が大半だそうですが,私はそんなに違いを意識しませんでした。

 ボタンの配置は随分変わってしまっていますし,場所もちょっとずつ動いているので,後で書きますが結構違和感もあるものも,困った事もありました。

 重さもこんなものでしょう。むしろ,秒間9コマで20万回の耐久のメカをここに押し込んで,4500万画素を支えるのに必要な精度を維持するシャシーがこんなに軽いとは,不思議な気がします。

 そうそう,ニコンはD1のころから,それとわかる白いLCDカバーを付属していて,これまでニコンの象徴的なオプションでした。

 カバー越しの画像は見にくくなるので,必ずしも便利なものとは言えなかったのですが,多くの人が装着していたように思います。

 しかし,バリアングルLCDになったこととタッチパネルになったことでカバーが取り付けられず,ニコンは純正で強化ガラスのカバーを用意しています。

 おかげで画質と操作性を損なわずにLCDを保護できるようになったわけですが,カバーを引っかける場所も用意されているようなので,ぜひ用意して欲しいと思います。


(2)シャッターフィーリング

 私は,シャッターの音や振動が,撮影者の脳内麻薬を増やすものだと思っているので,それが心地よいかどうかを非常に気にしています。D2HやD3などのプロ機はその辺は抜かりなく,さすがヒトケタだといつも思うのですが,D800は少々切れ味が悪く,今ひとつな感じが拭えませんでした。

 でD850ですが,さすが秒間9コマ,その切れ味は素晴らしいです。D2Hのように金属の甲高いキーンという音がしなくなったので,刀を思わせる切れ味はないのですが,モーター駆動のシャッターとは思えない機敏な動きとリズムは,結構癖になるものがありました。

 シャッターボタンを押している指が,もっとこの音を聞いていたいと離れないというのは,久しぶりに味わった感覚です。

 そういうこともあって,CHモードの秒間7コマでは,1コマだけのつもりが2コマシャッターを切ってしまうこともありましたし,ミラーの動作もAFの動作も,とにかくすべての動作が次の世代に入ったと思わせる,非連続な進化を遂げています。


(3)AFとAE

 AFはD5ゆずりの153点,AEは180k画素のセンサで顔認識までします。D5が出た時に,ここまでやらないかんのかと思ったものですが,D850に移植されたAFとAEを使っていると非常に肯定的な印象で,もう人間がすることは構図を決めるだけ,人間に出来ない事をカメラがやってくれる時代になったなあと,そんな風に思いました。

 AFですが,私はAF-Cの3Dを主に使います。D800も悪くはなかったのですが,D850のそれは本当に素晴らしく,被写体に食いついていくという表現がぴったりです。

 AEもより精度が上がっているようで,マルチパターン測光でも強い逆光は補正が必須と思っていたところ,かなりのシーンで補正無しでいけそうな印象を持ちました。

 特に人の顔を認識したときの露出は,D800に比べて1段ほど明るくなることも多く,露出補正を戻し忘れたかと思うほど,鮮やかです。高感度特性も良くなっているので,これはこれでいいのかも知れません。

 とはいえ,以前から積極的に補正を行った方が良い写真が撮れるんだけどなと,自らの横着に後ろめたい気持ちがあったのも事実で,これをきっかけに真面目に露出補正を心がけようと思います。


(4)画質

 D800とD810の違いは,その発色です。D800は割とナチュラルなニコンの伝統色だったのに対し,D810は記憶色に近く,鮮やかに見えるように傾向が変わったといいます。

 D850もその路線であり,D800に慣れた私としては,鮮やかで記憶をさらに強めるような画像が出てきます。これは違和感があり,もう少し落ち着いたトーンでもいいんだけどなあと思いつつ,特にレタッチすることもなくこれだけの画像が出てくるのであれば,処理は楽になるかと前向きに考えました。

 その前に4500万画素ですが,これはもう強烈で,なにもいう事はありません。というより,さらにブレには気を遣わないといけなくなったし,AFの微妙なずれも気になって仕方がないくらい,解像度が上がっています。

 しかし,全体のレスポンスが上がっているので,とても4500万画素だとは思えません。D800よりも軽快です。


(5)連写とライブビュー

 連写はさすがで,バネの力をため込んでミラーを動かすのとは違う,上品で高精度な音と振動が伝わって来ます。私にとって,心地よい音はD2Hの音なのですが,これとは方向の違う音とはいえ,やはり秒間8コマを越えるボディが出す音というのは共通点があるもので,他の人が言うように悪い音だとは思えませんし,むしろ静かで上品で,しかしやる気にさせる,素晴らしい音に仕上がっていると思いました。

 私見ではありますが,秒間8コマでカメラのコストは大きく変わってくると思っています。6コマくらいなら中級機の延長で作る事も出来るのでしょうが,8コマを実現するにはそれまでの延長ではだめで,大きなエネルギーを扱うために,あらゆる部分を強化しなければなりません。

 価格は10万円単位で上がりますが,その結果とても剛性の感のあるしっかりした骨格とレスポンスを持つに至ります。

 D800が5コマ程度だったというのは,それくらいの骨格しか持たなかったと言うことの裏返しでもあり,これがヒトケタモデルとの大きな質感の違いを生んでいたと思うのですが,D850は最大で9コマです。これはD2Hを越え,ヒトケタを名乗っても構わないほどの骨格を持っていると思ってよいのではないでしょうか。

 それがこのレスポンス,この質感を生んでいます。

 で,ライブビューなのですが,これは相変わらず使い物にはならないなあと思いました。タッチパネルとの併用で随分使い勝手が上がっているとは思いますが,常用するには厳しいです。

 もちろん,D800に比べて随分欲はなっているのです。しかし,一眼レフカメラとしてのあまりの完成度の高さに,ライブビューが見劣りしているという感じでしょう。

 ただ,恐ろしいのはサイレントモードで,ライブビューでサイレントモードを使うと,ブラックアウトすることなく,連写が無音で行われています。実に不思議な感覚です。

 本格的なミラーレス機を私は使っていませんが,この静けさと高速連写がミラーレスの世界なら,いずれにミラーレスが一眼レフに取って代わると,そんな風に思いました。


(6)ファインダー

 視野率100%,倍率0.75倍という光学ファインダーは,フィルム時代を思い出しても,トップクラスのファインダーと言えます。D800も悪くはなかったのですが,D850のそれはファインダーを覗いた瞬間に吸い込まれそうになり,鳥肌が立ちました。

 OVFの完成形だとか,ニコンはこれを最後にミラーレスに移行するとか,そんな風に言われても仕方がないくらいに見やすく大きな光学ファインダーです。

 私は,DK-17Mという1.2倍のマグニファイアを常用していたのですが,これをD850に付けると大きすぎてかえって見にくくなりました。もったいないですが,DK-17Mは使わず,直接アイカップを取り付けることにしました。

 あと,あまり触れられていませんが,ファインダー内表示が緑のLEDから白のLEDになりました。これが非常に見やすく,上品です。やる気にさせる一方で,冷静に情報を取りこんで判断出来るようになるので,表示の色が違うとこんなに印象が変わるのかと思いました。

 それから,D800で残念に思ったものの1つに,クロップ表示がありました。D800では,クロップ時は赤い枠が出るだけだったのですが,D850ではクロップされる部分は薄暗くグレーアウトするようになっています。

 赤い線では,撮影中についついはみ出してしまうことが多かったのですが,撮影出来ない部分がグレーで塗りつぶされれば,はみ出すこともないでしょう。

 ファインダーはホントに素晴らしいです。


(7)ユーザーインターフェース

 操作性についてはD800とそんなに変わりません。ただ,ISOボタンが右側に来たり,AE-Lボタンがマルチファンクションになったりと,ちょっと戸惑うこともありました

 私はD850を機に,完全な親指AFに移行すると決めていて,シャッターボタンの半押しでAFが起動する機能をなくしました。それでも問題なく操作できています。

 ボタンにイルミネーターがついたことも,高感度撮影機では必須の起動だと思いますし,タッチパネルも使ってみると意外に便利です。特にメニューの戻るボタンが右側に出ているのがすごく便利でした。


(8)XQD

 SanDiskのExtremeProを大枚はたいて購入した私としては,D850でCFが使えないのはちょっと残念ですが,今さらCFってのもどうかと思いますし,SDカードなんて不安で使えないですから,XQDを導入しました。

 縁あって,ソニーのGシリーズで,128GBのものを入手出来ました。これ,速いし信頼性も高いらしいしで,なかなかよいです。コネクタの感じもしっかりしてるので,私は安心です。価格も思ったほど高くないですし,CFの次世代規格としてXQDに統合されるようになったので,マイナーなメモリカードを使うという不安はなくなりました。

 選択肢が少ないのはむしろ好都合なくらいで,マイナー故に偽物の心配もいらず,今からだったら,XQDがおすすめです。


(9)高感度特性

 確かに高感度性能は上がっています。D800では常用感度6400に対し私が許せたのは3200まで,D850では常用感度25600に対し,許せるのは6400か12800というところだと思います。実際,6400ならかなり余裕がある感じです。

 増感ではノイズも色もコントラストも破綻しますが,それでも撮影出来てしまうところがすごく,私は初めて,娘が深い眠りに入っている時の顔を撮影することに成功しました。


(10)AF微調整

 最近のニコンの一眼レフにはすでに搭載済みとなっている,ライブビューを用いたAF微調整をD850で初めて試して見ました。

 事の起こりは,どうもフォーカスが甘いように思った事で,4500万画素だし手ぶれもあるだろうし,そもそも本体のLCDの拡大でフォーカスを確認出来るのかどうかわからないとは思うのですが,せっかくなので試してみることにしたのです。

 三脚でカメラを固定し,2mほど離れた場所の壁の模様をライブビューでフォーカスします。そのあとフォーカスモードのレバーにあるボタンとRECボタンを同時に2秒押し込むと,調整値が記憶されます。

 私の場合,全体に-2から-8くらいで,マイナス方向にズレていたのですが,これが被写体のせいなのかボディのせいなのかはよくわかりません。

 結果は,そんなにジャスピンになったという印象はなく,元々のままでも大差なかったかなあと思いました。とりあえず単焦点レンズを3本ほど試してみたのですけど,もう少し様子を見てみます。


(11)バッテリグリップ

 MB-D18という専用のバッテリグリップが55000円もすることは前述しましたが,本体の価格が高いから気が付きにくいですけど,この値段なら安い一眼レフがもう一台買えますし,ちょっとしたレンズなら買えてしまうくらいのお値段です。

 電池ケースにボタンがいくつか付いているだけのものなのに,なんでこんなに高いのか・・・まあ,本体と同じ材料と精度で作るから,本体と同じ堅牢性を持つから,本体と同じ防塵防滴性能を持つから,なのですが,それにしてもD800に頃に比べて2万円以上も値上がりしています。

 調べて見ると,昨年出たD500用のMD-B17も同じ値段なんですね。実売20万円くらいのD500に対して5万円のバッテリグリップって高すぎないかと思うのですが,こういうのって好き嫌いがはっきり分かれるオプションなので,数も出ないだろうし仕方がないのかも知れません。

 私も,せっかくのD850の小型軽量を損なわないように,バッテリグリップは使わないことにしていました。バッテリグリップを付けるとDヒトケタよりも大きくなってしまうのは,以前から疑問を感じていたわけですけど,やはり縦位置で脇があいてしまうことに耐えられず,縦位置を多用する私にとっては必要なものと再認識する結果になり,ヨドバシの在庫が復活した時に買うことにしました。

 結論からいうと,買って正解でした。安定性も使いやすさもばっちりで,AF-S 70-200mmも安定して縦位置に出来ます。

 バッテリグリップを使うメリットはもう1つあり,秒間9コマを実現するために必要なオプションの1つが揃ういう事です。このMB-D18にEN-EL18bというD5の電池,そしてBL-5という電池の蓋の3つが揃うと,秒間9コマというD2Hを越えた速度が手に入ります。

 問題なのはやっぱりお値段で,充電器のMH-26aまで揃えると,10万円かかります。本体40万円に連写速度を上げるためにさらに10万円で合計50万円もかかります。これなら,D5の背中が見えてきますよね。


(12)残念な事

 残念な事は4つありました。

 1つは,AFが動かなくなるという問題です。これは故障でも不良でもなく,レンズを取り外すボタンに,ちょっと触れてしまって起きた問題です。このボタンが2mmほど押されるとレンズが外されたことになってしまうようで,AFが切り離されて動きません。電源を入れ直してもダメで,レンズによってはAF/MFレバーで動くようになるのですが,根本的には一度レンズを外して付け直さないとだめでした。

 以前はこんな経験をしたことがなかったので,ボタンの位置が少し変わったか,ストロークが浅くなったのでしょうね。私の持ち方では,どうもボタンに左手が触ってしまうらしく,急にAFが動かず焦ることが度々ありました。ニコンが対策をしてくれるとは思えないので,残念ながらなれるしかないです。でも,これだけ簡単にAFが動かず,しかも復旧にはレンズを一度外す必要があるというのは,結構致命な気がしますが・・・

 もう1つは,D800にのころからの不満点だったのですが,AF-SとAF-Cのそれぞれで選択したAFモードが記憶されない場合があるのです。

 D850では,AF-Sでシングルを洗濯し。AF-Cで3Dを選択すると,以後はAF-SとAF-Cを切り替えると同時に,それぞれで選択したモードが記憶されています。ところがAF-SかAF-Cのどちらか一方でグループダイナミックを選ぶと,もう一方もグループダイナミックに変更されてしまうのです。

 なにか理由や意図があってのことでしょうが,記憶される場合とされない場合の区別がわからず,取説にもないのでD800時代から謎でした。

 私の勝手で言えば,AF-Cを常用しており,動き回るものに食いついて常時フォーカスが合っている状態を維持しています。一方でAF-Sは動かない被写体をじっくり撮影するときに使うので,シングルで使うのですが,AF-CとAF-Sを切り替えるだけでAFモードも一緒に変わってくれると,一々選び直す手間が省けていいし,切り替え忘れることもなくなります。

 次にストロボです。

 D850ではそれまで搭載されていた内蔵ストロボが廃止されました。このクラスのカメラになると本格的な補助光を用いるか,自然光で撮影するので,光源として欠点の多い内蔵ストロボは使用頻度が低く,廃止には否定的な意見は少ないです。

 確かに,ストロボがなくなったことで見やすいファインダーを搭載出来ていると思いますし,ペンタカバーも樹脂製ではなく,マグネシウムの一体になりました。それに,ふいにストロボがあがって発光するというトラブルの心配もなくなります。

 私も内蔵ストロボは使わない人ですが,ただ1つだけ残念なのは,外部ストロボへのコマンダー機能がなくなってしまったことです。

 D800では,SB-700を買い足すだけで,SB-700をリモートで発光させることが出来ました。ニコンにストロボ制御は高精度で定評があり,ストロボを1つ買うだけでこれを体験出来るというのは素晴らしいと思っていたのですが,D850ではこの機能さえ失われてしまったのです。

 リモートを利用するには,もう1つSB-700を買うか,コマンダーを買うしかありません。これは非常に残念で,それならコマンダー機能だけ搭載する(赤外線だけでOK)のも手だったと思うのですが,残念だなあと思います。

 最後の1つは,現像のワークフローがまだ未整備である事です。私はLightroomを使って管理から現像,印刷までを行っていますが,D850はまだ未対応です。Adobeによると,近いうちに対応しますとアナウンスしていますし,それまでは先に対応したDNG Converterを使ってくれと言う話なのですが,Lightroomのメリットは現像時のカラープロファイルを統一できることにあるわけで,そのプロファイルが準備されていない中でDNG Converterを使うのは,Lightroomを使うメリットもありませんし,後々正式対応したときに困ることになるので,今はLightroomで取りこんでいません。

 ちゃんとした画質の評価は,Lightroomが動くようになってからになるでしょう。でも,これは残念な事と言うより,いずれ時間が解決してくれる問題ですので,そんなに深刻な話ではないですね。


(12)最後に

 ライブビューでのAF精度,そしてサイレントモードでの無音連写撮影を経験すると,ミラーレスも実用範囲に来ているなあと感じました。

 加えて,本格的なミラーレスを開発中というニコンのコメントに加え,高画素と連写を高次元で両立し,一眼レフのアイデンティティーである光学ファインダーに最高のものを奢って,この値段で市場に投入されたD850に,ニコンの一眼レフへの意地を見た気がしています。

 もしかすると,社内的にはこれが最後の高級一眼レフという覚悟があったのかもしれないなと思うほど,現時点で高級な一眼レフに求められるものが惜しみなく投入されているように思うわけです。

 D5の次のD5sまでは出るとしても,その次のD6はもしかするとミラーレスになるかも知れず,D850の後継機はマイナーアップデートのD860で止まるのではないかと思ったりします。

 レンジファインダーが一眼レフに変わり,メカ技術を軸に長く続いたその歴史が,電気の技術によってミラーレスに変わろうとしている今の流れは,もう変えようがありません。

 ニコンがプロのカメラにそれを搭載するかどうか,つまり歴史を残す機材に,歴史を変えるつもりがあるかどうかが,ここ数年ではっきりするように思います。

 私はと言うと,カメラが精密機械から家電品に,財産からモバイル機器になってしまうことへの抵抗もさみしさもあるのですが,最終的に残るのは写真そのものであることを考えると,よりよい写真が撮れる以上の理由はなく,肯定的に考えています。

 おそらくですが,一眼レフが主役になった時代でもライカのようなレンジファインダーの良さを味わう人は消えず,同時に憧れであり続けたことを考えると,おそらくミラーレスが主役になっても,一眼レフは残るのではないでしょうか。

 D850は,ニコンにとっての,最後の一眼レフになるかもしれないという一部ユーザーのつぶやきは,案外本当のことになるかも知れません。

D850を買いました~その1

  • 2017/09/11 15:07
  • カテゴリー:散財

 D850を発売日に買いました。

 D800を買ったのが2012年の7月でしたから,5年ちょっとで買い換えです。

 そもそもカメラなど,買い換えるものではないと思っていましたし,事実フィルム時代には買い換えることの実質的なメリットは,ほとんどなかったと今でも思います。画質はレンズとフィルムで決まり,ボディはレンズを支える役割と,フィルムに決まった時間だけ光を当てるタイマーの役割をしたに過ぎません。

 しかし,デジカルカメラになると,いわばフィルム(と現像マシン)が内蔵されてしまったので,画質を握る大きな要素がボディと一緒になっていまいました。そしてその画質は,年月と共に確実に,そして大幅に向上していきます。

 こうなるともう,ボディを買い換えるメリットは大きく,私も「ボディは消耗品」という考えに勇気を持って切り替えてから,随分気が楽になったことを思い出します。

 ちなみに,D800を購入したときの価格は約27万円。後述するように売却して91500円になりましたから,差額178500円を5年間で2万カット使いましたので,1年あたり35700円,1カットあたり約9円です。

 フィルム1本が36枚として,36枚あたり324円ですから,安いフィルムよりもまだ高いです。しかし,現像代が500円かかるとすれば,半額くらいで写真を撮ってきたことになります。

 だからどう,という話ではないのですが。あらためてデジタル化によって写真のコストが大きく下がっていることに気が付きます。そう,昔は写真を趣味にすると,本当にお金がかかったものなのですよ・・・

 とはいえ,デジタル時代とフィルム時代とでは,コストの質が違っていて,フィルムは変動費ですから,撮影すればするとお金がかかるのに対し,デジタルカメラはほとんど固定費ですので,撮影すればするほどコストは下がります。

 ということは,お金があるなら,一気に買って使い込んだ方が,お得だという話になります。ここ重要ですよ。


 まあ,苦しい言い逃れはこの辺にしておいて,私の場合D810を見送っていますし,次にD800系の後継が出たら,あまり悩まずに買おうと思っていましたので,ここ1年くらいの間は,買うつもりでスタンバイをしていました。

 しかし,ライバルのEOS5D系の値段が大幅に上がってしまい,クラスが1つ上がったことで,どうもD800系も位置付けが変わってしまうのではないかと,そんな気がしていました。

 D800は当時としては(そして今でもですが)怒濤の3600万画素で27万円という破格のマシンでしたから,D850も買いやすい価格になるという期待はしていました。しかし,D750系やD600系という下位のラインナップのこともあるので,おそらく40万円前半くらいになるものと,半ばあきらめていたわけです。

 そして噂が飛び交い,開発が正式に発表され,8月24日価格と発売日,そして仕様が発表になって,私は即座に予約しました。忘れもしません,8月24日の14時過ぎです。

 値段は36万円。非常に効果ですが,40万円を大幅に割り込むバーゲンプライスです。そして私がD800で唯一妥協した,高画素と高速連写を両立させたカメラになっています。欲しい。これを買えば,カメラのせいで我慢を強いられるようなシーンはなくなるはず。

 とはいえ36万円は分不相応で,かなり躊躇したのが本当の所なのですが,機材を処分すれば25万円くらいでなんとかなる・・・品薄が予測出来ただけに,そう考えて予約をしました。

 予約をしたのは中野のフジヤカメラ。D800もここで買いました。あまりお金にならないだろうジャンクに近いレンズもそれなりの値段で買ってくれたので,今回も下取りをあてにして,予約しました。

 結果を先に書くと,幸いなことにD850の予約は成功し,私はめでたく発売日にフジヤカメラに出向き,店頭で支払いを済ませて,自宅に持ち帰ることが出来ました。

 しかし,その前の金策に,紆余曲折があったのです。

 ・・・フジヤカメラに予約する際,店頭で購入するときに,D800などを下取ってもらい,差額分を現金で払うつもりでいました。しかし,店頭では数が多いと待たされることもありますし,荷物が増えてしまうことも困りものです。それに査定額が予測よりも大きく下回ってしまうことや,そもそもの下取り額がD850の発売にあわせて大きく下がる事が考えられます。

 そこで,事前に買い取りをお願いすることにしました。発売まで2週間,その間に店頭に行く機会を窺うよりも,さっさと送ってしまったほうが値下がりと思ったのです。

 キットを依頼して到着するまでに価格が大きく下がり,暗雲が立ちこめている中で処分するカメラとレンズを梱包して送り出しました。D800,MB-D12,AF-S VR DX ZoomNikkor18-200/F4-5.6G,AiAF35mmF2D,AiAF24mmF2.8,シグマのDP1s,タムロンの28-75F2.8とTC-16Aを送って,査定額の連絡を待ちます。WEBから調べた下取り価格はざっと12万円にはなるだろうと・・・

 結果は残念な事に,9万円ちょっと。そりゃ厳しい。訳を聞いてみたら,D800はファインダースクリーンに傷があるので68000円,AF-S18-200は故障しているので2000円,AiAF35mmF2Dは絞り羽根に油が回って3000円と,悲しい話になっています。

 D800はかなり程度が良かったはずなので,これは足下を見ているなとちょっと腹が立ったので,ジャンクに近いものだけ遺して,D800とMB-D12,AiAF35mmとAF-S18-200mmを返してもらいました。

 そして,他の店に売ることを考えたわけです。

 今回買い取ってもらうことにしたのは,査定が心配で夜も眠れない思いをした私に福音となるワンプライス査定を行っているマップカメラです。

 早速買い取りキットを送ってもらい,発送日も確定させました。D800は91500になるんですよ。68000円に18%増しでも8万円ですから,これを割り込まなければマップカメラにして正解ということになります。

 その日のうちにフジヤカメラから返却されてきたので,返却品を確認しました。D800には傷らしい傷は見当たらず,ファインダースクリーンも綺麗なままです。修理が必要なほどではないとフジヤカメラも言っていたので,これならワンプライス査定の対象になるでしょう。

 MB-D12も同様,きれいなものです。残念だったのはAF-S18-200mmで,これは先日書いたように壊れており,復活も出来ませんでした。

 そしてAiAF35mは指摘通り,絞り羽根に油が回っています。これもやむなし。

 目標として,なんとか16万円になると,現金での支払いが20万円に出来るなあと考えていたのですが,当初売却予定だったPlanar50mmF1.4ZFはグリスが抜けて査定が下がることが確実でしたし,GRも手放すが惜しくて,処分し損ねました。
 
 その上,1万円以上になると思われたレンズがまさかの故障とあれば,ここはもう何かカツイレをするしかありません。

 悩んだ末,FA77mmF1.8Ltd.を売りに出すことにしました。

 FA77mmは言わずと知れた三姉妹の長女と言われているレンズで,美しいボケとしっかりした色のりには定評がある中望遠レンズです。このレンズを使えることがペンタックスユーザーの最大のメリットと言われているだけあり,ほとんどガラスじゃないかと思われるずっしりとした質感がまた素晴らしいです。

 とはいえ,私のペンタックスはK10Dだけで,後はフィルムカメラです。APS-Cでは焦点距離も変わりますし,FA77mmの魅力が半減します。かといってペンタックスのフルサイズはK-1だけで,いくらFA77mmが素晴らしいとはいえ,さらに20万円の投資など出来ません。

 それに,FA77mmを「素晴らしい」と思った事が正直なくて,出番は数回にとどまっています。FA43mmはそれこそしょっちゅう使っていたし,その素晴らしさに感動したものなんですが・・・

 これがマップカメラで45000円のワンプライス査定です。この値段で買い戻すことなど出来ませんし,私が買ったときよりも今は値段が上がっていますから,もう二度と使うことはないでしょう。そう思うとさみしいですが,使わないレンズを眠らせてももったいないですし,AiAF35mmやAF-S18-200のように,使わないまま壊れてしまい無価値になることも考えられます。売れるうちに売るのも,大切なことなのです。

 そう思ってFA77mmを箱に静かに詰めました。もう1本レンズを入れて,D800とレンズ達は,我が家を出て行きました。

 果たして査定額はどうなったかというと,なんと157000円です。

 D800はワンプライスで91500円になりました。FA77mmも45000円です。これはありがたい。マップカメラ,ありがとう。

 ちなみにマップカメラ,途中で2度ほど電話をしたりメールをしたのですが,いずれもとても丁寧で気分のいい親切な対応をしてもらいました。フジヤカメラは人に寄りますし,言っていることが二転三転したものですが,マップカメラはそんなことはなく,電話でもメールでもちゃんと履歴が残っていて,一々説明しなくても話がすでに通っているんです。言っていることは一貫していて安心ですし,次は最初からマップカメラにお願いしようと思います。

 結局,フジヤカメラの下取り23000円にマップカメラの157000円,そして購入当日にフジヤカメラで下取ってもらったSB-400が4700円と,合計で約185000円を作る事ができました。なんとか現金での支払いを半分以下に出来たわけです。

 どれも使わないレンズばかりでしたし,売った値段よりも多くのお金を払って買っているのですから,絶対に得にはなっていません。でも不思議ですね,D850が18万円で買えたと錯覚するんですからね。

 そうこうしているうちに,フジヤカメラから初回分の割り当てがあったことを電話で聞き,私は9月8日,中野のフジヤカメラに出向いたのでした。

 今回の買い取りで得た教訓です。

(1)現行品,ジャンクではない人気あるものは,マップカメラで売るのが良い。
(2)ジャンク品などはマップカメラでは値段はつかない。フジヤカメラで売るべし。
(3)最近のレンズは家電品なので,ほっとくといずれ壊れる。使わなくなった時にさっさと売らないと,大損する。
(4)箱がなくてもいいが,送るときには綺麗に掃除をして,動作の確認をしてから送ろう。

 長くなったので続きは明日。明日はD850のファーストインプレッションです。


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