ハンドセットの増設と充電台の改造
- 2013/02/28 15:24
- カテゴリー:マニアックなおはなし
先日,固定電話を買い換えたという話を書きました。xxxがyyyしてzzzだったりするので詳しいことはちょっと差し控えたいのですが,後日談です。
本格的な運用に入ってみると,これがなかなか便利でして,親機と子機という訳のわからん区別ではなく,ベースステーションにワイアレスのハンドセットという携帯電話のようなシステムは,どの電話機を使っても機動性が損なわれることなく,また電話機によって機能差があったり使い方が違ったりするという問題もありません。たいへん合理的です。
そして,インターコム(内線ですね)がまた便利です。フロアが分かれているときには手軽に連絡が付く手段として我が家では定着しつつあります。
今は2階の家に住んでいますが,近々引っ越しをする新しい家は3階建てですので,2つしかハンドセットがない今のシステムをどうやって設置するかが問題です。
外線は1階に来ます。リビングは2階,寝室は3階に来ますので,ベースステーションを1階に置き,ハンドセットを2階と3階に置くというのは結構自然だと思うのですが,悪いことにベースステーションが充電台を兼ねていますので,残念ながらベースステーションだけ単独で設置するわけにはいきません。
最初からハンドセットが3つのシステムを買っておけばよかったのですが,使い物になるかどうか半信半疑でしたし,3台のシステムは2台のシステムよりも割高なので,まあ2台で試してから考えようと思ったのです。
そもそも1階にもハンドセットがあった方が便利ですし,追加でハンドセットを買い増しすることにしました。
しかし,悪いことに簡単には手に入らないんですね。
そこで,同じハンドセットを同梱する,ベースステーション付きのセットを買ってみようと言うことになりました。ハンドセットが1台だけのセットなら,そんなに高価ではありません。
ただ,ベースステーションとのセットで販売されているハンドセットが,別のベースステーションに登録出来るのかという問題はあります。しかも,全く同じハンドセットを買うことが出来ず,下位機種の留守番電話機能なしのモデルしか買えませんでしたから,これはかなりのバクチです。
まあ,3600円だし,面白そうだから試してみました。
・異なるベースステーションに登録出来るか
結論から言うと可能でした。
ベースステーションのシステムはL702M,今回買ったのはL601Mです。L70xとL60xとの違いは,留守番電話の有無です。
留守番電話はベースステーションの機能ですので,ハンドセットは一見すると同じに見えるのですが,その留守番電話を操作するためのキーに,印刷があるかないかが見た目の違いです。
実は,追加用の別売りハンドセットは,L70xとL60xで共通のL7という製品です。つまり,L7を買えば留守番電話のないL60xでも使えるわけです。ということは,L70xのハンドセットはL60xでもつかえると推測されます。
問題は逆が可能かどうかです。印刷の違いだけで中身が同じであれば,L70xのベースステーションにL60xのハンドセットを登録することは可能でしょう。ですが,下位機種のハンドセットが登録出来るとなにかと不都合もあるだろうし,あえて登録出来ないようにしてあるかも知れません。
届いてから試したところ,うまくL70xのベースステーションにL601Mの'ハンドセットを登録することが出来ました。ちゃんと電話もかかります。
DECTという規格は汎用の規格ですので,メーカーや機種が違っても同じ仕様に従っています。異なる携帯電話メーカーの電話が同じように使えるのと同じ話ですが,話はベースステーションとセット販売されるコードレス電話ですから,特定の相手しか登録出来ないようになっている可能性は大いにありました。
しかし,少なくとも今回のケースでは大丈夫でした。
・機能制限はあるか
L601は留守番電話のない下位機種です。留守番電話の機能そのものはベースステーションにありますが,操作はそれぞれのハンドセットから行います。ですから,ハンドセットには留守番電話の操作という機能が求められるのです。
L702Mの留守番電話の操作には2つの方法があります。1つはメニューから留守番電話機能を呼び出して操作する方法,もう1つは左上のボタンにあるショートカットを使って直接機能を呼び出す方法です。
試したところ,前者はメニューに現れず,選ぶ事が出来ませんでした。フタをされてしまっていますね。
そこで後者を試したところ,左上のボタンを押した瞬間にメッセージの件数を知らせる音声が流れ,留守番電話の操作メニューが表れました。
そこからは,テンキーに割り当てられた操作も受け付けるようになり,留守番電話機能のすべてにアクセス出来るようになりました。
つまりこの操作にはフタはされていないことになるのですが,ひょっとするとフタをすることが出来なかったのかも知れません。
つまり,ショートカットでの機能呼び出しは,キーが押されたことをベースステーションに伝えるだけがハンドセットの仕事で,そこから先は決まった手順でベースステーションとハンドセットがやりとりをするという仕組みなのかも知れないです。
メニューなら,メニューに出てこないようにフタをするのは簡単です。ショートカットボタンの処理がハンドセット側で行われているなら,ここにもフタをするだけですので,話は簡単だったはずです。
しかし,そうなっていないところを見ると,ハンドセットではボタンを押したことをベースステーションに送るだけの機能しかしていないんじゃないかと思うのです。ボタンを押したことを伝えないようにフタをすると,他の機能にも影響が出ますので,それは出来ません。
ベースステーションからの返事がハンドセットから届くときに,ハンドセット側で無視するような修正は可能でしょうが,それは新機能の追加になるくらい面倒な修正でしょう。それなら放置が一番楽です。
つまり,メニューからの留守番電話機能へのアクセスが出来ないのは,入り口がふさがれているだけで,機能そのものが消されていたわけではなかったということです。
留守番電話機能のキーへの印刷がありませんので,慣れていないと使いにくい物になるかもわかりませんが,ショートカットで留守番電話機能に入ってしまえば,あとはメニューに従うだけですから,なんということはないでしょう。むしろキーがスッキリとして,見やすくなり,格好良くなっていることの方がメリットがあるかも知れません。
・充電はどうする?
登録がうまくいった場合に,ちょっと考えないといけないなあと思っていたのは,この問題でした。
一番簡単なのは,追加のハンドセットに付いてきたベースステーションをそのまま使う事です。もちろん外線には接続しません。
しかしこの方法は2つの懸念点があります。1つは,ベースステーション機能を殺しているわけではないので,電波が出続けている可能性があるということ,もう1つはベースステーション機能が動いていることで消費電力が大きいこと,です。
この問題を根本的に解決するには,ベースステーションを改造し,単なる充電スタンドにすることです。
そこで,ベースステーションを分解し,中の基板を取り出しました。
そして6Vのスイッチング型のACアダプタを用意し,これに合うジャックをベースステーションの穴に接着剤で貼り付けます。
充電の接点との間を配線して完成です。
ただ,充電端子にどんな電圧が出ているかわかりませんので,L702Mのベースステーションと充電台それぞれの電圧を測ってみます。ベースステーションは6.8V,充電台は7.9Vほど出ています。これだったら6Vに安定化されたACアダプタを直結しても大丈夫だと,考えました。(これが間違いだったのですが)
改造したベースステーションに電話を置くと,ちゃんと充電を開始します。しかし1時間ほどで充電が完了しています。随分早いです。
消費電力は,AC100V側で0.2Wほど。無改造のベースステーションでは2Wくらいでしたから,ヒトケタ違います。よしよし,これでok。
・・・と思って数日後にハンドセットを手に取ると,ほんのり暖かいのです。まあこういうことは別に珍しいことではないので気にしないでいたのですが,問題なのは電池そのものが暖かかったことです。
気になって他のハンドセットを確かめると,冷たいままです。
おかしい。
この時,L702Mに付属の充電台を分解したときのことを思い出しました。なにやら大きめの抵抗(47Ω)が入っていたのです。
なるほど,これが電流制限抵抗か。
そこで,電圧を無負荷で測るだけではなく,負荷を入れた時の電圧も測定してみました。予想通り,大きく電圧がドロップします。直列に大きめの抵抗が入っている証拠です。
まてよ,この抵抗は,もしかするとトリクル充電の為の抵抗なんじゃないのか。
そう考えて計算すると,やはりその通りのようです。ざっと20mAから30mAくらいの電流が流れます。トリクル充電は,電池の容量の1/20から1/30の電流を常時流しますので,まさにぴったりの数字です。
私は,ハンドセット側に充電回路が入っている物だと思い込んでいましたが,トリクル充電しかしないなら,抵抗1本で済んでしまうのですね。それならベースステーションなり充電台に入れた方がよいですよね。
今度はベースステーションも測定します。無負荷で6.79V,1kΩの負荷で6.00Vまで下がりました。この結果,等価的に見える内部抵抗は131Ωとなります。
私はここでかなり焦っていました。トリクル充電の抵抗を入れず,電池に直接ACアダプタの出力(しかも6Vに安定化されている)を繋いでいたかも知れないのです。電池があっという間に過充電になり,もしかすると安全性も損なっているかも知れません。
そこで,ACアダプタと充電端子の間に100Ω2Wの抵抗を入れることにしました。47Ωでもよいのですが,手持ちに適当な物がなかったことと,充電電流が少ない方が安全だという考え方からです。
これで試してみると,30mA程でトリクル充電されることがわかりました。仮に電池の容量が700mAhなら1/20以下ですので,大丈夫でしょう。
今のところ,これで満充電にもなりますし,おかしな発熱もありません。やれやれです。
後日,他社製のコードレス電話の回路図を見てみると,やっぱり私の推測は当たっており,トリクル充電を抵抗1つでやっていました。充電回路であるこの抵抗はハンドセット側にはなく,充電台側に仕込まれていました。いやはや,危ないところです。
そんなわけで,これでようやく3台体制になりました。今どき固定電話に手間とお金をかけるなんてどうかしてるなあと思いつつ,やはり携帯電話とは違う面白さがあるものです。昭和生まれはこれだからなあと,自分の年寄りっぷりに,苦笑いが出てしまいます。やれやれ。