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2011年06月の記事は以下のとおりです。

「ステレオ」の付録のスピーカーP800

  • 2011/06/29 13:23
  • カテゴリー:散財

 音楽之友社の「ステレオ」という雑誌の付録に,スピーカーのキットが付きました。ステレオだけに,2本セットです。価格は2800円だったと思います。フォステクスの8cmフルレンジで,その名もP800といいます。

 この日誌には書いていませんでしたが,実は昨年にも,同じような付録が付いたことがありました。昨年は6.5cmのフルレンジで,P650といいました。

 いずれも特に予約もせず,発売後に知って行きつけの本屋さんで購入という,特に何の苦労もなく入手しました。

 思い出す方もいらっしゃると思いますが,実は2005年7月に,学研から「大人の科学」の増刊号に,スピーカーユニットのキットが付録に付いたことがあります。6.5cmのフルレンジで,フォステクス製でした。

 この時は1本分しか付いてこないので,ステレオにしたいなら2使う必要がありました。お値段は2940円と,ちょっとお高めです。

 当時,バラバラになった部品からスピーカーを作るなんて出来るのか,と思い,興味津々で2つ買った記憶があります。

 この時は特に失敗もなく組み立てられたのですが,昨年のステレオの付録は,あまりうまくいかなかったのです。2つ作るわけですが,1つだけどこかにこすれているようで,ビビリがでます。スピーカーとしてはこれはもう致命的で,やってしまったなあととても残念だったのですが,なんとフレームを少しゆがめて,こすれないようにするというリカバー案でなんとか回避しました。

 接着剤も盛大にはみ出しており,およそ美しさとは無縁の出来映えに,自分の不器用さを嘆きました。

 本棚にのっけてあったのですが,先の大地震で落下し,またもフレームがゆがんでしまったようで,今はきちんと箱にしまってあります。

 そのP650もまだ手を付けられていない状況で,今年の8cmです。昨年は慌てて作った事も失敗の原因だったので,今年は寝る前のひとときに,ゆとりを持って取り組む事にします。

 昨年は,マグネットの印刷が上下逆になってしまうという鈍くさいミスをしたので,今年は慎重に確認をして取り付けます。

 ボイスコイルからの引き出し線の向きを良く確認し,ダンパーを接着,ここまではばっちり,と思いきや,引き出し線の向きが逆であったことに気が付きました。

 これはもはや致命的。昨年よりも鈍くさいミスで撃沈orz

 そこで,ターミナルを固定してあるハトメを外し,フレームの反対側に改めてターミナルを取り付け直します。これで引き出し線の向きが逆にできます。

 しかし,マグネットの印刷が完全に逆・・・嫁さんはこの事態をみて,カラカラと笑っていました。

 気を取り直して,コーンの接着です。昨年もそうだったのですが,組み立て説明に「接着剤はたっぷり」と書いてあるので,ついついたっぷり出すのですが,結局これが接着剤のはみ出しを誘発し,とても汚い仕上がりになるのです
 
 音響的には問題はないでしょうが,見た目が重要な世界でもあるので,このあたりは素人臭さ爆発です。

 昨年は,このコーンの接着で油断し,センターがずれてしまったようで,どこかが擦ってしまっていたわけですね。今年はそこは慎重に進めます。おかげでボイスコイルとコーンの接着は綺麗にできました。

 ここで接着剤が乾くのを待たねばならないので,寝ることにして,翌日作業を再開することにします。

 さて一夜明けた翌日,接着剤の乾いた状態を確認します。ダンパーとコーンの位置決めに使ったスペーサーを抜き取ってみましたが,今回はどこにもこすれず,全く問題なしです。良かった良かった。

 あとはセンターキャップの接着という最後の作業が残っていますので,さっそくとりかかります。

 しかし,接着剤を塗る場所がいまいちはっきりせず,少し多めに付けたのですが,これが良くなかったようで,随分接着剤が盛り上がっています。これだけ接着剤がはみ出ていると,影響のある重さになるのではないかと思います。よって左右のスピーカーで音が違うということが起こるのではないかと心配です。

 見た目もいまいち良くないのですが,まあそれは不器用な私がえっちらおっちら作ったものですので,まあよいとしましょう。

 私はもともと不器用ですので,練習とか訓練とか慣れとか,そういうもので頑張るしかありません。最初は必ず失敗しますので,1回限りで取り返しが付かない状況はどうも苦手です。

 やり直しが出来る,あるいは少しずつ修正が出来るという作業は楽しいので苦になりませんが,今回のような作業はやっぱりあまり楽しくありませんでした・・・

 ところで,昨年作って,震災による落下でフレームがゆがんだP650ですが,改めて確認すると取り付けが出来ないくらいにゆがんでいるのがわかりました。

 これはあんまりなので,ペンチで少しずつ伸ばして,まっすぐにしていきますが,そうするとフレームのゆがみが大きくなって,ストロークさせると擦る音がします。

 こうなると奥の手で,フレームの支柱を少しずつ曲げて,擦る音がなくなるようにしていきます。最初は手探りですが,どこをどれくらい曲げると良いかが分かってくるので,今はなんとかこすれないようになりました。

 しかし,P650は今のところ使い道がなく,死蔵した状態です。P800はP650よりも優秀なユニットですし,実用に供すれば相応の結果が得られると思うので,フォステクスが6月中旬に発売した格安のエンクロージャP800-Eを手配しました。

 「ステレオ」の別冊ムックで,エンクロージャの組み立てキットが付録について5000円で7月中旬に発売されるそうですが,私は組み立ては下手くそですし,価格も高いので,完成品を買うことにしました。

 スピーカーといえばコイズミ無線。ここで予約をしました。7月中旬の納期という事ですが,1つ1400円というお値段で,実物を見てはいませんが,話を聞く限りかなりお買い得な感じです。

 8cmクラスのフルレンジに汎用的に使えるもののようですし,定番になってくれれば面白いのになあと思います。

 スピーカーユニットは完成し,エンクロージャの手配は終わりました。あとはアンプが必要ですが・・・実は案外これが面倒なんですよね。小型のスピーカーですし,音質に不満のあるテレビのスピーカーに使ってみようかと考えていますが,果たしてどうなる事やら。

京という名の計算機

 日本のスーパーコンピュータが世界一になりました。

 ニュースでも採り上げられていましたし,今回に限って言えば「世界一になる必要があるのか,2位ではだめなのか,1位のために700億円必要なのか」と,畳みかけるような詰問が話題になったことでも広く知られる日本のスーパーコンピュータ「京」が,Linpackベンチマークで8.16PFLOPSを叩きだし,TOP500リストで第1位に輝きました。

 2位のスーパーコンピュータに対し,3倍近い性能差という圧倒的な1位です。

 特徴はニュースでも報道されているのでここでは詳しく触れませんが,特筆すべき点は,その実行効率の高さと処理能力あたりの消費電力の低さ,そしてここまでの経緯です。

 そもそも,日本のスーパーコンピュータはCRAYのベクトル型を手本にして開発され,1980年代に世界を席巻しました。富士通,NEC,日立と,今で言うHPCの世界はコンピュータメーカーの意地と誇りを具現化するものとして,その先頭を走り続けていました。

 スーパーコンピュータは核実験にも使われることから,安全保障上の関わりも深く,経済大国,技術大国となった日本がこの世界"も"牛耳るようになることを,特にアメリカが懸念して,日本製のスーパーコンピュータに高い関税をかけて,事実上の締め出しを行ったことはよく知られています。

 一方で本家本元のアメリカのメーカーは,買収や倒産などを繰り返して,どちらかというと自滅に近い感じで消えていったのですが,これはPCの世界で高性能化が進んだx86のCPUを多数使ったスカラー型のスーパーコンピュータが,価格と性能のバランスから主流となったことと無関係ではないでしょう。

 PCを多数繋げて大きな計算能力を得ることは,正しいアプローチだと思いますが,私個人はこれによってベクトル型のスーパーコンピュータが駆逐されるとは思っていなかったのです。それは,あまりにアーキテクチャが違い,結果として目指すものも得られるものと違うので,共存するだろうと思っていたからです。

 しかし,ベクトル型のスーパーコンピュータは,共存するにはあまりに巨大で,あまりに高額すぎました。

 そんな中,NECのSXをベースにした「地球シミュレータ」が世界1位と獲得し,長くその席を譲らなかったことは,とても誇らしいことでした。日本製という事にはあまり関心はなく,生粋のベクトル型であることが,感動的ですらありました。

 記録だけではなく,天気予報,エンジニアリング,研究などに使われ多くの成果をあげた地球シミュレータですが,PCの進歩と同時に進むスカラー型スーパーコンピュータの性能向上に次第に追いつかれ,追い越されていきます。

 当然,次世代機種の開発が目指されますが,ソフトの互換性の問題やユーザーのベクトル型を望む声から,当然のようにベクトル型で作られることになります。

 しかし,スカラー型にはスカラー型の利点もあります。そこでベクトル型とスカラー型の複合システムという形で,2007年に概念設計が完了します。この結果,スカラー部は富士通が,ベクトル部とスカラー部との接続部分をNECと,NECと契約を結んだ日立という,日本の三大メーカーの連合によって,開発されることになりました。

 2009年には富士通から,このスーパーコンピュータ用に開発したCPUが128GFLOPSという世界最速のCPUとして発表されます。

 ところが同じ2009年,NECが事実上の撤退を決定,同時に日立も撤退します。ベクトル部の担当が抜けた以上,大幅なアーキテクチャの変更は避けられず,結局このスーパーコンピュータはスカラー型として再スタート,開発は富士通のみで行われる事になりました。

 さらに政権が民主党に移り,事業仕分けという公開処刑の場に引きずり出されたこのプロジェクトは,存亡の危機に立たされます。

 この話は大きな反響を呼び,一部感情論を巻き込みながら,国家と科学技術という大きな枠での議論に発展して,プロジェクト中止の危機を脱します。

 そして2011年,「京」というとてもより名前をもらったスーパーコンピュータは8.16PFLOPSという性能と93%という実行効率で,世界のトップに立ったのです。

 私個人は,世界一は素晴らしいことだし,日本という国には,これだけの力があるのだなあとつくづく感心したのですが,一方でお金がかかりすぎているなあということと,世界一位になることがいつしか目的にすり替わっていたんじゃないのかなあと思います。

 予算としては,すでに1000億円を超えています。既存の建物を使わず神戸にわざわざ専用の建物まで建設し,長い時間をかけて作られた「京」は,確かにお金さえかければ作れるような生やさしいものではないにせよ,お金にものを言わせた古い体質で作られたものであるという印象も拭えません。

 誰かが言ったように,スパコンの名を借りた公共事業というのは,事実かどうかは別にしても多くの人の持つ印象ではないでしょうか。

 それに,これだけの予算をつぎ込むのですから,それだけのリターンがなければなりません。そのリターンとして強調されたことが,世界一と夢と希望だとすれば,それは「ダメ」と言われてしまいます。

 そうではなく,これまでの計算機ではこれだけしか出来なかったことが,このコンピュータによってここまで出来るようになる,だから1000億円かける価値があるのだ,という説明がなければなりません。

 私などは,このことに気付いていなかったというだけではなく,世界一になること以外に,このコンピュータでなければならない理由などなかったのではないのか,と勘ぐってしまいます。

 高速なコンピュータを用意するという事は,いわば時間をお金で買うことと同じです。しかも時間とお金は比例せず,高速になるほどお金が余計にかかります。当然,その時々でもっともコストパフォーマンスの良い速度と金額というのが決まって来ることになり,技術の進歩というのは,極論すればその「旬の速度と金額」が底上げしていくことをいうのです。

 そりゃ,2秒かかるより,1秒で終わった方がいいに決まっています。だけど,2秒で100円,1秒なら200円かかると言われれば,まあ2秒でいいか,というのが「普通の感覚」でしょう。

 旅行に行くのに,安いけど時間のかかる列車と,高いけど時間のかからない航空機のどちらを選ぶかという話に例えると,「京」は航空マニアが自ら乗りたいと最速の飛行機をわざわざ作った,という感じです。

 私は,NECと日立が撤退したのは,こうした感覚のズレがあったことが根本にあったではないかと思っています。

 基礎研究にはすぐのリターンはない,宇宙開発も同じで,夢と希望も立派な目的だ,という意見には,反論はありません。私もそうだと思います。

 基礎研究も宇宙開発も,始めなければ全く先に進みません。他に変わるものもなければ,これを進める原動力は純粋な知的好奇心です。だからリターンがすぐになくても,夢と希望だけでも,許されます。

 一方,スーパーコンピュータはどうでしょうか。すでに一定の市場があり,その技術は民生品への転用が直接可能です。数年経てばもっとリーズナブルでもっと高い性能のコンピュータを作る事が経験的に可能と分かっており,しかも時間させ気にしなければ少々古いスーパーコンピュータでも同じ結果が得られるのです。

 この2つが同じもの?笑わせるな。

 夢?希望?君たちだけの夢だろう,希望だろう。

 科学技術の議論に経済合理性を引っ張り出すことに,嫌悪感を示す人も多いですが,スーパーコンピュータは「商品」ですので,経済合理性と共に議論されねばなりません。

 今年,BlueWaterというIBM製のスーパーコンピュータが,400億円ほどの費用で世界トップに躍り出ると言われています。1000億円と400億円,しかも性能は「京」の1.5倍と言われています。

 また,スーパーコンピュータは目的ではなく「道具」です。道具である以上,そこから何が生み出されるかも重要で,一緒に議論されなければなりません。

 こうした問題意識が私には依然横たわっていますが,それでも「京」というスーパーコンピュータは,高く評価されています。処理能力あたりの消費電力の低さ,富士通が作ったCPU単体の素性の良さ,ピーク性能ではなく実力の高さ,そしてこれらをささえるCPUの接続技術は,特に高く評価されています。

 「地球シミュレータ」にしても,「京」にしても,とってもよい名前です。名は体を表すといいます。「京」という日本生まれの才媛が,もっともっと高く評価されるように,彼女の父親と母親にはもっと頑張ってもらいたいと思います。

キュウリの種を蒔いてみる

 今年は原子力発電所が止まっている関係で,電気が足りません。毎日毎日「電気予報」なる笑えないダジャレに辟易しながら,我々は否応なしに電気が足りるか足りないかを日々意識して生活することを強いられています。

 無駄使いをしないことはとても大事な事です。我慢できる暑さをエアコンで快適にすることと,雨が続いて洗濯物が乾かず乾燥機を使うこととは,どちらも贅沢なことではありますが,どちらが切実かは説明の必要などないでしょう。

 私は夏ばてがひどい人で,寒いことには耐えられても,夏の暑さ,とりわけ汗が蒸発せず体温を下げてくれないような湿度の高い夏は,体温調整が下手くそな分だけすぐにぐったりして動けなくなります。

 さりとて冷房をすると,それはそれでまた体調を崩すので,暑い日はぴくりとも動かず,じっとしておくのが一番よいと知っています。

 こんなですから,私の場合,エアコンを使わないようにするという目的ではなく,少しでも涼しく過ごすという目的のために,今年はツル草を育ててみようと考えました。

 昨年の猛暑は電気が不足するという話がなかったにもかかわらず,軒先のゴーヤなどをよく見ました。ツル草は,私は視界が遮られて鬱陶しいし,見た目も気持ち悪いので基本的には嫌いなのですが,よしずやカーテンといった直射日光を遮る機能だけではなく,水が循環していること,その水が空気中に蒸発していること(蒸散といいますね)から,これを窓際に茂らせると本当に涼しいのだそうです。

 ツル草ですから,多年草で抜いても抜いても生えてくる,私の天敵「ヤブカラシ」なんかでもいいんでしょうが,さすがにこれは却下。

 お隣のおうちが植物好きで,ゴーヤを育てると伺ってから,うちもそういうたぐいのものを育ててみようと考えていました。しかし私は農家の出身の割にはまともに収穫できる野菜を作ったことはなく,嫁さんに至ってはサボテンさえも枯らしてしまう猛者ときています。

 実際,昨年はフルーツトマトとバジルの鉢植えキットをもらって育てましたが,フルーツトマトは花がほとんど咲かず,実もならずに枯れてしまいました。バジルも虫にやられ,気が付くと花が咲いて葉っぱが固くて風味もなくなり,そのまま放置していたら木枯らしが吹き始める頃に茶色くなって朽ち果てました。
 
 こんな我々に,夏の暑さをしのぎ,あわよくば食べる事の出来るものを育てることが出来るのでしょうか。

 会社を早く上がった日,近所のスーパーの園芸売り場をウロウロして,我々は壮大な計画を立てつつ,資材調達を行いました。

 育てるツル草は,キュウリです。

 嫁さんの情報によると,葉の茂りはヘチマ->キュウリ->ゴーヤなんだそうです。ヘチマもゴーヤも乾燥に強く,ほっといても育つと聞いていますが,キュウリはさすがにそんなインスタントな植物ではないでしょう。

 しかし,ヘチマなどは大きな実がなっても処理に困るだけ,ゴーヤは二人とも苦手な食べ物なので捨てるしかありません。食べられないものを捨てるのは心が痛まないけども,ゴーヤのように食べ物を捨てる(しかもそれが好き嫌いを理由にしている時はなおのこと)のは,さすがに良心が痛みます。

 そこで,二人とも大好きなキュウリです。

 計画としては,家にいっぱいある2lのペットボトルくりぬき,ここに腐葉土を入れます。ペットボトル1本につき2箇所ほど種をまき,これを3本作ります(結局4本作った)。

 めでたく芽が出てきたら,1階の窓硝子の前にネットを張り,ここに茂らせようというわけです。

 我々は植物を育てることを趣味にしてはいません。プランターなどを買い込んでしまうと,置き場所にも困りますし,捨てるのも大変です。気軽に用意出来て,簡単に捨てられる大きなペットボトルは好都合です。

 ちょっと小さい気もしますが,まあいいでしょう。キュウリにはかわいそうですが,やむを得ません。

 ペットボトルを横に倒し,上面をカッターで切り抜きます。底面には穴を開け,中に腐葉土を詰め込みます。指で1cm程の深さの穴を開けて種を数粒入れて,土を被せます。水をやって終わりです。

 作業は30分ほど。庭に出しておきました。

 しかし,ちょっと思い出してみると,昨年のフルーツトマトやバジルの時には,庭に置いた植木鉢に野良猫が毎日おしっこを引っかけるので,結局2階のベランダに引き上げたことがありました。2階のベランダは灼熱地獄。かわいそうなことをしたものです。

 すっかり忘れていましたが,キュウリとはいえ,一人前に育つには山あり谷あり,のようです。

 ふと思いついて窓をガラガラと開け,良さそうなキュウリを1本もぎ,さっと塩もみしてビールのつまみにするという夢は,果たしてかなうのでしょうか。

Bob Pease逝く

 ある日,ふと目にした記事に私は驚きました。

 米National SemiconductorのBob Pease氏が6月18日に亡くなったというのです。享年70歳。自動車事故だそうです。

 Bob Peaseは日本にも多くのファンがいる,アナログIC設計の大家の一人です。LM337をはじめ,多くのアナログICを手がけました。アナログICを作る事のみならず,使う事についても心を砕き,,彼がNational Semiconductorのホームページで主催していたアナログ回路の講座には,多くのファンがいました。

 世界を引っ張る技術力,独特の語り口に,個性的な風貌で,世界中の電子回路設計者の尊敬を集めた人でした。

 モノリシックOP-AMPの父と呼ばれ,バンドギャップリファレンスの発明者としても有名なBob Widlerは彼の数年先輩にあたり,その死が54歳という若さで突然訪れたとき,同じ仕事に取り組んだ同僚として,悲しみに暮れたといいます。Bob Peaseのページには,モノリシックICに革命をもたらしたBob Widlerを偲ぶ文章が掲載されています。

 日本にも何度か訪れ,熱心なファンがその一目見ようと駆けつけたと聞きますが,私は残念ながらご本人にお会いしたことはありません。

 誰にでも死は訪れます。しかし,今回の自動車事故はまさに驚きと言うほかありません。

 6月10日,伝説的なアナログIC設計者であるLinear TechnoligyのJim Williamsが亡くなりました。これだけでも大きなニュースなのですが,Bob Peaseは6月18日に行われたお葬式に参列した帰り,自ら事故を起こし帰らぬ人となったのです。

 わずか1週間の間に,我々は偉大な設計者を二人も失いました。特にBob Peaseは,多くのエンジニアに慕われ,また現在進行形で彼から学んでいましたから,特にその損失は大きいです。

 偉大な人が亡くなると,その度に時代の節目を意識しますが,NationalSemiconductorがTexasInstrumentに買収された後に続くBob Peaseの死去は,確実に1つの幕が下りたことを感じざるを得ません。

 ご冥福をお祈りするとともに,心から感謝したいと思います。

電動歯ブラシを買い換える

  • 2011/06/21 10:16
  • カテゴリー:散財

 いつ買ったのかを正確に思い出せないのですが,おそらく2000年か2001年に,ブラウンの電動歯ブラシを買いました。

 電動歯ブラシ?歯ブラシを動かすことがそんなに面倒くさいならもうメシなど食うな,とバカにしていた私でしたが,会社の売店(今はもうない)に2000円ほどで充電式のものを友人が買ったのを見て,そんな値段で買えるのか,と感心し,興味本位で買うことにしました。

 実際使って見ると,省力化と言うより,磨き残しを減らす効果があることがわかり,以後手放せないものになりました。おかげさまでこの10年,親知らずを抜いた事以外で歯医者にかかったことはありません。

 ブラウンの電動歯ブラシは,交換ブラシが結構高いのです。1つ800円くらいしたと思いますが,さりとて長持ちするというわけでもなく,ランニングコストの高さが頭の痛い問題でした。

 さすがに10年も同じ本体を使っていると,主に電池が弱ってしまって,パワーが出ません。冬の寒いときなど,歯磨き中に止まることもあります。これではさすがに問題があるなあということで,買い置きの歯ブラシを使い切ったところで,本体の買い換えも考えました。

 毎日使うものですので,あまりいい加減なメーカーのものを買うのは怖いです。かといって,ブラウンは消耗品が高すぎるので今回は候補から外します。実績と消耗品の入手性の良さから,やはり日本メーカーにしようと,今回はメーカーから決める事にしました。

 数ヶ月前にも近所の電気店に足を運びましたが,値段もピンキリで,その上違いがよくわかりません。結局買わずに帰宅したのですが,そうこうしているうちにブラウンの歯ブラシがもう限界に達し,もう呑気なことを言っているわけにはいかなくなりました。

 今度こそ,と同じ電気店に足を運びます。メーカーはもう決めています。パナソニックです。1年ほど前にヒットしたポケットドルツを嫁さんが買い,作りの良さとか歯ブラシの入手性などから,いいんじゃないかと思っていました。

 現場であれこれ悩むのも面倒なので,基本機能のみのシンプルな製品,EW-DL11を買うことにしました。9480円でした。(買ってから気が付きましたが,ヨドバシでは9980円に10%のポイント,どことは言いませんが6720円で買える店もあります。6720円という値段にはめまいがするような気がしました)

 リニアモータで20000ストローク/分(ということは333ストローク/秒)という速度で,これが音波振動という,わかったようなわからんような宣伝文句の由来なのでしょう。

 ということで,何度か使ってみました。

(1)持ちやすさ
 
 リチウムイオン電池とリニアモータのおかげで,軽く細く,持ちやすいです。高級感も質感も高く,これはさすがに日本のメーカー製だなと感じます。


(2)操作性

 キーは2つで,電源のON/OFFと動作モードの切り替えです。マイコンを内蔵するので動作モードとかいろいろ工夫できるのでしょうけど,果たして電動歯ブラシでそんな細かい芸当が必要かどうか,ちょっとわかりません。

 電源ボタンは押しやすく,操作に迷うことはありません。ただ,ちょっと小さいのと,指先で場所を探し当てる目印がないため,慣れないとブラインドタッチは難しいです。このあたりはブラウンの方が優秀でしょう。


(3)歯ブラシ

 ブラウンの電動歯ブラシは丸いカップが先端についており,ここに植毛されたブラシが左右に回転して,汚れを取ります。この動きは理にかなっており,使いやすさと除去性能があったのだと思いますが,機構が複雑で交換ブラシの値段が高価でした。

 パナソニックの電動歯ブラシの場合,先端だけが動くブラウンとは違って,歯ブラシ全体がストロークします。交換する歯ブラシ自身には可動部分はないし,複雑な機構も必要ないので値段が安くできるということなのでしょう。

 個人的には,ブラウンのような仕組みの方が良く磨けると思います。パナソニックのものは,ランニングコストを下げるために歯ブラシをシンプルに作り,そのためにかかえることになった弱点を,リニアモータという高性能な動力源によりカバーしようという考え方に基づいているのでしょう。

 個人差があるとは思いますが,磨き心地はブラウンの方がよいと思います。


(4)使ってみて

 30秒ごとに瞬間停止する機能は大変便利です。30秒ごとに磨く場所を変え,上下左右の4箇所をトータル2分で磨き上げます。電動歯ブラシは便利ですが,ついつい磨きすぎてしまいます。知覚過敏とか,歯が黄色くなる(表面が削れてしまう)の原因になるそうですが,毎回毎回時間を計るのは面倒です。

 それに,30秒ごとに場所を変えるという方法で,長めに磨いていた場所と,短めに磨いていた場所がはっきりし,短めの所は特に磨き残しがあった可能性が高いわけで,より確実に磨くための指針があることは,ちょっとしたことですがとてもよい工夫です。

 それで,どれくらい磨けたかについてですが,まだ使いこなせていないことを前置きして,結論だけ言うとブラウンの方が良く磨けています。

 歯の表面は,どちらも優秀です。もしかするとパナソニックの方が短い時間で綺麗になっているので,より高性能という事が言えるでしょう。

 しかし,私の歯のように隙間が多いと,この隙間に挟まった食べ物を取り除くことが重要な機能として求められます。ブラウンは,適当な大きさの丸いブラシが,左右の回転で歯の隙間に潜り込みます。奥歯についても同様でしょう。

 パナソニックのものは,歯の隙間は意識してブラシを隙間に差し込もうとしてもうまくいかず,結局2分の動作時間の後,手動で隙間を掃除する必要がありました。歯磨きの後,糸ようじで歯の隙間を確認しましたが,前歯の隙間は完璧でも,奥歯の隙間はかなり汚れが残っていました。

 ブラウンと比べてどっちが磨き残しがあるか,と聞かれれば,どっちも完璧ではないという答えになるように思いますが,こと歯の隙間の磨きやすさという点だけで言えば,ブラウンの方がよいと思います。


(5)後始末

 これもブラウンの方が楽だと思います。ブラウンの場合,歯ブラシを外して本体と歯ブラシをそれぞれザザーっと水洗いするだけです。本体はともかく,歯ブラシにはきちんと水抜き穴があいており,不衛生になることはありません。

 パナソニックもそうなのですが,外した歯ブラシには水が抜けないようなくぼみがいくつかあり,ちょっと気持ちが悪いです。ブラシに可動部分がないだけブラウンよりは衛生的でしょうから,これは気のせいということにしておきましょう。

 本体はブラウン同様防水ですので,丸洗いして置いておくだけです。ただ,ブラウンの充電スタンドには継ぎ目や隙間がないので,濡れたまま置いても心配ないですが,パナソニックは2つの部品に分かれることや,本体に接触する部分があることなど,やっぱりタオルで一拭きする手間を考えねばなりません。

 最終的にどちらが衛生的かと言えば,パナソニックの方がよいと思います。ただ,ブラウンの方はラフに扱っても大丈夫な,そんな工夫がなされていて好ましいです。


(6)まとめ

 ランニングコストを下げるために歯ブラシを簡略化,反面で落ちる性能をモーターと電池でカバーするという,まことに日本メーカーらしいアプローチで作られた電動歯ブラシだと思います。

 オムロンやフィリップスなど,他のメーカーのものを使って比べられたら良いのですが,自腹でそこまで出来る余裕もありませんし,マニアでもありませんから仕方がないわけですが,約1万円のパナソニックの製品と,2000円ほどで買えたブラウンの廉価モデルとを比べると,それぞれいい勝負というのが面白いです。

 ブラウンの場合,交換ブラシは4本で3200円,一方パナソニックの場合,安いものと高いものがあり,高いものは2本で945円,安いものは2本で420円です。

 1本あたりの価格ですと,ブラウンは800円,パナソニックは210円です。3ヶ月ごとに交換すると仮定して,1年あたりの差額は,3200-840=2360円です。

 ざっと,ブラウンの本体を2000円,パナソニックのものを1万円とすると,その差は8000円です。そうすると3年半でパナソニックの方が安くなってきます。やっぱり消耗品の値段というのは大きいですね。

 もし,パナソニックの歯ブラシを高価な方で計算すると,1年あたりの差額は1310まで縮まります。この計算だと6年以上使わないと,パナソニックの方が高くなってしまいます。

 この比較では,ブラウンの2000円が安すぎて,同じクラス同士の比較になっていないという批判もあるでしょうが,私個人はこの廉価版のものでも十分パナソニックに張り合えると思いますし,逆にパナソニックのものであれば,この値段以下のものは性能が落ちて不満を感じるのではないでしょうか。申し訳ないですが,ポケットドルツはほとんど電動による効果がないのではないでしょうか。

 安いブラシと高いブラシの差がどれくらい実感できるのかによりますが,もし安いブラシで性能がガタ落ちになるなら,ブラウンの廉価モデルを買うのがおすすめ,安いブラシでも十分で,なおかつ3年以上使い続けるならパナソニックがおすすめということにしましょう。

 うーん,あんまりお得じゃなかったかなあ。

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