24時間どこでも繋がっている安心感を980円で買う
- 2009/04/27 15:02
- カテゴリー:散財
今さらですが,WILLCOMが提供するデータ通信サービスに加入しました。
iPhoneだLTEだXGPだWiMAXだと,24時間接続のブロードバンド普及が飽和し,次なるマーケットを狙って群雄割拠するモバイル通信にあって,もはや長老と言うべきPHS。
コードレス電話の子機を外で使えるようにする,という原点を持つPHSは,小さい,安い,電池を食わないという個人向け移動体通信の柱として期待されましたが,サービスエリアの小ささから支持を得られず,PHSに見劣りしないレベルにまで小さく安く電池が持つようになった携帯電話に敗北を喫しました。
しかし当時の携帯電話に比べ通信速度が高速だったことを活かし,データ通信に活路を見いだして,ガジェット好きなモバイラーに支持されてしぶとく生き残って来ました。
DDIポケットの流れを汲むWILLCOMも,速度の遅さという常について回る問題を,価格の安さや魅力的なスマートフォンの導入で何度もしのいできたのですが,イーモバイルやUQ WiMAXの登場に加えて,iPhone3Gが現れ,通信速度と価格,そしてスマートフォンの魅力という面でも,いよいよピンチを迎えているように思います。
そんなWILLCOMですが,なんとゴールデンウィークのキャンペーンということで,月々3880円の「新つなぎ放題」を,端末費用込みで月々980円にするという話が発表になりました。これはもしかすると激安では,と思ったのですがやはりその通りのようで,すでにWILLCOMの契約者になっている人の中にも,一度解約して新規契約した方が得だ,と言う人が出る始末です。これで元が取れるとはちょっと思えない価格です。
ちょうど,連休中に実家に戻る私は,常時接続環境がない実家でどうやってメールを見るのか思案していた時期でした。なにせ連休中だけの話ですので,毎月高額費用が発生するのは割が合いません。
1年でのべ10日くらいしか必要ではないが,必要なときは一日中繋がっていて欲しい,という誠に厄介な話に悩むのが長期休暇前の恒例行事になっている私にとって,結局アナログ電話のダイアルアップが最善策というつまらない結論を毎回出す事が,とてもうんざりだったのです。
まぁ出せて毎月1000円までだな,と思っていた私は,今回のWILLCOMのプランは,もしかするとものすごく現実的な話なんじゃないかと気が付きました。
iPhone3Gは確かに面白そうです。端末価格も今なら実質タダです。しかし,毎月5000円以上の負担は大きく,ソフトバンクに2年縛られるのも気分的に良くありません。
その他いろいろ考えて見ましたが,私は速度より24時間繋がっていることが重要なのだと判断,この980円のプランにのってみることにしました。
私が選んだのは,WS002INという機種です。USBとW-SIMを繋ぐアダプタとW-SIMがセットになった通信カードで,MacもWindowsもOKです。費用の内訳はこうです。
新つなぎ放題のプランをW-VALUE SELECTで申し込むと,端末価格は16800円になります。本来の月々の通信料金は3880円ですが,ここにW-VALUE SELECTでの割引3600円が入り,毎月280円になります。
端末価格を2年間で分割すると月々700円となり,毎月の支払合計は980円という仕組みです。新規登録料は4月30日までは無料,ウィルコムストアの送料も新規の場合は無料ですので,全く支払いが発生しません。恐ろしいことです。
提供されるのは通信回線だけですから,プロバイダは別に用意しないといけませんが,幸いなことに私がADSLで使っているプロバイダはWILLCOMのパケット通信のアクセスポイントを無料で使わせてくれます。よって追加費用の発生もありません。
こんなおいしい話があるんだろうか,と思いつつ昨日カードが手元に届きました。特に引っかかることもなく,MacとWindows両方で設定も完了。
x4までしか対応しないW-SIMですから,128kbpsというMP3のビットレート並みの遅さで,WEBのブラウジングなどではさすがにイライラしますが,その他は全然大丈夫です。そもそもFOMAで通信しても,私の場合はパケットだとものすごく高額になるプランなのでパケットではない64kでしか恐ろしくて繋げません。それに比べれば快適な上に,時間も気にせず使えるのですから,それはまるで背中に羽が生えたような気軽さです。
私は非常にありがたいと思っていますが,そもそも期間限定とは言え,なぜ980円にするのか。いろいろ邪推しました。
まず,現金が欲しいのではないかという事。毎月毎月980円とはいえ決まった金額が入ってくるというのは,かなりありがたいでしょう。しかもレガシーなPHSシステムに対しての新しい設備投資は基本的には発生しないわけですし。
しかし,2年後に3880円に戻ってしまうわけですから,この段階で多くが解約するでしょう。これはWILLCOMにとって死活問題になるはずです。
ここは2つの考えがあります。1つはXGPのサービスが軌道に乗り,2年後にはXGPに乗り換えてくれることが期待できるということ,もう1つはXGPのサービス開始後,従来のパケット通信については大幅値下げを行い,980円程度にすることで,2年後の解約を阻止できるはず,という考えです。
XGPが始まっても,従来のPHSの設備をすぐに停止できる訳ではなく,しばらく維持する必要があります。格安でも提供できれば維持費用の無駄を押さえることができます。
XGPの価格をおそらく決めかねているんではないかと思うのですが,その場合に決まった収入と設備があるWILLCOMは,後発でありながらもそれなりの基礎体力を持っていることになるのですから,布石として980円のプランで加入者を今のうちに集めておくという作戦は,それなりに説得力があります。
しかしあくまで前提は2年後にXGPが立ち上がっていることです。それまでにWiMAXに敗れたり,資金が底をついてしまうようなことがあったら,もうオシマイです。1280円や1580円でも良かったはずなのに,あえて980円という価格を出してきたことが,吉と出るか凶と出るか,なかなか微妙なラインなんじゃないかと心配になります。
さて,数年前は1万円近くの費用がかかったモバイル向け常時接続環境ですが,遅ればせながら私も憧れだった環境を手に入れることが出来ました。私は素直にうれしいです。
W-ZERO3[es]を中古で手に入れるのもよし,休眠状態のVAIO Uをメンテして持ち出すのもよし,ネットブックを買ってしまうのもよし,月々980円で手に入れたインフラを,どうやって活用するのかまさに思案のしどころです。
しかし現状では,全く使い道がないのも事実。有効活用の方法を模索したいと思います。