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DiskIIの調整と修理

  • 2024/05/20 12:42

 先日,久々にAppleII-Plusを立ち上げて遊んでいました。

 暑い夏から寒い冬を経て,久々に遊んだわけですが,心配していたとおり調子が悪くなっていて,かつての調子の良さがどこへやらという感じです。

 具体的には2つ。以前も少し書きましたが,暖まってくるまで起動に失敗するという問題に加えて,暖まってくるとハングアップするという問題を併発しています。

 これは時々そうなるという再現性の低さが面倒で,対策は対症療法にならざるを得ません。一応,すべてのICの足を磨いて,基板のハンダ付けをやり直しましたが,それでもまだ少し不安定です。

 もう1つの問題は,急に浮上したDiskIIの問題です。純正のドライブ(CA3146が壊れていたので互換部品を手作りしたやるやつです)の最初のを4とラックほどでリードエラーが頻発し,多くのディスクが起動不能になっていました。

 この問題,突然起こってしまったのです。

 もともと,久々の仕様だったこともあり,ディスクの回転数くらいはチェックしようと,2台のドライブの回転数を確認したところ,やっぱり少し狂いがあったので調整のため分解,再調整を行ったことがスタートでした。

 コンパチドライブ(松下製のドライブを使ったPAXエレクトロニカの製品)は以前から回転ムラが大きく,実使用で問題になるほどではないのですが,純正(シュガート製ドライブ)の安定性に心奪われてしまい,出来るだけ小さくなるようにと以前から考えていたことを試していたのです。

 ベルトの変形は指で戻し,プーリーに固着したものを剥ぎ取って磨きました。スピンドルの回転が渋かったので注油を行い,コレットも取り外して注油しました。

 結論から書くと,これだけの対策を行っても全く変化がありません。これはモーターそのものか制御基板に問題があるとしか思えません。どっちかというとモーターのような気がしますが,さすがにモーターを分解するのもリスクが大きいので,これはもう諦めました。

 しかし,スピンドルへの注油はかなり回転負荷の軽減に役立ったはずで,これを純正のドライブにもやっておこうと考えた私は,さっさと純正のドライブも分解して注油を行ったのです。

 作業そのものは簡単で,なにも問題がなかったのですが,どうもここからリードエラーが多発するようになったようなのです。注油で問題が発生するというのもおかしな話で,例えば油がどっかに付着してしまったとか,そういう理由ならすべてのトラックでエラーが出そうなものです。

 いろいろ調べてみましたが全然改善せず,これはもうアナログボードの調整をやり尚するかないという結論になりました。それでもダメならリード回路の不良,特にリードアンプICであるMC3470の不良でしょう。

 というわけで,調整です。

 メカ的な調整はリスクも大きく,特に問題となっていないので今回も基本的には行いません。もちろん問題が発覚すれば調整しますが,波形を見る限りそうした問題もなさそうなので,今回も手を出さないことにします。

 で,アナログボードの調整なのですが,実は複数のドキュメントと複数の調整用プログラムによる,複数の調整方法があります。前回の調整の時はあれこれととっかえひっかえと試したので苦労したのですが,今回は次回の調整を手軽にすることも考慮して,出来るだけ簡単に調整ができる方法を模索してみます。

 で,模索した結果が以下に示すものです。これが一番確実でわかりやすく,短時間で終わると思います。他の方法は半固定抵抗を回しても波形に変化が出にくかったり,書かれたとおりに調整をしてもエラーが連発したりと,正直よくわかりません。

・準備する物

(1)オシロスコープ
 オシロスコープは必須です。帯域は100MHzもあれば十分ですし,2現象でなくても構わないのですが,ジッタを見るので表示されてからの時間経過で徐々に色が薄くなるタイプのデジタルオシロか,いっそのことアナログオシロがあると理想です。

(2)テストディスク
 LockSmithとかAppleCillinIIとかSAMSのマニュアルに書かれたプログラムとか,いろいろあるんですが,結局一番確実なのは,Apple純正の「Disk Alignment Aid (652-0199)」が一番です。これをまともなドライブでディスクに作成し,起動することを確認しておいて下さい。

(3)ブランクディスク
 調整中,フロッピーディスクを読み書きするのですが,この時データが壊れてしまうので,ブランクディスクを1つ用意します。
 基本的にはなんでもいいのですが,エラーのあるディスクを使うと調整の結果が信頼出来なくなってしまいますので,ここは奮発して日本製のブランドディスクを使います。私のお気に入りは3Mのやつです。
 もちろんノーブランドでもいいんですが,なかには回転摩擦が大きくて,ディスクの回転数に影響を与えるほどのものもありました。回転速度の調整にはこういうものを使うのはまずいです。

(4)マニュアル
 「Apple Service Level1 Technical Procedures #072-0062 Volume V」がお奨めです。見やすく,迷わないように作られています。


・まず最初に回転数の調整

 回転数はの調整は諸説あり,スピンドルのプーリーの縞模様(ストロボスコープ)が蛍光灯の光の下で静止するようにすればいいというものから,LockSmithなどのツールを使う物まで,しかも少し遅めがいいとか,ぴったりがいいとか,入り乱れている印象です。

 どれもそれなりに理にかなっているとは思うのですが,ある方法で調整したドライブを別の方法で確認すると大幅にずれていたりして,気持ちが悪い物です。

 そこで今回は,純正のマニュアルに従って純正のツールで行います。あ,オシロスコープはいりません。

(1)Disk Alignment Aidを起動し,DSPEEDを選択。このツールはちょっと変なUIになっていて,Sキーで選択,Aキーで決定です。

(2)ブランクディスクに入れ換えて調整スタート。

(3)回転数がプラスマイナスゼロになるように調整したらOK。マニュアルにはプラスマイナス26の範囲ならOKと書いていますが,せっかくですからゼロにして下さい。

(4)ドライブによっては変動があると思います。そこで128ステップの平均が-5から0になるように根気よく調整して下さい。可能であれば,最大と最小の値もこの範囲に入るようになるとベターでしょう。
 注意点は,プラス方向に振れないことです。速いと1周回ったときに先頭のトラックにかかってしまうことがあります。もちろんマージンは持っているので気にしなくてもよいのですが,襲い場合には破壊は起きません。まあ,気休めみたいなもんですが・・・


・リードアンプの調整

 DiskIIは,書き込み回路の調整がありません。つまり,速度さえ出ていれば,仮にエラーが出ていても書き込みそのものは製鋼している場合が多いです。一方で読み出し回路の調整はなかなかシビアで,経年変化もそうですし,ICを交換したら再調整が避けられません。

 この調整は,リードアンプICのMC3470の,コンパレータの調整を行うものです。

(1)オシロスコープをアナログボードのTP5とTP7に繋ぎます。GNDはTP3かTP4でとって下さい。

(2)オシロスコープを,1uS/div,CH1を1V/div,CH2を2V/div,トリガは立ち上がりエッジに設定。トリガソースは,結局CH1とCH2は同期しているのでCH1,CH2のどっちでもいいです。

(3)Disk Alignment Aidを起動し,Amplitude testを選択し,ブランクディスクに入れ換えてテストを実行。

(4)すると,下のような波形がでてくるはずです。

20240520124426.PNG
 上がTP5,下がTP7です。どちらも1周期は約4usになっているはずです。

(5)下の水色の波形で,波形のジッタが最小になるようR28を調整します。
 ジッタというのは時間的な揺らぎのことです。この波形では,トリガが画面中央でかかっていますが,その左右の波形はどのトリガで描かれたものであっても,本来は同じ時間で描かれるはずなので,くっきりと描かれてなければなりません。
 しかし実際には波形の間隔はばらつくので,毎回描かれる場所が変わります。描かれてからの時間で色の濃さが薄くなるオシロを使うと,この重なり具合がよく分かるのです。
 ジッタが少ないと線が細くくっきりと見えるのに対し,ジッタが多いと太くてぼやけた線になります。
 ですので,出来るだけ線が細くくっきりと見えるように,R28を調整します。


(6)上の黄色の波形で,左側の立ち下がりエッジから,ピコッと飛び出した角の部分の頂点の間の時間が,2.5usから3.0usになるよう,R33を調整します。
 経験則ですが,長めにとっておいた方が良さそうだったので,私は2.9usに調整することにしました。

(7)(5)と(6)を繰り返します。

 これで電気的な調整は終了。

 実はマニュアルには,信号の振幅のチェックとかアジマスとかトラックの位置とか,いろいろチェックするように書かれています。しかし,チェックだけしても調整箇所がないものとか,メカの調整が必要になるものなので,結局見ても気休めにしかなりません。

 調整が終わったら,普段使いのディスクから起動するかどうか,LockSmithでチェックして,エラーがないことを確かめて下さい。


 さて,実はこの調整で上手くいかない場合があります。今回の私がそうでした。

 実は上記の波形はコンパチドライブの波形です。回路は純正と同じに改修してあるので同じ物と見てもらって構わないのですが,一方の純正も同じ手順で調整を行ったところ,リードエラーが多発し,LockSmithでもエラー連発という状況でした。

 ちょうど最初の数トラックが全滅で,これって今回の初期症状と全く同じです。

 特に,ジッタを最小にした調整ではダメで,わざとずらしてジッタを増やしてやるとエラーがおさまるのです。調整がおかしいのか,マニュアルがおかしいのか・・・

 悩んだのですが,可能性の1つとしてMC3470の故障を想定し,互換品であるExarのXR3470に交換してみました。

 最初は全くディスクを読み込まなかったのですが,上記の手順で調整をすると,エラーが全く発生しなくなりました。波形は以下の様に,黄色の波形がMC3470のものとは大きく異なっています。

20240520124515.PNG

 XR3470も互換品とは言いつつ,内部の回路には違いもあるようで,それが違いを生んでいるのかも知れません。

 はて,どうしたものか。結果としてエラーが発生しないことに違いはなくとも,方や正しい調整の結果であり,方やわざと調整をずらしたもの。

 動けばいいじゃないか,ならどっちでもいいんですが,私は,調整の結果エラーが起きるのは,ICの不良だと考えました。壊れているから,正しい調整が出来ないのです。

 そこで,XR3470に交換して使うことにしました。ついでに,CA3146も新品が手に入ったので交換しておきます。

 波形に大きな違いがあるのは気になりますし,MC3470も完全に壊れているわけではありません。しかし,ある時から突然エラーが頻発し始めたことから故障の発生は十分に考えられますし,なによりジッタが最小になるように調整することでエラーが増えてしまうなら,なにを頼りに調整すればいいのかという話もあります。

 それに,新品のXR3470でこれだけ調子よく動いているのですが,間違いはないでしょう。MC3470との相違点も細かくデータシートでチェックしましたが,等価回路の抵抗値が若干違っていることを除けばほぼ同じ物とみてよいですし,交換した方が安心です。

 ということで,DIskIIは,簡単に調整出来る方法を確立しました。そして純正のDiskIIが,CA3146に続きMC3470まで壊れてしまったということで,電気的にはかなり程度の悪いものだったということがわかり,なおがっかりさせられる結果となりました。

 これでDiskIIは2台とも完調です。あとは本体の不安定を解決出来ればいいんですが・・・


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