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電ドラボールプラスで楽をしよう

 少し前から人気商品となっているのが,電動ドライバーです。昔からある電気ドリルのようなピストル型ではなく,またペン型と呼ばれている筒状の物でもなく,見た目は普通のボールグリップのドライバーのくせに,なんと電動という優れものです。

 これ,従来型の電動ドライバーが進化してそのままの性能で小さくなったもの,といううまい話ではなく,従来のボールグリップのドライバーと同じ大きさになる程度の低出力のモーターと小型バッテリーを使うことで,基本は手動の工具である「ハンドツール」としながら,トルクが必要とされない早回し作業の効率化を目指しています。

 言い換えると,人間の力よりも大きな力を持つ「パワーツール」を出発点に小型化したものではなく,ハンドツールに小型のモーターとバッテリーを持たせて,その範囲で可能になることで省力化するというものでしょう。

 考えてみると,途中のクルクル回す作業は私もドライバーの軸をつまんで高速で回転させ,グリップをはずみ車として慣性を使って,楽をしながら高速でネジを回していました。この作業を電動で行おうという話だということです。

 このあたりの商品コンセプトは,メーカーのカタログには書かれていたりするのですが,もはや当たり前過ぎるのか,私が見た限り明確に書かれた記事やレビューを見ることがなく,実のところ私は買って使ってみるまでどういう商品なのか,わからずにいたのです。

 せっかく電動なのに最初と最後は手で回すってなんじゃそりゃとか,こんな小さなトルクで意味あんのかとか,クラッチがないとネジをなめてしまうがなとか,どうもイメージが沸かずに毎回「まあいいか」と買わずにいました。

 ここが一番重要なのですが,電動であることは強い力で回すことではなく,速く回すことにあるというわけです。確かにネジを回すときには,最初と最後は注意をして回しますが,途中はクルクルと力のいらない単純な作業になることが多いですよね。

 ここを省力化するのが,どうも流行っている電動ドライバーの狙いみたいです。だから最初と最後は手で回しますし,トルクが小さくても良いし,クラッチも必要ないわけです。その代わり,手で回す作業に違和感がないようなグリップの形状と大きさを実現しています。

 加えて,私自身がプロの間では標準となっているボールグリップが苦手で,長年使い続けているベッセルのクリスタラインの方が締め具合も早回しも勝手がわかっているので安心だったというのもありました。

 ただ,先日洗濯機を分解して掃除することになり,あのたくさんのネジを手で緩めるのは大変だなあと思った時に,ふと思い出して買って見る事にしたわけです。

 いざ買うとなるとどれを買うか,と言う話になるのですが,プロも使うベッセルとパナソニック,そしてそれ以外に価格帯で分かれていそうです。でも,こういう道具はしっかりした物を買いたいところで,ベッセルかパナソニックで迷いました。

 この分野の先駆者はハンドツールの老舗ベッセルのようで,発売時には品切れで入手が難しかったらしいです。今は二世代目になっていて,3段変速が可能です。

 ブレーキ付きで一気に人気が出たのが後発のパナソニック。さすが電動工具のメーカーだけによく分かってるなぁと思いますが,価格もちょっと高いですし,変速機能もないので今回はパス。

 ということで,お気に入りのブランドであるベッセルの「電ドラボールプラス220USB-P1」を買うことにしました。

 うーん,私に使いこなせるか。

 届いた電ドラボールは,思った以上に小さく軽く,心配していたグリップの握り心地も良いです。さすがにプロが選ぶ形状だなあと思いました。

 変速は3段階ですが,ボタンの長押しで切り替えです。切り替わった時にはLEDの表示が変わり,また回転させると照明用のLEDと同時にモード表示のLEDも点灯するのですが,回転させる前はどのモードかわかりませんので,軽く回してモードの確認をしてみるのが良さそうです。

 スイッチはスライドスイッチになっていて,ビット側にスライドすれば正転,グリップ側にスライドすれば逆転です。これ,最初は戸惑うだろうなと思いましたが,ネジが進む向きをイメージすればなんと言うことはなく,10分もすれば慣れてしまいました。

 先程も書いたLEDの照明ですが,私自身普段困った事がないので期待していませんでした。しかし,実際に使ってみるとなかなか便利で,作業性がアップします。

 トルクが小さいというレビューも見ますが,もともとそういうコンセプトの商品なのでそこは文句の言いっこなしです。個人的にはちょうどいいところで止まる感じで,そこからの本締めは手で行うのにちょうどいい塩梅だと思います。

 3段階のうち私は一番低速度の物を使っています。長いビスなどは高速で使う方が楽なんだろうと思いますが,ブレーキがないので早めにスイッチを切らないと,手が持って行かれます。

 ブレーキがあるとこういう気の遣い方をしなくても作業に没頭できるわけで,やっぱりブレーキはあった方がいいみたいです。

 回転が完全に止まるとロックがかかるので,グリップとビットが直結した感じになり,手で締めることができます。とはいえ,内部でグリップに繋がっているわけではなく,遊星ギアを介して繋がっている状態ですから,あまり力をかけると壊れます。ラフな遣い方をするとまずいので,このあたりは慎重に厚かった方がいいと思います。

 特筆すべきはビットの精度の良さです。メッキや塗装がないせいもありますが,M3のビスががっちり食いついて,下を向けても落ちないくらいです。グラグラすることもなく,まるで吸い付いているような一体感があり,実に気持ちがいいです。

 同じベッセルでも私のクリスタラインはここまで食いつきませんので,これだけでも価値があると思いました。

 また,強めの磁石が埋め込まれているそうで,手が入らない場所のネジ締めでも,ネジを一度も落とす事なく作業できました。こういう,ドライバーとしての基本がしっかりしているのは,さすがにベッセルです。

 さて,実際の作業に入ると,これがもう快適で快適で,これ無しには戻れません。手で回すのも握りやすく力が適度にかかり,スイッチを直感的にスライドすれば意のままに高速でネジを回すことが出来ます。無理せずとも,自然に電動と手動を使い分けるようになっていました。

 とはいうものの,前述のようにブレーキがないことにはちょっと戸惑うところがあり,手首をぐいっと持って行かれますし,そのせいでネジを押し込む力が緩くなってしまいがちでした。しっかり持つと手首かドライバーの内部か,はたまたネジ自身を傷めてしまいますから,やっぱりブレーキは欲しいです。

 気になった点もあります。ます充電要のUSB-TypeCです。TypeCは便利なので好意的な感想が目に付きますが,私自身は微妙かなと思っています。確かに便利ですが,安全性という点で私は疑問を感じています。

 先日,パナソニックがシェーバーをリコールしましたが,これはコネクタ部に水が入り込み,端子をショートさせたことで発煙発火に至ったものでした。Type-Cは端子の間隔が狭く,電源とGNDがショートしやすい構造になっています。実はこの手の事故は最近増えていて,各メーカーは密かに対策を打っているんですよね。

 ただ,こういう話って公知の物はないようですし,またUSB規格に規定された物でもありませんから,事故が起きて初めて気が付くようなものだと思います。

 で,この電ドラボールプラスはゴムのキャップが着いているとは言え,グリップのてっぺんにコネクタがあります。ここから水が入り込むことはどうやっても防げそうになく,濡れている状態で準電を始めれば,かなりまずいことになるんじゃないかと思います。(怖くて試してはいませんが)

 あと,こういう工具は自動車に積んだままと言うケースもあると思いますが,高温になる車内で電池の安全性はどれくらい担保されているもんなんでしょうか。私は自動車に乗せることはありませんが,真夏の炎天下で使うことはあると思いますので,心配にはなります。

 それから,ビットを交換出来るドライバーには無理もないことなのですが,ビットのぐらつきが気になります。ベッセルは嵌合部にゴムリングを持つビットも用意していて,これだとグラグラしません。ナイスアイデアだと思うのですが,これに交換するのもいいかもしれません。

 さて,私はもう1つ便利な遣い方をしています。電動ピンバイスです。ピンバイスは1mm以下の穴をドリルを折らないように慎重に丁寧に開けるための手動工具ですが,1つや2つの穴開けなどのちょっとした作業で,いちいち電動ドリルやボール盤を用意するのが面倒くさすぎて,3mm程度の穴もピンバイスで開けることが多いです。

 でも,さすがに1mmくらいのアルミ板に3mmの穴を開けるのは大変で,ハンドドリルが欲しくなるところでした。でも,ハンドドリルって結構大きくて,収納も面倒なんです。それに収納するなら電動ドリルを出してくればいいわけですし。

 そこでこの電ドラボールです。固い金属は無理ですが,アクリル板や1mm程度のアルミなど,そこそこの作業がこれで解決するでしょう。私は3.2mmをよく使うので,このサイズのビットを用意しました。例えば基板に固定用の穴を追加で開けるときなど,穴を開けてその場でネジ締めまで出来てしまう便利さです。

 もともと手動で開けていた穴ですから,電ドラボールのトルクで十分ですし,それ以上の重たい作業は本気で電気ドリルを出してこないいけないシーンでしょう。

 ということで,大幅に作業効率をアップするこの新しい工具。小型モーターとリチウムイオン電池がこのサイズで実用的な工具を実現してくれました。パワーツールが小型化しハンドツールサイズになったものではなく,ハンドツールがサイズを変えない範囲で電動化したというのが「その手があったか」と思わせる便利商品に繋がったわけですが,すでにこのジャンルが確立し,開発競争が始まっていることを考えると,まだまだ数年は進化した新製品の登場に目が離せない状態が続きそうです。

 

 

うちのNintendo SwitchとSwitch2

  • 2025/05/26 13:45
  • カテゴリー:make:

 Nintendo Switch2の抽選販売で悲喜こもごもな今日この頃ですが,2017年10月に発売から3ヶ月でうちにやってきたNintendo Switchは,ここ2年ほど成長した娘に酷使され,満身創痍となりました。

 私自身はゲーム機などを乱暴に扱うことがないので,よく中古屋さんにならんでいるボロボロのゲーム機本体やソフトを見ては,なんでこんなにひどいことになるんやろと首をかしげた物ですが,自分の家にそんなマシンが横たわるのを目の当たりにし,子どもってのはゲームをするのに興味があるのであって,Switchそのものに興味があるわけではないのだなと思い知りました。

 そんなSwitchですが,最大の弱点とも言えるジョイコンの故障に,うちも悩まされてきました。これも娘の酷使の結果だといえるのですが,スマッシュブラザースで遊ぶようになってから特にひどくなったように思います。

 まずは左のスティックが壊れました。壊れやすいと聞いていたので,あらかじめ交換用のスティックをいくつか買っておいたのですが,これに交換することで簡単に修理出来ました。

 例えばですね,思い通りにキャラを動かす事の出来ないジョイコンをですよ,自分の父親がちょちょいと修理して,それも細かい部品を器用に交換して,一度はバラバラになったジョイコンが何事もなかったように戻ってきて,使ってみれば治っているというのは,ちょっとした感動があると思いますし,なんなら「エンジニアスゲー」とエンジニアを志すきっかけになったりするもんじゃないですか。

 そういう話も全くなく,むしろ私より修理屋さんにお願いする方が丁寧な娘を見て,私が死んだらどないなんのかなという,いつもの不安を思い出したのでした。

 それはともかく,先日娘がAボタンがおかしいと言い出しました。こういう場合,ボタンのペコ板の交換が必要なのですが,それは在庫していなかったのでamazonで注文。翌日部品が届きましたが,娘に聞くと「なんかしらんけど治った」というので,修理は補修しました。

 しかし,その後もちょいちょいAボタンがおかしいというので,ちゃんと調べてみたところ,どうも右のスティックが入りっぱなしになっていて,それでAボタンが押され続けたような状態になっていたようです。(スマブラの話です)

 結局ボタンは悪くなかったわけですが,スティックなら在庫があるのでさっさと交換することにしました。

 ジョイコンを分解し,電池を外してスティックを交換します。ここまではスムーズに出来ました。そして組み立てを行っている時に,突然の不幸が私を襲いました。

 ぴろーんとひらひらしているフレキが出ています。おかしいな,全部コネクタに挟んだはずなのにと思って見てみると,フレキが切れていました。LEDとボタンがついた基板から出るフレキがスパッと綺麗に切れていました。

 私としたことが,なんということだ!フレキを切るなど,初心者丸出しです。

 娘に一応謝ったわけですが,「声を聞いてなんかそういう感じがした」と冷静に対応され,急に張り合いもなくなってきました。

 でも考えてみると,このSwitchは私のもの。この修理は私のためなのです。なんか釈然としませんが,自分のためなのです。

 切ってしまったフレキは,もう仕方がありません。交換するほかないでしょう。amazonで調べてみると,やはりこの部分も売られています。4つで500円ちょっとでした。

 届くのは翌日という事で,果たして翌日,手に入った部品で修理が完了したのでした。


 すごいなと思ったのは,amazonでこんな修理部品が手に入るという事です。もちろん純正部品であるはずもなく,非正規品にメーカーも頭が痛いだろうなと思いますが,交換した部品の品質はと言うと,これがなかなか良くて,十分な品質を保っています。今どきの中国製の部品は余程でない限り粗悪な物は出てこないと思うのですが,修理は技術と部品が揃って可能という減速で言うと,こうして部品が手軽に買えるというのは,すごいことなのかも知れないなと思います。

 これも,Nintendo Switchというメジャーなゲーム機だからこそで,普及したゲーム機を手に入れるということは,こうした面でも有利なんだと思います。マイナー機を渡り歩いてきた私には,なんとまぶしい世界でしょうか。


 さてさて,そんなこんなでSwitchの後継機であるSwitch2が,6月5日に発売になります。転売対策が取られ,抽選販売がなかなか公平な方法で行われたりして発売日まで平和な時間が流れていますが,発売と同時にSwitch2で遊べる人はまだまだ少なそうです。

 で,そんな少ない人の中に,なんと私がいます。

 私は幸運なことに,ヨドバシ.comの抽選に当選し,競争率が高いと言われているマリオカート同梱セットが発売と同時に遊べることになりました。いやー,これで一生分のラッキーを使い切ったわ。

 任天堂のダイレクトストアでは,ニンテンドーオンラインに入っていないので参加資格すらなし,ビックカメラは早々に外れていまい,まあぼちぼちいこか,と思っていた所,あろうことかヨドバシ.comで当選です。いやほんと,ヨドバシがますます好きになりましたよ。

 しばらく喜んで私は我に返りました。幸運なことに,発売日に届くSwitch2は,当面のあいだ私専用にしないといかんと,目の前にあるボロボロのSwitchを見て誓ったのでした。

 ふふ,楽しみです。

 

電子工作の40年

 恐ろしいもので,ハンダゴテを初めて使って電子工作を始めてから,40年以上の時間が経過してしまいました。ハンダ付けという新しい接合法を習得して可能になった工作範囲は広く,一気に電気の世界に踏み入れることになったわけですが,キットの製作で始まった電子工作も,雑誌の製作記事を見ながら作るようになってくると,自分で部品集めをすることになります。

 この部品集めという作業がとにかく面白いわけですが,初めは記事にあるとおりに部品を揃えることが精一杯だった私も,次第に手に入る部品で作る事を覚え,やがて回路設計の世界に踏み出すことになるのです。

 小学生の頃から,日本橋の部品屋さんで部品を探し,工作で使う部品の変遷をずっと見て来た私は,先日ふとこの40年で使えなくなった部品,変わってしまった部品について考えてみましたが,以外に使えなくなった部品というのはないもので,40年前の製作記事をそのまま作る事は案外簡単にできたりします。

 変化の激しいエレクトロニクスの世界において,これはなかなか驚きでして,例えば1980年代に1950年代の製作記事をそのまま作る事はほぼ絶望的だったことを考えると,最先端とホビーとの間の差がどんどん広がっている時代なんだなと思います。

 ということで,40年前,あるいは30年前を振り返り,変わってしまったこと,変わっていないことをつらつらと書いてみます。


(1)基板

 40年前に基板と言えば,片面ベークが当たり前,ガラスエポキシは余程の事がないと手が出せないものでした。多層基板など存在は知っていたものの見た事はなく,両面基板も自分には関係がないと思っていたほどでした。

 初心者は平ラグ版,中級者はサンハヤトの万能基板,上級者は自作基板と相場が決まっていて,銅箔板に直接油性ペンで書き込む手書きか,サンハヤトの感光基板を使って基板を作ると,もうそれだけで1つの工作を仕上げたような気分になったものでした。

 それでもこうした基板はベークが大半で,まさかガラスエポキシがこんなに手軽になり,一般的に使われるようになるとは思いませんでした。

 平ラグ版はもちろん,サンハヤトの万能基板(定番のICB-88やICB-93)も全く問題なく入手可能,感光基板も露光時間が短くて済むタイプにリニューアルされて現在も手に入ります。

 大きく変わったのは,少量の基板を海外に発注して作ってもらうことが個人でも可能になったことで,PCに無料で使える基板CADを使えば,数日の間に完成した綺麗な基板が届きます。これはもう,当時は考えられなかったことだと思います。

 もちろん,自分でエッチングする基板にも価値はあり,CADの操作を覚えずとも思い通りのパターン(特にアナログでは重要)が描けますし,なんと言っても待っている時間がありません。

 感光基板以外の方法で基板を作る方法がもっと進歩するかなと思っていた時期もあるのですが,アイロンプリントも今ひとつ盛り上がりませんでしたし,小型フライス盤を使う方法も下火になった感じです。

 自作の基板には穴開けが面倒という話もついて回るのですが,高周波の基板ならほぼ面実装ですし,パターンも簡単なのでなんならエッチングをせず,Pカッターで直接銅箔を切っていく方法で作る事が出来たりします。
 
 どっちにしても,基板は40年前から大幅に進歩しつつ,でも昔ながらの方法も選ぶ事が出来そうです。


(2)ブレッドボード

 基板と関連があるのですが,ブレッドボードがこれほど一般化するとは思いませんでした。40年前を思い出すと,輸入品があるにはあったが高価で,本当に実験用の特殊なものだったように思います。

 私も30年ほど前に手に入れて使ってみましたが,当時はハンダ付けする方が楽だと,結局使わずにいました。しかし一度ブレッドボードで作る事に慣れてしまえば楽ちんで,食卓で製作が出来るお手軽さにはあらがえない物があります。


(3)ハンダ

 電子工作の世界では,40年前からスズ63%の共晶ハンダがおすすめされています。20年ほど前に吹き荒れた鉛フリーの流れが,工作の世界ではそれほど影響を与えなかったようです。

 鉛フリーのハンダは融点が高く,ハンダ付けも難しいです。ハンダゴテも温度調整機能のある高価なものが必要だったので,工作にはなかなか普及しなかったと思います。

 なら,有鉛の共晶ハンダが未だに使われるのって危ないんじゃないかと思うかも知れませんが,素人が工作で使う量などたかが知れているので,規制の対象にならないのでしょう。というか,日本には有鉛ハンダを取り締まる法律はないそうです。

 ということで,ハンダは未だに有鉛の共晶ハンダが一般的で,どこでも普通に手に入ります。むしろ無鉛ハンダの方が入手が難しいくらいです。


(4)ハンダゴテ

 一方のハンダゴテですが,こちらは随分と進化しました。40年前,鉄でコーティングしていない昔ながらのハンダゴテがまだまだ残っていましたから,ハンダが乗らなくなったらヤスリで削れといわれていました。

 さすがにそんなハンダゴテは一部でしか使われる事はなくなり,今はどんなに安い物でも鉄でコーティングした長寿命のコテ先が使われています。

 進歩したのは,温度調整機能がついた物が安価になったことでしょう。10年ほど前まではコテと本体が分かれていたのですが,今は安価な一体型が手に入るようになり,ハンダ付けが劇的に楽になったように思います。


(5)抵抗

 抵抗は今でも1/4Wや1/6W,誤差5%のカーボン抵抗が手に入ります。これは40年前から変わりません。サイズは小さくなっていると思いますが,リードタイプであればなにも問題はないでしょう。それより,安価で簡単に手に入る抵抗があることが重要です。

 こうしたリード部品の進歩はほぼ止まっているのですが,この40年の間に抵抗は完全に面実装品に切り替わりました。しかも小型化の流れは止まらず,30年前は2012,20年前は1608,10年前は1005,今は0608かそれ以下というサイズになり,もう気軽に工作で使える物ではなくなってしまいました。

 量産で使われるものが一番安く手に入りやすいものですから,今は2012や1608はリード部品よりもかえって入手が難しいくらいで,価格も高めです。しかしこれらのサイズの抵抗は2.54mmピッチの万能基板にぴったりなので,私はたくさんストックしています。

 これらのサイズの抵抗も当時は高周波用の特殊な部品という扱いでしたが,今はすでに生産されていない過去の部品です。そんな中で,もっと古いリードの抵抗が生き残っているというのは,ホビイストにはうれしい話だと思います。


(6)コンデンサなど

 コンデンサの世界は大きく変わったように見えます。まずリードのコンデンサはフィルムと電解コンデンサくらいになってしまい,それ以外には手に入りにくくなっています。

 セラミックコンデンサはほぼチップに置き換わっています。また,バイパスコンデンサに使われる小型大容量で誤差が大きく温度特性も悪い高誘電率タイプと,従来からある特性の良い低容量品にくっきり分かれました。

 前者は耐圧も下がり,特性も犠牲にすることで,米粒程の大きさで100uFが当たり前になっています。こうした用途でリードの物は需要がありませんので,私は売られているのを見た事がありません。

 後者についてはもともと高周波用なのでチップの方が有利なのですが,そもそもラジオやテレビなどで一般的だったアナログの高周波回路が衰退し,精度や温度特性を優先した高周波用のコンデンサの需要が消えてしまい,とても入手が難しくなっています。

 これはリードタイプでも同じで,コイルの温度特性を相殺するために,コイルとは逆の温度特性をもつセラミックコンデンサを並列に繋いで温度特性を相殺するような場合に使われる温度補償用のセラミックコンデンサなど,もうどうやって手に入れればいいのやら見当も付きません。

 フィルムコンデンサは集約が進みました。かつては値段と性能で使い分けをするのが当たり前で,温度特性や精度でスチロール,一般用にマイラー,高容量でポリカーボネート,という感じでしたが,スチロールは高温で劣化するので量産時のリフローが使えず消えましたし,それ以外の用途には安くて特性の良いポリプロピレンコンデンサに統一された感じがします。

 マイカコンデンサも高級なコンデンサの代名詞でしたが,高価で小型化できず小容量品しかないコンデンサを積極的に使うこともなく,今や絶滅危惧種になっていると思います。

 検討しているのはアルミ電解コンデンサで,これは40年前から入手性も変わらず,定番であり続けています。20年ほど前,携帯電話の基地局で大容量の電解コンデンサが大量に使われたことから原材料が不足して入手が難しくなった時期もありましたが,スイッチング電源に必須なアルミ電解コンデンサの需要は安定しているみたいで,入手の心配はありません。

 これに対してタンタル電解コンデンサはほぼ消えました。40年前は高性能電解コンデンサの代表選手だったのですが,故障時にショートするという特性が致命的で,まず量産の設計から駆逐されました。

 そうそう,電解コンデンサといえば,4級塩の話を忘れることは出来ません。30年ほど前に電解液を高性能化して,小型で特性の良い電解コンデンサが作られ,大量に使われたのですが,10年ほどすると電解液がゴムのパッキンを劣化させて漏れてしまい,基板ごと溶かして壊すという問題が多発しました。

 コンデンサのメーカーはおろか,最終製品のメーカーも公式には認めていないと思いますが,この頃の電子機器ではもう当たり前の故障原因で,当時作られた機器を使い続けるための最大の難関となっています。なんといっても基板を溶かしてしまうのですから,もう手が付けられません。これ,日本のメーカーの黒歴史だと思います。


(7)LED

 40年前のLEDは高価でしたし,色も品種も少なく,暗かったです。私が初めて買ったLEDは東芝のTLR103でしたが,1つ100円もしました。

 赤や黄色は当時とそんなに変わらないと思うのですが,黄緑は波長が変わっていて,昔の黄色に近い黄緑は本当にほたるのように美しく,大好きでした。今の黄緑は緑に寄っているので,今ひとつ好きにはなりません。

 だから,40年前の「電子ほたる」などと銘打って出ていた製作記事を今再現しようとしても,実はLEDの色でほたるにならないかも知れません。

 しかし,青色LEDが一般化したことで,様々な色のLEDが手に入るようになりました。30年前,SiCの青色LEDを秋月電子で買いましたが,今のLEDに比べると全然暗く,むしろ神秘的な感じさえしました。

 気を付けないといけないのは,電流が少なくなっていることです。40年前,10mA流すこともざらだったLEDは,今や1mAも流すとまぶしいくらいです。昔の記事の通りに作ってしまうとまぶしいばかりか,劣化が進んでしまうので,再設計が必要かも知れません。


(8)トランジスタ

 40年前にはすでにシリコントランジスタへの移行が終わっていたので,当時の製作記事で工作するためにゲルマニウムトランジスタを探し回ることはしなくていいと思います。

 ただ,当時から定番だった2SC1815と2SA1015はすでに廃品種になっていて,この世界にもチップ部品の並が押し寄せています。

 とはいいつつ,2SC1815は似たような特性の互換品が安価に出回っていますので,普通の用途では困ることはないでしょう。2SC458や2SC945,2SC828といった汎用のトランジスタは全然手に入りませんが,これらも普通は2SC1815の互換品で間に合いますので,心配はありません。

 工作で良く使われたものとしては,2SD235があります。パワートランジスタですが,これも2SD880の互換品が出回っていますので心配ありません。

 問題はFETで,高周波用のかつて3SK59などのダブルゲートFETを駆逐した2SK241が,すでに貴重品になっていることでしょうか。代わりになる後継品種はなく,互換品種ものきなみ入手困難,中国製は手に入りますが,性能面で互換といっていいか微妙なところです。FMチューナー用に多用された画期的なデバイスでしたが,FMラジオの需要が小さくなった今,この部品が欲しいのはアマチュアだけですし,無理もないところです。

 それでも,まだリードタイプの定番トランジスタがちゃんと揃っているのはすごいとしか言いようがなく,40年前の工作の大半はカバー出来ると思います。


(9)アナログIC

アナログICも,定番と言われるものは40年前から変わらず入手は難しくありません。ただ,業界の再編が進み,フェアチャイルドは元モトローラであるオンセミコンダクタに買収されて消滅,ナショナルセミコンダクタもまさかのテキサスインスツルメンツに買収されて消滅し,オリジナルのメーカーはほぼテキサスインスツルメンツに一本化された感じです。

 しかしそのテキサスインスツルメンツは代理店経由で販売をしないことになり,我々のようなホビイストがテキサスインスツルメンツのICを手に入れる事は難しくなりました。

 日本のメーカーも自社製品に組み込むことがなくなったことで生産されなくなり,今や東芝とローム,JRCあらため日清紡くらいのものです。

 案外STmicroのICが手に入りやすいようなので,40年前の工作をするならこういうところも活用した方がいいかも知れません。

 中国製のセカンドソースが安く入手が簡単になっているのですが,特性的に心配だったこともあって手を出さずにいました。しかし,今やそうも言ってられない状況で,上手く使い分ける必要があります。

 とはいえ,製作記事に出ていたNE555やLM386,7805やuA741,RC4558等は今でも互換品が簡単に手に入ります。このあたりはなにも心配ないでしょう。


(10)デジタルIC

 一方のデジタルICは結構深刻だと私は思います。あれほど当たり前に売られていた74LSはもう絶滅危惧種ですし,74ALSや74Fは貴重品です。さらにいうと時々目にした74Sはさらに入手困難です。

 かろうじて74HCが手に入るので置き換え可能ですが,厳密には互換性はないので代わりにはならない場合もあります。4000シリーズは今でも手に入る可能性が高いですが,ちょっと変わった品種は難しいでしょう。

 いずれにしても,DIPのものは入手が難しくなりつつあり,SOPやTSOPが普通になってきます。ただ,需要のある品種しか手に入らないので,例えば74141や74181などはそもそもSOPなど存在しません。

 30年前には一世を風靡したPALやGALはもう全く見かけなくなりました。今やPALASMを走らせるのも一苦労ですから,入手出来ても仕方がないのかも知れません。

 もっというと,専用のICはアナログICも含めて絶望的と言えるでしょう。CPUやマイコンのペリフェラルはまだ探せば手に入ると思いますし,DRAMやSRAMも同じような状況です。

 しかし,ちょっと特殊なIC,例えばフロッピーディスクのVFOであるとか,CB無線用のPLLであるとか,RTCのICだとか,FM音源であるとか,CPUでもマイナーなものなどは,かなり探さないと難しいと思います。カスタムICに至ってはもう入手は諦めるほかありません。

 ただ,そんなものは40年前の製作記事にも出てきません。設計の厳しさで考えると,今手に入る74HCか4000シリーズで十分動く工作ができると思います。


 とまあ,思いつく物を書いてみました。こうしてみると,この40年で大きく変わった世界ではありますが,昔ながらの物も手に入る状況は続いているので,昔の製作記事で工作することも十分可能みたいです。

 失われた30年と言いますが,日本はこの間進歩していないという言い方も出来るかも知れず,ちょっと複雑な気分になります。

 

PC-386BookLでPPMMCDRVを動かしてファイル交換

 先日,ふとネットをダラダラとみていますと,PC-9801のプリンタポートにmicroSDカードを繋いで読み書きするハードウェアがアキバで売られたというニュースを目にしました。

 ん?PC-9801のプリンタポートって出力専用だったんじゃなかったっけ?

 AT互換機ではプリンタポート接続のZIPドライブなんかが普通に売られていました(懐かしい)が,同じ仕組みがPC-9801で実現出来なかったのは,14ピンのPC-9801のプリンタポートが出力専用だったからでした。

 PPMMCDRVと呼ばれるそのハードウェアの説明を読んでみると,microSDカードをSPIモードでアクセスするということと,唯一の入力であるBUSY端子を使って双方向通信を実現するという仕組みでした。賢いなあ。私はてっきりFPGAなりSTM32なりを使うのかと思ってましたよ。

 PIOモードというPC独特の言い回しですが,詰まるところソフトでクロックやデータを生成するソフトウェアSPIですので,速度はCPU依存で,しかも強烈に遅いです。それでもフロッピーディスクやLANを使わずにファイルをやりとり出来るメリットは大きくて,実際PPMMCDRVは大人気のようです。

 自作するのは簡単ですが,ArduinoやRaspberryPi向けに作られたと思われる,microSDスロットとレベルコンバータ,そしてLDOまで搭載された小さい基板が安価に売られていて,これを使えば本当に繋ぐだけでハードウェアは完成してしまいます。

 最大の関門は14ピンのアンフェノールコネクタの入手でしょう。

 ところが偶然,数日前にジャンクのプリンタケーブル(しかもEPSON純正)を手に入れていました。これはもはや神の啓示。作らないわけにはいきません。

 ということで,早速amazonにmicroSDの基板を注文。5枚で760円ほどでした。

 届いてから工作開始。日曜の午後にぴったりな工作です。

 1時間ほどで完成すると思っていましたが,重いのか手間取ったのでその点松を書いておくことにします。

 まず,ケーブルをちょん切って,皮を剥きます。SPIで通信しますので短かくないとエラーが出そうだという事もありますし,小さくまとめておきたいので,コネクタから5cm程でカットしました。

 2,3,4,5,11ピンが必要なので,どの線から出ているのかをテスターでチェックしますが,鈍くさい私はどうせ間違うでしょうから,一応全部の線を切らずに残しておきます。

 そしてそれぞれの端子を,公開して下さっている配線図に従ってハンダ付けしていきます。電源はプリンタポートから採れないので,マウスポートから取ることにして,D-subの9ピンのコネクタに繋いだ5VとGNDも基板に配線します。(この段階ではLEDはまだ繋いでいません)

 この段階で一応チェックしますが,案の定配線ミスをやらかしています。違う線を繋いでいたので修正して,実機で試してみます。

 microSDカードは手持ちのもので一番小さい容量の1GBのものを使います。

 公開されたソフトに同梱されていたテスト用プログラム,PPMMCTST.EXEを実行しますが,エラーでいきなり進みません。よく考えてみるとGNDを配線してなかったことに気が付いたので14ピンにGNDを繋ぎますが,結果は同じ。(そりゃそうです,マウスコネクタのGNDは繋がっているので,品質はともかくとしてGNDには繋がっているんですから)

 ここで少し調べてみると,EPSON機ではSCKというクロックの信号でリンギングが出るので,3.3kΩを直列に入れてダンピングするのがよろしいそうです。私が使っているPC_386BookLは割と初期のEPSON機ですからダンピング抵抗は必要でしょう。

 手持ちの関係で2.7kΩで試してみますと,希にテストはパスするようになりましたが,ほとんどエラー。通常の読み書きなど全くできません。うーん。

 波形を少し見てみますが,BUSY端子の電圧がちょっと低く,4V程度しかありません。ですが,TTLレベルでは2.0V以上あればHighとなりますので,(不問にできないですが)これが原因で動作しないと言うことではないでしょう。

 気晴らしに,先にLEDの配線をするのですが,またも配線ミス。ずっと点灯しっぱなしになるので首をひねってましたが,違う線に繋いでました。トホホ。

 LEDの配線は正しく修正しましたが,動作しない状態は続いています。そこで,別のmicroSDを使ってみる事にしました。手持ちでフォーマット出来そうなのは16GB位だったのですが,これを30MBごとにパーティションを切って試してみます。

 すると,テストではほとんどエラーが出なくなりました。とはいえ希にエラーは出ますし,ファイルアクセスは全く出来ません。でも,偉大な一歩です。

 それではということで,ウェイトを入れてみました。最初は8という大きな物をいれたのですが,これだとファイルの読み書きが出来るようになりました。そこでウェイトを1つずつ減らしていくと,ウェイトが1ならOK,0ならエラーになることがわかりました。

 同じウェイトで先の1GBのmicroSDをもう一度試しましたが,やっぱりエラーです。別の8GBのカードでも0ウェイトでは動きませんでした。これはもうカード依存,いわば相性みたいなもんだと割り切るしかなさそうです。

 念のため,ダンピング抵抗の値を変えてみたり,他の信号にも入れてみたり,BUSYをプルアップしたりしましたが何も変化はなく,ついでに言うとSCKのダンピング抵抗も外しても,ウェイトを1つ入れれば問題なくアクセス出来る事がわかりました。

 しかし,ウェイトを入れれば遅くなります。ベンチマークを取ってみると情けないことに12kB/secしか出ていません。0ウェイトならもう少し改善されるように思うのですが,動かないものは仕方がないです。

 ちなみにウェイトを8つ入れた場合,2kB/secまで速度が低下しました。V30以下とは・・・

 これで大きなファイルもエラーなく読み書き出来るようになりました。LEDもちゃんと点滅するので,もう余計な線をカットしても大丈夫でしょう。遅いとはいえ,一時期検討していたシリアル経由での転送に比べると遙かに高速(12kB/sec = 96000bps)ですし,PCとのファイル交換に力を発揮すると思います。

 これまで,PCとのファイル交換は大変でした。フロッピーを使うしかありませんが,3モードに対応しないPC-386BookLは,720kBの2DDでしかファイル交換できません。仮に2MBのファイルを送り込む場合,ファイルをファイルを3つに分割して3回読み書きしなければなりませんでした。

 フロッピーのイメージなどはもともと1.2MBですから,圧縮しても720kB以下になることは少ないです。そうなるとやっぱり分割して2回で転送しないといけないので,気分的にもかなり抵抗がありました。

 フロッピーディスクエミュレータを使って,USBメモリのフロッピーイメージをマウントして実機に取りこむ手はありますが,1ファイルあたり1.2MBまで転送可能になるとはいえ,手間がかかることには違いありません。

 しかし,このPPMMCDRVでは,ファイルサイズがフロッピーディスクのサイズを超えても分割しないでいいですし,付きっ切りでディスクの交換をすることもありません。少々速度が遅くとも,放置して置けば済むというメリットは非常に大きいです。

 悔しいのは,ウェイトを0に出来なかったことです。きっと何か問題があるはずで,真面目に取り組めば原因くらいは判明すると思うのですが,ウェイトで改善するという事はクロックとデータのタイミングがシビアなのかもしれません。

 こうした楽しい工作の回路はもちろん,ソフトも公開して頂いている事には感謝しかありません。私の場合,microSDカードをとっかえひっかえしましたし,EPSON機ですので試行錯誤も必要でしたから,誰でも簡単にできるというものではなかったかも知れませんが,むしろそれが楽しいくらいで,なにかと小銭を集めたがる人が多いこのご時世,面白いものを公開して頂いている事に,まだまだすてたもんじゃないなあと思った次第です。

 

PC-386BookLのメモリを3.6MByteに

 PC-386BookLで遊んでいると,もうちょっとメモリが欲しいなと思う事があります。といっても,MS-DOSで真面目に2.6MByteを使い切ることなどなく,ディスクキャッシュや常駐ソフトの待避に使われるわけですが,HDDを1GBと破格の大きさにしたことで,ディスクキャッシュが相対的に小さくなって,パフォーマンスの低下が目立って来ました。

 これまで768kByteでも十分だったのは,HDDが40MByteと小さい事で,ファイル数も少なく,ディレクトリのエントリも少なかったからだと思うのですが,1GByteにもなるとディレクトリの一覧が出てくるまでに,ゴリゴリとHDDへのアクセスが発生します。

 自作したLスロット用2MByteのSRAMボードを改造して容量を増やし,もう少しディスクキャッシュにあてがえればと思ったのですが,当時そういうこともあるかと,増設の仕組み仕込んであったことを思い出しました。

 SRAMですので,考えるべきはアドレスデコーダくらいのものなのですが,デコード信号をHC138を使って作ったので,すでにデコード信号が1MBごとに8本も用意出来ています。このうち先頭の2MB分を使っているわけですが,現在の回路でも8MBまでは信号が用意出来ているというわけです。

 とはいえ,SRAMそのものをバスに敗戦する作業からは逃げられません。多くの先人達は,ここでICの上にICを重ねるという,カメカメと呼ばれる必殺ワザで増設をこなしてきました。

 かくいう私もカメカメは基本テクニックとしてすでにマスター済みですが,なにせ信頼性が低いので積極的にやるようなものではありません。それに,渥美も増えるので,実際には利用出来ないことも多いテクでもあります。

 今回のケースでは,配線がSRAMの上にも這い回っているという汚い実装で,カメカメが最適解ではないのが明確でした。とはいえ,他に方法もなく,やるなら重ねる以外にないでしょう。

 その前に,SRAMの在庫があるかどうかも見ておかなければ。幸いなことに,前回10個買ったSRAMの残りがそのまま残っているので,もう2つ追加してトータル3MByteのプロテクトメモリに仕上げましょう。

 追加の部品はSRAMだけ。これを重ねて配線し,HC138から0x30000から0x3FFFFまでをデコードした信号を取って配線するだけです。

 とはいえ配線数も多く,細かいハンダ付けが続くので,まさに修行。黙々と続けます。

 1時間半ほどで配線を終え,念のための確認をしてからPC-386BookLに取り付けます。まずは起動直後のメモリチェックはパスです。3MBを認識しています。

 次はTMEM.EXEというメモリチェックプログラムで,プロテクトメモリのままチェックをしますが,これもなんなくパス。

 そして最後に仮想86モードでEMSを設定し,EMSTEST.EXEでEMSとしての動作をチェックします。これもサクッとパス。

 いやはや,私には珍しいことに,何の問題もなく動いてしまいました。

 これで私のPC-386BookLは3.6MBになりました。これくらいになるとようやくメモリサイズを気にしなくても大丈夫な感じです。

 ディスクキャッシュを増やしたり,EMSとのバランスを取ったりして調整を済ませて運用に入っていますが,正直なところ,あまりその効果を感じません。そういえば当時も高いお金を出して増やしたメモリ(PC-98RLをフル実装で9.6MBにした)にたいして,それほど実感として変化を感じなかった,つまりは気分的な物で,結局DOSではどうにもならないことに馬鹿馬鹿しさを感じていたことを思い出しました。

 もうこれ以上PC-386BookLを改造したり拡張することはないでしょう。そういえば私が初めて買ったDOS環境であるPC-386VRも,メモリは増設後4.6MByteだったなあとか,そんなことを思い出しました。そう考えると,1991年頃の実機環境としては,このくらいで十分だという事でしょう。

 

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