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2014年11月の記事は以下のとおりです。

Yosemite移行メモ

 私は2つのMacを使っているのですが,10月にリリースされたOS X 10.10 Yosemiteへの移行がようやく完了しました。

 メールなど日々の生活マシンとして使っているmacBookAir(Late2010)はリリース直後にアップデートしました。これはほとんど標準設定のまま使っていますし,サードパーティのアプリケーションもほとんど入っていないので,新しいOSの導入にはぴったりです。

 見た目が結構代わり,最初は慣れないなあと思っていましたが,特に大きなトラブルもなく移行完了。体感速度は概ね変わらず,メールに限ってはやや遅くなったかなという印象を持ちました。

 むしろ。音量の調整時にビープが鳴らないという謎仕様のために,どんな大きさに設定されたのかが分からないという使いにくさが起きています。

 とはいえ,最新のOSにしておく事はセキュリティ上も有益でしょうし(必ずしもそうとは言い切れないのが辛いですが),Macは仕様が変わっても,結局何だかんだで慣れてしまって,それが最善と認識するようになりますから,そこはあまりいじになっても仕方がありません。

 ということで,ぼつぼつリリースから1ヶ月経過し,Yosemiteの1回目のアップデートが出たことをきっかけに,もう1つのMacであるMacBookPro(Early2008)もYosemiteに移行させようと考えました。

 このマシンを購入して,もう6年が経過しているんですね。それでも,うちでは創造用のマシンとして,写真の現像や印刷,自炊やプログラミングなどで,たくさんのデータを作り出しているワークステーションです。

 なので,基本的にサードパーティのハードとソフトで武装されたマシンゆえに,OSのアップデートは相当のリスクと引き替えです。

 このままYosemiteに移行しないということも考えましたが,次第にYosemiteのUIに慣れてしまうと,どうも古くさく見えてしまうのですね。これが移行の最大の理由になっているとは,なんだか私も後ろ向きになったものです。


 以下は,Yosemiteへの移行に際して,やったことのメモです。

・各種ソフトのアップデート

 ScanSnapManager,Lightroom5,ATOK2013などは,さっさと最新版にアップデートしておきます。これらは一応公式にYosemiteでの動作を保証しています。


・OSのアップデート

 MacBookAirのアップデート時に,インストーラを残してあったのですが,今回はこれをそのままアプリケーションフォルダにいれて,起動することにしました。

 おそらくトータルで30分程度で,アップデートが完了し,問題なくYosemiteでMacBookProが起動しました。特に問題もありません。あっけないですね。しかも,ディスクの空き領域が10GBほど増えています。256GBしかないSSDですから,空きが70GBもあると随分助かります。

 すぐに先日出たばかりのアップデートをかけて,再起動します。一応これで安定して動いているのですが,触った感じでは体感速度が上がっています。サクサク動くようになり,とても快適です。

 フォントも代わり,涼しげですし,とても洗練されている印象も手伝って,MacBookAirでのYosemiteとは随分違った感覚です。うん,楽しい。

 ところで,RAW互換アップデートの6.01が,何度インストールしても「アップデート出来ます」となってしまうので,困りました。

 再起動するとそれも止まって,ちゃんとアップデートされたことになっているのですが,履歴を見ると何度もアップデートしたことになってしまっており,気持ち悪いです。


・USB3.0カード

 一番の心配事は,ExpressCard34に差し込んで使っているUSB3.0カードの対応です。OSが変わると,こういう野良ドライバは当然サポート外になるわけで,もし使えなくなったらどうしよう,もし不安定になったらどうしようと,不安はつきません。若いときはむしろ「うおお。燃えてきたぜ」と徹夜をする元気もあったのですが,今はそんなことをすると,寿命が縮むだけでなんの特にもならないと悟り,自粛しています。

 もしかして,OS標準ドライバでGenericなUSB3,0がサポートされたかもしれないと淡い期待をかけて,標準の状態でカードを差し込むと,メニューバーにカードのアイコンが現れて,認識はしているようです。

 おお,脈ありです。しかし油断は禁物。カードリーダを繋いで見ますが,どうも認識していない様子。SDカードを差し込んでみると,本当なら点灯すべきLEDが消えてままで,マウントもしません。

 どういうことが起こっているかはわかりませんが,目の前の状況だけで判断すれば,これは使えません。

 この後,強制的にカードリーダを外すと怒られましたので,もしかしたらどっかにマウントしていたのかもしれませんが,やっぱり前回と同じ手順で,きちんと対応しておくことにします。

 で,前回どうしたかなと調べてみると,MultiBeastを使っていました。結局これが一番安定し,しかも導入もとても簡単だったのです。

 Yosemiteももう1ヶ月ですから,すでに対応版がでているだろうと探してみると,あっけなく最新版が出てきました。バージョンは7.02で,これがYosemite対応版です。

 難しい事を考えずに,GenericのUSB3.0ドライバをビルド&インストール。再起動すれば何事もなかったように,USB3.0を認識し,カードリーダに刺さったSDカードもマウントしました。これでよし。転送速度の変化は後日調べてみましょう。


・SSDのTrim

 内蔵した256GBのSSDはSanDiskのもので,当然非純正です。Appleの悪い習慣として,非純正品のサポートがないということなのですが,SSDのTrimようなものでさえも,わざわざOSが非純正品を検出して無効にしてしまいます。

 そこでこれを有効にするアプリケーションを使うのですが,このTrimEnablerもYosemiteに対応するかどうかが心配でした。結論から言うと,大丈夫。

 Yosemiteにアップデートする時に,TrimEnablerが「非互換」のアプリケーションとして隔離されたおかげでTrimが無効になってくれました。

 もし,TrimEnablerが最新のものになっていて,Yosemiteで互換になっていたら,そのままTrimが有効になっていたでしょう。なにが問題かというと,その場合にOSが起動しなくなるというトラブルが出ていたらしいのです。

 こうなるとPRAMのクリアなどをせねばならなくなるそうで,なかなか大変だったのですが,私の場合はTrimEnablerのアップデートをサボったことで,結果として問題に遭遇せずにすみました。

 Yosemiteが動き始めてからTrimEnablerをアップデート,改めてTrimを有効にしました。これで問題なしです。


・Java SE ランタイムのインストール

 個人的にはJavaのランタイムなど入れたくないのですが,PhotoshopCS5が起動しなくなったので,入れる事にします。

 Lightroom5で間に合っているので,もうCS5なんか動かすこともほとんどないのですが,こういうのって急に必要になったりするものなので,動くものなら準備はしておきたいです。

 ところが,インストールを促すダイアログのリンク先が切れているようで,探さねばなりません。

 さっと調べてみると,やっぱりYosemite用のJava SEのラインタイムが新規にリリースされているわけではないようで,仕方がないのでとりあえず最新のものをAppleのサイトからダウンロードしてインストールしました。

 結果としてCS5は無事に起動し,使えるようになりました。


・その他の細々としたこと

 私の場合,OSがユーザー向けに用意するデフォルトのフォルダをすべて英語表記に変えています。日本語表記ですむならその方がいいのですが,私の場合フォルダを探してダブルクリックではなく,フォルダの先頭の文字を入力してcmd+Oなので,日本語表記は困るのです。

 この方法は10.6あたりからずっと変わらず,今回も基本的には同じ手順で可能でした。一部フォルダの名前が変わっていましたが,それはまあ大したことではありません。

 
 これでYosemiteへの移行が完了しました。予想に反して,MacBookProでの動作が快適で,これでまたマシンの買い換えが遠のいてしまいました。

 実際にはカードリーダからRAWデータを読み出し,Lightroom5で現像して印刷というワークフローが完全に成立していることを確認しないといけませんし,turbo264HDもScanSnapもちゃんと動いていることを確かめないといけません。この2つは変換を行うものですから,変換後のデータがもし不完全だったら,取り返しのつかないことになりかねません。

 個人的な印象では,Yosemiteはセキュリティ強化がテーマになっている感じです。これまで攻撃対象から外されていたMacが脅威に晒されることがふえたことで,OS Xも徐々にWindowsのような窮屈さを持つようになってきました。

 確かにiPhoneとの連携など,新しい機能の追加はありますが,OS Xを使っている人すべてが享受できる新機能ではないだけに,今のAppleの,特にMacへの向き合い方がよく分かるアップデートだったと感じました。

MX-10のレストア

  • 2014/11/10 14:51
  • カテゴリー:make:

 エフェクターで有名なBOSSブランドに,一時期BOSS PROというシリーズがありました。

 もともとBOSSは安価なリバーブやディレイなどをハーフラックのサイズに詰め込んだシリーズを出していましたが,この後継という感じで登場したのを覚えています。

 最初に出たのは,記憶違いでなければステレオマルチエフェクターのSE-50だったのですが,BOSSのくせに結構いい値段,PROのくせにノイズが多いという欠点があり,それでもステレオの空間系エフェクターとしては安かったので,私も2台買って使っていました。

 その後出た10chのミキサーMX-10は,複数台のシンセサイザーをステージで使っていた私としては,まさにぴったりの製品に思えたので,すぐに購入して私のラックに収まるようになりました。

 MX-10は10chといいながらも,ch1からch8まではステレオ入力専用で,レベルは2ch分が同時に変化しますし,パンは奇数が左,偶数が右で固定されています。また基本的にラインミキサーですので,マイク入力が可能なのはch9とch10の2つだけです。

 そのch9とch10はマイク入力に対応し,パンも調整可能ですし,レベルもそれぞれ独立したツマミでコントロールできます。

 エフェクトのSENDとRETURMはありますが,EQはありません。だからちゃんとしたミキサーというよりも,キーボードミキサーとして割り切って使うべきものです。

 ただ,8chのミキサーでもステレオだと4台分しかまとまりませんから,やっぱりこれではつらいです。だから,ハーフラックでステレオでも最大5台分が入るMX-10は,結構便利な存在でした。

 現在,RD-700とMicronしか置いていない部屋でも,MX-10だけは実家から持ってきてあり,ここで一度まとめています。ですが,どうも音質的にしっくりこないように感じていました。

 まず,RD-700のヘッドフォン端子から直接聞いた場合と,MX-10を通した場合とで明らかに音が違います。MX-10の方が中低域が大きいというか,高域が不足している感じです。
 
 ケミコンの劣化だろうなと思いつつ分解すると,見えてきたのはオーディオ用に特に気を遣ったような感じの部品が見当たらず,この時期のローランドやBOSSに多用された,三菱の4558互換であるM5218が9つ使われていることがわかりました。

 4558は悪いオペアンプではないのですが,いかんせん設計が古く,今ならもっと良いオペアンプが使えます。ここは1つ,オペアンプもコンデンサも良いものに交換してみることにしました。

 とはいうものの,M5218はよく見かける8ピンDIPではなく,8ピンSIPです。万能基板でささっと変換をしてもよいのですが,さすがに9つもあると面倒です。

 と思って秋月を探すと,やっぱりありました。SOPをSIPに変換する小基板が売られています。25枚セットで750円。1つ30円というのは,安くもなければ高くもないという絶妙な値段です。

 問題はSOPのオペアンプをどうするかですが,これは私がたまたま手持ちで腐るほど持っているOPA2134を使います。数を数えたことはありませんが,300個くらいはあるんじゃないかと思います。

 OPA2134はオーディオ用としては良いオペアンプだと思いますが,地味な音質で,高音質という評価には異論は出ないにせよ,今好まれる音ではないと思いますが,私は好きです。

 コンデンサは,22uFが40本近く使われていました。22uFの電解コンデンサだと一般品でも10円,50V品だと25円くらいです。それが秋月ではオーディオ用の50V品が1つ20円だったので,これにしました。

 何だかんだで多めに買ったので,電解コンデンサばかりで7000円近くもかかってしまいました。とほほ。

 交換前に特性を測っておきます。80kHzのLPFを通して測定した結果,歪率は1kHzで0.04%,周波数特性は20Hzから75kHz,S/Nは85dBと,別におかしくない値です。

 あれ,これでなんでそんなに悪く聞こえたんだろうなあ。

 まあいいです,とりあえず部品の交換です。まずOPA2134を変換基板にハンダ付けして,9つ分のSIP版OPA2134を作ります。

 そしてもともとついていたM5218を外し,交換します。

 この勢いにのり,電解コンデンサを一気に交換します。全部で100本近く交換しましたが,良くパターンを追いかけていくと,どうもピークインジケータのために使われているコンデンサもあるようで,これは音質に影響がないことから,交換するのをやめました。

 最後に,もともとついていなかったのですが,電源とGNDの間に0.1uFのパスコンを入れておきました。ついていないわけではなく,電解コンデンサの10uFがついていますが,高周波特性の良い積層セラミックを一緒に取り付けておくことで,保険をかけようという話です。

 さて,案外簡単に作業が終わり,目視によるチェックをしてから通電です。音を聞く前に準備が済んでいる測定を早速開始しますと,歪率は1kHzで0.03%と下がりました。周波数特性は変化無しで20Hzから75kHzです。

 S/Nは改善し,92dBになっています。これはなかなかよいですね。

 ということで,音を聞いてみますが,以前よりもずっと良くなっています。4558はザラザラした音が華やかなオペアンプですが,OPA2134はきめ細かい一方で元気がないおとなしいオペアンプという印象を私は持っていますが,その印象どおりのMX-10になっていると思います。

 ただですね,電源かいろの発熱が大きく,オペアンプ自身も随分発熱しているようなのです。触れないほどではないですから,正常動作範囲だと思いますが,M5218の時にどれくらいのい発熱があったかを調べていませんので,これで正しく動作しているかどうかは,もうわかりません。

 ざっと調べた限り,発振もしていませんし,おかしな電圧もかかっていません。なにより無理に動かせば測定値が急激に悪くなるものですけど,以前よりも改善しているわけですから,回路そのものは動作していると考えてよいと思います。

 ということで,実はあまりレストアする意味はなかったのかもしれないのですが,電解コンデンサのような寿命が短い部品を20年経って交換したことは意味があり,もう10年くらいは問題なく使えるようになったと思います。

 
 

私の夢,300dpi

  • 2014/11/05 16:39
  • カテゴリー:散財

 Kindleの2014年モデルの最上位機種,Kindle Voyageを買いました。幸いないことに発売日である11月4日に届きました。

 購入したのは最も安価なモデルである,WiFiモデルでキャンペーン表示ありのものです。それでも価格は21480円です。

 ここのところの円安と消費税アップという2つの要因で,この手のガジェットの値頃感が変わって来つつあるなあと思う昨今ですが,海外で$199のこのモデルが,日本でこの値段というのであれば,私は非常に良心的だと思います。

 なんだかんだで毎年Kindleを買っている私ですが,今回のKindle Voyageはまさに躊躇なく購入に至ったモデルです。十分な性能を持つKindle Paperwhiteの価格の2倍もする高額な電子書籍端末で,見送りという人がちらほらといる中で,私が迷わず購入した理由は,300dpiが私の夢だったから,です。

 いや,すでにLCDの解像度が300dpiを越えていることは承知しています。ですが,高コントラスト,紙と同じ反射型のデバイスである電子ペーパーで300dpiというのは,1つの目標だったと思うのです。

 電子ペーパーが世に出たとき,それは名前の通り紙を置き換えるものという期待が込められていました。色にしてもコントラストにしても,反射型であることも含め,そのスペックは紙,当時でも新聞紙程度の性能は持っていたのです。

 しかし,唯一紙にかなわず,そして当面紙を越えられないであろうと思われたのが,解像度でした。

 人間の目の分解能は,300dpi程度の解像度の印刷物で飽和するそうで,それ以上解像度を上げてもあまり意味がないと言われています。そもそも,180dpiという解像度が10ポイントで漢字を省略せずにきちんと表現出来るギリギリの解像度として選択されたものでしたが,この300dpiという数字は人間の視覚から選ばれた数字なのです。

 当時の電子ペーパーは300dpiは言うに及ばず,180dpiにさえも手が届かないものでした。こうなると,いかに紙に近いディスプレイと言われてても,印刷物には到底及ばないわけで,最初からユーザーに「我慢と妥協」を強いるものになったいたのです。

 さらに悪いことに,この解像度は電子ペーパーそのものの物理的な制約と言うよりは,電子ペーパーをドットマトリクスで駆動するための仕組みに起因していました。簡単に言うと,この仕組みはLCDのものと同じなのです。当時のLCDの最高解像度がようやく300dpiを越えるかどうかというレベルでしたから,これが電子ペーパーにおりてくるのは絶望的でした。

 あれから10年,ようやく私は300dpiの電子ペーパーを持つ電子書籍端末を手にしました。実に感慨深いです。そう,この電子書籍端末は,やっと紙に印刷された「印刷物」に並んだのです。これは本当に,私の夢でした。

 この間,電子ペーパーは解像度だけではなく,表示品質を高め,さらにコントラストも向上させ,十分に紙の代わりになりうるだけのポテンシャルを手に入れています。これらと相まって,おそらくKindle Voyageは私の期待に応えてくれるはずと,予約開始と同時に注文をしたというわけです。

 6インチのディスプレイで300dpiということですの,ピクセル数は1440x1080ドットです。数字だけを見るとHD解像度にも達していませんが,6インチなら文庫本は十分収まります。つまり文庫本を300dpiでスキャンすれば,そのままドットバイドットで表示出来てしまうだけの能力を持っています。コミックもそうですね。

 ハードカバーの文芸書も,余白を切り落とせばほぼ収まります。これが300dpiで表現出来るのですから,Kindle Voyageは持ち歩きが現実的に可能な本の大半を,印刷物と同じと見なしていいだけの表示品質で扱えるようになったといえます。

 高品質なベクトルフォントをこの電子ペーパーに表示することは,つまりレーザープリンターで印刷物を作ることと同じです。スキャナーで取り込んだ本をこの電子ペーパーで表示することは,つまりコピーを取ることと同じです。

 ようやくここまできました。

 で,早速使ってみました。先に書きますが,素晴らしいです。高価な端末なので持ち歩くのは当面ひかえようかと思いましたが,その表示品質の高さに私は虜になり,もう2013年モデルのKindle Paperwhiteを使う気にならなくなってしまいました。

(1)表示品質

 300dpiのCatraは,やはり伊達ではありません。216dpiのPaperwhiteと比べて見るまでもなく,文字の潰れがほとんどなく,線がくっきりと出て本当に印刷物のようです。

 Paperwhiteでは画数の多い漢字は潰れてしまい,一部濃淡で表現している部分もあるのですが,この濃淡が全体のコントラストを下げる要因になっています。これがVoyageでは濃淡で潰れた線をごまかすことなく,きちんと線として表現出来るので,無理に濃淡に頼ることがありません。従って,全体のコントラストの低下もありません。

 普通に使ってもその違いはよく分かりますが,ルーペで拡大するとさらによくわかります。もう紙を見ているような錯覚に陥るほどの表示です。


 そして,色調も良く整えられ,ムラもほとんどなくなったフロントライトも,表示品質の向上に大きく貢献しています。Paperwhiteも2012年モデルと2013年モデルで色が違っていたりしましたが,Voyageのフロントライトはこれまでのもののなかで,最高のものだと思います。色は限りなく純白に近く,輝度ムラもありません。

 電子パーパーにおけるフロントライトは,暗いところで明るくする補助光ではなく,白をさらに白くする,コントラスト向上のためのものです。ですから,明るいところでは明るく,暗いところでは暗く点灯するように設定します。

 ですが,この輝度の調整がなかなか難しく,周囲の明るさと紙の反射率から我々の目に入ってきた時の明るさにあわせ込むのがなかなか面倒です。しかも周囲の明るさが変わると極端に見え方も変わって来ますから,こまめな調整も必要です。

 フロントライトの基本性能の向上と共に,私がよいと思ったのはフロントライトの輝度調整が自動になったことです。この手の自動調整というのは案外使い物にならないもので,結局手動調整に頼ることになるのが常ですが,今回は違います。

 周囲の明るさが変化しても,紙に近い見やすさを維持出来ており,寝室でも屋外でも自動で調整してくれることがとても便利です。

 もう1つ,表示品質に貢献しているのが,段差のないフラットな画面です。フレームと画面の間の段差がなくなり,1枚のノングレアのガラス板になりました。

 ディスプレイも奥に引っ込んでおらず,表面の硝子の真下にある感じです。これが,まるで店頭展示用のモックに紙を貼り付けたものと見間違うほどのリアリティを生んでいます。特に少し斜めから見たときの表示品質の高さには感激します。

 このこのことによる没入感は想像以上のものがあり,Kindle Voyageをテーブルにおいて離れて眺めてみると,それはもう印刷物といっても見分けがつきません。

 本当に素晴らしいです。


(2)全体の質感

 軽くなりましたし,やや小さくなりました。薄くなった事もあって,手で持つのが随分楽になりました。Paperwhiteに比べると剛性感がなくなって,倍の価格の商品として少々がっかりしますが,決して悪くはありません。

 悲しいのは背面の上部にある,つやつやのプラスチック部品です。おそらくWiFiや3Gのアンテナが収まっているのだと思いますが,指紋も目立つし,傷も付くのでわざわざつやありにしない方がよいなと思いました。

 私の場合,この部品に成形時のヒケがあり,つやがあることで余計に目立ってしまいます。これは残念です。

(3)データの作り方

 ダウンロードコンテンツはよいとして,私の場合自炊したコンテンツを読む事も多いので,そのデータの作り方が非常に重要です。

 Kindle Paperwhiteのころから,私は「かんたんPDFダイエット」を使っています。かつては頻繁にアップデートがあったのですが,ここしばらくは更新されず,昨年10月のバージョンか最新のままです。

 正直なところ,アップデートによってついた機能が邪魔だったり,画像の品質が落ちたりと,更新を素直に受け入れることが出来なかったのですが,この1年はそういうこともなく平和でした。

 ですが,設定に最新の端末が追加されない状況はちょっとだけ問題で,仕方がないので自分でKindle Voyage用の設定を組み込みました。といっても,解像度に1440x1080を加えただけです。

 ただ,この1440x1080という解像度は,amazonの公式資料にはなく,いくつかの記事に出ていた推測の値に過ぎません。実は1439ピクセルだったり1081ピクセルだったりするかも知れず,そういう場合はドットバイドットでは表示されないことになるので,表示品質が大きく低下する可能性があります。

 あれこれ悩んでいても仕方がないので,とにかくこの設定で処理をしてものをKindle Voyageで表示させてみました。結果は上々で,おそらくですが,きちんとドットバイドットで表示されています。階調の表示の適切で,まさに紙に印刷したかのような美しさです。

 ただし,データの量は2倍近くになりました。解像度が300dpiになったことで約1.4倍,これがピクセル数で縦と横にかかってきますので約1.96倍。計算通りです。

 データの量が2倍になったと言うことは,同じストレージに半分しか入らないという事になりますので,ここはとても残念です。

 せっかく高価な最高級の電子書籍端末として登場したのですから,データの増加分にあわせてストレージも倍にして欲しかったと思います。今どき8GB位のストレージを積むのに,そんなにお金もかからないと思います。唯一の不満です。


(4)操作について

 電源ボタンの位置が下端から背面右側に大きく移動しました。別にこんな部分に動かす必要性はないと思うのですが,利便性ではなくなにか別の理由,設計上の制約などで動いたんじゃないかと思います。慣れればなんということはないですが,あまり便利とは思いません。

 従来通り,画面のスワイプで操作もできますが,Kindle Voyageの特徴の1つとして,専用の送り/戻しのエリアが出来た事があります。

 送りと戻しのエリアが画面の左と右それぞれに用意されています。左利きでも右利きでも不便にならないようにという配慮は,かつてのKindle同様で好ましいです。

 面白いのは,このエリアを押してやると,バイブレータがぶるっと振動して,フィードバックがあることです。

 それも,回転型の振動モーターなどではなく,スマートフォンによく使われるようになった,リニアアクチュエータです。なかなか良い反応で,邪魔になりません。本をめくるときに振動とは,今ひとつピンと来ないものがありますが,もともとここにはクリック感のあるボタンを使いたかったのでしょうね。

 それが証拠に,画面をスワイプしてページをめくったときには,振動はおきません。

 個人的には,こんな振動はあってもなくてもよいと思うのですが,もし振動をさせるのであれば画面のスワイプでも振動して欲しかったなと思います。振動がボタンのクリックの代わりに限定されるというのは,ちょっと理解が難しいのではないでしょうか。

 ところでこの送り/戻しエリアの操作感ですが,悪くはありません。単なるタッチセンサかと思っていたので,触れれば反応すると思っていたのですが,さすがにそれではスイッチの代わりにならないと思ったのか,あるいは使いにくくなると思ったのか,結構正確な場所をぐぐっと押し込まないと,反応しません。

 こういう押圧を検知する仕組みは,それなりに普及してきたとはいえ,広く一般的に使われていて,ユーザーの習熟度が高まっているとは言えません。結局使いこなせず,画面のスワイプで済ませてしまう人が多いのではないかと思います。


(5)キャンペーンについて

 今回初めてキャンペーン表示ありのモデルを買いました。amazonのポリシーとしては,この手の広告を本文に入れたりして,本来の役割である読書を妨げるようなことはしないというのがあり,私はそれを信じたのです。

 確かに偽りなしで,読書中にキャンペーンの広告に患わされることは全くありません。これで何千円か安くなるなら全然構わないのですが,1つだけ気になる事があります。

 それは,電源投入時の操作です。パスワードによるロックを設定すると,電源投入時にパスワードの入力が必要ですが,この後さらに広告を飛ばすためにスワイプが必要になるのです。

 キャンペーンなしのモデルなら,パスワードの解除だけですぐに本文が表示されますが,ここに1つ操作が入ってくるわけで,これは気分的に結構重たいものがあります。

 まあ,今の段階では,その広告にも有用なものがあったりするので(1000円以下のkindle本の半額を割り引くクーポンの案内とか),必ずしも悪いものではないと思うのですが,これがamazonではなく他の業者の,下品な広告になってくると,追加料金を支払ってでも見ないようにする方法が欲しくなるかもしれません。


 ということで,Kindle Voyageですが,確かに価格は高いと思いますし,この値段でタブレットを買えばもっといろいろ出来ると言うもわかります。ただ,紙に印刷した本にこれほど肉薄した機器を,我々はかつて手にしたことがないわけで,全く新しい体験を期待するなら,この金額は実に意味のあるものになると私は思います。

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