エントリー

2020年10月の記事は以下のとおりです。

N-30がES9028で音を出す

 うちにはN-30という安いネットワークオーディオプレイヤーがあります。まだパイオニアがオーディオメーカーとして存在していた頃に,最も安い価格で登場したフルサイズのコンポーネントです。

 SACDの次はネットワークだと予想して,実際にその通りになった現実を見ていると,そのための再生環境がなかなか厳しい事に気が付きます。

 国内メーカーの製品はどれもマイナーな存在,一応10万円クラスの中級機はあるにはありますが選択肢が少なく,そこから上という事になると海外製の超高級機になりますが,そんなものは私にとってはないも同然です。

 中級機で気を吐くのがマランツですが,個人的に言わせてもらえばマランツと言うよりデノンのネットワークオーディオのUIや安定性がとにかく好きになれず,これが理由でマランツはアウトなのです。

 今さっと調べてみると,実売3万円でヤマハの製品が売られており,これがなかなか高評価です。ディスプレイを割り切ってスマートフォンで操作するというUIはこれはこれで潔いかも知れません。

 そんなことを考えていると,N-30を改造するネタを思いつきました。N-30が気に入らないのは音質ですが,これは本気のオーディオはアナログレコードかSACDと考えていた(別に言い方をすれば逃げていた)からで,音質よりはCDを持ってこなくて良いという利便性を優先していた結果です。

 しかし,新しいディスクは買うことがめっきりなくなり,手軽さとフォーマットによる制約から逃げるために私も配信の音楽を買うことが増えました。そうするともうこちらも本気のオーディオにするしかありません。

 かといって,今から20万円の予算を組んでネットワークオーディオを構築するのもなんだかもったいなくて,それならとN-30の延命を考えました。

 N-30の音質は重心が高く,ザラザラとして芯が詰まっていない印象があります。典型的な低価格機の音なのですが破綻はしておらず,安いなりに精一杯頑張っていると思います。

 ただ,これがRaspberryPiとVolumioで作ったプレイヤーに,安いDACを組み合わせたようなライトな感じをを漂わせていて,聴き込んでいこう気分を削いでしまいます。

 N-30はDACがAKMもAKM4480,後段のフィルタはNJM4580で構成されています。AKM4480は安価な機器によく使われているエントリクラスのDACです。悪くはありませんが,やはり軽い印象です。

 NJM4580は安いし手に入りやすいのでバカにされがちですが,私個人はとてもいい音がするOP-AMPだと思っていて,これを上手く使いこなした機器であればわざわざOP-AMPを交換することなどないと思っています。歪率などのスペックもデータシートに書かれた値よりも実力は良かったりするので,下手に海外製の高級OP-AMPにする必要などないなと思う訳ですが,音の傾向はやはり軽めです。

 アナログレコードの音を基準の1つとして考えている私としては,解像度よりも密度や重心の低さを楽しみたいわけで,ならばとN-30を改造することにしました。

 調べてみるとN-30はメイン基板からDAC基板への配線が判明していて,ごく普通のI2Sです。ただ,DAC基板にはそこで使う±15Vにアナログ用電源の回路も搭載されていて,電源の入力はAC30Vです。

 これにあうものを探してみると,ありましたりました。ESSのES9028Q2Mを搭載し,I2S入力のアナログ出力,電源回路込みというまさにおあつらえ向きのボードが3000円弱です。

 この手の基板モジュールは,最近特に中国のメーカーから有象無象に出ているものをよく見かけるようになりました。よく知られているのがLCDとコントローラ基板です。この2つがあればHDMI接続のディスプレイなどは簡単に作れてしまうわけで,私が以前購入した10インチのディスプレイも,これらを使ったものでした。

 コントローラとLCDの間は規格化されているので,まさに目的に応じた物を選んで差し込むだけで出来上がります。確かに中国では,以前ほどではないにせよ人件費も安いと言われていて,それがさも製品価格の安さの理由になっているような印象を受けますが,モジュールを大量に作るメーカーがあり,これを自由に組み合わせてさっと製品を作ってしまう水平分散の産業構造も安さの秘密ではないかと思いますし,そのために彼らは合理的なモジュールの規格化を進めてきたのだと思います。

 オーディオもしかりで,ES9028のような部品レベルで素人が手に入れる事が難しいものでも,こうしてモジュール基板で安価に手に入ります。安くて便利で,夢のようです。

 早速頼んでみましたが,良い設計をしていると一方で,品質管理や保管環境が今ひとつだと感じました。このあたりはもう一息だと思います。

 この基板が搭載するES9028Q2MというDACはかのESSのハイエンド向けDACです。前作のES9018はDACの世界を変えたと言われるほどの高音質で知られていますが,その後継品種として登場したものの1つです。

 2ch専用にすることで回路を簡略化し,小型化と低消費電力化を行ったものがこの基板には使われていますが,基本的な構成と性能は上位のものと同じとされています。この価格でESSの音が楽しめるなんて,ウソみたいです。

  ESS9028Q2Mからの差動電流出力は,NJM5532を使ったI-V変換に入り,差動電圧出力に変換されます。バランス出力端子にはここからの信号が出てきます。

 さらにNJM5534を使ったバランス-アンバランス変換とLPFを兼ねた回路に入力されて,シングルエンド出力として出てきます。

 電源はAC30Vでセンタータップが必要,これに加えてロジック用のACが必要で,これはAC7V程度もあれば十分です。

 入力信号はES9028Q2Mに直接入るもので,MCLK,BCLK,DATA,LRCK,DATAという普通のI2Sです。フォーマットは・・・調べてないのでよく分かりません。

 よく分かりませんが,N-30から取りだしたI2Sをそのまま突っ込むと,都合良く音が出てきました。いろいろなサンプリングレートにも対応するので,問題なく動作しているようです。

 音が出るところまで確認出来たら,後はアナログ部分のアップグレードです。まずI-V変換のOP-AMPを交換です。I-V変換は音質への影響が大きいので,ここは高精度,高音質なものを使いたいです。PCM1704を使った自作のDACでは,迷わずOPA627を使ったところです。

 あいにくOPA627は手持ちもないですし,差動で使いますから合計4つも必要です。そこで手持ちのOPA604の2個入りであるOPA2604を使うことにしました。

 LPFのNE5534は,シングルの音質の良いOP-AMPが手持ちにないのでこのまま使うことにしようと思っていましたが,回路を追いかけると位相補償もオフセット調整も行っておらず,これらの端子はすべてオープンでした。

 ということは,2回路入りのうち1回路だけ使うという作戦がとれます。

 腐るほどある面実装のOPA2134を変換基板に取り付けてDIPにする時,ちょっと足を入れ換えてNE5534として使えるようにしたところ,これが上手く動作してくれました。よし。

 あとは音質に影響のありそうなコンデンサと抵抗を入れ換えていきます。

 まずコンデンサはLPFの時定数に関係する390pFと100pFをマイカコンデンサにします。手持ちの関係です。

 抵抗はI-V変換の560Ω,LPFの時定数に関係するものをすべて金皮に変えます。これも手持ちで済ませたいので,並列に繋いでなんとか値を作り出しました。

 電源は,AC30Vはそのまま流用,デジタル用の電源は流用出来るものがないため,AC8Vのトランスを1つ追加しました。


 少しずつ作業をして3日ほどで完成,今回はトラブルもなく,難しい改造もしないようにしたため,悩むことなく終了しました。

 さて,肝心の音ですが,狙い通りです。これまで硬質で薄い殻のようだった音が,しっかりと中身の詰まった重心の低い音に変わっています。ザラザラとした荒っぽさもとれ,滑らかで上質な音になりました。

 また,位相特性も改善されたのだと思いますが,定位感が抜群になりました。それぞれの楽器がバチッと定位するのはもちろんですが,知れらが平面的ではなく,ちゃんと奥行きが出ています。定位の精度が高まった結果,それぞれの音の発生機構の容積を表現出来るようになっているのだと思います。

 とにかく,密度の高い音である事が素晴らしく,簡単な改造でこれだけ改善するというのは素晴らしいです。

 うちではもっとも高性能なDACが作り出す音が,N-30から出てくる事になりました。N-30をもうバカには出来ません。うちのメイン機材に昇格することになりそうです。

 ところで,20年以上前に作ったPCM1704のDACのアップグレードも検討中です。このDACは私にとっては記念碑的なものであり,現在の私の有り様を決めてくれたありがたい存在です。

 製作当初はPCM1702にSM5842APという組み合わせで最高の音を狙っていましたが,10年ほど経過したところでPCM1704にアップグレードしました。

 8倍オーバーサンプリング24bitデジタルフィルタと24bitのマルチビットDACによる音は他を寄せ付けないものだったのですが,ハイレゾに対応しないため使うことがなくなりました。

 そこでハイレゾ対応にする計画を立てたのですが,あいにくSM5842APの後継に当たるチップはなく,TI純正のDF1706はすでに入手不可能,ここに至って現行システムをそのままハイレゾ化することはあきらめざるを得なくなりました。

 そうなると手は2つあり,1つはデジタルフィルタをなくして直接DACにPCMを突っ込む方法です。一部のマニアの間で評判の方法で,デジタルフィルタが発生させるプリエコーなどの有害な信号が原理的に発生しないことが評価を得ています。

 ハイレゾの時だけ直結という動作も考えたのですが,サンプリング周波数が変わってしまうとポストフィルタの設計を見直さなくてはならず,またここはディスクリート構成のOP-AMPに1次のLPFを担わせて,緩やかなフィルタリングを行うというコンセプトで作ったものですから,安易に変えられません。

 そうなるともう1つの手です。デジタルフィルタとして,非同期型のサンプルレートコンバータを使うのです。

 SRCというのは,極論するとDACで一度アナログにした音をADCで再度デジタルにする処理のようなものです。サンプリングレートを極限まで上げ,量子化ビット数を極限まで上げると,アナログになります。

 サンプリングレートを上げることも,量子化ビット数を上げることも,結局フィルタを通すことですので,SRCも結局はデジタルフィルタです。

 ただ,同期型ではなく非同期型というのは,入力側と出力側のサンプリングレートの比率によって波形や特性が変わってしまうことを覚悟しないといけないので,単純なデジタルフィルタの方がこういうケースでは望ましいと思います。

 非同期SRCを使うとは言え,出力のサンプリング周波数が192kHz止まりじゃ意味がありません。PCM1704が動作する768kHzまで上げられないとダメなのですが,そういうSRCってほとんど見当たりません。

 唯一見つけたのがAKMのAK4137です。ハイエンド向けのSRCということで性能も良いのですが,音質については今ひとつという評判です。

 このSRCを使った基板モジュールも中国製の物を見つけました。時間はかかるでしょうが届き次第,どんなものか確認してみたいと思います。

 同時に発注したCS8416と組み合わせ,192Hzの24bitでPCM1704をならしてみたら,どんな音になるのでしょうか。ワクワクします。

IPoEへの切り替えとIPv4とのお別れ

 光回線が開通して数日経過しましたが,これまでのPPPoEからIPoEへの移行申し込みが出来るようになったようなので,早速お願いしてみました。

 必要なのはCAF番号なるものなのだそうですが,これがいつ手に入るのか私にはわかりません。プロバイダの登録情報を見ても,ここは私自身が記入する蘭になっており,プロバイダが埋めてくれるものではないようです。

 NTTからの開通通知が郵送される(らしい)のを待つかと思っていましたが,もしやと工事完了の控えを見ると,小さくCAFに続いて10桁の番号があるではありませんか。

 きっとこれだろうと,この数字を使って申請を行ったのが木曜日の22時頃です。

 すると翌朝には,HGWのPPPランプが消えて,見事にIPoE接続に切り替わっておりました。ログを見ると早朝4時頃に切り替わったようです。

 いよいよこれで光ファイバへの移行完了だと喜んで速度を測ってみましたが,あまり変化がなくがっかり。ひょとしてIPoEで繋がっていないのかもしれないと確認サイトで調べてみますが,やはりIPoEで繋がっています。

 以前から比較的速度が出ていた午前中で,下り300Mbps程度です。もっと速くなることを期待したんですけどねえ。

 上りも同じくらいの速度が出ています。ただ,これは昨日もこのくらいの速度が出ており,IPoEだから改善されたものとは言えません。

 速度が低下し始める昼過ぎならどうだろうと思って調べてみますが,速いときでも160Mbps,遅いときは30Mbps程度まで低下します。昨日に比べて最大値は上がっていると思いますが,平均した速度はそんなに変わっていない印象です。

 うーん,こんなもんなんかなあ。

 ベストエフォートですし,100Mbpsを越えたら実用上困ることはありません。それに相手側の速度にもよるので,そんなに高速になることを期待していたわけではないのですが,昨日からの差が小さくて,ちょっと拍子抜けという感じです。

 ちょっと後悔しているのは,サーバーの公開に影響が出てしまったからです。

 事前にわかっていたことなので文句はないのですが,うちはWEBサーバを自宅に立てていて,これでblogをつけて公開しています。セキュリティの心配は死ぬほどあるのですが,blogごときにお金をかけてレンタルサーバーを使うのもバカらしいということで,自宅で用意をするようになって随分経ちます。

 QNAPが用意してくれるDDNSを使っているのでドメインも無料,証明書も無料で使わせてもらっているのでお金がかかっていないのはうれしいのですが,その代わり何か起これば自分で解決しなければなりません。

 光回線に移行したとはいえ,PPPoEならこれまでのADSLと同じようなものですから,ルータを差し替えるだけで完全移行が出来ました。しかしIPoEの場合はそうはいきません。

 IPv6しか通らなくなってしまったことが原因で,うちのサーバーにアクセス出来なくなるのです。

 あれこれ対策を考えたのですがもう面倒なので,サーバーにIPv6のアドレスを割り振り,ルーターにはこのアドレスを通過させるような設定を行い,繋がるようにしました。DDNSにはIPv6のアドレスを登録しておきます。

 これでとりあえず外から繋がるようになりました。しかし,当然のことですがIPv4の人達からは繋がらなくいるはずです。

 確かめたいのですが,あいにくIPv4しか使えないクライアントが手元にありません。よく考えてみると,IPv4しか使えないものって,もうそんなに残ってないんですよね。スマートフォンにしても,最近のWindowsやMacOSも,もうIPv6は当たり前なのです。

 自分自身が特に不便を感じないので,このままいこうと思います。IPv4の慣れ親しんできた私としては急にやってきたIPv4とのお別れにさみしさを感じますが,せっかく光回線にしたんですから,いい機会だったかもしれません。

 

我が家がひかりで繋がった

 我が家に,光ファイバが繋がりました。

 私がまだ小学生だったころ,電話は電気から光になり,銅で出来た電線に変わって光ファイバなる物に置き換わると聞かされていました。ひかり・・・なんと未来的な響きである事よ。

 思うに,ひかりという言葉に未来性を感じるのも昭和生まれの性でしょう。今は無線が通信においては最もホットな技術ですが,もともと電気とは別物である(実は同じ電磁波であるわけですが)あの身近な光が通信に使われるなんてのも,なかなか興味深い話だと個人的には思います。

 バックボーンは早くから光に移行して我々の生活を支えているわけですが,一昔前にFTTHと呼ばれ,光ファイバ普及の最大の関門であった個人宅への光ファイバの引込も今や普通に行われる時代です。

 我が家はずっとADSLでした。個々に引っ越してからは安定して下り10Mbps出ていますし,なにより安価でした。プロバイダ料金まで込みで2000円ちょっとというのは,とても負担が軽くて助かっていました。

 しかし,ADSLはアナログ電話の設備をそのまま使ったサービス故に安価だったわけで,それらを新しい物に更新して維持し続ける事を前提にしないからこそ,この値段だったわけです。

 だから,NTTがアナログ電話をやめるつもりである以上,ADSLはいずれ廃止される運命にあります。残念ながら,とても気に入っていた我が家のADSLも,来年4月にハイされるという案内が届きました。

 夫婦がテレワークを使う状況にあることで,ADSLではちょっと物足りなくなっているのも事実です。ギリギリまで粘ることも考えましたが,これを機会に光に移行することにしました。

 私はhi-hoをダイアルアップの時代から使っており,最安ではないにせよダイアルアップとモバイルのダイアルアップ,そしてADSLまで全部基本料金だけでOKというつぶしの利くサービスに満足していました。

 メールアドレスも変えたくないですし,ワンストップで手続きが出来るhi-hoひかりというサービスをさっさとお願いすることにします。

 これ,確かに最安ではないのかもしれませんし,速度も速くないと評判ですが,下回りはNTTの1GbpsでIPoEも無料でOK,ADSLからの移行で工事費用なども無償になるので,トータルで考えるとそんなに悪くない選択肢です。他のプロバイダに乗り換えると解約に新規手続きと面倒な上,移行の間にネットと電話が使えなくなる時間が長く発生するかも知れません。それは,在宅勤務の我々には致命的な問題です。

 ADSL廃止の連絡が来たのが9月30日,以前から案内が来たらすぐに光への移行をしようと考えていたことから10月1日は移行の手続き,10月13日に工事完了と開通という手順を経て,現在光ファイバでネットワークに繋がっています。

 工事は本当は午後予約で,13時から17時までのどこかで,という話だったのですが,当日午前中にキャンセルが発生し,ここで工事をしてもらえたことで午後には開通していました。助かりました。

 感慨も深く,光で繋がったネットワークを使ってみても,そんなに高速だという印象もありません。常時10Mbpsほど出ていれば普段の生活に問題はなく,時々我慢すればそれで平和に暮らせていたわけですので,まだ高速だという恩恵を受けているという感じはしていません。

 速度を測ってみれば,お昼すぎだと下りで300Mbps程度,上りで100Mbps弱です。上りの遅さは気のせいのレベルではないと思うのですが,これが夜になると1/10くらいまで悪化しますので,体感としても依然とそんなに変わりません。

 ということで,毎月の費用も上がる上に,2時間以上かかった工事を経て,実際に変わったことはほとんどなく,なんだか物足りない気持ちです。

 今回の移行は,速度などのサービスに不満があったわけでも,新しい事がやりたかったわけでもなく,ただ相手の都合に合わせて行っただけのものです。確かに高速にはなったのかも知れませんが,遅いことに不満がなかった以上,高速であることを意識するシーンは少なく,これが手応えのなさに繋がっているのだと思います。

 ADSLに移行したとき,何よりうれしかったのは常に繋がっていることでした。ダイアルアップから常時接続というのは,もう劇的なユーザービリティの進化だったのです。

 光ファイバによるユーザビリティの進化は,速度だけです。私自身がADSLの速度に合わせて生きてきた以上,急に10倍速くなったと言われても,そりゃ持て余しますわね。

 OSのアップデートとか,大容量のデータのダウンロードとか,動作配信などがあれば実感するでしょう。高速であることを活かしたサービスの利用も自然に進むと思いますし,私がと言うより周囲が光ファイバを前提にサービスを組み立てるでしょうから,今のうちに移行する事は損だとも思いません。

 さて,本命のIPoEへの移行は,開通後1週間ほどかかってようやく申し込みが出来るとの話です。最初からIPoEで開通すれば済む話だと思うのですが,それはダメなんだそうです。

 聞けば600Mbpsも夢ではないとの話。それだけ出れば体感速度も変わるでしょうし,家の中と外を区別しないと言う,全く新しい概念でコンピュータと向き合う事になります。これはとてもワクワクすることです。

 PPPoEなどという30年も前の仕組みからはさっさと足を洗い,本来のシンプルな接続方法であるIPoEに移行する事で,気分的にも次世代通信環境の整備が終わる感じがしています。

 IPoEは,いわば屋外にイーサネットを這わせて,NTTにあるルータに直接つなぐようなものです。家にあるマシンのすべてがそれぞれ直接繋がるようなイメージですから,銅線,無線,そして光と,3種類の物理層で家の外と中を,文字通り区別することがなくなります。

 IPv6,IPoE,そして500Mbpsオーバーの通信速度という3つが揃えば,確かにネットワーク環境は完全に世代が変わったと思えます。すべてのコンピュータがユニークなアドレスを持ち区別なく繋がって行く世界は,すぐそこまで来ています。

 1987年に1200bpsで始まった通信は,1991年に14.4kbps,1998年には56kbpsになりました。

 2001年には1.5MbpsでADSLで常時接続,2006年に12Mbpsになって,2020年にようやく1Gbpsの光ファイバです。

 インターネットが民間に開放されるまで,パソコンが繋がることのメリットはフリーソフトが手に入るということくらいで,そもそもの用途が限られていました。しかし,今やインターネットに参加しないことは考えられず,それはコンピュータとしての価値を左右するほどの問題です。

 ようやく常時接続の必要性が生まれ,あとは速度向上が応用範囲を広げてきました。

 あらゆる情報が数値化され,数値化されればネットワークで時間と距離を超えて共有出来る,もちろん誰かが最初にネットワークを敷設してくれるから可能になることなのですが,最終的に大多数の人達が大きな利益を享受出来ます。

 我々の体は物理的な存在ですから,これをなくすことは出来ません。しかし,その制約を最初に一度だけ越えておけば,後は体を意識しなくて済むと言う話はとても面白く,私にとっては歓迎すべき世界だなと,今回つくづく思いました。

 問題は,その最初に一度だけ越えねばならない壁を,誰がどうやって越えるのかです。私の工事でさえも,人一人が2時間の間,電柱に登って降りてを繰り返していました。これでようやく私は自分の体の制約を超えることが出来たわけです。

 その「誰か」が公平な方法で選ばれる必要があるでしょう。勝手に独りでにインフラは整備されません。誰かが人知れず物理的な作業を行って整備されるものであることを忘れないようにしたいと思います。

 

MacBookProのキーボード修理とユーザー体験


 2016年の秋に購入したMacBookProは,もうすぐ購入後4年になります。

 新しいアーキテクチャに切り替わるタイミングを今か今かと待ちわびて,予約までして購入したマシンですが,この4年間は十分に活躍してくれています。

 この世代のキーボードにはあれこれと難癖がついていて,1つはバタフライ式キーボードの問題と,もう1つはESCキーがない事への不満です。

 いずれの問題も後にユーザーの意見が通って変更されているので,Appleの設計者は悔しい想いをしていると思いますが,数の少ない高級機のユーザーの意見を,それまでにかけた開発費用を捨ててでも取り入れる誠実さ(とお金持ちっぷり)には,アップルらしさを感じます。

 そのキーボードですが,使い心地は別にして,壊れやすいというのが深刻です。構造的にホコリを噛み込みやすく,その結果押し心地が大きく変わってしまう,何度も入力される,入力されない,というトラブルが高確率で発生します。

 この問題はプロの道具としては致命的で,先にアメリカで問題になった後,リコールがかかっています。日本でも同様の対応が取られており,購入後4年を期限とし,減少が見られた場合には修理が無償で行われることになりました。

 私のマシンは幸いにして深刻なキーボードの問題はなかったのですが,カーソルキーのdownキーが,半分くらいの割合で入力されないという問題が出るようになってきました。

 以前から入力されないことはあったのですが,これほど確率で入力されないようになってきたのは最近のことで,作業効率が大きく低下して困っていました。

 改めて調べてみるとそろそろ期限が切れるではありませんか。そこでアップルのサポートに問い合わせることにしました。

 とりあえず電話しようと調べてみると,申し込みをすると先方から折り返してくれる仕組みです。すいていたようですぐに折り返しがありました。

 話をするとあっけないくらいに修理の手続きが進みます。あれこれと疑われたり,ストレージの初期化からOSの再インストールをやれと言われたり,無償にならない場合があるという細かい説明を繰り返されたりといううんざりする定番のやりとりは全くなく,すぐに修理受付に進みました。

 近くにアップルストアがあるのですが,コロナ禍という事もありますし,その場で修理が出来るわけでもないので,引き取りをお願いしました。

 とても丁寧で気持ちの良い対応を頂き,こちらが恐縮したわけですが,最速でお願いした引き取りは翌日土曜日の午前中に,付属品も書類もなし,ただ本体だけをそのまま梱包もせず,ヤマト運輸の担当者に手渡して完了しました。

 まあ,土曜日の午前中に渡しましたから,日曜日に到着しても作業は行われないだろうし,最短で火曜日受け取りかなあと思っていたら,なんと月曜日の9時過ぎに私の手元に戻ってきました。

 まさか修理されていないじゃなかろうなという心配は杞憂に終わり,めでたく私のMacBookProのキーボードは完調になっておりました。

 よく知られているように,このリペアはキーボードの交換だけでは済まず,トップケースとバッテリーも交換が必要になります。万が一有償になると6万円近くかかる大修理なわけですが,これがすべて無償です。4年も前に購入したマシンですからね,なんだか申し訳ない気がしてなりません。

 もちろん気分良く使えていますし,見た目も新品に生まれ変わったみたいでうれしいのですが,それにしてもこのアップルの対応,すべてがこちらの期待を越えるもので,これまで受けたいろいろな会社のサービスやサポートのなかで,最高のものであったと思います。

 きちんと修理されていることはもちろん,高額な修理費用が無償になったこと,電話の対応,迅速な手続き,土日に関係のない修理作業,,発送から返却までわずか50時間という驚異的な短さは,すべてがユーザーの不安を解消し,実害の発生を最低限にとどめ,それらに対する覚悟が肩すかしに終わるような,素晴らしい体験だったと思います。

 日本はおもてなしの国だとかなんだとか言う人もいますが,日本のメーカー,それも日本を代表するような名だたるメーカーのサービス対応はとてもさみしい物で,ユーザーを疑うことから始まり,なかなか非を認めず,ごねた人には「特別対応」をして逃げ切るかと思えば,修理そのものも適当で直っていない,他を壊して戻すなども頻発しています。

 購入後すぐに修理が必要になることも問題でしたし,修理期間が最低でも10日,私のケースでは3ヶ月もかかり,その間全く使えないことも当たり前だと開き直ります。

 工業製品ですから完全を求めるわけにはいかないものですし,その結果安価に製品が買えているわけですから納得もするのですが,それでも結局誰が一番損をしているかといえばユーザーです。

 さすがにUX先進国のアメリカだけに,製品を売って終わりということではなく,買う前からその商品を手放すまでの間のユーザー体験を最大化しようという発想が根底にあるんだなと,今回の事で本当に感心しました。

 同時に,そうしたユーザー体験を提供するために,莫大な費用を用意出来るアップルという巨大企業の,お金の使いどころに恐ろしささえ感じました。

 製品にお金を支払うというのではなく,その製品と共に過ごす時間を買うのだという意識は,日本のメーカーとだけ付き合っていては見えてきません。

 amazonもここ最近,急激に使い心地が良くなっていると感じます。私はヨドバシの方が断然いいと思っていましたが,最近のヨドバシの劣化も相まって,amazonが本当に気に入ってきました。

 かつてはサポートの電話番号も非公開ですぐに連絡をする方法がありませんでしたし,運送業者に渡してしまえばあとは知らんというスタンスでしたが,それも今では信じられません。

 買うときのワクワクだけではなく,買うときの心配を取り除く工夫,買った後の後始末まで,マニュアル通りの対応ではなくそれぞれのケースで最善を尽くそうという方針に,これもユーザー体験を買っているのかも知れないなあと思うようになってきました。

 アップルもamazonも北米の会社です。日本での対応は本国の許可が必要なはずですし,日本市場を重視するとは言え日本のメーカーや小売店を越える必要はありませんから,彼らのワールドワイドの方針に従っているのだろうと思います。

 とすれば,それはグローバル化の1つ,ということになります。

 日本の持っている物が良い場合(多くの場合その通りでした)において,グローバル化というのは後退を意味するケースもあったでしょう。しかし日本の持っている物は良くないものになっていたり,海外の方がもっと良いものだったりすることも増えていて,いつの間にやらそれらが「標準化」された結果,非常に良いものに改善されることが,日常的に起こっていると気が付きました。

 もともと私は日本だ海外だと区別してものを考える事を不自然に感じる人でしたが,国内の状況が少しずつ悪くなって行くことは肌で感じていて,海外において行かれているなあという焦りのような物を感じる事も増えてきました。

 それは発展の著しい国々の猛追だけではなく,もともと日本の先を走っていたアメリカやヨーロッパとの間が,また少しずつ開いてきているという実感です。

 しかしながら,私は心配していません。日本国内の会社がだめでも,これまで通りアップルとamazonに頼めば済むだけの話なのですから。
 

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1

ユーティリティ

2020年10月

- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed