エントリー

カテゴリー「make:」の検索結果は以下のとおりです。

LCDコントローラ基板を壊したので修理する

  • 2024/05/14 11:24
  • カテゴリー:make:

 昨年8月から放置している物に,iPad2のLCDを再利用しようと画策して購入したLCDコントローラ基板があります。

 VGA入力やHDMI,今どきDVI入力まで装備しているのは結構なのですが,VGAも31kHzからしか対応しませんし,LCDも1024x768という懐かしい解像度ということもあり,今ひとつ使い道が浮かばないこと,加えてむき出しでは使い物にならず,何らかのフレームかケースに入れないといけないということで,どうにも手が伸びない状況にありました。

 ですが先日,突然思い出したようにApple][plusに電源を入れてみたところ,このLCDがフィットするんじゃないかと試して見たところ,案外上手くいきそうだったので使い道の1つが見つかった感じがして,そろそろケースを考えないといかんな,と思っていたのでした。

 そんな流れの中,Apple][の調子が悪くなり,冷えているときには起動に失敗し,暖まってくると今度はRAMが化けるという,結局いつもまともに動かないだけではなく,その原因が時間と共に変化するという最悪の状況に陥り,場当たり的な対策に時間を取られてしまいました。

 一段落してから,ふと目に入ったiPadのLCDに繋いでみようと思ったのが失敗の始まりで,配線の取り回しに手間取り,バックライトのインバータ基板がメイン基板にちょっと触れたようなのです。

 すると画面が消え,電源ランプも消えてしまいました。

 まあ,ちょっとしたショートだろうと再度電源を入れ直しますが,表示は消えたままです。

 どうも,壊してしまったようです。

 安くない買い物だったこともありますが,こういう特殊なものは,動く物に出会うことも結構大変で,初期不調や故障はもちろん,そもそものLCDとのマッチングの問題もありますから,今動いている物を壊してしまったことは,とてももったいないことです。

 やってしまったものは仕方がありません。それほどの価値のないLCDですので,このまま廃棄するしかないでしょう。

 いやまてよ,どうせ捨てるなら,ちょっとだけ調べてみるかと,故障の原因を調べてみました。例えばヒューズが切れているだけなら交換するだけで済みますからね。

 目視でヒューズらしい物を探しますが見当たりません。残念ながら簡単には修理出来ないみたいです。

 ならばと,ACアダプタを差し込んだ状態であちこちの電圧を測定してみます。5Vとシルクのあるランドには5Vが出ています。しかし,3.3Vと書かれたシルクのランドは0Vです。

 これは本当に0Vなのか,ただGNDとショートしているのか,そこが問題です。故障の原因がショートや過電圧なら電源ICの破損かも知れず,そうだとするとICの出力端子が壊れてしまってGNDに落ちていることも考えられるでしょう。

 と,当たりを付けてテスターで導通を探っていきます。するとやはり3.3VはGNDとショートしていて,その原因はどうも5ピンのICのショートにあるようでした。

 このIC,周辺に2.2uHのコイルがあることや,5Vが入力されていることから,どうも3.3Vに降圧するDC-DCコンバータのようです。このICを外してやると,3.3VはGNDとのショートがなくなりますので,コイツが壊れたということで間違いないでしょう。

 このIC,残念な事にマーキングを調べても型名は不明で,ICの交換で修理出来る道は難しそうです。

 で,3.3Vのランドをテスターであたっていると,近くにLDOっぽい空きランドがありました。このLDOのランドはノーマウントなのですが,その端子にはGND,5V入力,3.3V出力が繋がっていて,しかも配置や大きさがLM1117とぴったりでした。

 800mAまでのLDOですから,結構大きめなんだなと思いつつも,DC-DCではなくLDOを使う場合も想定してランドだけ用意してあるというのがヒントになり,とにかくここに3.3Vを突っ込んでやれば修理出来るかもしれないと,いろいろ考えてみることにしました。

 まず,仮説が正しいかどうかを確かめるために,手持ちのLDOを繋いで見ます。ただ,LM1117とコンパチなLDOはなかったので,TA48M33を無理矢理繋いで試してみます。

 これで動けば100点,動く事がなくとも,スタンバイに入ってくれれば80点という所でしょう。結果はなんと動作しました。元の通りApple][の我慢が表示されています。

 このまま使うことも考えたのですが,LDOが触れないくらいに発熱しています。このLDOの能力(500mA)を越える可能性がある発熱ですし,そうでなくとも消費電力は大きくなるので,別の方法を考えましょう。

 手っ取り早いのはLM1117を入手すること。これがマウントされた評価ボードが見つかったので外して移植すればいいんですが,発熱の問題はある程度解決するとしても,消費電力の問題は捨てきれません。

 ということはDC-DCを使うことですが,ここでもう少し柔軟に考えを進めてみます。なにもこの基板にそのままマウント出来るようなものでなくても,小基板にDC-DCを組み立て,ここから配線を飛ばせばいいんじゃないかと。

 しかし,降圧のDC-DCなんて自分で組み立てたことはありませんし,そんな部品も買った覚えがありません。でも長年電子工作をやってきた人間ですので,一応探してみると,どういう訳だかトレックスのXC9236の3.3Vのものが出てきました。

 早速データシートを確認すると,FET内蔵,電圧固定式で外付け部品はコイル1個とコンデンサ2個ととてもお手軽です。効率92%,電流は600mAまで引ける上,私の持っているものでも発振周波数は1.2MHzと高速なためコイルが小さくて済むと言う,なかなか優秀なICでした。

 コイルは4.7uHが推奨値でしたが,手持ちにそんな値はなく,10uHを使うことにして実験開始です。多少の発熱も吸い込める両面の基板を使い,さっさと組み立てて実験を開始,ありがたい事に5V入力で3.3Vがさっと出てきてくれています。

 電流を600mAくらいまで引っ張っても安定して3.3Vが出ています。保護回路が働く直前の状態でリップル(ノイズ)は100mVp-pくらい出ていますのでかなり怪しいですが,500mAくらいまでなら全然余裕です。優秀ですね。

 TO-220くらいの大きさで作ったDC-DC基板を,LCD基板の隙間においてジャンパを飛ばし,一応ショートしてないかどうかだけ確認して電源を投入します。

 幸いない事にトラブル無くLCDに表が出ました。指で触って見たところほとんど発熱もなく,電圧も安定しています。2時間ほど使ってみましたが問題なく動作してくれたので,これで修理完了とします。

 正直,こういうトラブルで壊した基板を修理する人は少ないと思いますし,実際に修理が出来る人というのもそんなにそんなにいないでしょう。世の中には多くの部品があふれていますが,システムLSIやカスタムICでない限り,同じような働きをするICにいくつもの品種があるというのが実際で,置き換え可能な互換品でなくとも,同じ機能になるように回路設計を行えば,案外手持ちの部品でどうにかなるものです。

 さて,こういう話があったわけですから,なんとかディスプレイとして完成させたくなりますよね。もともとアクリル板か写真立てを使ってフレームを作って,きちんと仕上げようとおもっていたのですが,ハードルを下げてApple][専用のLCDとして使っても良いと考えています。

 安いスマホスタンドにLCDだけくっつけて,基板はその辺に固定しておくだけでもう十分でしょう。あまり欲張りなことをすると計画が進まず作業が進みませんし,無理に始めれば失敗しますから,ここはもう割り切って,とにかく形にすることを終戦したいと思います。

 

CherryMX2Aに交換した結果

 キーボード(PCのやつです。楽器じゃないです。)に昔ほどのこだわりがなくなっている昨今ですが,毎日使う物ですから,やはり気持ちよく使いたいものです。

 今仕事用に使っているキーボードは上海問屋で買ったDN-915975という73キーのキーボードを改造したもので,もともとGateronの赤軸だったキースイッチを,元祖Cherryの赤軸に根性で交換した物です。

 改造したのが2020年の9月,今から3年半も前の話ですか・・・時間が経つのは早いものです。

 DN-915975というキーボード,当時5180円という破格値で売られていました。その後1500円ほど値上がりしているようですが,それにしても今では考えられないお値段です。

 ただ,今思えばGateronのキースイッチを持つキーボードの打ち心地は十分とは言えず,Cherryに交換してみて初めて,本物の良さを知る事になったわけです。

 配列も必要なキーが揃っていることも含めてですが,Cherryのキースイッチに交換したこのキーボードは,底打ちの時の音がカチャと大きい事以外は気に入って使っていて,会社においてあるRealForceよりも心地よいんじゃないかと思うこともあります。

でも,やっぱり音が問題です。自分でもこのカチャカチャという音はかなり耳障りで,ノイズキャンセリングヘッドフォンをしているとちょうどいいくらいです。

 自分でもこんなに気になるんだから,周りの人にはさぞや迷惑なことでしょう。

 なんとかしないとなあと思っていた所に,CherryMXの次世代品,CherryMX2Aが秋葉原で販売開始というニュースを目にしました。

 あのCherryMXの新製品です。気にならないわけはありません。見れば,ルブが最大のポイントみたいで,これまで自分でスイッチを分解して油を塗っていたマニアたちの苦労が,ようやく本家に伝わったということでしょう。

 スプリングの形状も変わったそうですし,精度も上がっているという話です。さらにズムーズな押し心地に高い信頼性と,試してみようと思うに十分です。

 そして,せっかく全数を交換するんですから,静音品を選んでみましょう。幸いお気に入りの赤軸には静音赤軸というバリエーションがあります。少し高いですが,これだと底を打ったときの音がかなり軽減されるそうです。(ただし噂ではステムがPOMではないらしいです)

 早速ヨドバシで注文。80個で8800円にポイント13%でした。73キーですので,70個では足りないんですよね。

 取り寄せという事で連休明けになるだろうと思っていたら,なんと数日で届いてしまいました。早速スイッチを見てみると,実にスムーズで期待が膨らみます。

 キースイッチの交換だけなら簡単で(簡単というわけではないんでしょうが,単純作業の繰り返しですので頭は使いません),すぐにも取りかかれる物なのですが,せっかくキースイッチを全部外すのですから,気になっていたキー配列の変更改造も計画しました。

 やりたいことは,スペースキーの左側にある無変換キーとその左にあるALTキーを交換するという物です。

 この変換/無変換キーは,私はCTRLキーに割り当てて,ショートカット用に使っています。MacでいうCMDキーなわけですが,これが一般の文字キーと同じ小さいサイズなことが気に入りませんでした。

 少し大きめだと,左手の親指が少々斜めになっても隣のキーに触れることもありません。親指の位置に自由度がないと,ショートカットキーが押しにくくて仕方がなかったのです。

 物理的なキーの入れ替えは大昔にもやっていて,PC-9801のキーボードで,Aキーの隣をCTRLだけにするという改造をやりました。この時はたまたまEWS-4800のキーボードも手に入り,ここから横長のCTRLキーのキートップを入手出来た事が大きいのですが,フレームを削り,基板にジャンパを飛ばして改造したキーボードが,実に使いやすくなったことを覚えています。

 ということで,物理的なキーの移動に抵抗のない私は,今回も改造を試みました。

 このDN-915975というキーボードは,アルミの天板がそのままフレームを兼ねています。キーを入れ換えるには穴を横方向に削り,スイッチをずらして固定する必要があります。そのためにはキースイッチを全部取り外し今が最適なタイミングです。面倒くさがっている場合じゃありません。

 まずはハンダ吸い取り機でLEDとキースイッチのハンダを吸い取ります。綺麗に吸い取れると基板だけを取り外す事が出来るので,基板が外れたらキースイッチをフレームから1つずつ外して行きます。

 フレームだけになったら無変換キーとALTキーの入れ替えを行う為に,寸法を出してヤスリで削ります。ALTキーの方が横に長いのですが,この2つを入れ換えただけですから,2つあわせて長さには変化はありません。

 削る作業は,柔らかいアルミですしヤスリを使って手でやっても良かったんですが,手間と労力と仕上がりの綺麗さから,ベルトサンダーを使うことにしました。

 2つの穴の左側を,右側のキーは2mmほど,左側のキーは1.5mほど削ります。実物をはめ込みながら慎重に手で削って位置を修正し,決まったところで1mmのアルミパイプを2本並べて右側の隙間を塞ぎ,接着します。

 我ながら上手く加工出来たところで,今後は基板です。スイッチの位置が変わるので基板はそのままでは使えません。まず4mmの大穴をそれぞれ左に広げて楕円にします。そうして位置が決まったら今度は新しいピンの位置に新しい穴をドリルで開けます。

 ここで失敗。続けてLEDの穴も開けないといけなかったんですがすっかり忘れてしまいました。後で気付いた時には,組み立てが終わってました・・・

 スイッチがおさまったら,他のスイッチも取り付け,基板をおいて一気にハンダ付けです。入れ換えたスイッチは穴を開けただけでハンダ付けは出来ませんから,そこはジャンパ線を使って配線します。

 で困ったのがLEDです。位置を交換したキーのLEDもずらす必要があることをすっかり忘れてしまいましたが,いろいろ考えて上側から1mmの取りつで足が通る穴を基板に開けることにしました。

 幸い,1本はこれまでのランドをそのまま使えそうなので,ハンダ付けによる位置の固定はできそうです。

 本当はFNキーとその左側のCTRLキーも入れ替えたかったのですが,ここはビスが通るため諦めました。しかし,FNキーも大きい方がよいので,となりのCTRLキーと並列に繋いで,どっちを押してもFNキーになるようにしておきました。

 そしてもう1つ,ずっと我慢していたことを解決しましょう。

 このキーボードは73キーと適度なキーが揃っているうれしいキーボードなんですが,標準で気に入らないことの1つにINSERTキーがないことがあります。

 INSERTキーなんか使わないという方も多いでしょうが,テキストの編集ではしばしば使いますし,アプリケーションによってはINSERTキーに機能を割り当てているケースもあります。私はこのキーをそれなりに使っていたので,FN+DELキーを押すことになれておらず,困っていました。

 一方で半角/全角キーは全く使わない(こんな変なキーがあるのはIBM互換機だけです)ので,それがINSERキーの場所にいることが許せずにいました。

 ただ,半角/全角キーはすでにESCキーとしてソフトウェアで割り当てを行っているので,半角/全角キーをINSERキーに割り当てることを,これまで断念してきました。

 しかし,物理的なキーの入れ替えをやると決めれば,これも解決しそうです。同様に使わないキーであるカナキーと半角/全角キーを物理的に入れ換え,カナキーにINSERキーをソフトウェアで割り当てるのです。

 こうすれば,DELキーの上という元の位置にINSERTキーが来ますし,カナキーは半角/全角キーとして,私の環境ではESCキーに割り当てられて機能することになります。

 この加工,なんでもないと思っていたのですが,実はそうでもなく,左右のキーを入れ換えるのと違って上下の段数も異なるキーの入れ替えなので,キーボードマトリクスのローとカラムの両方を入れ換える必要が出てくるのです。

 多くの場合,ローとカラムの両方が基板の片面に出てくることはなく,裏と表に配線されます。なので,基板をハンダ付けした今となっては,手が出せない場所のパターンをカットして再配線しないといけません,

 そこで,まずキースイッチの足のハンダを吸い取り,ここにビニルチューブを被せランドから絶縁,キースイッチの足に直接細い銅線をハンダ付けして再配線しました。

 テストも終わり,早速試し打ちです。

 おお,なんとスムースな打ち心地。まるでメンブレン式のキーボードのようなソフト感です。それいてストロークはしっかり確保されていて,さすがに静音だけあって底打ちの音もカチャンからポコ,という感じに調整されています。

 底を打つまでにキーが入るのも,メカスイッチの利点です。メンブレン式は底にぶち当たった時までキーが入ってくれませんから,ショートストロークのキーボードが主流になるのも頷けます。

 打ち心地に静音と,今回のキースイッチの交換は価値ある物になりました。いかにCherryとはいえ,油が塗布された部品の寿命や経年変化は気がかりですが,この心地よさが長く続いてくれることを願ってやみません。

 配列変更も快適そのもので,見た目のバランスの様さもようやく手に入りました。以前の赤軸の「かつーん」という底打ち感も懐かしいですが,とりあえず良かったよかった。これは癖になる打ち心地,REAL FORCEを越えたかも知れません。

 せっかくですからね,タイピングも楽しく心地よく,もっと触っていたと思うようなものに出会いたいものです。私のキーボードはすでに世の中に1つしかないオリジナルになってしまったわけで,そういう意味でも長く使いたいなあと思います。

DP-2000のメンテナンス

 私が長く愛用しているアナログディスクプレイヤーは,DENONのDP-2500です。

 DP-2500はDP-2000というターンテーブルとトーンアームをキャビネットに収めた完成品なのですが,私はトーンアームをグレースのGL-940に換装し,その後ようやくカートリッジの音の違いを堪能出来るくらいの性能に落ち着いてくれました。

 とはいえ,経年劣化からくる問題はまだすべて解決しておらず,今年の初め頃から最後の大修理を予定していました。

 ようやく暖かくなってきたこともあり,作業に取りかかったというわけです。

(1)インシュレータ

 DP-2500付属のインシュレータは,すでにゴムが劣化してグズグズになっていて,防振の役割をどころか,ダイレクトに振動を伝えてしまうようなひどい状態でしたし,高さも変わってしまったので水辺を出すのもおぼつかないという有様でした。

 まずはここから対策しないと思ってはいたのですが,レコードプレイヤー用のインシュレータというのは案外売られていないもので,どうしたものかと悩んでいました。

 どうもパナソニックのSL-1200MK3のインシュレータ(SFGC122-04Eという名将らしい)がそのまま使えそうだとわかり,手配を試みるもヨドバシあたりでは取り扱い終了でした。前回はここでくじけてしまったのですよ。(なんと1つ756円という破格値でした)

 今回はここから本気を出して,部品扱いで探してみると,

TGAX095
SL-1200G用
22490円(4個セット)

RKA0352-S
SL-1200GAE-S用
22150円(4個セット)

TGAX104
SL-1200GR用
15900円(4個セット)

TYL0296
SL-1200MK7用
9990円(4個セット)

 となりました。SFGC122-04EとTYL0296は基本的には同じ物でしょうから,3倍くらいに値上がりしていますね。とはいえ,もともとの値段が安すぎで,今の値段が妥当だとは思います。

 さて,どれも現行品ですので入手SOMOのは難しくないにせよ,値段がこれほど違うと悩む物です。私は結局SL-1200GR用のTGAX104を買いました。1つ4000円ですか・・・高いなあ。

 ところで,今はなきベスタクスのインシュレータも手に入るようです。しかし,DJ用ということで防振の特性が異なる可能性が高く,今回は見送りました。


(2)オイル

 DP-2000は言うまでもなくダイレクトドライブのターンテーブルで,基本的には注油は指示されていません。しかし,同じダイレクトドライブのターンテーブルであるSL-1000やSP-10では,定期的な注油が指示されているそうです。

 その指定オイルがSFW0010というもので,これはなんと今もヨドバシで買えます。880円です。安い!しかし,2022年の秋までは220円と,ゴミのような値段でした。

 これをDP-2000やDP-3000のメンテに使っている人も多いそうで,私もそろそろやってみようと手配しました。実はちょっとゴロが出ているように思うのです。

 注油には当然ターンテーブルの分解が必要です。ついでにコンデンサなども交換しておくことにしましょう。


 さて,(1)と(2)が揃ったところで(実際には暖かくなったところで),作業開始です。

 まずターンテーブルの分解。キャビネットからターンテーブルを外し,プラッタを外してひっくり返し,カバーを外します。

 中央部にDDモーターがありますので,本体から取り外さず,モーターのケースだけ取り外します。

 するとなかからローターが出てきます。これを慎重に抜いて,古いグリスを拭き取って軸受に注油します。いやもう,40年近いわけで,その間に一度も注油されていないんですから,動く方が不思議なくらいです。

 ところがここで大問題。なんと,軸受のステンレスボールが摩耗していました。それも犀利湯不可能なくらい,派手に削れていていて,スピンドル軸のお尻に入り込む部分では,円錐状に削れていました。グリスも固着していて,同じ場所ばかり擦れてしまったんだと思います。

 ゴロの原因はこれかも知れませんが,交換用のステンレスボールなど用意していません。とりあえず向きを変えて削れた部分がどこにも接触しないようにして組み立て直します。

 先に書くと,これでもきちんとサーボもかかって安定して回転してくれました。しかし,やっぱり交換したいじゃないですか。

 あいにくボールの直径を測るのを忘れてしまったのですが,そこは便利なamazoでステンレスボール詰め合わせセットを手配し,届いてから再度分解,交換しました。

 ボールの直径は実測で4mm,同じ直径のボールに難なく交換して作業終了です。

 次にコンデンサの交換です。ストロボスコープ用のコンデンサの劣化が早いので,これだけ交換することにしますが,取り外したコンデンサの容量を量ってみると2割ほど減っていました。回路が誤動作するような劣化ではないにせよ,ほっとくと早晩おかしくなるでしょう。交換して良かったです。

 後は劣化が進んだACコードを交換,さらに吊り下げられている電源トランスのゴムブッシュの劣化を補うために,シリコンゴムのリングをネジに通しておきました。

 再度組み立てますが,軸受を分解したので念のため,回転パルスを出すタメの磁気ヘッドの位置だしをやっておきます。

 無事に完成,テストを行いますが問題はありません。2時間ほど運転してからキャビネットに戻してセッティングです。この時例のインシュレータを交換します。

 さて,セッティングまで終わって試聴です。まず,インシュレータの効果は大きく,ラックに触った時に聞こえる振動が軽減されています。水平の調整も楽に出来ますし,ようやくまともになった気がします。

 続けてターンテーブルです。これもなかなかよくて,ゴロが減りました。回転ムラは以前から気にならない程度だったので,変化はありません。ゴロだけではなくS/Nが向上したのはすぐにわかるレベルで,これが本当のDP-2000の実力だったんだなあと思った次第です。

 もっと早くにやっておけば良かった。

 もしこれがダメだったら,新しいアナログプレイヤーを買うことを検討するつもりでした。買わずに済んだと言うよりも,捨てずに済んだ事がなによりうれしいですし,まだまだ私の中心的機材として活躍してくれそうです。

 

Temuを使ってみた

 先日,偶然目にしたのが新しい中国の通販サイトのお話でした。

 中国の通販サイトといえば,すっかりメジャーになってしまったAliexpressです。激安で様々なものが売られていて,しかも同じ物が複数の業者から出品され,値段や条件が結構違うという,まさにハイレベルな通販サイトです。

 価格も安いがリスクも大きいハイリスクハイリターンな,まさに勝負師の腕が鳴るサイトですが,かつては配送に2週間はかかりましたし,結局届かなかったという話もチラホラ。トラブルの解決は基本的には出品業者と直接やってくれと言うもので,日本語はもちろん,英語も通じない場合があるという,どう考えても素人には手が出せないものでした。

 ここ数年で大きく改善され,配達は1週間程度になりましたし,荷物がなくなることも聞きません。トラブル発生時に業者と揉めても最終的にはaliexpressが対応してくれたりするので,以前のような泣き寝入りはなくなったと思います。

 折からの円安と,そうしたサービスの向上のせいでしょうか,最近aliexpressが安いと言う話をあまり聞きません。代わりに台頭してきた新興勢力が,Temuです。

 Temuといえば我々世代では酸素欠乏症なわけですが,そんなことはどうでも良くて,最近注目を集める通販サイトです。aliexpressに比べてもさらに安く,その上送料無料で配送はTemuが手配,しかも数日で日本に到着するというスピード感,さらに長くかかった場合にはお詫びのクーポンまで用意するというのですから,そこらへんの国内通販業者のずっと先をいっています。

 個人的に気に入ったのは,トラブル発生時の対応で,私は経験がありませんがどうもTemuが間に入ってくれて返金や返品などに応じてくれるようです。Aliexpressが楽天なら,Temuはamazonという感じでしょうか。

 あまりに安いので詐欺ではないか,と言う話が出てくるようですが実際に詐欺に遭ったという話は今のところ目にすることはなく,検索しても好意的なものばかり目に付きます。これはいよいよ真打ち登場かも知れません。

 こんな面白い話があるなら,早速使わねばなりません。

 ぱっと目に付いたのが,250円のドリルシャープナーです。これまで使い捨てていたドリルビットが甦るならうれしいじゃないですか。

 ただ,時間もなかったので送料無料になる条件がわからず,ついでになにか買おうと考えてふと思い出したのが,スポット溶接機です。といっても大げさなものではなく,昨年から一部の界隈で話題に上っていた,組電池を作る事の出来るバッテリー式の小型スポット溶接機です。

 電池に直接ハンダ付けを行うのは爆発の危険もあるし,封止しているガスケットに変形が生じて液漏れが起こるので御法度で,代わりに一瞬で溶接の出来るスポット陽性にニッケルのタブを取り付け,これにハンダ付けをするのが一般的です。

 複数の電池を組み合わせた組電池もそうですし,コイン電池のようなバックアップバッテリーでもタブ付きの物がよくあります。

 しかし,こうした電池は普通のお店にはなく,ほぼ特注品です。コイン電池などはCR2032のような普通の電池なのにタブがついている物との交換品が手に入らず,筐体の外に電池ケースがはみ出ることを許すか,あるいは諦めるかの選択を迫られるものです。

 また,ポケコンマニアの間では頭の痛い問題なのですが,プリンターに内蔵された電池が単三のNi-Cdの組電池,間違いなく液漏れして死んでいるこの電池を交換しようにも,代わりの物が手に入りにくいのが現状です。

 4本組みなら手に入らなくはありませんが非常に高価,5本組みだと絶望的で,かといって電池ケースが入るスペースもないので,これも結局諦めることになるのです。

 ですがこのスポット溶接機があれば万事解決。安価なNi-MHを買ってきて自分で組電池が作れます。これまで素人には不可能だった組電池の製作が出来るというので,ここ最近バッテリ駆動の安価なスポット溶接機がブームになっているのです。

 もともと基板キットだったようですが,最近はディスプレイがついたりちょっとしたケースに入っていたりするようで,これだと1000円から3000円くらいまで。しかしamazonあたりで売られているものもちょっと値上がりの傾向がありますし,当たり外れもあるようなので躊躇していました。

 欲しいことにはかわりはないので探してみると,狙っていたディスプレイ付きの物は売り切れていて変えません。しかし,プローブ(というのが正しいのか自信がありません),コントローラ,バッテリーなどが一体化したハンディタイプのものが4000円で出ています。

 もともと2本のプローブを自分でお箸のように持って溶接するのは怖かったので,すでにプローブが固定されているこのタイプはむしろ好都合です。通常この手の物は5000円を割らないので,4000円は確かに安いです。買いましょう。

 Temuが面白いのは,発送までは品物の追加が可能で,しかもワンプッシュです。注文時間がバラバラな物を1つにまとめて発送するというのは難しい処理だと思うのですが,良くもそれをやるなと感心しました。羞悪飛車の審理で言えば,これがあると「ついで買い」の敷居が下がるので,すごいことだなと思う訳です。

 私も買い忘れたニッケルの薄い板を買いました。

 合計で4800円ほどの買い物でしたが特に問題はなく,月曜日に注文し,火曜日に発送,土曜日に到着しました。ちゃんと中国から飛行機で届いたのですが,この速さです。自宅に届けてくれたのはヤマト運輸で,関税も支払っていません。(まあもともと5000円程度なら関税はかかりませんが)

 さて,ここまでは順調。問題は届いた商品が使えるのかどうかです。

 結論を書けば,全く問題なし。スポット溶接がこんなに簡単に安全に行えるなんて,驚きました。溶接の強度は試行錯誤が必要ですが,作業は一瞬で仕上がりは綺麗ですし,溶接したタブを引っ張れば溶接箇所だけ残ってちぎれるくらいの強度も持っています。これなら実用レベルです。

 ということで,良い買い物をしたと思います。スポット溶接機も良かったですが,Temuを使ったことも良い経験になりました

 Aliexpressはまさに玉石混交で,しかもディスコンになった半導体が(偽物も多いですが)買えたりするまさにダンジョン。Temuは怪しげな物は少なく,そういった点での面白さは少ないと思いますが,amazonの中国の業者のマケプレを使うなら,もう断然Temuだと思います。

 これからどうなるかわかりませんが,一党独裁の計画経済の社会において,競争原理が働いている奇妙な状態を,なんだかんだで我々は享受していることを認めないといけないように思いました。

訳あり品でスピーカーを作ってみた

 昨年は12月に入ると急に寒くなってしまい,思いつきで始めた工作が寒さとの戦いになってしまったのですが,無事に年内に終わってホッとしています。

 なんの工作?スピーカーですよ,スピーカー。

 何年かに一度,急にスピーカーが作りたくなって手を出すのですが,結局使い道がないまま押し入れにこっそりしまい込まれてしまう,可愛そうな奴です。

 ラジオ用の5cmのスピーカーをプラケースに入れただけのものを起点に,粗大ゴミのステレオセットから取り外したスピーカーを3mmの薄いベニヤで作ったエンクロージャーに入れただけの2ウェイで自らの木工技術の低さを思い知り,その後は大人らしくパイオニアのPE-101に専用のエンクロージャーをセットで購入,歴史に名を残すフルレンジの実力を堪能しました。

 大人の科学だっと思いますがスピーカーユニットの組み立ても面白がって試したし,その後雑誌の付録のユニットを使って,これも雑誌の付録だったバックロードホーンのエンクロージャーのキットを組み立ててみたこともありました。

 いつかは試してみようと思っていたバックロードホーンと,中学生の頃から買う機会をうかがっていたフォステクスのユニットを念願叶って買って作ったのはいいものの,やはりレンジの狭さや乾いた音に抵抗があって,結局押し入れに肥やしになっています。

 その間完成品のスピーカーもちょいちょい買ってみたのですが,結局B&WのCM1,KEFのQ350,それからJBLのSTAGE A120(これはペアで16000円以下とは思えない音がしました)あたりが結局生き残り,自作品は完全にしまい込まれています。

 しかし,自作品が期待通りの性能を出し実用品となることを目指して歩んできた工作人生,スピーカーでもなんとか「これならどうだ」と思うようなものを作って使ってみたいと思っていたところへ,偶然面白そうなユニットを見つけてしまいました。

 NFJという会社が「訳あり品」として激安で販売しているユニットに,ケブラーコーンの10cmウーファーを発見しました。これに組み合わせると面白そうなシルクドームツイーターも激安です。

 ウーファーは細かいスペックはわかりませんが,ケブラーですから安い物ではないでしょう。大きなマグネットもしっかりした低音が出そうな感じです。フレームにゆがみなどがあるという事で,お値段1つ1980円。

 分かっている範囲でスペックを書くと,コーンはケブラー,エッジはゴム,フェライトマグネットでインピーダンスは4Ω,定格入力は40Wで最大80W,口径は4インチで101mm,重さは955gです。

 一方シルクドームツイーターはキズがあるという事で1つ1280円。なんとデンマークの老舗Peerlessの物だそうです。ほんまかいな。

 高域は20kHzは余裕,正面なら40kHzもクリアするという特性が謳われていますが,なによりシルクドームならではのとげの刺さらないしなやかな高音が期待出来そうです。

 こちらのスペックはそれなりに公開されていて,口径は1インチ,シルクドーム,マグネットはネオジムでインピーダンスは4Ω,入力は80Wで最大160W,再生周波数は2.5kHz~20kHz,F0は1084.63Hzで能率87.8dB,重さは46gとのこと。

 ペアで揃えても6500円。これは安い。失敗しても悔しくないです。

 ということで早速購入,こういうものはスポット品ですので,欲しい時に買うのが鉄則です。(といいつつ随分昔から在庫があるようですが)

 手元に届いたユニットは,ウーファーがフレームのゆがみとエッジのへこみがありましたが音は正常です。ツイーターはキズがありますがこれは気にならない程度でした。

 どっちもいかにもいい音が出そうな感じです。

 しかし,ここで苦手な木工と向き合わねばなりません。私の場合,綺麗に切断できず隙間だらけになったり床と3点でしか接しないなんてことが起きてしまいますし,塗装も下手くそですのでいかにも素人の工作になってがっかりです。

 その前に材料の調達も大変です。近所にホームセンターもありませんし,かといって自動車もありません。材料が手に入らず加工も苦手と来ればもはや話にならないわけですが,そこで登場するのが我らが自作派の味方のフォステクスの「かんすぴ」です。

 かんすぴは安価なユニットとエンクロージャーを組み合わせて自作のスピーカーを作るというありがたいシリーズなのですが,標準的なバスレフのエンクロージャーが大きさで何種類か選ぶ事が出来,しかも吸音材やターミナルまで取り付け済みという手軽さが素晴らしいです。

 登場時は本当に安くて心配になるほどでしたが,ここ数年は頻繁に値上げが行われていて,私が購入したP1000-Eはすでに1本3740円になっていました。それでも十分安いと思うのですが,これを年末のクーポンを使って直販サイトから購入しました。ちょっと容量が足りない気もしますが,まあなんとかなるでしょう。

 さて,ここからが本番です。

 まず,ユニットの動作確認です。音は出ることは分かっているので,エンクロージャーとの相性を見ます。仮組みしてウーファーだけをスイープでならしてみますが,60Hzあたりでもバスレフポートからバフバフと大きな音圧が出ています。これはなかなか良さそうです。DR-100mk2(PCMレコーダをです)でスイープさせた音のレベルを測定してみますが,上も4kHzくらいまでなら-3dBまで出ていそうです。

 ここにツイーターを3.3uFを介して取り付けてみますが,高音が出てくるだけで輪郭もはっきりしてくるし,みずみずしさも出てきます。多少耳障りな感じもしますが,ボーカルの定位も抜群で,期待度もうなぎ登りです。

 ツイーターの位置を前後させてウーファーとの干渉がないような位置を探すのですが,どうもツイーターの位相を逆にした方がバッフル面と同じ位置に出来そうで好都合です。低域カットのコンデンサは3.3uFにすべきか2.2uFにすべきがで悩みましたが,まずは3.3uFで進めることにします。

 さて,エンクロージャーを加工せず,ツイーターは上面に乗せておくだけというのも考えましたが,ここはもう少し手をかけましょう。ちょうどバスレフポートがツイーターの大きさとぴったりだったので,ここにツイーターを置くことにします。

 するとバスレフポートが潰れますので,これは背面に移設します。ウーファーを下に配置したいので天地をひっくり返すため,ターミナルも上下を反転させて取り付け直しましょう。

 全体の計画が見えてきたところで,早速加工開始です。まずエンクロージャーの中に手を突っ込んでポートを力尽くで外します。木工ボンドで接着してあるだけですので割に簡単に取れます。

 そしてもとのバスレフポートと同じ高さの背面に25mmの穴を開けます。MDFですのでサークルソーを使えば簡単です。

 穴が開いたらポートを裏側で接着しこのまま一晩放置。

 バスレフポートが完成したら,ウーファーの取り付け穴がこのままではちょっと小さいので加工します。ただ私はこういう時専用の工具も器用さも持ち合わせていないので,ゴリゴリとカッターで広げていくほかありません。

 このウーファーはフレームとエッジの間が狭く,あまり穴を大きくしすぎるとバッフルとの間に隙間が出来てしまいます。すり鉢状にして広げる必要があるのですが,そこはどんくさい私の事,真円にならず綺麗に仕上げることが出来ませんでした。

 気を取り直してツイーターです。これは元バスレフポートの穴がそのまま使えるのでここに取り付けることにしましょう。

 さて,ここまで来ればあとは配線の準備です。ターミナルから出ているケーブルを取り外し,ターミナル側の圧着端子にコンデンサをハンダ付けします。もう一方の圧着端子とコンデンサの足から配線を引っ張り出し,新しい圧着端子を付けてツイーター用とします。これで配線終了

 作業がやりやすいようにまずツイーターから取り付けます。先に圧着端子をツイーターにはめ込んでから,amazonで調達した木ネジでバッフルに固定します。

 そして重いウーファーを配線して取り付けて完成です。ターミナルをひっくり返すことも忘れずにやります。さあ,音を出してみましょう。

 アンプはかつて雑誌の付録になったラックスのアンプです。これ,ホントにいい音がするんですが,こういう場合にもってこいの手軽さも持ち合わせているので助かります。

 ・・・なかなか良いではないですか。

 P1000-Eは121x243x179mmで3.6Lという小さいエンクロージャーなのですが,このサイズには似合わないたっぷりとした中音域と,物足りないながらもタイトな低音,そして耳障りの良い伸びやかな高音が出てきます。ウーファーとツイーターの繋がりはいまいちなのですが定位感は抜群で,特にニアフィールドではまさに楽器が点で聞こえます。

 この大きさで,自作品,それも1万円ほどでここまでの音とは・・・素晴らしい。

 なにより,私が好む傾向の音です。これは何よりも代えがたい魅力です。ちょっとポンポンいいますし,高音も出すぎているのでドンシャリの向きはありますが,なにより位相が揃っているので定位は抜群,音の艶と言いますか,立体感も申し分なく,低音も無理をしないでしっかり出ているのでとても楽しいスピーカーです。

 しばらくならして当たりを付けたあと,ウーファーをツイーターの重なり部分を減らす目的で,コンデンサを2.2uFに減らしてみます。高音はやや引っ込みますが,ウーファーが担当する中域が広がりより自然に。

 よし,これでいこう。90cmのテーブルに並べて,1mほどの距離で2時間ほどいろんな音楽を愉しみました。硬めの木材を足にして浮かせてやれば,低音がぼやけずにしっかり出てきます。

 大きな編成のオーケストラはさすがに厳しいですが,楽器の分離がよいので5,6人までのジャズコンボにはその表現力で,ロックは元気の良さと中域の豊かさで楽しく,いつまでも聴いていられる音が出てきます。そしてボーカルの再現性がとても良くて,ちゃんと歌っています。市販品でもこれ以下のスピーカーなんていくらでもあるんじゃないでしょうか。

 ということで,今回のスピーカーの自作は大成功です。音の良さもそうですが,この大きさであることもとても重要です。見た目もケブラー特有の黄色いコーンが格好よくて,うまくまとまっていると思います。

 さて,今回つくづく思ったことが,スピーカーのサイズによってスピーカーの間隔が決まるということです。

 よくベストなリスニングポジションは,左右のスピーカーの間を一辺とする正三角形の頂点の場所だといいますよね,そこに座ってみると,スコッと真ん中が抜けてしまうことがあります。

 この時,スピーカーを大きな物に変えてみると抜けなくなるんですが,先程の抜けてしまったスピーカーがダメなスピーカーかといえばそんなことはなく,もう少し正三角形を小さくして近づいて聴けば,見事に立体的な音像が浮かび上がるわけです。

 違いはなんだといえば,それはスピーカーの大きさです。スピーカーからの距離が離れれば離れるほど,小さい口径のスピーカーでは点音源に近づいてしまい,中が抜けるのではないかと思います。

 だから,大きな部屋なら大きなスピーカーを,ニアフィールドなら小さいスピーカーを選ばないといけないんだと,ようやく気が付きました。

 あれほどいい音がするCM1をリビングに置くとどうもいい音がせず,Q350にすると定位が向上するのが不思議だったのですが,やっぱりスピーカーの大きさという単純なパラメータが影響しているように思います。

 また,特にウーファーの口径は,距離が離れるほど大きくないといけません。ヘッドフォンのドライバの口径が小さいこともそうでしょうし,小さいスピーカーも近くで聴けばしっかり低音が出ていることに気が付くのも,このことの証でしょう。

 そんなわけで,今回の自作は成功で,スイープで周波数特性を見た事,ツイーターの位置で位相を調整したこと,コンデンサを繋がりを調整したことなど,なかなか良い経験をさせてもらいました。

 結果,ケブラーコーンへの期待を裏切らない,実に良いスピーカーが完成しましたし,さらにいうとスピーカーの大きさとリスニングポジションの問題も関係性が見えてきたように思います。

 そして最後に,フルレンジにはフルレンジの良さがあるとは思いつつ,やっぱり小型スピーカーなら2ウェイだなあと思いました。

 とまあこんな良い成果を上げたスピーカーですが,やっぱり置く場所がないのでしばらくは押し入れの肥やしです。次に登場するのはいつになることやら。

ページ移動

ユーティリティ

2024年05月

- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed